第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) T-2026 進捗状況

(総括)

当社グループにおいては、2024年2月に2024年から2026年までの3年間を対象とするローリング中期経営計画「T-2026」を策定・開示し、「主力事業の収益基盤強化」「事業ポートフォリオマネジメントの高度化」「サステナビリティ経営の推進」の3つの基本方針を掲げ、事業活動を展開してまいりました。黒鉛電極事業では国内黒鉛電極生産の集約や欧州拠点の生産能力削減等の構造改革に着手し、スメルティング&ライニング事業においても構造改革の検討を開始しました。カーボンブラック事業やファインカーボン事業においては、将来を見据えた製品の高付加価値化や生産能力拡充を着実に進めました。対面業界である鉄鋼の市況低迷や新興勢力との価格競争激化、アルミ電解用カソードの需要減退と競合の積極攻勢による売価の低下、EVの成長鈍化に伴うパワー半導体市場の減速等が影響し、T-2026初年度の当社グループの2024年実績は、当初想定した売上高3,700億円、営業利益230億円に対して、売上高3,501億1千4百万円、営業利益193億8千6百万円の減収減益、また、黒鉛電極及びスメルティング&ライニング事業において特別損失を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は567億3千6百万円という結果となりました。

 

(主力事業の収益基盤強化)

カーボンブラック事業は、サステナブルな供給体制の確立を目指し、タイの新工場への移転プロジェクトに取り組みました。ファインカーボン事業は、黒鉛素材生産能力増強を計画通り進めると共に、今後、拡大が見込まれる先端素材、多結晶SiCについて、2024年5月にフランスのSoitec社と戦略パートナーシップを締結しました。黒鉛電極事業は、世界的な鉄鋼生産低迷による電極需要の減退に加え、新興国の低価格品のアジア・欧州市場への流入等、構造的な課題を抱えており、国内生産拠点の集約や欧州拠点の生産能力削減等の改革に着手しました。黒鉛電極同様、構造的な課題を抱えるスメルティング&ライニング事業においても、抜本的な構造改革の検討に着手しました。

 

(事業ポートフォリオマネジメントの高度化)

2021年11月に決議した「事業ポートフォリオマネジメント基本方針」に基づき、自社の資本コストを踏まえた収益力・資本効率性の目標設定とモニタリングに加え、長期ビジョンとの整合性や中長期的な成長等の視点も加味して、適切に事業ポートフォリオの分析・評価を実施しております。2024年12月には、成長性と資本収益性を踏まえた「選択と集中」の一環として、成長事業であるファインカーボン事業において、米国市場でパワー半導体、航空宇宙産業等への販路拡大をすべく、米国・黒鉛加工拠点を完全子会社化しました。

 

(サステナビリティ経営の推進)

2022年1月に発足したカーボンニュートラル推進委員会を中心に、2050年カーボンニュートラル実現を果たすべく、2030年にはCO2排出量の25%削減(2018年比)を目指すとともに、社内外関係者と協働した関連技術の探求・調査にも取り組んでいます。また、2023年度より、役員報酬にサステナビリティ・パフォーマンスを連動させたほか、従業員エンゲージメント・サーベイを活用したエンゲージメント向上策にも取り組んでいます。今後も「先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献する」という長期ビジョンに向けて、サステナビリティ経営を推進してまいります。

 

② 対処すべき課題

当社は、3ヶ年の中期経営計画をローリング方式で年次更新してまいりましたが、今回、従来の中期経営計画に替え、2030年のありたい姿とそこに到達するための取り組み「Vision 2030」を策定しました。「抜本的な構造改革」「成長市場へのコミット」「サステナブルな価値創出」の3つに取り組むことで事業ポートフォリオの変革を目指します。「抜本的な構造改革」に関しては、黒鉛電極事業とスメルティング&ライニング事業につき、短期集中で収益改善に向けた構造改革を完遂します。「成長市場へのコミット」に関しては、カーボンブラック事業に長期的な利益をもたらす設備投資を行い、ファインカーボン事業と工業炉事業は半導体市場の成長を支える設備投資によって生産能力の拡大と新規市場の開拓に努めます。「サステナブルな価値創出」に関しては、持続可能な社会の実現のためのソリューションを提供価値とし、喫緊のカーボンニュートラル対応を推進する一方、人的資本を重視した経営にも取り組んでまいります。これらの取り組みを通じ、2030年のありたい姿として、売上高5,000億円、EBITDA20%、ROIC12%を目指してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次の通りです。

なお、文中の将来に関する記載事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ基本方針

東海カーボングループは、ステークホルダーとの「信頼の絆」を基本理念に掲げ、企業活動を行っています。ステークホルダーからの信頼に確実に応えるべく、ESG(環境、社会、ガバナンス)に十分に配慮して経営戦略を立案し、事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで、持続的な企業価値向上を図るとともに持続可能な社会の実現に貢献します。

 

(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

2022年1月、取締役会の任意の諮問委員会としてサステナビリティ推進委員会を設置しました。社長を委員長とし、総務・法務部管掌役員、経営企画部管掌役員、人事部管掌役員、開発戦略本部長、技術本部長、主要4事業部長で構成され、原則四半期毎に開催することとしています。同委員会は、サステナビリティに関する重要事項について討議し、取締役会に付議・報告するほか、統合報告書作成等のサステナビリティに関する情報開示の統括も担っています。

また、気候変動に関しては、2021年5月に発足したカーボンニュートラル推進プロジェクトを、2022年1月に、社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会として委員会化することにより、体制を強化しました。当社カーボンニュートラル対応の司令塔として、カーボンニュートラルに関する全社方針・計画を起案するとともに、産官学連携による社外第三者との共創も活用した取り組み状況をモニタリングし、取締役会に付議・報告を行っております。

 

②リスク管理

当社グループは、取締役会の任意の諮問委員会としてリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。同委員会では、顕在化する可能性と顕在化した際の財務影響の観点から、気候変動リスクを含む重要リスクを評価・選定した上で、当該重要リスクへの対応状況を含めて、取締役会に報告しております。

 

 サステナビリティ推進体制図

 


 

 

(3)重要なサステナビリティ項目

①気候変動対応

a. 戦略

当社グループは、気候変動への対応を経営の重要課題として認識し、2021年11月、取締役会決議を以て、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)への賛同を表明しました。

当社グループの気候変動におけるリスクと機会をより適切に把握するため、2020年12月にTCFD提言の要求項目であるシナリオ分析によるビジネスインパクトの初回の算定を実施し、2023年5月に見直しを実施しました。気候変動が事業に及ぼす影響を特定し、対策を進めています。

 

(シナリオ分析)

対象事業

2022年時点で当社売上の約9割を占める主要4事業(黒鉛電極、

カーボンブラック、ファインカーボン、スメルティング&ライニング)

時間軸

2030年・2050年 ※2050年の参照データが無い場合は2040年

 

 

(4℃シナリオ)物性リスクは大きく、移行リスクは相対的に小さい

事業

要因

機会/リスク

想定される当社への財務影響

戦略・対応

4事業共通

台風・洪水・集中豪雨の増加による生産活動の停止やサプライチェーン分断

物理リスク

BCP対策によって、操業に甚大な影響を及ぼすリスクは限定的だが、今後想定を超える事象が発生した場合、影響を受ける可能性がある

中長期的な視野でのBCP対策の実施および定期的な見直し

 

 

(1.5℃シナリオ)移行リスクは大きく、物理リスクは相対的に小さい

 

事業

要因

機会/リスク

想定される当社への財務影響

戦略・対応

4事業共通

カーボンプライシングの導入拡大による負担増

移行リスク

当社事業における原材料の殆どが化石燃料由来であり、エネルギー起源である化石燃料の燃焼や電力の使用によるCO2排出だけでなく、生産プロセスで排出されるCO2排出量も含めた場合、カーボンプライシング導入拡大による負担は甚大

燃料転換、再生可能エネルギー活用、CO2回収、製品再生等によるCO2排出量の削減

4事業共通

 

再生可能エネルギー利用義務化(利用が不可避)

移行リスク

当社事業の生産工程で使用するエネルギーのうち、電力の占める割合は高く、再生可能エネルギー由来の電力購入は操業コストの増加につながる

・社会の再生可能エネルギーの普及が進むことに伴うCO2排出係数の低下
・再生可能エネルギーの効率的な調達検討

4事業共通

・化石燃料由来の原料を使用しない技術の普及
・低炭素製品の需要増、化石燃料由来原料に対する消費者意識の変化

移行リスク

化石燃料由来の原料を使用する製品に対し、代替原料使用圧力が高まることによる売上減少。また、代替原料を使用した製品開発に向けた研究開発費増加

CB事業では、化石燃料由来以外の原材料活用、使用済みタイヤの再利用、エネルギーの回収・再利用等の技術開発を推進。製品製造時のCO2排出量を削減することによる製品の付加価値向上、カーボンプライシングの負担減少によるリスク要因極小化を目指す

電極

電炉の優位性の高まり

機会

黒鉛電極の需要増加

・更なる高品質な黒鉛電極の製造追求
・需要増加の機を捉えた安定供給

 

 

b. 指標と目標

(目標)

当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年までにCO2排出量25%削減(2018年比)を目指します。


(実績)

東海カーボングループの2024年GHG排出量は、再生可能エネルギーの活用や環境負荷の低い燃料への転換等により、2018年比約33%削減となりました。カーボンブラック事業においては、使用済タイヤからカーボンブラックを再生させる共同技術プロジェクトを開始しました。本プロジェクトはGI基金(※1)の助成を受け、研究開発・実証から社会実装までを目指します。更に検討を進めている開発や革新技術導入、お客様・お取引先様・業界団体等との協働等を加速させ、目標達成に向け取り組んでいきます。

 

(※1) GI基金:グリーンイノベーション基金。NEDOに創設された総額2兆円を超える基金で、カーボンニュートラル実現に向けた企業等に取り組みに対して、最長10年間の継続的な支援を行うもの

単位:千tCO2e

 

2018年(基準年)

2023年実績

2024年実績(※2)

GHG排出量(Scope1+2)

3,056

2,219

2,044

Scope1

2,430

1,900

1,742

Scope2

626

318

302

基準年対比

-

27%削減

33%削減

 

(※2)2024年実績は、速報値。第三者保証取得後の値については、2025年6月頃、統合報告書およびホームページにて掲載予定。

 

[対象範囲]

CO2

連結の全生産拠点および本社・支店・研究所

CH4、N2O

連結のCO2排出量の約98%をカバーする主要生産拠点

 

 

[集計対象期間]

1月~12月

[算出方法]

CO2、CH4、N2Oの各ガスの地球温暖化係数を用いてCO2相当の排出量を計算している。HFCs、PFCs、SF6は排出量が微量であるため、集計対象外としている。

Scope1:企業活動による温室効果ガスの直接排出量とし、エネルギー起源GHG排出量および非エネルギー起源GHG排出量(工業プロセスによる排出)を集計。なお、非エネルギー起源GHG排出量は、原則として原料・副資材の使用量と製品・廃棄物の収支より算出。

Scope2:

• 企業活動のエネルギー利用にともなうCO2間接排出量。

• GHG プロトコルのマーケット基準手法を採用。国内は地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電気事業者別の排出係数を利用。海外は電気事業者が公表している排出係数(但し、一部の工場はIEAまたは国・地域で公表している最新の排出係数)を利用。

 

②人的資本

a.戦略

(人材の育成に関する方針)

当社グループの企業理念は「信頼の絆」、行動指針は「誠実」「変革」「挑戦」「共創」「スピード」です。当社グループは、これら企業理念や行動指針に共鳴頂ける人材を採用し、加速度的に変化する時代の中で、社内外の、多様な価値観やバックグラウンドを持つ仲間たちと積極的に協働して、スピード感を持って果敢に変革に挑戦することによって、持続可能な社会の実現に貢献できる人材を育成していきます。

 

(社内環境整備に関する方針)

当社グループは、長期ビジョン「先端素材とソリューションで、持続可能な社会の実現に貢献する」に向けて、多様な価値観やバックグラウンドを持つ社員が切磋琢磨し成長していける、自由闊達で風通しのよい組織・カルチャーを醸成していきます。

働き方改革を推進し、多様な人材を惹きつける、適切な人事制度・競争力のある処遇を実現する一方、社員の成長をサポートすべく、社員のステージや特性・希望を踏まえた、様々な研修プログラムを用意しています。社員の人権を最大限尊重し、ハラスメントは許しません。「東海カーボン健康経営宣言」を踏まえ、社員とその家族の健康を重視した経営に努めるとともに、年金制度や従業員持株会制度を通じて、社員の資産形成もサポートしていきます。

 

b.指標と目標

当社グループは人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、目標を設定し進捗を管理しています。2025年度の目標および2024年度の実績は次の通りです。

2025年度目標

2024年度実績

対象範囲

総合職新卒女性社員の採用比率30以上

33.3

(2024/4/1入社)

単体

女性社員の管理職比率を2024年:3.8%から2027年までに5.6以上に引き上げる

3.8

単体

労働災害度数率の低減

(度数率1.10以下)

1.11

連結(グローバル)

 

 

 

3 【事業等のリスク】

1.リスク管理体制

業務運営上の損失の危険を回避するため、経理・財務管理、取引先管理、輸出管理、環境・防災管理、品質管理、情報管理及び投資管理等に関連する規程・規則に則り、日常的なリスク管理を各担当部署が実施するとともに、原則四半期毎に開催されるリスク・コンプライアンス委員会にてリスク及びコンプライアンスに関する重要事項について討議し、その結果を踏まえ、関係室部等に対する助言、取締役会他経営に対する報告・提言を行うことにより、リスクの把握と改善に努めております。また、子会社管理規程に基づき、当社及び当社グループ会社に著しい損害を及ぼす可能性のある事項が当社関係部署及び当社監査役に報告される体制を構築しております。

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

2.個別リスク項目

(1) 金融・経済・社会環境に関するリスク

① 自然災害、感染症、戦争・テロ

大地震、津波、台風、洪水等の自然災害や感染症の流行、戦争・テロ行為等は、当社事業の継続に影響を及ぼしかねない重大なリスクです。当社グループでは、これらの影響を低減するため、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定をはじめとする事業継続マネジメントに取り組み、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集等を進めておりますが、こうした取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 気候変動リスク(カーボンニュートラル対応)

2016年開催の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択、各国で批准されたことを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが世界的に進められ、既に、一部の国・地域では、炭素税等の温室効果ガス排出量削減策が導入されております。当社グループは、2022年1月にカーボンニュートラル推進委員会を設立し、当社グループカーボンニュートラル対応の司令塔として、全社方針・戦略を起案するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、課題や取り組みを可視化し一元的に管理していますが、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 内外経済環境

当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向は当社グループ業績に影響を及ぼします。ウクライナ危機の長期化や中東情勢の不安定化、中国経済の減速、米中の対立激化、保護主義的通商政策の拡がりとサプライチェーンの混乱、気候変動対応を巡る混乱等、トランプ大統領再選も相俟って、世界経済を巡る不確実性が顕在化していますが、これらが一層悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 為替レートの変動

当社グループは、原材料の輸入、製品輸出等、国際的な事業活動を行っており、その取引において外国通貨を用いていることから、為替レートの変動が当社グループ業績に影響を与えます。また、当社の海外における連結子会社・持分法適用関連会社の収益や費用については期中平均相場により円換算されており、為替相場の変動が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいて、特に影響の大きい、米ドル・ユーロに対する円高は、グループ業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を及ぼす傾向にあります。

なお、為替レートの変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

 

 

⑤ 資金調達・金利変動

当社グループは、当社グループとして必要な資金を金融機関からの借入の他、社債、コマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。資金調達に際しては金融市場の動向を睨みながら資金繰り管理や安定的な資金確保に努めております。しかしながら、金融環境の急激な悪化により、資金調達の安定性が損なわれたり、著しく不利な資金調達を余儀なくされたりする局面においては、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、市場金利の変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

⑥ 保有有価証券

当社グループは、事業機会の創出・維持や取引・協業関係の構築・維持・強化等を通じ、中長期的な企業価値向上が図れると判断した場合に、取引先等の株式を取得・保有することがあり、定期的にその効果検証を行うことにより、保有方針を見直すこととしております。しかしながら、かかる有価証券には、市場性のある株式も含まれるため、内外経済及び株式市場の環境悪化や投資先の経営状況悪化により株価が下落した場合には、保有株式に評価損が発生する可能性があります(「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。

なお、投資有価証券の価格変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。

 

(2) 業界・事業に関連するリスク

① 競合他社との競争(品質・技術・価格競争力低下)

当社グループは、各事業分野において、様々な企業との厳しい競争環境下にあり、この結果、多くの製品は価格低下圧力に晒されております。当社グループとしては、市場ニーズの把握、技術力の追求、品質管理の徹底、原価低減や効率性の向上等の努力を重ねていきますが、十分な成果が上がらない場合には、マーケットシェアの低下、販売価格の引き下げ等による売上高と利益率の低下を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 国際的な事業展開

当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしておりますが、国際的な事業展開においては、経済・為替の不確実性や政情不安、法制・規制の想定外の変更、宗教・文化の相違、現地での労使問題等、国内事業と異なる様々なリスクが伴います。当社グループがこのようなリスクに適切に対処できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 原材料調達

当社グループにとって、良質な原材料をタイムリーかつ安定的に入手することが不可欠であることから、当社グループは、信頼のおけるサプライヤーを複数選定するとともに、新規サプライヤーの開拓を継続して行っています。しかし、災害、事故、戦争・テロ、感染症の流行等の不測の事態等により、供給が不足または中断した場合には、当社グループの生産に悪影響が生じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、需給の逼迫や投機目的の売買等により、当社グループが調達している原材料の価格が高騰し、生産性向上等の内部努力や売価への転嫁等により吸収できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 研究開発

当社グループは、持続的な企業価値向上のためには研究開発活動は不可欠との認識の下、富士研究所を中心に、次世代に向けた新製品や新規技術の開発を進めております。また、既存事業の製品については、顧客ニーズに適合する新品種の開発や、さらなる品質の向上、画期的なコストダウン等を各事業部の研究所を中心に推進しております。しかしながら、市場トレンドの変化によるニーズの衰退や脱炭素対応の失敗、同業他社の技術革新に対抗できる技術を速やかに開発できなかった場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 経営戦略(買収・業務提携、戦略的投資)

当社グループは、成長戦略の一環として、企業買収、業務提携、戦略的投資につき、積極的に取り組む方針としております。過去に実施した大型M&Aのシナジー現出に向け、生産技術の共有、人材の交流、現地経営陣の監督徹底等に取り組み、経営統合を進めております。しかしながら、経営環境・前提条件の変化等の理由により、当初想定した結果が得られない可能性もあり、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、のれんの減損が必要になる等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 特定業界への依存(特定製品の市況変動)

当社グループの売上の多くは、自動車業界、半導体業界、鉄鋼業界に集中しております。こうした特定業界に依存する体質を改善するため、主にアルミニウム市場を対面業界とする炭素黒鉛製品メーカー2社を買収、2020年7月にはスメルティング&ライニング事業部を新たに設置し、ポートフォリオの分散化を図っております。しかしながら、当社グループの対面業界の景況が大幅に悪化し、ポートフォリオの分散化が十分に機能しないような場合には、売上高と利益率の低下等を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 有能・多様な人材の確保

当社グループの競争力と将来性は、マネジメントはもちろん、研究開発、技術、製造、販売、企画、管理等、各部門における専門的知識や技能を持った有能・多様な人材の確保・育成、定着が重要な課題となります。しかしながら、近年は人材の流動化、少子高齢化による労働人口の減少等により人材の確保に係る競争も厳しくなっております。当社グループは多様な人材の積極的な採用、働き方の柔軟性・多様性を前提とした職場環境の整備、人事制度の見直し、新たな研修制度の導入、実施等を通じて有能・多様な人材の確保・育成、定着に取り組んでおりますが、想定どおりに進まない場合や人材の社外流出を防げないような場合には、業務遂行に制約を受けることにより、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) その他のリスク

① 法令・規制への抵触

当社グループは国内外において、各種の法令・規制に則り、事業活動を行っております。グループ全体として法令遵守の徹底を図っておりますが、法規制には、商取引法、独占禁止法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な政府の許認可規制等があります。今後、新たな法規制の導入や法規制の想定外の変更により、事業活動に対する制約、コストの増加等を通じ、当社グループ業績に悪影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施しておりますが、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分、訴訟等の対象となり、当社グループの社会的評価が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 会計・税制変更

当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され、または当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 知的財産権

当社グループは、知的財産を重要な経営資源と位置付け、知的財産管理に関する専門部署を設け、第三者からの知的財産権侵害の発見と保有する知的財産権の管理保護に努めております。しかしながら、見解の相違等の理由により、第三者が特許等への抵触を理由とした差止訴訟や損害賠償請求訴訟等を提起した場合や、第三者による知的財産権侵害により当社グループの競争優位性が脅かされた場合には、係争に多額の費用等が必要となる可能性や当社グループの評判、優位性を損ねる可能性があり、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 労働災害・設備事故

当社グループは、製造業の基本である労働安全と設備事故防止に注力し、全拠点で安全最優先での事業活動に努めております。労働災害は、労働者の健康や人命に関わる重大なリスクであり、当社グループは、安全活動をグローバルで推進し、拠点毎に具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境の形成等、安全衛生水準の向上に努めております。製造設備の停止や製造設備に起因する事故等の発生は、事業活動に支障をきたす重大なリスクであり、潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検・メンテナンスを行っております。しかしながら、不測の事態や不慮の事故等により、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用等により、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 品質・PL

当社グループは、主要な生産拠点において、品質マネジメントシステム(ISO9001)を取得し、品質管理に関する規定、規格及び作業標準等を定め、品質チェック体制を構築し、品質監査を行う等グループをあげて品質向上を継続的に取り組み、製品の品質に万全を期すよう努めております。製造物責任賠償及び一部製品の製品瑕疵に起因して被る損害については保険に加入しておりますが、予測し難い原因により重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起等が発生した場合には、多額のコスト増大や、当社グループの社会的評価の低下とそれによる売上収益の減少が予想されることから、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ DX・情報セキュリティ

当社グループは、デジタル技術活用による製品やサービス、ビジネスプロセスの変革と、新たな価値の創出に取り組んでおります。しかし、取り組みの遅延やIoT、AI等のデジタル技術の進歩に適切に対応できない場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、事業遂行に当たり様々なシステムを構築、運用するとともに、生産技術・研究開発・調達・販売等の機密情報を保有し、その重要性は非常に高まっております。当社グループでは、IT、情報システム及び情報通信ネットワークを厳格に管理し、漏洩や紛失を未然防止する対策及びセキュリティインシデント発生時に影響を最小限に抑える対策を講じております。しかしながら、災害やサイバー攻撃等外的要因や人為的要因等により、障害等が生じると、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩等のインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」をいう。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日まで)の世界経済は、米国が4年半ぶりの利下げを行ったことで米国経済のソフトランディング期待が高まる一方で、欧州・中国経済が引き続き低迷する中、出口の見えないウクライナ情勢、安定化にはほど遠い中東情勢や国内外の政情不安等、世界経済の先行きは不透明な状況が続きました。

このような情勢下、当社グループにおいては、2024年2月に公表したローリング中期経営計画「T-2026」の中で、「主力事業の収益基盤強化」「事業ポートフォリオマネジメントの高度化」「サステナビリティ経営の推進」の3つの基本方針を掲げ、2026年の定量目標として、売上高4,580億円、営業利益530億円、ROS 12%、EBITDA 1,040億円の達成を目指してまいりました。

黒鉛電極事業では国内黒鉛電極生産の集約や欧州拠点の生産能力削減等の構造改革に着手し、スメルティング&ライニング事業においても構造改革の検討を開始しました。一方で、カーボンブラック事業やファインカーボン事業においては、将来を見据えた製品の高付加価値化や生産能力拡充を着実に進めました。しかしながら、対面業界である鉄鋼の市況低迷や新興勢力との価格競争激化、アルミ電解用カソードの需要減退と競合の積極攻勢による売価の低下、EVの成長鈍化に伴うパワー半導体市場の減速等により、業績が悪化いたしました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期比3.8%減3,501億1千4百万円となりました。営業利益は前期比49.9%減193億8千6百万円となりました。経常利益は前期比45.7%減225億7千9百万円となりました。また、黒鉛電極及びスメルティング&ライニング事業において特別損失を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は567億3千6百万円(前期の親会社株主に帰属する純利益は254億6千8百万円)となりました。

 
セグメント別の経営成績は下記のとおりです。

 

[カーボンブラック事業]

タイヤメーカーにおける生産調整や一部ノンタイヤ市場での需要減退などにより、販売数量は前期比で減少したものの、コスト上昇分の一部を製品価格に転嫁したことや円安効果により、売上高は前期比で増加しました。販売数量の減少に加え、北米拠点における大型環境設備投資に伴う減価償却費増加等があったものの、為替等の影響により営業利益も前期比で増加しました。

この結果、当事業の売上高は前期比5.6%増1,567億9千3百万円となり、営業利益は前期比1.9%増217億6百万円となりました。

 

[ファインカーボン事業]

パワー半導体向け販売はEV市場成長鈍化の影響を受け減速した一方で、メモリ半導体需要が回復したことに伴い、主要製品ソリッドSiCフォーカスリングの販売数量は前期比で増加しました。

この結果、当事業の売上高は前期18.9%増538億9千万円となり、営業利益は前期17.1%増124億3千7百万円となりました。

 

 

スメルティング&ライニング事業

アルミ製錬炉の巻替え需要減退と一部客先での過剰在庫によりアルミ電解用カソードの需要が減少し、競合の積極攻勢により売価も低下しました。さらに、生産量の低下により固定費負担が増加したため収益が圧迫されました。

この結果、当事業の売上高は前期比22.1%減645億1千2百万円となり、営業損失は137億1百万円(前期営業利益は23億5百万円)となりました。

 

[黒鉛電極事業]

世界的な鉄鋼景気減速により、電炉鋼を含む粗鋼生産は低調に推移しました。電極需要が減少する中、中国及びインドの安価な製品が市場に流入し、電極市況の低迷が続きました。

この結果、当事業の売上高は前期比19.0%減488億1千8百万円となり、営業損失は35億2千9百万円(前期営業利益は7億5千2百万円)となりました。

 

[工業炉及び関連製品事業]

工業炉はエネルギー関連業界の客先プロジェクトの遅れによる納入の後ろ倒しが一部継続したものの、電子部品関連業界の発熱体需要において緩やかな回復が進みました。

この結果、当事業の売上高は前期比4.3%増162億9千1百万円となり、営業利益は前期比14.4%減33億4百万円となりました。

 

[その他事業]

摩擦材

建設機械及び電磁市場向けの売上は、中国市場での需要減退により前期比で減少しました。また、二輪向けの売上も、近年の需要増の反動により前期比で減少しました。

この結果、摩擦材の売上高は前期比11.4%減79億7千4百万円となりました。

負極材

ESS(Energy Storage System)向け及びEV向け需要低迷により、販売数量は前期比で減少しました。

この結果、負極材の売上高は前期比29.2%減17億3百万円となりました。

その他

不動産賃貸等その他の売上高は、前期比2.0%減1億2千9百万円となりました。

 

以上により、当事業の売上高は前期比15.0%減98億7百万円となり、営業利益は前期比68.9%減4億3百万円となりました。

 

 

② 財政状態

(資産の部)

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比7億4千8百万円増6,407億5千3百万円となりました。

流動資産は、現金及び預金や売掛金等の増加により、前連結会計年度末比74億7千2百万円増2,703億6千3百万円となりました。固定資産は、顧客関連資産やのれん等の減少により、前連結会計年度末比67億2千4百万円減3,703億9千万円となりました。

 (負債の部)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比356億9千3百万円増3,155億9千5百万円となりました。流動負債は、事業再編引当金の計上や1年内返済予定の長期借入金等の増加により、前連結会計年度末比107億5千8百万円増1,477億2千9百万円となりました。固定負債は、長期借入金や社債等が増加したことにより、前連結会計年度末比249億3千4百万円増1,678億6千5百万円となりました。

 (純資産の部)

当連結会計年度末における純資産合計は、利益剰余金等の減少により、前連結会計年度末比349億4千4百万円減3,251億5千8百万円となりました。

この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比5.5ポイント減の45.2%となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比86億7千6百万円増651億3千5百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、644億7千1百万円の収入(前期比23億9千6百万円の収入の増加)となりました。

これは主として、税金等調整前当期純損失があった一方で、非現金支出である減損損失や、減価償却費等の計上があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、707億7千7百万円の支出(前期比231億4千5百万円の支出の増加)となりました。

これは主として、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、94億1千万円の収入(前期は145億1千2百万円の支出)となりました。

これは主として、長期借入れによる収入や、社債の発行による収入等によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

 a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

カーボンブラック事業

154,691

+4.9

ファインカーボン事業

56,306

+17.1

スメルティング&ライニング事業

64,510

△22.6

黒鉛電極事業

52,368

△18.9

工業炉及び関連製品事業

13,966

△10.0

その他事業

9,758

△14.9

合計

351,602

△5.1

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

 b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

工業炉及び関連製品事業

11,783

△18.4

9,832

△30.4

合計

11,783

△18.4

9,832

△30.4

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

カーボンブラック事業

156,793

+5.6

ファインカーボン事業

53,890

+18.9

スメルティング&ライニング事業

64,512

△22.1

黒鉛電極事業

48,818

△19.0

工業炉及び関連製品事業

16,291

+4.3

その他事業

9,807

△15.0

合計

350,114

△3.8

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況による分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①  当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の売上高は、スメルティング&ライニング事業及び黒鉛電極事業における販売数量減少や売価下落等により、前期比3.8%減3,501億1千4百万円となりました。売上原価率は、主にスメルティング&ライニング事業及び黒鉛電極事業における生産数量減少に伴う固定費負担の増加等により、4.1%ポイントアップの77.0%となりました。

 販売費及び一般管理費は研究開発費の増加等により、前期比2.1%増612億4千8百万円となりました。この結果、営業利益は前期比49.9%減193億8千6百万円となりました。

営業外収益については、受取利息及び受取配当金の増加等により、前期比14.0%増66億1百万円となりました。営業外費用については、支払利息の増加等により、前期比17.1%増34億9百万円となりました。

特別利益については、持分法適用関連会社であったMWI, Inc.の株式を追加取得・子会社化したことに伴う段階取得に係る差益65億4千9百万円を計上しております。特別損失については、当社及び連結子会社において減損損失681億3千4百万円計上しております。この結果、税金等調整前当期純損失は476億4千5百万円(前期は税金等調整前当期純利益419億9千8百万円)となりました。

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比59.9%減53億4百万円となり、また、非支配株主に帰属する当期純利益に37億8千6百万円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純損失は567億3千6百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益254億6千8百万円)となりました。

また、当連結会計年度末の総資産については、流動資産は現金及び預金や売掛金等の増加により、前連結会計年度末比74億7千2百万円増2,703億6千3百万円となり、固定資産は顧客関連資産やのれんの減少により、前連結会計年度末比67億2千4百万円減3,703億9千万円となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a. キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、 (1) ③ キャッシュ・フローに記載のとおりであります。

b. 財務政策

当社グループは、持続的な成長と株主価値の向上を目指し、資本効率の向上、財務健全性の維持、流動性の確保、及び金融費用の抑制を基本方針としております。

資本効率を高めつつ、事業成長を支える強固な財務基盤を確保する最適な資本構成の下でハードル・レートを考慮した資本配分を行い、収益拡大を図ります。

グループ全体の資金調達は本社が一括して行い、GCMS(グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム)を活用することで、手元資金の効率化を追求しております。資金調達は、事業により生み出される営業キャッシュ・フローと手元資金を基本とし、これを超える投資などの外部資金需要が生じた場合には、金融機関からの借入や社債発行など負債調達を基本に、市場環境に応じた最適な調達手段を選択することとしております。

また、金利変動リスクや流動性リスクについては、リスク量のモニタリングと分析に基づき適切にコントロールし、金融費用の抑制を図っております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5  経理の状況    連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表  注記事項  (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  (1) 連結財務諸表 注記事項  (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社は、企業の持続的な成長と中長期的な価値向上のために、研究開発活動は重要な取り組みの一つと位置付けております。

そのため、当社グループ(当社及び当社の関係会社)では、当社の開発・技術部門と連携のもと、富士研究所、茅ヶ崎研究所、知多研究所、田ノ浦研究所が主体となり、基礎研究をベースにした新製品の開発、生産技術研究及び既存製品の高性能化、品質改良等諸研究開発を積極的に推進しております。また、自社の技術や製品の保護と他社技術に対する抵触回避という観点から、開発戦略本部の傘下に知的財産部を置き、関係部署間の迅速な情報共有と技術的なシナジーの発現により、研究開発活動を支えています。研究開発活動の内容は、定期的に取締役会に報告する仕組みとしております。なお、当社グループの研究開発活動の内容及び金額は、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、一括して記載しております。

 

(主な研究開発の内容)

当社において、成長分野に位置するファインカーボン、ファインセラミックスは優れた材料特性を有し、用途は多岐にわたりますが、近年、エネルギー関連、半導体、エレクトロニクス、環境分野への伸びが著しく、これらのハイテクニーズに合った製品の開発を行っております。

東海高熱工業㈱においては、電子部品及び二次電池関連向けに高性能工業炉及び炭化けい素製品の商品開発を進めております。

また、“先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献する”という長期ビジョンであるカーボンニュートラルに関連する特許出願にも注力しており、特許登録件数の割合は増しております。

 

(研究開発費の金額)

当連結会計年度の研究開発費は4,334百万円であります。