当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来一貫してユーザーニーズにお応えしながら技術革新と製品開発に取り組み、当社独自の「織る、塗る、形づくる」技術を構築し、企業価値の向上を図ってまいりました。近年における市場のグローバル化及びニーズの多様化の急速な進展に伴い、更なる技術の差異化を図るとともに品質と生産性をより一層向上させ、企業価値を創造してまいります。
(1)会社経営の基本方針
当社グループは「創造 Create」「革新 Innovate」「挑戦 Challenge」を基本とし、
Ⅰ.新たな価値を創造し、顧客満足度を高める。
Ⅱ.顧客ニーズを掘り起こし、独創的な技術で新事業を創出する。
Ⅲ.品質と生産性を向上させ、企業体質を強化する。
Ⅳ.社会・環境課題の解決に貢献し、持続的な成長を実現する。
を経営方針としております。
この経営方針の下、顧客の皆さまから寄せられた期待値を少しでも上回り、皆さまに「驚きと喜び」を粘り強く提供し続けることを通じて、社会の発展に貢献してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは人材を活かし、環境や社会の課題の改善に取り組み、事業と財務の両面から企業価値を高めることを目指しています。
事業戦略では、独自技術を用いた差異化製品の開発によって新たな価値を創出し、既存事業領域の深掘りと新規事業領域の拡大を進めて収益力の強化を図り、ROIC8%以上、ROE10%以上を達成することを目指しています。各事業セグメントでは、以下の事業戦略を実行します。
・電子材料においては、独自の樹脂配合と塗工技術を駆使し、高機能材料を開発することにより成長を目指します。具体的には、半導体/データセンター、モバイル通信端末、次世代コンピューティング及び次世代モビリティ分野を中心に新製品開発と事業拡大を進めます。
・産業用構造材料及び電気絶縁材料においては、差異化製品投入によりモビリティ、エネルギー領域の事業化を加速していきます。具体的には、水処理プラント、燃料電池、航空機内装材、次世代電池、水素エネルギー事業分野並びに環境配慮型製品など個性あふれる製品を開発し、更なる成長を目指します。
・ディスプレイ材料においては、新製品の開発を通じてデジタル社会のさらなる発展に貢献します。具体的には、産業インフラ用途、医療機器及び次世代コンピューティング分野において新製品の拡販を図ります。
財務戦略では、将来キャッシュフローを生み出す事業への成長投資を行うとともに積極的な株主還元を行い、資本構成の最適化を探究しつつ、資本効率を向上させていきます。
また、社会・環境問題に対して積極的に取り組むことが、企業活動に必須の要件であると認識し、①脱炭素社会の実現に向けて貢献(2030年までにカーボンニュートラルを達成、省エネルギー・省資源の推進、再生可能エネルギーへの代替、環境負荷低減材料の提供)、②多様な人材の育成と働きがいの向上(個人の自律性と組織の一体感向上、次世代を担う人材の育成、全ての社員が活き活きと働ける会社)、③循環型経済の推進(排出物の削減、リサイクルの推進、持続可能なサプライチェーンの構築、化学物質の安全確保)、④ガバナンスの充実(高い倫理観のある組織、リスクマネジメントの強化)の4つを重要課題(マテリアリティ)と特定しました。
業務執行取締役を委員長とするESG委員会において、この重要課題に取り組むとともに、目指す姿を明確にし目標を設定しています。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、上述の経営戦略をより早期かつ確実に達成するため、今後対処すべき課題として次のことを推進します。
・当社独自の管理技術、固有技術を磨き、品質・コストの競争力強化を進めます。
・製造・販売・技術各部門の連携強化を推進し、効率的に事業を運営します。
・グループ会社との協働を強化し、新用途・分野の開拓を積極的に進めます。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ROICを目標とする経営指標としております。2024年5月に中期経営計画を見直しており、2025年3月期でのROIC6%以上を目標としております。なお、2025年3月期の実績は6.2%となりました。
また、2025年5月に策定した中期経営計画では、2030年3月期でのROIC8%以上を目標としております。
(5)気候変動への取組み
近年の異常気象の増加や甚大化など、気候変動に起因する影響は地球規模で深刻化しております。当社グループは、化学品などを原料として製品を製造するメーカーとして、直面する気候変動の問題を重要な経営課題の一つと認識しております。
環境保全活動については、環境方針に則り、電気・ガス使用量、有害化学物質、産業廃棄物の削減などを進め、環境保全管理委員会で審議し、継続的に改善を図っています。重要事項については取締役会に報告しています。環境問題の解決は事業リスクを低減するだけではなく、社会の価値創造にもつながるという理念の下、とりわけ、気候変動については喫緊の課題と捉え、2021年6月に自社の事業活動を通じて発生する温室効果ガス(Scope1、Scope2)の排出量を2030年度に実質ゼロにするカーボンニュートラルの目標を策定し、「カーボンニュートラルへの取り組み」として、その進捗状況を当社ウェブサイトで公表しています。また、当社は2022年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、TCFD提言の枠組みに基づく具体的な活動内容を当社ウェブサイトで開示しています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は経営方針に「社会・環境課題の解決に貢献し、持続的な成長を実現する」と掲げ、社会・環境問題に対して積極的に取り組むことが、企業活動に必須の要件であると認識し、①脱炭素社会の実現に向けて貢献、②多様な人材の育成と働きがいの向上、③循環型経済の推進、④ガバナンスの充実 の4つを重要課題(マテリアリティ)と特定しました。業務執行取締役を委員長とするESG委員会において、この重要課題に取り組むとともに、目指す姿を明確にし目標・KGIを設定しています。
|
マテリアリティ |
KGI(目指す姿) |
|
脱炭素社会の実現に向けて貢献 |
2030年までにカーボンニュートラルを達成、省エネルギー・省資源の推進、再生可能エネルギーへの代替、環境負荷低減材料の提供 |
|
多様な人材の育成と働きがいの向上 |
個人の自律性と組織の一体感向上、次世代を担う人材の育成、 全ての社員が活き活きと働ける会社 |
|
循環型経済の推進 |
排出物の削減、リサイクルの推進、持続可能なサプライチェーンの構築、化学物質の安全確保 |
|
ガバナンスの充実 |
高い倫理観のある組織、リスクマネジメントの強化 |
(1)ガバナンス
気候変動問題に対する取り組みを主導するため、2021年12月にESG委員会を設置しました。この委員長には取締役専務執行役員が、構成員には各執行役員、各部門の部長が就き、組織的活動を展開しています。2023年4月より、国内の関連会社もESG活動に参加しています。ESG委員会では、サステナビリティを意識した経営の啓発・推進のほか、気候変動への対応、脱炭素社会の実現、人権の尊重、労働環境への配慮、取引先との公正・適正な取引などのテーマに関し、年4回審議する体制をとっています。重要な審議事項並びに活動状況などについては、執行役員会、経営会議および取締役会に定期的に報告され、取締役会において最終的な判断が下されます。環境保全活動に関しては、ESG委員会と連携する環境保全管理委員会が、カーボンニュートラル・プロジェクトや排出分科会の進捗状況を監督し、継続的な改善を図っています。
また、取締役会においては、定期的な報告について、公表された中期経営計画の進捗状況の確認と課題、対策の実施などを議論し、その結果は、経営戦略やリスク管理・評価に反映させる体制としています。取締役会は、気候変動関連の議案(目標設定や取組みの進捗状況など)について監督の役割を担っています。また2024年5月には「有沢製作所グループ人権方針」を制定し、当社ホームページで開示いたしました。
(2)戦略
当社は、中期経営計画において重要課題(マテリアリティ)を掲げました。これを達成するため、ESG委員会並びに環境保全管理委員会及び下部組織として各分科会、プロジェクトチームを整備し、各部門とともに活動目標を年度ごとに策定し、取組みを推進しています。
また、気候関連リスク及び機会に関する戦略は、シナリオ分析に際して、ESG委員会で気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出しと、それらが及ぼす具体的な財務的影響額の評価を行っています。
実施したシナリオ分析は、当社における製品やサービスの調達、開発、製造、販売までのサプライチェーン全体を対象とし、1.5℃と4℃の2つのシナリオを用いて2030年時点における影響を分析しました。
①気候変動によるリスクと機会
地球温暖化による気候変動は、社会に及ぼす影響が極めて大きいため、気温上昇を抑制することを目指す動きに貢献していくことが重要であると考えています。
気候変動は、台風・豪雨などの水害による当社やサプライチェーンへの被害、規制強化に伴う炭素税導入・クレジット購入・設備更新・再生エネルギー購入などの費用の増加のリスクが考えられます。
一方、顧客の環境意識の向上に対応した製品の提供は、当社のビジネスの機会であると捉えています。具体的には、車載用燃料電池、海水淡水化処理、航空機(軽量化)、脱炭素次世代エネルギー開発事業へ材料を供給することで気候変動に対応するとともに、自動運転支援、医療機器などへの材料供給により生活環境の改善にも貢献しています。
(リスク)
(機会)
②人的資本経営に関する取組みについて
人材は当社グループにとって価値創造の源泉であり、持続的な成長・発展を実現する原動力です。求める人材像を「自ら考えCIC(創造・革新・挑戦)を実践する人材」と定め、ESG委員会傘下の人的資本分科会にて環境整備と人材育成を進めています。さらに中期経営計画に「人材を活かし、環境や社会の課題に取り組み、事業と財務の両面から企業価値を高めることを目指す」と掲げ、経営と事業をリードする人材の育成、多様な人材の獲得と育成、働きやすく、働きがいのある職場づくりに取り組みます。その結果が企業価値の向上につながり、得られた成果を社員一人ひとりに還元することで、さらなる価値創造を生むという好循環を創り上げたいと考えています。また、人材の多様性を尊重し、採用や昇格を決める際、年齢、性別、経歴、国籍にとらわれることなく、能力や成果に応じた評価・処遇を行っています。その結果、当社グループ管理職の67.7%(有沢製作所単体では39.7%)は中途入社社員が占めています。また、仕事と生活の両立支援も進めており、男性と女性の平均勤続年数に差はありません。
(3)リスク管理
当社は、気候変動に関するリスクを重要な経営課題と認識しています。そのため、想定されるリスクについては、ESG委員会において識別・評価し、執行役員会、経営会議、さらには取締役会へ報告され、重要な課題を確定しています。それらに適切な対策を講じ、リスク管理体制の向上を図っています。
なお、気候変動リスクの評価は、事業における気候変動要因を特定した上で、1.5℃シナリオおよび4℃シナリオに基づく将来の規制、社会、技術、気候条件などの変化を前提としています。
また、環境問題に伴う外部環境の変化への対応、さらに持続可能な開発の国際目標であるSDGsへの貢献についてESG委員会で検討してきました。その結果、中期経営計画で取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として、「脱炭素社会の実現に向けて貢献」、「多様な人材の育成と働きがいの向上」、「循環型経済の推進」、「ガバナンスの充実」の4項目を特定し、これらの課題の解決に向け、全社一丸となって取り組んでいます。
マテリアリティの特定に際しては、ESG委員会において、持続可能な社会に対する重要度と当社事業に対する重要度の観点から4項目に絞り込みました。
(4)指標及び目標
①気候変動
当社は、エネルギー使用効率の改善に向けて実施してきた様々な取組みを拡大展開するとともに、再生可能エネルギーの利用とカーボンニュートラルガスの購入、並びに低炭素製品の開発を推進することにより、2030年度にCO2の直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)についてのカーボンニュートラルの達成を目指します。
(カーボンニュートラル化の計画)
②人的資本
女性管理職比率は、2022年3月末時点で12.5%でしたが、候補者の採用・選抜・養成を進め、2025年3月末には20.1%となりました。なお、2021年6月に初の女性取締役が就任し、2023年6月にはさらに1名が加わり、合計2名となっています。また、2022年6月には内部昇格として、初の女性執行役員を登用し、2024年6月と2025年6月にはさらに各1名を加え、合計3名としました。今後も、社員の個性を尊重した能力開発や能力発揮の機会を提供するなど、さまざまな施策に取り組み、多様な人材の採用と登用を推進していきます。
(注)1.上記指標は、海外子会社を含めた指標であり、海外子会社の指標の定義や計算方法は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)と同様に扱っております。
2.指標の算出にあたっては、海外子会社の金額を期中平均レートにより邦貨に換算し算出しております。
3.育児休業には法令で定められた育児休業のほか、海外子会社における出産育児を目的とした休業制度等を含めております。またProtec Arisawa America, Inc.については、育児休業制度が整備されていないため、男性労働者の育児休業取得率の計算には含めておりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 製品需要の変動について
当社グループが製造・販売する製品の主なユーザーは、情報機器メーカー、電子部品メーカー、産業用電子機器メーカー等であり、これら電子機器の需要変動は当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(2) 特定の製品への依存について
当社グループの売上高は、電子材料分野への依存度が高くなっております。当分野の売上が減少した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(3) 新規事業の展開について
当社グループは、種々の新規事業の立上げを図っておりますが、その進捗状況によっては、経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(4) 原材料の調達について
当社グループが購入する原材料において、原油や銅価の高騰により購入価格が著しく高騰した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(5) 災害による影響について
当社グループの生産拠点は、その多くが新潟県上越市に集中しており、地震その他の災害が発生した場合には、生産活動の中断等により当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(6) 環境に関する規制について
当社グループの事業は、様々な環境保全やその他の法的規制のもとにあります。これらの環境保全やその他の規制の遵守に伴い甚大な債務や義務が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
(7) 情報セキュリティに関するリスクについて
当社グループは、事業遂行上の技術情報や個人情報等の機密情報を保有するとともに、生産・販売・会計等の事業活動の多くは各種情報システムを利用しています。災害やサイバー攻撃、不正アクセス等により、これらの情報の漏洩や情報システムに予期せぬ障害が発生し、業務が停止した場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 新型感染症に関するリスクについて
重大な新型感染症が発生・感染拡大した場合には、サプライチェーンや生産活動の混乱、国内経済や市場への悪影響などにより、当社グループの経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。
当社グループはステークホルダーの皆さまの安全・健康を最優先とし、状況に応じた感染防止策を徹底するとともに、テレビ会議システムの有効活用、テレワーク(在宅勤務)の実施、サテライトオフィスの利用等を実施しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の増加により、緩やかな回復基調で推移しました。一方、海外におきましては、中国における不動産不況に伴う景気の低迷、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学的リスクの長期化、米国の政策動向による影響懸念など、先行きは不透明な状態が続きました。
このような状況のもと当社グループの当連結会計年度の業績は、主力事業分野である電子材料において、スマートフォン、及び半導体の需要が回復してきたことに加え、ディスプレイ材料が好調に推移したことから、売上高は498億15百万円(前年同期比18.3%増)となりました。利益面につきましては、営業利益は48億93百万円(前年同期比229.8%増)、経常利益は52億67百万円(前年同期比253.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は39億69百万円(前年同期比142.1%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
電子材料
電子材料では、フレキシブルプリント配線板用材料(受注高214億34百万円28.8%増、生産高28.9%増、前連結会計年度比較、提出会社単体ベース)、及びプリント配線板用ガラスクロスの売上高が増加したこと等により、売上高は314億77百万円(前年同期比25.4%増)、セグメント利益は売上高が増加したことに加え、操業度が向上したことなどから、28億54百万円(前年同期比997.1%増)となりました。
産業用構造材料
産業用構造材料では、航空機用ハニカムパネルが軟調に推移したものの、水処理用FRP製圧力容器の売上高が増加したこと等により、売上高は106億16百万円(前年同期比0.1%増)、セグメント利益は品種構成の変化により、17億61百万円(前年同期比19.3%増)となりました。
電気絶縁材料
電気絶縁材料では、インフラ関連向けの売上高が減少したこと等により、売上高は24億56百万円(前年同期比3.0%減)、セグメント利益は1億70百万円(前年同期比45.9%減)となりました。
ディスプレイ材料
ディスプレイ材料では、3D関連材料、及び偏光利用部材の売上高が増加したこと等により、売上高は49億13百万円(前年同期比39.0%増)、セグメント利益は17億29百万円(前年同期比83.9%増)となりました。
その他(その他の事業分野)
その他では、売上高は3億51百万円(前年同期比3.8%増)、セグメント利益は2億9百万円(前年同期比5.4%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ13億28百万円減少し、163億71百万円(前年同期比7.5%減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は45億48百万円(前年同期比41.3%増)となりました。主な資金増加の要因は、税金等調整前当期純利益52億63百万円、減価償却費21億22百万円等であり、主な資金減少の要因は、棚卸資産の増加29億20百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は20億76百万円(前年同期比95.7%増)となりました。主な資金減少の要因は、有形固定資産の取得による支出22億10百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は40億86百万円(前年同期比19.7%増)となりました。これは主に、配当金の支払27億23百万円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社 以下同様)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
電子材料(百万円) |
31,477 |
25.4 |
|
産業用構造材料(百万円) |
10,616 |
0.1 |
|
電気絶縁材料(百万円) |
2,456 |
△3.0 |
|
ディスプレイ材料(百万円) |
4,913 |
39.0 |
|
報告セグメント計(百万円) |
49,463 |
18.4 |
|
その他(百万円) |
351 |
3.8 |
|
合計(百万円) |
49,815 |
18.3 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、販売実績の割合が100分の10以上となる相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、主力の電子材料関連を中心に生産能力の向上及び拡大に向けた設備投資を行い、既存事業の継続的成長に取り組んでまいりました。同時に、各セグメントで市場の変化を先取りした新製品の開発を行い、市場拡大と当社グループの成長を促す挑戦を続けております。当社グループの主力製品である電子材料は、多機能携帯端末向けに子会社の新揚科技股份有限公司を含め受注を拡大し、グループ全体の支えとなりました。産業用構造材料、電気絶縁材料及びディスプレイ材料につきましては、さらなる成長を期待しており、継続して新規開発と収益力強化を行う考えであります。
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の分析は、次のとおりであります。
a.財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は717億36百万円(前連結会計年度末は688億16百万円)となり、29億19百万円(4.2%)の増加となりました。
主な要因は、商品及び製品が15億30百万円、原材料及び貯蔵品が13億88百万円、有形固定資産が8億2百万円それぞれ増加し、現金及び預金が13億2百万円減少したこと等によるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は231億77百万円(前連結会計年度末は225億70百万円)となり、6億6百万円(2.7%)の増加となりました。
主な要因は、支払手形及び買掛金が6億90百万円、長期借入金が17億6百万円それぞれ増加し、1年内返済予定の長期借入金が21億59百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産合計は485億59百万円(前連結会計年度末は462億46百万円)となり、23億12百万円(5.0%)の増加となりました。
主な要因は、利益剰余金が12億41百万円、為替換算調整勘定が8億92百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、498億15百万円(前連結会計年度は421億14百万円)と77億1百万円18.3%の増収となりました。また、売上原価につきましては、381億94百万円(前連結会計年度は347億59百万円)と34億34百万円の増加となりましたが、徹底したコスト削減に努め、売上原価率は76.7%と5.8ポイントの改善となりました。
これにより、売上総利益は116億21百万円(前連結会計年度は73億54百万円)となり、42億66百万円の増益となりました。売上総利益率は23.3%と5.8ポイント増加しております。
(営業損益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、67億28百万円(前連結会計年度は58億71百万円)と8億57百万円の増加となりましたが、売上原価と同様に徹底したコスト削減に努め、販売費及び一般管理費率は13.5%と0.4ポイントの改善となりました。
これにより、営業利益は48億93百万円(前連結会計年度は14億83百万円)となり、34億9百万円の増加となりました。営業利益率は9.8%と6.3ポイント増加しております。
(経常損益)
当連結会計年度における営業外損益は3億74百万円の利益(前連結会計年度は4百万円の利益)と3億69百万円の増加となりました。主な増加要因は、為替差益が1億93百万円増加したこと等によるものです。
これにより、経常利益は52億67百万円(前連結会計年度は14億88百万円)となり、37億79百万円の増加となりました。経常利益率は10.6%と7.1ポイント増加しております。
(税金等調整前当期純損益)
当連結会計年度における特別損益は4百万円の損失(前連結会計年度は5億83百万円の利益)と5億88百万円の減少となりました。主な減少要因は、投資有価証券売却益が6億76百万円減少したこと等によるものです。
これにより、税金等調整前当期純利益は52億63百万円(前連結会計年度は20億72百万円)となり、31億90百万円の増加となりました。税金等調整前当期純利益率は10.6%と5.7ポイント増加しております。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における法人税等は12億93百万円(前連結会計年度は4億32百万円)となり、8億60百万円の増加となりました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は39億69百万円(前連結会計年度は16億39百万円)となり、23億29百万円の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益率は8.0%と4.1ポイント増加しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(キャッシュ・フローの指標)
|
|
前連結会計年度 (2024年3月期) |
当連結会計年度 (2025年3月期) |
|
自己資本比率(%) |
67.2 |
67.7 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
54.8 |
64.1 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
3.4 |
2.2 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
15.6 |
23.2 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
※キャッシュ・フロー及び利払いは連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業キャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
a.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金を基本としておりますが、不足時の一時的な運転資金を効率的に調達するため、主要取引銀行と当座貸越契約を締結しております。設備投資等の資本形成に関わる資金については、調達コストやリスク分散などを勘案しながら自己資金及び金融機関からの長期借入による調達を基本としております。また、資金運用の効率化と金融リスクの低減及び支払利息の削減を図るため、当社グループにおいて、グループファイナンスを進めております。
b.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計上の見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額を計上しております。顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、税効果会計の適用にあたり繰延税金資産については、その回収可能性を合理的に見積り、評価性引当額を控除して計上しております。繰延税金資産の回収可能性は有税項目の将来の無税処理の可能性や将来の収益力に基づく将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。
c.有価証券及び投資有価証券の減損
当社グループは、有価証券及び投資有価証券を保有しており、評価方法は市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。保有する有価証券につき、市場価格のあるものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のないものは投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。
当社グループでは有価証券及び投資有価証券について必要な減損処理をこれまでに行ってきておりますが、この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
d.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、独立してキャッシュ・フローを生み出す事業単位を基準にして固定資産をグルーピングしております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、その差額を減損損失として認識しております。将来、新たに資産グループの回収可能額が低下した場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
この適用により、当連結会計年度においては提出会社の製造設備について減損損失9,209千円を特別損失として計上しました。
e.棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産について正味売却価額が簿価を下回った場合に簿価の切下げを行っております。また、一定期間以上滞留が認められる棚卸資産については、販売の実現可能性が低下しつつあると仮定し、期間の経過に応じ規則的に簿価を切り下げる方法で早期に償却を行っております。さらに、販売が困難と認められる場合などには、個別に簿価の切下げも実施しております。
正味売却価額は、販売実績等を基礎として見積っているため、将来の市場環境の変化や販売見込みの相違によっては、棚卸資産の評価損に重要な影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの主な研究開発は、提出会社と連結子会社の新揚科技股份有限公司、㈱サトーセン、Protec Arisawa Europe, S.A.、Protec Arisawa America, Inc.、カラーリンク・ジャパン㈱が行い、他の連結子会社へ技術展開を図っております。
研究開発は、技術開発企業として、多様化、高度化するユーザーニーズに応えるべく、フレキシブルな組織体制を基本とし、電子材料分野、産業用構造材料分野、電気絶縁材料分野及びディスプレイ材料分野を中心に、新製品の立上げ、次世代製品の育成及び将来を見据えた技術の振興と基盤技術の拡大を目指し新技術、新製品の研究開発に邁進しております。
電子材料としては、FPC(フレキシブルプリント配線板)用材料、プリント配線板用ガラスクロス、特殊プリント配線板用プリプレグ等が、産業用構造材料としては、車載用材料、水処理関連材料、航空機内装用材料が、電気絶縁材料としては、電気絶縁用プリプレグ、各種成形品等が、ディスプレイ材料としては、3Dフィルター、光学成形品等があげられます。
当連結会計年度末の研究開発活動に係る人員は177名であり、当連結会計年度の研究開発費は
当連結会計年度における各セグメント別の研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
(1)電子材料分野
・モバイル用FPC材料
当社は、環境対応としてカーボンニュートラルや省エネルギー化の活動を精力的に推し進めており、当社グループ内において大きな成果が出ています。更に脱炭素社会の実現のために、当社は顧客の加工エネルギーを削減できる製品開発を実施しています。近年、顧客でのプレス加工において、エネルギー消費が大きい長時間加圧加温する多段プレス方式から、シート毎に短時間で加圧しアフターベークするクイックプレス方式が主流となっています。当社は、独自の配合技術を駆使しこのクイックプレス時間を従来比50%に削減できるカバーレイを開発し、顧客の生産効率を格段に向上させることに成功しました。現在は更なる省エネルギー化の為にアフターベーク不要となる短時間硬化カバーレイの開発を鋭意研究しております。
・車載用FPC材料
近年、自動車のEV化に伴い、電子部品の軽量化や小型化を目的としたFPC材料の採用検討が進んでおります。この中で車載FPCには、高温に長時間さらされても特性の低下が無い耐熱材料が求められます。回路を保護するカバーレイは、この要求を満たすことがこれまで困難でしたが、独自の樹脂設計による接着剤の耐熱性向上と、特殊処理フィルムを組み合わせることによって、150℃という高温での長期耐熱性が発現することを見出し、製品化に成功しました。現在は、さらに超高温となる200℃の長期耐熱性を持つカバーレイの開発を鋭意進めております。
・実験用小型塗工機の機能向上
オープンイノベーション推進のために2023年8月より導入した実験用小型塗工機を用いて、すでに様々な分野の顧客との共同開発プロジェクトが開始されています。これまで、この塗工機には1種類のコーターヘッドのみ設置されていましたが、この度、2種のコーターヘッドを追加設置しました。これにより塗布する樹脂の性状や塗布厚さに応じてコーターヘッドを選択することができるようになり、従来よりも広範囲な条件での塗工が可能となりました。
また、2025年9月にはイノベーションセンターが開設します。実験室レベルでの検討から、実験塗工機を活用した試作、さらには量産化まで、オープンイノベーションを推進する環境が整います。多くの顧客との協業を深化し、世の中の役に立つ新製品を開発します。
電子材料に係る研究開発費は
(2)産業用構造材料・電気絶縁材料分野
・航空機内装材用 環境配慮型プリプレグおよびハニカムパネル
従来、航空機内装材用ハニカムパネルは、スキン層に用いるプリプレグに難燃性能を確保するため、ハロゲン系化合物やアンチモン化合物を使用することが一般的でした。しかし近年、環境負荷物質の低減や有害物質の管理、規制など国際的な要請が高まりつつあり、これらの化合物を使用しない樹脂設計が望まれています。
こうした市場環境の変化から、当社では航空機分野における将来的な環境規制の強化を見据え、環境配慮型のハロゲンフリー、アンチモンフリー仕様の航空機内装材用プリプレグおよびハニカムパネルを開発しました。当該製品は、従来品と同等以上の難燃性および機械特性を有しており、既に顧客へのサンプルワークを開始しております。
・燃料電池用発電セル材料
環境に優しい発電技術として注目されている燃料電池は、水素と酸素の化学反応によって電気を生み出す装置です。燃焼を伴わないため、二酸化炭素をほとんど排出しないクリーンな発電方式です。この電池はセルと呼ばれる発電部位が幾層にも重なった構造をしています。そして、このセル同士はセパレーターと呼ばれる部材で隔たれており、水素と酸素を供給する溝が形成されています。従来、このセパレーターには金属板を使用していましたが、軽量化やコストダウンを目的に導電性を持った樹脂材料への代替が検討されています。当社はこの樹脂製セパレーターの開発を進めており、顧客各社での評価が進んでおります。定置型発電機や車載用電池への採用が期待されます。
産業用構造材料及び電気絶縁材料に係る研究開発費は
(3)ディスプレイ材料分野
・医療用3Dディスプレイ
当社の光学素子「Xpol®」を搭載する3Dディスプレイは、近年の高精細な4Kディスプレイ化により、医療分野において採用が活発に進んでおります。内視鏡手術用として主流である32インチモデルに加え、顕微鏡手術に対応する大型サイズへのニーズに応えるべく、55インチサイズまでの4K-3Dディスプレイを開発し、サンプルワークを開始しました。今後は、高速通信インフラの整備や医療用周辺機器の性能向上に伴い、医療分野では更にOLEDや8K対応などの高コントラスト化や高解像度化の需要が見込まれることから、当社では設計・加工技術の高度化に取り組んでまいります。
ディスプレイ材料に係る研究開発費は