第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

〔経営方針〕

① 企業理念

当社は以下の企業理念を掲げております。

 

わが社は、社会基盤の整備に参加し、豊かな人間環境づくりに貢献します。

わが社は、人の和をはかり、常に従業員の幸福と生き甲斐を求めていきます。

わが社は、未来を見つめ、たゆまぬ技術開発により、強い会社を目指します。

 

② 中期経営計画『23-27計画R』

1)基本方針

 

  「継承と新化」―多様性と相互信頼で成長軌道を描く―

 

 当社は、2025年に会社創立100周年を迎えますが、2025年を通過点とする当5か年において「継承と新化」をミッションに今後予想される事業環境の変化に対応し、200年企業に向けた成長軌道をつくるべく改革の期間と位置づけ「23-27計画R」を実施してまいります。

 


 

2)基本戦略

「事業セグメント別戦略の推進」、「技術開発の強化」、「人財力の強化」といった構想や取組みをさらに発展させた基本3戦略「事業戦略」「財務戦略」「ESG戦略」に基づき、事業環境の変化、社会の変化等の急激な市場構造変化に対応した事業構造改革を推進し、会社創立100周年とその先200年企業へ向けての基盤を構築することを基本戦略としております。

 

 


 

《事業戦略》

① 主力事業の振興軌道強化

② 戦略事業の強化

③ 200年企業への基盤構築

主力事業である基礎事業では、環境に優しい中掘工法の販売強化、ICT施工管理推進による施工効率向上、摩擦杭対応力強化を推進し、下水道関連事業では、トータルソリューションの増強、耐震化事業、メンテナンス事業の領域拡大、シェアのダントツ化に注力してまいります。

戦略事業であるプレキャスト事業では、当社オリジナル基礎製品であるPCウェルの販売強化、高速道路更新事業向け壁高欄の拡販、設計営業力の強化に注力してまいります。また、持続的成長を実現するために、成長事業への投資や探索事業を強化してまいります。さらには、事業戦略の速やかな推進と市場変化に対応するため、5つの部門の構造改革を進めてまいります。変化の時代に、変化を武器に、変化を恐れず挑戦するマインドセットへの改革を進めてまいります。

 


 

 

《財務戦略》

① 積極的な成長投資(人財 設備 開発 M&A)

② 株主還元(安定向上)

成長投資として、「プレキャスト製造投資、e-CON事業投資、カーボンニュートラル設備投資、デジタル化、効率化、省力化、設備投資機能向上、生産基盤整備」を実施してまいります。

株主還元では、営業利益追求の積極的投資と安定的配当の向上を図り、バランスある株主還元策を実施してまいります。


 

《ESG戦略》

① 2030年に向けたCO2削減

② e-CON事業立ち上げによる脱炭素社会実現への貢献

事業活動である「社会基盤整備への貢献を通じて持続可能な社会の実現を目指す」を基本方針として、コンクリートテクノロジーをもって安全・安心な社会、脱炭素社会に貢献してまいります。

 


 

 3) 中期経営計画『23-27計画R』目標値

 

2026年3月期目標

2028年3月期目標

連結売上高

365億円

400億円

連結営業利益

17億円

22億円

 

注)業績目標は、開示時に当社が入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいて策定したものであり、実際の業績等は今後さまざまな要因によって記載内容と異なる可能性があります。

 

〔経営環境及び対処すべき課題〕

(1)今後の見通し

今後の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善を背景に景気の緩やかな回復が今後も継続すると期待される一方で、更なる物価上昇やアメリカの通商政策の動向等により、わが国経済は依然として不透明な状況が続いていくと予想しております。

このような経営環境下、当社グループは2023年度において中期経営計画「23-27計画R」を策定し、着実に推進してまいりました。2年目で収益目標を超過達成したことにより、3年目にあたる2025年度は前倒しで最終年度の経営目標値を達成すべく邁進してまいります。

 

(2)サステナビリティの実現

サステナビリティは単に環境への配慮にとどまらず、環境・社会・経済の調和、そして将来世代への責任を含む包括的な考え方です。当社ではこれらを軸に、SDGsと整合した具体的な取り組みを展開しています。

 

① 環境への配慮:自然環境の保全・資源の有効利用・気候変動対策

[CO2削減と資源循環]

当社は、セメントを使用しないセメントレスコンクリート「e-CON®」を東京都下水道サービス(株)と共同開発し、2025年1月には普及と技術連携のため「e-CON協会」を設立しました。e-CON®は、製造時のCO2排出量を大幅に削減するだけでなく、耐久性にも優れており、製品寿命の延伸によってライフサイクル全体での環境負荷を低減することができます。

さらに当社では、自社からのCO2排出削減にも取り組んでおり、ガスボイラーの計画的な導入をはじめとした対策を通じて、2030年および2050年の温室効果ガス削減目標に向けた取り組みを進めています。

 

[施工工程での環境負荷低減]

新たに開発した「CP-X工法®」は、発生残土が少なく、工期短縮にもつながるコンクリート杭の施工法で、施工時のCO2排出量削減に貢献しています。設計・材料・施工すべての段階で、環境に配慮した製品開発を進めています。

 

② 社会への貢献:人・働き方・公共性の向上

[労働人口減少への対応と働き方の進化]

当社は、3Dプリンティング技術を活用したプレキャスト製品の製造に取り組んでいます。これにより、ロボットによる自動生産ラインの構築や型枠不要による作業の省力化に取り組んでいます。また、従来は難しかった自由形状の製品もプレキャスト化できるようになります。これらは製造工場における重筋作業の軽減にもつながり、より安全で柔軟な働き方への転換にも寄与しています。

 

[インフラを支える社会的責任]

下水道インフラに関しては、老朽化が進む中で、当社が供給してきたヒューム管の補修・更生・更新への対応を強化。

更新においては100年ヒューム管による次世代の社会インフラの提案を行っていきたいと考えています。点検から補修・更新までをワンストップで提供する体制を強化し、住民の安心と公共の衛生基盤を長期にわたって守り続ける企業でありたいと考えています。

 

 

③ 経済的価値の創出:成長と効率性の両立

[生産性の向上と競争力強化]

設計、製造、施工の各フェーズにおいてデジタル化を推進。特に、杭工事のICT施工管理ツール「Pile-ViMSys®」や施工記録の効率化を図る「ViMCam®」などにより、施工の「見える化」やトレーサビリティ、品質向上を実現しています。

これらは単なるコスト削減ではなく、高品質で安定したインフラ供給による信頼性の確保と、地域経済や関連産業の活性化に貢献するものです。

 

④ 将来世代への責任:100年先を見据えたインフラづくり

当社は、短期的な供給ではなく、100年先の社会インフラを見据えた価値創造を基本方針としています。従来の「50年〜80年寿命」とされていた下水道インフラを、100年以上のスパンで持続可能に運用する仕組みを提供し、将来世代の生活基盤を守ることを目指しています。

 

(3)次の100年に向けた目標と取り組み

私たちは今、「インフラをつくる会社」から「インフラを未来につなぐ会社」へと進化することを掲げています。そのために、以下の4つの重点分野に注力しています。

① 脱炭素・環境貢献への挑戦

② 100年インフラを支える維持管理サービスの提供

③ デジタルとロボティクスによる構造改革

④ 次世代を担う人づくりと共創型組織への転換

100年支えてきた企業が、100年先のインフラを構想する

それが、これからの日本ヒュームのビジョンと考えています。社会や時代がどう変わろうとも、地に足をつけて社会を支え続ける企業でありたいと願っています。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

〔サステナビリティ基本方針〕

1925年、当社は産声をあげました。西洋諸国に衛生環境面で後れをとっていた我が国の社会資本を豊かにしたい、そんな有志によりヒューム管の製造がスタートしました。以来、私たちは「社会基盤の整備に参加し、豊かな人間環境づくりに貢献」を不変の使命とし、コンクリート二次製品の製造・施工を生業としてきました。当社は創業精神が既にSDGsのパーパスを持った企業であるといえます。

今、2025年10月20日の創立100周年を目前に、創業精神NHイズムの「継承」と時代の大きな変革をとらえ「新化」を目指します。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス

当社の企業統治の取組みとして、代表取締役を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しています。「リスクマネジメント委員会」は偶数月に開催され、サステナビリティ課題に関する情報集約、リスクの想定、対策案の立案、社内教育・啓蒙プログラム推進等、年度活動の計画立案及びその進捗管理を行います。経営会議では、リスクマネジメント委員会の実施状況をモニタリングしています。リスクマネジメント委員会において審議された重要な事項については、取締役会へ報告し、審議しております。

 

(2) 気候変動関連等に関するガバナンス、リスク管理、指標及び目標

当社の取組みにつきましては、国内外のサステナビリティ開示で広く利用されております「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークに基づき開示いたします。

① ガバナンス

当社グループの気候変動問題への取組みを推進する機関として、代表取締役を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しています。「リスクマネジメント委員会」は偶数月に開催され、気候変動問題に関する情報集約、リスクの想定、対策案の立案、社内教育・啓蒙プログラム推進等、年度活動の計画立案及びその進捗管理を行います。経営会議では、リスクマネジメント委員会の実施状況をモニタリングしています。リスクマネジメント委員会において審議された重要な事項については、取締役会へ報告し、審議いたします。

② 戦略

当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に分析を行いました。

気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて2℃以下または4℃上昇するシナリオを想定し、それぞれのリスクと機会について影響度が高いと思われる項目を抽出しました。

 


2℃シナリオでは、2030年までに温室効果ガス排出量を抑制するために社会の急速な変化が予想されています。例えば、炭素価格はCO2:1t当たり100ドル以上になるというような排出抑制措置が講じられることを予測しています。

当社は2℃シナリオでは、炭素税の導入やCO2排出枠制限に関する規制が強化され、当社グループにとってコスト増加が想定される一方、開発した環境材料e-CON®(現時点でCO2を約80%削減)を利用したプレキャスト製品を製造することにより間接的なCO2排出量の削減や、それらを用いた再生エネルギー用部材の製造販売による収益拡大が期待できます。また、CO2の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に技術力向上による新たな事業創出、収益機会の獲得が期待できます。

4℃シナリオでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点や調達先の被害などによる生産停止・遅延が発生する可能性が増え、コスト増加が見込まれる反面、防災・減災対策としてセメント関連製品や省力化工法等の需要増加が見込まれます。

 

③ リスク管理

当社グループは、気候変動に伴う外部環境の変化について、その要因を「移行リスク」と「物理的リスク」に分類のうえ、重要なリスクと機会を特定しています。特定した重要なリスクと機会については、「リスクマネジメント委員会」にて審議し、取組み対応策を検討し、取締役会へ報告し、審議します。また、特定されたリスクと機会への取組み方針、対応策は、経営会議を通じて中期経営計画や経営戦略に反映し、各部署・事業所において実行します。


 

④カーボンニュートラルへの取組み

 2024年1月より主力工場である熊谷工場にガスボイラー設備を導入いたしました。

従来は、コンクリートの硬化を促す養生工程において重油を燃料とするボイラーにより発生するエネルギーを利用しておりましたが、ガスボイラー設備へ入れ替えることにより、同設備からのCO2排出量を約33%削減して製造することが出来るようになりました。

 「TCFDによる提言に基づく開示」では、2050年までにCO2総排出量をゼロにすることを目標に掲げております。今後は、当該設備を他工場にも導入し、削減目標の早期達成を目指します。カーボンニュートラル実現に貢献してまいります。

 

(3) 人的資本への対応

〔人的資本に関する基本方針〕

人的資本経営につきましては、あらゆる価値は「人」が創造するという考えのもと、社員がいきいきとやりがいをもって挑戦できる職場環境、企業風土をつくっていくことで、新たな付加価値を生み出し、企業理念である「豊かな人間環境づくり」に貢献したいと考えています。コンクリートテクノロジーで安全・安心な社会づくりに貢献する。そのためには社員一人ひとりが今まで以上にチャレンジ意欲の向上や高い専門性の獲得が必要であると考えます。当社では性別・年次・年齢にとらわれない専門性重視、自律的なキャリア形成、役割に基づく人事制度や資格取得奨励金制度の見直しを行うなど、社員の成長が会社の業績向上につながるよう「人材」を「人財」とした、人的資本経営を推進することで、中長期的な企業価値向上に取り組んでまいります。

 

〔人材育成戦略〕

① OJT・OFF-JT

当社の人事制度の目的は「プロフェッショナル人材の育成強化」「個を活かすタレントマネジメントの推進」です。従来からのOJT、それを補完するOFF-JTである研修カリキュラムに加え、それらの状況をデータドリブンすることで、人的資本経営を推進します。

②経営トップによる組織・企業文化の「継承と新化」

当社では経営トップによる創業精神・パーパスの伝承を目的として、以下の施策を実施しております。

・「車座会議」:経営トップが自ら各拠点を訪問し、従業員と直接対話の機会を設けております。

・「Mtimes」:社内SNSを活用し、経営トップ自らが全従業員にメッセージを発信することにより、 

  組織や企業文化を伝える取組みを実施しております。

③ リーダーシップ向上

気候変動・環境への対応、デジタル化への対応、我が国においては人口減少への対応など、当社は時代の大きな転換期の渦中にいます。

経営のダイナミズムと生産性向上を図るには、現場力の再興、人財の能力を最大限に発揮させる取組みが必要であり、そのためにはマネージャーのリーダーシップ向上が必要と考えています。

人事考課においては、現状把握とフィードバックによるリーダーシップ能力の向上に取り組むと共に、マネージャーと部下の1on1ミーティングをHR部門が支援することで、相互信頼に基づく現場力の向上に取り組みます。

④ 次世代人財育成

当社では、次の100年に向かうために、次世代のリーダーを育成することが重要と考えており、以下の取組みを行っております。

・「寺子屋M」:経営トップが自ら講師となり、自薦他薦を問わず推薦された社員を対象として講義を

  開催し、リーダー育成を行っております。

・「10年後を考えるタスクフォース」:社長直轄プロジェクトとして、生産部門、技術部門の10年後を

  考えるタスクフォースチームを、次世代の中核となる人材を中心に招集し、活発な議論を交わすこと

  で、人財育成を行っております。

〔社内環境整備戦略〕

① タレントマネジメント(採用・配置)

我が国においては中長期に生産人口の減少が見込まれます。「採用効率」と「採用の質」の精度を上げるために、採用活動は効率化を図り、採用マッチ度の検証や通年型採用の頻度を上げる取組みを強化します。

 

また、現人事制度では、専門職(いわゆるエキスパート志向)とライン管理職(いわゆる戦略重要ポジション)の役割を明確にし、従来型の人事制度からの変革と定着を推進すると共に、適性や保有スキル等の情報に基づき、「人事委員会」による適正な評価に基づく適材適所に配置し、そのパフォーマンスやコンピテンシーレートを科学的に検証する体制を構築していきます。

 

② ダイバーシティ&インクルージョン

同質化からはなかなかイノベーションが起きにくいことは周知であり、中核人材の多様性確保については重要な経営課題と認識しています。多様な人財で組織やチームを構成し、相互理解をもって、個性を活かし、最大限の能力を発揮する自律的な企業風土作りを推進します。

 

③ 従業員エンゲージメント

当社では、2024年より派遣社員、契約社員を含む全従業員を対象とした「従業員エンゲージメント調査」を実施しております。エンゲージメントスコアはエンゲージメントを左右する帰属要因に基づき、40設問に回答する方法としております。2024年度につきましては、2025年2月に実施しました。各設問の回答をスコア化し、調査結果を算出いたしました。結果は最高値100に対し平均67.8(前年比0.3ポイント増加)となりました。今後は調査結果において課題となる領域について、更なる向上策を検討してまいります。

 

④ 健康経営の推進

当社は、従業員が心身ともに健康であることが、経営上極めて重要であると考えております。具体的な取組みとして、優良な健康経営を実践している企業に対して与えられる「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に、昨年度に引き続き認定されました。今後も従業員がより健康でいきいきと働き続けられる職場環境や企業風土を作ってまいります。

 

〔指標と目標〕

当社グループは、年齢、国籍、性別等区別することなく、意欲と能力のある優秀な従業員が平等に管理職登用への機会が得られるような人事制度を整備しております。今後も、従業員が最大限の能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に努め、意欲と能力のある従業員を育成し、適性のある人財を管理職として登用していく方針であります。

現在、女性、外国人、中途採用者等の区分で管理職の構成割合や人数の指標等、一部の指標について目標を設定しております。設定拡大は今後の課題であると認識しております。

(参考)改正開示府令に基づく開示データ(従業員の状況)

指 標

2032年度
(目標)

2037年度
(目標)

女性管理職比率

8%

10%

男女賃金差異(基準内賃金)

男性育休取得率

100%

100%

 

(注)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「第1 企業の状況  5  従業員の状況  (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 市場環境の変化による影響

当社グループを取り巻く経営環境は一層厳しさを増しております。競争の激化や市場構造の大幅な変化などにより影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 法令・制度等の変更

当社グループは、事業の運営等に際し、建設業法等の関係法令等による規制を受けております。当社グループはこれらの関係法令等を遵守した事業運営を行っており、現時点では事業運営に大きく支障をきたすような法的規制はありませんが、これらの規制が強化された場合には、今後の事業戦略に影響する可能性があります。

 

(3) 海外での事業活動について

当社グループの海外関係会社は、事業活動を主にアジアの新興国で展開しております。そのため、予期しない政治状況の激変や法制度の変更、さらに地政学的なリスクが内在しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産の残高は、前連結会計年度末と比べ48億38百万円減少し、572億40百万円となりました。

当連結会計年度末の負債の残高は、前連結会計年度末と比べ63億21百万円減少し、141億57百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ14億83百万円増加し、430億83百万円となりました。
 

b. 経営成績

当連結会計年度における日本経済は、緩やかな回復基調を維持したものの、個人消費の弱さや物価高の影響により成長の鈍化傾向が見られました。また、中国経済の回復停滞や米国の通商政策の影響により、世界経済の先行き不透明感が強まり、日本経済の動向についても一層の注視が必要となりました。

当社グループを取り巻く需要環境においては、パイル事業の全国需要が前期比93.7%、ヒューム管需要が同88.0%と引き続き減少傾向にある一方で、工期短縮や人手不足への対応ニーズからプレキャスト製品の需要は堅調に推移しました。特に当社では、設計段階からの提案活動が奏功し、案件の獲得が着実に進展しました。需要環境については、脱炭素化やDX推進の潮流に加え、自然災害の激甚化や高速道路・下水道インフラの老朽化対策に対するニーズが一層高まっていると認識しています。

こうした環境のもと、当社グループは中期経営計画「23-27計画R」に基づき、収益性と事業基盤の強化に向けた施策を着実に実行しました。新工法の展開やICT活用による業務効率化、環境対応型製品の事業化に向けた取組み強化などにより、売上高・利益ともに大幅な増収増益を達成いたしました。

 

主要事業の実行施策と成果は以下のとおりです。

[基礎事業]

・全国で設計提案活動を強化し、大型案件の受注を複数獲得しました。

・新中掘工法「CP-X工法®」を開発し、2025年1月に販売開始。環境負荷低減や工期短縮、高い支持力性能

 が評価され、今後の現場採用が期待されます。

・ICT施工管理ツール「Pile-ViMSys®」に杭伏図機能を追加し、現場の施工効率と品質管理の向上を実現し

 ました。

 

[下水道関連事業]

・プレキャスト製品の出荷が増加。特に道路関連の受注が伸長しました。

・低炭素型高機能コンクリート「e-CON®」の建設技術審査証明の取得を実現。業界初となるセメントレ

 ス・プレキャスト製品として製造・出荷を開始しました。本格販売に向けた体制整備を進めています。

・ヒューム管の国内シェアは前期比4.7ポイント増の23.5%に上昇しました。

 

[プレキャスト事業]

・PCウェル、壁高欄、雨水調整池等の設計ストックを拡充し、受注量が大幅に増加しました。

・特に壁高欄は、北海道地区や関東地区での採用が拡大し、出荷量は前期比2.3倍に達しました。

・3Dプリンティング技術を活用した自由造形および型枠レス製品の製造を開始し、生産性向上と納期短縮

 を実現しました。

・本社設計センターによる支援件数は前年の37件から70件に倍増し、設計提案力の強化を図りました。

 

その結果、当連結会計年度の売上高は370億64百万円(前期比9.9%増)、営業利益は20億22百万円(同46.3%増)、経常利益は30億49百万円(同27.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は30億45百万円(同59.2%増)の大幅な増収増益となりました。

 

 

事業セグメント別の概況は次のとおりであります。

①基礎事業

地道な売価改善活動や徹底した工事リスク管理により利益率が改善し、売上高は227億19百万円(前期比3.6%増)、営業利益は13億4百万円(同12.4%増)の増収増益となりました。

 

②下水道関連事業

プレキャスト製品、特に道路用プレキャスト製品は設計段階からの提案活動が奏功し、売上高は128億25百万円(前期比24.9%増)、営業利益は19億35百万円(同52.1%増)と、こちらも大幅な増収増益となりました。

 

③太陽光発電・不動産事業

売上高は14億25百万円(前期比3.1%減)、営業利益は8億4百万円(同1.3%減)となりました。太陽光発電事業、不動産賃貸収入ともに前期並みとなりました。

 

④その他

売上高は93百万円(前期比38.7%増)、営業利益は77百万円(同43.9%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といい、現金及び預金から預入期間が3ヶ月を超える定期預金を控除したものをいう。)は、前連結会計年度末と比べ15億99百万円減少の127億4百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、前連結会計年度と比べ18億77百万円減少の8億97百万円となりました。その主な内訳は、税金等調整前当期純利益38億32百万円、売上債権及び契約資産の減少36億43百万円、仕入債務の減少59億48百万円、持分法による投資損益8億40百万円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動により得られた資金は、36百万円(前期は1億21百万円の使用)となりました。その主な内訳は、固定資産の取得による支出14億93百万円、固定資産の売却による収入10億39百万円、投資有価証券の売却による収入4億28百万円、定期預金の払戻による収入43百万円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動により使用された資金は、前連結会計年度と比べ17億44百万円増加の25億34百万円となりました。その主な内訳は、配当金の支払額10億99百万円、自己株式の取得による支出7億30百万円、短期借入金の純増減額6億58百万円などによるものであります。

 

 

 

③生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

 基   礎   事   業

16,507,731

△3.6

 下 水 道 関 連 事 業

7,628,145

+18.1

 太陽光発電・不動産事業

32,051

△15.1

 そ       の       他

合      計

24,167,929

+2.3

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.金額は、基礎事業及び下水道関連事業については製造原価、工事原価、太陽光発電・不動産事業については太陽光発電原価等によっております。

 

b. 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受 注 高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

 基   礎   事   業

21,289,841

△3.8

2,546,057

△36.0

 下 水 道 関 連 事 業

13,975,463

+22.8

6,757,184

+20.5

 太陽光発電・不動産事業

166,182

△23.8

 そ       の       他

合      計

35,431,487

+5.1

9,303,241

△2.9

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

 基   礎   事   業

22,719,809

+3.6

 下 水 道 関 連 事 業

12,825,053

+24.9

 太陽光発電・不動産事業

1,425,868

△3.1

 そ       の       他

93,853

+38.7

合      計

37,064,584

+9.9

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

大成建設株式会社

3,222,716

9.6

5,530,102

14.9

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 a. 財政状態の分析

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産の残高は、前連結会計年度末と比べ54億57百万円減少し、270億99百万円となりました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が28億95百万円、現金及び預金が16億42百万円それぞれ減少したことなどによります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産の残高は、前連結会計年度末と比べ6億19百万円増加し、301億41百万円となりました。これは、投資有価証券が4億32百万円増加したことなどによります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債の残高は、前連結会計年度末と比べ59億94百万円減少し、96億61百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が61億17百万円減少したことなどによります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債の残高は、前連結会計年度末と比べ3億27百万円減少し、44億96百万円となりました。これは、退職給付に係る負債が3億94百万円減少したことなどによります。

 

(純 資 産)

当連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ14億83百万円増加し、430億83百万円となりました。これは、利益剰余金において親会社株主に帰属する当期純利益により30億45百万円増加した一方、配当金の支払により11億14百万円減少したことなどによります。

 

 b. 経営成績の分析

(売 上 高)

基礎事業におきましては、地道な売価改善活動や徹底した工事リスク管理により利益率が改善し、227億19百万円(前期比3.6%増)となりました。

下水道関連事業におきましては、プレキャスト製品、特に道路用プレキャスト製品は設計段階からの提案活動が奏功し、128億25百万円(前期比24.9%増)となりました。

太陽光発電・不動産事業におきましては、14億25百万円(前期比3.1%減)となりました。

その他につきましては、93百万円(前期比38.7%増)となりました。


  (営業利益)

営業利益は、20億22百万円(前期比46.3%増)となりました。


  (経常利益)

経常利益は、30億49百万円(前期比27.5%増)となりました。


  (親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、30億45百万円(前期比59.2%増)となりました。
 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況  3 事業等のリスク」に示したとおりであります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に示したとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に示したとおりであります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、原則として運転資金及び設備投資資金について自己資金及び借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金については、運転資金を期限1年以内の短期借入金により調達しております。2025年3月31日現在の短期借入金残高は8億30百万円であり、通貨は日本円建てであります。生産設備等に係る長期資金は、主として自己資金によって賄っております。
 当社グループは、運転資金の効率的な調達を行うため取引銀行7行と当座貸越契約(極度額39億50百万円)及び株式会社みずほ銀行と特定融資枠契約(特定融資枠5億円、契約期間:2025年3月30日~2026年3月29日)を締結しており、これにより当社グループの成長を維持するのに将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要  ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に示したとおりであります。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フローの状況

「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要  ②キャッシュ・フローの状況」に示したとおりであります。

 

 ② 財務政策

「第2  事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に示したとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

研究開発活動につきましては、単に新規技術の創出のみならず、最終的な事業収益獲得を目的とした事業開発体制の強化を掲げております。

当社グループは、基盤事業の強化に向けた開発を進めるとともに、戦略事業であるプレキャスト製品事業においても、自由断面形状の製品など、新たな事業領域を見据えた開発に取り組みました。引き続き短期・中長期的な視点をもって、たゆまぬ技術開発に取り組み社会インフラの構築に貢献してまいります。

 

当連結会計年度におけるセグメントごとの研究開発活動の状況は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は436百万円であります。この費用には研究開発に係る人件費等を含んでおります。

 

(1) 基礎事業

当社が得意とするコンクリート杭の施工法である中掘工法(CO2排出量の削減にも貢献)において、業界トップの支持力を目指す新中掘工法「CP-X工法」の開発等を行いました。当連結会計年度の研究開発費の金額は254百万円であります。

 

(2) 下水道関連事業

自由なデザイン形状、埋設型枠によるコスト削減、工場および現場の省人化・省力化を可能にする3Dプリンティング技術を活用した将来における工場の省人化・省力化を目指し、3Dプリンティングを活用したプレキャスト製品の製造の研究開発等に取り組みました。当連結会計年度の研究開発費の金額は181百万円であります。