第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、わが国の炭素工業の草分け的存在として、1915年の設立以来カーボンの優れた特性を活かした多種多様な製品を生み出し、社会に送り出してまいりました。常に「わが国炭素工業分野のパイオニアとして、人と社会に貢献する企業であり続ける」ことを企業理念として、安定的な業績基盤を確立し、技術で社会に貢献する会社として限りない挑戦を今後も続けてまいる所存であります。その実現のため、時代のニーズに合った新製品の開発と、厳しい品質へのこだわり、環境への配慮に重点を置いた製品の供給とともに、国際競争力のあるコストの実現と、それを可能にする優れた人材の育成を推進しております。

 

(2) 目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略、会社の対処すべき課題

昨今、AIやIoTといった新技術の急速な進化や地政学リスクの高まりなどから、企業には変化する時代を生き抜く力が求められています。当社グループは、前中期経営方針を完遂させ、その結果を踏まえ、2025年度を初年度とする新たな中期経営方針「GO BEYOND 2030~収益性向上とサステナビリティ経営の両立~」を策定いたしました。

本中期経営方針では、様々な問題が顕在化すると言われている2030年を最終年度として定め、当社の経営理念である「愛と化学の社会を目指す、夢と技術のある会社」のもと、企業の持続的成長とサステナブルな社会の実現を目指すことを重要課題としております。事業につきましては、為替リスクや各国の政策による世界経済の変動などが懸念されるものの、年率10%前後の売上拡大を目指し、収益力の強化に努めてまいります。また、GHG排出量の削減など、カーボンニュートラルの実現へ貢献し、サステナブルな社会の実現を目指してまいります。全てのステークホルダーにご満足いただけるよう、グループ一丸となって収益性の向上および企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

<中期経営方針「GO BEYOND 2030~収益性向上とサステナビリティ経営の両立~」>

(ア)収益性の向上

製品

想定される外部環境

基本方針および具体的施策

ファインカーボン

関連製品

・AIや5G技術の進化や普及、データセンター需要の拡大

・xEV市場の中長期的伸長

・国内および海外でのシェア拡大

・積極的な経営資源の投入と製造コスト削減の実施

電極材関連製品

・高炉から電炉への切り替え

・xEV市場の中長期的伸長

・需要に応じた最適生産体制の確立

・徹底的なコスト削減の実施

・電極の販路見直し

炭化けい素関連製品

・航空産業の市場拡大

・セラミックス基複合材料の研究促進

・需要増加に対応するための人材確保および安全操業の実現

新規事業

・DX/GXに関連した産業が拡大

・パワー半導体関連製品の事業化

・カーボンニュートラルに係る事業の創出

 

 

(イ)サステナビリティ経営の推進

項目

想定される外部環境

基本方針および具体的施策

カーボンニュートラルへの貢献

・気候変動問題に対する意識の高まり

・GHG排出量削減の実現

・当社製品を通じてのカーボンニュートラル社会の実現

人材確保および育成

・日本社会の高齢化に伴い、労働人口は減少

・社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みの推進

・多様な人材が活躍できる企業風土の醸成

 

 

(ウ)株主還元の強化

当社は、株主の皆様への最適な利益還元を経営上の最重要責務の一つと考えております。今後も、事業活動により得られた利益につきましては、安定的な配当の原資としての活用を目指すと共に、事業の拡大や経営基盤の強化に繋がる生産体制の拡充、新規事業の創出を目指した研究開発などに投資し、収益性の向上を図ってまいります。更に、業績、財務状況および経営環境を勘案し、自己株式の取得など、機動的な株主還元を行ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

企業に対するサステナビリティ経営への要求が高まる中、当社グループにおいても、経営理念である「愛と科学の社会を目指す、夢と技術のある会社」に繋がる重要なテーマと捉えております。持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、環境、社会、ガバナンスを重視したESG経営を推進することで、諸課題の解決に向けた取り組みを継続的に行ってまいります。当社は、サステナビリティをめぐる課題については、取締役会にて方向性を議論し、必要に応じて各専門委員会にて詳細な対応を検討、実行する体制を構築しています。

 

(2)戦略

当社グループは、前中期経営方針「BREAKTHROUGH 2024」において持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指し、カーボンニュートラルの実現に向けた技術開発、エネルギーの効率化、廃棄物削減、人的資本の強化に向けた人材確保・育成、多様性の尊重などの取り組みを進めてまいりました。

2025年度を初年度とする新たな中期経営方針「GO BEYOND 2030」においては企業の持続的成長とサステナブルな社会の実現を目指すことを重要課題とし、前中期経営方針を踏まえ、GHG排出量削減や当社製品を通じてのカーボンニュートラル社会の実現、社員のエンゲージメント向上と多様な人材が活躍できる企業風土の醸成に取り組んでまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループは、倫理法令遵守委員会において、リスク管理の徹底を図っております。具体的には、事業を遂行するうえで想定される様々なリスクを網羅的に洗い出し、各リスクが当社グループに与える影響度と発生可能性を評価したうえで、重要なリスクの特定を行います。特定した重要リスクに対してリスクの発生可能性を抑制し、発生時の影響度を最小化する対策を講じ、当該対策の進捗状況や有効性に関するモニタリングを行い、対策の見直し・改善を行っております。

 

(4)指標及び目標

①気候変動対応

 a.戦略

当社グループでは、気候変動による事業活動への影響を分析するため、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」の枠組みに基づく気候変動に関するシナリオ分析を行いました。

シナリオ分析では、脱炭素化が実現するシナリオ(2℃未満シナリオ)と、気候変動が進行するシナリオ(4℃シナリオ)の2つのシナリオを基に、2030年時点で想定されるリスクと機会を洗い出し、当社グループへの影響度を評価しております。2℃未満シナリオにおいて、影響が大きいと想定される移行リスクとして、カーボンプライシング、環境規制対応のための設備更新費用の発生、石油・石炭由来の原材料や燃料のコスト増加等が挙げられます。4℃シナリオにおいて、影響が大きいと想定される物理リスクとして、台風・豪雨・洪水・高潮による工場等への被害増加が挙げられます。一方で、想定される主な機会としては、脱炭素化に貢献しうる当社グループ製品(太陽電池やEV関連のファインカーボン製品、人造黒鉛電極、リチウムイオン電池負極材、炭化けい素繊維など)に対する需要拡大が挙げられます。以上の評価から対応策の検討を進めております。

 

(気候変動に関する主なリスクと機会)

分類

リスク・機会

事業への影響

 影響度
 (2030年)

2℃未満

シナリオ

リスク

気候変動対応の不備・遅れ

・化石燃料の使用や情報開示不足に対する投資家等からの批判により、投資撤退や株価下落が起こる恐れがある。

カーボンプライシングによるコスト増加

・カーボンプライシング等、GHG排出量の規制の強化により、財務的な負担が増加する恐れがある。

環境規制対応のための製造プロセス変更によるコスト増加

・設備更新や製造プロセス改善に伴い、コストや作業負荷が増加する恐れがある。

エネルギーコスト増加

・燃料価格の高騰や再生可能エネルギー利用比率の増加、再エネ賦課金の増加等の理由により、エネルギーコストが増加する恐れがある。

物流コスト増加

・ガソリン等の価格高騰により、物流コストが増加する恐れがある。

原材料高騰

・原油・石炭等の原料価格が高騰し、財務的な負担が増加する恐れがある。

革新技術の出現 (脱炭素関連)

・競合他社との競争により、市場の成長に対して売上が伸び悩む可能性がある。

・次世代太陽電池の主流化により、シリコン溶解炉関連製品の需要も減少する恐れがある。

機会

省エネ・再エネ関連製品の需要増加

・太陽電池需要の増加に伴いシリコン溶解炉関連製品の需要が拡大する可能性がある。

・航空機エンジンの燃費向上に貢献する炭化けい素繊維などの需要が拡大する可能性がある。

人造黒鉛電極の需要増加

・電炉需要の増加に伴い人造黒鉛電極の需要が拡大する可能性がある。

EV関連製品の需要増加

・EV需要の増加に伴い、半導体・磁石などのファインカーボン製品やリチウムイオン電池負極材の需要が拡大する可能性がある。

先進的対応による投資家等からの評価向上

・気候変動への先進的対応に対する投資家等からの評価向上により、株価が上昇する可能性がある。

4℃

シナリオ

リスク

豪雨・洪水等の異常気象

・工場等において、洪水による浸水被害や風害等が発生し、操業に影響が出る恐れがある。

 

 

  b.指標と目標

当社グループでは、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現を踏まえ、GHG 排出量削減の取り組みを進めています。 GHG排出量はエネルギー投入量に概ね比例しており、生産工程の改善、エネルギー効率の高い設備の導入等を進め、エネルギー原単位の削減目標1%/年を目指します。

 

②人的資本

 a.戦略

 (人材育成の方針)

性別、国籍などを問わず多様な人材を採用し、自ら高い目標を掲げ、障害があっても意欲的に取り組み、達成に向けやり通す人材育成を目指しております。

また、組織や世代を超えたコミュニケーションを促進し、自らの考えを自由に発言できる企業風土を醸成することで、企業活動の活性化と会社目標の達成につなげております。

 

 (ダイバーシティ・インクルージョンの推進)

当社グループでは、変化の激しい市場環境に柔軟かつスピード感を持って対応できる事業体制を構築すべく、女性、外国人、様々な職歴を持つ方など、多様な人材の採用・起用を積極的かつ継続的に行っております。また、各人の保有する能力や特長を活かすための職場環境の整備も進めております。管理職の選考基準についても、性別や新卒・中途採用の区別がない基準としています。

 

 b.指標と目標

  (女性管理職)

2030年に2021年度の倍にすることを目標に掲げ、管理職候補層である総合職採用を精力的に行い達成に向け取り組んでおります。

 

 (両立支援)

育児・介護を行う社員が働き続けられるよう、就業との両立支援に力を入れております。男性の子育て目的の休暇の取得率の向上を目指し、2024年1月1日から2026年12月31日までの3年間で取得率20%超を達成することを目指しており、2024年度の男性労働者の育児休業取得率は42.9%であります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 為替変動リスク

当社グループの海外売上高比率は、前連結会計年度が48.5%、当連結会計年度が47.9%となっており、その大部分が外貨建取引であります。当社グループでは、為替予約取引や通貨スワップ取引により、為替変動リスクの経営成績に与える影響を極力軽減するよう努力しておりますが、当該リスクを完全にヘッジできるものではなく、急速な為替相場の変動があれば、経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)市場環境変動リスク

需給バランスの変動によって生じる市場競争の激化による販売数量変動や販売価格変動、革新的な技術出現による製品性能の劇的な変化等が、当社グループの経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 特定原材料調達リスク

当社グループは、安定的な原材料確保と最適な価格の維持に努めております。しかしながら、原油価格の高騰や原材料メーカーの生産体制などにより、原材料の需給が逼迫した場合、顧客への製品提供が不可能となり、経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 人員確保、人材育成リスク

当社グループの生産体制は国内に集中しております。国内における人材不足は深刻化しており、中長期的な採用困難な状況の継続や離職による人員不足およびこれに伴う人材育成の遅れ等が、当社グループの経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 法的規制等

当社グループは、事業を遂行していくうえで、国内外におけるさまざまな法的規制等を受けております。法令遵守を基本として事業活動を行っておりますが、関係法令等の変更や規制が強化された場合、その対応のため人的・物的資源の投入が必要になり、経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 自然災害リスク

当社グループの生産拠点や事業所を含む地域で、大地震や大規模な自然災害が発生し、建物および生産設備、出荷前の製品等の損傷並びに従業員への被害、原材料や電力等の供給不足等、不測の事態が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 感染症リスク

新たな感染症の世界的な拡大により、生産、物流をはじめとした市場経済活動への深刻な影響が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動に関わる情報を財産と考え、継続的に情報セキュリティ体制の構築・強化を図っております。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃やその他の不測の事態による情報セキュリティ事故、地震等の自然災害の発生による情報システムの停止または一時的な混乱に伴う事業への影響が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、インフレの鈍化を背景に各国で政策金利の引き下げが進んだものの、低成長にとどまりました。製造業においては、先端半導体を含むIT関連製品の需要は堅調だった一方で、先進諸国でのコスト上昇や需要の伸び悩みの影響を受け、全体として低調に推移しました。

このような事業環境の中、当社グループは、中期経営方針「BREAKTHROUGH 2024」の最終年度にあたり「事業構造改革」および「企業体質の改善」を重点課題として取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比0.2%増379億5千6百万円(単体は前期比0.9%減233億8千4百万円)となりました。損益面につきましては、経常利益は、前連結会計年度比5.9%減66億9千2百万円(単体は前期比12.9%減41億1百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比0.7%増40億7千8百万円(単体は前期比5.2%減30億8千3百万円の当期純利益)となりました。

セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

[炭素製品関連]

ファインカーボン関連製品につきましては、半導体関連市場向けの需要を背景に、概ね堅調に推移しました。他方、電極材関連製品につきましては、エネルギー価格が高止まりする中、製造コストの削減と売価是正に取り組みましたが、人造黒鉛電極の売価と販売量は市況低迷によって低調に推移し、全体の利益を押し下げる結果となりました。

この結果、売上高は343億7千1百万円(前連結会計年度比0.7%減)、営業利益は52億3百万円(前連結会計年度比10.3%減)と減収減益になりました。

 

[炭化けい素製品関連]

炭化けい素連続繊維製品につきましては、航空産業向けの需要の復調により、売価と販売量が好調に推移したことから、収益性は改善しました。

この結果、売上高は27億円(前連結会計年度比16.0%増)、営業利益は8億5千5百万円(前連結会計年度比68.2%増)と増収増益となりました。

 

[その他]

その他の事業につきましては、産業用機械において資材価格やエネルギー価格が高止まりする中、製造コストの削減と売価是正に努めましたが、収益性は悪化しました。

この結果、売上高は8億8千5百万円(前連結会計年度比3.8%減)、営業利益は2億4千3百万円(前連結会計年度比1.9%減)と減収減益となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に比べ22億2千8百万円減少し、121億5千4百万円(前期は143億8千2百万円)となりました。なお、各活動におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額23億2千1百万円、棚卸資産の増加額8億9千1百万円および仕入債務の減少額8億4千3百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益68億9千5百万円、減価償却費29億8千6百万円等により、52億3千4百万円の収入(前期は31億8千9百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出46億6千7百万円、投資有価証券の取得による支出10億3千2百万円等により55億4千6百万円の支出(前期は44億2千6百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加額4億3千万円がありましたが、配当金の支払額22億6百万円により、19億8千5百万円の支出(前期は26億1千4百万円の支出)となりました。

 

(生産、受注及び販売の実績)

(1) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

炭素製品関連

31,817

90.5

炭化けい素製品関連

2,928

122.2

その他

885

96.2

合計

35,631

92.6

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によるものであります。

 

(2) 受注実績

当社グループの製品中化成品の一部を除いて大部分が見込生産であり、毎月の受注高はおおよそ同月の販売高に相当しております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

炭素製品関連

34,371

99.3

炭化けい素製品関連

2,700

116.0

その他

885

96.2

合計

37,956

100.2

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針、重要な見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。その作成にあたっての重要な会計方針・見積り及び見積りに用いた仮定は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

(2) 経営成績の分析

当連結会計年度の連結経営成績については、電極材関連製品の売価と販売数量が低調に推移しましたが、半導体関連市場向けの需要を背景に炭素繊維製品及び特殊炭素材料の売上が堅調に推移したこと等により、前連結会計年度比0.2%増379億5千6百万円(単体は前期比0.9%減233億8千4百万円)となりました。

売上原価は、前連結会計年度に比べ4億5千4百万円増加し、264億7千1百万円となり、原価率は69.7%と前連結会計年度に比べ1.0ポイントの増加となりました。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ1億1千万円減少し、51億6千5百万円となりました。この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ2億5千4百万円減少し、63億1千9百万円となりました。

営業外損益は、受取配当金の増加および持分法による投資利益の増加等はありましたが、為替差益の減少および受取保険金の減少ならびに支払利息の増加および固定資産除却損の増加等により、前連結会計年度に比べ1億6千8百万円減少し、3億7千3百万円の利益(純額)となりました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ4億2千3百万円減少し、66億9千2百万円となりました。

特別利益については、有形固定資産売却益1億9千6百万円を計上いたしました。この結果、税金等調整前当期純利益は68億9千5百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ2千8百万円増加40億7千8百万円となりました。

 

(3) 財政状態の分析

当連結会計年度末における資産合計は、823億4千8百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億8千2百万円の増加となりました。流動資産は、棚卸資産の増加9億7千4百万円、その他の増加5億5百万円がありましたが、現金及び預金の減少22億2千8百万円、売上債権の減少3億7千6百万円等により、前連結会計年度末に比べ10億9千6百万円減少し、463億1千9百万円となりました。固定資産は、設備投資による有形固定資産の増加32億6千4百万円、株式取得および時価上昇による投資有価証券の増加17億6千3百万円により、前連結会計年度末に比べ49億7千9百万円増加し、360億2千9百万円となりました。

当連結会計年度末における負債合計は215億2千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億4千5百万円の増加となりました。流動負債は、仕入債務の減少8億3千8百万円、未払法人税等の減少2億4千5百万円等がありましたが、短期借入金の増加4億4千万円、その他の増加15億8千1百万円により、前連結会計年度末に比べ6億1千5百万円増加し、185億3千8百万円となりました。固定負債は、長期借入金の減少8千1百万円がありましたが、繰延税金負債の増加3億1千5百万円等により、前連結会計年度末に比べ1億2千9百万円増加し、29億9千万円となりました。

当連結会計年度末における純資産合計は、配当の支払22億1千万円がありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益40億7千8百万円、その他有価証券評価差額金の増加5億円、非支配株主持分の増加5億7千7百万円等により、前連結会計年度末と比べ31億3千7百万円増加し、608億1千9百万円となりました。

 

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローについては、「4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(経営成績等の状況の概要)(2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりになります。

 

② 資金需要

当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要になります。

運転資金需要につきましては、生産活動に必要な原材料、外注費及び人件費等の製造費用、販売における製品の運送費・包装費、手数料等の販売費のための運転資金が主な内容となります。設備資金需要につきましては、生産性の向上を目的とした設備改善及び既存設備の修繕・更新への投資が主な内容となります。

 

③ 財務政策

当社グループは運転資金、設備資金について、営業キャッシュ・フローで獲得した資金の投入と金融機関からの借入金の調達を行っております。

また、余剰資金の活用について、将来の事業戦略や経営基盤強化のための資金需要に配慮し内部留保を確保しつつ、長期的かつ安定的な利益配分を実施することを基本方針としております。

中期経営方針として掲げている炭素繊維製品の事業拡大、新規事業等に必要な投資を行ってまいります。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について

「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、当社のテクニカルセンターが販売部門と連携し、お客様のニーズを的確に把握し、各事業所の技術部門と協調し研究開発活動を行っております。

 

(1) 新商品開発

IoT、AI、5Gの普及、データセンター市場などデジタル社会を支える半導体関連分野、再生可能エネルギー製品や自動車の電動化をはじめとする環境関連分野に重点を置き、当社が培ってきた固有技術を駆使し、社会に貢献できる新たな製品の開発を進めております。

 

(2) 既存製品の改良

お客様の多岐にわたるニーズにお応えするため、既存製品の高性能化およびコストダウンに繋がる新たな技術の開発を行っております。また、既存製品の新たな用途開拓も継続的に行っております。

 

(3) 研究開発費

当連結会計年度の研究開発費は578百万円であります。