文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人と自然が調和する豊かな環境づくりに貢献する」ことを基本理念に掲げ、社会基盤、産業基盤などの社会資本の形成に貢献しております。また、地球環境保全のため自然資本保護を重視した事業活動に積極的に取り組むとともに、常に新しい技術開発にチャレンジし、建設事業を通じて安全で高品質な建設生産物を供給することにより持続可能な社会を実現し、ステークホルダーの信頼と期待に応えていくことを経営の基本方針としております。
(2)中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社グループでは、2022年5月に「中期経営計画2022(2022年度~2024年度)」を策定し、その実現に向けて各種施策に取り組んでまいりました。2年目となる2023年度の業績においては、建築部門の回復もあり売上高・売上利益は堅調に数値を積み上げたものの、高止まりとなっている燃料・資材価格による収益面でのリスクは依然として有しております。
当社グループを取り巻く事業環境においては、民間設備投資或いは公共建設投資が堅調に推移し、豊富な手持ち工事を有する一方で、建設業界全体の就労人口の減少は顕著であり、人件費・輸送費の上昇や設備工事費の高騰による収益性悪化のリスクが懸念されます。また、本年4月より労働時間上限規制の適用が開始となり、人財の確保・育成は当然のことながら、生産性向上へ向けた取り組みへの更なる加速が求められます。加えて地球環境保全やカーボンニュートラル対応などサステナブルな企業経営が求められており、対処すべき経営課題は多岐にわたります。
昨年12月、当社は大成建設株式会社の連結子会社となりました。この資本業務提携により、ビジネス機会の創出だけでなく、同社が先進的に取り組んでいるサステナビリティ経営でも大きなシナジーが得られるよう円滑な関係構築を目指しております。
中期経営計画2022の最終となる2024年度においては、豊富な手持工事を消化していく中で、建設DX推進による生産性向上や収益力の強化を図るとともに、流動的な人員の配置により現場を全社で支援できる体制を整備し、必要に応じて関係会社を含めた外部との連携強化を進めてまいります。
また、2030年をゴールとした長期経営ビジョンの実現に向けて、財務基盤や健全性を考慮しながら戦略的な投資を積極的に行い、企業としての総合力を高めるとともに、新たな収益機会の創出を目指してまいります。
●中期経営計画2022(2022年度~2024年度)の概要
①長期経営ビジョン
新たな中期経営計画がスタートするにあたり、新たな長期経営ビジョンを策定しました。
[連結数値目標]2030年度
受注高・売上規模1,500億円以上、営業利益率8.0%以上を目指す
②THE GREEN VISION
環境に特化した「THE GREEN VISION」を掲げ、2022~2030年を第1期として積極的な環境活動に取り組んでまいります。
③中期経営計画2022のテーマと基本方針
長期経営ビジョンに掲げるサステナブルな社会の実現に向けた中期経営計画を策定しました。2022~2024年度の3年間における基本方針に基づく事業戦略や目標を掲げ、達成に向けて取り組みます。
④資本政策・経営指標
長期経営ビジョンの実現に向け、財務基盤や健全性を確保した上で「生産性・収益性の強化」や「成長分野の拡大」に向けた投資を行い、マルチステークホルダーにとって有益な価値を提供できる強い企業集団を目指します。
当社グループは、2023年4月1日よりサステナビリティ推進委員会を中心とするサステナビリティ推進体制を開始し、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題を理解し、事業活動を通じてそれらの課題を解決するための取り組みを強化することとしており、新たにサステナビリティ基本方針を次のとおり制定いたしました。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
《サステナビリティ基本方針》
・地球環境に配慮した安全・安心で高品質な社会資本を提供する。
・安全最優先と人権尊重を企業活動の基盤とし、多様な人財が活躍し、活気あふれる職場環境を構築する。
・マルチステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを通し相互理解を深め信頼を獲得し続ける。
・リスクマネジメントを徹底し、様々な重要リスクへの対応を事業機会ととらえ、新たな価値を創出する。
・公正な企業活動を推進するとともに、コンプライアンスを徹底する。
上記の方針に基づいてサステナビリティ活動を推進し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティ経営強化を目的として、2023年4月にCSR委員会をサステナビリティ推進委員会に改編し、経営会議の下に設置しました。同委員会の委員長は社長執行役員が務め、原則として年3回開催しています。サステナビリティに関わる活動方針及び年度計画、活動実績の評価、その他サステナビリティ推進に関する事項について審議を行っています。審議内容については、適宜経営会議に上申し、必要な決議を得ています。同様に取締役会に報告・付議し、適切に監督する体制を構築しております。またサステナビリティ推進委員会の下に重要課題と定めたテーマごとに7つの部会を設置しており、各部会は該当する課題に特化した情報収集や共有と新たなリスクや機会に対する検討を行い、対処方針を策定、立案しサステナビリティ推進委員会に適宜上申・提言しています。
サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティ推進室が窓口となり、各支店・関係会社サステナビリティ推進委員会へ支援や管理監督を行い、各場所でのサステナビリティ活動を推進してまいります。
サステナビリティ推進体制図
(2)戦略
①気候関連戦略
気候関連リスクについては、複数の気温上昇シナリオ(4℃・2℃)別に将来環境を想定し、主要事業別にリスクと機会の洗い出しを行っています。抽出した個別のリスク・機会の財務影響評価を行い、重要なリスク・機会を特定し、その対応策の検討を行い、中期経営計画に反映しております。下記は当社グループにおけるリスクと機会及びその対応策の一例です。
当社グループのリスクと機会及びその対応策の一例
|
リスクと 機会の種類 |
事業への影響 |
対応策 |
|
リスク |
・低炭素材料使用によるコスト増 ・平均気温の上昇により、作業効率が低下し、生産性が低下し、労務費の増加。労働環境悪化による作業員不足 |
・低炭素コンクリートの開発 ・施工の省力化・省人化技術の推進 |
|
機会 |
・環境意識の高まりによるZEB・ZEHの新築建設の需要拡大 ・国土強靭化の取り組み・防災意識の高まりにより、インフラ建設の増加、受注機会の増加 |
・ZEB・ZEHの提案力の強化 ・国土強靭化関連工事に対応した技術開発 |
②人的資本関連戦略
■人財育成に関する方針
中期経営計画2022の基本方針のひとつである「事業環境変化や新技術に対応した人財育成と外部連携を強化する」に基づき、事業環境の変化に即応でき対応力の秀でた人財や新技術開発に積極的に取り組む人財を育成し、多様な人財が活躍できる組織基盤を確立するとともに、キャリアアップをサポートいたします。
・階層別研修及び部門別OJTを拡充し、従業員のスキルアップをサポートします。
・目標管理制度及びキャリアマップの活用により個人のキャリア形成を後押しします。
・公的資格取得の支援及びサポートを実施します。
■社内環境整備に関する方針
サステナビリティ基本方針のひとつである「安全最優先と人権尊重を企業活動の基盤とし、多様な人財が活躍し、活気あふれる職場環境を構築する」に基づき、働きがいのある就労環境の構築を目指してまいります。
・多様な人財が活躍できる人事制度及び福利厚生制度を拡充いたします。
・従業員満足度調査を実施し、スコア検証の上、環境改善に取り組んでまいります。
・差別、ハラスメント、プライバシーの侵害など人権侵害に関する教育を拡充いたします。
・人権方針に基づき、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施してまいります。
(3)リスク管理
当社は、リスクマネジメントを円滑かつ適切に実施するため、サステナビリティ推進委員会の下部組織としてコンプライアンス・リスクマネジメント部会及び支店・関係会社サステナビリティ推進委員会を設置しています。コンプライアンス・リスクマネジメント部会は、リスク分類表に記載されているリスクについて、リスク担当部を指定し、全社重点リスクの選定・対策を検討するとともに重点リスク以外のリスクの統括を行っています。また支店・関係会社におけるリスクマネジメント活動の管理・監督を行い、適宜サステナビリティ推進委員会に審議事項や活動状況を上申・報告しています。
(4)指標及び目標
①気候関連指標及び目標
当社は、2022年度に公表している中期経営計画2022において環境に特化した「THE GREEN VISION」を掲げ、2050年でのカーボンニュートラルを最終目標とし、2030年度までのGHG排出量の削減目標を設定していましたが、昨年度、大成建設グループに加入したことで、グループ全体として共通の削減目標を下記の通り設定することになりました。具体的には、2022年度におけるGHG排出量を基準として、2030年度までにScope1+2を42%削減、Scope3を25%削減することを目標としております。その他のサステナビリティに関する課題に対する指標や目標についても適宜策定し、取り組んでまいります。
|
GHG排出量の削減目標 |
2030年度 |
備考 |
|
Scope1+2総排出量 |
42%削減 |
基準年2022年度 |
|
Scope3(カテゴリ1+11)総排出量 |
25%削減 |
基準年2022年度 |
②人的資本関連指標及び目標
人的資本関連の指標及び目標は、以下の2つの指標について目標を設定いたしました。それ以外の人的資本関連指標については、引き続きモニタリングを実施しながら、今後適切な目標の設定を検討してまいります。
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指標 |
|
2023年度実績 |
備考 |
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「課長級」に相当する者を対象 |
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育児目的休暇を含む |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)公共事業の発注減少
当社グループの土木事業において、公共事業への依存度が高く、予想以上に公共事業の削減が行われた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競争の激化
当社グループが属する建設業界において、市場の縮小や受注競争の激化が生じた場合には、受注機会の逸失、工事採算の悪化等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)海外展開に伴うカントリーリスク
当社グループは、アジア・アフリカを中心に様々な地域で事業を展開しているため、これらの国の政治・経済情勢の急激な変化、大幅な法規制の予期せぬ変更等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)取引先の信用不安
景気の減速や建設市場の縮小等により、発注者、協力業者、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収不能や工事遅延等の事態が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)労務費及び資材価格の変動
請負金額に転嫁することが困難になるほど労務費及び原材料価格が高騰した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)工事災害の発生
労働災害等を未然に防ぐ様々な安全対策の徹底を図っておりますが、重大事故や人身事故が発生した場合、その復旧に多大な費用負担や工事遅延が生じ、当社グループの業績や工事成績等の企業評価に影響を及ぼす可能性があります。また、指名停止等による受注機会の逸失も想定されます。
(7)契約不適合責任及び製造物責任
品質管理には万全を期しておりますが、契約不適合責任及び製造物責任に起因する多額の損害賠償が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)法的規制等
当社グループが属する建設業界において、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、労働安全衛生法、独占禁止法等により法的規制を受けております。当社グループにおいて違法な行為があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規の改廃や新たな規制等が行われた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟等
国内外の事業等に関連しての訴訟、紛争、その他法的手続きに係る判決、和解、決定等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。とりわけ、独占禁止法違反から派生する指名停止等により、受注機会が減少する可能性があります。
(10)人財の確保
当社グループが属する建設業界においては、人財の確保が課題となっています。当社グループは、業務の効率化・IT化を進めておりますが、2024年4月から建設業界に時間外労働の上限規制が適用されることもあり、継続的に必要な人財を確保できない場合には、事業規模の縮小を余儀なくされ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)金利の変動
当社グループの土木事業における工事の大型化・長期化に伴い、工事代金の回収期間が長期化しているため借入金が増加しています。そのため、経済環境等の変化により借入金の金利が予想以上に高騰した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)保有資産の価格及び収益性の変動
予想を超える経済的な変動により当社の保有資産の価格の時価が著しく下落した場合、又は収益性が著しく低下した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)大規模災害の発生
事業に関し大規模災害が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、大震災又は自然災害等の発生により、経営機能や事業拠点が莫大な損傷を受けた場合、若しくは事業領域における経済活動が停滞等した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)感染症の蔓延
新たな感染症が蔓延した場合、従業員等の感染による事業停止等、円滑な事業推進が困難になる可能性に加え、建築事業の主な発注者である民間事業者の事業計画が縮小又は変更となる可能性があります。その場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)情報セキュリティ
当社グループは、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、サイバー攻撃等によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害等が発生する可能性があります。このようなリスクが顕在化した場合には、事業の中断、損害賠償請求や情報セキュリティ対策費用の増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、インバウンド需要が高まったことでサービス業はコロナ前と同水準まで本格回復するなど、経済活動の正常化が大幅に進みました。今後は、マイナス金利の解除や賃上げ等の経済政策により景気の持ち直しが期待され、日本経済のさらなる好転を見込んでおります。
当社グループが属する建設産業において、建築市場は、コロナ禍や物価高の影響を受けて先送りにされてきた民間設備投資の再開により好況に転じました。土木事業においても、維持・補修といったインフラの老朽化対策や国土強靭化対策により公共建設投資が引き続き堅調であり、今後も暫くは底堅く推移するものと見込まれます。
このような経済状況下において、当社グループでは「中期経営計画2022(2022年度~2024年度)」の基本方針に基づき、建設DXの推進と多様な人財育成により生産性の向上に努めてまいりました。土木事業では、成長分野に掲げている高速道路の大規模更新工事への対応を強化し、新設橋梁分野を凌ぐ土木事業の中核となりました。引き続き技術提案力の向上や施工技術の改善を図り、当分野における優位性を維持するとともに、同じく成長分野に掲げているメンテナンス事業にも注力してまいります。建築事業においては、資機材、燃料価格及び設備工事費の高騰による工事の収益性悪化が懸念されておりましたが、手持ち工事や大型建築製品において利益の回復が図られたことにより大幅に好転しております。今後もプレストレストコンクリート(PC)及びプレキャストコンクリート(PCa)技術の採用に向けた営業力の強化や新規顧客の開拓、あるいは戦略的なエリア展開を進め、収益力の向上に取り組んでまいります。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高は1,292億94百万円(前年同期比18.3%増)、営業利益78億27百万円(同37.0%増)、経常利益77億43百万円(同37.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益50億54百万円(同33.4%増)となりました。
1株当たり情報に与える影響は当該箇所に記載しております。
なお、個別の業績は、 売 上 高 1,160億99百万円 営業利益 64億38百万円
経常利益 65億25百万円 当期純利益 43億26百万円 であります。
セグメント業績は、以下のとおりであります。
土木事業については、売上高は791億円(前年同期比11.2%増)、セグメント利益は129億71百万円(前年同期比10.6%増)となりました。繰越高が前連結会計年度に比べ増加し、手持工事の進捗、設計変更獲得及び見積売上の実施により売上高、売上総利益ともに増加しました。事業の中核となる大規模更新・修繕事業については、新たな計画が発表されたことから、今後も大規模更新・修繕事業の市場は、安定的に継続する見込みです。利益については、大規模更新・修繕事業での設計変更獲得、さらに工事原価の低減等を実践した成果によるものです。受注高についても大規模更新継続契約案件、新設橋梁工事等を獲得し、期初計画を大きく上回りました。今後も当面はこの傾向が継続すると予想され、年度ごとの売上高とそれに対応する配置要員状況を踏まえた受注計画が重要となることから、工事の生産性及び利益率を向上させる施策の実行に取り組んでまいります。
建築事業については、売上高は485億25百万円(前年同期比32.0%増)、セグメント利益は48億55百万円(前年同期比79.0%増)となりました。事業環境としては、企業の設備投資意欲が堅調に推移しており、豊富な繰越工事が順調に進捗し、売上高、売上総利益ともに前連結会計年度に比べ増加しました。受注高については共同住宅や大型医療施設等の建設工事の獲得、新規顧客への取り組み等により期初計画を上回りました。引き続きPCa建築を代表する当社の強みを強化するとともに、大型案件受注の施策を継続し、安定した受注・収益を確保できるよう取り組んでまいります。
製造事業については、売上高は76億72百万円(前年同期比5.9%減)、セグメント利益は6億26百万円(前年同期比1.4%増)となりました。現在老朽化設備の更新と品質管理の徹底及びICTの活用で生産性の向上を目指しており、効率的な生産体制の整備を図っております。
その他兼業事業については、売上高は8億96百万円(前年同期比15.0%増)、セグメント利益は3億82百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
なお、セグメントの業績は、報告セグメントの売上高、セグメント利益を記載しております。
当連結会計年度末の総資産は、1,221億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ60億36百万円増加となりました。
流動資産は955億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億60百万円増加しております。主な要因としまして完成工事未収入金が21億82百万円減少しましたが、契約資産が35億6百万円、現金及び預金が18億15百万円増加したことによるものであります。
固定資産は266億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億76百万円増加しております。主な要因としまして機械、運搬具及び工具器具備品が28億19百万円、建設仮勘定が8億77百万円、繰延税金資産が2億84百万円減少しましたが、減価償却累計額が33億63百万円、退職給付に係る資産が9億28百万円、建物・構築物が9億22百万円増加したことによるものであります。
負債合計は699億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億37百万円増加しております。
流動負債合計は542億93百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億24百万円減少しております。主な要因としまして契約負債が36億78百万円、支払手形・工事未払金等が33億36百万円、電子記録債務が18億51百万円増加しましたが、短期借入金が150億75百万円、1年内返済予定の長期借入金が2億40百万円減少したことによるものであります。
固定負債合計は156億53百万円となり前連結会計年度末に比べ55億62百万円増加しております。主な要因といたしまして、長期借入金が56億60百万円増加したことによるものであります。
純資産の部は、主に親会社株主に帰属する当期純利益50億54百万円の計上により521億70百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益75億95百万円、仕入債務の増減額51億43百万円、契約負債の増減額36億78百万円、長期借入金の増減額56億60百万円の増加要因、短期借入金の増減額△150億82百万円、有形固定資産の取得20億1百万円、法人税等の支払18億77百万円、配当金の支払23億69百万円等の減少要因により、前連結会計年度末に比べ18億15百万円増加し、当連結会計年度末には111億63百万円となりました。
当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は159億44百万円(前年同期は167億8百万円の使用)となりました。これは主に仕入債務の純増加及び売上債権のうち大型工事の入金がほぼ好調に推移したためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロ-)
投資活動の結果、使用した資金は19億18百万円(前年同期比1.96%減)となりました。これは主に兼業事業用不動産取得、技術研究所のZEB化改修、事業所移転先の有形固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロ-)
財務活動の結果、使用した資金は122億19百万円(前年同期は180億60百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の純減少、長期借入金の純増加及び配当金の支払によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(1)受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 |
前年同期比(%) |
|
|
土木事業 |
(百万円) |
82,234 |
△13.7% |
|
建築事業 |
(百万円) |
48,233 |
△8.6% |
|
製造事業 |
(百万円) |
1,698 |
△10.7% |
|
その他兼業事業 |
(百万円) |
730 |
14.0% |
|
合計 |
(百万円) |
132,896 |
△11.8% |
(2)売上実績
当連結会計年度の売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 |
前年同期比(%) |
|
|
土木事業 |
(百万円) |
78,451 |
11.7% |
|
建築事業 |
(百万円) |
48,414 |
32.5% |
|
製造事業 |
(百万円) |
1,698 |
△10.7% |
|
その他兼業事業 |
(百万円) |
730 |
13.8% |
|
合計 |
(百万円) |
129,294 |
18.3% |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当社グループ(当社及び連結子会社)では、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。
3.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。
前連結会計年度
|
西日本高速道路株式会社 |
17,419百万円 |
15.9% |
|
中日本高速道路株式会社 |
15,382百万円 |
14.1% |
当連結会計年度
|
中日本高速道路株式会社 |
26,192百万円 |
20.24% |
なお、参考のため当社単独の事業の状況は次のとおりであります。
①受注高、売上高、繰越高及び施工高
|
期別 |
種類別 |
前 期繰越高 (百万円) |
当 期受注高 (百万円) |
計 (百万円) |
当 期売上高 (百万円) |
次期繰越高 |
当 期施工高 (百万円) |
||
|
手持高 (百万円) |
うち施工高 (百万円) |
||||||||
|
|
|
|
|
|
|
|
% |
|
|
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
|
土木工事 |
98,965 |
84,400 |
183,365 |
60,295 |
123,069 |
2.0 |
2,489 |
59,096 |
|
建築工事 |
33,201 |
46,733 |
79,934 |
31,953 |
47,981 |
1.7 |
835 |
32,229 |
|
|
工事計 |
132,166 |
131,133 |
263,300 |
92,249 |
171,050 |
1.9 |
3,324 |
91,326 |
|
|
製品 |
2,586 |
6,461 |
9,048 |
5,167 |
3,880 |
9.2 |
356 |
5,325 |
|
|
不動産事業 |
16 |
307 |
323 |
307 |
16 |
- |
- |
307 |
|
|
兼業計 |
2,603 |
6,768 |
9,371 |
5,474 |
3,897 |
9.2 |
356 |
5,632 |
|
|
合計 |
134,769 |
137,902 |
272,672 |
97,724 |
174,948 |
2.1 |
3,681 |
96,958 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
|
土木工事 |
123,069 |
69,195 |
192,264 |
66,372 |
125,892 |
1.9 |
2,355 |
66,238 |
|
建築工事 |
47,981 |
47,986 |
95,967 |
45,337 |
50,630 |
1.4 |
728 |
45,231 |
|
|
工事計 |
171,050 |
117,181 |
288,232 |
111,710 |
176,522 |
1.7 |
3,084 |
111,470 |
|
|
製品 |
3,880 |
2,039 |
5,919 |
4,002 |
1,916 |
24.0 |
459 |
4,105 |
|
|
不動産事業 |
16 |
386 |
403 |
386 |
16 |
- |
- |
386 |
|
|
兼業計 |
3,897 |
2,425 |
6,322 |
4,389 |
1,933 |
23.8 |
459 |
4,491 |
|
|
合計 |
174,948 |
119,607 |
294,555 |
116,099 |
178,455 |
2.0 |
3,543 |
115,961 |
|
(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更あるものについては、当期受注高にその増減を含んでおります。
2.次期繰越高の施工高は手持高のうち工事及び製品の支出金より推定したものであります。
3.当期施工高は、(当期売上高+次期繰越施工高-前期繰越施工高)に一致します。
なお、不動産事業の当期施工高は当期売上高と一致しております。
②受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
|
期別 |
区分 |
特命(%) |
競争(%) |
計(%) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
土木工事 |
6.7 |
93.3 |
100.0 |
|
建築工事 |
39.0 |
61.0 |
100.0 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
23.1 |
76.9 |
100.0 |
|
建築工事 |
17.0 |
83.0 |
100.0 |
③完成工事高
|
期別 |
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
|
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
土木工事 |
12,950 |
47,345 |
60,295 |
|
建築工事 |
2,925 |
29,028 |
31,953 |
|
|
計 |
15,875 |
76,373 |
92,249 |
|
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
土木工事 |
10,034 |
56,338 |
66,372 |
|
建築工事 |
3,815 |
41,522 |
45,337 |
|
|
計 |
13,849 |
97,860 |
111,710 |
(注)1.完成工事高のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度請負金額10億円以上の主なもの
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西日本高速道路株式会社 |
中国自動車道(特定更新等)大谷橋他2橋床版取替工事 |
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東日本高速道路株式会社 |
常磐自動車道 大久川橋(PC上部工)工事 |
|
東京ガス不動産株式会社 |
中原賃貸住宅新築工事 |
|
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
北陸新幹線、越前・敦賀間軌道スラブ製作運搬 |
|
株式会社LeTech |
(仮称)麹町444プロジェクト |
当事業年度請負金額10億円以上の主なもの
|
西日本高速道路株式会社 |
中国自動車道(特定更新等)成羽川橋他2橋床版取替工事 |
|
首都高速道路株式会社 |
(修)構造物改良工事1-206 |
|
東京応化工業株式会社 |
2023倉庫建設工事 |
|
滋賀県 |
大津能登川長浜線補助道路整備工事 |
|
中日本高速道路株式会社 |
東海環状自動車道 北勢第三高架橋第一工区(PC上部工)工事 |
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
|
西日本高速道路株式会社 |
17,419百万円 |
17.8% |
|
中日本高速道路株式会社 |
15,293百万円 |
15.7% |
当事業年度
|
中日本高速道路株式会社 |
26,174百万円 |
22.5% |
④手持工事高
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(2024年3月31日現在) |
|
区分 |
官公庁(百万円) |
民間(百万円) |
合計(百万円) |
|
土木工事 |
15,812 |
110,079 |
125,892 |
|
建築工事 |
826 |
49,803 |
50,630 |
|
計 |
16,639 |
159,883 |
176,522 |
(注)手持工事のうち請負金額10億円以上の主なもの
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西日本高速道路株式会社 |
令和5年度 九州自動車道(特定更新等) 桑の丸橋(上り線)他2橋床版取替工事 |
2027年5月完成予定 |
|
中日本高速道路株式会社 |
西湘バイパス(特定更新等) 滄浪橋他1橋塩害対策工事(2023年度) |
2027年8月完成予定 |
|
株式会社丸仁ホールディングス |
(仮称)大田区東矢口1丁目計画新築工事 |
2025年1月完成予定 |
|
西日本高速道路株式会社 |
岡山自動車道 有漢高架橋(PC上部工)工事 |
2026年7月完成予定 |
|
岩手県 |
佐比内トンネル |
2026年2月完成予定 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り、仮定を使用する必要があります。当社グループの重要な会計方針のうち、見積り及び仮定の重要度が高いものは以下であります。
a.原価進捗度に基づく収益認識
b.工事損失引当金
c.固定資産の減損
d.退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債
e.繰延税金資産の回収可能性
なお、詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度に比べ199億67百万円(18.3%増)増加し、1,292億94百万円となりました。
土木事業は、大規模更新継続契約案件及び新設橋梁工事等の受注、大規模更新・修繕事業等の工事が進捗し、また設計変更の獲得、利益好転等により売上高は前連結会計年度に比べ82億3百万円増加し、784億51百万円となりました。建築事業は、大型医療施設等の受注、豊富な繰越工事が順調に進捗し、売上高は前連結会計年度に比べ118億77百万円増加し、484億14百万円となりました。製造事業は、受注が減少したことから前連結会計年度に比べ2億2百万円減少し、16億98百万円となりました。その他兼業事業につきましては、不動産賃貸先の増加により前連結会計年度に比べ88百万円増加し、7億30百万円となりました。
売上原価は、前連結会計年度に比べ167億6百万円(17.8%増)増加し、1,105億6百万円となりました。売上原価については、省力化、合理化により原価低減に努めたため、売上原価率が減少しました。売上総利益率は、売上原価率の減少により前連結会計年度の14.2%から0.3ポイント上昇し14.5%となっております。
販売費及び一般管理費は従業員の待遇改善や株式取得に係るFA費用等により、前連結会計年度に比べ11億48百万円(11.7%増)増加し、109億59百万円となりました。
営業外収益は、前連結会計年度に比べ主に持分法による投資利益が21百万円減少しましたが、受取保険金が37百万円、受取ロイヤリティが27百万円それぞれ増加したことにより、84百万円増加の2億76百万円となりました。
営業外費用は、前連結会計年度に比べ主に労災示談金が40百万円、支払保証料が19百万円それぞれ増加したことにより、82百万円増加の3億60百万円となりました。
特別利益は、固定資産売却益1億38百万円等の計上により1億48百万円となりました。
特別損失は、減損損失2億63百万円等の計上により2億97百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、主に売上高、売上総利益率の増加に伴う売上総利益の増加等により、前連結会計年度に比べ12億64百万円(33.4%増)増加し、50億54百万円となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループを取り巻く事業環境は、民間設備投資あるいは公共建設投資が堅調に推移し、豊富な手持工事を有する一方で、建設業界における就労人口の減少は顕著であり、労働需給バランスの不均衡に起因する人件費・輸送費上昇に加え、設備工事費の高騰による収益面でのリスクが懸念されます。また、本年4月より労働時間上限規制が建設業においても適用開始となりました。人財の確保や育成は当然のことながら、DX推進や現場支援体制の強化による生産性向上が法令順守の鍵であると認識しており、これらに対する取り組みへのさらなる加速が求められます。加えて地球環境保全やカーボンニュートラル対応など、サステナブルな企業経営が求められており、対処すべき経営課題は多岐にわたります。
当社グループは、2030年をゴールとした長期ビジョンの実現に向け、「中期経営計画2022(2022年度~2024年度)」に取り組んでおりますが、高止まりする資材・燃料費の高騰といった収益性悪化のリスクは依然として保有しており、原価管理の徹底と効率的な施工体制の構築に注力してまいります。
昨年12月、当社は大成建設株式会社の連結子会社となりました。この資本業務提携により、ビジネス機会の創出だけでなく、同社が先進的に取り組んでいるサステナビリティ経営でも大きなシナジー効果が得られるよう円滑な関係構築を目指しております。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、従来から工事売上等の営業活動により多くのキャッシュ・フローを得ており、現在及び将来にわたって必要な営業活動及び債務の返済などに備えるために、自己資金のほか金融機関からの借入により資金調達を図っております。当社は、国内金融機関からの借入れについて相対での借入枠を十分確保しており、かつ合計173億円を借入極度額とするコミットメントラインを設定し、長期・短期のバランスを考慮して安定的に資金調達しております。なお、国内グループ会社の資金については当社にて一元管理しており、必要に応じて当社より資金を融通しております。また、海外事業で必要な資金については当社の判断によりグループ会社に直接投資を行っている他、グループ会社の金融機関からの借入れについて当社が債務保証を行っております。
これらの営業活動及び財務活動により調達した資金については、事業運営上必要な流動性を確保することに努め、機動的かつ効率的に使用することで金融負債の極小化を図っております。今後の投資についてはICT関連投資、老朽化した工場設備への計画的な更新、機械化施工に向けた設備投資等を進める方針でありますが、これら投資資金については自己資金及び金融機関からの借入れにより調達する予定であり、不要な有利子負債の圧縮のため、投資計画の妥当性を考慮して資金の使用時期と金額を判断しております。
今後とも入出金の厳格な管理により「営業活動によるキャッシュ・フロー」の獲得を実現し、財務体質の向上に努めていく所存であります。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「中期経営計画2022(2022年度~2024年度)」において収益力・資本効率向上について指標を定めております。各指標の達成状況は下グラフに記載した計画対比のとおりです。
中期経営計画2022の2年目となる当連結会計年度は、大企業を中心とした設備投資が堅調に推移しており、市場全体が回復基調にある事業環境となりました。土木事業では、高速道路各社の大規模更新・修繕事業や東海環状自動車道路工事等のプロジェクトの進行により、受注高は土木、建築とも中計目標を大幅に上回りました。売上高についても、豊富な繰越工事が順調に進捗し、土木、建築とも中計目標を大幅に上回りました。
利益については、増収と設計変更の獲得や原価改善等により増益となり、販管費は従業員の待遇改善や株式取得に係るFA費用等により増加しましたが、売上総利益の増加が上回り、営業利益、経常利益、当期純利益とも中計目標を上回りました。各部門についての分析・検討は以下のとおりです。
土木事業については、受注高は高速道路各社の大規模更新継続契約案件や新名神4車化工事の獲得等により、売上高、売上総利益は豊富な手持ち工事の順調な進捗や大規模更新・修繕事業の設計変更の獲得等により目標を大幅に上回りました。
建築事業については、全体として、企業の設備投資意欲が堅調に推移しており、引き続き厳しい競争環境のなか、共同住宅や大型医療施設等の建設工事を受注しました。売上高・売上総利益についても土木事業と同様、豊富な繰越工事が順調に進捗し、目標を上回りました。
営業利益率、ROEは目標値を上回りましたが、ROAは総資産が計画より増加したこともあり、若干目標値を下回る結果となりました。D/Eレシオは借入金残高の増加等により目標値に達しておりません。他方、配当については利益の積み上げにより自己資本比率の上昇を受け期首予想より増配した結果、配当性向は40.5%となりました。
設備・不動産投資では、札幌高齢者施設の完成や、工事用機械の取得等を実施しました。
セグメントごとの経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容は(1)経営成績等の状況の概要、①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりであります。
当社は、2023年11月9日の取締役会において、大成建設株式会社(以下「大成建設」という。)との間で資本業務提携契約(以下、本契約という。)を締結することを決議し、同日付で本契約を締結いたしました。
(1)契約の目的
当社は、大成建設との間で、両社の連携を強化しグループシナジーを発揮することで、両社の企業価値の向上を図ることを目的として、本契約を締結しております。
(2)本契約の主な内容
①国内PC橋梁事業
・大成建設グループにおける国内PC橋梁事業について、当社を中心とした体制に移行させる。
・大成建設グループの国内PC橋梁事業を当社に移管するために、両社は、それぞれ2026年の年末を目途に具体的な方策を定めること及び2028年の年末を目途に当社に移管することについて協議する。
②建築事業
・大成建設は、当社において、大成建設グループ傘下に入ることによる他社からの受注減少並びに所属する企業グループからの離脱に関連する受注減少等を上回るシナジーが創出されるよう、大成建設の持つPC・PCa案件やリニューアル案件をはじめとした営業情報並びに最新技術やノウハウ等の提供、その他必要な協力を行う。
③取引先等
・当社は、既存の取引先及び協力会社のネットワーク、資材の調達先等のサプライチェーン等を維持できるとともに、当社の判断により、取引先、協力会社及び調達先等を決定できる。
・当社が大成建設のネットワーク及びサプライチェーンの活用を希望する場合、大成建設はこれに協力する。
④経営体制等
・大成建設は、当社株式の上場廃止原因に該当することとなることが合理的に見込まれる行為を行わない。
・大成建設は、当社の経営上の独立性を維持するとともに、当社の意思決定について、株式発行を行う場合等の一定の事項を除き、大成建設の承諾を要しないものとする。
・大成建設は、当社の取締役が上場会社の取締役としての忠実義務及び善管注意義務を尽くす上で親会社以外の少数株主を含む株主共同の利益を図ることが必要となることを認識するとともに、当社の取締役会が、株主共同の利益を図る観点から業務を遂行するために必要な施策を採択し、これを実施することを尊重する。
・大成建設は、当社の常勤取締役1名、非常勤取締役1名、監査役1名に限り指名することができる。
⑤株式の取扱い
・大成建設は、当社の事前の同意がある場合を除き、直接又は間接を問わず、単独で又は第三者と共同して、当社株式を取得又は承継しない。但し、議決権割合が50.1%を下回ることが合理的に確実であると両社間で合意した場合、議決権割合が50.1%を下回った場合、大成建設は、議決権割合を50.1%に維持し又は到達させるために最低限の数の当社株式を取得することができる。
当社グループの研究開発活動は、社会のニーズを的確に把握し効率的に成果を上げるため、本社に技術開発部門を配置して行っています。プレストレストコンクリート技術及び在来技術の改良に加え、新しいニーズに応えるため、先進技術の調査、情報の収集を積極的に推進しています。また、自社研究に加え、産・学・官との共同研究にも積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発活動の主な成果並びに主要案件は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は
(1)土木事業及び建築事業共通
生産性向上のための技術開発及びシステム開発は当社にとって喫緊の課題であり、早急に具体的な成果を得ることが求められています。そこで、土木、建築、技術、管理の各本部及びグループ会社で情報を共有し一元的に管理し、研究開発活動を強力に推進する組織「PSMAX推進委員会」を2019年に立ち上げ活動を行っています。
ここでは主にICT技術を活用して情報化と機械化を融合進化させ、当社グループ独自の建設システムを構築することを目的としています。
また、PSMAXの開発技術を当社及びグループ会社に広く展開するために「PSMAXフォーラム」をWEB開催し、開発技術の適用事例紹介と意見交換を行いました。
(2)土木事業
①環境負荷低減コンクリートの開発
地球温暖化の抑制策として、プレキャスト部材の製造工場からのCO2排出量を削減する取組みと、CO2排出量が小さい材料を用いたコンクリートの開発を行っています。
従来、プレキャスト部材の製造時にはコンクリートの初期強度発現を促進させるため蒸気による加熱養生を行ってきました。蒸気養生は重油を燃料とするボイラーにより稼働するため多くのCO2が排出されます。このため、蒸気養生を不要とすることが可能な常温で高い初期強度を発現するプレキャスト部材用の速硬コンクリートの開発を行い,実用化することができました。
コンクリート材料においては製造時に多くのCO2を排出するセメントを、CO2排出量が少ない高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材で大量に置換して使用し、材料由来のCO2排出量を大幅に削減可能なコンクリートを開発しています。また、CO2を吸着させたCCU材料をコンクリートの使用材料とすることによるCO2排出量の削減する研究を進めています。
今後も使用材料及び部材製造過程におけるプレキャストコンクリートに関する環境負荷低減技術を開発・提案していきます。
②高強度コンクリートを用いた低桁高PC桁工法の開発
近年、河川改修や都市再開発事業において桁下空間の確保など、建築限界の制限による厳しい架橋条件に対して低桁高橋梁の需要が増えています。このニーズに応えるため、高強度コンクリートを用いた低桁高PC桁工法「ダックスビームHC工法」を開発しました。本工法は設計基準強度100N/mm2の高強度コンクリートを用いることで、設計基準強度が50~60 N/mm2の一般的なPC桁に比べ、より低桁高で大きな支間に適用することができます。本工法は2023年5月、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録され、次いで同年7月に民間企業発注の橋梁建設工事に初めて採用されました。今後、施工実績を積み重ね、低桁高や軽量化(少主桁化)が要求される橋梁工事への適用増加が期待されます。
③大規模更新関連技術の開発
大規模更新工事に対応する技術として、高速道路などの床版取替工事において、高圧電線と交差して大型クレーンや既存の床版架設機では十分な離隔を確保できない等、施工環境の制約がある場合にも対応でき、さらに施工の高速化を実現する低空頭型床版架設機の開発を行いました。
取替え用のプレキャストPC床版については、床版上面の薄層を超緻密高強度繊維補強コンクリートに置換することで,橋面防水を不要として現場工程を短縮する技術の開発を行いました。
また、既設の中空床版橋の耐震補強に対し、従来の手法で設置が困難であった落橋防止等の定着用アンカーを容易に設置する工法を開発しました。2024年度の実施工を目指し、営業展開を行っています。
④効率的なコンクリート脱塩工法「LAC脱塩工法」の開発
脱塩工法とは、コンクリート表面に配置した陽極材と内部鉄筋との間に電流を流すことで、コンクリートに浸透した塩化物イオンを抽出する工法です。「LAC脱塩工法」は、カートリッジ化した線状陽極材を適切な間隔で配置することで、詳細な通電管理による脱塩状況の把握が可能となり、従来工法と比較して産業廃棄物の低減、現場施工の省力化が図れるという優れた特長を持っています。この当社独自のLAC脱塩工法が、凍結防止剤(塩化物)が多く散布される寒冷地山間部の橋台で試験採用され、脱塩効果を実証しました。また、海岸部に長年架設されたPC橋梁に対する大規模修繕工事を本工法により受注しており、さらなる効率的な工法へと実証試験を重ねています。
土木事業に係る研究開発費は
(3)建築事業
PCa(プレキャスト)基礎フーチングの開発
建築部門におけるプレキャスト化の拡大・推進に向けて、杭基礎フーチングのPCa化を目的として、PCa基礎フーチングの開発を実施しています。本開発では柱梁の鉄筋やアンカーボルトが交錯し、現場施工が煩雑となる基礎フーチング部分をプレキャスト化することで、現場施工の省力化や工期短縮を図るものです。2023年度は、杭と基礎フーチングの接続部の基本性状を確認する載荷実験を実施し、2024年度も継続して開発を進める計画です。
建築事業に係る研究開発費は