第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社は1875年に創業し、2025年10月に150周年を迎えます。当社はこの節目を、先人が築いてきた歴史をこの先100年、150年と繋いでいくためのスタート地点であると考え、未来に向かって成長を続ける企業を目指すべく2025年10月1日より「品川リフラ株式会社」へ社名を変更することとしました。150年の歴史と伝統を引き継ぎつつ、耐火物を意味する「リフラクトリーズ」から、「リフラ」という造語に変更することで、耐火物以外の断熱材、先端機材、エンジニアリング事業等を含む幅広い事業に注力していくことを表現しています。

社名変更に先立ち、2025年6月に当社グループの企業理念を再構築しました。新たな企業理念は、品川リフラクトリーズグループのコアとなる事業ドメインを明確にし、今後の事業展開の指針となるものです。

 

<企業理念>

PURPOSE:セラミックスで「最適」を実現する

セラミックス技術でお客様に最適なソリューションを提供し、世界の産業と社会の発展に貢献します

 

VISION :私たちはグループとして目指す姿を共有し、その実現に努めます

グローバルなソリューション展開によって成長し続ける

従業員が自己の成長と心豊かな生活を楽しめる職場を作る

事業を通じてより良い環境と社会を未来世代に継承する

 

VALUE  :私たちは大切にしたい価値観をグループで共有します

挑戦 失敗を恐れず、勇気を持って挑戦します

迅速 素早く決断し、迅速に取り組みます

柔軟 変化に柔軟に対応し、やり方を見直します

徹底 やると決めたら、徹底して取り組みます

連携 社内外の人や組織と積極的に連携します

 

PURPOSE(パーパス)とはグループとしての「志」を表しています。

VISION(ビジョン)は、PURPOSEを追求する中で、私たちがどのような企業グループになりたいのかを表明しています。

VALUE(バリュー)は、PURPOSEとVISIONを実現するために私たちが大切にしたい心がけです。

この企業理念をもとに、グループ一丸となって革新と挑戦を続け、持続的な成長と企業価値の最大化を目指していきます。

 

(2)経営戦略及び対処すべき課題等

2025年度の事業環境につきましては、米国の通商政策動向や中国経済の停滞、さらには地政学リスクの継続による影響等により、世界経済及び国内経済ともに不安定な状況が続くと見込まれます。また、当社グループの主要なお客様である国内の鉄鋼業界においても、鉄鋼需要の先行きは不透明であり、粗鋼生産量の見通しも困難な状況となっています。

当社グループにおきましては、こうした環境下においても持続的な成長と利益の確保に向けて、以下の施策を進めてまいります。

 

第6次中期経営計画(2024年度~2026年度)の2年目にあたる2025年度においては、昨年度と同様、4つの重点方針に基づき、計画達成に向けた活動をさらに深化していきます。

 

「第6次中期経営計画 重点方針」

○セクター戦略の深化

・ROICを重要指標とした経営の推進

・各セクターにおける未浸透分野への進出

・セクター間の協業による業容拡大

○生産基盤の整備

・定形耐火物の最適生産体制への移行着手

・断熱材及び先端機材セクターの事業拡大に向けた生産基盤の構築

○グローバル展開の加速

・地域間での人材・技術交流による競争力の強化

・新たなM&Aや事業提携による事業拡大の検討

○サステナビリティ経営の推進

・カーボンニュートラルに向けた取組みの強化

・人的資本の充実

 

2025年度においては、厳しい事業環境が継続することが予想されますが、生産プロセスにおけるコストダウンの徹底、グローバルサプライチェーンを通じた使用後製品を含む安価原料の調達等により、利益の拡大を図っていきます。また、国内では、非鉄・工業炉分野でのより一層のシェア拡大を図るために2025年4月に営業・開発部門の組織を再編し、同分野への事業拡大に向けた体制を整えました。海外においては、新たにGouda Refractories Group B.V.が加わったことにより当社グループのグローバルネットワークはさらに強固なものとなりました。そのネットワークを駆使した拡販の促進、2025年5月に買収したReframax Engenharia Ltda.との多面的なシナジー発現に注力していきます。中国では、連続鋳造用機能性耐火物の現地製造・販売体制確立のため、子会社・遼寧品川和豊冶金材料有限公司において新工場建設を進めており、2025年度末に操業を開始する予定です。断熱材セクターでは、中国での半導体熱処理炉のメンテナンス事業参入など海外展開の加速、国内のエネルギー設備関連への強断熱製品の拡販、他セクターとの協業による断熱材事業の強化・拡大を進めます。先端機材セクターでは、需要回復が見込まれる半導体製造装置関連製品の確実な捕捉、新規分野へのビジネス拡大を推進します。

中長期的な成長戦略として、定形耐火物の主力工場である岡山工場及び機能性耐火物の生産拠点である湯本工場(福島県)の需要構造の変化に対応した生産体制最適化を検討し、実行に移していきます。海外では、さらなる事業拡大を目指しグローバルマーケットにおける新たなM&A案件等を模索します。断熱材セクターでは、ITも含めた最新技術の導入により、脱炭素化社会を実現する製品など、未来を見据えた新商品の開発・供給を推進します。先端機材セクターでは、ファインセラミックス製品の需要拡大が見込まれる半導体製造装置分野や航空宇宙・エネルギーなどの新成長分野への業容拡大を目標に掲げ、2024年度に増産と新規分野対応のための新工場建設を決定し、2025年度の稼働を予定しています。さらに、グループの経営資源や人材の統合による経営の効率化を目指し、ファインセラミックス事業を担っていた当社の完全子会社である品川ファインセラミックス株式会社を2025年4月に吸収合併しました。

これらの戦略と並行し、気候変動への対応として、当社グループはお客様のCO2排出量削減に繋がる耐火物技術、断熱材技術、さらに築炉エンジニアリング技術の融合による高温プロセスにおける熱ロス低減へのソリューション提供を強化しています。また、使用後製品を回収し再原料化を図ったリサイクル原料を一定量活用した製品を「Green Refractory」とし、お客様への浸透を進めています。リサイクル原料の活用は資源循環による地球環境の保全に繋がるものであり、さらには調達リスクへの対応にも有効な手段となります。お客様やサプライチェーンを通じた気候変動対策を引き続き推進し、事業成長とサステナビリティへの取組みを表裏一体として追求する経営を推し進めていきます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループの主たる経営指標といたしましては、売上高営業利益率(ROS)及び自己資本利益率(ROE)を使用しています。これらに加え、収益性と効率性を図る経営指標として第6次中期経営計画の初年度である2024年度より投下資本利益率(ROIC)とEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)を導入しています。国内外の経済環境が大きく変化する中で、当社グループは事業規模の拡大と経営の効率化を目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、全ての事業活動の土台として人権を尊重(人権基本方針(URL:https://www.shinagawa.co.jp/profile/humanrights_policy.html)をご参照ください)し、「セラミックスで「最適」を実現する」というPURPOSEのもと、「環境」「社会」「ガバナンス」の観点から「利益を追求する過程で社会課題の解決にも貢献できる事業を行う」ことをサステナビリティに関する基本姿勢とし、ステークホルダー(お客様、株主・投資家、お取引先、従業員、地域社会、未来世代)と共に持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。

(サステナビリティに関する方針は「サステナビリティ基本方針」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/sustainability/#MANAGEMENT)をご参照ください。)

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、経営理念に基づき適切な企業運営を行い、全てのステークホルダーの信頼をより確かなものとするため、高いコンプライアンス意識のもと、経営の透明性を確保し、公明正大かつ効率的で健全な経営の実践に向け、コーポレート・ガバナンス体制の強化・充実と効率的運用に努めてまいります。

 当社グループはサステナビリティをめぐる課題を解決すべく、代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は年2回以上開催され、(3)に示す内部統制委員会(コンプライアンス小委員会・リスクマネジメント小委員会)と協調し、当社グループのSDGs及びESG投資への対応等サステナビリティ経営に関する取組みを議論し、取締役会に報告し、監督を受けています。また事業分野ごとのセクターの導入によりサステナビリティに関する取組みが強化されています。詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

(2)戦略

 これまで当社グループは耐火物・断熱材・セラミックス等の材料技術、工業窯炉の設計・施工技術を行うエンジニアリング事業を統合した高温域における総合技術を基に、お客様の安全で効率的な操業を支え豊かな社会の実現に貢献してきました。今後も事業活動を通じて社会に貢献すると共に、脱炭素や省エネルギーといった現代社会が取り組まなければならない課題に対しても、CO2排出量の削減目標を設定し、設備更新や操業手法の見直しなど各種対策を講じると共に、当社グループの持てる技術により優れたソリューションを提供していくことで、サステナブルな社会の構築に寄与してまいります。また、これらの取組みが当社グループの国内及び海外におけるビジネスの強化・拡大につながると考えております。これらを実現するために人的資本の充実は欠かせません。ダイバーシティがイノベーションの原動力であると考え、社内環境整備の方針を含めた「人材開発方針」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/profile/labour_training.html)に基づき人材戦略を定め、経営戦略と密接に連携させることで多様な人材を活かし、個々の能力開発を支援し、持続的な成長と競争力強化を実現します。

 人的資本の充実を始め、サステナビリティに関し当社グループは進むべき方向性として7つのテーマと11のマテリアリティを決定しています。これらに基づき持続的な事業成長を実現すると共に社会課題の解決にも貢献し、産業の発展と豊かな社会の実現を目指します。テーマとマテリアリティの詳細につきましては、「統合報告書2024」(URL:https://www.shinagawa.co.jp/finance/pdf/integrated_report2024.pdf)をご参照ください。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項を定期的に開催されるサステナビリティ委員会において審議しており、その内容は、当社の取締役会及び経営会議に報告されています。取締役会及び経営会議は、事業計画や年度予算などの検討にあたり、サステナビリティ課題が経営に及ぼすリスク、機会を十分に考慮し、判断を行っています。サステナビリティ委員会は、当社グループのサステナビリティへの取組み状況や想定される事象を踏まえ、短期・中期・長期の時間軸でリスク・機会を検討し、その対応を総合的に評価しています。その結果、ステークホルダーと当社グループにとって重要度が高い事項をマテリアリティとして特定しています。現在、特定したマテリアリティについては、中長期的な目標とそれを実現するための年度目標を設定し、リスク・機会への対応を着実に推進しています。

 同時に、当社グループが事業活動を通じた持続的成長や企業価値創造を行う中で、活動を阻害する様々なリスクを適切に管理するため、リスクマネジメントを横断的に統括する内部統制委員会を設置しています。同委員会は、コンプライアンス及びリスクマネジメントの推進状況等を統括し、定期的に取締役会及び監査等委員会に報告しています。さらに、内部統制委員会の下部組織であるリスクマネジメント小委員会が「リスクマネジメント基本方針」に基づき、下図に示すサイクルで潜在リスクの予防・軽減に取り組んでいます。これには、リスク顕在化時の影響を最小限にとどめる事業継続計画(BCP)の策定や訓練の実施等も含まれ、様々なリスクに対応します。

 

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(4)指標及び目標

 当社グループは、11のマテリアリティに野心的な指標と目標を設定し、サステナビリティ経営の方向性を明確にし、サステナビリティ委員会による的確な進捗管理を行うことで、サステナビリティ経営を着実に進めていきます。また(1)に記載のとおり取締役会はサステナビリティ委員会の報告により各指標の進捗状況をモニタリングしております。なお、活動状況や結果、経営環境の変化にフレキシブルに対応し、必要に応じて指標や目標の見直しも実施してまいります。

 7つのテーマと11のマテリアリティの内、気候変動・環境負荷低減と人材戦略が特に重要と考えています。気候変動・環境負荷低減については「2030年までにScope1,2のCO2排出量を2022年度比50%削減(連結ベース)」、「2050年度にはカーボンニュートラルの実現」を目標としています。人材戦略に関しては「人材獲得」、「人材定着」、「人材・組織開発」を軸とした経営基盤の確立を進め、「2030年までに女性管理職比率25%以上」、「外国籍社員の社員数 2030までに3倍以上(2020年度比)」、「教育研修時間 20時間以上/年(一人当たり)」などを掲げ人的資本の更なる充実に取り組んでまいります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.重要なリスク

(1)特定の業界への依存

当社グループは、販売高の多くを鉄鋼業界に依存しており、当該鉄鋼業界の操業度や設備投資の動向により、主力製品である耐火物や築炉工事の販売高が左右され大きな影響を受けます。

また耐火物の使用に関して、鉄鋼トン当たりの耐火物使用原単位は年々低下しており、鉄鋼業界の操業度や設備投資が増加しない限り、耐火物の国内需要は減少する可能性があります。今後はカーボンニュートラルに向けた鉄鋼業界の取組みが加速され、製鉄プロセス変更による耐火物使用原単位が変動することも見込まれます。また中国からの輸入耐火物の増加が続いた場合、耐火物の国内生産量は更に減少することがあり得ます。

そのため当社グループでは、国内の非鉄・工業炉等への拡販を図ると共に、輸出の拡大と海外での事業展開に注力しております。

(2)原料の入手難及び原料価格の高騰

当社グループが使用している原料の中にはメーカーや産地が限られているものがあり、何らかの理由により入手困難となり生産に支障をきたす恐れがあります。原料需給の逼迫や供給能力の制約により当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあり得ます。

また近年では、安価で良質な中国製耐火物原料が購入原料の過半を占めるようになったことから、これを代替できる供給ソースの開拓を継続して行っております。

2.その他のリスク

(1)為替及び金利

当社グループは、多くの輸入原料を使用しており、また製品の輸出や海外耐火物の仕入販売を行っております。あわせて海外には各国に生産拠点があるため、為替変動により、円換算後の価値が当社グループの事業に影響を与えることがあり得ます。

また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入等の有利子負債によっており、市場金利が上昇した場合には当社グループの業績や財務状況に影響を与えることがあり得ます。

そのため当社グループでは、実需に合わせた為替予約、金利スワップ等のヘッジ手段によって、リスクの低減を図っております。

(2)海外事業活動

当社グループは、アジア、オセアニア、南北アメリカ、ヨーロッパ等の海外に生産拠点、販売拠点を有して事業展開を行っております。海外での事業には、通常予期しない法律や規制の変更、急激な金融情勢の変化などの経済的に不利な要因の発生や政治的混乱などのリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を与えることがあり得ますが、各拠点や外部専門家を通じた情報収集や相談によりリスク低減を図っております。

(3)自然災害・感染症の蔓延

当社グループの国内外の事業拠点において、地震・台風・局地的集中豪雨などの自然災害により、当社社員、生産現場及び生産設備、出荷に使用される道路、鉄道、港などのインフラストラクチャーが甚大な被害を受けた場合、その復旧まで生産や出荷が長期間に亘り停止することがあり得ます。

また、新たな感染症等の蔓延により、当社社員の多くが罹患する事態が発生した場合やサプライチェーンの断絶などにより原材料の入手難が発生した場合、当社グループの事業活動が長期間に亘り停止する或いは停滞することがあり得ます。

当社では、事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練などの対策を講じると共に、テレワーク及び交代勤務による事業継続体制に即時移行できるよう、社内規程の整備やIT機器・通信機器の整備・個人配付等の対応を行っています。しかしながらこれらによる被害を完全に排除できるものではなく、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、中国経済の停滞、中東地域をめぐる情勢などの地政学的リスク等により、不安定な状況が継続しました。日本経済につきましては、為替変動や物価上昇、不安定な海外情勢等により慎重な見方が広がり、一部に足踏みが残るものの、全体としては緩やかな回復基調で推移しました。一方で、耐火物業界の最大の需要先である鉄鋼業界におきましては、国内の製造業向けや建設向けの鉄鋼需要が低調であったこと等の要因により、通期の国内粗鋼生産量は前年同期比4.5%減少し、8,295万トンとなりました。

このような状況の中、当連結会計年度の当社グループのセグメント別の経営成績は以下のとおりとなりました。

<耐火物>

耐火物セグメントにおいては、2024年10月より当社グループに加わったオランダのGouda Refractories Group B.V.の第4四半期業績(2024年10月度~12月度)の寄与がありましたが、国内粗鋼生産量の減少による耐火物販売数量の減少や海外においてもお客様の活動水準が低下した影響等により、当連結会計年度の売上高は958億64百万円(前年同期比2.6%減)となりました。セグメント利益は、販売構成の改善によるスプレッドの拡大、コストダウン等を進めたことにより、主力の国内耐火物事業では増益を確保したものの、国内外の需要環境の悪化による耐火物販売数量の減少や、のれん他償却額の増加もあり、全体では76億94百万円(同4.6%減)となりました。

<断熱材>

断熱材セグメントにおいては、第3四半期より欧州及び中国市場の需要が減速し海外向け自動車関連製品の販売が減少しましたが、国内向け耐火断熱れんがの販売が増加したこと等により、当連結会計年度の売上高は187億79百万円(同1.1%増)となりました。一方、セグメント利益はこれらの販売構成の変化を主因として、32億67百万円(同5.1%減)となりました。

<先端機材>

先端機材セグメントにおいては、ファインセラミックス製品の拡販を進め、新たに加わったコムイノベーション社の業績も寄与したことから、当連結会計年度の売上高は43億40百万円(同22.2%増)、セグメント利益は1億70百万円(同23.3%増)となりました。

<エンジニアリング>

エンジニアリングセグメントにおいては、人件費の上昇に伴う工事契約単価の改定及び各所工事案件の増加により、当連結会計年度の売上高は257億30百万円(同4.8%増)、セグメント利益は後述のブラジルのエンジニアリング企業Reframax Engenharia Ltda.の買収に伴う関連費用の計上等により、16億14百万円(同6.4%減)となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度の当社グループの経営成績は売上高1,440億72百万円(前年同期比0.1%減)、各段階利益につきましては、EBITDA179億53百万円(同1.5%増)、営業利益132億78百万円(同4.4%減)、経常利益136億55百万円(同8.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に対し当連結会計年度は大きな固定資産売却益がないことから97億78百万円(同36.0%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

<資産>

当連結会計年度末の総資産は、「現金及び預金」、「機械装置及び運搬具(純額)」、「リース資産(純額)」、「のれん」及び「無形固定資産のその他」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ400億77百万円増加し、1,952億14百万円となりました。

<負債>

負債は、「短期借入金」及び「長期借入金」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ332億16百万円増加し、1,013億86百万円となりました。

<純資産>

純資産は、「利益剰余金」及び「非支配株主持分」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ68億61百万円増加し、938億28百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ53億23百万円増加し、266億29百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

営業活動の結果得られた資金は131億4百万円(前年同期比11.5%増)となりました。これは主に「税金等調整前当期純利益」148億40百万円、「減価償却費」42億46百万円、「売上債権の減少額」37億56百万円等による増加と、「法人税等の支払額」78億60百万円等による減少の結果であります。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

投資活動の結果使用した資金は298億34百万円(前年同期は25億77百万円の獲得)となりました。これは主に「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」243億31百万円、「有形固定資産の取得による支出」57億93百万円等による減少の結果であります。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

財務活動の結果得られた資金は219億95百万円(前年同期は114億89百万円の使用)となりました。これは主に「長期借入れによる収入」273億21百万円等による増加、「長期借入金の返済による支出」37億50百万円、「配当金の支払額」36億92百万円等による減少の結果であります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

(a)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

耐火物(百万円)

57,754

97.2

断熱材(百万円)

15,553

101.2

先端機材(百万円)

3,350

109.2

合計(百万円)

76,658

98.4

(注)金額は製造原価によっております。

 

(b)受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

耐火物

95,523

97.5

32,469

133.1

断熱材

17,578

101.5

487

83.6

先端機材

4,080

120.6

430

75.8

エンジニアリング

26,826

111.5

3,660

156.1

合計

144,009

100.9

37,048

132.8

(注)金額は販売価格によっております。

 

(c)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

耐火物(百万円)

95,864

97.4

断熱材(百万円)

18,779

101.1

先端機材(百万円)

4,340

122.2

エンジニアリング(百万円)

25,730

104.8

報告セグメント計(百万円)

144,714

99.7

その他(百万円)

904

100.4

調整額(注)1

△1,547

82.3

合計(百万円)

144,072

99.9

(注)1.セグメント間の取引については、調整額として記載しております。

2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

JFEスチール㈱

52,624

36.5

49,988

34.7

㈱神戸製鋼所

13,594

9.4

14,623

10.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績につきましては、国内外の需要環境の悪化による耐火物販売数量の減少等により、「売上高」は前連結会計年度に比べ1億3百万円の減収となりました。

利益に関しては、前述の要因や、のれん他償却額の増加もあり、前連結会計年度に比べ「営業利益」は6億9百万円、「経常利益」は12億48百万円のそれぞれ減益となりました。また、「経常利益」の減少に加えて、大きな固定資産売却益がないことから「親会社株主に帰属する当期純利益」は前連結会計年度に比べ55億2百万円の減益となりました。この結果、ROSは前連結会計年度の10.3%から9.5%に、ROEは前連結会計年度の20.2%から11.3%にそれぞれ低下しました。

財政状態につきましては、「流動資産合計」は「現金及び預金」及び「有価証券」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ93億98百万円増加し、1,069億64百万円となりました。また、「固定資産合計」は「機械装置及び運搬具(純額)」、「リース資産(純額)」、「のれん」及び「無形固定資産のその他」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ306億79百万円増加し、882億49百万円となりました。これにより、「資産合計」は前連結会計年度末に比べ400億77百万円増加し、1,952億14百万円となりました。

「負債合計」は「短期借入金」及び「長期借入金」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ332億16百万円増加し、1,013億86百万円となりました。

「純資産合計」は「利益剰余金」及び「非支配株主持分」の増加を主たる要因として前連結会計年度末に比べ68億61百万円増加し、938億28百万円となりました。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の53.8%から45.6%に低下しました。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)

キャッシュ・フローの状況につきましては、主に「税金等調整前当期純利益」、「減価償却費」、「売掛債権の減少額」による増加と、「法人税等の支払額」による減少により、「営業活動によるキャッシュ・フロー」は131億4百万円となり、主に「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出」による「投資活動によるキャッシュ・フロー」△298億34百万円と、主に「長期借入れによる収入」による「財務活動によるキャッシュ・フロー」219億95百万円を加えた当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」は、266億29百万円と、前連結会計年度末に比べ53億23百万円の増加となりました。

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、子会社株式の取得による支出及び設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金の調達については、自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資資金や長期運転資金の調達については、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金にリース債務を加えた有利子負債の残高は、619億17百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、266億29百万円となっております。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この連結財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(1)主要な技術援助契約

契約会社

相手会社

契約内容

契約期間

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

Shinagawa Refratários do Brasil Ltda.

(連結子会社、ブラジル)

マッド材の製造技術

2019年9月契約締結

2029年9月まで

製鋼(転炉、電気炉、取鍋他)用耐火れんが製造技術

2020年7月契約締結

2025年7月まで

製鋼(転炉、電気炉、取鍋他)用補修材製造技術

2020年8月契約締結

2025年8月まで

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

J.W.Hicks,Inc

(米国)

スライドゲートバルブ用上下ノズルの製造技術

2017年3月契約締結

2027年2月まで

スライドゲートバルブ用プレートの製造技術

2017年3月契約締結

2027年2月まで

 

(2)主要な販売契約

契約会社

相手会社

契約内容

契約期間

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

中鋼洛耐科技股份有限公司

(中華人民共和国)

珪石れんが、珪石断熱れんが及びアルミナ仮組品の日本国内における独占販売

2021年6月契約締結

2031年6月まで

 

(3)シンジケートローン契約

契約会社

相手方の属性

契約締結日

及び弁済期限

債務の期末残高

財務上の特約の内容

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

信託銀行他

2021年9月契約締結

2026年9月弁済期限

2,000百万円

①各連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される株主資本合計の金額を、直前の連結会計年度の末日における連結貸借対照表に記載される株主資本合計の金額の75%以上に維持すること。

②各連結会計年度の末日における連結損益計算書に記載される経常損益を、2期連続で損失としないこと。

品川リフラクトリーズ㈱

(当社)

信託銀行他

2025年3月契約締結

2032年3月弁済期限

27,000百万円

同上

 

(4)当社は、2024年10月24日開催の取締役会において、Gouda Refractories Group B.V.の全株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結し、全株式を取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

(5)当社は、2025年1月22日開催の取締役会において、当社の完全子会社である品川ファインセラミックス株式会社を吸収合併することを決議し、同日付で合併契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

(6)当社は、2025年3月19日開催の取締役会において、新たに子会社としてShinagawa Engineering Brazil Holding Ltda.を設立し、同社がReframax Engenharia Ltda.の持分の60%を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で取得契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動は、当社の技術研究所において、主として耐火物に関する研究開発を行っており、(1)長期的視野に立った基礎研究(2)装置開発を含めた耐火物評価技術の研究(3)顧客のニーズに対応した製品の開発(4)耐火物技術を応用した新製品の開発等を目的として取り組みました。

その結果、当連結会計年度に支出した研究開発費は総額1,589百万円で、その内訳は耐火物セグメント1,222百万円、断熱材セグメント365百万円及び先端機材セグメント1百万円であります。