文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。
(2)目標とする経営指標
当社は、高成長・高収益企業の実現に向けて、売上高及び税引前利益の持続的な2桁成長を目指します。
(3)中長期的な経営戦略
当社は、グループ内に有する様々な経営資源の活用により総合力を最大限に発揮し、外部との連携を強化することで、高成長・高収益企業の実現を目指しています。特に、「情報通信」、「自動車関連」、「環境・エネルギー」、「医療・ヘルスケア」市場を中心に既存事業の拡大及び新規事業の創出を図るとともに、収益性向上に向けて生産性倍増に取り組んでいます。
さらに、成長加速に向けて組織の活性化を図るため、当社は2021年4月より、16ある事業部門・主要子会社を「コアコンポーネント」、「電子部品」、「ソリューション」の3つのレポーティングセグメントのもとに、管理部門を「コーポレート」に集約しました。また、それぞれに経営トップの権限を大幅に委譲した担当役員を新たに任命し、より迅速かつダイナミックな経営判断の実践に努めます。
(4)優先的に対処すべき課題
a. 既存事業の拡大及び新規事業の創出
「情報通信」、「自動車関連」市場においては、引き続き5Gや半導体、ADAS(先進運転支援システム)関連向け製品の旺盛な需要が見込まれます。当社は、この事業機会を着実に捉え、既存事業の拡大を図るべく、積極的な設備投資を継続しています。特にセラミックパッケージやコンデンサ、水晶部品等の増産に向けて、国内外の生産拠点における量産設備や自動化ラインの導入、新棟建設等を進めます。
また、中長期的な成長に向けて、社内外との連携を強化し、社会課題の解決に貢献する新規事業の創出に取り組んでいます。独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システム事業への参入や、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウム(GaN)デバイスの応用システム開発へ着手するとともに、太陽光発電システムを軸としたエネルギー事業や、人工関節事業で得たノウハウを活かした再生医療事業への展開等を進めています。今後、これらの新規事業の試験導入や実証実験等を進め、早期の収益貢献を図ります。
b. 生産性倍増
当社は、AIやロボット、IoTを駆使した生産技術の開発を進め、生産性倍増に取り組んでいます。具体的には、クレイ型蓄電池の生産現場においてすべての工程をIoTによりデータで連携させ、生産ラインをAI制御により自律化させたスマートファクトリーの構築を進めています。今後、これらの自動化技術やシステムを各事業へ横展開し、グループ全体の生産性向上を図ります。
また、コロナ禍において加速したリモートワークを一層活用し、営業や管理部門における更なる業務効率化を進めます。
c. ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進
当社は、持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応、並びにコーポレート・ガバナンスの強化に努めています。
環境課題については、自社拠点への太陽光発電システムの設置等、再生可能エネルギーの活用による温室効果ガス排出量の削減等に取り組むとともに、長期環境目標の設定やTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示の充実化を進めています。
社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福」の実現に向けて、多様な人材が活躍できる職場環境や制度づくりに努めています。柔軟な勤務体系の整備に加え、新規アイデアやチャレンジを後押しする各種制度の導入等に取り組んでいます。
コーポレート・ガバナンスについては、取締役会の経営の監督と執行の役割の一層の明確化及び実効性の向上に努めています。第67期定時株主総会(2021年6月開催)において、社外取締役比率を3分の1に向上させるとともに、新任の社外取締役として企業経営者を選任し、より高水準のコーポレート・ガバナンスの構築を図ります。
(5)経営環境
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、一部の販売網及び調達並びに供給において遅延等が生じましたが、経済活動の再開に伴い、これらの影響は徐々に緩和されました。また、オンラインでの商談の普及等もあり、受注活動も再開されました。
一方で、5GやADAS関連市場向け製品等の旺盛な需要による世界的な半導体の不足や、米中貿易摩擦による部品受注への影響が生じました。
これらの影響は引き続き注視が必要であり、事業への影響を最小限にとどめるため、当社は好需要製品の生産拡大や新規事業の創出並びに生産性の向上に努めます。
a.販売網
当社の製品やサービスは、当社営業員やグループの販売会社、または第三者である販売代理店を通じて世界各国で供給されています。当社は主要販売拠点に営業員や技術担当者等を配置し、顧客や販売代理店等に技術サポートや販売支援を行っています。このような多様な販売網を通じて当社製品の売上拡大が図られるとともに、優れた顧客サービスを提供
できるものと考えています。
産業・自動車用部品セグメントにおいては、半導体産業をはじめとする各種産業機械市場や自動車関連市場向けに、直接販売に加え、販売代理店等を通じて部品、デバイス、機器等の幅広い製品を世界各国へ販売しています。また、近年当社グループに加わった空圧・電動工具事業では、小売店やインターネット等による販売も行っています。
半導体関連部品セグメントでは、主に国内外のデバイスや部品、機器メーカーへ直接販売を行っています。
電子デバイスセグメントについては、国内外のデバイスや機器メーカーへ直接販売を行うとともに、代理店販売も積極的に活用しています。
コミュニケーションセグメントの携帯端末事業においては、日本及び米国の通信キャリア向けにスマートフォンや携帯電話を供給しています。また、自動車部品メーカーに対して車載用通信モジュールを供給するとともに、企業ユーザーやシステムインテグレーターに対して、各種IoTモジュールを提供しています。
情報通信サービス事業については、一般企業や公共機関等向けにICT事業や経営コンサルティング事業を国内に加え中国等に展開するとともに、通信キャリアや無線機器ベンダー、太陽光発電事業者向けにエンジニアリング事業を主要市場である国内に加え、マレーシア等でも展開しています。
さらに、拡大が続く5G関連市場において、様々な機器を5Gネットワークに接続するコネクティングデバイスやローカル5Gソリューション等の新製品、新事業の展開により、新たな顧客ニーズの獲得及び販売網の拡充を図っています。
ドキュメントソリューションセグメントでは、長寿命で低ランニングコストを実現する自社ブランドのプリンターや複合機をはじめ、ドキュメント関連の経営課題を解決するドキュメントソリューションサービスを、37の販売拠点から140か国以上に広がる地域で、代理店経由や直接販売で提供しています。
生活・環境セグメントのスマートエナジー事業においては、太陽光発電システムを直接販売のほか、販売子会社や代理店等を通じて国内外で販売しています。また、蓄電システムやエネルギーマネジメントシステムについては、国内の代理店やフランチャイズ店、ハウスメーカー経由で販売しています。エネルギーサービス事業は、協業先との合弁会社等を通じて展開しています。
医療機器事業では、主に販売代理店を通じて人工関節や人工骨、人工歯根等を病院や歯科医院へ販売しています。
宝飾・応用商品事業については、直営店や一般小売店に加え、インターネットを通じて宝飾品やセラミックナイフ等の応用商品を販売しています。
なお、国内向け取引は円で、海外向け取引は様々な通貨で取引が行われますが、主な取引通貨は米ドルとユーロです。
b.原材料調達及び供給状況
当社は、事業活動を行う上で様々な原材料や部材を購入しています。当連結会計年度においては、生産計画に見合った原材料や部材を調達出来ました。
当社の部品事業で使用する主な原材料には、アルミナやジルコニア、窒化珪素、ニッケル粉、エポキシ樹脂、タングステン等があります。また、機器・システム事業においては、基幹部品であるチップセットや液晶ディスプレイ等が主な仕入れ部材です。なお、当社は多岐にわたる製品を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部はグループ内で調達しており、内製部品の中には、製品や機器の差別化に寄与する部品も含まれます。
当社は、原材料や部材の調達においては複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。ただし、顧客による使用原材料の指定がある場合や、製品品質を維持するために必要な場合等、例外的に供給業者を限定する場合があります。
これらの原材料や部材の購入価格は、需給状況や、原料や燃料の高騰等の影響、並びに、海外供給業者より外貨建てで購入する場合には為替レートの状況等により変動します。当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料や部材の価格上昇を吸収するよう努めています。
当社は、サプライヤーと積極的なコミュニケーションをはかり、相互信頼に基づくパートナーシップの構築に注力しています。平時においてはサプライヤーセミナーや懇親会を開催していますが、当連結会計年度はコロナ禍の現状に鑑み、国内外のサプライヤーとオンラインによる面談を積極的に行うことで、当社の調達活動への理解促進やパートナーシップの維持に努めました。
また、人権・労働、環境保護などの社会的責任を果たしていくため、サプライヤーと一体となり、CSR活動の推進に取り組んでいます。災害発生時の速やかな事業復旧・継続に関するBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)策定等、サプライチェーン全体で取り組まなければならないCSR課題に適切に対応するため、「京セラサプライチェーンCSR調達ガイドライン」を定め、本ガイドラインに基づきサプライヤーのCSR活動に関する取り組み状況の調査を行っています。詳細は、当社ホームページ(https://www.kyocera.co.jp/sustainability/social/supplier.html)をご参照ください。
c.競合他社との競争優位性
当社は事業強化に向け、M&Aや協業等、外部経営資源の積極的な活用に加え、2021年4月に実施した組織再編を通じ、迅速な経営判断や経営資源の有効活用等、既存組織の枠を越えたグループ内の更なるシナジー効果の追求に努めています。また、AIやロボットを活用した生産性の向上にも取り組んでおり、これらの施策を通じて競争力の強化を図っています。各事業における強みは次のとおりです。
(a)産業・自動車用部品
当社は、創業以来、ファインセラミック材料及び製品の開発により、新市場の開拓に努めています。現在では、情報通信市場や半導体を含む産業機械市場等の幅広い市場向けに製品を供給しています。新市場開拓や外部との協業で培ってきたセラミック材料技術や製品デザイン力等のノウハウの蓄積が、顧客要求への対応を可能にする生産技術力に繋がっていると考えています。加えて、高い生産能力を有していることが競合他社との差別化要因であり、これによりグローバルサプライヤーとしての地位を確立しています。
自動車部品事業においては、ファインセラミック技術を活用したパワートレイン向け部品で高シェアの製品を有しています。また、自動車の安全性向上のために搭載が増加している車載カメラについては、高解像度カメラや各種センサーカメラ等、新製品や新技術開発によりシェアの拡大を図っています。
液晶ディスプレイ事業では、中小型サイズに特化し、車載用及び産業用を中心に展開しています。ヘッドアップディスプレイシステム等の高付加価値製品の開発に加え、医療用等の信頼性が求められる分野での新製品開発を通じ、一層の競争力の強化と事業拡大に努めています。
機械工具事業においては、総合工具メーカーとして事業の拡大に努めています。金属加工に使用される切削工具事業については、世界的に多くの競合会社がありますが、当社は高い材料技術をベースに、顧客の生産性向上に寄与する多種多様な工作機械用切削工具を主に自動車関連市場に供給するとともに、航空機やエネルギー市場等の幅広い市場への製品展開を進めています。空圧・電動工具事業においては、積極的なM&Aにより製品ラインアップの拡充や販売網の強化を図るとともに、グループ内シナジーの追求により、さらなるコスト競争力の強化に取り組んでいます。
(b)半導体関連部品
セラミック材料部品事業では、ファインセラミックに関する高度な開発力及び生産技術力、並びに供給能力を有しており、世界市場においてマーケットリーダーの地位を確立しています。競合会社は主に国内メーカーですが、当社の有する優れた経営資源を活用し、5G携帯電話端末や基地局、光通信、車載、医療、IoT関連市場等に向けて、幅広くセラミック材料部品の用途拡大を図っています。また、拡大する市場ニーズへの対応として積極的な増産体制を構築しており、高シェアの維持、向上に努めています。
有機パッケージ及び基板事業においては、国内及びアジアメーカーが主な競合会社です。当社は、優れた電気特性や高い信頼性が求められるサーバーやルーターといった通信インフラ向けに使用される、ハイエンドのフリップチップパッケージやモジュール基板等の製品において主要サプライヤーの一社です。さらに、電装化が進む車載ADAS市場に対しては、これまで培ってきた設計技術等の技術力を活かし、小型で高信頼性を備えた製品展開を進め、事業競争力の強化を図っています。
(c)電子デバイス
当社は、各種コンデンサや水晶部品、SAWデバイス、コネクタ、サーマルプリントヘッド及びインクジェットプリントヘッド、パワー半導体、各種センサーや無線通信用アンテナ等の幅広い製品を開発・製造しており、これらの充実した製品ラインアップにより、グローバルに多様な用途へ事業を展開しています。
スマートフォン向けコンデンサや水晶部品、SAWデバイス、コネクタでは、小型・高機能等のニーズを捉えた最先端分野への製品展開に注力することで、主にハイエンドのスマートフォン向けでは主要サプライヤーの一社となっています。引き続き5G対応端末等の需要増が見込まれることから、新製品投入及び生産能力の拡大に取り組み、シェア拡大に努めています。また、当社の子会社であるAVX Corporationは、タンタルコンデンサ市場において一般産業、自動車、通信インフラ等の幅広い分野へ展開する当業界のリーダーであると同時に、研究開発や積極的なM&Aにより、製品ラインアップ及び事業領域、並びにシェアの拡大を図っています。当社は前連結会計年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)にAVX Corporationを完全子会社化し、両社の強みを活かしたシナジーの追求に取り組んでいます。中長期で成長が見込まれる電子部品市場において、より一層の競争力の強化を図ります。
バーコードラベル印字等に使用されるサーマルプリントヘッドや、捺染印刷等の産業向けに使用されるインクジェットプリントヘッドにおいては、高いシェアを有しており、積極的な新製品の投入や用途拡大により、更なるシェアの向上に努めています。
(d)コミュニケーション
通信機器事業においては、主に国内向けにスマートフォンやフィーチャーフォンを供給しています。主な競合会社は米国、アジア、並びに国内携帯電話メーカーです。当社は、防水・高耐久等の差別化を図った製品や、簡単ケータイから5G対応スマートフォン等の幅広い製品展開により、コンシューマ市場に加え、教育学習支援業や建設業等の法人向けの多様なユーザーニーズに対応しています。
通信モジュール事業においては、通信技術の応用展開により、車載やIoT向けに事業領域の拡大を図っています。また、これまで培ってきた通信技術や国内の大手キャリアとの関係を活かし、ローカル5Gシステム等の新事業の展開が可能となっており、この点が当社の強みとなっています。
情報通信サービス事業は、主に国内で事業を展開しています。アプリケーションやセキュリティソフト等を展開するICT事業では、AI、IoTの普及に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に伴う多様なユーザーニーズに対応した製品の開発、供給を図っています。また、IoT 社会での無線通信ネットワークとしてニーズが高まっているLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力広域ネットワーク)ネットワーク「Sigfox」を日本で唯一展開できる事業者としてライセンスを獲得したことで、国内LPWA通信サービス分野で主要な一社となっています。
(e)ドキュメントソリューション
当レポーティングセグメントでは、プリンターや複合機、商業用インクジェットプリンターの製造・販売、及びドキュメントソリューションサービスの提供をグローバルに展開しており、競合は主に日本や米国の大手ドキュメント機器会社です。
当社は、自社開発の長寿命感光体ドラムの搭載や低消費電力システム設計により、環境に配慮し、かつ低ランニングコストで差別化を実現した製品を提供しています。また、高画質かつ省エネルギーを追求したトナーの開発にも継続的に取り組んでおり、付加価値の向上に努めています。さらに、高速機から低速機まで幅広く製品ラインアップを拡充し、様々な顧客ニーズへの対応を進めています。同時に、製造ラインの自動化を推進することで、生産効率を向上させ、コスト競争力を高めています。
新たに事業参入した商業用インクジェット事業では、高画質、高生産・高耐久かつ、多品種大量印刷ニーズにも対応し、印刷コストを低減する経済性に優れた製品を展開しています。
また、ドキュメントソリューション事業の拡大により、一層の競争力の向上を図っています。モバイル機器とクラウド環境の連携等、お客様のニーズに対応した様々なアプリケーションソフトウェアを効果的に活用し、顧客ごとに最適なドキュメント環境を提供することで事業機会の拡大に取り組んでいます。さらに、積極的なM&AによりECM事業等を手掛ける企業をグループに加えたことで、ドキュメントソリューション事業の顧客への提供価値を一層高めています。
(f)生活・環境
スマートエナジー事業においては、太陽電池パネルに加え、蓄電池や燃料電池、太陽光発電システム等、エネルギー関連製品を幅広く供給しています。今後の拡大が見込まれる脱炭素社会の実現に向けた自家消費需要を捉えるため、当社ではグループの経営資源やノウハウに加え、外部との協業を活用し、蓄電池やエネルギーマネジメントシステム等の開発を強化しています。また、次世代エネルギーマネジメントに関する実証実験への参画等により、トータルエネルギーソリューション事業の展開を積極的に進めています。特に、蓄電池については、世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池の開発・製造に成功し、低コストで安全性の高い製品の量産に取り組んでいます。これら多様な製品ラインナップに加えて、長期間にわたるアフターサービスやメンテナンスの提供を可能とする強固な財務基盤を有している点も、当社の優位性となっています。
医療機器事業では、人工関節や脊椎インプラント、人工歯根が主要製品です。主に国内市場で展開しており、国内メーカーとしてはトップクラスの競争力を有しています。製品の長寿命化を実現する表面処理技術や抗菌性を高める技術を付与した製品の展開により、競争力の一層の強化に努めています。また、M&Aを通じた米国市場への展開に加え、再生医療分野についても、外部機関との連携を通じ、低コストで安定的な製造が可能である他家間葉系幹細胞技術を、日本において独占的に活用する権利を取得する等、一層の事業拡大に努めています。
d.主要市場の動向
当社は、「情報通信」「自動車関連」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の4つを重点市場と捉えています。
「情報通信」については、引き続き5Gが市場をけん引するものと考えています。5G対応スマートフォンや基地局等の関連製品の需要増により、セラミックパッケージや有機パッケージに加え、セラミックコンデンサ、水晶部品、SAWデバイス、コネクタ等の電子部品の受注拡大が見込まれます。また、局所的に自営5G網を利用するローカル5Gの構築に向けた動きも活発化しており、これに向けたシステム・サービス事業の拡大を見込んでいます。
「自動車関連」については、ADASや環境性向上に対するニーズの高まりが本年も想定されることから、当社が展開するカメラモジュールや通信モジュール、有機パッケージ、各種電子部品、LEDヘッドライト用部品等の需要が堅調に推移するものと予想しています。また、自動運転システムの取り組みとして、自動車の性能向上に加え、V2I路側機等、交通インフラ面での安全運転支援システムの技術や製品ニーズも見込まれます。
「環境・エネルギー」については、当社スマートエナジー事業の主要市場である国内市場の需要は、電力固定価格買取制度(FIT)から脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの自家消費への移行が加速するものと予想しています。当社はこの需要に対し、太陽電池に加え、世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池及びSOFC(Solid Oxide Fuel Cell、固体酸化物形燃料電池)の3つの電池を柱に、エネルギーマネジメントシステムの構築に努めています。また、再生可能エネルギーを軸にした効率的なエネルギー利用に向けて、バーチャルパワープラント(VPP)や地域エネルギーマネジメントシステム等のインフラ構築に向けた取り組みも進んでおり、中期的に、機器だけでなく、各種システムやサービスまで含めたニーズの拡大が予想されます。
「医療・ヘルスケア」における当社主要製品は人工関節製品です。高齢化社会に向けてこれらの需要は、今後、さらに高まるものと予想しています。当社は、国内の人工関節市場では国内メーカーでシェアNO.1であり、医療関係者より高い信頼を得ています。これらの強みを活かし、今後はマーケットボリュームの大きい海外市場への展開を進めます。さらに、再生医療やモバイルヘルスケア関連の需要も見込まれることから、当社は、外部機関とも連携し、各種プロジェクトへの参画や新規事業の創造に取り組んでいます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは次のとおりであり、すべてのリスクを網羅的に記載しているわけではありません。なお、当該事項は、当社が有価証券報告書提出日時点において判断したものです。
事業活動に関するリスク
(1)日本及び世界経済の変動に関するリスク
当社は、日本のみならず世界各国で事業を展開するとともに、情報通信、自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケア関連等の様々な市場に製品・サービスを供給しています。そのため、日本及び世界経済の変動により、当社製品の需要が大きく減退するリスクがあります。翌連結会計年度は、世界経済は当連結会計年度に比べ回復に向かうものと見込んでいます。また、デジタル化の進展等により、5Gや半導体、ADAS市場における関連製品の需要の増加を見込むものの、新型コロナウイルス感染症再拡大等により、当社製品の需要が上記の期待を下回る可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、上記市場での事業機会を着実に捉えるべく、既存事業の拡大及び新規事業の創出、並びに生産性倍増に取り組んでいます。
・既存事業の拡大に向けて、セラミックパッケージやコンデンサ、水晶部品等、今後も旺盛な需要が見込まれる部品の積極的な設備投資を継続します。
・新規事業の創出については、独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システムや低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウムデバイスの応用システムの事業化を進める等、M&Aも含めた社内外との連携強化を図っています。
・生産性倍増については、一層の生産性向上に向けて、グループ全体でAIやロボットを活用した自動化ライン等の導入を進めます。
また、新型コロナウイルス感染症の再拡大等、厳しい事業環境下においても事業活動を継続できるよう、引き続きリモートワークをはじめとする柔軟な勤務体系の整備を進めます。
(2)国際的な事業活動に関するリスク
当社は、日本以外に米国や欧州をはじめ、中国やベトナム等のアジア地域で製造及び販売拠点拡充のために多額の投資を行っています。これらの海外市場で事業活動を行っていく上で、当社にとって望ましくない政治的・経済的要因により、輸出入管理・投資規制・収益の本国送金規制・移転価格税制・タックスヘイブン対策税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。
また、世界的な人権に対する配慮の高まりにより、自社だけでなくサプライチェーンでの人権問題にも配慮が求められています。そのため、これに関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。
(主要な対応策)
独占禁止法、反贈収賄、個人情報保護法等、グローバルに規制の強化の動きのある海外の主要な法律・規制の対応等については、主要な子会社の法務担当者が参加する会議を定期的に開催し、各社の法的な課題・対策に関して議論を行っています。輸出入管理については、安全保障貿易管理に関する社員教育の実施とビジネスに関連する重要な規制に関する情報を適時、社内に周知しています。また、刻々と変化する国際情勢を把握し、能動的なリスク回避策をとっています。投資規制・収益の本国送金規制については、当社及びグループ各社において規制変更の情報を早期に収集し、適切に対処するよう取り組むことで、そのリスクの予防・回避に努めます。海外の税制については、税務情報を適時適切に提出することにより、各国の税務当局と信頼関係を築き、必要に応じて事前照会を実施することで税務リスク低減に努めています。特に、グループ内の国際間取引については、OECD移転価格ガイドラインに従った独立企業間価格に基づき行うとともに、税務当局との事前確認制度を活用し適正な納税に努めています。また、過度な節税を目的とする低税率国・地域(いわゆるタックスヘイブン地域)への税源の移転を防止し、各国の税制に従い適正な申告納税に努めています。また、当社は「京セラグループ人権基本方針」を制定し、サプライチェーンでの人権デューディリジェンスを行うなど、人権問題に取り組んでいます。
(3)為替レートの変動に関するリスク
当社は、国内外で事業を行っているため、為替レートの変動の影響を受けます。為替レートの変動は、常に当社の事業活動の成果や海外資産の価値及び生産コストに影響を与えるため、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があるとともに、事業活動の結果について期間ごとに比較することを困難にする場合があります。また、為替レートの変動は、当社と海外の競合企業が同一市場で販売する製品の価格競争や、当社の事業活動に必要な輸入品の仕入価格にも悪影響を及ぼす場合があります。
(主要な対応策)
当社は、為替レートの変動について、外国為替リスク管理方針に基づき、主に短期の為替予約を行うことにより、この影響の軽減に努めています。また、海外生産拠点における現地での部材調達の促進により、仕入価格における為替リスクの低減を図っています。
(4)当社製品の競合環境に関するリスク
当社は、多種多様な製品を販売しているため、国際的な大企業から、高度に専門化し急成長している比較的小規模な企業まで、広範な競合会社が存在します。当社の競合環境は、これらに限らず、コスト構造等で競争優位性を持つ新興国企業を含め、新たな脅威となる競合他社の出現によって常に変化する可能性があります。特定の事業分野に特化している多くの競合会社と異なり、当社は多角的に事業を展開しているため、個々の事業分野に関しては、競合会社ほど出資や投資を行うことができない可能性があります。当社の競合会社は、財務・技術・マーケティング面での経営資源を、当社の個々の事業より多く有している可能性があります。また、競合の要因は事業分野によって異なりますが、価格と納期は当社の全事業分野において影響を及ぼす主な要因となります。需要や競合の状況によりますが、製品価格の値下げ要求は概して恒常化しているため、今後も製品価格の下落が予想され、その結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる経営資源を有しています。これらの経営資源を有効活用するため、グループ内の連携強化を図り、高付加価値製品の提供等により、競争優位性の確保に努めています。また、当社が顧客の製品ごとに仕様を合わせた部品を開発・製造・販売している事業においては、顧客の要求に沿った新製品の開発に早く着手することにより、競争力の強化を図っています。さらに、製品価格の下落に対しては、当社独自の経営管理システム「アメーバ経営」の実践を通じた部門別採算管理の徹底により、原価低減を図り、高い競争力の実現に取り組んでいます。
(5)生産活動に使用される原材料の価格変動、サプライヤーの供給能力に関するリスク
当社の各事業の生産活動に使用される原材料は常に価格変動にさらされているため、原材料価格の上昇は当社の製造原価の上昇につながる可能性があります。このような製造原価の上昇が製品の販売価格に転嫁できず、当社の収益性を押し下げる可能性があります。なお、当社は、原材料の正味実現可能価額(通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する原価の見積額及び販売に要するコストの見積額を控除した額)が原価を下回った場合には、正味実現可能価額まで評価減しており、今後も評価減を行う可能性があります。
また、当社は、生産活動において消費される一部の原材料を特定のサプライヤーに依存しており、これらのサプライヤーに対する需要が過剰な状況となり、当社への供給が不足した場合、当社の生産活動に遅延や混乱を引き起こす可能性があります。このような原材料の供給に重大な遅延があった場合、当社はただちに特定のサプライヤーに代わりうる供給先を確保できない可能性や、合理的な価格で原材料を確保できない可能性があります。このような価格上昇や原材料の供給停止は、当社の製品の需要を押し下げる可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、購買活動にあたり、「購買基本方針」を定め、会社概況やCSRに関する各種調査を通じて信頼のおける供給業者を選定するとともに、複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。
また、当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により、価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料の価格上昇を吸収するよう努めています。
さらに、当社は、素材・部品からデバイス、機器、システム、サービスに至るまで事業を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部をグループ内で調達しています。これにより、外部から調達している部材、部品を確保できない場合、グループ内での調達に切り替えるなどの対応を検討することが可能です。
(6)外部委託先や社内工程における製造の遅延または不良の発生に関するリスク
当社は、部品の製造や製品の組立の一部を単一もしくは限られた数社の取引先に外部委託しています。その中には非常に複雑な製造工程や長い製造時間を必要とする取引先も存在するため、部品や組立品の供給が遅滞する場合があります。また、このような部品や組立品が高い品質や信頼性を欠き、かつ適時に納入されない場合には、関連する製品の生産に重大な影響を及ぼし、当社の生産活動の遅延や中断が生じる場合があります。さらに、当社の製造工程においては、微小の不純物の製品への混入や製造工程の問題等の発生によって製品が納品できない状態になる場合や規格外となる場合があります。こうした要因によって生産高が計画を下回る、あるいは製品の出荷が遅れる、損害賠償金の支払請求を受ける等、業績に重大な影響を与える場合があります。これらのリスクに加え、製造原価に占める固定費の割合が高い事業においては、生産数量や設備稼働率の低下が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、外部委託先の選定にあたり、「購買基本方針」を定め、十分な検討の上、委託先を選定しています。また、当社では、社内で確立した製造工程について、原材料・部品等を支給し、設備及び製造仕様書を委託先に貸与することにより、当社と同じ生産管理や品質マネジメントシステムのもと、顧客への納期及び品質要求に対応しています。また、社内においては、データサイエンスを用いた品質改善や、AIやロボットを活用した生産性改善活動を継続的に実施し、リスクの低減に努めています。
(7)生産能力及び開発体制の拡大、もしくは現在進行中の研究開発が期待される成果を生み出さないリスク
当社は、需要の増加や顧客の要求に対応するため、常に生産及び開発能力の拡大に努めています。こうした生産及び開発能力の拡大を図る際に、予期せぬ技術的な障害や顧客の方針転換等により、計画どおりに拡大できない場合、新たに生産された製品や開発された技術から期待された成果が得られない可能性があります。また、当社で現在進行中の研究開発活動から生まれる製品が、市場において期待された評価を得られない可能性もあります。
(主要な対応策)
当社は、顧客及び市場の動向を注視し、開発、製造、営業、マーケティング活動をグローバルに展開することにより、変化の速い市場環境への対応に向けて研究開発の強化を図っています。材料からデバイスに関する製品・技術開発を行う「けいはんなリサーチセンター」及びソフトウェア・システム開発を行う「みなとみらいリサーチセンター」を中心に、オープンイノベーションを加速させ、「人類、社会の進歩発展に貢献する」新製品及びサービスの創出に努めます。
(8)買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク
当社は、事業を発展させるため、買収による会社または資産の取得を検討しており、実際にそれらを取得することがあります。しかしながら、取得後、被買収会社の事業や製品並びに人材を当社が効果的に当社の既存事業に統合できない可能性や、買収による事業上の成果や財政上の利益または新しい事業機会を当社が期待する程は得られない可能性があります。また、被買収会社による製品の製造やサービスの提供が、当社が計画したとおり効率的に実施できない可能性や、被買収会社の製品やサービスの需要が当社の期待に達しない可能性があります。従って、買収によって取得した会社や資産を期待どおりに活用できない場合、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があり、これらの資産が減損していると判断される場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社や学術機関、政府機関等との協業においても、上記と同様の影響を受ける可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について社外専門家のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。取得後においては、PMI(Post Merger Integration)を進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。
(9)優れた人材の確保が困難となるリスク
当社が将来にわたり発展するためには、技術・販売・管理面において優れた人材を確保する必要があります。当社はあらゆる事業分野において、さらに多くの優れた能力を有する人材の雇用が必要になると考えています。近年、各分野において、有能な人材の獲得競争がますます激しさを増してきていることから、当社は今後、現有の人材を維持することや、能力のある人材を増員することができなくなる可能性があります。
また、業務と育児・介護等との両立を支援する勤務体系の導入等、ワークライフバランスの充実化やダイバーシティの推進を実施しない場合、現有の人材を維持できなくなる可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、将来の京セラを支える高いポテンシャルとチャレンジ意欲溢れる人材を新卒採用しているほか、高度な専門スキルを有する人材や、マネジメント能力に優れた多様な人材を経験者採用として通年で積極的に獲得しています。また、従業員に対しては、当社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする経営哲学「京セラフィロソフィ」の理解・実践と、業務を遂行するうえでの専門的な知識・技術の習得の両面で能力向上を図ることを目的とした人材教育を実施しています。目的別に構成される教育体系に基づき教育を展開していくことで経営理念の実現に貢献する有為な人材の育成に努めています。さらに、在宅勤務やフレックス制度の導入等の柔軟な勤務体系の導入により、ワークライフバランスの充実化やダイバーシティの推進を図り、多様な人材が働きがいを持って活躍できる職場環境の実現に取り組んでいます。
(10)情報セキュリティに関するリスク
当社は、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報、機密情報を保有しています。これらの情報については、情報機器の故障や、ソフトウェアの不具合、マルウェアの侵入や高度なサイバー攻撃等により、情報漏洩や改ざん、滅失、システム停止等の被害を受けるリスクがあり、このような事態が発生した場合には、追加対応や損害賠償等の多額の費用負担により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社のシステムに対する不正アクセスを防止するために、当社は今後の技術革新にも対応できる情報セキュリティの維持に関連する追加的な費用を負担する可能性があり、それらが当社の財政状態及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社では、経営戦略、商品開発、各種ノウハウ、技術等を会社の重要資産と認識した上で、京セラグループ統一の「情報セキュリティ管理方針」を制定し、情報セキュリティに関する管理体制を整備しています。また、情報セキュリティを維持・確保するために、従業員が遵守すべき事項を定めた各種規程を制定し、従業員への教育を実施しています。さらに、ネットワークやIT資産等に対するセキュリティ対策、事業継続計画(BCP)を策定し、情報セキュリティの強化を図っています。外部からのマルウェアの侵入やサイバー攻撃等に対しては、システムによる常時監視により侵入防止対策や、被害を受けた場合の早期復旧策を講じています。
法規制・訴訟に関するリスク
(11)当社の企業秘密や知的財産・ブランド価値に関するリスク
当社が将来にわたり発展し、市場競争において優位な地位を確立・維持するためには、当社の企業秘密やその他の知的財産が守られなければなりません。当社は企業秘密を守るために従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等と秘密保持契約を締結しています。また、当社が独自に開発した製品や工程については、国内外において特許等の知的財産の取得に努めています。秘密保持契約の当社以外の当事者によって当社の企業秘密を不適切に漏洩された場合、もしくは当社が特許を取得している独自開発製品・工程が他社によって侵害された場合、あるいは当社のブランド価値を毀損するような模倣品が販売された場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は戦略的に知的財産を出願していますが、こうした出願が登録されない可能性があり、また登録されても無効にされる可能性、あるいは当社の知的財産権を回避される可能性もあります。
(主要な対応策)
当社は、企業秘密を守るために従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等と秘密保持契約を締結しています。当社が独自に開発した製品や工程については、国内外において知的財産権を取得し、侵害者の排除に努めています。また、当社の知的財産については、先行調査を十分に実施した上で出願を行うことにより、登録可能性を高めるとともに、様々な観点から当該事業分野や製品を戦略的に網羅する複数の強い知的財産権を取得し、これらの特許を活用することで事業に貢献する活動を行っています。さらに当社のブランド価値の維持向上を図るため、知的財産権を活用した模倣品の摘発を行っています。
(12)当社製品の製造・販売を続ける上で必要なライセンスに関するリスク
当社はこれまでに、第三者より知的財産権を侵害しているとの通知を受けたことや、知的財産権の実施許諾についての対価請求の申し出を受けたことがあり、今後も同様の事例が発生する可能性があります。従って当社は、以下のことを保証することはできません。
・侵害の申し立て(または侵害の申し立てに起因する賠償請求)が当社に対して行われることはないということ。
・侵害の申し立てがあった場合、製品販売の差止命令を受ける事態が発生しないということ、及び、差止命令によって当社事業の業績が大きく損なわれる事態が発生しないということ。
・当社の事業活動に悪影響を及ぼす高額の実施許諾料の支払いを要求されないこと。
(主要な対応策)
当社は、新技術・新製品を開発する際には、事前に他社の知的財産権を調査して、知財リスクを把握した問題解決に取り組んだ上で事業を行うように努めています。それでも他社から侵害の申し立てがあった場合は、誠実に対応を行い、必要がある場合は適正な実施許諾料を支払うことで解決を図ります。
(13)コンプライアンスに関するリスク
当社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする経営哲学「京セラフィロソフィ」をベースにコンプライアンスの徹底に努めています。しかしながら、このような徹底が十分になされず、法令違反や社会規範に反した行動が発生した場合、信用失墜による顧客からの取引停止、罰則金の支払、損害賠償請求等により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、コンプライアンス活動が社是や京セラフィロソフィの延長にある重要な活動であることを理解するとともに、各国の関連法令の遵守がステークホルダーの信頼にも繋がる極めて重要な活動であることを理解し、専門部署であるグローバルコンプライアンス推進部の設置や「京セラコンプライアンス憲章」の制定等、コンプライアンス活動に積極的に取り組んでいます。また、各法令の主管部門による管理、新規法令の施行時や法令改正時の社内連絡体制の構築、内部通報制度の導入、定期的な法令監査の実施、コンプライアンス月間の制定、コンプライアンス教育等により、法令を遵守し、社会規範に則った企業活動の徹底を図っています。さらに、グローバルにリスクを察知・共有することを目的に、主要なグループ会社の法務・コンプライアンス担当者が参加する「グローバル会議」を定期的に開催し、各社のコンプライアンス活動及び法的な課題・対策に関して議論を行っています。
<コンプライアンスにかかる不適切な対応について>
当社が製造・販売を行っているケミカル製品について、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(以下、UL)の認証に関する不適切な対応が判明しました。一部のケミカル製品の難燃性及び絶縁性について、ULが実施する認証試験にて実際の製品とは異なるサンプルを提出していた事実等が確認されました。本件についてULに報告を行い、ULにて確認の結果、5製品のケミカル製品のUL認証が、2021年3月17日付で取り消されました。
このUL認証に関する不適切な対応について、本件の実態把握と原因究明に向けて、外部の専門家を中心とした特別調査委員会による調査を実施し、2021年5月13日に調査報告書を受領しました。本調査報告書とともに、本件に対する当社の是正措置及び再発防止策を当社ホームページ(https://www.kyocera.co.jp/ir/news/pdf/210514J.pdf)にて公表しており、ULから認証を再取得する手続についても進めています。お客様への説明責任を果たし、これらの是正措置と再発防止策を着実に実行することにより、信頼回復に努めてまいります。また、本件については、特別調査委員会より、品質保証に関する倫理観とコンプライアンス意識の欠如が原因の一つと指摘されました。そのため、品質に関わる社内ルールの整備とその遵守体制の再検証を行い、品質に関するコンプライアンスの重要性の理解と実践の浸透を図るための社内教育を実施してまいります。
なお、本件について、顧客からの請求等、関連する費用が多額に発生した場合は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(14)環境に関連する費用負担や損害賠償責任が発生するリスク
当社は、温室効果ガス削減、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁の防止、有害物質の除去、廃棄物処理、製品リサイクル、従業員や地域住民の健康、安全及び財産保全、さらには当社の製品における使用物質の適切な表示等に関する国内外の様々な環境関連法令の適用を受けています。このような環境関連法令は、当社の現在の事業活動だけでなく、当社の過去の事業活動や、当社が買収等により他社から承継した事業の過去の活動に対しても適用される可能性があります。当社は、環境関連法令により当社に生じる義務に基づく債務について、その発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には引当金を計上します。仮に、当社の環境関連法令の義務違反等が判明した場合には、規制当局から浄化費用の支払いを命じられる可能性や損害賠償責任を負う可能性があります。また、当社が任意で環境問題に取り組む必要があると判断した場合にも、環境浄化費用の負担や補償金の支払いを行う可能性があります。これらの環境に関連する費用負担や損害賠償責任は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、事業活動にあたり、経営理念を基本とした環境安全に関する総合的な取り組みを推進するため、製品のライフサイクルを通した環境負荷の低減、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の抑制等、「京セラグループ環境安全方針」を制定し、環境関連法の遵守を徹底するとともに、規制の変更等への適切な把握、対応に努めています。
(15)世界的な気候変動に関するリスク
当社に適用される環境関連法令が、世界的な気候変動等により、将来さらに厳しくなる可能性や適用の範囲が拡大される可能性があります。対応の不足や遅れにより、想定外の急速な脱炭素社会への移行に対応できず、コストの増加や企業ブランドの低下を招くリスクがあります。
(主要な対応策)
当社は、気候変動に対し、代表取締役社長を委員長とする京セラグループCSR委員会にて、「2030年度温室効果ガス排出量2013年度比30%削減」とする目標を設定し、その目標は環境団体であるSBTイニシアチブよりSBT(Science Based Targets、科学的根拠に基づいた排出削減目標)の認定を受けました。また、再生可能エネルギー関連技術の実証試験を進め、エネルギーソリューション事業を推進し、再生可能エネルギーの普及を図るとともに、太陽光発電システムと蓄電池を統合運用することで、再生可能エネルギー比率を高め、エネルギーコストを抑制し、温室効果ガス排出量の削減に努めています。さらに、製造工程での省エネルギー化を進めることで、エネルギー使用量の削減に取り組んでいます。なお、当社はTCFDの提言への賛同を表明し、関連情報の積極的な開示に努めています。
災害等に関するリスク
(16)感染症の発生、テロ行為、または紛争等が当社の市場やサプライチェーンに混乱を与えるリスク
当社は、グローバルに事業を拡大していることに伴い、感染症の発生、テロ行為、または戦争・紛争等の事態に巻き込まれるリスクがあります。このような事態においては、開発・製造・販売・サービス等の事業活動の中断、混乱または延期等が生じる可能性があります。また、当社の市場やサプライチェーンに支障をきたす可能性もあります。このような状況が長期間続いた場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延(パンデミック)により、当社においても各国政府の方針や行動計画に基づき生産を縮小・停止したため、事業活動に大きな影響を受けました。今後も流行の長期化等、様々な要因による事業環境の変化が想定されます。当社は、新型コロナウイルス感染症への対策として、顧客、サプライヤー、従業員並びにご家族の健康維持を最優先に、感染予防・感染拡大の防止を基本に製品供給に努めています。具体的には、供給責任の高い製品の生産を優先し、不急の生産活動の縮小・停止や在宅勤務等を実施しています。また、子女が通う学校の臨時休校に伴い、通勤や在宅勤務が困難な社員へ特別休暇を付与する等の措置を講じています。当社は、従来取り組んできた製造部門でのAIやロボットの活用による自動化に加え、間接部門でのデジタル化の推進により、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、省人化や在宅勤務等に迅速に対応することができています。
(17)地震等の災害が発生するリスク
当社は、国内外において多くの開発・製造・事業関連施設を有しています。日本をはじめとするそれらの施設がある地域においては、地震や台風、津波、大雨、洪水、大雪等の不可避な自然災害、もしくは人為的ミスや設備故障等により、当社の施設に影響を与える大規模な災害等、事業への影響が考えられます。例えば、大規模な地震の発生により、当社の人員や開発・生産設備が壊滅的な損害を被り、操業の中断や製造・出荷の遅延を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った施設の復旧等に要する費用が多額に発生する可能性があります。さらに、社会資本や経済基盤に著しい被害が生じた場合には、交通網の混乱や電力の供給不足等が生じ、当社のサプライチェーンや生産活動に困難が生じる可能性があります。また、当社に原材料等を供給するサプライヤーが被害を被った場合には、原材料等の調達に困難が生じる可能性があり、当社の顧客が被害を受けた場合には、当社の製品の出荷が停滞する可能性があります。このような災害に伴う被害や、その結果生じる経済の停滞や消費の鈍化が、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社では、地震等の自然災害、人為的ミス、あるいは設備故障等による災害に対してBCPの体制を整備し、活動を継続しています。具体的には、重要資源である人員、設備、部材、情報について、被害を最小化するための事前対策に加え、万が一被災した場合の早期復旧計画や代替供給策を策定し、教育・訓練を実施することにより、事業中断を回避し、早期に事業再開ができるよう努めています。
財務会計に関するリスク
(18)当社の顧客の財政状態が悪化し、売掛債権が回収困難となるリスク
当社は、売掛債権について、顧客が期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。しかしながら、通常の営業取引において、当社の売掛債権は担保物件や信用保証により保全されていません。従って、経済環境の悪化等に伴い、顧客に対する多額の売掛債権の回収が困難となった場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、与信管理規程に基づき、取引先ごとに回収条件・与信限度額を設定し、定期的に与信の見直しを行っています。また、回収期限を日次で管理しており、回収遅延や信用不安が発生した場合は、個別に債権回収、条件変更、担保・保証の入手等の債権保全策を講じ、貸倒リスクの回避に努めています。
(19)当社が保有する投資有価証券及びその他の投資に関するリスク
当社は、取引関係の維持・向上等を目的として、当社の関係会社以外の資本性証券に投資しています。その主たる投資は日本の通信サービス・プロバイダ-であるKDDI㈱の株式への投資です。2021年3月31日現在、当社はKDDI㈱の発行済株式の14.54%を保有しています。KDDI㈱の株式への投資は当社の総資産の約30%を占めており、KDDI㈱の株式の市場価格の変動は、当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、KDDI㈱の株式について、経済合理性及び将来の事業機会における重要な事業パートナーとして保有を継続しています。当該株式を含むすべての資本性金融商品の一部である政策保有株式については、その保有意義について定期的に経済合理性の確認を行い、保有意義がないと判断したものについては、原則、売却を実施しています。また、保有株式の株価変動が当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知するため、定期的に株価のモニタリングを行っています。
(20)有形固定資産、のれん並びに無形資産の減損処理に関するリスク
当社は、多くの有形固定資産、のれん並びに無形資産を保有しています。有形固定資産及び償却性無形資産については、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で減損の判定を行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行っています。これらの資産が減損していると判断された場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、「(8)買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク」に記載のとおり、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について社外専門家のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。また、取得後においては、PMIを進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。
(21)繰延税金資産及び法人所得税の不確実性に関するリスク
当社は、繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく変動する可能性があります。また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。
なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と将来の税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。
(主要な対応策)
当社は、子会社が立案する年間事業計画について、達成度を適時確認することにより、都度適切な施策を実行することで、繰延税金資産の回収可能性に変更が生じないように努めています。また、当社は、各国における税制変更及び税務調査に対し、社外専門家を利用し、リスクの最小化に努めています。
(22)会計基準の変更が財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスク
新会計基準もしくは会計基準の変更は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、会計基準の変更に対応するために、会計ソフトウェアもしくは情報システムを変更した場合には、一定の投資もしくは費用が必要となります。
(主要な対応策)
当社は、IFRSを連結財務諸表等に適用しているため、IFRSに適切に対応するための部門を設置するとともに、国際会計基準審議会が公表する基準書や解釈指針等を随時入手し、新会計基準に対応できる体制を整えています。会計基準の変更時には、財政状態及び経営成績に及ぼす影響を把握した上で、適切に開示します。さらに、会計基準の変更に際して、有効な財務報告に係る内部統制を構築するために一定の投資額は必要となりますが、変更内容を適切に把握した上で投資の要否を決定します。
(1)業績等の概要
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大による景気悪化の影響を受け、前連結会計年度に比べ減収減益となりました。
部品事業の売上高は、自動車関連市場の低迷の影響を第1四半期連結累計期間(2020年4月1日から2020年6月30日まで)に大きく受けたものの、M&Aの貢献及び半導体や5G関連市場における需要増により微増となりました。一方、機器・システム事業の売上高は総じて減少しました。
利益は、減収に加え、積極的な設備投資を継続したことによる減価償却費の増加や、スマートエナジー事業における一時損失の計上もあり、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれも減益となりました。
(注)2020年4月1日付で、ソーラーエネルギー事業の名称をスマートエナジー事業へ変更しました。
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(百万円) |
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前連結会計年度 (自 2019年 4月 1日 至 2020年 3月31日) |
当連結会計年度 (自 2020年 4月 1日 至 2021年 3月31日) |
増 減 |
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金 額 |
売上高比 (%) |
金 額 |
売上高比 (%) |
増減金額 |
増減率 (%) |
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売上高 |
1,599,053 |
100.0 |
1,526,897 |
100.0 |
△72,156 |
△4.5 |
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営業利益 |
100,193 |
6.3 |
70,644 |
4.6 |
△29,549 |
△29.5 |
|
税引前利益 |
148,826 |
9.3 |
117,559 |
7.7 |
△31,267 |
△21.0 |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
107,721 |
6.7 |
90,214 |
5.9 |
△17,507 |
△16.3 |
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米ドル平均為替レート (円) |
109 |
- |
106 |
- |
- |
- |
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ユーロ平均為替レート (円) |
121 |
- |
124 |
- |
- |
- |
(2)財政状態及び経営成績の状況
a.売上高
当連結会計年度の売上高は1,526,897百万円となり、前連結会計年度の1,599,053百万円と比較し、72,156百万円(4.5%)減少しました。
部品事業における当連結会計年度の売上高は927,809百万円となり、前連結会計年度の912,434百万円と比較し、15,375百万円(1.7%)増加しました。自動車関連市場の低迷の影響を第1四半期連結累計期間に大きく受けたものの、M&Aの貢献及び半導体や5G関連市場における需要増加により、前連結会計年度に比べ微増となりました。一方、機器・システム事業における当連結会計年度の売上高は612,863百万円となり、前連結会計年度の704,480百万円と比較し、91,617百万円(13.0%)減少しました。ドキュメントソリューション及びコミュニケーションの売上減少等により、減収となりました。なお、ドル安円高の影響を主因として、当連結会計年度の邦貨換算後の売上高は、前連結会計年度に比べ約90億円押し下げられました。
b.売上原価及び売上総利益
当連結会計年度の売上原価は1,119,950百万円となり、前連結会計年度の1,157,879百万円と比較し、37,929百万円(3.3%)減少しました。
売上原価の主な内訳は、原材料費が前連結会計年度の420,158百万円から27,128百万円(6.5%)減少の393,030百万円で全体の35.1%を占め、人件費が前連結会計年度の247,480百万円から5,504百万円(2.2%)減少の241,976百万円で全体の21.6%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の54,570百万円から10,559百万円(19.3%)増加の65,129百万円で全体の5.8%を占めています。
この結果、当連結会計年度の売上総利益は406,947百万円となり、前連結会計年度の441,174百万円と比較し、34,227百万円(7.8%)減少し、売上高に対する売上総利益率は、27.6%から26.7%へ0.9ポイント低下しました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は336,303百万円となり、前連結会計年度の340,981百万円と比較し、4,678百万円(1.4%)減少しました。これは主に、当連結会計年度において、スマートエナジー事業の減損損失11,518百万円を計上した一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により旅費及び渡航費が減少したことに加え、前連結会計年度において計上したAVX Corporationにおける訴訟関連費用及び同社の完全子会社化のために支出した専門家報酬費用の影響がなくなったことによるものです。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費の主な内訳は、人件費が前連結会計年度の196,667百万円から11,753百万円(6.0%)減少の184,914百万円で全体の55.0%を占め、続いて販売費及び広告宣伝費が、前連結会計年度の42,989百万円から3,920百万円(9.1%)減少の39,069百万円で全体の11.6%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の29,438百万円から4,405百万円(15.0%)増加の33,843百万円で全体の10.1%を占めています。
この結果、当連結会計年度の営業利益は70,644百万円となり、前連結会計年度の100,193百万円と比較し、29,549百万円(29.5%)減少しました。売上高に対する比率は前連結会計年度の6.3%から1.7ポイント低下し、4.6%となりました。
d.金融収益
当連結会計年度の金融収益は45,650百万円となり、前連結会計年度の48,154百万円と比較し、2,504百万円(5.2%)減少しました。これは主に、受取利息が減少したことによるものです。
e.金融費用
当連結会計年度の金融費用は2,194百万円となり、前連結会計年度の1,553百万円と比較し、641百万円(41.3%)増加しました。
f.為替換算差損益
当連結会計年度の平均為替レートは、対米ドルは3円(2.8%)円高の106円、対ユーロは3円(2.5%)円安の124円となりました。また、当連結会計年度末の為替レートは、対米ドルは前連結会計年度末に比べ2円(1.8%)円安の111円、対ユーロは10円(8.3%)円安の130円となりました。なお、当連結会計年度の為替換算差損益は375百万円の利益となりました。
当社では、外貨建の債権債務に係る為替変動リスクの低減を図るために、主に先物為替予約を利用しています。当社は、先物為替予約については、外国為替レートの変動をヘッジする目的に限定して利用しており、トレーディング目的のための先物為替予約は行っていません。
g.持分法による投資損益
当連結会計年度の持分法による投資損益は261百万円の利益となり、前連結会計年度の124百万円の利益と比較し、137百万円(110.5%)増加しました。
h.税引前利益
当連結会計年度の税引前利益は117,559百万円となり、前連結会計年度の148,826百万円と比較し、31,267百万円(21.0%)減少しました。売上高に対する税引前利益の比率は前連結会計年度の9.3%から1.6ポイント低下し、7.7%となりました。
部品事業における当連結会計年度の事業利益は71,670百万円となり、前連結会計年度の78,068百万円と比較し、6,398百万円(8.2%)減少しました。減価償却費の増加による影響等により減益となりました。機器・システム事業における当連結会計年度の事業利益は19,404百万円となり、前連結会計年度の34,783百万円と比較し、15,379百万円(44.2%)減少しました。減収の影響に加え、スマートエナジー事業における減損損失11,518百万円の計上により、減益となりました。
i.法人所得税費用
当連結会計年度の法人所得税費用は24,209百万円(実効税率20.6%)となり、前連結会計年度の36,980百万円(実効税率24.8%)と比較し、12,771百万円(34.5%)減少しました。これは主に、税引前利益が減少したことに加え、当連結会計年度に一部の子会社に対する投資に係る一時差異について繰延税金資産を認識したことによるものです。
j.非支配持分に帰属する当期利益
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は3,136百万円となり、前連結会計年度の4,125百万円と比較し、989百万円(24.0%)減少しました。
k.レポーティングセグメント別営業概況
産業・自動車用部品
当連結会計年度の売上高は359,044百万円となり、前連結会計年度の341,093百万円と比較し17,951百万円(5.3%)増加しました。自動車関連市場向けディスプレイの売上は減少したものの、M&Aにより機械工具等の売上が増加したことに加え、半導体製造装置用ファインセラミック部品等の売上が増加しました。なお、前連結会計年度に比べ、M&Aにより約190億円の増収効果がありました。
事業利益は18,142百万円となり、前連結会計年度の15,813百万円に比べ2,329百万円(14.7%)増加し、事業利益率は5.1%となりました。半導体製造装置用ファインセラミック部品等の生産能力増強を目的とした設備投資を継続したことや、機械工具等のM&Aにより減価償却費及び償却費が5,106百万円増加したものの、増収及び原価低減により、増益となりました。
半導体関連部品
当連結会計年度の売上高は263,595百万円となり、前連結会計年度の247,228百万円と比較し16,367百万円(6.6%)増加しました。5G対応スマートフォン向けにセラミックパッケージの需要が増加したこと等により増収となりました。
一方、事業利益は28,260百万円となり、前連結会計年度の30,511百万円に比べ2,251百万円(7.4%)減少し、事業利益率は10.7%となりました。セラミックパッケージ及び有機パッケージの中期的な需要増を見据えて実施した設備投資等の増加に伴い、減価償却費及び償却費が前連結会計年度に比べ3,564百万円増加したことを主因に、減益となりました。
電子デバイス
当連結会計年度の売上高は305,170百万円となり、前連結会計年度の324,113百万円と比較し18,943百万円(5.8%)減少しました。産業市場向けを中心にAVX Corporationやプリンティングデバイスの売上が減少したことに加え、約40億円の円高による押し下げ要因もあり、減収となりました。
事業利益は25,268百万円となり、前連結会計年度の31,744百万円に比べ6,476百万円(20.4%)減少し、事業利益率は8.3%となりました。原価低減に努めたものの、減収の影響に加え、事業拡大に向けた設備投資等の増加により減価償却費及び償却費が3,068百万円増加したことや、研究開発費が2,735百万円増加したことにより、減益となりました。なお、約10億円の円高による押し下げ要因もありました。
コミュニケーション
当連結会計年度の売上高は232,739百万円となり、前連結会計年度の270,818百万円と比較し38,079百万円(14.1%)減少しました。携帯電話端末の販売台数が減少したことに加え、情報通信サービス事業におけるエンジニアリング事業の売上減もあり、減収となりました。
一方、事業利益は14,597百万円となり、前連結会計年度の11,259百万円に比べ3,338百万円(29.6%)増加し、事業利益率は6.3%へ上昇しました。減収の影響はあったものの、携帯電話事業及び情報通信サービス事業ともに、原価低減等により収益性が改善したことから、増益となりました。
ドキュメントソリューション
当連結会計年度の売上高は316,226百万円となり、前連結会計年度の359,915百万円と比較し43,689百万円(12.1%)減少しました。当第1四半期連結累計期間を底に需要の回復は見られたものの、プリンター及び複合機の販売台数が前連結会計年度に比べ約15%減少したことから減収となりました。なお、前連結会計年度に比べ、M&Aにより約80億円の増収効果がありました。
事業利益は28,759百万円となり、前連結会計年度の34,489百万円に比べ5,730百万円(16.6%)減少し、事業利益率は9.1%となりました。前連結会計年度に比べ研究開発費は3,449百万円減少したものの、減収の影響を主因に、減益となりました。
生活・環境
当連結会計年度の売上高は63,898百万円となり、前連結会計年度の73,747百万円と比較し9,849百万円(13.4%)減少しました。主にスマートエナジー事業における太陽光発電システム等の販売減により、減収となりました。
事業損失は、減収の影響に加え、スマートエナジー事業において有形固定資産及びのれん等の減損損失11,518百万円を計上したことにより、前連結会計年度の10,965百万円に比べ12,987百万円増加し、23,952百万円となりました。
|
レポーティングセグメント別売上高 (百万円) |
|||||||
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増 減 |
||||
|
金 額 |
構成比 (%) |
金 額 |
構成比 (%) |
増減金額 |
増減率 (%) |
||
|
|
産業・自動車用部品 |
341,093 |
21.3 |
359,044 |
23.5 |
17,951 |
5.3 |
|
|
半導体関連部品 |
247,228 |
15.5 |
263,595 |
17.3 |
16,367 |
6.6 |
|
|
電子デバイス |
324,113 |
20.3 |
305,170 |
20.0 |
△18,943 |
△5.8 |
|
部品事業計 |
912,434 |
57.1 |
927,809 |
60.8 |
15,375 |
1.7 |
|
|
|
コミュニケーション |
270,818 |
17.0 |
232,739 |
15.2 |
△38,079 |
△14.1 |
|
|
ドキュメントソリューション |
359,915 |
22.5 |
316,226 |
20.7 |
△43,689 |
△12.1 |
|
|
生活・環境 |
73,747 |
4.6 |
63,898 |
4.2 |
△9,849 |
△13.4 |
|
機器・システム事業計 |
704,480 |
44.1 |
612,863 |
40.1 |
△91,617 |
△13.0 |
|
|
その他 |
16,737 |
1.0 |
18,169 |
1.2 |
1,432 |
8.6 |
|
|
調整及び消去 |
△34,598 |
△2.2 |
△31,944 |
△2.1 |
2,654 |
- |
|
|
売上高 |
1,599,053 |
100.0 |
1,526,897 |
100.0 |
△72,156 |
△4.5 |
|
|
レポーティングセグメント別税引前利益(△損失) (百万円) |
|||||||
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増 減 |
||||
|
金 額 |
売上高比 (%) |
金 額 |
売上高比 (%) |
増減金額 |
増減率 (%) |
||
|
|
産業・自動車用部品 |
15,813 |
4.6 |
18,142 |
5.1 |
2,329 |
14.7 |
|
|
半導体関連部品 |
30,511 |
12.3 |
28,260 |
10.7 |
△2,251 |
△7.4 |
|
|
電子デバイス |
31,744 |
9.8 |
25,268 |
8.3 |
△6,476 |
△20.4 |
|
部品事業計 |
78,068 |
8.6 |
71,670 |
7.7 |
△6,398 |
△8.2 |
|
|
|
コミュニケーション |
11,259 |
4.2 |
14,597 |
6.3 |
3,338 |
29.6 |
|
|
ドキュメントソリューション |
34,489 |
9.6 |
28,759 |
9.1 |
△5,730 |
△16.6 |
|
|
生活・環境 |
△10,965 |
- |
△23,952 |
- |
△12,987 |
- |
|
機器・システム事業計 |
34,783 |
4.9 |
19,404 |
3.2 |
△15,379 |
△44.2 |
|
|
その他 |
△4,484 |
- |
△3,102 |
- |
1,382 |
- |
|
|
事業利益計 |
108,367 |
6.8 |
87,972 |
5.8 |
△20,395 |
△18.8 |
|
|
本社部門損益及び 持分法による投資損益 |
41,977 |
- |
31,703 |
- |
△10,274 |
△24.5 |
|
|
調整及び消去 |
△1,518 |
- |
△2,116 |
- |
△598 |
- |
|
|
税引前利益 |
148,826 |
9.3 |
117,559 |
7.7 |
△31,267 |
△21.0 |
|
(注)2020年4月1日に、「コミュニケーション」に含まれる当社国内子会社 京セラコミュニケーションシステム㈱が、
「生活・環境」に含まれていた同 ㈱京セラソーラーコーポレーションを吸収合併しました。これに伴い、上記の
「前連結会計年度」の業績は、吸収合併後のレポーティングセグメントに組み替えて表示しています。
l.本社部門損益及び持分法による投資損益
本社部門損益は、金融資産に係る収益や、各セグメントに対して本社部門から提供される経営管理サービスに伴う収入等から構成されます。
当連結会計年度は31,703百万円の収益となり、前連結会計年度の41,977百万円の収益と比較し、10,274百万円(24.5%)減少しました。AIやIoTの活用により生産性向上を図るデジタルトランスフォーメーションの推進に係る費用が増加したことにより減益となりました。
m.生産、受注及び販売の実績
|
レポーティングセグメント別受注高 (百万円) |
||||||
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減率 (%) |
|||
|
金 額 |
構成比 (%) |
金 額 |
構成比 (%) |
|||
|
|
産業・自動車用部品 |
339,495 |
21.9 |
360,216 |
23.5 |
6.1 |
|
|
半導体関連部品 |
243,726 |
15.8 |
266,775 |
17.4 |
9.5 |
|
|
電子デバイス |
319,577 |
20.7 |
304,369 |
19.8 |
△4.8 |
|
部品事業計 |
902,798 |
58.4 |
931,360 |
60.7 |
3.2 |
|
|
|
コミュニケーション |
237,614 |
15.4 |
245,989 |
16.0 |
3.5 |
|
|
ドキュメントソリューション |
359,354 |
23.2 |
318,009 |
20.7 |
△11.5 |
|
|
生活・環境 |
70,923 |
4.6 |
61,662 |
4.0 |
△13.1 |
|
機器・システム事業計 |
667,891 |
43.2 |
625,660 |
40.7 |
△6.3 |
|
|
その他 |
10,744 |
0.7 |
11,269 |
0.7 |
4.9 |
|
|
調整及び消去 |
△34,510 |
△2.3 |
△32,966 |
△2.1 |
- |
|
|
受注高 |
1,546,923 |
100.0 |
1,535,323 |
100.0 |
△0.7 |
|
(注)1 当社は、需要の増加や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績は販売実績に類似しています。このため、生産及び販売の実績は「k.レポーティングセグメント別営業概況」に関連付けて示しています。
2 2020年4月1日に、「コミュニケーション」に含まれる当社国内子会社 京セラコミュニケーションシステム㈱が、「生活・環境」に含まれていた同 ㈱京セラソーラーコーポレーションを吸収合併しました。これに伴い、上記の「前連結会計年度」の実績は、吸収合併後のレポーティングセグメントに組み替えて表示しています。
(3)流動性及び資金の源泉
a.資金の源泉
<当連結会計年度末の資金の状況>
当社の主な資金の源泉は、営業活動によって獲得した現金です。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは220,821百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を386,727百万円保有し、定期預金等の換金性の高い金融資産も79,852百万円保有しています。
そのうち、海外の連結子会社の保有する現金及び現金同等物と換金性の高い金融資産の合計額は、当連結会計年度末において246,750百万円になりますが、当社での使用を目的として、これらを当社へ還流することは現時点において想定していません。
また、当連結会計年度末の運転資本(流動資産から流動負債を控除した金額)は、776,911百万円であり、自己資本比率(親会社の所有者に帰属する持分比率)は74.2%と引き続き強固な財務体質を保っています。
このように強固な財務体質を維持していることから、借入による資金を比較的低いコストで調達することが可能です。当連結会計年度末の短期借入金、1年内返済予定長期借入金、並びに長期借入金の残高は97,908百万円であり、総資産に対し2.8%と引き続き低い依存度となっています。
なお、当社の借入は、主として円建であり、一部の海外子会社にて米ドル建やユーロ建等の借入を行っています。
<当連結会計年度の資金需要>
当社の当連結会計年度における主な資金需要は、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金、M&Aのための資金、並びに、配当の支払等となりました。
当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の106,003百万円と比較し、11,103百万円(10.5%)増加し、117,106百万円となりました。産業・自動車用部品及び本社部門での投資は減少したものの、半導体関連部品及び電子デバイスにおいて投資が増加したことを主因として、設備投資額は前連結会計年度に比べ増加しました。研究開発費は、前連結会計年度の79,241百万円と比較し3,784百万円(4.8%)減少し、75,457百万円となりました。
また、当社は、主に既存事業の拡大及び新規事業の創出を目的としたM&Aを実施しており、その対価の総額は取得現金控除後で59,877百万円となりました。
当社は、当連結会計年度において、1株当たり140円、総額50,741百万円の配当金の支払いを行いました。
当社は、当連結会計年度において、これらの設備投資、研究開発並びにM&Aのための資金や、配当金の支払等の原資について、主に自己資金で賄いました。
<翌連結会計年度の資金需要>
当社は、翌連結会計年度における主な資金需要として、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当金の支払等を見込んでいます。
翌連結会計年度においては、170,000百万円の設備投資と90,000百万円の研究開発費を予定しています。設備投資額は、5Gや半導体、ADAS向け部品を中心として、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。また、研究開発費についても、事業拡大に向けて、新技術・新製品開発の強化を継続する考えであり、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。これらの売上高に対する割合については、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。なお、設備の発注契約を含め、当社の契約債務の詳細については、後述の「d.契約債務」を参照下さい。
また、配当は、2021年6月25日に開催された当社の定時株主総会において承認されており、1株当たり80円、総額28,995百万円の期末配当を実施します。
当社は、営業活動上の運転資金に加えて、これらの設備投資、研究開発並びに配当等に係る資金需要については、自己資金の範囲で対応できると考えており、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。
また、仮に一時的に多額の資金需要が生じた場合には、金融機関からの追加の借入や、社債、株式の発行といった他の資金調達手段を有しています。ただし、現時点では格付機関による信用格付に影響を与えるような外部からの資金調達を行う予定はありません。
なお、当社の主要市場での需要動向が悪化した場合や、製品価格が当社の予想を大きく超えて下落した場合などにおいては、当社の財政状態や経営成績にも影響が及び、結果として当社の流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。
|
b.キャッシュ・フローの状況 |
(百万円) |
|
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減金額 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
214,630 |
220,821 |
6,191 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△145,551 |
△183,792 |
△38,241 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△157,126 |
△80,968 |
76,158 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
△5,147 |
11,046 |
16,193 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△93,194 |
△32,893 |
60,301 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
512,814 |
419,620 |
△93,194 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
419,620 |
386,727 |
△32,893 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・インは、前連結会計年度の214,630百万円に比べ6,191百万円(2.9%)増加し、220,821百万円となりました。これは、減価償却費及び減損損失の増加が当期利益の減少を上回ったことが主な要因です。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の145,551百万円に比べ38,241百万円(26.3%)増加し、183,792百万円となりました。これは、M&Aによる支出が減少した一方で、設備投資や有価証券の購入が増加したことに加えて、不動産売却収入や定期預金の解約が減少したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の157,126百万円に比べ76,158百万円(48.5%)減少し、80,968百万円となりました。これは、借入金の調達が減少したものの、前連結会計年度に実施したAVX Corporationの完全子会社化を目的とする非支配持分の買取がなくなったことが主な要因です。
なお、前連結会計年度末に比べ当連結会計年度末は欧米通貨に対し円安となったことを主因として、当連結会計年度において現金及び現金同等物は換算により11,046百万円増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の419,620百万円から32,893百万円(7.8%)減少し、386,727百万円となりました。当社の現金及び現金同等物の大部分は円建ですが、海外の連結子会社では主として、米ドルを含む外貨建の現金及び現金同等物を保有しています。
c.資産、負債及び資本
当連結会計年度末における当社の資産合計は、前連結会計年度末の3,250,175百万円から243,295百万円(7.5%)増加し、3,493,470百万円となりました。
現金及び現金同等物は、事業利益の獲得及び営業債権の回収による収入を上回る、設備投資、M&A及び配当金支払に伴う支出があったことを主因として、前連結会計年度末から32,893百万円(7.8%)減少し、386,727百万円となりました。
短期投資は、資本性証券及び負債性証券からの振替を主因として、前連結会計年度末から16,853百万円(26.8%)増加し、79,852百万円となりました。
営業債権及びその他の債権は、前連結会計年度末から3,327百万円(1.0%)増加し、339,621百万円となりました。棚卸資産は、前連結会計年度末から1,050百万円(0.3%)増加し、345,354百万円となりました。ともに年度末の売上が堅調に推移したことを主因として、微増となりました。
資本性証券及び負債性証券は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加等により、前連結会計年度末に比べて67,819百万円(5.7%)増加し、1,264,453百万円となりました。
有形固定資産は、前連結会計年度末から55,838百万円(14.6%)増加し、439,109百万円となりました。なお、当連結会計年度の設備投資額は117,106百万円、減価償却費は73,811百万円でした。
のれんは、M&Aを主因として、前連結会計年度末に比べて44,325百万円(20.9%)増加し、256,532百万円となりました。
無形資産は、M&Aを主因として、前連結会計年度末に比べて32,762百万円(27.6%)増加し、151,295百万円となりました。
その他の非流動資産は、退職給付に係る資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べて30,111百万円
(178.5%)増加し、46,978百万円となりました。
当連結会計年度末における当社の負債合計は、前連結会計年度末の795,933百万円から81,427百万円(10.2%)増加し、877,360百万円となりました。
営業債務及びその他の債務は、受注回復に伴う仕入増加を主因として、前連結会計年度末に比べて9,845百万円(5.7%)増加し、183,145百万円となりました。
非流動負債における借入金は、金融機関からの借入を主因として、前連結会計年度末に比べて12,918百万円(28.7%)増加し、57,888百万円となりました。
繰延税金負債は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加、及び、M&Aによる無形資産の増加を主因として、前連結会計年度末から38,634百万円(14.2%)増加し、309,951百万円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の2,454,242百万円から161,868百万円(6.6%)増加し、2,616,110百万円となりました。
利益剰余金は、親会社の所有者に帰属する当期利益90,214百万円及び支払配当金50,741百万円を計上したことに加え、年金資産の時価評価損益等24,114百万円を計上したことにより、前連結会計年度末の1,686,672百万円から63,587百万円(3.8%)増加し、1,750,259百万円となりました。
その他の資本の構成要素は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇を主因として、前連結会計年度末に比べて96,456百万円(16.8%)増加し、671,951百万円となりました。
当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分比率は、前連結会計年度末の74.8%から0.6ポイント減少し、74.2%となりました。
d.契約債務
当社の予定決済日ごとの契約債務は次のとおりです。当社はこれらの契約債務については自己資金で履行可能であると考えています。
|
(百万円) |
|||||
|
|
2022年3月期 |
2023年3月期- 2024年3月期 |
2025年3月期- 2026年3月期 |
2027年3月期 以降 |
合 計 |
|
短期借入金 |
30,135 |
- |
- |
- |
30,135 |
|
支払利息(短期借入金)(注) |
4 |
- |
- |
- |
4 |
|
長期借入金 (1年以内返済予定分を含む) |
9,885 |
52,848 |
4,640 |
400 |
67,773 |
|
支払利息(長期借入金) (1年以内返済予定分を含む) (注) |
1,067 |
1,034 |
213 |
60 |
2,374 |
|
リース負債 |
16,326 |
16,158 |
7,350 |
12,838 |
52,672 |
|
設備の発注契約 |
49,462 |
13,497 |
14,308 |
1,664 |
78,931 |
|
合 計 |
106,879 |
83,537 |
26,511 |
14,962 |
231,889 |
(注)変動金利による借入金の支払利息については、当連結会計年度末の実質利率を使用して、将来見込まれる支払利息を算出しています。
当社は翌連結会計年度において、確定給付制度に対し、10,658百万円を拠出する予定です。また、当社は、当連結会計年度末において、不確実な税務ポジションとして負債を730百万円計上していますが、将来の解決時期を合理的に見積ることができないため、上記の表には含めていません。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。これらの連結財務諸表を作成する際には、見積り、判断及び仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断及び仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社の連結財務諸表における見積りは次の場合において会計上非常に重要な見積りとなります。すなわち、当社が見積りを行った時点ではその対象となった事象が非常に不確実な状況にも関わらず見積りを行う必要があった場合、また、当該期間において当社が実際に採用したものとは異なるが当社が採用することができた見積りがある、もしくは複数の会計年度にわたって変更が発生すると予想される見積りがあり、その見積りが当社の財政状態及び経営成績の開示に重要な影響を及ぼす場合です。当社は会計情報の開示を行う上で、下記の項目を重要な会計上の見積りとして認識しています。各項目の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」を参照ください。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響については、景気への影響が懸念されるものの、各国における様々な感染防止及び経済対策により、世界経済は当連結会計年度に比べ回復に向かうものと仮定して会計上の見積りを行っています。
a.企業結合において識別した無形資産の公正価値
企業結合において取得した識別可能資産、並びに引き受けた負債及び偶発債務は、取得日の公正価値で測定し、企業結合で移転された対価、被取得企業の非支配持分の金額及び当社が以前に保有していた被取得企業の資本持分の公正価値の合計が、取得した識別可能な資本持分の公正価値を超過する場合にはその超過額をのれんとして認識します。
特に、企業結合時の取得対価の配分において識別する無形資産(顧客との関係や非特許技術等)の公正価値の見積りは、将来のキャッシュ・フロー予測、割引率、既存顧客の逓減率、市場成長率等の仮定に基づき測定しています。この主要な仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しますが、将来の不確実な経済条件の変動により影響を受ける場合があり、仮定の見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
b.棚卸資産の評価
当社は、棚卸資産が適正な価値で評価されるように評価損の金額を見積っています。過剰、滞留、並びに陳腐化した棚卸資産に対して評価損を計上しています。また、棚卸資産は正味実現可能価額まで評価損を行っています。当社は通常、一定の保有期間を超える棚卸資産を滞留もしくは陳腐化していると見なします。また、当社では、将来の需要予測や市況そして関与する経営者の判断のもとに、一定の保有期間に満たない棚卸資産についても評価損を計上することがあります。よって、今後も市場の状況や製品の需要が当社の想定を下回れば、棚卸資産の評価損を計上しなければならない可能性があります。
c.有形固定資産及び無形資産の耐用年数
有形固定資産は、事業ごとの実態に応じた見積利用可能年数または見積投資回収期間に基づき、主として定額法で償却しています。償却性無形資産は、資産の将来の経済的便益が消費されると予測される期間に基づき、主として定額法で償却しています。
将来、技術革新等による設備の陳腐化や用途変更並びに事業環境の変化等による利用可能期間の見直しの結果、耐用年数を変更する場合には、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
d.有形固定資産、のれん及び無形資産の減損
当社は有形固定資産及び償却性無形資産について、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で、減損テストを行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損テストを行っています。減損損失は、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に認識しています。
資産または資金生成単位の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値は、マネジメントが承認した事業計画を基礎としたキャッシュ・フローの見積額を、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率により現在価値に割り引いて算定しています。
よって、使用価値は、様々な仮定に基づき算定されているため、使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業環境の変化等が生じた場合には、減損損失が発生するリスクがあります。
e.償却原価で測定する金融資産の減損
当社は主に営業債権等の償却原価で測定される金融資産について、回収可能性や信用リスクの著しい増加等を考慮のうえ、将来の予想信用損失を測定していますが、実際の損失が予想信用損失より過大または過少になる可能性があります。
f.金融商品の公正価値
当社は特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
g.法人所得税費用
当社は繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上、実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度末において繰延税金資産を121,042百万円認識しています。当社は、当連結会計年度の税引前利益及び法人所得税費用と比較し、当該繰延税金資産が将来において合理的に実現するものと考えます。
また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。
当社は、当連結会計年度末において不確実な税務ポジションを総額で730百万円計上しています。当社は、法人所得税の不確実性に関する最終的な解決が将来の連結損益計算書へ重要な影響を及ぼすことはないと考えています。
h.確定給付制度
確定給付制度において確定給付負債または資産の純額は、確定給付制度債務の現在価値から、制度資産の公正価値を控除して算定されます。
確定給付制度債務の現在価値は数理計算上の仮定に基づき算定されます。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率などの基礎率についての見積り及び判断が求められます。
当社は優良社債の利回り等を参考に割引率を決定します。昇給率は主に過去の実績、近い将来の見通し、物価変動などにより決定されます。当社は毎年、数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じてその時点の市場環境をもとに調整を行っています。
日本及び世界的な経済の停滞により、当社が割引率を引き下げる場合には、確定給付制度債務及び関連する勤務費用等が増加します。
i.引当金及び偶発債務
当社は通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社は、法律専門家と相談の上で、こうした偶発債務が重要な結果を引き起こす可能性を予測しています。当社は、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際、当社は受けている訴訟の進捗、及び他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は、見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。
j.収益認識
当社は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」)に従い、IFRS第9号「金融商品」に基づく利息及び配当金等、及び、IFRS第16号「リース」に基づくリース契約等を除く顧客との契約について、次のステップを適用することにより、収益を認識しています。
ステップ1:顧客との契約を識別する。
ステップ2:契約における履行義務を識別する。
ステップ3:取引価格を算定する。
ステップ4:取引価格を契約における履行義務に配分する。
ステップ5:履行義務の充足時に(または充足するにつれて)収益を認識する。
当社は、情報通信、自動車関連、環境・エネルギー並びに医療・ヘルスケア等の市場における販売を主な収益源としています。当社におけるレポーティングセグメントは、「産業・自動車用部品」、「半導体関連部品」、「電子デバイス」、「コミュニケーション」、「ドキュメントソリューション」、「生活・環境」で構成されています。
これらのレポーティングセグメントにおいて、顧客への販売は、顧客と締結した取引基本契約書及び注文書に記載された条件に基づいて行われます。当該契約書及び注文書には、価格、数量並びに所有権の移転時点が記載されています。
(a) 製品の販売
製品の販売については、主に製品が顧客へ引き渡された時点または船積日で顧客が当該製品に対する支配を獲得することから、履行義務が充足されると判断し、収益を認識しています。
なお、「ドキュメントソリューション」及び「生活・環境」における、最終消費者向けの設置を伴うプリンター、複合機や太陽光発電システムの販売については、契約上の義務がない限り、製品が設置され、顧客が受入れた時点において履行義務が充足されると判断し、収益を認識しています。
(b) サービスの提供
「ドキュメントソリューション」においては、プリンターや複合機の使用量に応じた従量料金、固定料金を支払う製品の保守契約による収益を認識しています。当社は、契約の履行義務を、契約に基づき、機器を常時利用可能な状態を顧客に提供することと判断しており、これらの収益を、関連する履行義務を充足するにつれて一定期間に渡り認識しています。固定料金の保守契約については顧客との契約に係る取引額を契約期間にわたり均等に収益認識しています。
すべてのセグメントにおいて、当社は製品に欠陥があった場合のみ返品を受入れます。また、当社の販売条件には、「電子デバイス」における販売プログラムを除いて、価格保証、ストック・ローテーションまたは返品規定はありません。
(c) 販売奨励金
「電子デバイス」において、各種電子部品を販売する代理店への販売については、以下の様々な販促活動が定められており、顧客との契約において約束された対価から販売奨励金を控除した金額で収益を測定しています。
ⅰ.ストック・ローテーション・プログラム
ストック・ローテーション・プログラムとは、品質に問題のない在庫について、直近6ヵ月の売上高に対して特定の比率を乗じ算出される金額分を、代理店が半年毎に返品することが可能な制度です。売上高に対するストック・ローテーション・プログラムの引当金は、現時点までの推移、現在の価格と流通量の情報、市場の特定の情報や売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて算出した代理店の売上高に対する比率に基づき、収益認識時点で算定し、計上されており、これらの手続きには、重要な判断を必要とします。当社は、ストック・ローテーション・プログラムによる将来の返品について妥当な算定ができていると考えており、これまでの実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。なお、製品が返品され、検収された時点で、代理店に対する売掛金を減額しています。
ⅱ.シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム
シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム(以下、シップ・アンド・デビット)は、代理店が顧客への販売活動における市場での価格競争に対して代理店を補助する仕組みです。シップ・アンド・デビットが適用されるためには、代理店が在庫から顧客へ販売する特定部分についての価格調整を、代理店が要求する必要があります。シップ・アンド・デビットは、現在及び将来の代理販売において、代理店が顧客へ販売する特定部分について適用されることがあります。IFRS第15号に準拠し、当社は代理店に対して収益を認識した時点で、その代理店への売上高にシップ・アンド・デビットが適用される可能性を考慮して、その売上高に関連する代理店の将来の活動に対して変動対価を見積り、計上しています。当社は、当該期間における売上高、代理店に対する売掛金の残額、代理店の在庫水準、現時点までの推移、市場状況、設備製造業やその他顧客に対する直接的な販売活動に基づく価格変動の傾向、売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて、売上高に対する変動対価を見積り、計上しています。これらの手続きは慎重な判断のもとで行われており、またその結果、当社はシップ・アンド・デビットにおける変動対価について、妥当な算定、計上ができていると考えています。これまでの当社の実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。
(d) リベート
「産業・自動車用部品」と「ドキュメントソリューション」における代理店への販売において、当社は、定められた期間内に予め定めた売上目標を達成した代理店に対し、現金でリベートを支払っています。このリベートについては、収益を認識した時点で見積った各代理店の予想販売額に基づき、リベート額を算定して、これを収益から控除しています。
(e) 返品
当社は、収益を認識した時点で過去の実績に基づいて返品による損失額を見積り、収益から控除しています。
(f) 製品保証
当社は、主に「ドキュメントソリューション」において、製品に対して通常1年間の製品保証を提供しています。また、最終消費者への販売において、1年間の保証期間終了後、延長保証契約を締結する場合があります。この延長保証契約については、別個の履行義務として識別し、取引価格の一部を当該履行義務に配分した上で、延長保証期間にわたり収益を認識しています。
また、製品販売、製品保証など複数の財またはサービスを提供する複数要素取引に係る契約については、契約に含まれる履行義務を識別し、契約の対価を配分する必要がある場合には、取引価格を独立販売価格に基づき配分しています。独立販売価格は、類似する製品またはサービスの販売価格やその他の合理的に利用可能な情報を参照して算定しています。
(1)技術受入契約
|
会社名 |
相手先名 |
国 名 |
内 容 |
契約期間 |
|
当社 |
Qualcomm,Inc. |
米国 |
携帯端末に関する特許実施権の許諾 |
1996年8月31日から 対象特許の満了日まで |
(2)相互技術供与契約
|
会社名 |
相手先名 |
国 名 |
内 容 |
契約期間 |
|
京セラドキュメント ソリューションズ㈱ |
キヤノン㈱ |
日本 |
電子写真技術に関する特許実施権の許諾 |
2012年4月1日から 対象特許の満了日まで |
(3)合併契約
当社は、2020年10月30日に、米国のGaN(窒化ガリウム)製レーザー製品の製造販売会社であるSoraa Laser Diode, Inc.を完全子会社化する契約を同社と締結しました。
当該契約に基づき、当社は、2021年1月8日に、同社の全発行済株式を取得し、連結子会社化するとともに、その社名をKyocera SLD Laser, Inc.に変更しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記7.企業結合」を参照ください。
当社は、各部門での新技術開発、新製品開発に取り組むと同時に、5G、IoT、ADAS、エネルギーマネジメント、デジタルヘルスケア等の普及に伴う事業機会の獲得に向け、社内外の連携強化に取り組んでいます。ソフトウェア・システム開発を行う「みなとみらいリサーチセンター」や、材料技術開発部門を集約した新研究棟の設立等、グループを横断した研究開発ネットワークの構築に加え、オープンイノベーション等、社外リソースの活用を推進しています。
また、M&Aを通じた開発強化にも取り組んでいます。当連結会計年度には、窒化ガリウム技術の商用化においてリーディングカンパニーである米国Soraa Laser Diode, Inc.を買収しました。同社のデバイスと、当社の幅広いシステム及びソリューション技術を組み合わせた垂直統合戦略により、各種システムの開発を進め、車載や通信、医療分野等、幅広い市場へ同技術の応用展開を図ります。
さらに、翌連結会計年度より実施する組織再編を通じ、開発の一層のスピードアップを図ります。既存組織の枠を越え、部品や機器、システム等の社内に有する豊富な経営資源を、より効率的かつ効果的に活用する考えです。
各レポーティングセグメントにおける主な活動は次のとおりです。
(1)産業・自動車用部品
当レポーティングセグメントでは、主に産業機械や自動車関連市場向けに各種製品の研究開発を行っています。
創業以来培ってきたファインセラミックスの材料・プロセス・設計技術をさらに高める基礎研究に取り組むとともに、これらのコア技術を活かし、幅広い市場向けに新製品の開発を進めています。今後も拡大が見込まれる半導体製造装置市場向けには、微細配線、三次元構造等、高集積化の進む次世代装置に向けた部品や材料開発に取り組むとともに、高温対応を可能にする優れた熱伝導性や機械特性を持つ窒化物セラミックスの開発を、グループ内だけでなく、外部の企業と共同で実施する等、社外リソースも積極的に活用しています。
また、ファインセラミック技術を活かし、環境・エネルギー市場で新たなクリーンエネルギー供給システムとして普及が期待される、SOFC向けセルスタックの高効率化の開発を強化しています。
ADAS等の進展に伴い事業機会の拡大が見込まれる自動車関連市場向けには、高度な画像センシング技術の実現に向けて、車載カメラ等の付加価値製品の開発を進めています。また、同市場向けにヘッドアップディスプレイの開発に取り組むとともに、各種産業市場向けに高輝度等、差別化したTFT液晶ディスプレイや、TFT成膜技術を応用した商品の開発を行っています。
産業機械や建築市場への事業領域の拡大に取り組んでいる機械工具事業においては、主に自動車やエネルギー・インフラ、航空機分野等の幅広い市場での金属加工等に使用される切削工具の材料技術を強化しています。ユーザーの生産性向上に寄与する高品質・高精度な製品開発に取り組むと同時に、京セラグループが有する多様な技術の活用による空圧・電動工具の新製品開発を推進しています。
(2)半導体関連部品
スマートフォンやタブレット端末等のデジタルコンシューマ機器市場においては、機器の高機能化と同時に小型・薄型化のニーズが高まっています。これに伴い、機器に搭載される電子部品の小型化や半導体の微細化が進んでいます。また、情報通信ネットワーク市場においてはIoTの進展も加わり、5G向けの高速かつ大容量の通信インフラの構築が、自動車関連市場においてはADASの進展による電装化や低消費電力化への一層の対応が求められています。さらに、これらの主要市場については、各種センサーの需要が増加しています。このような市場動向に対応し事業拡大を図るため、当社は独自の材料、設計、加工技術を活かし、付加価値の高い新製品の開発に努めています。
セラミックパッケージ事業においては、微細配線が可能で、かつ高強度、高剛性の超小型・薄型の電子デバイス用及びセンサー用パッケージや、5G等、より高い周波数に対応する光通信用パッケージ、放熱性や高い耐久性を有するLED用パッケージ等の開発に取り組んでいます。ケミカル事業では、情報通信市場や自動車関連市場向けに絶縁信頼性等の電気特性の向上に加え、熱硬化・光反応性や形状・応力安定性等の高機能化への要求に対応する新規材料の合成や新たな材料配合技術等の開発を強化しています。
有機パッケージ事業においては、各市場のニーズに対応したフリップチップパッケージやモジュール基板の開発に取り組んでいます。情報通信ネットワーク市場向けには、データ伝送の高速大容量化対応として、高速信号・広帯域メモリー接続に適した狭ピッチかつ薄型・高精細な製品開発を、ADAS向けには小型で信頼性の高い製品の開発を中心に取り組んでいます。
(3)電子デバイス
5GやIoT関連製品の普及に伴い、スマートフォンをはじめとする通信端末や基地局の高機能化に加え、マルチバンド化により、部品の小型化と高信頼性が要求されています。当社は、これらの市場要求に応える小型高容量で温度や湿度への信頼性を高めたセラミックコンデンサや小型低損失かつ高信頼性のSAWデバイス、小型高特性の水晶部品や狭ピッチ・低背で高速伝送を可能にするコネクタ、高効率なアンテナ等の開発を進めています。
自動車や産業機器市場向けには、高温信頼性や耐圧性を高めたセラミックコンデンサやコネクタ、ディスクリート及びパワーモジュールを含むパワー半導体に加え、各種制御部品等の開発を行っています。前連結会計年度に完全子会社化したAVX Corporationとの連携強化によるこれら部品の一層の特性向上に加え、各部品を組み合わせた高付加価値モジュールの開発を図ります。
また、主に商業印刷市場向けに展開しているインクジェットプリントヘッドでは、デジタル印刷で要求される高速化、高画質化に加え、耐久性を高めた製品開発に取り組んでいます。
(4)コミュニケーション
通信機器事業については、コンシューマ市場に加え、教育学習支援業や建設業等、様々な業界向けに、防水、防塵、耐衝撃性等の独自機能を活用した5G対応端末やタブレット端末等の開発を強化しています。
情報通信サービス事業においては、多様な端末やネットワークから集まるデータの収集・管理・活用を行うプラットフォームや、セキュリティソフトの開発等、DXの推進による顧客ニーズの複雑化・高度化への対応を進めています。また、企業等のビジネス分野で利用が拡大するAIの分野についても、サービス開発を強化しています。
さらに、当社が有している部品や端末、システム技術、並びに通信端末事業で培った無線通信技術を活かし、ADASや自動運転システムの高まりに伴い需要の増加が期待される車載用通信機器やV2I路側機等の開発に取り組んでいます。加えて、専用ネットワークシステムを構築して取り組むローカル5Gシステム等のソリューション事業を、外部機関との連携も含め積極的に進めています。
(5)ドキュメントソリューション
当レポーティングセグメントでは、当社製品の特長である環境性と経済性に優れた製品の開発を進め、競合他社との差別化を図っています。
プリンター及び複合機等のオフィス向け製品については、長寿命な機器及び、廃棄を極少に抑えた消耗部品の開発により、低ランニングコストと高い環境性能を両立しています。さらに、高品質なトナー開発にも取り組み、付加価値の向上に努めています。商業用インクジェット事業では、印刷市場に新しい価値を提供できるよう、高画質・高生産・高耐久と同時に、多品種大量印刷ニーズの増加に伴うバリアブル印刷やカスタマイズ印刷に対応した製品の開発に取り組んでいます。
ドキュメントソリューションサービス関連では、モバイル機器やクラウド環境、並びに顧客が所有するドキュメント管理システムとの連携によって、情報共有や業務効率に貢献するアプリケーションソフトウェア等の開発を進めています。また、企業内の情報を電子化し、包括的かつ効率的に管理・運用するECM事業をさらに強化し、既存事業との融合による新サービスの開発に取り組んでいます。
(6)生活・環境
スマートエナジー事業においては、売電から自家消費へと、電力使用のニーズの変化への対応に向けて、高性能製品の開発及び、エネルギーを効率よく使用するためのシステム開発に努めています。製品開発においては、結晶シリコン系太陽電池モジュールの変換効率等の性能や品質の向上に取り組むと共に、高安全性で長寿命、低コストの蓄電池や、小型・高効率発電のSOFCの開発に注力しています。また、これらの電池で蓄えた電気を効率よく活用するためのエネルギーマネジメントシステムの開発にも取り組んでいます。さらに、電力自由化に伴うデマンドレスポンスやVPP市場での事業拡大に向けた技術開発にも取り組み、トータルエネルギーソリューションビジネスの構築に向けて、事業領域の拡大に努めています。
医療機器事業では、主に人工関節や人工歯根を展開しており、患者様のQOL(生活の質)の向上に貢献できる製品開発を進めています。具体的には、人工関節の摩耗を抑え長寿命化を実現する表面処理技術や、抗菌性を高める技術を付与した製品開発に取り組んでいます。さらに、これら技術の他分野での展開に向けて、社外の研究機関とも連携して研究開発を進めています。また、当社は再生医療事業の拡大に向けて、豪州Regeneus社と細胞製剤に関する技術提携並びにライセンス契約を締結する等、新規医療分野への取り組みを積極的に推進しています。
|
レポーティングセグメント別研究開発費 |
|
|
(百万円) |
|
|
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減率(%) |
|
|
産業・自動車用部品 |
14,367 |
|
△13.5 |
|
|
半導体関連部品 |
4,486 |
|
7.0 |
|
|
電子デバイス |
16,445 |
|
16.6 |
|
|
部品事業計 |
35,298 |
36,403 |
3.1 |
|
|
コミュニケーション |
6,550 |
|
9.7 |
|
|
ドキュメントソリューション |
21,615 |
|
△16.0 |
|
|
生活・環境 |
9,049 |
|
△10.4 |
|
|
機器・システム事業計 |
37,214 |
33,463 |
△10.1 |
|
|
その他 |
6,729 |
|
△16.9 |
|
|
研究開発費 |
79,241 |
|
△4.8 |
|
|
売上高比率 |
5.0% |
4.9% |
- |