第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、耐火物の製造・販売及び窯炉の設計・築炉工事等のエンジニアリングサービスの提供を通じて、産業の発展と豊かな社会の実現に貢献します。

そのため当社は、創造性と実行力に富む人材を開発し、優れた技術力、高い収益力と強固な財務基盤の確立を追求することにより、

①世界トップクラスの総合耐火物メーカーとしての地位確立

②お客様のニーズに応えるための対応力の強化

③株主、お取引先、地域社会など当社を支える皆様方からの高い信頼の獲得

④従業員にとって魅力に富み働きがいのある職場環境の創造

を目指します。

 

(2)経営戦略及び対処すべき課題等

2024年度の事業環境につきましては、世界的な金融引締め、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東地域をめぐる情勢などにより、世界経済・国内経済共に不安定な状況が継続すると見込まれます。また、当社グループの主要なお客様である国内の鉄鋼業界においては、前年度より自動車向け鉄鋼需要が回復しているものの、全体の粗鋼生産量は前年度比横ばいの見通しであり、高炉メーカーによる生産体制の再編も本格化しています。

当社グループにとりましても国内耐火物需要やエンジニアリング工事の減少、社会情勢に応じた賃金改善による人件費の上昇など事業環境の変化への対応が求められる状況ですが、持続的な成長を成し遂げていくために、国内外での拡販を行うと同時に、コストダウンの徹底、適正な製品価格の設定と販売構成の改善によるスプレッドの確保に努めてまいります。また、調達面では、原材料のコスト低減と調達リスクへの対応として、リサイクル原料を含めた代替原料への置換、調達ソースの多様化等を引き続き推進いたします。さらに、海外においては、オーガニックな成長だけでなく、M&Aや事業提携を積極的に行い、さらなる事業の強化・拡大を推し進めてまいります。

こうした環境下において当社グループが持続的成長を果たしていくため「ビジョン2030」及びそこからのバックキャスティングによる「第6次中期経営計画(2024年度~2026年度)」を2024年5月に公表いたしました。以下の「ビジョン2030 基本方針」を基に、事業成長と気候変動対策などの社会課題解決への取組みを表裏一体の活動として追求してまいります。

 

「ビジョン2030 基本方針」

「事業成長と社会課題解決への取組みを表裏一体として追求」

○グローバルな事業成長

・グローバルマーケットにおいて、トップグループの一員としてのプレゼンスを確保

・グローバル展開を支える国内拠点の整備と技術開発力の強化

○成長分野への進出

・各セクターにおける事業ポートフォリオの拡大

・ROICを重要指標とした事業投資・設備投資の展開

○サステナビリティへの対応(気候変動対策及び人的資本戦略の実行)

・お客様の脱炭素化に貢献する熱ソリューションを提供

・「人材獲得」、「人材定着」、「人材・組織開発」を軸とした経営基盤の確立

 

第6次中期経営計画の初年度にあたる2024年度においては、国内のアルミ業界を始めとする非鉄・工業炉分野への業容拡大、海外では2024年7月からの事業開始を予定しているインドネシア合弁会社(名称:PT. Shinagawa Refratech Perkasa)を拠点としたアセアン地域への事業拡大、さらにグローバルマーケットにおける新たなM&A案件を模索してまいります。また、中長期的な成長が見込まれる半導体製造装置関連への事業展開を加速するため、新たに獲得した半導体製造装置の組立・検査事業と当社グループの既存事業との連携を強化し、半導体製造装置業界に向けた一層の浸透と事業拡大を図ってまいります。

また、これらの成長戦略と共に気候変動への対応として、当社はリサイクル原料を一定量活用した製品を「Green Refractory」とし、製品開発や生産・販売を強化する取組みを開始しました。リサイクル原料の代替活用は、新規の耐火物原料製造時に発生するCO排出量の削減に寄与し、資源の有効活用にも繋がる取組みとなります。現在推進中の耐火物技術、断熱材技術、さらに築炉エンジニアリング技術を融合させたお客様の高温プロセスにおける熱ロス低減へのソリューション提供と併せ、「Green Refractory」の浸透を図り、当社のみならずお客様やサプライチェーンを通じたCO排出量削減に貢献いたします。さらに、人的資本を充実させ、事業成長とサステナビリティへの取組みを表裏一体として推し進めてまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの主たる経営指標といたしましては、売上高経常利益率(ROS)及び自己資本利益率(ROE)を使用しております。これらに加え、収益性と効率性を図る経営指標として第6次中期経営計画の初年度である2024年度より投下資本利益率(ROIC)とEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)を導入いたします。国内外の経済環境が大きく変化する中で、当社グループは事業規模の拡大と経営の効率化を目指しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、全ての事業活動の土台として人権を尊重(人権基本方針(URL:https://www.shinagawa.co.jp/profile/humanrights_policy.html)をご参照ください)し、「産業の発展と豊かな社会の実現」という経営理念の下、「環境」「社会」「ガバナンス」の観点から「利益を追求する過程で社会課題の解決にも貢献できる事業を行う」ことをサステナビリティに関する基本姿勢とし、ステークホルダー(お客様、株主・投資家、お取引先、従業員、地域社会、未来世代)と共に持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。

(サステナビリティに関する方針は「サステナビリティ基本方針」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/sustainability/#MANAGEMENT)をご参照ください。)

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、経営理念に基づき適切な企業運営を行い、全てのステークホルダーの信頼をより確かなものとするため、高いコンプライアンス意識のもと、経営の透明性を確保し、公明正大かつ効率的で健全な経営の実践に向け、コーポレート・ガバナンス体制の強化・充実と効率的運用に努めてまいります。

 当社グループはサステナビリティをめぐる課題を解決すべく、代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は年2回以上開催され、(3)に示す内部統制委員会(コンプライアンス小委員会・リスクマネジメント小委員会)と協調し、当社グループのSDGs及びESG投資等への対応等サステナビリティ経営に関する取組みを議論し、取締役会に報告し、監督を受けています。また事業分野ごとのセクターの導入によりサステナビリティに関する取組みが強化されています。詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

(2)戦略

 これまで当社グループは耐火物・断熱材・セラミックス等の材料技術、工業窯炉の設計・施工技術を行うエンジニアリング事業を統合した高温域における総合技術を基に、お客様の安全で効率的な操業を支え豊かな社会の実現に貢献してきました。今後も事業活動を通じて社会に貢献すると共に、脱炭素や省エネルギーといった現代社会が取り組まなければならない課題に対しても、CO排出量の削減目標を設定し、設備更新や操業手法の見直しなど各種対策を講じると共に、当社グループの持てる技術により優れたソリューションを提供していくことで、サステナブルな社会の構築に寄与してまいります。また、これらの取組みが当社グループの国内及び海外におけるビジネスの強化・拡大につながると考えております。これらを実現するために人的資本の充実は欠かせません。ダイバーシティがイノベーションの原動力であると考え、社内環境整備の方針を含めた「人材開発方針」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/profile/labour_training.html)に基づき人材戦略を定め、経営戦略と密接に連携させることで多様な人材を活かし、個々の能力開発を支援し、持続的な成長と競争力強化を実現します。

 人的資本の充実を始め、サステナビリティに関し当社グループは進むべき方向性として7つのテーマと11のマテリアリティを決定しています。これらに基づき持続的な事業成長を実現すると共に社会課題の解決にも貢献し、産業の発展と豊かな社会の実現を目指します。テーマとマテリアリティの詳細につきましては、「統合報告書2023」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/finance/pdf/integrated_report2023.pdf)をご参照ください。

 

(3)リスク管理

 当社グループが事業活動を通じた持続的成長や企業価値創造を行う中で、活動を阻害する様々なリスクが存在します。これらのリスクを管理するため当社グループのリスクマネジメントを横断的に統括する内部統制委員会を設置しています。同委員会は、コンプライアンス及びリスクマネジメントの推進状況等について統括し、定期的にその結果を取締役会及び監査等委員会に報告しています。また、下部組織としてリスクマネジメント小委員会を設置して、「リスクマネジメント基本方針」に基づき、下図に示すサイクルにより潜在リスクの予防・軽減、及びリスクが顕在化した場合に影響を最小限にとどめる事業継続計画(BCP)の策定・訓練等に取り組んでいます。

 

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(4)指標及び目標

 当社グループは、11のマテリアリティに野心的な指標と目標を設定し、サステナビリティ経営の方向性を明確にし、サステナビリティ委員会による的確な進捗管理を行うことで、サステナビリティ経営を着実に進めていきます。また(1)に記載のとおり取締役会はサステナビリティ委員会の報告により各指標の進捗状況をモニタリングしております。なお、活動状況や結果、経営環境の変化にフレキシブルに対応し、必要に応じて指標や目標の見直しも実施してまいります。

 7つのテーマと11のマテリアリティの内、気候変動・環境負荷低減と人材戦略が特に重要と考えています。気候変動・環境負荷低減については「2030年までにScope1,2のCO排出量を2022年度比50%削減(連結ベース)」、「2050年度にはカーボンニュートラルの実現」を目標としています。人材戦略に関しては「人材獲得」、「人材定着」、「人材・組織開発」を軸とした経営基盤の確立を進め、「2030年までに女性管理職比率を25%に」、「外国籍社員の社員数 2030までに200%以上増(2020年度比)」、「教育研修時間 20時間以上/年(一人当たり)」などを掲げ人的資本の更なる充実に取り組んでまいります。人材戦略に関しては、「2023年度 決算説明資料」(URL:https://ssl4.eir-parts.net/doc/5351/ir_material_for_fiscal_ym/157000/00.pdf)をご参照ください。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.重要なリスク

(1)特定の業界への依存

当社グループは、販売高の多くを鉄鋼業界に依存しており、当該鉄鋼業界の操業度や設備投資の動向により、主力製品である耐火物や築炉工事の販売高が左右され大きな影響を受けます。

また耐火物の使用に関して、鉄鋼トン当たりの耐火物使用原単位は年々低下しており、鉄鋼業界の操業度や設備投資が増加しない限り、耐火物の国内需要は減少する可能性があります。今後はカーボンニュートラルに向けた鉄鋼業界の取組みが加速され、製鉄プロセス変更による耐火物使用原単位が変動することも見込まれます。また中国からの輸入耐火物の増加が続いた場合、耐火物の国内生産量は更に減少することがあり得ます。

そのため当社グループでは、国内の非鉄・セメント業界等への拡販を図ると共に、輸出の拡大と海外での事業展開に注力しております。

(2)原料の入手難及び原料価格の高騰

当社グループが使用している原料の中にはメーカーや産地が限られているものがあり、何らかの理由により入手困難となり生産に支障をきたす恐れがあります。原料需給の逼迫や供給能力の制約により当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあり得ます。

また近年では、安価で良質な中国製耐火物原料が購入原料の過半を占めるようになったことから、これを代替できる供給ソースの開拓を継続して行っております。

2.その他のリスク

(1)為替及び金利

当社グループは、多くの輸入原料を使用しており、また製品の輸出や海外耐火物の仕入販売を行っております。あわせて海外には各国に生産拠点があるため、為替変動により、円換算後の価値が当社グループの事業に影響を与えることがあり得ます。

また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入等の有利子負債によっており、市場金利が上昇した場合には当社グループの業績や財務状況に影響を与えることがあり得ます。

そのため当社グループでは、実需に合わせた為替予約、金利スワップ等のヘッジ手段によって、リスクの低減を図っております。

(2)海外事業活動

当社グループは、アジア、オセアニア、南北アメリカ等の海外に生産拠点、販売拠点を有して事業展開を行っております。海外での事業には、通常予期しない法律や規制の変更、急激な金融情勢の変化などの経済的に不利な要因の発生や政治的混乱などのリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を与えることがあり得ます。

また、様々な国や地域における大規模な地震や風水害などの自然災害や戦争・テロ・暴動、感染症、交通機能障害を含む社会的・政治的混乱などのリスクにさらされています。これらの災害等が発生した場合に備えた初動対応及び重要業務を早期に復旧継続させることを目的として事業継続計画(BCP)を策定し、運用しておりますが、実際に発生した場合には操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用などにより、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)自然災害・感染症の蔓延

当社グループの国内外の事業拠点において、地震・台風・局地的集中豪雨などの自然災害により、当社社員、生産現場及び生産設備、出荷に使用される道路、鉄道、港などのインフラストラクチャーが甚大な被害を受けた場合、その復旧まで生産や出荷が長期間に亘り停止することがあり得ます。

また、新たな感染症等の蔓延により、当社社員の多くが罹患する事態が発生した場合やサプライチェーンの断絶などにより原材料の入手難が発生した場合、当社グループの事業活動が長期間に亘り停止する或いは停滞することがあり得ます。

当社では、事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練などの対策を講じると共に、テレワーク及び交代勤務による事業継続体制に即時移行できるよう、社内規程の整備やIT機器・通信機器の整備・個人配付等の対応を行っています。しかしながらこれらによる被害を完全に排除できるものではなく、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、2022年12月29日に行われたSR do Brasil Ltda.(2023年4月4日付でShinagawa Refratários do Brasil Ltda.に商号変更)及びSaint-Gobain Ceramics & Plastics, Inc.との企業結合について、前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いております。

① 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、インフレ抑制に向けた世界的な金融引締めに伴う影響及びロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東地域をめぐる情勢などの地政学的リスク等により、先行きが不透明な状況が続きました。日本経済につきましては、雇用環境が改善する中で、個人消費や企業の設備投資・生産活動に持ち直しの動きが見られましたが、日米間の金利差拡大を主要因とする円安基調の継続など企業の業況判断の先行きにやや慎重な見方が広がる状況で推移しました。耐火物業界の最大の需要先である鉄鋼業界におきましては、自動車向け鉄鋼需要の回復が見られたものの、輸出向け鉄鋼需要が低調であったことなどの要因により通期の国内粗鋼生産量は前年同期比1.1%減少し、8,683万トンとなりました。

このような状況の中、当社グループは第5次中期経営計画(2021年度~2023年度)では売上高1,150億円、経常利益115億円の目標を掲げましたが、最終年度にあたる2023年度においては売上高1,441億円、経常利益149億円と目標を大幅に上回る業績を達成しました。主要課題である「海外ビジネスの強化・拡大」では、ブラジル耐火物事業及び米国耐摩耗性セラミックス事業の業績が当期より寄与いたしました。これにより当社グループはインド・太平洋圏の主要市場において事業拠点を確保するに至り、人材交流や技術交流などグローバルな地域間交流がさらに活性化しています。また、インドネシアを始めとするアセアン地域への生産・販売体制を強化するため、2024年3月にインドネシアへの新たな合弁会社設立を決定いたしました。

国内では、Allied Mineral Products社(本社:米国オハイオ州)と同社製不定形耐火物の国内アルミ業界向け独占販売契約を2023年3月に締結し、業容拡大に取り組んでいます。2つ目の主要課題である「成長投資」では、西日本地区の不定形耐火物の生産集約拠点として、赤穂工場(兵庫県)への最新鋭の製造ライン建設に着工し、2024年6月の稼働予定となっています。さらに、定形耐火物の主力工場である岡山工場及び東日本地区の需要構造の変化に対応した生産体制最適化の検討を開始しました。

3つ目の主要課題である「新規の事業領域」においては、半導体製造装置の組み立てを主要事業とするコムイノベーション有限会社を2024年3月に連結子会社といたしました。将来的な半導体需要の増大に伴い、半導体製造装置においても需要が拡大することが見込まれており、当社グループでは、半導体製造装置に関連する事業などを先端機材セクター(2024年4月にセラミックスセクターより名称変更)とし、今後の成長の柱の一つとして注力してまいります。

また、気候変動の対応として、当社グループはCO排出量を2030年度50%削減(2022年度比)、2050年度カーボンニュートラルの実現に向け、CO排出量の少ない燃料への転換、太陽光発電の検討、環境配慮型商品の開発・販売など、地球環境への課題に取り組んでおります。

 

当連結会計年度の経営成績は、原料費の高止まりや燃料費・電力費の高騰を踏まえた販売価格の改定、販売構成の改善によるスプレッドの拡大、国内外への拡販活動の進展及び新たに加わった海外事業の業績寄与等により売上高は1,441億75百万円(前年同期比15.4%増)、EBITDAは176億95百万円(前年同期比28.5%増)、営業利益は138億87百万円(前年同期比28.1%増)、経常利益は149億3百万円(前年同期比30.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は土地売却に伴う固定資産売却益の計上等もあり152億80百万円(前年同期比83.9%増)となり、売上高・各段階利益共に2年連続で過去最高業績を更新しました。

なお、当連結会計年度よりEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)を開示しております。

 

次にセグメントの概況をご報告申し上げます。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

加えて、従来、本項目において記載していたセグメントごとの売上高については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含まない外部顧客への売上高の金額を用いておりましたが、当連結会計年度よりセグメント間の内部売上高又は振替高を含んだ金額に変更しております。これに伴い、前年同期のセグメントごとの売上高についても組み替えた数値で比較分析しております。

<耐火物>

耐火物事業におきましては、原料費の高止まりや燃料費・電力費の高騰を踏まえた販売価格の改定、販売構成の改善によるスプレッドの拡大、国内外への拡販活動の進展及び新たに加わったブラジル耐火物事業の業績寄与等により当連結会計年度の売上高は984億69百万円と177億60百万円(22.0%)の増収、セグメント利益は80億62百万円と27億6百万円(50.5%)の増益となりました。

<断熱材>

断熱材事業におきましては、国内の半導体関連製品の販売は減少したものの、国内外のプラント向け耐火断熱れんがの販売増加等により当連結会計年度の売上高は185億83百万円と6億38百万円(3.6%)の増収、セグメント利益は34億43百万円と2億37百万円(7.4%)の増益となりました。

<セラミックス>

セラミックス事業におきましては、新たに加わった米国耐摩耗性セラミックス事業の業績寄与等により当連結会計年度の売上高は35億51百万円と13億88百万円(64.2%)の増収、セグメント利益は前連結会計年度の事業譲受に伴うシステム整備費用などの一時的な支出等により1億38百万円と0百万円(0.5%)の減益となりました。

<エンジニアリング>

エンジニアリング事業におきましては、大型工事案件の減少等により当連結会計年度の売上高は245億51百万円と51百万円(0.2%)の減収、セグメント利益は工事案件の構成差等により17億25百万円と61百万円(3.7%)の増益となりました。

<その他>

その他事業におきましては、当連結会計年度の売上高は9億円と11百万円(1.3%)の増収、セグメント利益は5億38百万円と55百万円(11.4%)の増益となりました。

 

② 財政状態の状況

<資産>

当連結会計年度末の総資産は、「受取手形、売掛金及び契約資産」、「有価証券」、「建設仮勘定」及び「投資有価証券」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ112億35百万円増加し、1,551億37百万円となりました。

<負債>

負債は、「短期借入金」及び「長期借入金」の減少を主たる要因として前連結会計年度末に比べ43億5百万円減少し、681億70百万円となりました。

<純資産>

純資産は、「利益剰余金」及び「為替換算調整勘定」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ155億41百万円増加し、869億67百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ31億7百万円増加し、213億5百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

営業活動の結果得られた資金は117億53百万円(前年同期比14.3%増)となりました。これは主に「税金等調整前当期純利益」226億11百万円、「棚卸資産の減少額」45億69百万円等による増加と、「売上債権の増加額」61億5百万円等による減少の結果であります。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果得られた資金は25億77百万円(前年同期は159億50百万円の使用)となりました。これは主に「有形固定資産の売却による収入」62億97百万円、「投資有価証券の売却による収入」31億2百万円等による増加と、「有形固定資産の取得による支出」54億56百万円等による減少の結果であります。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果使用した資金は114億89百万円(前年同期は68億36百万円の獲得)となりました。これは主に「短期借入金の純減少額」56億97百万円、「配当金の支払額」24億32百万円、「自己株式の取得による支出」22億51百万円等による減少の結果であります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

(a)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

耐火物(百万円)

59,430

113.6

断熱材(百万円)

15,365

102.1

セラミックス(百万円)

3,069

164.1

合計(百万円)

77,865

112.5

(注)金額は製造原価によっております。

 

(b)受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

耐火物

97,972

119.5

24,403

98.5

断熱材

17,313

102.0

583

83.6

セラミックス

3,382

166.7

567

88.8

エンジニアリング

24,057

95.8

2,344

100.0

合計

142,725

113.2

27,899

98.1

(注)金額は販売価格によっております。

 

(c)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

耐火物(百万円)

98,469

122.0

断熱材(百万円)

18,583

103.6

セラミックス(百万円)

3,551

164.2

エンジニアリング(百万円)

24,551

99.8

報告セグメント計(百万円)

145,155

115.7

その他(百万円)

900

101.3

調整額(注)1

△1,880

合計(百万円)

144,175

115.4

(注)1.セグメント間の取引については、調整額として記載しております。

2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

JFEスチール㈱

52,372

41.9

52,624

36.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績につきましては、原料費の高止まりや燃料費・電力費の高騰を踏まえた販売価格の改定が進んだこと等により、「売上高」は前連結会計年度に比べ192億12百万円の増収となりました。

利益に関しては、販売構成の改善等により、前連結会計年度に比べ「営業利益」は30億43百万円、「経常利益」は34億45百万円のそれぞれ増益となりました。また、「経常利益」の増加に加えて、土地売却に伴う固定資産売却益の計上等により、「親会社株主に帰属する当期純利益」は前連結会計年度に比べ69億73百万円の増益となりました。この結果、ROSは前連結会計年度の9.2%から10.3%に、ROEは前連結会計年度の13.0%から20.2%にそれぞれ上昇しました。

財政状態につきましては、「流動資産合計」は「受取手形、売掛金及び契約資産」及び「有価証券」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ58億86百万円増加し、975億66百万円となりました。また、「固定資産合計」は「建設仮勘定」及び「投資有価証券」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ53億49百万円増加し、575億70百万円となりました。これにより、「資産合計」は前連結会計年度末に比べ112億35百万円増加し、1,551億37百万円となりました。

「負債合計」は「短期借入金」及び「長期借入金」の減少を主たる要因として前連結会計年度末に比べ43億5百万円減少し、681億70百万円となりました。

「純資産合計」は「利益剰余金」及び「為替換算調整勘定」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ155億42百万円増加し、869億67百万円となりました。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の47.3%から53.8%に上昇しました。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)

キャッシュ・フローの状況につきましては、主に「税金等調整前当期純利益」及び「棚卸資産の減少額」による増加と、「売上債権の増加額」による減少により「営業活動によるキャッシュ・フロー」は117億53百万円となり、「投資活動によるキャッシュ・フロー」25億77百万円、「財務活動によるキャッシュ・フロー」△114億89百万円を加えた当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」は、213億5百万円と、前連結会計年度末に比べ31億7百万円の増加となりました。

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金の調達については、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金の調達については、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金にリース債務を加えた有利子負債の残高は、280億79百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、213億5百万円となっております。

当連結会計年度末におきまして、前連結会計年度末に比べて短期借入金が56億97百万円減少しておりますが、これは前連結会計年度末におきまして、海外事業の譲受資金の支払いに対応するために実行した短期借入に関して、当連結会計年度において返済を行ったためであります。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)主要な技術援助契約

契約会社

相手会社

契約内容

契約期間

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

Shinagawa Refratários do Brasil Ltda.

(連結子会社、ブラジル)

マッド材の製造技術

2019年9月契約締結

2024年9月まで

製鋼(転炉、電気炉、取鍋他)用耐火れんが製造技術

2020年7月契約締結

2025年7月まで

製鋼(転炉、電気炉、取鍋他)用補修材製造技術

2020年8月契約締結

2025年8月まで

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

ヒックス社

(米国)

スライドゲートバルブ用上下ノズルの製造技術

2017年3月契約締結

2027年2月まで

スライドゲートバルブ用プレートの製造技術

2017年3月契約締結

2027年2月まで

(注)Shinagawa Refratários do Brasil Ltda.は、2023年4月4日付でSR do Brasil Ltda.より商号変更しております。

 

(2)主要な販売契約

契約会社

相手会社

契約内容

契約期間

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

中鋼洛耐科技股份有限公司

(中華人民共和国)

珪石れんが、珪石断熱れんが及びアルミナ仮組品の日本国内における独占販売

2021年6月契約締結

2031年6月まで

 

(3)合弁契約

契約会社

相手会社

契約内容

出資比率

合弁会社名

契約締結日

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

PT. Refratech MandalaPerkasa

(インドネシア)

インドネシア市場における耐火物の製造・販売

当社

51%

PT. Shinagawa Refratech Perkasa

2024年3月25日

PT. Refratech Mandala

Perkasa

49%

(注)当社は、2024年4月1日付でPT. Shinagawa Refratech Perkasaを設立しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動は、当社の技術研究所において、主として耐火物に関する研究開発を行っており、(1)長期的視野に立った基礎研究(2)装置開発を含めた耐火物評価技術の研究(3)顧客のニーズに対応した製品の開発(4)耐火物技術を応用した新製品の開発等を目的として取り組みました。

その結果、当連結会計年度に支出した研究開発費は総額1,548百万円で、その内訳は耐火物事業1,194百万円、断熱材事業353百万円及びセラミックス事業1百万円であります。