第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)経営の基本方針

  当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。

 

(2)目標とする経営指標

  当社は、高成長・高収益企業の実現に向けて、売上高及び税引前利益の持続的な2桁成長を目指します。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題等

  当社は、グループ内に有する多様な経営資源の活用に加え、外部との連携を強化することで、高成長・高収益の実現を目指しています。5GやAIの普及により、様々な分野で技術革新が進むとともに、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にデジタル化が一層加速されました。このような中、顧客ニーズについても変化がみられ、IoTやAI等を活用した生産現場のスマート化や、脱炭素化等の環境課題を含む様々な社会課題の解決に貢献する技術やサービス等に対するニーズが高まっています。当社はこれらの変化を事業機会に着実に結び付け、売上高3兆円という新たな目標の達成に向けて、当連結会計年度に再編した組織体制のもと、既存事業の拡大及び新規事業の創出を図るとともに、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進に努めます。

 

a. 既存事業の拡大及び新規事業の創出

  デジタル化等の進展により、中期的に5Gや半導体、ADAS関連市場では各種部品の需要が見込まれます。当社はこれらの市場での旺盛な部品需要にタイムリーに対応するため、引き続き国内外での新工場棟の建設等、積極的な設備投資を進め、既存事業の拡大に努めます。

 また、研究開発体制の強化及び新製品・新技術開発の促進により、社会課題の解決に貢献する新規事業の創出に取り組んでいます。研究開発体制を材料、デバイス、ソリューション、生産技術の4分野に再編し、グループ内外の経営リソースの一層の活用による開発力の強化及びスピードアップ、並びに人材育成に努め、事業領域の拡大を図ります。

 

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   (注)KAVXはKyocera AVX Components Corporationの略称

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b. ESG経営の推進

  当社は、持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応、並びにコーポレート・ガバナンスの強化に努めています。

  環境課題については、脱炭素社会の実現を目指し、自社拠点への太陽光発電システムの設置等、再生可能エネルギーの導入を進めるとともに、地域・社会全体での温室効果ガス排出量削減に向けて、自己託送やVPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)等のインフラ構築及び普及の促進に取り組んでいます。

  社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」の実現を目指し、社内におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進や、より働きやすい職場環境や制度づくりに努めるとともに、サプライチェーンにおけるCSR活動の推進に取り組んでいます。

  コーポレート・ガバナンスについては、取締役会の更なる多様性や実効性の向上に努めるとともに、天災等の有事の際の速やかな事業復旧・継続に関するBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)対応等、リスクマネジメントの推進を図っています。

 

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(4)レポーティングセグメント別の対処すべき課題等

a. コアコンポーネント

  ファインセラミックをはじめとするコア技術や生産能力、先端分野に対する技術開発力などの強みを活かし、

更なる成長を目指します。

 

<主な取り組み>

 高付加価値製品の国内外での生産能力拡大

 

ターゲット市場

主な製品

産業機械

半導体製造装置用ファインセラミック部品

 

情報通信

セラミックパッケージ、有機パッケージ

 

車載

カメラモジュール

 

b. 電子部品

  異なる強みを有する京セラ㈱の電子部品事業とKyocera AVX Components Corporation(KAVX)との開発、製造、

販売面でのシナジーを追求し、業界でのシェアアップを図ります。

 

<主な取り組み>

 両社の得意分野を活かし、競争力を強化

・営業組織の統合、開発の棲み分け、

  技術融合による新製品開発の推進

・京セラ㈱の自動化ラインのKAVXへの導入

販売

京セラ㈱電子部品

KAVX

主要市場

情報通信

車載

重点地域

アジア

欧州・米国

販売ルート

直接販売

代理店販売

 

c. ソリューション

  既存ビジネスでの高品質、高付加価値の製品、サービスの進化に加え、保有している多様な資産や技術を活かし、

社会課題の解決に貢献する新たな事業の創出に取り組みます。

 

<主な取り組み>

 事業間のシナジー追求による新たなソリューションの提供

・情報機器とプリンティングデバイスとの技術融合によるデジタル捺染機の開発、

  販売を通じ、捺染工程の排水、商品在庫の廃棄削減など、環境負荷低減に貢献

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2 【事業等のリスク】

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは次のとおりであり、すべてのリスクを網羅的に記載しているわけではありません。なお、当該事項は、当社が有価証券報告書提出日時点において判断したものです。

 

事業活動に関するリスク

(1)日本及び世界経済の変動に関するリスク

  当社は、日本のみならず世界各国で事業を展開するとともに、情報通信、自動車関連、環境・エネルギー、医療・ヘルスケア関連等の様々な市場に製品・サービスを供給しています。そのため、日本及び世界経済の変動により、当社製品の需要が大きく減退するリスクがあります。翌連結会計年度は、一層のデジタル化の進展等により、引き続き5Gや半導体関連市場向け部品の旺盛な需要が見込まれるものの、ロシアによるウクライナ侵攻など不安定な世界情勢、半導体や原材料等の不足及び価格高騰、新型コロナウイルス感染症の再拡大等により、当社製品の需要が上記の期待を下回る可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、上記市場での事業機会を着実に捉えるべく、既存事業の拡大及び新規事業の創出、並びに生産性倍増に取り組んでいます。

・既存事業の拡大に向けて、セラミックパッケージ等の半導体関連部品やコンデンサ等の電子部品など、今後も旺盛な需要が見込まれる部品の積極的な設備投資を継続します。

・新規事業の創出については、社内外との連携強化により、独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システムや、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウムデバイスの応用システムの事業化に取り組んでいます。

・生産性倍増については、一層の生産性向上に向けて、グループ全体でAIやロボットを活用した自動化ライン等の導入を進めます。

 

  また、新型コロナウイルス感染症の再拡大等、厳しい事業環境下においても事業活動を継続できるよう、引き続きリモートワークをはじめとする柔軟な勤務体系の整備を進めます。

 

(2)国際的な事業活動に関するリスク

  当社は、日本以外に米国や欧州をはじめ、中国やベトナム等のアジア地域で製造及び販売拠点拡充のために多額の投資を行っています。これらの海外市場で事業活動を行っていく上で、ロシアによるウクライナ侵攻など当社にとって望ましくない政治的・地政学的・経済的要因により、輸出入管理・経済安全保障政策・投資規制・収益の本国送金規制・移転価格税制・タックスヘイブン対策税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。

  また、世界的な人権に対する配慮の高まりにより、自社だけでなくサプライチェーンにおける人権問題にも配慮が求められています。そのため、これに関する予期できない法律・規制の変更等のリスクやレピュテーションリスクに直面する可能性があります。

 

(主要な対応策)

  独占禁止法、反贈収賄、個人情報保護法等、グローバルに規制強化の動きがある国内外の主要な法律・規制の対応等については、世界各国の主要な子会社の法務担当者が参加する会議を定期的に開催し、各社の法的な課題・対策に関して議論を行うとともに、必要な体制整備を進めています。輸出入管理については、安全保障貿易管理に関する社員教育の実施とビジネスに関連する重要な規制に関する情報を適時、社内に周知しています。また、リスク管理部門を中心に関連部門から成る経済安全保障対策プロジェクトを発足させ、刻々と変化する国際情勢を把握し、能動的なリスク回避策をとっています。投資規制・収益の本国送金規制については、当社及びグループ各社において規制変更の情報を早期に収集し、当該国で保有する会社財産を国外に退避させるなど、適切に対処するよう取り組むことで、そのリスクの予防・回避に努めます。海外の税制については、税務情報を適時適切に提出することにより、各国の税務当局と信頼関係を築き、必要に応じて事前照会を実施することで税務リスク低減に努めています。特に、グループ内の国際間取引については、OECD移転価格ガイドラインに従った独立企業間価格に基づき行うとともに、税務当局との事前確認制度を活用し適正な納税に努めています。また、過度な節税を目的とする低税率国・地域(いわゆるタックスヘイブン地域)への税源の移転を防止し、各国の税制に従い適正な申告納税に努めています。また、当社は「京セラグループ人権方針」を制定し、サプライチェーンを含む人権デューディリジェンスに向けた取り組みを行うなど、人権問題に対する姿勢を明確にしています。

 

(3)為替レートの変動に関するリスク

  当社は、国内外で事業を行っているため、為替レートの変動の影響を受けます。為替レートの変動は、常に当社の事業活動の成果や海外資産の価値及び生産コストに影響を与えるため、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があるとともに、事業活動の結果について期間ごとに比較することを困難にする場合があります。また、為替レートの変動は、当社と海外の競合企業が同一市場で販売する製品の価格競争や、当社の事業活動に必要な輸入品の仕入価格にも悪影響を及ぼす場合があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、為替レートの変動について、外国為替リスク管理方針に基づき、主に短期の為替予約を行うことにより、この影響の軽減に努めています。また、海外生産拠点における現地での部材調達の促進により、仕入価格における為替リスクの低減を図っています。

 

(4)当社製品の競合環境に関するリスク

  当社は、多種多様な製品を販売しているため、国際的な大企業から、高度に専門化し急成長している比較的小規模な企業まで、競合会社が広範に存在します。当社の競合環境は、これらに限らず、コスト構造等で競争優位性を持つ新興国企業を含め、新たな脅威となる競合他社の出現によって常に変化する可能性があります。特定の事業分野に特化している多くの競合会社と異なり、当社は多角的に事業を展開しているため、個々の事業分野に関しては、競合会社ほど出資や投資を行うことができない可能性があります。当社の競合会社は、財務・技術・マーケティング面での経営資源を、当社の個々の事業より多く有している可能性があります。また、競合の要因は事業分野によって異なりますが、価格と納期は当社の全事業分野において影響を及ぼす主な要因となります。需要や競合の状況によりますが、製品価格の値下げ要求は概して恒常化しているため、今後も製品価格の下落が予想され、その結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる経営資源を有しています。これらの経営資源を有効活用するため、グループ内の連携強化を図り、高付加価値製品の提供等により、競争優位性の確保に努めています。また、当社が顧客の製品ごとに仕様を合わせた部品を開発・製造・販売している事業においては、顧客の要求に沿った新製品の開発に早く着手することにより、競争力の強化を図っています。さらに、製品価格の下落に対しては、当社独自の経営管理システム「アメーバ経営」の実践を通じた部門別採算管理の徹底により、原価低減を図り、高い競争力の実現に取り組んでいます。

 

(5)生産活動に使用される原材料の価格変動、サプライヤーの供給能力に関するリスク

  当社の各事業の生産活動に使用される原材料は常に価格変動にさらされているため、原材料価格の上昇や原油高による輸送コストの上昇は当社の製造原価の上昇につながる可能性があります。このような製造原価の上昇が製品の販売価格に転嫁できず、当社の収益性を押し下げる可能性があります。なお、当社は、原材料の正味実現可能価額(通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する原価の見積額及び販売に要するコストの見積額を控除した額)が原価を下回った場合には、正味実現可能価額まで評価減しており、今後も評価減を行う可能性があります。

  また、当社は、生産活動において消費される一部の原材料を特定のサプライヤーに依存しており、これらのサプライヤーに対する需要が過剰な状況となり、当社への供給が不足した場合、当社の生産活動に遅延や混乱を引き起こす可能性があります。このような原材料の供給に重大な遅延があった場合、当社はただちに特定のサプライヤーに代わりうる供給先を確保できない可能性や、合理的な価格で原材料を確保できない可能性があります。このような価格上昇や原材料の供給停止は、当社の製品の需要を押し下げる可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、購買活動にあたり、「購買基本方針」を定め、会社概況やCSRに関する各種調査を通じて信頼のおける供給業者を選定するとともに、複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。

  また、当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により、価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料の価格上昇を吸収するよう努めています。

  さらに、当社は、素材・部品からデバイス、機器、システム、サービスに至るまで事業を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部をグループ内で調達しています。これにより、外部から調達している部材、部品を確保できない場合、グループ内での調達に切り替えるなどの対応を検討することが可能です。

 

(6)外部委託先や社内工程における製造の遅延または不良の発生に関するリスク

  当社は、部品の製造や製品の組立の一部を単一もしくは限られた数社の取引先に外部委託しています。その中には非常に複雑な製造工程や長い製造時間を必要とする取引先も存在するため、部品や組立品の供給が遅滞する場合があります。また、このような部品や組立品が高い品質や信頼性を欠き、かつ適時に納入されない場合には、関連する製品の生産に重大な影響を及ぼし、当社の生産活動の遅延や中断が生じる場合があります。さらに、当社の製造工程においては、微小の不純物の製品への混入や製造工程の問題等の発生によって製品が納品できない状態になる場合や規格外となる場合があります。こうした要因によって生産高が計画を下回る、あるいは製品の出荷が遅れる、損害賠償金の支払請求を受ける等、業績に重大な影響を与える場合があります。これらのリスクに加え、製造原価に占める固定費の割合が高い事業においては、生産数量や設備稼働率の低下が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、外部委託先の選定にあたり、「購買基本方針」を定め、十分な検討のうえ、委託先を選定しています。また、当社では、社内で確立した製造工程について、原材料・部品等を支給し、設備及び製造仕様書を委託先に貸与することにより、当社と同じ生産管理や品質マネジメントシステムのもと、顧客への納期及び品質要求に対応しています。また、社内においては、データサイエンスを用いた品質改善や、AIやロボットを活用した生産性改善活動を継続的に実施し、リスクの低減に努めています。

 

(7)生産能力及び開発体制の拡大、もしくは現在進行中の研究開発が期待される成果を生み出さないリスク

  当社は、需要の増加や顧客の要求に対応するため、常に生産及び開発能力の拡大に努めています。こうした生産及び開発能力の拡大を図る際に、予期せぬ技術的な障害や顧客の方針転換等により、計画どおりに拡大できない場合、新たに生産された製品や開発された技術から期待された成果が得られない可能性があります。また、当社で現在進行中の研究開発活動から生まれる製品が、市場において期待された評価を得られない可能性もあります。

 

(主要な対応策)

  当社は、顧客及び市場の動向を注視し、開発、製造、営業、マーケティング活動をグローバルに展開することにより、変化の速い市場環境への対応に向けて研究開発の強化を図っています。当社は、研究開発体制を材料、デバイス、ソリューション、生産技術の4分野に再編し、グループ内外の経営リソースの一層の活用による開発力の強化及びスピードアップ、並びに人材育成に努め、事業領域の拡大を図ります。

 

(8)買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク

  当社は、事業を発展させるため、買収による会社または資産の取得を検討しており、実際にそれらを取得することがあります。しかしながら、取得後、被買収会社の事業や製品並びに人材を当社が効果的に当社の既存事業に統合できない可能性や、買収による事業上の成果や財政上の利益または新しい事業機会を当社が期待する程は得られない可能性があります。また、被買収会社による製品の製造やサービスの提供が、当社が計画したとおり効率的に実施できない可能性や、被買収会社の製品やサービスの需要が当社の期待に達しない可能性があります。従って、買収によって取得した会社や資産を期待どおりに活用できない場合、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があり、これらの資産が減損していると判断される場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社や学術機関、政府機関等との協業においても、上記と同様の影響を受ける可能性があります。

(主要な対応策)

  当社は、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について、社外専門家による事業価値のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。取得後においては、PMI(Post Merger Integration)を進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。

 

(9)優れた人材の確保が困難となるリスク

  当社が将来にわたり発展するためには、技術・販売・管理面において優れた人材を確保する必要があります。当社はあらゆる事業分野において、さらに多くの優れた能力を有する人材の雇用が必要になると考えています。近年、各分野において、有能な人材の獲得競争がますます激しさを増してきていることから、当社は今後、現有の人材を維持することや、能力のある人材を増員することができなくなる可能性があります。

  また、業務と育児・介護等との両立を支援する勤務体系の導入等、ワークライフバランスの充実化やダイバーシティ&インクルージョンの推進を実施しない場合、現有の人材を維持できなくなる可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、将来の京セラを支える高いポテンシャルとチャレンジ意欲溢れる人材を新卒採用しているほか、高度な専門スキルを有する人材や、マネジメント能力に優れた多様な人材を経験者採用として通年で積極的に獲得しています。また、従業員に対しては、当社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする経営哲学「京セラフィロソフィ」の理解・実践と、業務を遂行するうえでの専門的な知識・技術の習得の両面で能力向上を図るための人材教育を実施しています。目的別に構成される教育体系に基づき研修を展開していくことで経営理念の実現に貢献する人材の育成に努めています。さらに、在宅勤務やフレックスタイム制度等の柔軟な勤務体系の導入により、ワークライフバランスの充実化やダイバーシティ&インクルージョンの推進を図り、多様な人材が働きがいを持って活躍できる職場環境の実現に取り組んでいます。

 

(10)情報セキュリティに関するリスク

  当社は、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報、機密情報を保有しています。これらの情報については、情報機器の故障や、ソフトウェアの不具合、マルウェアの侵入や高度なサイバー攻撃等により、情報漏洩や改ざん、滅失、システム停止等の被害を受けるリスクがあり、このような事態が発生した場合には、更なるセキュリティ対策や損害賠償等の多額の費用負担により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社のシステムに対する不正アクセスを防止するために、当社は今後の技術革新にも対応できる情報セキュリティの維持に関連する追加的な費用を負担する可能性があり、それらが当社の財政状態及び事業活動に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの情報漏洩等のリスクにより、事業競争力の低下につながる可能性もあります。

 

(主要な対応策)

  当社では、経営戦略、商品開発、各種ノウハウ、技術等を会社の重要資産と認識した上で、京セラグループ統一の「情報セキュリティ管理方針」を制定し、情報セキュリティに関する管理体制を整備しています。また、情報セキュリティを維持・確保するために、従業員が遵守すべき事項を定めた各種規程を制定し、従業員への教育を実施しています。さらに、ネットワークやIT資産等に対するセキュリティ対策、事業継続計画(BCP)を策定し、情報セキュリティの強化を図っています。外部からのマルウェアの侵入やサイバー攻撃等に対しては、システムの脆弱性対策、システム監視による侵入防止策、インシデント発生時の早期復旧策を講じています。

 

法規制・訴訟に関するリスク

(11)当社の企業秘密や知的財産・ブランド価値に関するリスク

  当社が将来にわたり発展し、市場競争において優位な地位を確立・維持するためには、当社の企業秘密やその他の知的財産が守られなければなりません。当社の企業秘密を保有する従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等が当社の企業秘密を不適切に漏洩した場合、もしくは当社が知的財産権を取得している独自開発製品・工程が他社によって侵害された場合、あるいは当社のブランド価値を毀損するような模倣品が販売された場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は戦略的に知的財産を出願していますが、こうした出願が登録されない可能性があり、また登録されても無効にされる可能性、あるいは当社の知的財産権を回避される可能性もあります。

 

(主要な対応策)

  当社は、企業秘密を守るために従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等と秘密保持契約を締結しています。当社が独自に開発した製品や工程については、国内外において知的財産権を取得し、侵害者の排除に努めています。また、当社の知的財産については、先行調査を十分に実施した上で出願を行うことにより、登録可能性を高めるとともに、様々な観点から当該事業分野や製品を戦略的に網羅する複数の強い知的財産権を取得し、これらの知的財産を活用することで事業に貢献する活動を行っています。さらに当社のブランド価値の維持向上を図るため、知的財産権を活用した模倣品の摘発を行っています。

 

(12)当社製品の製造・販売を続ける上で必要なライセンスに関するリスク

  当社はこれまでに、第三者より知的財産権を侵害しているとの通知を受けたことや、知的財産権の実施許諾についての対価請求の申し出を受けたことがあり、今後も同様の事例が発生する可能性があります。特に通信技術に関連する製品では、第三者の標準必須特許に対する高額の実施許諾料の支払いを要求される可能性があります。従って当社は、以下のことを保証することはできません。

・侵害の申し立て(または侵害の申し立てに起因する賠償請求)が当社に対して行われることはないということ。

・侵害の申し立てがあった場合、製品販売の差止命令を受ける事態が発生しないということ、及び、差止命令によって当社事業の業績が大きく損なわれる事態が発生しないということ。

・当社の事業活動に悪影響を及ぼす高額の実施許諾料の支払いを要求されないこと。

 

(主要な対応策)

  当社は、新技術・新製品を開発する際には、事前に他社の知的財産権を調査して、知財リスクを把握した問題解決に取り組んだ上で事業を行うように努めています。それでも他社から侵害の申し立てがあった場合は、誠実に対応を行い、必要がある場合は適正な実施許諾料を支払うことで解決を図ります。

 

(13)コンプライアンスに関するリスク

  当社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする経営哲学「京セラフィロソフィ」をベースにコンプライアンスの徹底に努めています。しかしながら、このような徹底が十分になされず、法令違反や社会規範に反した行動が発生した場合、信用失墜による顧客からの取引停止、罰則金の支払、損害賠償請求等により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、コンプライアンス活動が社是や京セラフィロソフィの延長にある重要な活動であることを理解するとともに、各国の関連法令の遵守がステークホルダーの信頼にも繋がる極めて重要な活動であることを理解し、専門部署であるグローバルコンプライアンス推進部の設置や「京セラコンプライアンス憲章」の制定等、コンプライアンス活動に積極的に取り組んでいます。また、各法令の主管部門による管理、新規法令の施行時や法令改正時の社内連絡体制の構築、内部通報制度の導入、定期的な法令監査の実施、コンプライアンス月間の制定、コンプライアンス教育等により、法令を遵守し、社会規範に則った企業活動の徹底を図っています。さらに、グローバルにリスクを察知・共有することを目的に、主要なグループ会社の法務・コンプライアンス担当者が参加する「グローバル会議」を定期的に開催し、各社のコンプライアンス活動及び法的な課題・対策に関して議論を行っています。

 

(14)環境に関連する費用負担や損害賠償責任が発生するリスク

  当社は、温室効果ガス削減、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁の防止、有害物質の除去、廃棄物処理、製品リサイクル、従業員や地域住民の健康、安全及び財産保全、さらには当社の製品における使用物質の適切な表示等に関する国内外の様々な環境関連法令の適用を受けています。このような環境関連法令は、当社の現在の事業活動だけでなく、当社の過去の事業活動や、当社が買収等により他社から承継した事業の過去の活動に対しても適用される可能性があります。当社は、環境関連法令により当社に生じる義務に基づく債務について、その発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には引当金を計上します。仮に、当社の環境関連法令の義務違反等が判明した場合には、規制当局から浄化費用の支払いを命じられる可能性や損害賠償責任を負う可能性があります。また、当社が任意で環境問題に取り組む必要があると判断した場合にも、環境浄化費用の負担や補償金の支払いを行う可能性があります。これらの環境に関連する費用負担や損害賠償責任は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、事業活動にあたり、経営理念を基本とした環境安全に関する総合的な取り組みを推進するため、製品のライフサイクルを通した環境負荷の低減、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の抑制等、「京セラグループ環境安全方針」を制定し、環境関連法の遵守を徹底するとともに、規制の変更等への適切な把握、対応に努めています。

 

(15)世界的な気候変動に関するリスク

  当社に適用される環境関連法令が、世界的な気候変動等により、将来さらに厳しくなる可能性や適用の範囲が拡大され

る可能性があります。対応の不足や遅れにより、想定外の急速な脱炭素社会への移行に対応できず、コストの増加や企業

ブランドの低下を招くリスクがあります。

  脱炭素社会への移行リスクについては、各国で更新された排出量削減目標が当社の目標より高い場合や、新たに炭素税が導入された場合、当社の製造コストが一時的に増加する可能性があります。また、顧客より製品のカーボンフリー化の要求が拡大した場合、当社の製造コストが増加する可能性があります。一方、社会の脱炭素化の動きは、当社のエネルギー関連事業の成長に繋がる機会として捉えることができます。物理リスクでは、異常気象が激甚化した場合、自然災害による操業停止、生産減少、設備復旧等に係るコストや、自然災害対策費用並びに保険料等が増加する可能性があります。また、水不足等により生産が減少する可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして位置付け、代表取締役社長を委員長とする京セラグループCSR委員会において、長期環境目標の決定やその達成に向けた対策等について審議を行っています。当社は、長期環境目標として、「温室効果ガス排出量(Scope1,2並びにScope1,2,3)削減目標(1.5℃水準):2030年度46%削減(2019年度比)」を設定しています。なお、この長期環境目標は、SBT(Science Based Targets)の認定を取得しています。また、当社は「2050年度カーボンニュートラル」の実現を目指し、積極的に活動を進めています。

 

  当社は、再生可能エネルギー関連技術の実証試験を進め、エネルギーソリューション事業を推進し、再生可能エネルギーの普及を図るとともに、太陽光発電システムと蓄電池を統合運用することで、再生可能エネルギー比率を高め、温室効果ガス排出量の削減に努めています。また、製造工程での省エネルギー化を進めることにより、エネルギー使用量の削減に取り組んでいます。

 

(注)Scope1:燃料使用に伴う直接排出

   Scope2:外部から購入する電力や熱の使用に伴う間接排出

   Scope3:Scope1、2以外の間接排出(原料調達、輸送、使用、廃棄、従業員の通勤、出張など)

 

災害等に関するリスク

(16)感染症の発生、テロ行為、または紛争等が当社の市場やサプライチェーンに混乱を与えるリスク

  当社は、グローバルに事業を拡大していることに伴い、感染症の発生、テロ行為、または戦争・紛争等の事態に巻き込まれるリスクがあります。このような事態においては、開発・製造・販売・サービス等の事業活動の中断、混乱または延期等が生じる可能性があります。また、当社の市場やサプライチェーンに支障をきたす可能性もあります。このような状況が長期間続いた場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、新型コロナウイルス感染症への対策として、顧客、サプライヤー、従業員並びにご家族の健康維持を最優先に、感染予防・感染拡大の防止を基本に製品供給に努めています。具体的には、供給責任の高い製品の生産を優先し、不急の生産活動の縮小・停止や在宅勤務等を実施しています。また、子女が通う学校の臨時休校に伴い、通勤や在宅勤務が困難な社員へ特別休暇を付与する等の措置を講じています。当社は、従来取り組んできた製造部門でのAIやロボットの活用による自動化に加え、間接部門でのデジタル化の推進により、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、省人化や在宅勤務等に迅速に対応することができています。

  また当社は、ロシアのウクライナ侵攻に関するリスクについて、本社に対策本部を設置し、刻々と変化する状況を注視するとともに、グループの重要情報の一元化を図り、対応が求められる事案を協議しています。

 

(17)地震等の災害が発生するリスク

  当社は、国内外において多くの開発・製造・事業関連施設を有しています。日本をはじめとするそれらの施設がある地域での地震や台風、津波、大雨、洪水、大雪等の不可避な自然災害の発生や、設備故障及び人為的ミスにより、当社の施設に影響を与える大規模な災害等が発生した場合、当社の事業への影響が考えられます。例えば、大規模な地震の発生により、当社の人員や開発・生産設備が壊滅的な損害を被り、操業の中断や製造・出荷の遅延を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った施設の復旧等に要する費用が多額に発生する可能性があります。さらに、社会資本や経済基盤に著しい被害が生じた場合には、交通網の混乱や電力の供給不足等が生じ、当社のサプライチェーンや生産活動に困難が生じる可能性があります。また、当社に原材料等を供給するサプライヤーが被害を被った場合には、原材料等の調達に困難が生じる可能性があり、当社の顧客が被害を受けた場合には、当社の製品の出荷が停滞する可能性があります。このような災害に伴う被害や、その結果生じる経済の停滞や消費の鈍化が、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社では、地震等の自然災害、設備故障及び人為的ミスによる大規模な災害等に対してBCPの体制を整備し、活動を継続しています。具体的には、重要資源である人員、設備、部材、情報について、被害を最小化するための事前対策に加え、万が一被災した場合の早期復旧計画や代替供給策を策定し、教育・訓練を実施することにより、事業中断を回避し、早期に事業再開ができるよう努めています。

 

財務会計に関するリスク

(18)当社の顧客の財政状態が悪化し、売掛債権が回収困難となるリスク

  当社は、売掛債権について、顧客が期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。しかしながら、通常の営業取引において、当社の売掛債権は担保物件や信用保証により、すべては保全されていません。従って、経済環境の悪化等に伴い、顧客に対する売掛債権の回収が困難となり、保全されていない多額の債権が発生した場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、与信管理規程に基づき、取引先ごとに回収条件・与信限度額を設定し、定期的に与信の見直しを行っています。また、回収期限を日次で管理しており、回収遅延や信用不安が発生した場合は、個別に債権回収、条件変更、担保・保証の入手等の債権保全策を講じ、貸倒リスクの回避に努めています。

 

(19)当社が保有する投資有価証券及びその他の投資に関するリスク

  当社は、取引関係の維持・向上等を目的として、当社の関係会社以外の資本性証券に投資しています。その主たる投資は日本の通信サービス・プロバイダ-であるKDDI㈱の株式への投資です。2022年3月31日現在、当社はKDDI㈱の発行済株式の14.54%を保有しています。KDDI㈱の株式への投資は当社の総資産の約30%を占めており、KDDI㈱の株式の市場価格の変動は、当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、KDDI㈱の株式について、経済合理性及び将来の事業機会における重要な事業パートナーとして保有を継続しています。当該株式を含むすべての資本性金融商品の一部である政策保有株式については、その保有意義について定期的に経済合理性の確認を行い、保有意義がないと判断したものについては、原則、売却を実施しています。また、保有株式の株価変動が当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知するため、定期的に株価のモニタリングを行っています。

 

(20)有形固定資産、のれん並びに無形資産の減損処理に関するリスク

  当社は、多くの有形固定資産、のれん並びに無形資産を保有しています。有形固定資産及び償却性無形資産については、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で減損の判定を行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行っています。これらの資産が減損していると判断された場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、「(8)買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク」に記載のとおり、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について社外専門家のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。また、取得後においては、PMIを進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。

 

(21)繰延税金資産及び法人所得税の不確実性に関するリスク

  当社は、繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく変動する可能性があります。また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。

  なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と将来の税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。

 

(主要な対応策)

  当社は、子会社が立案する年間事業計画について、達成度を適時確認することにより、都度適切な施策を実行することで、繰延税金資産の回収可能性に変更が生じないように努めています。また、当社は、各国における税制変更及び税務調査に対し、社外専門家を利用し、リスクの最小化に努めています。

 

(22)会計基準の変更が財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスク

  新会計基準もしくは会計基準の変更は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、会計基準の変更に対応するために、会計ソフトウェアもしくは情報システムを変更した場合には、一定の投資もしくは費用が必要となります。

 

(主要な対応策)

  当社は、IFRSを連結財務諸表等に適用しているため、IFRSに適切に対応するための部門を設置するとともに、国際会計基準審議会が公表する基準書や解釈指針等を随時入手し、新会計基準に対応できる体制を整えています。会計基準の変更時には、財政状態及び経営成績に及ぼす影響を把握した上で、適切に開示します。さらに、会計基準の変更に際して、有効な財務報告に係る内部統制を構築するために一定の投資額は必要となりますが、変更内容を適切に把握した上で投資の要否を決定します。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)業績等の概要

  当連結会計年度は、半導体の供給不足や原材料価格の高騰等の影響はあったものの、ワクチン接種の進展に伴い、新型コロナウイルス感染症による影響を大きく受けた前連結会計年度に比べ、経済活動の回復が進みました。

  当社においては、事業環境の改善に加え、主に5Gや半導体関連市場向けの部品需要が増加したことにより、すべてのセグメントで増収増益となりました。

  この結果、売上高は過去最高を更新しました。利益は、増収効果並びに各部門での生産性向上及び原価低減への取り組みに加え、前連結会計年度に計上したスマートエナジー事業における減損損失約115億円の影響がなくなったことも寄与し、営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益のいずれも増加しました。

(百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2020年 4月 1日

至 2021年 3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年 4月 1日

至 2022年 3月31日)

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

売上高

1,526,897

100.0

1,838,938

100.0

312,041

20.4

営業利益

70,644

4.6

148,910

8.1

78,266

110.8

税引前利益

117,559

7.7

198,947

10.8

81,388

69.2

親会社の所有者に帰属する当期利益

90,214

5.9

148,414

8.1

58,200

64.5

米ドル平均為替レート          (円)

106

112

ユーロ平均為替レート          (円)

124

131

 

(2)財政状態及び経営成績の状況

a.売上高

  当連結会計年度の売上高は1,838,938百万円となり、前連結会計年度の1,526,897百万円と比較し、312,041百万円(20.4%)増加しました。

  事業環境の改善に加え、主に5Gや半導体関連市場向けの部品需要が増加したことにより、すべてのセグメントで前連結会計年度に比べ増収となりました。なお、欧米通貨に対する円安の影響を主因として、当連結会計年度の邦貨換算後の売上高は、前連結会計年度に比べ約680億円押し上げられました。

 

b.売上原価及び売上総利益

  当連結会計年度の売上原価は1,325,295百万円となり、前連結会計年度の1,119,950百万円と比較し、205,345百万円(18.3%)増加しました。

  売上原価の主な内訳は、原材料費が前連結会計年度の393,030百万円から97,801百万円(24.9%)増加の490,831百万円で全体の37.0%を占め、人件費が前連結会計年度の241,976百万円から36,446百万円(15.1%)増加の278,422百万円で全体の21.0%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の65,129百万円から15,127百万円(23.2%)増加の80,256百万円で全体の6.1%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の売上総利益は513,643百万円となり、前連結会計年度の406,947百万円と比較し、106,696百万円(26.2%)増加し、売上高に対する売上総利益率は、26.7%から27.9%へ1.2ポイント上昇しました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費は364,733百万円となり、前連結会計年度の336,303百万円と比較し、28,430百万円(8.5%)増加しました。これは主に、前連結会計年度において計上したスマートエナジー事業の減損損失11,518百万円の影響がなくなった一方で、当連結会計年度において、研究開発費及びAIやIoTの活用により生産性向上を図るデジタルトランスフォーメーションの推進に係る費用等が増加したことによるものです。

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費の主な内訳は、人件費が前連結会計年度の184,914百万円から22,497百万円(12.2%)増加の207,411百万円で全体の56.9%を占め、販売費及び広告宣伝費が、前連結会計年度の39,069百万円から3,485百万円(8.9%)増加の42,554百万円で全体の11.7%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の33,843百万円から3,577百万円(10.6%)増加の37,420百万円で全体の10.3%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の営業利益は148,910百万円となり、前連結会計年度の70,644百万円と比較し、78,266百万円(110.8%)増加しました。売上高に対する比率は前連結会計年度の4.6%から3.5ポイント上昇し、8.1%となりました。

 

d.金融収益

  当連結会計年度の金融収益は45,208百万円となり、前連結会計年度の45,650百万円と比較し、442百万円(1.0%)減少しました。

e.金融費用

  当連結会計年度の金融費用は2,750百万円となり、前連結会計年度の2,194百万円と比較し、556百万円(25.3%)増加しました。

f.為替換算差損益

  当連結会計年度の平均為替レートは、対米ドルは前連結会計年度に比べ6円(5.7%)円安の112円、対ユーロは7円(5.6%)円安の131円となりました。また、当連結会計年度末の為替レートは、対米ドルは前連結会計年度末に比べ11円(9.9%)円安の122円、対ユーロは7円(5.4%)円安の137円となりました。なお、当連結会計年度の為替換算差損益は2,748百万円の利益となりました。

  当社では、外貨建の債権債務に係る為替変動リスクの低減を図るために、主に先物為替予約を利用しています。当社は、先物為替予約については、外国為替レートの変動をヘッジする目的に限定して利用しており、トレーディング目的のための先物為替予約は行っていません。

g.持分法による投資損益

  当連結会計年度の持分法による投資損益は807百万円の損失となり、前連結会計年度の261百万円の利益と比較し、1,068百万円減少しました。

h.税引前利益

  当連結会計年度の税引前利益は198,947百万円となり、前連結会計年度の117,559百万円と比較し、81,388百万円(69.2%)増加しました。売上高に対する税引前利益の比率は前連結会計年度の7.7%から3.1ポイント上昇し、10.8%となりました。

  増収効果及び各部門での生産性向上並びに原価低減への取り組みに加え、前連結会計年度に計上したスマートエナジー事業における減損損失11,518百万円の影響がなくなったことも寄与し、前連結会計年度に比べ増益となりました。なお、欧米通貨に対する円安の影響を主因として、当連結会計年度の邦貨換算後の税引前利益は、前連結会計年度に比べ約200億円押し上げられました。

i.法人所得税費用

  当連結会計年度の法人所得税費用は46,911百万円(実効税率23.6%)となり、前連結会計年度の24,209百万円(実効税率20.6%)と比較し、22,702百万円(93.8%)増加しました。これは主に、税引前利益が増加したことに加え、前連結会計年度に一部の子会社に対する投資に係る一時差異について繰延税金資産を認識したことによるものです。

j.非支配持分に帰属する当期利益

  当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は3,622百万円となり、前連結会計年度の3,136百万円と比較し、486百万円(15.5%)増加しました。

 

k.レポーティングセグメント別営業概況

コアコンポーネント

  当連結会計年度の売上高は527,933百万円となり、前連結会計年度の431,907百万円と比較し96,026百万円(22.2%)増加しました。半導体製造装置用ファインセラミック部品に加え、5G等の情報通信市場や自動車関連市場向けセラミックパッケージ及び有機基板等を中心に需要が増加しました。なお、前連結会計年度に比べ、約170億円の円安による押し上げ効果がありました。

  事業利益は61,640百万円となり、前連結会計年度の30,549百万円に比べ31,091百万円(101.8%)増加し、事業利益率は11.7%となりました。セラミックパッケージ及び有機基板等の生産能力増強を目的とした設備投資の増加に伴い、減価償却費は8,307百万円増加したものの、高付加価値製品の売上増に加え、約110億円の円安による押し上げ効果もあり、増益となりました。

電子部品

  当連結会計年度の売上高は339,102百万円となり、前連結会計年度の273,002百万円と比較し66,100百万円(24.2%)増加しました。産業機器や自動車関連市場等における需要の回復に加え、5G及び半導体関連市場向けにコンデンサ等の売上が増加したことにより、増収となりました。なお、前連結会計年度に比べ、約150億円の円安による押し上げ効果がありました。

  事業利益は47,896百万円となり、前連結会計年度の23,000百万円に比べ24,896百万円(108.2%)増加し、事業利益率は14.1%となりました。高付加価値な小型高容量コンデンサ及び水晶部品の売上増加や生産性向上に加え、約40億円の円安による押し上げ効果もあり、増益となりました。

ソリューション

  当連結会計年度の売上高は983,689百万円となり、前連結会計年度の835,261百万円と比較し148,428百万円(17.8%)増加しました。「機械工具」事業においては、切削工具、空圧・電動工具ともに売上が増加しました。「ドキュメントソリューション」事業においては、機器及び消耗品の販売が回復しました。なお、前連結会計年度に比べ、約360億円の円安による押し上げ効果がありました。

  事業利益は68,730百万円となり、前連結会計年度の37,506百万円に比べ31,224百万円(83.3%)増加し、事業利益率は7.0%となりました。前連結会計年度に比べ研究開発費は3,813百万円増加したものの、増収効果及びスマートエナジー事業における減損損失11,518百万円の影響がなくなったことに加え、約50億円の円安による押し上げ効果もあり、増益となりました。

 

 

レポーティングセグメント別売上高

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

増減金額

増減率

(%)

コアコンポーネント

431,907

28.3

527,933

28.7

96,026

22.2

 

産業・車載用部品

136,062

8.9

172,908

9.4

36,846

27.1

 

半導体関連部品

270,656

17.7

327,746

17.8

57,090

21.1

 

その他

25,189

1.7

27,279

1.5

2,090

8.3

電子部品

273,002

17.9

339,102

18.4

66,100

24.2

ソリューション

835,261

54.7

983,689

53.5

148,428

17.8

 

機械工具

193,066

12.6

251,062

13.7

57,996

30.0

 

ドキュメントソリューション

316,226

20.7

366,691

19.9

50,465

16.0

 

コミュニケーション

232,739

15.2

262,306

14.3

29,567

12.7

 

その他

93,230

6.2

103,630

5.6

10,400

11.2

その他の事業

10,883

0.7

17,817

1.0

6,934

63.7

調整及び消去

△24,156

△1.6

△29,603

△1.6

△5,447

売上高

1,526,897

100.0

1,838,938

100.0

312,041

20.4

 

レポーティングセグメント別税引前利益(△損失)

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

コアコンポーネント

30,549

7.1

61,640

11.7

31,091

101.8

 

産業・車載用部品

4,241

3.1

19,872

11.5

15,631

368.6

 

半導体関連部品

28,260

10.4

44,239

13.5

15,979

56.5

 

その他

△1,952

△2,471

△519

電子部品

23,000

8.4

47,896

14.1

24,896

108.2

ソリューション

37,506

4.5

68,730

7.0

31,224

83.3

 

機械工具

15,721

8.1

27,211

10.8

11,490

73.1

 

ドキュメントソリューション

28,759

9.1

33,334

9.1

4,575

15.9

 

コミュニケーション

14,597

6.3

15,288

5.8

691

4.7

 

その他

△21,571

△7,103

14,468

その他の事業

△3,102

△14,649

△11,547

事業利益計

87,953

5.8

163,617

8.9

75,664

86.0

本社部門損益等

29,606

35,330

5,724

19.3

税引前利益

117,559

7.7

198,947

10.8

81,388

69.2

 

(注)当連結会計年度よりレポーティングセグメントの区分を変更しています。また、当第4四半期連結会計期間より、一部の副産物売上高については、計上先を「その他の事業」から各レポーティングセグメントに変更し、当連結会計年度より適用しています。これらの変更により、前連結会計年度の経営成績についても同様の区分に組み替えて表示しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記6.セグメント情報」を参照ください。

 

l.本社部門損益等

  本社部門損益は、金融資産に係る収益や、各セグメントに対して本社部門から提供される経営管理サービスに伴う収入等から構成されます。

  当連結会計年度は35,330百万円の収益となり、前連結会計年度の29,606百万円の収益と比較し、5,724百万円(19.3%)増加しました。AIやIoTの活用により生産性向上を図るデジタルトランスフォーメーションの推進に係る費用が増加した一方で、関係会社の清算に伴う収益の計上により増益となりました。

m.生産、受注及び販売の実績

レポーティングセグメント別受注高

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

(%)

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

コアコンポーネント

425,962

27.8

529,418

28.4

24.3

 

産業・車載用部品

134,035

8.7

181,780

9.8

35.6

 

半導体関連部品

266,775

17.4

320,360

17.2

20.1

 

その他

25,152

1.7

27,278

1.4

8.5

電子部品

271,526

17.7

360,848

19.4

32.9

ソリューション

852,612

55.5

981,608

52.8

15.1

 

機械工具

196,668

12.8

254,068

13.7

29.2

 

ドキュメントソリューション

318,009

20.7

365,986

19.7

15.1

 

コミュニケーション

245,989

16.0

253,880

13.6

3.2

 

その他

91,946

6.0

107,674

5.8

17.1

その他の事業

11,269

0.7

18,638

1.0

65.4

調整及び消去

△26,046

△1.7

△30,214

△1.6

受注高

1,535,323

100.0

1,860,298

100.0

21.2

(注)1  当社は、需要の増加や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績は販売実績に類似しています。このため、生産及び販売の実績は「k.レポーティングセグメント別営業概況」に関連付けて示しています。

 2  当連結会計年度よりレポーティングセグメントの区分を変更しています。この変更に伴い、前連結会計年度の受注高についても同様の区分に組み替えて表示しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記6.セグメント情報」を参照ください。

 

(3)流動性及び資金の源泉

a.資金の源泉

<当連結会計年度末の資金の状況>

  当社の主な資金の源泉は、営業活動によって獲得した現金です。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは201,957百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を414,129百万円保有し、定期預金等の換金性の高い金融資産も25,460百万円保有しています。

  そのうち、海外の連結子会社の保有する現金及び現金同等物と換金性の高い金融資産の合計額は、当連結会計年度末において219,958百万円になりますが、当社での使用を目的として、これらを当社へ還流することは現時点において想定していません。

  また、当連結会計年度末の運転資本(流動資産から流動負債を控除した金額)は、789,774百万円であり、自己資本比率(親会社の所有者に帰属する持分比率)は73.3%と引き続き強固な財務体質を保っています。

  このように強固な財務体質を維持していることから、借入による資金を比較的低いコストで調達することが可能です。当連結会計年度末の短期借入金、1年内返済予定長期借入金、並びに長期借入金の残高は96,545百万円であり、総資産に対し2.5%と引き続き低い依存度となっています。

  なお、当社の借入は、主として円建であり、一部の海外子会社にて米ドル建やユーロ建等の借入を行っています。

 

<当連結会計年度の資金需要>

  当社の当連結会計年度における主な資金需要は、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金、配当金の支払、並びに自己株式の取得等となりました。

  当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の117,106百万円と比較し、34,665百万円(29.6%)増加し、151,771百万円となりました。情報通信及び自動車関連事業における旺盛な部品需要に対応するため、積極的な設備投資を進めたことに伴い、主にコアコンポーネントセグメントにおける設備投資額が前連結会計年度に比べ増加しました。研究開発費は、前連結会計年度の75,457百万円と比較し8,666百万円(11.5%)増加し、84,123百万円となりました。

  また、当社は、当連結会計年度において、1株当たり170円、総額61,616百万円の配当金の支払いを行いました。

  さらに、2021年11月1日開催の取締役会において、株主還元の一環及び機動的な資本戦略の準備として自己株式の取得を決議し、総額24,096百万円の自己株式を取得しました。

  当社は、当連結会計年度において、これらの設備投資、研究開発並びに配当金の支払や自己株式の取得等の原資について、主に自己資金で賄いました。

 

<翌連結会計年度の資金需要>

  当社は、翌連結会計年度における主な資金需要として、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当金の支払等を見込んでいます。

  翌連結会計年度においては、200,000百万円の設備投資と95,000百万円の研究開発費を予定しており、これらの売上高に対する割合については、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。設備投資額は、5Gや半導体関連市場向け部品などの高需要部品への増産投資を中心として、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。また、研究開発費についても、事業拡大に向けて、新技術・新製品開発の強化を継続する考えであり、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。なお、設備の発注契約を含め、当社の契約債務の詳細については、後述の「d.契約債務」を参照下さい。

  また、配当は、2022年6月28日に開催された当社の定時株主総会において承認されており、1株当たり90円、総額32,301百万円の期末配当を実施します。

  当社は、営業活動上の運転資金に加えて、これらの設備投資、研究開発並びに配当等に係る資金需要については、自己資金及び金融機関からの借入にて対応する予定です。ただし、現時点では格付機関による信用格付に影響を与えるような外部からの資金調達を行う予定はありません。当社は、主要な取引先金融機関と良好な関係を構築していることから、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しています。

  なお、当社は、資金需要について営業活動等で獲得した自己資金で対応することを基本方針としていますが、既存事業の拡大及び新規事業の創出のための投資に多額の資金需要が生じる場合には、金融機関からの借入や、社債、株式の発行といった資金調達手段を有しています。

  また、当社の主要市場での需要動向が悪化した場合や、製品価格が当社の予想を大きく超えて下落した場合などにおいては、当社の財政状態や経営成績にも影響が及び、結果として当社の流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

b.キャッシュ・フローの状況

(百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減金額

営業活動によるキャッシュ・フロー

220,821

201,957

△18,864

投資活動によるキャッシュ・フロー

△183,792

△79,457

104,335

財務活動によるキャッシュ・フロー

△80,968

△111,473

△30,505

現金及び現金同等物に係る換算差額

11,046

16,375

5,329

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△32,893

27,402

60,295

現金及び現金同等物の期首残高

419,620

386,727

△32,893

現金及び現金同等物の期末残高

386,727

414,129

27,402

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・インは、前連結会計年度の220,821百万円に比べ18,864百万円(8.5%)減少し、201,957百万円となりました。これは主に当期利益が増加した一方、受注増加による増産に伴うキャッシュ・アウトが増加したことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の183,792百万円に比べ104,335百万円(56.8%)減少し、79,457百万円となりました。これは主に定期預金の解約及び有価証券の償還が増加したことに加え、事業取得による支出が減少したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の80,968百万円に比べ30,505百万円(37.7%)増加し、111,473百万円となりました。これは主に自己株式の取得による支出及び配当金の支払額が増加したことによるものです。

 

  なお、当連結会計年度において現金及び現金同等物は換算により16,375百万円増加しました。これは主に前連結会計年度末に比べ当連結会計年度末は欧米通貨に対し円安となったことによるものです。

 

  以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の386,727百万円から27,402百万円(7.1%)増加し、414,129百万円となりました。当社の保有する現金及び現金同等物は主に円建ですが、海外の連結子会社では主として、米ドルを含む外貨建の現金及び現金同等物を保有しています。

c.資産、負債及び資本

  当連結会計年度末における当社の資産合計は、前連結会計年度末の3,493,470百万円から423,795百万円(12.1%)増加し、3,917,265百万円となりました。

  現金及び現金同等物は、事業利益の獲得による収入及び減価償却費が設備投資、配当金支払並びに自己株式の取得による支出を上回ったことを主因として、前連結会計年度末から27,402百万円(7.1%)増加し、414,129百万円となりました。

  短期投資は、定期預金の満期解約を行ったことを主因として、前連結会計年度末から54,392百万円(68.1%)減少し、25,460百万円となりました。

  営業債権及びその他の債権は、前連結会計年度末から39,445百万円(11.6%)増加し、379,066百万円となりました。棚卸資産は、前連結会計年度末から107,152百万円(31.0%)増加し、452,506百万円となりました。ともに年度末の売上が拡大したことを主因として、増加しました。

  資本性証券及び負債性証券は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加等により、前連結会計年度末に比べて204,680百万円(16.2%)増加し、1,469,133百万円となりました。

  有形固定資産は、前連結会計年度末から73,066百万円(16.6%)増加し、512,175百万円となりました。なお、当連結会計年度の設備投資額は151,771百万円、減価償却費は90,229百万円でした。

  その他の非流動資産は、退職給付に係る資産の増加を主因として、前連結会計年度末に比べて12,471百万円

(26.5%)増加し、59,449百万円となりました。

 

  当連結会計年度末における当社の負債合計は、前連結会計年度末の877,360百万円から141,632百万円(16.1%)増加し、1,018,992百万円となりました。

  流動負債における借入金は、非流動負債における借入金からの振替を主因として、前連結会計年度末に比べて39,362百万円(98.4%)増加し、79,382百万円となりました。

  営業債務及びその他の債務は、受注拡大に伴う仕入増加を主因として、前連結会計年度末に比べて39,817百万円(21.7%)増加し、222,962百万円となりました。

  非流動負債における借入金は、流動負債における借入金への振替を主因として、前連結会計年度末に比べて40,725百万円(70.4%)減少し、17,163百万円となりました。

  繰延税金負債は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇に伴う時価総額の増加を主因として、前連結会計年度末から74,562百万円(24.1%)増加し、384,513百万円となりました。

 

  当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の2,616,110百万円から282,163百万円(10.8%)増加し、2,898,273百万円となりました。

  利益剰余金は、親会社の所有者に帰属する当期利益148,414百万円及び支払配当金61,616百万円を計上したことに加え、年金資産の時価評価損益等9,045百万円を計上したことにより、前連結会計年度末の1,750,259百万円から95,843百万円(5.5%)増加し、1,846,102百万円となりました。

  その他の資本の構成要素は、KDDI株式を含む保有株式の株価上昇を主因として、前連結会計年度末に比べて208,346百万円(31.0%)増加し、880,297百万円となりました。

  当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分比率は、前連結会計年度末の74.2%から0.9ポイント減少し、73.3%となりました。

d.契約債務

  当社の予定決済日ごとの契約債務は次のとおりです。

(百万円)

 

 

2023年3月期

2024年3月期-

2025年3月期

2026年3月期-

2027年3月期

2028年3月期

以降

合  計

短期借入金

30,000

30,000

支払利息(短期借入金)(注)

3

3

長期借入金

(1年以内返済予定分を含む)

49,382

12,040

4,235

888

66,545

支払利息(長期借入金)

(1年以内返済予定分を含む)

(注)

920

899

214

217

2,250

リース負債

18,453

17,224

7,373

13,285

56,335

設備の発注契約

93,719

2,595

96,314

合 計

192,477

32,758

11,822

14,390

251,447

(注)変動金利による借入金の支払利息については、当連結会計年度末の実質利率を使用して、将来見込まれる支払利息を算出しています。

  当社は翌連結会計年度において、確定給付制度に対し、10,341百万円を拠出する予定です。また、当社は、当連結会計年度末において、不確実な税務ポジションとして負債を931百万円計上していますが、将来の解決時期を合理的に見積ることができないため、上記の表には含めていません。

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。これらの連結財務諸表を作成する際には、見積り、判断及び仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断及び仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。

  当社の連結財務諸表における見積りは次の場合において会計上非常に重要な見積りとなります。すなわち、当社が見積りを行った時点ではその対象となった事象が非常に不確実な状況にも関わらず見積りを行う必要があった場合、また、当該期間において当社が実際に採用したものとは異なるが当社が採用することができた見積りがある、もしくは複数の会計年度にわたって変更が発生すると予想される見積りがあり、その見積りが当社の財政状態及び経営成績の開示に重要な影響を及ぼす場合です。当社は会計情報の開示を行う上で、下記の項目を重要な会計上の見積りとして認識しています。各項目の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」を参照ください。

  なお、新型コロナウイルス感染症の拡大を原因とする経済状況の悪化等の不確実性について、当社の財政状態及び経営成績に及ぼす影響は限定的であるため、当連結会計年度においては、連結財務諸表全体として重要な影響を及ぼすものではないと仮定して会計上の見積りを行っています。

  ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大により当社の想定を超える経済状況の悪化等の影響が生じた場合には、翌連結会計年度の重要な会計上の見積り及び判断に影響を及ぼす可能性があります。

 

a.棚卸資産の評価

  当社は、棚卸資産が適正な価値で評価されるように評価損の金額を見積っています。過剰、滞留、並びに陳腐化した棚卸資産に対して評価損を計上しています。また、棚卸資産は正味実現可能価額まで評価損を計上しています。当社は通常、一定の保有期間を超える棚卸資産を滞留もしくは陳腐化していると見なします。また、当社では、将来の需要予測や市況そして関与する経営者の判断のもとに、一定の保有期間に満たない棚卸資産についても評価損を計上することがあります。今後も市場の状況や製品の需要が当社の想定を下回れば、棚卸資産の評価損を計上しなければならない可能性があります。

b.有形固定資産及び無形資産の耐用年数

  有形固定資産は、事業ごとの実態に応じた見積利用可能年数または見積投資回収期間に基づき、定額法で償却しています。償却性無形資産は、資産の将来の経済的便益が消費されると予測される期間に基づき、定額法で償却しています。

  将来、技術革新等による設備の陳腐化や用途変更並びに事業環境の変化等による利用可能期間の見直しの結果、耐用年数を変更する場合には、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

c.有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

  当社は有形固定資産及び償却性無形資産について、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で、減損テストを行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損テストを行っています。減損損失は、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に認識しています。

  資産または資金生成単位の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値は、マネジメントが承認した事業計画を基礎としたキャッシュ・フローの見積額を、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率により現在価値に割り引いて算定しています。

  使用価値は、様々な仮定に基づき算定されているため、使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業環境の変化等が生じた場合には、減損損失が発生するリスクがあります。

d.償却原価で測定する金融資産の減損

  当社は主に営業債権等の償却原価で測定される金融資産について、回収可能性や信用リスクの著しい増加等を考慮のうえ、将来の予想信用損失を測定していますが、実際の損失が予想信用損失より過大または過少になる可能性があります。

e.金融商品の公正価値

  当社は特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

f.法人所得税費用

  当社は繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上、実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。

  当連結会計年度末において繰延税金資産を110,516百万円認識しています。当社は、当連結会計年度の税引前利益及び法人所得税費用と比較し、当該繰延税金資産が将来において合理的に実現するものと考えます。

  また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。

  当社は、当連結会計年度末において不確実な税務ポジションを総額で931百万円計上しています。当社は、法人所得税の不確実性に関する最終的な解決が将来の連結損益計算書へ重要な影響を及ぼすことはないと考えています。

g.確定給付制度

  確定給付制度において確定給付負債または資産の純額は、確定給付制度債務の現在価値から、制度資産の公正価値を控除して算定されます。

  確定給付制度債務の現在価値は数理計算上の仮定に基づき算定されます。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率などの基礎率についての見積り及び判断が求められます。

  当社は優良社債の利回り等を参考に割引率を決定します。昇給率は主に過去の実績、近い将来の見通し、物価変動などにより決定されます。当社は毎年、数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じてその時点の市場環境をもとに調整を行っています。

  日本及び世界的な経済の停滞により、当社が割引率を引き下げる場合には、確定給付制度債務及び関連する勤務費用等が増加します。

h.引当金及び偶発債務

  当社は通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社は、法律専門家と相談の上で、こうした偶発債務が重要な結果を引き起こす可能性を予測しています。当社は、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当該債務を計上します。見積りを行う際、当社は受けている訴訟の進捗、及び他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は、見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。

 

i.収益認識

  当社は、情報通信、自動車関連等の市場における販売を主な収益源としています。当社におけるレポーティングセグメントは、「コアコンポーネント」、「電子部品」、「ソリューション」で構成されており、事業単位並びに主要事業及び子会社は次のとおりです。

 

レポーティングセグメント及び事業単位

主要事業及び子会社

コアコンポーネント

 

産業・車載用部品

ファインセラミック部品、自動車部品、光学部品

半導体関連部品

セラミック材料、有機材料

その他

医療機器、宝飾・応用商品

電子部品

電子部品、Kyocera AVX Components Corporation

ソリューション

 

機械工具

機械工具

ドキュメントソリューション

情報機器(京セラドキュメントソリューションズ㈱)

コミュニケーション

通信機器、

情報通信サービス(京セラコミュニケーションシステム㈱)

その他

ディスプレイ、プリンティングデバイス、

スマートエナジー

 

  なお、当社において、顧客への販売は、顧客と締結した取引基本契約書及び注文書に記載された条件に基づいて行われます。当該契約書及び注文書には、価格、数量、並びに所有権の移転時期が記載されています。

 

(a) 販売奨励金

  「電子部品」セグメントにおいて、各種電子部品を販売する代理店への販売については、以下の様々な販促活動が定められており、顧客との契約において約束された対価から販売奨励金を控除した金額で収益を測定しています。

ⅰ.ストック・ローテーション・プログラム

  ストック・ローテーション・プログラムとは、品質に問題のない在庫について、直近6ヵ月の売上高に対して特定の比率を乗じ算出される金額分を、代理店が半年毎に返品することが可能な制度です。売上高に対するストック・ローテーション・プログラムの引当金は、現時点までの推移、現在の価格と流通量の情報、市場の特定の情報や売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて算出した代理店の売上高に対する比率に基づき、収益認識時点で算定し、計上されており、これらの手続きには、重要な判断を必要とします。当社は、ストック・ローテーション・プログラムによる将来の返品について妥当な算定ができていると考えており、これまでの実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。なお、製品が返品され、検収された時点で、代理店に対する売掛金を減額しています。

ⅱ.シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム

  シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム(以下、シップ・アンド・デビット)は、代理店が顧客への販売活動における市場での価格競争に対して代理店を補助する仕組みです。シップ・アンド・デビットが適用されるためには、代理店が在庫から顧客へ販売する特定部分についての価格調整を、代理店が要求する必要があります。シップ・アンド・デビットは、現在及び将来の代理販売において、代理店が顧客へ販売する特定部分について適用されることがあります。IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に準拠し、当社は代理店に対して収益を認識した時点で、その代理店への売上高にシップ・アンド・デビットが適用される可能性を考慮して、その売上高に関連する代理店の将来の活動に対して変動対価を見積り、計上しています。当社は、当該期間における売上高、代理店に対する売掛金の残額、代理店の在庫水準、現時点までの推移、市場状況、設備製造業やその他顧客に対する直接的な販売活動に基づく価格変動の傾向、売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて、売上高に対する変動対価を見積り、計上しています。これらの手続きは慎重な判断のもとで行われており、またその結果、当社はシップ・アンド・デビットにおける変動対価について、妥当な算定、計上ができていると考えています。これまでの当社の実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。

 

(b) リベート

  「機械工具」事業及び「ドキュメントソリューション」事業における代理店への販売において、当社は、定められた期間内に予め定めた売上目標を達成した代理店に対し、現金でリベートを支払っています。このリベートについては、収益を認識した時点で見積った各代理店の予想販売額に基づき、リベート額を算定して、これを収益から控除しています。

(c) 返品

  当社は、収益を認識した時点で過去の実績に基づいて返品による損失額を見積り、収益から控除しています。

(d) 製品保証

  当社は、主に「ドキュメントソリューション」事業において、製品に対して通常1年間の製品保証を提供しています。また、最終消費者への販売において、1年間の保証期間終了後、延長保証契約を締結する場合があります。この延長保証契約については、別個の履行義務として識別し、取引価格の一部を当該履行義務に配分した上で、延長保証期間にわたり収益を認識しています。

  また、製品販売、製品保証など複数の財またはサービスを提供する複数要素取引に係る契約については、契約に含まれる履行義務を識別し、契約の対価を配分する必要がある場合には、取引価格を独立販売価格に基づき配分しています。独立販売価格は、類似する製品またはサービスの販売価格やその他の合理的に利用可能な情報を参照して算定しています。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1)技術受入契約

会社名

相手先名

国  名

内  容

契約期間

当社

Qualcomm,Inc.

米国

携帯端末に関する特許実施権の許諾

1996年8月31日から

対象特許の満了日まで

 

(2)相互技術供与契約

会社名

相手先名

国  名

内  容

契約期間

京セラドキュメント

ソリューションズ㈱

キヤノン㈱

日本

電子写真技術に関する特許実施権の許諾

2012年4月1日から

対象特許の満了日まで

 

5 【研究開発活動】

  当社は、5G、IoT、ADAS、エネルギーマネジメント、デジタルヘルスケア等の普及に伴う事業機会の獲得に向け、社内外の連携強化による新技術、新製品開発に努めています。具体的には、事業ごとに分散していた開発拠点をテーマ別に再編し、好立地に拠点を開設することで、技術力の強化や技術者の獲得、オープンイノベーションの推進に取り組んでいます。

  また、2021年4月に実施したセグメント再編により、グループ間連携を強化し、一層の開発のスピードアップに努めています。

  各レポーティングセグメントにおける主な活動は次のとおりです。

(1)コアコンポーネント

  当レポーティングセグメントでは、創業以来培ってきたファインセラミックスをはじめとする材料、プロセス、設計、加工技術等のコア技術を活かし、産業機械、自動車関連、5Gや半導体などの幅広い市場向けに高付加価値製品の開発に努めています。また、総合力を生かした新製品、新事業の開発強化に向けて、各部門を横断したプロジェクトを進めています。

  当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。

 

a.産業・車載用部品事業

  今後も拡大が見込まれる半導体製造装置市場向けには、微細配線、三次元構造等、高集積化の進む次世代装置に向けた部品や材料の開発に取り組むとともに、高温対応を可能にする優れた熱伝導性や機械特性を持つ窒化物セラミックスの開発を、グループ内だけでなく外部と共同で実施する等、社外リソースも積極的に活用して進めています。

  自動車関連市場向けには、自動車の安全性向上に寄与する高度な画像センシング技術を活用した車載カメラ等の開発に取り組んでいます。

  また、ファインセラミック技術を活かし、環境・エネルギー市場で新たなクリーンエネルギー供給システムとして普及が期待される、SOFC向けセルスタックの高効率化に向けて開発を強化しています。

 

b.半導体関連部品事業

  情報通信市場においては、スマートフォンやタブレット端末等の機器の高機能化と同時に小型・薄型化のニーズが高まっており、これに伴い、搭載される電子部品の小型化や半導体の微細化が進んでいます。また、IoTの進展も加わり、5G等の高速かつ大容量の通信インフラの整備が加速しています。自動車関連市場においてはADASの進展による電装化や低消費電力化への一層の対応が求められています。さらに、これらの主要市場での各種センサーの需要が増加しています。

  このような市場動向に対し、セラミックパッケージ事業においては、微細配線が可能で、かつ高強度、高剛性の超小型・薄型の電子デバイス用及びセンサー用パッケージや、5G等のより高い周波数に対応する光通信用パッケージ、高輝度な自動車ヘッドライト向けに放熱性や耐久性に優れたLED用パッケージ等の開発に取り組んでいます。

  有機基板事業においては、各市場のニーズに対応したフリップチップパッケージやモジュール基板の開発に取り組んでいます。情報通信市場向けには、データ伝送の高速大容量化対応として、高速信号・広帯域メモリー接続に適した大型高多層製品のパッケージを、ADAS向けには統合ECU用の高信頼パッケージ及びミリ波レーダー用基板の開発を中心に取り組んでいます。

 

c.その他

  主に人工関節や人工歯根を展開している医療機器事業では、患者様のQOL(生活の質)の向上に貢献できる製品開発を進めています。具体的には、人工関節の緩みを抑え長寿命化を実現する3D積層造形技術や、抗菌性を付与した製品開発に取り組んでいます。これら技術の他分野での展開に向けて、社外の研究機関とも連携して研究開発を進めています。また、からだへの負担が少ない再生医療事業の拡大に向けて、豪州Regeneus社と細胞製剤に関する技術提携並びにライセンス契約を締結する等、新規医療分野への取り組みを積極的に推進しています。

 

(2)電子部品

  当レポーティングセグメントでは、京セラ㈱の電子部品事業とKyocera AVX Components Corporationの技術融合による新製品開発の強化に努めています。

  5GやIoT関連製品の普及に伴い、スマートフォンをはじめとする通信端末や基地局の高機能化に加え、マルチバンド化により部品の小型化や高機能・高信頼性等が求められています。これらの要求に対し、小型高容量で温度や湿度への信頼性を高めたセラミックコンデンサ、小型低損失かつ高信頼性のSAWデバイス、小型低背化、高周波特性の水晶部品やシリコンMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子、狭ピッチ・低背で高速伝送を可能にするコネクタ、高効率なアンテナ等の開発を進めています。

  自動車や産業機器市場向けには、高温信頼性や耐圧性を高めたセラミックコンデンサやコネクタ、小型・高放熱のディスクリート及びパワーモジュールを含むパワー半導体に加え、各種制御部品等の開発を行っています。

 

(3)ソリューション

  当レポーティングセグメントでは多様な事業を有している特長を活かし、ビジネスモデルや開発モデルの共有等を通じ、相乗効果の最大化に取り組んでいます。これまで各事業で培ってきた技術の活用により、IoTやローカル5G、モビリティ、エネルギー関連等において、イノベーションの創出に向けた研究開発を進めています。

  当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。

 

a.機械工具事業

  産業機械や建築市場への事業領域の拡大に取り組んでいます。自動車やエネルギー、インフラ、航空機分野等の幅広い市場での金属加工等に使用される切削工具では、材料技術の強化によりユーザーの生産性向上に寄与する高品質・高精度な製品開発に取り組んでいます。また、空圧・電動工具では、京セラグループが有する多様な技術の活用による新製品開発を推進しています。

 

b.ドキュメントソリューション事業

  当社製品の特長である環境性と経済性に優れた製品の開発を進め、競合他社との差別化を図っています。プリンター及び複合機等のオフィス向け製品については、低ランニングコストと高い環境性能の両立を図るため、長寿命な機器及び、廃棄を極少に抑えた消耗部品の開発を進めています。さらに、高品質なトナー開発にも取り組み、付加価値の向上に努めています。

  商業用インクジェット事業では、印刷市場に新しい価値を提供できるよう、高画質・高耐久性・高生産性と同時に、多品種大量印刷ニーズの増加に伴うバリアブル印刷やカスタマイズ印刷に対応した製品の開発に取り組んでいます。また、インクジェットプリントヘッド事業で培ったヘッド技術と、ドキュメントソリューション事業のインク技術に加え、商業用インクジェットの開発で培ったノウハウを活かし、デジタル捺染機の市場投入に向けた製品開発を進めています。

  ドキュメントソリューションサービス関連では、モバイル機器やクラウド環境、並びに顧客が所有するドキュメント管理システムとの連携によって、情報共有や業務効率に貢献するアプリケーションソフトウェア等の開発を進めています。また、企業内の情報を電子化し、包括的かつ効率的に管理・運用するECM事業をさらに強化し、既存事業との融合による新サービスの開発に取り組んでいます。

 

c.コミュニケーション事業

  通信機器事業については、コンシューマ市場に、防水、防塵、耐衝撃性等の独自機能を活用した5G対応スマートフォン端末の開発を行うと同時に、様々な業種向けに専用タブレット端末や5Gコネクティングデバイスの開発を行っています。さらに、当社が有している部品や端末、システム技術、並びに通信端末事業で培った無線通信技術の活用とともに外部機関との連携による新技術の開発を進めています。ADASや自動運転システムの高まりに伴い需要の増加が期待される車載用通信機器の開発にも取り組んでいます。

  情報通信サービス事業においては、多様な端末やネットワークを通じて集まるデータの収集・管理・活用を行うプラットフォームや、セキュリティ製品・サービスの開発等、DXの推進による顧客ニーズの複雑化・高度化への対応を進めています。また、企業等のビジネス分野で利用が拡大するAIの分野についても、技術及びサービスの開発を強化しています。

 

d.その他

  スマートエナジー事業においては、太陽光発電等の再生可能エネルギーの自家消費ニーズに対応し、エネルギーを効率良く使用するための製品及びシステムの開発に努めています。太陽電池モジュールの品質向上に取り組むとともに、高い安全性、長寿命、低コストの蓄電池や、小型・高効率発電のSOFC、電気を効率良く活用するためのエネルギーマネジメントシステムの開発に注力しています。さらに、電力自由化に伴うデマンドレスポンスや分散型電源構築、VPP制御等、事業領域の拡大に向けた技術開発にも取り組み、トータルエネルギーソリューションビジネスの構築に努めています。

  通信・交通インフラシステム事業においては、長年培ってきた通信インフラ技術を応用したV2I(Vehicle to Infrastructure)路側機や、5Gサービスが普及しにくく、設置コストが高くなる地域に対して、迅速かつ安価に配備可能な5Gミリ波バックホールシステム等の実証実験を行っています。また、5Gミリ波や6Gのエリア拡大に貢献する透過型メタサーフェス屈折板等の開発にも取り組んでいます。

 

  上記の各レポーティングセグメントでの取り組みに加え、その他の事業においては、中長期的な成長に向けて、人材確保問題の解決に貢献する独自のAI技術等を活用したAI協働ロボット・システム事業や、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウム(GaN)デバイスの応用システムの開発等、社会課題の解決に資する新規事業の創出に取り組んでいます。

 

 

レポーティングセグメント別研究開発費

 

 

(百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率(%)

 

コアコンポーネント

15,611

16,426

5.2

 

電子部品

15,456

13,499

△12.7

 

ソリューション

38,799

42,612

9.8

 

その他の事業

5,591

11,586

107.2

 

研究開発費

75,457

84,123

11.5

 

売上高比率

4.9%

4.6%

(注)当連結会計年度よりレポーティングセグメントの区分を変更しています。この変更に伴い、前連結会計年度の研究開発費についても同様の区分に組み替えて表示しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記6. セグメント情報」を参照ください。