第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)経営の基本方針

  当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。

 

(2)目標とする経営指標

  当社は、高成長・高収益企業の実現に向けて、売上高及び税引前利益の持続的な2桁成長を目指します。

 

(3)中長期的な経営戦略

  当社は、セラミック等の素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる経営資源をグループ内に有しています。各々の事業における連携を強化し、グループの総合力を最大限に発揮することで、既存事業の拡大及び新規事業の創出を図り、高成長・高収益企業を目指します。既存事業の拡大に向けては、ロボットやAI(Artificial Intelligence、人工知能)等、先端技術の活用による生産性の改善及びプロセス改革による一層の原価低減に取り組み、シェアアップに努めます。また、新規事業の創出に向けては、技術面での一層の社内シナジーの追求及びM&Aや外部協業により、新たな製品開発や、事業領域の拡大に取り組みます。

 

(4)対処すべき課題等

a.重点市場での事業拡大

  当社は、「情報通信市場」、「自動車関連市場」、「環境・エネルギー市場」並びに「医療・ヘルスケア市場」を重点市場と捉え、この4つの市場での既存事業の拡大及び新規事業の創出により、売上及び利益の拡大を目指します。

 

  「情報通信市場」においては、引き続き高機能化が期待されるスマートフォン向けの高付加価値な部品やデバイスの拡販に努めるとともに、需要の増加が見込まれる5G(第5世代移動通信システム)やIoT等の新たな事業機会の獲得に向けて、部品、デバイスから、機器、システムまで幅広く事業を展開している強みを活かし、新製品開発並びにサービスの提供に努めます。

  「自動車関連市場」においては、コネクテッドカーの普及拡大や自動運転の実現に向けた技術の進展により産業構造が大きく変化する中、さまざまな事業機会の獲得に向けて、グループを横断した組織による積極的な受注活動を進めます。運転中に障害物を検知するセンシングカメラ等の車載部品や、自動運転をサポートする交通インフラ関連製品の展開を進めると同時に、技術開発の一層の強化及び他社との協業を進め、新製品開発の加速を図ります。

  「環境・エネルギー市場」においては、環境意識の高まり等を背景に、FIT(フィード・イン・タリフ)を利用した売電から、自家消費へとニーズの変化が見られます。このような変化に対し、当社は太陽電池モジュールに加え、高効率な燃料電池システム、蓄電池等のハードの一層の高性能化及び新製品開発を進めると同時に、電力の安定供給及び省電力に貢献するシステムの開発を強化しています。また、外部協業も活用し、再生可能エネルギーで発電した電力を販売する電力小売りサービス分野へ進出する等の取り組みにより、事業領域の拡大と付加価値の向上に努めます。

  「医療・ヘルスケア市場」においては、素材、部品からシステムにわたる技術のシナジーの追求及び外部との連携により、事業機会の獲得や事業領域の拡大を進めています。人工関節等の医療機器事業では、M&Aを通じて、世界最大市場である米国での事業基盤の強化と高付加価値製品の展開を図ります。加えて、メディカル開発センターにおいて、再生医療やデジタルヘルスケア向け新製品開発の強化に努めます。

 

b経営基盤の強化

  当社は、さらなる競争力強化に向け、成長分野への生産能力拡大等の投資を積極的に進める一方、採算改善の必要な事業では製品や事業内容の見直しを行う等、経営基盤の強化に努めています。

 

  また、生産性のさらなる向上に向けて、AIやロボット等を活用した自動化生産ライン等のグループへの導入を順次展開してまいります。さらに、新製品・新事業創出に向け、グループ内に有するさまざまな技術の融合を進めるとともに、マーケティング部門及び研究開発の強化を図ります。

 

(5)経営環境

a販売網

  当社の製品やサービスは、当社営業員やグループの販売会社、または第三者である販売代理店を通じて世界各国で供給されています。当社は主要販売拠点に営業員や技術担当者等を配置し、顧客や販売代理店等に技術サポートや販売支援を行っています。このような多様な販売網を通して、当社製品の売上拡大が図られるとともに、優れた顧客サービスを提供できるものと考えています。

 

  産業・自動車用部品セグメントにおいては、半導体産業をはじめとする各種産業機械市場や自動車関連市場向けに、直接販売に加え、販売代理店等を通じて部品、デバイス、機器等の幅広い製品を世界各国へ販売しています。また、近年当社グループに加わった電動工具事業等では、小売店やインターネット等による販売も行っています。

 

  半導体関連部品セグメントでは、主に国内外のデバイスや部品、機器メーカーへ直接販売を行っています。

 

  電子デバイスセグメントについては、国内外のデバイスや機器メーカーへ直接販売を行うとともに、代理店販売も積極的に活用しています。

 

  コミュニケーションセグメントの携帯端末事業においては、主に日本の通信キャリア向けにスマートフォンや携帯電話を納入しています。通信モジュール事業では、通信キャリアを通じて、汎用的なIoTユニット等を含む各種通信モジュールを供給しています。

  情報通信サービス事業については、一般企業や公共機関等向けにICT事業や経営コンサルティング事業を、国内に加え中国等に提供するとともに、通信キャリアや無線機器ベンダー、太陽光発電事業者向けにエンジニアリング事業を、主要市場である国内に加えマレーシア、ミャンマー等に提供しています。

 

  ドキュメントソリューションセグメントでは、長寿命で低ランニングコストを実現する自社ブランドのプリンターや複合機をはじめ、お客様の経営課題を解決するドキュメントソリューションを、37の販売会社から140か国以上に広がる地域で主に代理店を経由して提供しています。なお、グローバルに対応が必要な大口案件については、主に直接販売で対応しています。

 

  生活・環境セグメントのソーラーエネルギー事業においては、太陽電池モジュールや太陽光発電システムを直接販売のほか、販売子会社や代理店等を通じて国内外で販売しています。また、蓄電システムやエネルギーマネジメントシステムについては、国内の代理店やフランチャイズ店、ハウスメーカー経由で販売しています。

  医療機器事業では、人工関節や人工骨、人工歯根等を販売代理店を通じて病院や歯科医院へ販売しています。

  宝飾応用商品関連事業については、直営店や一般小売店に加え、インターネットを通じて宝飾品やセラミックナイフ等の応用商品を販売しています。

 

  なお、国内向け取引は円で、海外向け取引は様々な通貨で取引が行われますが、主な取引通貨は米ドルとユーロです。

 

b原材料調達及び供給状況

  当社は、事業活動を行う上で、様々な原材料や部材を購入しています。2019年3月期においては、生産計画に見合った原材料や部材の調達ができました。

 

  当社の部品事業で使用する主な原材料には、アルミナやジルコニア、窒化珪素、シリコン粒子、ニッケル粉、エポキシ樹脂等があります。また、機器・システム事業においては、基幹部品であるチップセットや液晶ディスプレイなどが主な仕入れ部材です。なお、当社は素材からシステム、サービスに至るまで多岐にわたる製品を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部はグループ内で調達しており、内製部品の中には、部品や機器の差別化に寄与する部品も含まれます。

 

  当社は、原材料や部材の調達においては複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。ただし、顧客による使用原材料の指定がある場合や、製品品質を維持するために必要な場合等、例外的に供給業者を限定する場合があります。

 

  これらの原材料や部材の購入価格は、需給状況や、原料や燃料の高騰等の影響、並びに、海外供給業者より外貨建てで購入する場合には為替レートの状況等により変動します。当社は多岐に亘る事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料や部材の価格上昇を吸収するよう努めています。

 

  当社は、公正な事業活動の一環として、サプライチェーンの管理に取り組んでいます。サプライヤーセミナーや懇親会を通じ、当社の調達活動への理解促進に努めるとともに、「京セラサプライチェーンCSR推進ガイドライン」を定め運用することで、当社サプライチェーンにおけるCSRの推進を図っています。詳細は、当社ホームページ(https://www.kyocera.co.jp/ecology/supplier.html)を参照ください。

 

c競合他社との競争優位性

(a)産業・自動車用部品

  当社は、創業以来、ファインセラミック材料及び製品の開発により新市場の開拓に努めています。現在では情報通信市場や、半導体を含む産業機械市場等の幅広い市場向けに製品を供給しています。新市場開拓の過程で培ってきたセラミック材料技術や製品デザイン力等のノウハウの蓄積が、顧客要求への対応を可能にする生産技術力に繋がっています。加えて、高い生産能力を有していることが競合他社との主な差別化要因であり、これによりグローバルサプライヤーとしての地位を確立しています。

 

  自動車用部品においては、ファインセラミック技術を活用したパワートレイン向け部品でトップシェアの製品を有しています。また、自動車の安全性向上のために搭載が増加している車載カメラについては、他社との協業も含めた新製品や新技術開発により、シェアの拡大を図っています。

 

  液晶ディスプレイでは、中小型サイズに特化し、車載用及び産業用を中心に展開しています。また、医療用等の信頼性が求められる分野での新製品開発を通じ、一層の競争力の強化と事業拡大に努めています。

 

  機械工具事業においては、当社製品は主に自動車関連市場での金属加工に使用されています。当業界においては、世界的に多くの競合会社がありますが、当社は高い材料技術をベースに顧客の生産性向上に寄与する多種多様な工作機械用切削工具を供給しています。また、自動車産業に加え、航空機やエネルギー市場等の幅広い市場へ製品を展開するとともに、積極的なM&Aにより空圧工具や電動工具等の製品ラインアップの拡充を進め、総合工具メーカーとしての事業拡大を図っています。

 

(b)半導体関連部品

  セラミック材料部品事業では、ファインセラミックに関する高度な開発力及び生産技術力、並びに供給能力を有しており、世界市場においてマーケットリーダーの地位を確立しています。当社の有する優れた経営資源を活用し、デジタルコンシューマ機器市場、車載、光通信、医療市場、IoT関連市場等に向けて幅広くセラミック材料部品の用途拡大を図っています。また、拡大する市場ニーズへの対応として積極的な増産体制を構築しており、高シェアの維持、向上を図っています。なお、競合会社は主に国内メーカーです。

 

  有機パッケージ及び多層ボード事業においては、国内及びアジアメーカーが主な競合会社です。当社は、優れた電気特性や高い信頼性が求められるサーバーやルーターといった通信インフラ向けに使用されるハイエンドのフリップチップ・パッケージや高多層ボードといった製品において主要サプライヤーの一社となっています。さらに、当社は電装化が進む車載市場に対して、これまで培ってきた設計技術等の技術力を活かした新製品の開発を進め、事業競争力の強化を図っています。

 

(c)電子デバイス

  当社は、各種コンデンサや水晶部品、コネクタ、サーマルプリントヘッド及びインクジェットプリントヘッド、パワー半導体、各種センサーや無線通信用アンテナ等の幅広い製品を開発・製造しており、これらの充実した製品ラインアップにより、多様な用途へグローバルに展開しています。

 

  スマートフォン向けコンデンサや水晶部品、コネクタでは小型、高機能等のニーズを捉えた最先端分野への製品展開に注力することで、主にハイエンドのスマートフォン向けでは主要サプライヤーの一社となっています。特に、需要が拡大しているMLCCでは積極的な新製品の投入や生産能力の拡大により、シェア拡大に努めています。また、当社の子会社であるAVX Corporationは、タンタルコンデンサ市場において一般産業、自動車、通信インフラ等の幅広い分野へ展開する当業界のリーダーであると同時に、研究開発や積極的なM&Aにより、製品ラインアップ及び事業領域、並びにシェアの拡大を図っています。

 

  また、バーコードラベル印字等に使用されるサーマルプリントヘッドや、捺染印刷等の産業向けで使用されるインクジェットプリントヘッドにおいて、当社は高いシェアを有しており、積極的な新製品の投入や用途拡大により、さらなるシェアの向上に努めています。

 

(d)コミュニケーション

  当社は、主に国内向けにスマートフォンやフィーチャーフォンを供給しています。主な競合会社は米国、アジア、並びに国内携帯電話メーカーです。当社は、防水・高耐久性を備える等の差別化を図った製品展開に注力しています。特に国内向けでは簡単ケータイから高機能スマートフォンまで、多種の製品を展開しており、多様なユーザーニーズに対応しています。加えて、通信技術の応用展開により、車載やIoT向けに需要の拡大が見込まれる通信モジュールやIoT通信機器を展開し、事業領域の拡大を図っています。通信モジュール分野では、これまで培ってきた国内の大手キャリアとの関係を活かし、他社に先駆けて製品投入ができており、この点がさらなる技術の高度化への対応に向けての強みとなっています。

 

  情報通信サービス事業は、主に国内で事業を展開しています。アプリケーションソフトウェアやセキュリティソフト等を展開するICT事業では、AI、IoTの普及に伴うユーザーのニーズに対応した製品の開発、供給を図っています。また、IoT社会での無線通信ネットワークとしてニーズが高まっているLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力広域ネットワーク)ネットワーク「Sigfox」を日本で唯一展開できる事業者としてライセンスを獲得したことで、国内LPWA通信サービス分野では主要な一社となっています。

 

(e)ドキュメントソリューション

  当セグメントでは、プリンター・複合機の製造・販売、及びドキュメントソリューションサービスをグローバルに展開しており、競合は主に日本や米国の大手ドキュメント機器会社です。

  当社は、自社開発の長寿命感光体ドラム(アモルファスシリコンドラム及びPSLP(Positive Single Layer Photoconductor)ドラム)や低消費電力システムにより、環境に配慮し、かつ低ランニングコストで差別化を実現した製品を提供しています。また、ハイエンドからローエンドまで幅広く製品ラインアップを拡充し、顧客ニーズへの対応を進めています。同時に、基幹部品やトナーコンテナ等の製造ラインの自動化を進め、コスト競争力を高めています。

 

  さらに、ドキュメントソリューション事業の拡大により一層の競争力の向上を図っています。クラウド環境やモバイル機器との連携等、ユーザーニーズに対応したさまざまなアプリケーションソフトウェアの搭載を可能にする当社独自の「HyPAS(Hybrid Platform for Advanced Solutions)」を効果的に活用し、顧客毎の最適なドキュメント環境を提供するMDS(Managed Document Services)ビジネスの拡大を進めています。また、M&AによりECM(Enterprise Contents Management)事業やドキュメントBPO(Business Process Outsourcing)事業を手掛ける企業を加えたことで、ドキュメントソリューション事業の顧客への提供価値を一層高めています。

 

(f)生活・環境

  ソーラーエネルギー事業においては、多くの競合会社が存在し、価格競争は厳しさを増しているものの、業界の先駆者として40年以上に亘る事業活動から蓄積した技術により、高い変換効率と長期信頼性を実現した製品が当社の強みとなっています。当社は多結晶シリコン太陽電池ではシリコンインゴットからモジュールまでの一貫生産体制を有し、各工程での徹底した品質管理と原価低減を通じ、高い信頼性の実現と競争力の強化に努めています。さらに、システム設計、施工・メンテナンスまで提供することで、公共・産業用市場で国内トップクラスの導入実績を有しています。当社は、今後の拡大が見込まれる自家消費需要を捉えるため、グループの経営資源やノウハウを活用し、蓄電池やEMS(Energy Management System)等の開発強化、次世代エネルギーマネジメントに関する実証実験への参画等により、エネルギーソリューション事業の展開を積極的に進めています。また、長期間にわたるアフターサービスやメンテナンスの提供を可能とする強固な財務基盤を有している点も当社の優位性となっています。

 

  医療機器事業では、人工関節やデンタルインプラントが主要製品であり、主に国内市場で展開しており、国内メーカーとしてはトップクラスの競争力を有しています。人工関節においては、生体親和性が高いというファインセラミックスの特性を活かし、かつ、長寿命化や抗菌性を高めた製品等の展開により、競争力の一層の強化に努めています。また、M&Aを通じた米国市場への展開により、事業規模のさらなる拡大を図っています。

 

  当社は、各事業において上記の強みを活用するとともに、さらなる事業強化に向けてグループ内シナジーの一層の追求を図っています。特に、生産性の向上に向けてAIやロボットの活用を促進しています。また、M&Aや協業等、外部経営資源の積極的な活用により、競争力の強化に努めています。

 

d主要市場の動向

  当社は、更なる成長に向けて、「情報通信市場」「自動車関連市場」「環境・エネルギー市場」「医療・ヘルスケア市場」の重点市場を中心に売上拡大に努めています。

 

  「情報通信市場」では、2018年はスマートフォンの伸び悩みにより、搭載される各種部品の需要は、MLCC等の一部製品を除き低調となりました。2019年についても台数成長への期待は大きくはないものの、スマートフォンの高機能化は継続することが見込まれるため、当社は一層の高付加価値製品の販売増を図ります。スマートフォン以外では、AI、IoTの普及拡大や、5Gサービスの開始を見据え、高速対応を含めた無線通信ニーズの増加が見込まれることから、光通信やLPWA等、様々な通信インフラ向けに当社部品や、これらの通信インフラを活用したシステム、サービスの事業機会の増加が見込まれます。

 

  「自動車関連市場」については、2019年の自動車販売台数は堅調に推移し、自動運転や安全性、環境性向上のニーズは引き続き高まるものと予想されます。これに伴い、当社が展開するカメラモジュール、通信モジュール、各種電子部品、LEDヘッドライト用部品等の需要は引き続き拡大することが見込まれます。

 

  「環境・エネルギー市場」においては、当社ソーラーエネルギー事業の主要市場である国内市場は、電力固定価格買取制度の買取価格低下等の影響を受け、伸び悩むものと予想しています。一方、RE100を宣言する企業の増加にみられるように、再生可能エネルギーの電力の自家消費化の動きは、今後一層活発化するものと見込まれ、蓄電池やEMS等の当社の手掛けるこれら機器も中期的な拡大が見込まれます。さらに、クリーンエネルギー電源として普及拡大が見込まれるSOFC(Solid Oxide Fuel Cell、家庭用固体酸化物型燃料電池)については、当社は基幹部品に加え、燃料電池システムの展開を開始しており、中期的な成長製品として需要の拡大を見込んでいます。また、再生可能エネルギーを軸にした効率的なエネルギー利用に向けてバーチャルパワープラント(VPP)等のインフラ構築への動きもみられ、機器だけでなく各種システムやサービスまで含めたニーズの今後の拡大が予想されます。

 

  「医療・ヘルスケア市場」における当社主要製品は人工関節製品です。国内の人工関節市場では国内メーカーでシェアNO.1であり、医療関係者より高い信頼を得ています。今後は、マーケットボリュームの大きい海外市場へ事業展開を進めます。さらに当社は、外部機関との連携による再生医療に関するプロジェクトへの参画や、デジタルヘルスケア分野等での将来の新規事業の構築に努めています。

 

2 【事業等のリスク】

  当社の経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは次のとおりです。なお、当該事項は、当社が有価証券報告書提出日時点において判断したものです。

事業活動に関するリスク

(1)日本及び世界経済の変動により、当社製品の需要が大きく減退するリスク

  当社は日本のみならず世界各国にて事業を展開するとともに、デジタルコンシューマ機器や産業機器市場、自動車及び環境・エネルギー関連市場等、様々な市場向けに製品・サービスを供給しています。翌連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)の世界経済は、米中貿易摩擦の影響や中国の景気減速、英国のEU離脱問題等により先行き不透明感が高まるとともに、各国景気への下押し圧力が懸念されます。国内経済においては、これらに加え、消費税率の引き上げや日米貿易交渉等による景気への影響が懸念されます。このような各国経済の見通しが想定以上に悪化した場合、民間設備投資や個人消費等が停滞し、当社の主要市場における生産活動に影響を及ぼす場合があります。この結果、当社の事業環境や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローが悪化する可能性があります。

(2)国際的な事業活動におけるリスク

  当社は、日本以外に米国や欧州をはじめ、中国やベトナム等のアジア地域で製造及び販売拠点拡充のために多額の投資を行っています。これらの海外市場で事業活動を行っていく上で、様々な潜在的リスクにさらされています。当社にとって望ましくない政治的・経済的要因により、輸出入管理・投資規制・収益の本国送金規制・移転価格税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。また、海外拠点での人材確保や管理運営において困難に直面する可能性があります。なお、BRICs諸国をはじめとする新興市場は当社にとって重要性が高まっているため、上述のリスクの影響が拡大する可能性があります。

(3)輸出リスク

  当社の海外の顧客への売上は、当連結会計年度の売上高の約60%を占めています。海外への販売は今後も当社の収益の中で大きな割合を占めると考えられるため、以下の輸出リスクが当社の収益に大きく影響する可能性があります。

・円高により、海外の顧客にとって当社製品の価格が上昇するリスク。

・政治的または経済的な不安定要因、景気後退並びに経済制裁等により当社製品の輸出に支障が生じるリスク。

・関税及びその他の障壁が当社製品の価格競争力を低下させるリスク。

・一部の国において、当社の企業秘密や知的財産権が法律によって適切に保護されないリスク。

(4)為替レートの変動リスク

  当社は国内外で事業を行っているため為替レートの変動の影響を受けますが、主に短期の為替予約を行うことにより、この影響の軽減に努めています。しかし、為替レートの変動は、常に当社の事業活動の成果や海外資産の価値及び生産コストに影響を与えるため、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があり、事業活動の結果について期間ごとに比較することを困難にする場合があります。

  為替レートの変動は、当社と海外の競合企業が同一市場で販売する製品の価格競争にも悪影響を及ぼす場合があり、更に、当社の事業活動に必要な輸入品の仕入価格にも悪影響を及ぼす場合があります。

(5)当社の様々な製品が価格・技術革新・製品開発・品質・納期等の面において、今後更に厳しい競合にさらされるリスク

  当社は多種多様な製品を販売しているため、国際的な大企業から、高度に専門化し急成長している比較的小規模な企業まで、広範な競合企業が存在します。当社の競合環境は、コスト構造等で競争優位性を持つ中国等の新興国企業を含め、新たな脅威となる競合他社の出現によって常に変化する可能性があります。こうした競合企業の多くは、当社が活動する多様な事業分野のひとつ、もしくはいくつかの分野に特化しています。そのため、個々の事業分野で比較すると、出資や投資を競合企業と同程度に行うことができない可能性があります。また、当社の競合企業は、財務・技術・マーケティング面での経営資源を、当社の個々の事業より多く有している可能性があります。競合の要因は事業分野によって異なりますが、価格と納期は当社の全事業分野において影響を及ぼす主な要因となります。需要や競合の状況によりますが、製品価格の値下げ要求は概して恒常化しているため、今後も製品価格の下落が予測されます。また、当社が顧客の製品ごとに仕様を合わせた部品を開発・製造・販売している事業においては、顧客の要求に沿う新製品を開発する工程に早く着手することが競合状況に大きく影響します。競争を優位に進めるためには顧客と緊密な関係を保つことが重要であり、その結果、顧客の要求する仕様に合わせ、最短で納入することが可能となります。このような顧客との重要な関係やマーケット・シェアを維持できない場合や、競合企業との価格競争への対応として想定以上に製品価格の引き下げを余儀なくされる場合には、当社の利益率は低下する可能性があります。

(6)当社の生産活動に使用される原材料の価格変動、サプライヤーの供給能力に係るリスク

  当社の各事業の生産活動に使用される原材料は常に価格変動にさらされているため、原材料価格の上昇は当社の製造原価の上昇につながる可能性があります。このような製造原価の上昇が製品の販売価格に転嫁できず、当社の収益性を押し下げる可能性があります。なお、当社は、低価法に基づき原材料の正味実現可能価額(正常な営業活動における見積販売価格から、完成と処分までに発生する合理的に予想される費用を控除したもの)が帳簿価額を下回った場合には、その差額を評価損として計上しており、今後も評価損を計上しなければならない可能性があります。

  また、当社は、生産活動において消費される一部の原材料を特定のサプライヤーに依存しており、これらのサプライヤーに対する需要が過剰な状況となり、当社への供給が不足した場合、当社の生産活動に遅延や混乱を引き起こす可能性があります。このような原材料の供給に重大な遅延があった場合は、当社はただちに特定のサプライヤーに代わりうる供給先を確保できない可能性や、または合理的な価格で原材料を確保できない可能性があります。このような価格上昇や原材料の供給停止は、当社の製品の需要を押し下げる可能性もあります。

(7)外部委託先や社内工程における製造の遅延や不良が生産高や業績に重大な影響を及ぼすリスク

  当社は、部品の製造や製品の組立の一部を単一もしくは限られた数社の業者に外部委託しています。その中には非常に複雑な製造工程や長い製造時間を必要とする業者も存在するため、部品や組立品の供給が遅滞する場合があります。また、このような部品や組立品が高い品質や信頼性を欠き、かつ適時に納入されない場合には、関連する製品の生産に重大な影響を及ぼす可能性があり、当社の生産活動の遅延や中断が生じる場合があります。

  当社の製造工程においては、微小の不純物の製品への混入や製造工程の問題等の発生によって製品が納品できない状態になる場合や規格外となる場合があります。こうした要因によって生産高が計画を下回る、あるいは製品の出荷が遅れる等業績に重大な影響を与える場合があります。更に、製造原価に占める固定費の割合が高い事業においては、生産数量や設備稼働率の低下が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

(8)電力不足や電力費の上昇が生産活動及び販売活動に及ぼすリスク

  日本においては、2011年3月の東日本大震災による原子力発電所の事故の影響により多くの原子力発電所が稼動を停止しているため、電力が不足する懸念や電力費の上昇が生じています。当社は、一部の設備や施設については非常用の電源を確保していますが、仮に当社の生産拠点において大規模な停電が発生し電力不足が続いた場合、当社の生産活動は停滞する可能性があります。また、当社のサプライヤーもしくは顧客の主要拠点において電力が不足する事態が生じた場合には、当社の調達活動や販売活動が停滞する可能性があります。更に、仮に電力費が大幅に上昇した場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

(9)生産能力及び開発体制の拡大、もしくは現在進行中の研究開発が期待される成果を生み出さないリスク

  当社は需要の増加や顧客の要求に対応するため、常に生産及び開発能力の拡大に努めています。こうした生産及び開発能力の拡大を図る際に、予期せぬ技術的な障害や顧客の方針転換等により、計画どおりに拡大できない場合には、そこで生産された製品や開発された技術からは期待された成果が得られない可能性があります。また、当社で現在進行中の研究開発活動から生まれる製品が、市場において期待された評価を得られない可能性も考えられます。

(10)当社が買収した会社や取得した資産もしくは社外との協業から期待される成果や事業機会を得ることができず損失を被るリスク

  当社は事業の発展のために買収によって会社もしくは資産を取得する機会を検討しており、実際にそれらを取得することがあります。しかしながら、被買収会社の事業や製品並びに人材を当社が効果的に当社の既存事業に統合できない可能性や、買収による事業上の成果や財政上の利益または新しい事業機会を当社が期待する程は得られない可能性もあります。また、被買収会社による製品の製造やサービスの提供が、当社が計画したとおり効率的に実施できない可能性や、被買収会社の製品やサービスへの需要が当社の期待に達しない可能性があります。従って、買収によって取得した会社や資産を期待とおりに活用できない場合、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、他社や学術機関、政府機関等との協業においても、上記と同様の影響を受ける可能性があります。

(11)技術力を有する人材、特に科学・技術分野の人材が産業界全体で不足し、有能な人材確保が困難になるリスク

  当社が将来にわたり発展するためには、当社が技術・販売・管理面において優れた人材を確保する必要があります。当社はあらゆる事業分野において、更に多くの優れた能力を有する人材の雇用が必要になると考えています。しかし、各分野においては、有能な人材の獲得競争は近年ますます激しさを増してきていることから、当社は、今後現有の人材を維持することや、能力のある人材を増員することができなくなる可能性があります。

(12)情報セキュリティに関するリスク

  当社は事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報、機密情報を保有しています。当社は情報セキュリティを維持・確保するために、従業員が遵守すべき事項を定めた規程を制定し、従業員への教育を実施しています。また、ネットワークやIT資産等に対するセキュリティ対策を講じ、情報セキュリティの強化を図っています。

  しかしながら、コンピューターウイルスの侵入や高度なサイバー攻撃等により、情報漏洩や改ざん、システム停止等の被害を受けるリスクがあり、このような事態が発生した場合には、追加対応や損害賠償等の多額の費用負担により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

  また、当社のシステムに対する不正アクセスを防止するために、当社は今後の技術革新にも対応できる情報セキュリティの維持に関連する追加的な費用を負担する可能性があり、それらが当社の財政状態及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

法規制・訴訟に関するリスク

(13) 当社の企業秘密や特許に関するリスク

  当社が将来にわたり発展し、市場競争において優位な地位を確立・維持するためには、当社の企業秘密やその他の知的財産が守られなければなりません。当社は企業秘密を守るために従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等と秘密保持契約を締結しています。また、当社が独自に開発した製品や工程については、国内外において特許の取得に努めています。秘密保持契約の当事者によって当社の企業秘密を不適切に漏洩された場合、もしくは当社が特許を取得している独自開発製品・工程が他社によって侵害された場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

  当社は発明の一部について戦略的に特許を出願していますが、こうした特許出願が登録されない可能性があり、また、特許出願が登録されても無効にされる可能性、回避される可能性もあります。更に、一部の国の法律では、日本の法律と同程度には当社の知的財産権が保護されない可能性があります。

(14)当社製品の一部を継続的に製造・販売するために必要となるライセンスに関するリスク

  当社はこれまでに、第三者より知的財産権を侵害しているとの通知を受けたことや、特許実施許諾についての対価請求の申し出を受けたことがあり、今後も同様の事例が発生する可能性があります。従って当社は、以下のことを保証することはできません。

・侵害の申し立て(または侵害の申し立てに起因する賠償請求)が当社に対して行われることはないということ。

・侵害の申し立てがあった場合、製品販売の差止め命令を受けること、また、そのことによって当社事業の業績が大きく損なわれる事態が発生しないということ。

・当社の事業活動に悪影響を及ぼす高額の特許実施許諾料の支払いを要求されないこと。

(15)環境に関連する費用負担や損害賠償責任が発生するリスク

  当社は、温室効果ガス削減、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁の防止、有害物質の除去、廃棄物処理、製品リサイクル、従業員や地域住民の健康、安全及び財産保全、更には当社の製品における使用物質の適切な表示等に関する国内外の様々な環境関連法令の適用を受けています。このような環境関連法令は、当社の現在の事業活動だけでなく、当社の過去の事業活動や、当社が買収等により他社から承継した事業の過去の活動に対しても適用される可能性があります。また、当社に適用される環境関連法令が、世界的な気候変動等により将来更に厳しくなる可能性や適用の範囲が拡大される可能性もあります。特に温室効果ガス削減に関しては、気候変動問題に対する政府間協議の結果に基づき、国際的な排出権取引制度の枠組みが制定される可能性があります。

  当社は、環境関連法令により当社に生じる義務に基づく債務について、その発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には引当金を計上します。仮に、当社の環境関連法令の義務違反等が判明した場合には、規制当局から修復費用の支払いを命じられる可能性や損害賠償責任を負う可能性があります。また、当社が任意で環境問題に取り組む必要があると判断した場合にも、環境修復費用の負担や補償金の支払いを行う可能性があります。以上のような環境に関連する費用負担や損害賠償責任は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

(16)その他の法規制等に関するリスク

  当社は事業活動を行う国や地域における法規制や規則等の遵守に努めていますが、意図せずに法規制や規則等に抵触し、訴訟や規制当局の法的処分を受ける可能性があります。また、当社が想定していない法規制や規則の変更や導入により、当社の事業活動が制約を受け、その継続に支障が生じる可能性があります。仮に訴訟や規制当局の法的処分への対応に多大な費用が生じた場合や法規制による事業活動の制約が広範囲に及ぶ場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

災害等に関するリスク

(17)疫病の発生、テロ行為、または紛争等が当社の市場やサプライチェーンに混乱を与えるリスク

  当社はグローバル企業として世界中で事業を拡大していますが、それに伴い、疫病の発生、テロ行為、または戦争・紛争等の事態に巻き込まれるリスクが高まります。このような事態においては、当社の事業活動は中断を余儀なくされ、当社の開発・製造・販売・サービス等に中断、混乱または延期等が生じる可能性があります。また、当社の市場やサプライチェーンに支障をきたす可能性もあります。このような遅延や混乱が長期間続いた場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

(18)当社の本社及び主要な事業関連施設が存在する地域や、当社のサプライヤーや顧客が事業活動を行なう地域において、地震等の災害が発生するリスク

  当社は日本国内外において多くの開発・製造施設、事業関連施設を有しています。日本をはじめとするそれらの施設がある地域においては、地震や台風、津波、大雨、洪水、大雪等の不可避な自然災害、もしくは当社の施設に影響を与える大規模な労働災害のような人為的災害から発生する事業への影響も考えられます。例えば大規模な地震の発生により、当社の人員や開発・生産設備が壊滅的な損害を被り、操業の中断や製造・出荷の遅延を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った施設の復旧等に要する費用が多額に発生する可能性があります。

  更に、社会資本や経済基盤に著しい被害が生じた場合には、交通網の混乱や電力の供給不足等が生じ、当社のサプライチェーンや生産活動に困難が生じる可能性があります。

  また、当社に原材料等を供給する企業が被害を被った場合には、原材料等の調達に困難が生じる可能性があり、当社の顧客が被害を受けた場合には、当社の製品の出荷が停滞する可能性があります。

  以上のような自然災害に伴う被害やその結果生じる経済の停滞や消費の鈍化が、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

財務会計に関するリスク

(19)当社の顧客の財政状態が悪化し、売掛債権が回収困難となるリスク

  当社は売掛債権について、顧客が期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。しかしながら、通常の営業取引において、当社の売掛債権は担保物件や信用保証により保全されていません。従って、経済環境の悪化等に伴い、顧客に対する多額の売掛債権の回収が困難となった場合には損金処理することを余儀なくされるため、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があります。

(20)当社が保有する投資有価証券及びその他の投資に関するリスク

  当社は取引関係の維持・向上等を目的として、当社の関係会社以外の持分証券に投資しています。その主たる投資は日本の通信サービス・プロバイダ-であるKDDI㈱の株式への投資です。2019年3月31日現在、当社はKDDI㈱の発行済株式の13.23%を保有しています。KDDI㈱の株式への投資は当社の総資産の約30%を占めており、KDDI㈱の株式の市場価格の変動は、当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

  当社が保有する資本性金融商品の一部である政策保有株式については、取引関係の強化、維持及び株式保有による収益獲得を通じた企業成長、並びに企業の社会的意義等を踏まえ、中長期的に企業価値を向上させるという視点に立ち、保有しています。これら政策保有株式を含む資本性金融商品については、その保有意義について定期的に経済合理性の確認を行い、保有意義がないと判断したものについては売却する予定ですが、市況によっては当社が望む時期、または価格での売却ができない可能性があります。

(21)有形固定資産、のれん並びに無形資産の減損に関するリスク

  当社は多くの有形固定資産、のれん並びに無形資産を保有しています。有形固定資産及び償却性無形資産については、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で減損の判定を行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生又は状況が変化した時点で減損の判定を行っています。

  これらの資産が減損していると判断される場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(22)繰延税金資産及び法人所得税の不確実性に関するリスク

  当社は繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく変動する可能性があります。また当社は、将来税務調査を受けることを想定し、税務上認識された不確実な税務ポジションについて50%超の実現可能性がないと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と将来の税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。

(23)会計基準の変更が財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスク

  新会計基準もしくは会計基準の変更は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、会計基準の変更に対応するために、会計ソフトウェアもしくは情報システムを変更した場合には一定の投資もしくは費用が必要となります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  当社は、当連結会計年度(2018年4月1日から2019年3月31日まで)より従来の米国会計基準に替えてIFRSを適用し、前連結会計年度(2017年4月1日から2018年3月31日まで)の数値をIFRSに調整して比較分析を行っています。詳細は「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等(1)連結財務諸表  注記38.初度適用」を参照ください。

 

(1)業績等の概要

  売上高は、前連結会計年度に比べ増加し、2期連続で過去最高を更新しました。ソーラーエネルギー事業の受注減により「生活・環境」の売上は減少したものの、前連結会計年度に実施したM&Aの貢献もあり、「電子デバイス」や「産業・自動車用部品」の売上が増加しました。

  利益は、ソーラーエネルギー事業において、ポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用及び同原材料に係る評価損等、有機材料事業において、有形固定資産及びのれん等の減損損失をそれぞれ計上しましたが、増収及び各部門での原価低減効果により、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれも増益となりました。

(百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2017年 4月 1日

至 2018年 3月31日)

当連結会計年度

(自 2018年 4月 1日

至 2019年 3月31日)

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

売上高

1,577,039

100.0

1,623,710

100.0

46,671

3.0

営業利益

90,699

5.8

94,823

5.8

4,124

4.5

税引前利益

129,992

8.2

140,610

8.7

10,618

8.2

親会社の所有者に帰属する当期利益

79,137

5.0

103,210

6.4

24,073

30.4

米ドル平均為替レート          (円)

111

111

ユーロ平均為替レート          (円)

130

128

 

(2)財政状態及び経営成績の状況

a.売上高

  当連結会計年度の売上高は1,623,710百万円となり、前連結会計年度の1,577,039百万円と比較し、46,671百万円(3.0%)増加しました。

  部品事業における当連結会計年度の売上高は928,383百万円となり、前連結会計年度の850,002百万円と比較し、78,381百万円(9.2%)増加しました。前連結会計年度に実施したM&Aによる貢献に加え、産業機械向けファインセラミック部品や、スマートフォン向けのコンデンサの売上が旺盛な需要により増加したことにより、増収となりました。機器・システム事業における当連結会計年度の売上高は707,328百万円となり、前連結会計年度の738,805百万円と比較し、31,477百万円(4.3%)減少しました。ソーラーエネルギー事業の売上が減少したことにより、減収となりました。なお、ユーロに対する円高の影響を主因として、当連結会計年度の邦貨換算後の売上高は、前連結会計年度に比べ約75億円押し下げられました。

 

b.売上原価及び売上総利益

  当連結会計年度の売上原価は1,159,687百万円となり、前連結会計年度の1,204,211百万円と比較し、44,524百万円(3.7%)減少しました。これは主に、前連結会計年度において、ソーラーエネルギー事業のポリシリコン原材料の長期購入契約等に関する引当損失50,165百万円を計上したことによるものです。

  売上原価の主な内訳は、原材料費が前連結会計年度の477,299百万円から11,776百万円(2.5%)減少の465,523百万円で全体の40.1%を占め、人件費が前連結会計年度の239,173百万円から11,813百万円(4.9%)増加の250,986百万円で全体の21.6%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の61,801百万円から18,331百万円(29.7%)減少の43,470百万円で全体の3.7%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の売上総利益は464,023百万円となり、前連結会計年度の372,828百万円と比較し、91,195百万円(24.5%)増加し、売上高に対する売上総利益率は、23.6%から28.6%5.0ポイント上昇しました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費は369,200百万円となり、前連結会計年度の282,129百万円と比較し、87,071百万円(30.9%)増加しました。これは主に、当連結会計年度において、ソーラーエネルギー事業においてポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用等51,195百万円、有機材料事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失16,184百万円を計上したことによるものです。

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費の主な内訳は、人件費が前連結会計年度の161,616百万円から13,185百万円(8.2%)増加の174,801百万円で全体の47.3%を占め、続いて販売費及び広告宣伝費が、前連結会計年度の44,835百万円から1,738百万円(3.9%)減少の43,097百万円で全体の11.7%を占めています。また減価償却費は前連結会計年度の14,747百万円から6百万円増加の14,753百万円で全体の4.0%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の営業利益は94,823百万円となり、前連結会計年度の90,699百万円と比較し、4,124百万円(4.5%)増加しました。売上高に対する比率は前連結会計年度及び当連結会計年度ともに5.8%となりました。

  なお、ソーラーエネルギー事業において締結していたポリシリコン原材料に関する長期購入契約については「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等(1)連結財務諸表  注記34.コミットメント(2)原材料に係る長期購入契約に関する和解合意」を参照ください。

d.金融収益

  当連結会計年度の金融収益は44,750百万円となり、前連結会計年度の41,483百万円と比較し、3,267百万円(7.9%)増加しました。これは主に、当社の受取利息及びKDDI㈱からの受取配当金が増加したことによるものです。

e.金融費用

  当連結会計年度の金融費用は1,241百万円となり、前連結会計年度の1,560百万円と比較し、319百万円(20.4%)減少しました。

f.為替換算差損益

  当連結会計年度の平均為替レートは、対米ドルは前連結会計年度に比べ変動なく111円、対ユーロは2円(1.5%)円高の128円となりました。また、当連結会計年度末の為替レートは、対米ドルは前連結会計年度末に比べ5円(4.7%)円安の111円、対ユーロは6円(4.6%)円高の125円となりました。なお、当連結会計年度の為替換算差損益は53百万円の利益となりました。

  当社では、外貨建の債権債務に係る為替変動リスクの低減を図るために、主に先物為替予約を利用しています。当社は、先物為替予約については、外国為替レートの変動をヘッジする目的に限定して利用しており、トレーディング目的のための先物為替予約は行っていません。

g.持分法による投資損益

  当連結会計年度の持分法による投資損益は379百万円の利益となり、前連結会計年度の1,564百万円の損失と比較し、1,943百万円利益が増加しました。

h.税引前利益

  当連結会計年度の税引前利益は140,610百万円となり、前連結会計年度の129,992百万円と比較し、10,618百万円(8.2%)増加しました。売上高に対する税引前利益の比率は前連結会計年度の8.2%から0.5ポイント上昇し、8.7%となりました。

  部品事業における当連結会計年度の事業利益は116,308百万円となり、前連結会計年度の109,081百万円と比較し、7,227百万円(6.6%)増加しました。有機材料事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失16,184百万円を計上した一方で、主に電子デバイス事業における増収及び収益性の向上により、増益となりました。機器・システム事業における当連結会計年度の事業損失は13,095百万円となり、前連結会計年度の10,201百万円の損失と比較し、2,894百万円増加しました。通信機器事業における収益性改善やドキュメントソリューションにおける生産性向上による増益があった一方で、ソーラーエネルギー事業における減収及びポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用等を計上したことにより、減益となりました。なお、ユーロに対する円高の影響により、当連結会計年度の邦貨換算後の税引前利益は、前連結会計年度に比べ約20億円押し下げられました。

i.法人所得税費用

  当連結会計年度の当期税金費用及び繰延税金費用は合計で25,754百万円(実効税率18.3%)となり、前連結会計年度の47,766百万円(実効税率36.7%)と比較し、22,012百万円(46.1%)減少しました。この主な要因は、前連結会計年度の米国税制改正に伴い、AVX Corporationを含む当社の米国子会社において、13,860百万円の一時的な税金費用を計上したこと、及び、当連結会計年度に当社が京セラディスプレイ㈱を吸収合併したことに伴い、同社の一時差異及び未使用の繰越欠損金に係る繰延税金資産を10,139百万円認識したことによるものです。

j.非支配持分に帰属する当期利益

  当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は11,646百万円となり、前連結会計年度の3,089百万円と比較し、8,557百万円(277.0%)増加しました。これは主に、当社以外の株主の持分比率が約30%を占めるAVX Corporationにおいて当期利益が増加したことによるものです。

k.レポーティングセグメント別営業概況

産業・自動車用部品

  当連結会計年度の産業・自動車用部品の売上高は314,339百万円となり、前連結会計年度の287,620百万円と比較し26,719百万円(9.3%)増加しました。前連結会計年度に実施したM&Aにより機械工具の売上が増加したことに加え、産業機械向けファインセラミック部品の売上が堅調に推移しました。なお、当レポーティングセグメントにおいては、前連結会計年度に比べ、M&Aにより約250億円の増収効果がありました。

  事業利益は38,450百万円となり、前連結会計年度の31,400百万円に比べ7,050百万円(22.5%)増加、事業利益率は、前連結会計年度の10.9%から当連結会計年度は12.2%へ上昇しました。増収及び原価低減等による収益性の向上により、増益となりました。

半導体関連部品

  当連結会計年度の半導体関連部品の売上高は249,217百万円となり、前連結会計年度の257,237百万円と比較し8,020百万円(3.1%)減少しました。スマートフォン及び光通信用セラミックパッケージの売上が減少しました。

  事業利益は10,932百万円となり、前連結会計年度の31,049百万円に比べ20,117百万円(64.8%)減少し、事業利益率は、前連結会計年度の12.1%から当連結会計年度は4.4%へ低下しました。セラミックパッケージの減収や有機材料事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失16,184百万円を計上したことにより、減益となりました。

電子デバイス

  当連結会計年度の電子デバイスの売上高は364,827百万円となり、前連結会計年度の305,145百万円と比較し59,682百万円(19.6%)増加しました。前連結会計年度にAVX Corporationが実施したM&Aによる貢献に加え、スマートフォン向けセラミックコンデンサの売上が増加しました。なお、当レポーティングセグメントにおいては、前連結会計年度に比べ、M&Aにより約330億円の増収効果がありました。

  事業利益は66,926百万円となり、前連結会計年度の46,632百万円に比べ20,294百万円(43.5%)増加し、事業利益率は、前連結会計年度の15.3%から当連結会計年度は18.3%へ上昇しました。増収に加え、高採算部品の売上増及び原価低減等による収益性の向上により、増益となりました。

コミュニケーション

  当連結会計年度のコミュニケーションの売上高は252,067百万円となり、前連結会計年度の255,535百万円と比較し3,468百万円(1.4%)減少しました。情報通信サービス事業はエンジニアリング事業を中心に増収となったものの、通信機器事業は主に国内向け端末の販売台数の減少により、減収となりました。なお、当連結会計年度における携帯端末の販売台数は前連結会計年度に比べ約10%減少しました。

  事業利益は10,393百万円となり、前連結会計年度の4,440百万円に比べ5,953百万円(134.1%)増加し、事業利益率は、前連結会計年度の1.7%から4.1%へ上昇しました。通信機器事業において、低採算製品の縮小及び原価低減による収益性改善が進んだことから、増益となりました。

ドキュメントソリューション

  当連結会計年度のドキュメントソリューションの売上高は375,147百万円となり、前連結会計年度の371,058百万円と比較し4,089百万円(1.1%)増加しました。約60億円の円高による押し下げ要因があったものの、複合機等の販売台数が堅調に推移したことに加え、当連結会計年度に実施したM&Aにより約40億円の増収効果があったことから、増収となりました。

  事業利益は43,528百万円となり、前連結会計年度の40,851百万円に比べ2,677百万円(6.6%)増加し、事業利益率は、前連結会計年度の11.0%から当連結会計年度は11.6%へ上昇しました。約15億円の円高による押し下げ要因はあったものの、コスト低減や生産性向上に加え、当レポーティングセグメントの減価償却費及び研究開発費が合計で約25億円減少したことにより、増益となりました。

生活・環境

  当連結会計年度の生活・環境の売上高は80,114百万円となり、前連結会計年度の112,212百万円と比較し32,098百万円(28.6%)減少しました。主にソーラーエネルギー事業の売上が国内住宅市場の低迷を主因に減少したことにより、減収となりました。なお、当連結会計年度における太陽電池モジュールの出荷量は、前連結会計年度に比べ約40%減少しました。

  事業損失は、ソーラーエネルギー事業において、生産拠点の集約等の原価低減に取り組んだものの、減収の影響及びポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解費用及び同原材料に係る評価損等の合計52,313百万円を計上したことにより、前連結会計年度の55,492百万円に比べ11,524百万円拡大し、67,016百万円となりました。

 

 

レポーティングセグメント別売上高                                 (百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

増減金額

増減率

(%)

 

産業・自動車用部品

287,620

18.2

314,339

19.4

26,719

9.3

 

半導体関連部品

257,237

16.3

249,217

15.3

△8,020

△3.1

 

電子デバイス

305,145

19.4

364,827

22.5

59,682

19.6

部品事業計

850,002

53.9

928,383

57.2

78,381

9.2

 

コミュニケーション

255,535

16.2

252,067

15.5

△3,468

△1.4

 

ドキュメントソリューション

371,058

23.5

375,147

23.1

4,089

1.1

 

生活・環境

112,212

7.1

80,114

5.0

△32,098

△28.6

機器・システム事業計

738,805

46.8

707,328

43.6

△31,477

△4.3

その他

18,827

1.2

17,190

1.0

△1,637

△8.7

調整及び消去

△30,595

△1.9

△29,191

△1.8

1,404

売上高

1,577,039

100.0

1,623,710

100.0

46,671

3.0

 

レポーティングセグメント別税引前利益                               (百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

 

産業・自動車用部品

31,400

10.9

38,450

12.2

7,050

22.5

 

半導体関連部品

31,049

12.1

10,932

4.4

△20,117

△64.8

 

電子デバイス

46,632

15.3

66,926

18.3

20,294

43.5

部品事業計

109,081

12.8

116,308

12.5

7,227

6.6

 

コミュニケーション

4,440

1.7

10,393

4.1

5,953

134.1

 

ドキュメントソリューション

40,851

11.0

43,528

11.6

2,677

6.6

 

生活・環境

△55,492

△67,016

△11,524

機器・システム事業計

△10,201

△13,095

△2,894

その他

1,393

7.4

660

3.8

△733

△52.6

事業利益計

100,273

6.4

103,873

6.4

3,600

3.6

本社部門損益及び

持分法による投資損益

31,443

38,954

7,511

23.9

調整及び消去

△1,724

△2,217

△493

税引前利益

129,992

8.2

140,610

8.7

10,618

8.2

 

l.本社部門損益及び持分法による投資損益

  本社部門損益は、金融資産に係る収益や、各セグメントに対して本社部門から提供される経営管理サービスに伴う収入等から構成されます。

  当連結会計年度は38,954百万円の収益となり、前連結会計年度の31,443百万円の収益と比較し、7,511百万円(23.9%)増加しました。預金利息やKDDI㈱からの受取配当金が増加したことを主因として増益となりました。

m.生産、受注及び販売の実績

レポーティングセグメント別受注高                                (百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

(%)

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

 

産業・自動車用部品

295,748

18.7

315,926

19.6

6.8

 

半導体関連部品

257,191

16.2

245,869

15.3

△4.4

 

電子デバイス

317,143

20.0

371,082

23.1

17.0

部品事業計

870,082

54.9

932,877

58.0

7.2

 

コミュニケーション

259,736

16.4

251,619

15.6

△3.1

 

ドキュメントソリューション

371,262

23.4

373,724

23.2

0.7

 

生活・環境

97,891

6.1

69,019

4.3

△29.5

機器・システム事業計

728,889

45.9

694,362

43.1

△4.7

その他

13,791

0.9

11,559

0.7

△16.2

調整及び消去

△26,837

△1.7

△29,303

△1.8

-

受注高

1,585,925

100.0

1,609,495

100.0

1.5

 

(注)当社は、需要の増加や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績は販売実績に類似しています。このため、生産及び販売の実績は「k.レポーティングセグメント別営業概況」に関連付けて示しています。

(3)流動性及び資金の源泉

a.資金の源泉

  当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは220,025百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を512,814百万円保有しています。また、換金性の高い金融資産も保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。

  当社は、主な短期的な資金需要として、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当支払等を見込んでいます。当社の短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によって獲得した現金です。一部の連結子会社は金融機関からの借入により資金調達を行っていますが、当連結会計年度末の短期借入金、一年内返済予定長期借入金、並びに長期借入金の残高は9,860百万円であり、総資産に対し0.3%と引き続き低い依存度となっています。当社の借入は、主としてユーロ建及び米ドル建で行っていますが、その他の外国通貨での借入も行っています。設備の発注契約残高を含め、当社の債務の詳細については、後述の「d.契約債務」を参照下さい。

  当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の86,519百万円と比較し、30,530百万円(35.3%)増加し、117,049百万円となりました。当連結会計年度は、主に産業・自動車用部品や電子デバイスにおいて、旺盛な需要に対応するための生産能力の拡大及び生産向上のための設備投資により、設備投資額は前連結会計年度に比べ増加しました。研究開発費については、前連結会計年度の58,273百万円と比較し11,654百万円(20.0%)増加し、69,927百万円となりました。これらの設備投資額及び研究開発費のほぼすべては、自己資金によって賄われました。

  当社は翌連結会計年度において、約120,000百万円の設備投資と約80,000百万円の研究開発費を予定しています。設備投資額は、部品事業における増産及び生産性向上のための設備導入を主因として、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。研究開発費についても、さらなる事業拡大に向けて、新技術・新製品開発を強化していく考えであり、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。当社は、これらの設備投資額及び研究開発費のほぼすべてを、自己資金によって賄う予定であり、売上高に対する割合については、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。当社は新製品の創造、技術の進歩、将来の利益の獲得のために、新規事業分野の開拓と既存技術の高度化に対する継続的な投資が必要であると考えています。

  当社は、主に既存事業の拡大を目的として、当連結会計年度において事業取得を実施しました。これらの取引に係る対価は、取得現金控除後で22,165百万円となり、自己資金によって賄われました。

  当社は、確定給付制度に対し、当連結会計年度において12,494百万円の拠出を行い、翌連結会計年度において10,940百万円の拠出を行う予定です。当社の確定給付制度の積立状況は、加入者及び受給者に対する給付金等の支払いを行う上で必要な原資を確保しており、大幅な追加拠出が必要となる状況にはありません。当社は制度資産への拠出を自己資金によって賄う予定です。

  当社は当連結会計年度において、1株当たり年間120円、総額43,768百万円の配当金の支払いを行いました。また、2019年6月25日に開催された当社の定時株主総会において、2019年3月31日現在の株主に対し、1株当たり60円の普通配当に1株当たり20円の記念配当を加えた1株当たり80円、総額28,940百万円の期末配当を2019年6月26日に実施することが承認されました。

  当社は2018年4月26日の取締役会において、将来の株式交換など機動的な資本戦略と株主への利益還元のために自己株式の取得を決議し、総額40,000百万円の自己株式を取得しました。なお、この自己株式の取得は、自己資金によって賄われました。

  当連結会計年度末の運転資本は、主に営業債権の回収が進んだことにより、前連結会計年度末の1,046,512百万円から63,496百万円(6.1%)減少し、983,016百万円となりました。当社は、自己資金によって必要となる運転資本を確保し、また将来の事業拡大のための設備投資を実施するとともに、自己株式の取得及び配当の支払を行いました。

  当社が恒久的に再投資する方針である海外の連結子会社の未分配利益は335,998百万円です。海外の連結子会社の保有する現金及び現金同等物と換金性の高い有価証券の合計額は、当連結会計年度末において242,862百万円になりますが、日本での利用を目的として当社への配当を行うことは現時点で想定していません。当社は、日本での事業を展開するために十分な資金の流動性を確保していると考えており、海外の連結子会社が保有する現金及び現金同等物と換金性の高い有価証券について、少なくとも翌連結会計年度において日本へ還流させる必要はないと考えています。

  以上の結果、翌連結会計年度に関しても、自己資金の範囲で上記の資金需要に対応できると考えています。従って、現時点では格付機関による信用格付に影響を与えるような外部からの資金調達を行う予定はありません。しかし、万一、営業活動によって十分な現金が得られなかった場合、当社は短期借入金、長期借入金といった外部からの資金調達や社債、株式の発行といった他の資金調達源泉を有しています。当連結会計年度末における当社の親会社の所有者に帰属する持分比率は76.3%と引き続き良好な財務体質を保っており、必要な資金を比較的低いコストで外部から調達することができると考えています。なお、当社は、いくつかの主要金融機関と良好な関係を維持しています。

  今後、市場での需要動向が更に悪化した場合や製品価格が当社の予想を大きく超えて下落した場合には、当社の財政状態や経営成績にも影響が及び、結果として当社の流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b.キャッシュ・フローの状況

(百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減金額

営業活動によるキャッシュ・フロー

158,905

220,025

61,120

投資活動によるキャッシュ・フロー

△53,128

△47,121

6,007

財務活動によるキャッシュ・フロー

△51,572

△89,056

△37,484

現金及び現金同等物に係る換算差額

△5,462

4,028

9,490

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

48,743

87,876

39,133

現金及び現金同等物の期首残高

376,195

424,938

48,743

現金及び現金同等物の期末残高

424,938

512,814

87,876

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・インは、前連結会計年度の158,905百万円に比べ61,120百万円(38.5%)増加し、220,025百万円となりました。これは主に当期利益が増加したことに加えて、前連結会計年度に増加した営業債権について、当連結会計年度にその回収が進んだことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の53,128百万円に比べ6,007百万円(11.3%)減少し、47,121百万円となりました。これは主に有形固定資産の購入による支出が増加した一方で、事業取得による支出が減少したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の51,572百万円に比べ37,484百万円(72.7%)増加し、89,056百万円となりました。これは主に自己株式の取得によるものです。

 

  なお、前連結会計年度末に比べ当連結会計年度末は米ドルに対し円安となったことを主因として、現金及び現金同等物は換算により4,028百万円増加しました。

 

  以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の424,938百万円から87,876百万円(20.7%)増加し、512,814百万円となりました。当社の現金及び現金同等物の大部分は円建ですが、海外の連結子会社では主として、米ドルを含む外貨建の現金及び現金同等物を保有しています。

c.資産、負債及び資本

  当連結会計年度末における当社の資産合計は、前連結会計年度末の3,128,813百万円から160,338百万円(5.1%)減少し、2,968,475百万円となりました。

  現金及び現金同等物は、事業利益の獲得及び営業債権の回収による収入が、自己株式の取得及び配当金支払による支出を上回ったことを主因として、前連結会計年度末から87,876百万円(20.7%)増加し、512,814百万円となりました。

  短期投資は、定期預金の満期解約を行ったことを主因として、前連結会計年度末から97,592百万円(49.6%)減少し、99,210百万円となりました。

  営業債権及びその他の債権は、ソーラーエネルギー事業の売上減少を主因として、前連結会計年度末から25,307百万円(6.6%)減少し、357,352百万円となりました。

  棚卸資産は、主に電子デバイスにおいて受注が拡大した一方で、Hemlock Semiconductor Operations LLC及びその子会社のHemlock Semiconductor, LLC(以下、Hemlock)との、当社のソーラーエネルギー事業において使用するポリシリコン原材料の供給に関する長期購入契約の和解合意に伴い、当社が保有するポリシリコン原材料の代物弁済を行ったことを主因として、前連結会計年度末から20,995百万円(5.8%)減少し、343,880百万円となりました。

  その他の流動資産は、Hemlockに対して支払済の前渡金を放棄したことを主因として、前連結会計年度末から48,992百万円(58.6%)減少し、34,637百万円となりました。

  負債性証券及び資本性証券は、KDDI株式を含む保有株式の株価下落に伴う時価総額の減少等により、前連結会計年度末に比べて108,339百万円(10.1%)減少し、963,651百万円となりました。

  有形固定資産は、前連結会計年度末から52,957百万円(18.3%)増加し、341,855百万円となりました。なお、当連結会計年度の設備投資額は117,049百万円、減価償却費は51,524百万円でした。

  のれんは、半導体部品有機材料事業において減損損失を計上した一方で、当連結会計年度におけるM&Aを主因として、前連結会計年度末に比べて5,231百万円(3.6%)増加し、149,499百万円となりました。

 

  当連結会計年度末における当社の負債合計は、前連結会計年度末の715,514百万円から109,299百万円(15.3%)減少し、606,215百万円となりました。

  営業債務及びその他の債務は、Hemlockとのポリシリコン原材料に関する長期購入契約の和解合意に伴い、同社に対する未払金が減少したことを主因として、前連結会計年度末に比べて30,404百万円(14.0%)減少し、186,281百万円となりました。

  流動負債における引当金は、ソーラーエネルギー事業のポリシリコン原材料の未購入の契約残高に対して計上していた引当金の戻し入れを行ったことを主因として、前連結会計年度末に比べて21,136百万円(65.4%)減少し、11,166百万円となりました。

  繰延税金負債は、当社の連結子会社である京セラディスプレイ㈱の吸収合併に伴い、同社の繰越欠損金に対する繰延税金資産を認識したこと、及び、KDDI株式を含む保有株式の株価下落に伴う時価総額の減少を主因として、前連結会計年度末から46,127百万円(20.9%)減少し、174,823百万円となりました。

  非流動負債における引当金は、ソーラーエネルギー事業のポリシリコン原材料の未購入の契約残高に対して計上していた引当金の戻し入れを行ったことを主因として、前連結会計年度末に比べて12,022百万円(60.4%)減少し、7,892百万円となりました。

 

  当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の2,413,299百万円から51,039百万円(2.1%)減少し、2,362,260百万円となりました。

  利益剰余金は、親会社の所有者に帰属する当期利益103,210百万円を計上したこと、及び、支払配当金43,768百万円を計上したことを主因として、前連結会計年度末の1,577,641百万円から61,068百万円(3.9%)増加し、1,638,709百万円となりました。

  その他の資本の構成要素は、KDDI株式を含む保有株式の株価下落を主因として、前連結会計年度末に比べて81,067百万円(16.2%)減少し、418,643百万円となりました。

  当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分比率は、前連結会計年度末の74.3%から2.0ポイント増加し、76.3%となりました。

  AVX Corporation等の連結子会社の非支配持分は、前連結会計年度末の87,508百万円から8,833百万円(10.1%)増加し、96,341百万円となりました。

d.契約債務

  当社の予定決済日ごとの契約債務は次のとおりです。当社はこれらの契約債務については自己資金で履行可能であると考えています。

(百万円)

 

 

2020年3月期

2021年3月期-

2022年3月期

2023年3月期-

2024年3月期

2025年3月期

以降

合  計

短期借入金

113

113

支払利息(短期借入金)(注)

1

1

長期借入金

(1年以内返済予定分を含む)

4,091

4,808

612

236

9,747

支払利息(長期借入金)

(1年以内返済予定分を含む)

(注)

283

190

22

8

503

オペレーティング・リース

6,668

7,601

2,733

2,123

19,125

設備の発注契約

42,435

149

74

42,658

契約債務

53,591

12,748

3,441

2,367

72,147

(注)変動金利による借入金の支払利息については、当連結会計年度末の実質利率を使用して、将来見込まれる支払利息を算出しています。

  当社は翌連結会計年度において、確定給付制度に対し、10,940百万円を拠出する予定です。また、当社は、当連結会計年度末において、不確実な税務ポジションとして負債を2,055百万円計上していますが、将来の解決時期を合理的に見積ることができないため、上記の表には含めていません。

(4)重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断

  当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。これらの財務諸表を作成する際には、見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断並びに仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。

  当社の連結財務諸表における見積りは次の場合において会計上非常に重要な見積りとなります。すなわち、当社が見積りを行った時点ではその対象となった事象が非常に不確実な状況にも関わらず見積りを行う必要があった場合、また、当該期間において当社が実際に採用したものとは異なるが当社が採用することができた見積りがある、もしくは複数の会計年度にわたって変更が発生すると予想される見積りがあり、その見積りが当社の財政状態及び経営成績の開示に重要な影響を及ぼす場合です。当社は会計情報の開示を行う上で、下記の項目を重要な会計上の見積りとして認識しています。

a.貸倒引当金

  当社では、主に営業債権等の償却原価で測定される金融資産について、回収可能性や信用リスクの著しい増加等を考慮のうえ、将来の予想信用損失を測定し、貸倒引当金を計上しています。なお、特定の顧客について債務の返済が困難であることが明らかになった場合には、個別債権ごとに予想信用損失を測定し貸倒引当金を計上しています。

 

b.棚卸資産の評価

  当社は、棚卸資産が適正な価値で評価されるように評価損の金額を見積っています。過剰、滞留、並びに陳腐化した棚卸資産に対して評価損を計上しています。また、棚卸資産は正味実現可能価額まで評価損を行っています。当社は通常、一定の保有期間を超える棚卸資産を滞留もしくは陳腐化していると見なします。また、当社では、将来の需要予測や市況そして関与する経営者の判断のもとに、一定の保有期間に満たない棚卸資産についても評価損を計上することがあります。

c.有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

  当社は有形固定資産及び償却性無形資産について、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で、減損の判定を行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行っています。減損損失は、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に認識しています。

  資産または資金生成単位の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。

 

d.法人所得税費用

  当社は繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上、実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。

  当連結会計年度末において繰延税金資産を129,665百万円認識しています。当社は、当連結会計年度の税引前利益及び法人所得税費用と比較し、当該繰延税金資産が将来において合理的に実現するものと考えます。

  また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、50%超の実現可能性がないと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。

  当社は、当連結会計年度末において不確実な税務ポジションを総額で2,055百万円計上しています。当社は、法人所得税の不確実性に関する最終的な解決が将来の連結損益計算書へ重要な影響を及ぼすことはないと考えています。

e.確定給付制度

  確定給付型退職制度の制度資産及び確定給付制度債務に基づく積立超過または積立不足の状況は、連結財政状態計算書の資産もしくは負債として認識し、会計年度中の積立状況の変化は当該年度の包括利益の増減として認識します。確定給付制度債務は数理計算に基づき決定され、その計算には前提条件として、割引率、昇給率などが基礎率として用いられます。

  当社は優良債券の利回り等を参考に割引率を決定します。昇給率は主に過去の実績、近い将来の見通し、物価変動などにより決定されます。当社は毎年、数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じてその時点の市場環境をもとに調整を行っています。

  日本及び世界的な経済の停滞により、当社が割引率を引き下げる場合には、確定給付制度債務や確定給付費用が増加します。

f.偶発債務

  当社は通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社は、法律専門家と相談の上で、こうした偶発債務が重要な結果を引き起こす可能性を予測しています。当社は、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際、当社は受けている訴訟の進捗、及び他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は、見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。

g.収益認識

  当社は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(2014年5月公表、2016年4月改訂)に従い、IFRS第9号「金融商品」(2009年11月公表、2014年7月改訂)に基づく利息及び配当金等、及び、IAS第17号「リース」に基づくリース契約等を除く顧客との契約について、次のステップを適用することにより、収益を認識しています。

 

ステップ1:顧客との契約を識別する。

ステップ2:契約における履行義務を識別する。

ステップ3:取引価格を算定する。

ステップ4:取引価格を契約における履行義務に配分する。

ステップ5:履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する。

 

  当社は、情報通信、自動車関連、環境・エネルギー並びに医療・ヘルスケア等の市場における販売を主な収益源としています。当社におけるレポーティングセグメントは、「産業・自動車用部品」、「半導体関連部品」、「電子デバイス」、「コミュニケーション」、「ドキュメントソリューション」、「生活・環境」で構成されています。

  これらのレポーティングセグメントにおいて、顧客への販売は、顧客と締結した取引基本契約書及び注文書に記載された条件に基づいて行われます。当該契約書及び注文書には、価格、数量並びに所有権の移転時点が記載されています。

  顧客からの注文の大半において、製品が顧客へ出荷された時点で顧客が当該製品に対する支配を獲得することから、履行義務が充足されると判断し、収益を認識しています。「ドキュメントソリューション」及び「生活・環境」における、最終消費者向けの設置を伴うプリンター、複合機や太陽光発電システムの販売を除くその他の顧客からの注文については、顧客が製品を受領した時点で顧客が当該製品に対する支配を獲得することから、履行義務が充足されると判断し、収益を認識しています。「ドキュメントソリューション」及び「生活・環境」における、最終消費者向けの設置を伴うプリンター、複合機や太陽光発電システムの販売については、契約上の義務がない限り、製品が設置され、顧客が受入れた時点において履行義務が充足されると判断し、収益を認識しています。

  すべてのセグメントにおいて、当社は製品に欠陥があった場合のみ返品を受入れます。また、当社の販売条件には、「電子デバイス」における販売プログラムを除いて、価格保証、ストック・ローテーションまたは返品規定はありません。

販売奨励金について

  「電子デバイス」において、各種電子部品を販売する代理店への販売については、以下の様々な販促活動が定められており、顧客との契約において約束された対価から販売奨励金を控除した金額で収益を測定しています。

(a)ストック・ローテーション・プログラムについて

  ストック・ローテーション・プログラムとは、品質に問題のない在庫について、直近6ヵ月の売上高に対して特定の比率を乗じ算出される金額分を、代理店が半年毎に返品することが可能な制度です。売上高に対するストック・ローテーション・プログラムの引当金は、現時点までの推移、現在の価格と流通量の情報、市場の特定の情報や売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて算出した代理店の売上高に対する比率に基づき、収益認識時点で算定し、計上されており、これらの手続きには、重要な判断を必要とします。当社は、ストック・ローテーション・プログラムによる将来の返品について妥当な算定ができていると考えており、これまでの実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。なお、製品が返品され、検収された時点で、代理店に対する売掛金を減額しています。

(b)シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラムについて

  シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム(以下、シップ・アンド・デビット)は、代理店が顧客への販売活動における市場での価格競争に対して代理店を補助する仕組みです。シップ・アンド・デビットが適用されるためには、代理店が在庫から顧客へ販売する特定部分についての価格調整を、代理店が要求する必要があります。シップ・アンド・デビットは、現在及び将来の代理販売において、代理店が顧客へ販売する特定部分について適用されることがあります。IFRS第15号に準拠し、当社は代理店に対して収益を認識した時点で、その代理店への売上高にシップ・アンド・デビットが適用される可能性を考慮して、その売上高に関連する代理店の将来の活動に対して変動対価を見積り、計上しています。当社は、当該期間における売上高、代理店に対する売掛金の残額、代理店の在庫水準、現時点までの推移、市場状況、設備製造業やその他顧客に対する直接的な販売活動に基づく価格変動の傾向、売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて、売上高に対する変動対価を見積り、計上しています。これらの手続きは慎重な判断のもとで行われており、またその結果、当社はシップ・アンド・デビットにおける変動対価について、妥当な算定、計上ができていると考えています。これまでの当社の実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。

リベートについて

  「産業・自動車用部品」と「ドキュメントソリューション」における代理店への販売において、当社は、定められた期間内に予め定めた売上目標を達成した代理店に対し、現金でリベートを支払っています。このリベートについては、収益を認識した時点で各代理店の予想販売額を見積り、当該予想販売額を収益から控除しています。

返品について

  当社は、収益を認識した時点で過去の実績に基づいて返品による損失額を見積り、収益から控除しています。

製品保証について

  「ドキュメントソリューション」において、当社は、製品に対して通常1年間の製品保証を提供しています。また、最終消費者への販売において、1年間の保証期間終了後、延長保証契約を締結する場合があります。役務提供に係る収益については、契約期間にわたり収益を認識しています。

  また、製品販売、製品保証など複数の財又はサービスを提供する複数要素取引に係る契約については、契約に含まれる履行義務を識別し、契約の対価を配分する必要がある場合には、取引価格を独立販売価格に基づき配分しています。

4 【経営上の重要な契約等】

(1)技術受入契約

会社名

相手先名

国  名

内  容

契約期間

当社

Qualcomm,Inc.

米国

携帯端末に関する特許実施権の許諾

1996年8月31日から

対象特許の満了日まで

 

(2)相互技術供与契約

会社名

相手先名

国  名

内  容

契約期間

京セラドキュメント

ソリューションズ㈱

キヤノン㈱

日本

電子写真技術に関する特許実施権の許諾

2012年4月1日から

対象特許の満了日まで

 

(3)吸収合併契約

  当社は、2018年5月25日に開催した取締役会において、液晶ディスプレイ事業及び光学部品事業のさらなる拡大に向け、経営基盤を強化するために、2018年10月1日を効力発生日として、当社100%連結子会社である京セラディスプレイ㈱及び京セラオプテック㈱の吸収合併を行うことを決議し、同日付けで合併契約を締結しました。

  当社は、当該合併契約に基づき、2018年10月1日に、京セラディスプレイ㈱及び京セラオプテック㈱を吸収合併しました。

 

(4)資産譲渡契約

  2019年1月11日、当社の米国の連結子会社であるKyocera International, Inc.は、米国におけるメディカル事業拡大のために、米国のRenovis Surgical Technologies, Inc.と、整形インプラント事業に係る資産の譲渡契約を締結しました。Kyocera International, Inc.は、2019年1月18日にKyocera Medical Technologies, Inc.を設立し、当該資産の譲渡契約に基づき、2019年3月1日に米国のRenovis Surgical Technologies, Inc.の整形インプラント事業に係る資産のすべてを取得しました。

 

(5)株式譲渡契約

  2019年2月1日、当社の米国の連結子会社であるKyocera Senco Industrial Tools, Inc.は、欧州における空圧工具の事業拡大のために、オランダの空圧工具メーカーであるVan Aerden Group BVの全発行済株式の取得に関して、同社株主と株式譲渡契約を締結しました。当該株式譲渡契約に基づき、Kyocera Senco Industrial Tools,Inc.は、2019年3月1日に、同社の発行済株式のすべてを取得し、同社を連結子会社化するとともに、Kyocera Aerfast Europe BVへ社名を変更しました。

 

  2019年2月1日、当社のドイツの連結子会社であるKyocera Fineceramics GmbHは、欧州におけるファインセラミック事業拡大のために、ドイツのH.C. Starck GmbHと、セラミック事業を営む同社の連結子会社H.C. Starck Ceramics GmbH の全発行済株式の取得に係る株式譲渡契約を締結しました。当該株式譲渡契約に基づき、Kyocera Fineceramics GmbHは、2019年4月12日に、同社の発行済株式のすべてを取得し、同社を連結子会社化するとともに、Kyocera Fineceramics Precision GmbHへ社名を変更しました。

 

(6)原材料に係る長期購入契約に関する和解合意

  当社は、2005年から2008年にかけて、Hemlockと、当社のソーラーエネルギー事業において使用するポリシリコン原材料の供給に関する長期購入契約を締結しました。

  2018年11月28日、当社とHemlockは当該契約に関する和解合意に至りました。当該和解合意に基づき、当社がHemlockに対して支払済の前渡金の放棄に加え、保有するポリシリコンでの代物弁済、和解金の支払等を完了することにより、契約上の将来購入義務は解除される予定です。

  なお、当該和解合意に伴う財政状態及び経営成績への影響については、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等(1)連結財務諸表  注記  34.コミットメント(2)原材料に係る長期購入契約に関する和解合意」を参照ください。

5 【研究開発活動】

  当社は各部門での新技術開発、新製品開発に加え、グループ内の経営資源の融合により将来の核となる事業の創出に取り組んでいます。特に今後の成長が見込まれる「情報通信市場」、「自動車関連市場」、「環境・エネルギー市場」、並びに「医療・ヘルスケア市場」における付加価値の高い新技術、新製品の研究開発に注力しています。

  IoTの普及に伴う様々な市場での新たな事業機会の獲得に向けて、通信技術等を活用した新製品、新技術開発を強化しています。さらに、生産性向上等に貢献するAIやロボットの一層の活用に向け研究開発を強化し、取り組んでいます。

  また、みなとみらいにシステム・ソフト開発を担う中核研究拠点を設置するなど、研究体制の再編にも取り組んでおり、各研究拠点の連携強化による研究開発を加速します。

  各レポーティングセグメントにおける主な活動は次のとおりです。

(1)産業・自動車用部品

  当セグメントでは、主に産業機械や自動車関連市場向けに各種製品の研究開発を行っています。

創業以来培ってきたファインセラミックスの材料・プロセス・設計技術をさらに高める基礎研究に取り組むとともに、これらのコア技術を活かし、幅広い市場向けに新製品の開発を進めています。今後も拡大が見込まれる半導体製造装置市場向けには、微細配線、三次元構造等、高集積化の進む次世代装置に向けた部品や材料開発に取り組むとともに、高温対応を可能にする優れた熱伝導性や機械特性を持つ窒化物セラミックスの開発を、外部の企業と共同で開始する等、社外リソースも積極的に活用しています。

  また、ファインセラミック技術を活かし、環境・エネルギー市場で新たなクリーンエネルギー供給システムとして普及が期待されるSOFC向けセルスタックの高効率化の開発を強化しています。

  ADAS等の進展に伴い事業機会の拡大が見込まれる自動車関連市場向けには、車載カメラシステムによる高度な画像センシング技術の実現に向けてソフトウェアの開発を強化する等、高付加価値製品の開発を進めています。また、同市場に加え、各種産業市場に向けて、高輝度等、差別化したTFT液晶ディスプレイや、TFT成膜技術を応用した商品の開発を行っています。

  自動車関連市場向けに加え、産業機械や建築市場への事業領域の拡大を図っている機械工具は、現在主に自動車やエネルギー・インフラ、航空機分野等の幅広い市場での金属加工に使用されます。当社は、ユーザーの生産性向上に寄与する高品質・高精度な切削工具の開発を材料技術から強化していることに加え、京セラグループの有する多様な技術の活用により、製品力を高めた電動・空圧工具の新製品開発を図っています。

(2)半導体関連部品

  スマートフォンやタブレット端末等のデジタルコンシューマ機器市場においては、機器の高機能化と同時に小型・薄型化のニーズが高まっています。これに伴い、機器に搭載される電子部品の小型化や半導体の微細化が進んでいます。また、情報通信ネットワーク市場においてはIoTの進展も加わり、5G向けの高速かつ大容量の通信インフラの構築が、自動車市場においてはADASの進展による電装化や低消費電力化への一層の対応が求められています。さらに、これらの主要市場に共通して、各種センサーの需要が増加しています。このような市場動向に対応し事業拡大を図るため、当社は独自の材料、設計、加工技術を活かし、付加価値の高い新製品の開発に努めています。

  セラミックパッケージ事業においては、微細配線が可能で、かつ高強度、高剛性の超小型・薄型の電子デバイス用パッケージや、より高い周波数に対応した光通信用パッケージ、放熱性や高い耐久性を有するLED用パッケージ等の開発に取り組んでいます。

  有機パッケージ事業においては、高速信号・広帯域メモリー接続に対応し、狭ピッチかつ薄型・高精細なフリップチップパッケージやモジュール基板の開発を強化しています。また、有機多層ボード事業においても高周波対応の新材料を用いた製品開発に取り組んでいます。

  これらの事業を材料技術で支えるケミカル事業では、情報通信市場や自動車関連市場向けに絶縁信頼性等の電気特性の向上に加え、熱硬化・光反応性や形状・応力安定性等の高機能化への要求に対応する新規材料の合成や新たな材料配合技術等の開発を強化しています。

(3)電子デバイス

  スマートフォンをはじめとする通信端末では、高機能化に加えマルチバンド化により部品の小型化と高信頼性が要求されています。当社は、これらの市場要求に応える小型高容量で温度や湿度への信頼性を高めたセラミックコンデンサや小型低損失かつ高信頼性のSAWデバイス、並びに小型高特性の水晶部品や狭ピッチ・低背で高速伝送を可能にするコネクタ、高効率なアンテナ等の開発を進めています。

  自動車や産業機器市場向けには、高温信頼性や耐圧性を高めたセラミックコンデンサやコネクタ、ディスクリート及びパワーモジュールを含むパワー半導体に加え、各種コントロールデバイス等の開発を行っています。これら各部品の一層の特性向上に加え、各部品を組み合わせた高付加価値モジュールの開発も進めています。

  また、主に商業印刷市場向けに展開しているインクジェットプリントヘッドでは、デジタル印刷で要求される高速化、高画質化に加え、耐久性を高めた製品開発に取り組んでいます。さらに、電子デバイスで培った微細加工技術や圧電技術を応用し、ライフサイエンス分野への製品開発を進めています。

(4)コミュニケーション

  通信端末事業については、デザイン性も含め、防水、防塵、耐衝撃性等に優れた通信端末の開発を強化するとともに、端末のプラットフォームやモジュールの共通化を進め、特長ある端末の開発及び開発期間の短縮に努めています。

  情報通信サービス事業においては、IoTの普及を支援する製品開発に積極的に取組んでいます。IoTの活用による顧客ニーズの複雑化・高度化に伴い、多様な端末やネットワークから集まるデータの収集・管理・活用を行うプラットフォームや、セキュリティソフトの開発にも取り組んでいます。企業等のビジネス分野で利用が拡大するAIについても、画像解析やテキスト解析等にディープラーニングを活用したプラットフォームやソフトウェアの開発を強化しています。

  また、当社が有している部品や端末、システム技術の融合により、低消費電力で広い範囲の無線通信に対応したLPWA等のIoT市場向け通信モジュールの開発を強化するとともに、LPWA技術によるワイヤレスネットワークシステム網の拡大や、車載用モジュールの開発を外部機関との連携も含め積極的に進めています。

(5)ドキュメントソリューション

  当セグメントでは、当社の特長である環境性と経済性に優れたプリンター及び複合機の開発を進め、競合他社との差別化を図っています。機器については、長寿命で廃棄物が少ないプリンターや複合機の開発に注力し、廃棄される消耗部品は極少におさえ、お客様のランニングコストの低減と、地球環境にやさしい製品の提供に努めています。また、高画質かつ省エネルギーを追求したトナーの改良にも継続的に取り組んでおり、付加価値の向上に努めています。

  ドキュメントソリューションサービス関連では、モバイル機器やクラウド環境、並びに顧客が所有するドキュメント管理システムとの連携によって、情報共有や業務効率に貢献するアプリケーションソフトウェア等の開発を進めています。 また、企業内の情報を電子化し、包括的かつ効率的に管理・運用するECM事業やドキュメント関連業務の受託サービスであるドキュメントBPO事業等を強化し、既存事業との融合による新サービスの開発に取り組んでいます。

(6)生活・環境

  ソーラーエネルギー事業においては、単結晶及び多結晶シリコン太陽電池セルの変換効率や、モジュールの出力及び耐久性の向上、並びに様々な形の屋根や水面、農地等への設置を可能にする製品開発等により、製品の性能品質及び設置自由度の向上に努めています。また、売電から自家消費へと電力使用ニーズが変化する中で、太陽光発電システムで得られた電力の効率的な活用を可能にするエネルギーマネジメントシステムや、蓄電システムの大容量化や小型化、産業用S0FCシステム等の次世代の各種高効率な周辺機器やシステムの開発にも注力しています。さらに、電力自由化に伴うデマンドレスポンスやバーチャルパワープラント市場での事業拡大に向けた技術開発も進め、トータルエネルギーソリューションビジネスへの事業領域拡大に向けて開発を強化しています。

  医療機器事業では、主に人工関節や歯科インプラントを展開しており、生体親和性の高いファインセラミックスをベースに、ユーザーの負荷を軽減する製品開発を積極的に進めています。具体的には、人工関節の摩耗を抑え長寿命化を実現する表面処理技術や、抗菌性を高めた製品等を社外機関とも連携して開発に取り組んでいます。

 

レポーティングセグメント別研究開発費

 

 

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率(%)

 

産業・自動車用部品

10,571

14,589

38.0

 

半導体関連部品

3,550

3,389

△4.5

 

電子デバイス

10,898

13,877

27.3

 

部品事業計

25,019

31,855

27.3

 

コミュニケーション

3,849

5,238

36.1

 

ドキュメントソリューション

22,259

21,787

△2.1

 

生活・環境

4,268

8,145

90.8

 

機器・システム事業計

30,376

35,170

15.8

 

その他

2,878

2,902

0.8

 

研究開発費

58,273

69,927

20.0

 

売上高比率

3.7%

4.3%