第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)経営の基本方針

  当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。

 

(2)目標とする経営指標

  当社は、2024年3月期から2026年3月期までの中期経営計画(2026年3月期売上高 2兆5,000億円、税引前利益 3,500億円、税引前利益率14.0%、ROE 7.0%以上)を策定しましたが、部品事業の低迷を主因に遅れが生じています。当社は引き続き高収益企業の実現に向けて、二桁の税引前利益率の達成及び持続的な向上、並びにROEの改善を目指します。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題等

   近年、AIや5G/6G等の新技術が急速に進展しており、これらの新技術はスマートフォンやサーバー等の情報通信分野だけでなく、自動車やファクトリー・オートメーション(FA)等の幅広い産業へ波及していくことが予想されます。このような見通しに伴い、当社が手掛けるファインセラミック部品や電子部品等においても中長期的な需要の拡大が期待されるとともに、客先からの技術要求の更なる高度化が想定されます。また、技術の進化と併せて、脱炭素等の環境対応や労働人口減少に対する生産現場のスマート化の進展等、様々な社会課題の解決に貢献する技術やサービスへのニーズが高まっています。

  当社はこれらの市場動向を事業機会として捉え収益性の向上を図るべく、当社が強みを有する事業へ一層注力するとともに、強固な財務基盤を活用し、社会課題の解決に貢献する製品やソリューションの展開に努めてまいります。

 

  当社が対処すべき課題は次のとおりです。

 

① 経営改革による高収益企業への回帰

  当社は、高収益企業への回帰に向けて道筋をつけることを喫緊の課題と認識しており、早期に税引前利益率を二桁へ改善させることに取り組んでいます。短期的な施策としては、2026年3月期を構造改革期と位置づけ、より抜本的な施策の策定及び実施に向けて、代表取締役及び経営改革担当役員並びにコーポレート担当役員が中心となる経営改革プロジェクトを発足させました。また、当プロジェクトの客観性及び専門性を高めるため、アドバイザーとして社外取締役及び社外のコンサルティングファームが参画する体制としました。

  当社は当プロジェクトのもと、事業ポートフォリオの再編を進め、より一層コア事業に経営資源を集中することで、高収益企業への変革を図ります。

 

  コアコンポーネント及び電子部品セグメントの部品事業においては、半導体部品有機材料事業及びKyocera AVX Components Corporation (以下「KAVX」)の早急な黒字化に加え、事業ポートフォリオの再構築により二桁の税引前利益率への改善を図ります。当社が高いシェアを有するセラミック関連事業をコア事業と位置づけ、経営リソースを集中的に投じるとともに、開発力の強化及び生産能力の拡張により、市場シェア及び収益拡大を図ります。

  ソリューション事業においては、各事業の収益性の底上げを図るとともに、既存製品の販売を主流とする事業形態から、ユーザー/社会が抱える課題を解決するソリューションを提供することを重視した事業ポートフォリオへの再編を図ります。また、これまで培ってきた「モノづくり」の強化に加え、共通のビジネスモデル/プラットフォームの構築により、「モノ売り」だけでなく「モノ×コト売り」を推進し、事業の成長を目指します。

 

② 資本戦略の見直し

  当社は、事業面での経営改革とともに、資本戦略面での改革も実施します。資本効率の向上に向けては政策保有株式の縮減を進めており、株式売却により得られる資金を注力分野へのM&Aや設備投資、研究開発活動等の成長投資に活用していく考えです。また、計画的な自己株式の取得により、資本構成の更なる適正化と株主還元の充実化を推進していきます。

 

③ サステナブル経営の推進

  当社は持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応並びにコーポレート・ガバナンスの強化に取り組みます。

  環境面では脱炭素社会の実現を目指し、自社製品やサービスの展開による再生可能エネルギーの普及に努めています。また、温室効果ガス排出量削減目標を設定し、SBT(Science Based Targets)認証を取得するとともに、2051年3月期にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。

  社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」の実現を目指し、多様な人材の活躍や従業員エンゲージメント向上への積極的な取り組みを進めています。

  ガバナンス面では、持続的な企業価値向上を目指し、取締役会や指名報酬委員会の多様性の追求や実効性の向上、役員報酬体系の見直し等について継続検討し、ガバナンス強化を図ります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。

 

 当社は、創業以来、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念のもと、社会と京セラグループの双方が持続的に発展できるよう、事業を通じた社会課題の解決に向けて取り組んでいます。また「社会との共生。世界との共生。自然との共生。共に生きる(LIVING TOGETHER)ことをすべての企業活動の基本に置き、豊かな調和をめざす。」という経営思想のもと、持続可能な社会を目指し、サステナブル経営を推進しています。なお、サステナビリティに関する取り組みの詳細については、当社ウェブサイト及び統合報告書を参照ください。
サステナビリティウェブサイト:https://www.kyocera.co.jp/sustainability/index.html
統合報告書:https://www.kyocera.co.jp/sustainability/catalog/index.html

 

(1)気候変動への対応

a. ガバナンス

 当社は、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして位置付けており、2020年3月よりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、ガバナンス体制の確立、リスク管理、戦略、指標及び目標の設定を行い、気候変動対策を推進しています。トップマネジメントが出席する「京セラグループサステナビリティ委員会」において、気候変動に関する目標や対策について審議し、決定しています。気候変動対策について取締役会に報告するとともに、グループの経営幹部が出席する国際経営会議にて共有しています。また、「京セラグループサステナビリティ委員会」の下部組織として対策を推進する長期環境目標推進タスクフォースを設置し、京セラグループ長期環境目標の達成に向けて取り組んでいます。

0102010_001.jpg

 

b. リスク管理

 当社は、気候変動に関するシナリオ分析を実施し、リスク及び機会の識別、評価並びに管理を行っています。リスクの評価手法として、気候変動に関わるリスクと機会をバリューチェーンごとに抽出した上で、移行リスクと物理リスクに分類するとともに、社会情勢及び当社の事業への影響度を考慮し、重要度を評価しています。

 

c. 戦略

 当社は、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)等による情報に基づき、「1.5℃シナリオ(注1)」及び「2.6℃シナリオ(注2)」を用いて、2030年の自社の事業への影響及び顧客の業界の変化を把握するとともに、京セラグループの気候変動に関するリスク及び機会を分析しています。特に、当社が展開している再生可能エネルギー関連事業については、脱炭素化の動向が重要であるため、1.5℃シナリオにおける各種エネルギーの普及パターン等を設定し、それぞれのリスク及び機会が与える財務上の影響額を評価・分析しています。また、その分析結果に基づき、2031年3月期温室効果ガス排出量削減目標の達成、2051年3月期カーボンニュートラルの実現を目指しています。

 

(注1)2100年に世界平均気温が産業革命以前に比べ1.0~1.8℃上昇するシナリオ

(注2)2100年に世界平均気温が産業革命以前に比べ2.1~3.5℃上昇するシナリオ

 

d. 指標及び目標

 京セラグループの長期環境目標は次のとおりです。なお、温室効果ガス排出量の削減目標については、SBTの認証を取得しています。

 

・温室効果ガス排出量(Scope1,2)削減目標(1.5℃水準) :2031年3月期46%削減(2020年3月期比)

・温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)削減目標(1.5℃水準):2031年3月期46%削減(2020年3月期比)

・再生可能エネルギー導入量              :2031年3月期20倍(2014年3月期比)

・2051年3月期カーボンニュートラル

(注)Scope1:燃料使用に伴う直接排出

   Scope2:外部から購入する電力や熱の使用に伴う間接排出

   Scope3:Scope1、2以外の間接排出(原料調達、輸送、使用、廃棄、従業員の通勤、出張等)

(2)人的資本・多様性に関する取り組み

 京セラグループの発展を支えてきたものは、常に高い目標を持ち、チャレンジし続ける企業風土と従業員であり、その根幹にあるものは、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とした経営哲学「京セラフィロソフィ」です。京セラグループでは、共通の考え方である「京セラフィロソフィ」の継承・実践による経営理念の浸透に加え、業務を遂行する上で必要な専門知識・技術の習得等、従業員の能力開発に注力しています。また、多様な人材が働きがいをもって活躍できる職場環境の整備に取り組むことも重要と考えています。

 

a. ガバナンス及びリスク管理

 当社は、人材の確保及び育成に関するリスクをコーポレートリスクとして位置付け、「リスクマネジメント委員会」にて、方針の決定や対策の進捗状況のレビューを実施しています。

 

b. 戦略

(a)経営哲学「京セラフィロソフィ」の理解・実践を通じた人材育成

 当社は、京セラフィロソフィの教育及び浸透を図るため、代表取締役会長を委員長とした「全社フィロソフィ委員会」を設置しています。当委員会は京セラグループ全社のフィロソフィ教育方針を策定するとともに、フィロソフィの理解促進及び実践に向けた施策を審議・決定しています。また、各部門においてフィロソフィ推進委員を選任し、経営哲学が息づく企業文化の醸成と継承を図る体制を構築しています。

 当社は、全社フィロソフィ委員会の方針に則り、グローバルに京セラフィロソフィ教育を展開しています。経営幹部には、代表取締役会長とフィロソフィをテーマに対話するセッションを開催し、フィロソフィを兼ね備えた次代の経営リーダーの育成を図っています。さらに、階層別研修の実施やフィロソフィ手帳の配布、フィロソフィ実践体験談の優秀作品の表彰を行うなど、フィロソフィの浸透を図ることにより、経営理念の実現に貢献する人材育成に努めています。

 

 0102010_002.jpg

 0102010_003.png

グローバルフィロソフィセミナー

(代表取締役会長と海外経営幹部)

京セラフィロソフィ手帳

(多言語に翻訳された手帳を海外従業員にも配布)

 

(b)人材の確保及び育成

 今後、人口減少及び労働力不足が予想される中、当社は優秀な人材の確保・育成を重要課題と捉え、技術者等の採用強化に加え、海外現地法人におけるローカルマネジャーの育成等に積極的に取り組んでいます。また若手社員を中心としたグローバル人材の育成では、海外現地法人と相互に人材交流を行う1年間のトレーニープログラムを実施しており、親会社から海外現地法人への派遣だけなく、海外現地法人よりエンジニアや専門スタッフの受け入れも行っています。

 さらに、当社は業務の多様化に幅広く対応するため、マネジメント、専門技術・技能、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、語学等、多岐にわたる研修を体系的に実施していることに加え、他部門の業務を一定期間経験し、新たな視点の獲得や人脈形成を目的とした「ジョブトレーニー制度」の導入等、様々な人材育成の施策を実施しています。

 

(c)多様な人材の活躍及び働きやすい職場環境の整備

 当社は、従業員一人ひとりが持つ個性・価値観を尊重し、多様な人材が働きがいをもって活躍できることが重要であると考えています。この考え方に基づき、従業員エンゲージメントの向上や、フレックスタイム制度等の柔軟な勤務体系の導入、在宅勤務制度等による仕事と育児・介護との両立支援を推進しています。

 また、女性管理職比率及び男性の育児休業取得率の向上に向けて、管理職の理解促進を図るための研修に加え、女性管理職候補者向け研修やロールモデル座談会、男性の育児休業取得者向けセミナーの開催等を実施しています。

 

c. 指標及び目標

 上記「b.戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、京セラグループの指標及び目標は「京セラフィロソフィの更なる浸透・実践の推進」です。

 また、京セラグループは会社ごとに異なる事業を営んでいることから、上記を除き京セラグループにおける指標及び目標は一律ではなく、各社にて設定しています。提出会社及び国内の主要な連結子会社における指標及び目標並びに実績は次のとおりです。

 

 提出会社

指標及び目標

実績(当事業年度)

女性管理職比率    :2026年3月末まで8

5.8

男性の育児休業取得率 :2026年3月末まで50

34.2

 

 京セラドキュメントソリューションズ㈱(単体)

指標及び目標

実績(当事業年度)

・採用した労働者に占める女性比率:20%以上の維持

28.4%

・有給休暇取得率        :2025年3月末までに75%以上

73.0%

 

 京セラドキュメントソリューションズジャパン㈱

指標及び目標

実績(当事業年度)

・採用した労働者に占める女性比率:40%以上の維持

25.3%

・有給休暇取得率        :2025年3月末までに70%以上

55.1%

 

 京セラコミュニケーションシステム㈱(単体)

指標及び目標

実績(当事業年度)

・女性管理職比率    :2026年3月末までに15%以上

15.9%

・男性の育児休業取得率 :1ヵ月以上の育児休業取得率を2026年3月末までに

60%以上

61.4%

 

(3)人権に関する取り組み

a. ガバナンス及びリスク管理

 世界的な人権に対する意識の高まりにより、自社だけでなくサプライチェーンにおける人権問題にも対応が求められていることから、当社は人権に関するリスクをコーポレートリスクとして位置付け、「リスクマネジメント委員会」にて、方針の決定や対策の進捗状況のレビューを実施しています。

 

b. 戦略並びに指標及び目標

 当社は従業員、顧客、株主・投資家並びに取引先等、京セラグループに関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重し、人権リスクの軽減を推進しています。当社はEU紛争鉱物規則等の法規に対応しており、調達する鉱物に紛争や人権侵害等のリスクが存在するか調査し、リスク評価や是正措置を行うなど、人権に関するリスクの軽減やサプライチェーンの高い透明性の実現に取り組んでいます。また、専門機関と連携しながら人権デューディリジェンスを実施しており、人権リスクの特定、実態調査、是正・軽減に向けた取り組みを推進しています。2024年8月には取締役会決議を経て、「京セラグループ人権方針」の改定を行いました。経営トップコミットメントのもと、人権尊重に関する取り組みを強化・推進していく姿勢を反映するとともに、国際的な指導原則にも沿った内容としています。さらに、人権尊重の活動の一環としてRBA(Responsible Business Alliance)への加盟や、当社及びサプライチェーンに対するハラスメント・差別の禁止教育等を実施しています。

 

3 【事業等のリスク】

  当社は、グローバルなリスクに対応するため、リスクマネジメント体制の整備やコーポレートリスクのマネジメントプロセスを設定し、グループ全体のリスクマネジメント活動を強化しています。また、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは次のとおりであり、すべてのリスクを網羅的に記載しているわけではありません。なお、当該事項は、当社が有価証券報告書提出日時点において判断したものです。

 

(1)リスクマネジメント体制

 当社は、代表取締役社長を委員長とした「リスクマネジメント委員会」を定期的に開催し、リスクマネジメント方針の検討、コーポレートリスク及びリスクオーナーの審議・選定を行うとともに、対応策の進捗状況のレビューを実施しています。当委員会にて選定したコーポレートリスクに関する議案を取締役会にて決議するとともに、各主管部門、工場・事業所並びにグループ会社に対して方針の共有を行っています。また、専門部署であるリスクマネジメント部を設置することによりリスクマネジメント体制の強化を図っています。

 

リスクマネジメント体制図

0102010_004.png

 

(2)コーポレートリスクのマネジメントプロセス

 京セラグループでは、リスクアセスメントを実施し、主要リスクを認識、分析、評価していることに加え、外部専門家によるレポート等で注目されているリスクについても分析・評価を行っています。グループ内の主要リスク及び外部環境で注目されているリスクの中から、経営への影響が特に大きく、対応が必要なコーポレートリスクを特定し、リスク対策の実施やレビュー、対策の改善等、以下のPDCAサイクルを推進しています。

 

コーポレートリスクのマネジメントプロセス図

0102010_005.png

 

 

(3)事業等のリスク

 上記リスクマネジメントプロセスにより特定されたコーポレートリスク及びその対応策は次のとおりです。

 

[コーポレートリスク]

a. 国際的な事業活動に関するリスク

 当社は、日本以外に米国や欧州、アジア地域をはじめとする世界各国で事業活動や投資を行っています。これらの海外市場において、当社にとって望ましくない政治的・地政学的・経済的要因により、経済安全保障政策・投資規制・製品や原材料の輸出入の規制・収益の本国送金規制・関税の引き上げ等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、刻々と変化する国際情勢を把握し、カントリーリスクのモニタリングや重要技術情報の流出防止の取り組み強化など、能動的なリスク回避策をとっています。投資規制・収益の本国送金規制については、当社及びグループ各社において規制変更の情報を早期に収集し、当該国で保有する会社財産を国外に退避させるなど、適切に対処するよう取り組むことで、そのリスクの予防・回避に努めています。また、生産拠点についても、国や地域の社会情勢の変化に伴う影響を最小化するため、日本、中国、ベトナム等、グローバルな生産体制の構築を図っています。

 

b. 人権に関するリスク

 世界的な人権に対する配慮の高まりにより、自社だけでなくサプライチェーンにおける人権問題にも配慮が求められています。そのため、これに関する予期できない法律・規制の変更等のリスクやレピュテーションリスクに直面する可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、従業員、顧客、株主・投資家並びに取引先等、京セラグループに関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重し、人権リスクの軽減を推進しています。当社はEU紛争鉱物規則等の法規に対応しており、調達する鉱物に紛争や人権侵害等のリスクが存在するか調査し、リスク評価や是正措置を行うなど、人権に関するリスクの軽減やサプライチェーンの高い透明性の実現に取り組んでいます。また、専門機関と連携しながら人権デューディリジェンスを実施しており、人権リスクの特定、実態調査、是正・軽減に向けた取り組みを推進しています。2024年8月には取締役会決議を経て、「京セラグループ人権方針」の改定を行いました。経営トップコミットメントのもと、人権尊重に関する取り組みを強化・推進していく姿勢を反映するとともに、国際的な指導原則にも沿った内容としています。さらに、人権尊重の活動の一環としてRBA(Responsible Business Alliance)への加盟や、当社及びサプライチェーンに対するハラスメント・差別の禁止教育等を実施しています。

 

c. 情報セキュリティに関するリスク

 当社は、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報、機密情報を保有しています。これらの情報については、情報機器の故障やソフトウェアの不具合、マルウェアの侵入や高度なサイバー攻撃による不正アクセス等により、情報漏洩や改ざん、滅失、システム停止による事業停止等の被害を受けるリスクがあります。このような事態が発生した場合には、更なるセキュリティ対策や損害賠償等の多額の費用負担により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性及び社会的信用や事業競争力の低下につながる可能性もあります。

 また当社は、業務効率や生産性の向上、イノベーションの促進等を実現するため、生成AIをはじめとする各種AI技術の積極的な導入を行っています。AIについては、秘密情報や個人情報の入力による情報漏洩、誤情報の生成、知的財産権侵害、倫理的問題等が懸念されており、これらの問題への対策が不十分な場合、信頼回復のための多額の費用負担や事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、すべての情報資産の重要性の理解と適切な利用・管理に努め、社会全体の信頼に応えるため、目的やセキュリティ対策・行動指針等を定義した「情報セキュリティ基本方針」を定め、継続的に情報セキュリティのリスク予防や軽減に取り組んでいます。また、経営戦略、商品開発、各種ノウハウ、技術等を会社の重要資産と認識した上で、京セラグループ統一の「情報セキュリティ規程」を制定し、情報セキュリティに関する管理体制を整備しています。さらに、情報セキュリティを維持・確保するために、従業員が遵守すべき事項を定めた規則・ガイドラインを制定し、適宜見直しを行い、従業員への教育を実施しているほか、ネットワークやIT資産等に対するセキュリティ対策、事業継続計画(BCP)を策定し、情報セキュリティの強化を図っています。外部からのマルウェアの侵入やサイバー攻撃等に対しては、システムの脆弱性対策、システム監視による侵入防止策、インシデント発生時の早期検知、対処、復旧策を講じています。

 個人情報については、プライバシーを構成する重要な情報であるとの認識のもと、「個人情報保護方針」や「個人情報保護規程」等の各種規程を制定し、利用目的の明示や管理手順の明確化を行うとともに、個人情報を取り扱う従業員に対して定期的な教育を実施するなど管理の徹底を図っています。さらに、個人情報の漏洩等の事案が発生した場合に備え、関係部署への連絡、被害拡大防止、調査等の必要な措置をあらかじめ定め、社会的信用の喪失防止を図っています。

 またAIについては、外部ネットワークから隔離した社内クラウド上のAIの利用を推進するとともに、AIを適正に利用するための「京セラグループAI倫理原則」を策定・公表し、AI倫理委員会の設置等により、責任あるAIの開発・提供及び、利用を推進しています。

 

d. 優れた人材の確保が困難となるリスク

 当社が将来にわたり発展するためには、技術・販売・管理面において優れた人材を確保する必要があります。当社はあらゆる事業分野において、さらに多くの優れた能力を有する人材の雇用が必要になると考えています。近年、各分野において、有能な人材の獲得競争がますます激しさを増してきていることから、当社は今後、現有の人材を維持することや、能力のある人材を増員することができなくなる可能性があります。また、業務と育児・介護等との両立を支援する勤務体系の導入等、ワークライフバランスの充実化やDEI(Diversity, Equity & Inclusion)の推進を実施しない場合、現有の人材を維持できなくなる可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、インフレや労働市場を踏まえた給与水準、海外の更なる現地化促進等、将来を見据えた人材確保の施策に取り組んでいます。また、フレックスタイム制度等の柔軟な勤務体系の導入により、ワークライフバランスの充実化やDEIの推進を図り、多様な人材が働きがいを持って活躍できる職場環境の実現に取り組んでいます。

 

e. 地震等の災害が発生するリスク

 当社は、国内外において多くの開発・製造・事業関連施設を有しています。日本をはじめとするそれらの施設がある地域での地震・津波や台風、大雨、洪水、大雪、火山噴火等の不可避な自然災害の発生や、設備故障及び人為的ミスにより当社の施設に影響を与える大規模な災害等が発生した場合、当社の事業への影響が考えられます。例えば、大規模な地震の発生により、当社の人員や開発・生産設備が壊滅的な損害を被り、操業の中断や製造・出荷の遅延を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った施設の復旧等に要する費用が多額に発生する可能性があります。さらに、社会資本や経済基盤に著しい被害が生じた場合には、交通網の混乱や電力の供給不足等が生じ、当社のサプライチェーンや生産活動に困難が生じる可能性があります。また、当社に原材料等を供給するサプライヤーが被害に遭った場合には、原材料等の調達に困難が生じる可能性があり、当社の顧客が被害を受けた場合には、当社の製品の出荷が停滞する可能性があります。このような災害に伴う被害や、その結果生じる経済の停滞や消費の鈍化が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、地震等の自然災害、設備故障及び人為的ミスによる大規模な災害等に対してBCPの体制を整備し、活動を継続しています。具体的には、重要な経営資源である人員、設備、部材、情報について、被害を最小化するための事前対策に加え、万が一被災した場合の早期復旧計画や代替供給策を策定し、教育・訓練を実施することにより、事業中断を回避し、早期に事業再開ができるよう努めています。

 

 上記以外の主要なリスクは、次のとおりです。

 

[事業活動に関するリスク]

f. 日本及び世界経済の変動に関するリスク

 当社は、日本のみならず世界各国で事業活動を行っており、それらの国や地域の経済状況によって大きな影響を受ける可能性があります。翌連結会計年度における国内経済及び世界経済については、米国の関税措置及び各国の対抗措置等の影響を主因として、景気の減速や為替相場の急激な変動を含め、極めて不透明な状況が継続する懸念が生じています。当社の主要市場である半導体関連市場や情報通信関連市場、並びに自動車関連市場では、AI関連投資が引き続き堅調に推移することが見込まれるものの、不透明な経済環境の影響により、当社の各事業における需要見通しの不確実性が高まっています。

 上記のリスクが顕在化し、想定以上に悪影響を及ぼす場合には、当社の財政状態及び経営成績は、当社の期待を下回る可能性があります。

 

(主要な対応策)

 このような事業環境見通しを踏まえ、当社は各事業でのコスト削減を継続的に推進するとともに、将来の高収益企業への回帰に向けて構造改革を着実に進め、経営基盤の強化と収益性の改善を図ります。具体的には、半導体部品有機材料事業及びKAVXグループの黒字化や「選択と集中」による事業ポートフォリオの再編、投資の最適化等の経営施策を着実に実行してまいります。

 

g. 為替レートの変動に関するリスク

 当社は、国内外で事業を行っているため、為替レートの変動の影響を常に受けます。足元では米国の関税措置及び各国の対抗措置等の影響を主因に金融市場における不確実性が高まっていることから、今後為替レートの急激な変動が予想されます。このような急激な変動は、事業活動の成果や海外資産の価値及び生産コストの変動等、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があるとともに、事業活動の結果について期間ごとに比較することを困難にする場合があります。

  また、為替レートの変動は、当社と海外の競合企業が同一市場で販売する製品の価格競争や、当社の事業活動に必要な輸入品の仕入価格にも悪影響を及ぼす場合があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、為替レートの変動について、外国為替リスク管理方針に基づき、主に短期の為替予約を行うことにより、この影響の軽減に努めています。また、海外生産拠点における現地での部材調達の促進により、仕入価格における為替リスクの低減を図っています。

 

h. 当社製品の競合環境に関するリスク

 当社は、多種多様な製品を販売しているため、国際的な大企業から、高度に専門化し急成長している比較的小規模な企業まで、競合会社が広範に存在します。当社の競合環境はこれらに限らず、コスト構造等で競争優位性を持つ新興国企業を含め、新たな脅威となる競合他社の出現によって常に変化する可能性があります。特定の事業分野に特化している多くの競合会社と異なり、当社は多角的に事業を展開しているため、個々の事業分野に関しては、競合会社ほど出資や投資を行うことができない可能性があります。当社の競合会社は、財務・技術・マーケティング面での経営資源を当社の個々の事業より多く有している可能性があります。また、競合の要因は事業分野によって異なりますが、価格と納期は当社の全事業分野において影響を及ぼす主な要因となります。需要や競合の状況によりますが、製品価格の値下げ要求は概して恒常化しているため、今後も製品価格の下落が予想され、その結果、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる経営資源を有しています。これらの経営資源を有効活用するため、グループ内の連携強化を図り、高付加価値製品の提供等により、競争優位性の確保に努めています。また、当社が顧客の製品ごとに仕様を合わせた部品を開発・製造・販売している事業においては、顧客の要求に沿った新製品の開発に早く着手することにより、競争力の強化を図っています。さらに、製品価格の下落に対しては、当社独自の経営管理システム「アメーバ経営」の実践を通じた部門別採算管理の徹底により、原価低減を図り、高い競争力の実現に取り組んでいます。

 

i. 生産活動に使用される原材料の価格変動、サプライヤーの供給能力に関するリスク

 当社の各事業の生産活動に使用される原材料は常に価格変動にさらされているため、原材料価格の上昇や原油高による輸送コストの上昇は当社の製造原価の上昇につながる可能性があります。このような製造原価の上昇が製品の販売価格に転嫁できず、当社の収益性を押し下げる可能性があります。なお、当社は、原材料の正味実現可能価額(通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する見積追加原価及び販売に要する見積費用を控除した額)が原価を下回った場合には、正味実現可能価額まで評価減しており、今後も評価減を行う可能性があります。

 また、当社は、生産活動において消費される一部の原材料を特定のサプライヤーに依存しており、これらのサプライヤーに対する需要が過剰な状況となり、当社への供給が不足した場合、当社の生産活動に遅延や混乱を引き起こす可能性があります。このような原材料の供給に重大な遅延があった場合、当社はただちに特定のサプライヤーに代わりうる供給元を確保できない可能性や、合理的な価格で原材料を確保できない可能性があります。このような価格上昇や原材料の供給停止は、当社の製品の需要を押し下げる可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、購買活動にあたり、「購買基本方針」を定め、会社概況やサステナビリティに関する各種調査を通じて信頼のおける供給業者を選定するとともに、複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。昨今の労務費や原材料費、エネルギー価格等の高騰を受け、当社はサプライヤーからの適正な価格転嫁について協議するとともに、顧客に対して適正な価格転嫁交渉を行っています。また、当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達において、スケールメリットを活かした価格交渉力の向上を図るとともに、各事業で原価低減にも取り組んでいます。さらに、当社は、素材・部品からデバイス、機器、システム、サービスに至るまで事業を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部をグループ内で調達しています。これにより、外部から調達している部材、部品を確保できない場合、グループ内での調達に切り替えるなどの対応を検討することが可能です。

 

j. 外部委託先や社内工程における製造の遅延または不良の発生に関するリスク

 当社は、部品の製造や製品の組立の一部を単一もしくは限られた数社の取引先に外部委託しています。その中には非常に複雑な製造工程や長い製造時間を必要とする取引先も存在するため、部品や組立品の供給が遅滞する場合があります。また、このような部品や組立品が高い品質や信頼性を欠き、かつ適時に納入されない場合には、関連する製品の生産に重大な影響を及ぼし、当社の生産活動の遅延や中断が生じる場合があります。さらに、当社の製造工程においては、製品への微小不純物の混入や製造工程の問題等の発生によって製品が納品できない状態になる場合や規格外となる場合があります。こうした要因によって生産高が計画を下回る、あるいは製品の出荷が遅れる、損害賠償請求を受ける等、業績に重大な影響を与える場合があります。また、当社製品の品質問題によりリコールや大規模な製品事故が発生した場合は、多額の費用の発生や社会的信用の低下につながる場合があります。これらのリスクに加え、製造原価に占める固定費の割合が高い事業においては、生産数量や設備稼働率の低下が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、外部委託先の選定にあたり「購買基本方針」を定め、十分な検討の上、委託先を選定しています。また、当社では、社内で確立した製造工程について原材料・部品等を支給し、設備及び製造仕様書を委託先に貸与することにより、当社と同じ生産管理や品質マネジメントシステムのもと、顧客への納期及び品質要求に対応しています。

 社内においては、各業界に応じた品質基準に基づき厳格な品質管理のもと、顧客に対して製品を供給しています。また、データサイエンスを用いた品質改善や、AIやロボットを活用した生産性改善に向けた取り組みを継続的に実施し、リスクの低減に努めています。

 

k. 生産能力及び開発体制の拡大、もしくは現在進行中の研究開発が期待される成果を生み出さないリスク

 近年、AIや5G/6G等の新技術が急速に進展しており、これらの新技術はスマートフォンやサーバー等の情報通信分野だけでなく、自動車やFA等の幅広い産業へ波及していくことが予想されます。このような見通しに伴い、当社が手掛けるファインセラミック部品や電子部品等においても中長期的な需要の拡大が期待されるとともに、客先からの技術要求の更なる高度化が想定されます。また、技術の進化と併せて、脱炭素等の環境対応や労働人口減少に対する生産現場のスマート化の進展等、様々な社会課題の解決に貢献する技術やサービスへのニーズが高まっています。当社は、これらの市場動向に応じた生産及び開発体制の構築を図っていますが、予期せぬ技術的な障害や顧客の方針転換等により計画どおりに拡大できない場合、新たに生産された製品や開発された技術から期待された成果が得られない可能性があります。また、当社で現在進行中の研究開発活動から生まれる製品が、市場において期待された評価を得られない可能性もあります。

 

(主要な対応策)

 当社は、現在収益性の向上に向けた競争優位性の追求及び経営リソースの集中を基本方針とした構造改革に取り組んでいます。投資効率や競争優位性の観点から、投資領域や開発テーマの見直しを適宜実施し、設備投資や研究開発活動など成長投資の適正化を推進することにより、上記リスクの低減に努めてまいります。

 

l. 買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク

 当社は、事業を発展させるため、買収による会社または資産の取得を検討しており、実際にそれらを取得することがあります。しかしながら、取得後、被買収会社の事業や製品並びに人材を当社が効果的に当社の既存事業に統合できない可能性や、買収による事業上の成果や財政上の利益または新しい事業機会を当社が期待する程は得られない可能性があります。また、被買収会社による製品の製造やサービスの提供が、当社が計画したとおり効率的に実施できない可能性や、被買収会社の製品やサービスの需要が当社の期待に達しない可能性があります。従って、買収によって取得した会社や資産を期待どおりに活用できない場合、当社の事業に重大な影響を及ぼす可能性があり、これらの資産が減損していると判断される場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、他社や学術機関、政府機関等との協業においても、上記と同様の影響を受ける可能性があります。

(主要な対応策)

 当社は、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について、社外専門家による事業価値のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。取得後においては、PMI(Post Merger Integration)を進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。

 

m. 感染症の発生、テロ行為、または紛争等が当社の市場やサプライチェーンに混乱を与えるリスク

 当社は、グローバルに事業を拡大していることに伴い、感染症の発生、テロ行為、または戦争・紛争等の事態に巻き込まれるリスクがあります。このような事態においては、開発・製造・販売・サービス等の事業活動の中断、混乱または延期等が生じる可能性があります。また、当社の市場やサプライチェーンに支障をきたす可能性もあります。このような状況が長期間続いた場合には、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、危険性が高い感染症については、政府指針や社内規程に基づいた対策を講じ、感染防止に努めています。

 また、戦争・紛争等の武力衝突が発生した場合、本社に対策本部を設置し、グループの重要情報の一元化を図り、対応が求められる事案を協議します。

 

[法規制・訴訟に関するリスク]

n. 当社の企業秘密や知的財産・ブランド価値に関するリスク

 当社が将来にわたり発展し、市場競争において優位な地位を確立・維持するためには、当社の企業秘密やその他の知的財産を守らなければなりません。次の状況が生じた場合は、当社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

・当社の企業秘密を保有する従業員が在職中もしくは転職後に当社の企業秘密を不適切に漏洩した場合

・ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等が当社の企業秘密を不適切に漏洩した場合

・他社より当社に転職した従業員が当該他社情報を不適切に当社の事業活動に流用した場合

・当社のブランド価値を毀損するような模倣品が販売された場合

・当社が知的財産権を取得している独自開発技術・製品(システム・ソフトウェア含む)・サービスが他社によって侵害された場合

 また、当社は戦略的に知的財産を出願していますが、こうした出願が登録されない可能性があり、また登録されても無効にされる可能性、あるいは登録された当社の知的財産権を回避される可能性もあります。

 

(主要な対応策)

 当社は、企業秘密を守るために従業員、ジョイント・ベンチャー等のパートナー、顧客、社外委託業者等と誓約書・秘密保持契約など必要に応じて各種契約を締結しています。また、他社より当社に転職する社員に対しては、当該他社の属性に応じて適宜、当該他社の秘密情報を当社事業に流用しないことを誓約させています。当社が独自に開発した技術・製品・サービスについては、国内外において知的財産権を取得し、侵害者の排除に努めています。また、当社の知的財産については、先行調査を十分に実施した上で出願を行うことにより、登録可能性を高めるとともに、様々な観点から当該事業分野や製品を戦略的に網羅する複数の強い知的財産権を取得し、これらの知的財産を活用することで事業に貢献する活動を行っています。さらに当社のブランド価値の維持向上を図るため、知的財産権を活用した模倣品の摘発を行っています。

 

o. 当社製品の製造・販売を続ける上で必要なライセンスに関するリスク

 当社はこれまでに、第三者より知的財産権を侵害しているとの通知を受けたことや、知的財産権の実施許諾についての対価請求の申し出を受けたことがあり、今後も同様の事例が発生する可能性があります。特に通信技術に関連する製品では、第三者の標準必須特許に対する高額の実施許諾料の支払いを要求される可能性があります。従って当社は、以下のことを保証することはできません。

・侵害の申し立て(または侵害の申し立てに起因する賠償請求)が当社に対して行われることはないということ。

・侵害の申し立てがあった場合、製品販売の差止命令を受ける事態が発生しないということ、及び、差止命令によって当社事業の業績が大きく損なわれる事態が発生しないということ。

・当社の事業活動に悪影響を及ぼす高額の実施許諾料の支払いを要求されないこと。

 

(主要な対応策)

 当社は、新技術・新製品・新サービスを開発する際には、事前に第三者の知的財産権を調査して、知的財産リスクの低減に取り組んだ上で事業を行うように努めています。それでも第三者から侵害の申し立てがあった場合は誠実に対応を行い、必要に応じて適正な和解金や実施許諾料を支払うことで解決を図ります。

 

p. コンプライアンスに関するリスク

 当社は、「人間として何が正しいか」を物事の判断基準とする経営哲学「京セラフィロソフィ」をベースにコンプライアンスの徹底に努めています。しかしながら、このような徹底が十分になされず、法令違反や社会規範に反した行動が発生した場合、信用失墜による顧客からの取引停止、罰則金の支払い、損害賠償請求等により、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、コンプライアンス活動が社是や京セラフィロソフィの延長にある重要な活動であることを理解するとともに、各国の関連法令の遵守がステークホルダーの信頼にもつながる極めて重要な活動であることを理解し、専門部署であるグローバルコンプライアンス推進部の設置や「京セラコンプライアンス憲章」の制定等、コンプライアンス活動に積極的に取り組んでいます。また、各法令の主管部門による法令遵守体制の構築や管理、新規法令の施行時や法令改正時の社内連絡体制の構築、内部通報制度の導入、全従業員のコンプライアンス意識の向上に資する施策に重点的に取り組むコンプライアンス推進月間の制定、役員や従業員に対する定期的なコンプライアンス教育等により、法令を遵守し、社会規範に則った企業活動の徹底を図っています。さらに、グローバルなコンプライアンスリスクを察知・共有することを目的に、国内外の主要なグループ会社の法務・コンプライアンス・知的財産部門の責任者が参加する「グローバル法務・コンプライアンス・知的財産会議」を定期的に開催し、各社のコンプライアンス活動及び法的な課題・対策に関して議論を行っています。

 

q. 環境に関連する費用負担や損害賠償責任等が発生するリスク

 当社は、温室効果ガス削減、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁の防止、有害物質の除去、廃棄物処理、製品リサイクル、従業員や地域住民の健康、安全及び財産保全、さらに当社の製品における使用物質の適切な表示等に関する国内外の様々な環境関連法令の適用を受けています。このような環境関連法令は、当社の現在の事業活動だけでなく、当社の過去の事業活動や、当社が買収等により他社から承継した事業の過去の活動に対しても適用される可能性があります。当社は、環境関連法令により当社に生じる義務に基づく債務について、その発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には引当金を計上します。仮に、当社の環境関連法令の義務違反等が判明した場合には、規制当局から浄化費用の支払いを命じられる可能性や損害賠償責任を負う可能性があります。また、当社が任意で環境問題に取り組む必要があると判断した場合にも、環境浄化費用の負担や補償金の支払いを行う可能性があります。これらの環境に関連する費用負担や損害賠償責任は、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、事業活動にあたり、経営理念を基本とした環境安全に関する総合的な取り組みを推進するため、製品のライフサイクルを通した環境負荷の低減、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の抑制等、「京セラグループ環境安全方針」を制定し、環境関連法の遵守を徹底するとともに、規制の変更等への適切な把握、対応に努めています。

 

r. 世界的な気候変動に関するリスク

 世界的な気候変動等により、当社に適用される環境関連法令が将来さらに厳しくなる可能性や、適用の範囲が拡大される可能性があります。対応の不足や遅れにより、想定外の急速な脱炭素社会への移行に対応できず、コストの増加や企業ブランドの低下を招くリスクがあります。

 脱炭素社会への移行リスクについては、各国で更新された排出量削減目標が当社の目標より高い場合や、新たに炭素税が導入された場合、当社の製造コストが一時的に増加する可能性があります。また、顧客より製品のカーボンフリー化の要求が拡大した場合、当社の製造コストが増加する可能性があります。一方、社会の脱炭素化の動きは、当社のエネルギー関連事業の成長につながる機会として捉えることができます。

 物理リスクでは、異常気象が激甚化した場合、自然災害による操業停止、生産減少、設備復旧等に係るコストや、自然災害対策費用並びに保険料等が増加する可能性があります。また、水不足等により生産が減少する可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして位置付け、代表取締役社長を委員長とする「京セラグループサステナビリティ委員会」において、長期環境目標の決定やその達成に向けた対策等について審議を行っています。また当社は、エネルギー関連事業の推進により、再生可能エネルギーの普及を図るとともに、製造工程での省エネルギー化及び再生可能エネルギーの導入により、温室効果ガス排出量の削減に努めています。なお、当社グループの長期環境目標については、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)気候変動への対応 d. 指標及び目標」を参照ください。

 

[財務会計に関するリスク]

s. 当社の顧客の財政状態が悪化し、売掛債権が回収困難となるリスク

 当社は、売掛債権について、顧客が期日までに返済する能力があるか否かを考慮し、回収不能額を見積った上で貸倒引当金を計上しています。しかしながら、通常の営業取引において当社の売掛債権は、担保物件や信用保証により、すべては保全されていません。従って、経済環境の悪化等に伴い、顧客に対する売掛債権の回収が困難となり、保全されていない多額の債権が発生した場合、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、与信管理規程に基づき、取引先ごとに回収条件・与信限度額を設定し、定期的に与信の見直しを行っています。また、回収期限を日次で管理しており、回収遅延や信用不安が発生した場合は、個別に債権回収、条件変更、担保・保証の入手等の債権保全策を講じ、貸倒リスクの回避に努めています。

 

t. 当社が保有する投資有価証券及びその他の投資に関するリスク

 当社は、取引関係の維持及び株式保有による収益獲得を通じた企業成長、並びに企業の社会的意義等を踏まえ、中長期的に当社の企業価値を向上させるという視点に立ち、当社の関係会社以外の資本性証券に投資しています。その主たる投資は日本の通信サービス・プロバイダ-であるKDDI㈱の株式への投資です。当社は、第二電電㈱(現KDDI㈱)を設立して以来同社株式を保有しており、2025年3月31日現在の保有比率はKDDI㈱の発行済株式の15.29%となっています。KDDI㈱の事業発展に伴い同社株式の価値が増加した結果、同社株式への投資は当社の総資産の約35%を占めており、KDDI㈱の株式の市場価格の変動は、当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、当該株式を含むすべての資本性金融商品の一部である政策保有株式について、毎年の保有に係る検証の結果、保有意義がないと判断された場合、適宜縮減を進めています。また、保有株式の株価変動が当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知するため、定期的に株価のモニタリングを行っています。

 2024年3月期には政策保有株式の更なる縮減に向けて、当面の縮減目標を「2026年3月期までに簿価の5%以上を縮減すること」とし、2025年3月期までに約3%を縮減しました。さらに、今後の資金需要及び当社の事業戦略と資本戦略の両面における企業変革の推進にあたり、2026年3月期から2027年3月期の2年間において、当社が保有する政策保有株式の3分の1程度を売却するとともに、以降も純資産の20%未満を目指し継続的に縮減するという目標を設定しました。

 

u. 有形固定資産、のれん並びに無形資産の減損処理に関するリスク

 当社は、多くの有形固定資産、のれん並びに無形資産を保有しています。有形固定資産及び償却性無形資産については、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で減損の判定を行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損の判定を行っています。これらの資産が減損していると判断された場合には、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超過している金額に基づいて減損損失を計上するため、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、「l. 買収した会社や取得した資産から期待される成果や事業機会が得られないリスク」に記載のとおり、企業買収・資産取得・協業等の投資意思決定においては、その効果を合理的かつ保守的に見積もった事業計画について社外専門家のレビューを踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しています。また、取得後においては、PMIを進め、事業計画に対する実績達成度をモニタリングし、都度適切な施策を実行して損失リスク発生の回避に努めています。

 

v. 法人所得税等に関するリスク

 当社は、繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく変動する可能性があります。また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて、発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と将来の税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。また、移転価格税制・タックスヘイブン対策税制等に関する予期できない法律・規制の変更等のリスクに直面する可能性があります。

 

(主要な対応策)

 当社は、子会社が立案する年間事業計画について、達成度を適時確認し、都度適切な施策を実行することで、繰延税金資産の回収可能性に変更が生じないよう努めています。また、各国における税制変更及び税務調査に対しては、社外専門家を利用し、リスクの最小化に努めています。海外の税制については、税務情報を適時適切に提出することにより各国の税務当局と信頼関係を築き、必要に応じて事前照会を実施することで税務リスク低減に努めています。特に、グループ内の国際間取引については、OECD移転価格ガイドラインに従った独立企業間価格に基づいた取引を行うとともに、税務当局との事前確認制度を活用し、適正な納税に努めています。また、過度な節税を目的とする低税率国・地域(いわゆるタックスヘイブン地域)への税源の移転を防止し、各国の税制に従い適正な申告納税に努めています。

 

w. 会計基準の変更が財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすリスク

 新会計基準もしくは会計基準の変更は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、会計基準の変更に対応するために、会計ソフトウェアもしくは情報システムを変更した場合には、一定の投資もしくは費用が必要となります。

 

(主要な対応策)

 当社は、IFRSを連結財務諸表等に適用しているため、IFRSに適切に対応するための部門を設置するとともに、国際会計基準審議会が公表する基準書や解釈指針等を随時入手し、新会計基準に対応できる体制を整えています。会計基準の変更時には、財政状態及び経営成績に及ぼす影響を把握した上で適切に開示します。さらに、会計基準の変更に際して、有効な財務報告に係る内部統制を構築するために一定の投資額は必要となりますが、変更内容を適切に把握した上で投資の要否を決定します。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)業績等の概要

  当連結会計年度の世界経済は緩やかな成長が継続しました。当社の主要市場である半導体関連市場や情報通信関連市場においては、生成AIがデータセンター需要を牽引したことによりAI関連市場は拡大しましたが、それ以外の自動車関連市場等は低調に推移しました。

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較しほぼ横ばいとなりました。

  利益は、コアコンポーネントセグメント及び電子部品セグメントにおける生産設備の稼働率低下や人件費等の増加に加え、コアコンポーネントセグメントの半導体部品有機材料事業での有形固定資産の減損損失等を計上したことにより、大幅に減少しました。なお、親会社の所有者に帰属する当期利益には、上記に加え、海外子会社における繰延税金資産の取り崩し等による税金費用を計上した影響も含まれます。

(百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年 4月 1日

至 2024年 3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年 4月 1日

至 2025年 3月31日)

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

売上高

2,004,221

100.0

2,014,454

100.0

10,233

0.5

営業利益

92,923

4.6

27,299

1.4

△65,624

△70.6

税引前利益

136,143

6.8

63,631

3.2

△72,512

△53.3

親会社の所有者に帰属する当期利益

101,074

5.0

24,097

1.2

△76,977

△76.2

米ドル平均為替レート          (円)

145

153

ユーロ平均為替レート          (円)

157

164

 

(2)財政状態及び経営成績の状況

a.売上高

  当連結会計年度の売上高は2,014,454百万円となり、前連結会計年度の2,004,221百万円と比較し、ほぼ横ばいとなりました。

 

b.売上原価及び売上総利益

  当連結会計年度の売上原価は1,455,280百万円となり、前連結会計年度の1,451,110百万円と比較し、ほぼ横ばいとなりました。

  売上原価の主な内訳は、原材料費が前連結会計年度の500,254百万円から23,060百万円(4.6%)増加の523,314百万円となり全体の36.0%を占め、人件費が前連結会計年度の293,044百万円から6,054百万円(2.1%)増加の299,098百万円となり全体の20.6%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の103,259百万円から822百万円(0.8%)減少の102,437百万円となり全体の7.0%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の売上総利益は559,174百万円となり、前連結会計年度の553,111百万円と比較し、6,063百万円(1.1%)増加し、売上総利益率は、27.6%から27.8%へ0.2ポイント上昇しました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費は531,875百万円となり、前連結会計年度の460,188百万円と比較し、71,687百万円(15.6%)増加しました。これは主に、円安の影響や人件費の増加に加え、一時的な費用として半導体部品有機材料事業における有形固定資産等の減損損失40,148百万円を計上したことによるものです。

  当連結会計年度の販売費及び一般管理費の主な内訳は、上記の減損損失に加え、人件費が前連結会計年度の259,590百万円から19,137百万円(7.4%)増加の278,727百万円となり全体の52.4%を占め、販売費及び広告宣伝費が前連結会計年度の50,637百万円から1,908百万円(3.8%)増加の52,545百万円となり全体の9.9%を占めています。また、減価償却費は前連結会計年度の46,859百万円から2,909百万円(6.2%)増加の49,768百万円となり全体の9.4%を占めています。

  この結果、当連結会計年度の営業利益は27,299百万円となり、前連結会計年度の92,923百万円と比較し、65,624百万円(70.6%)減少しました。当連結会計年度の営業利益率は前連結会計年度の4.6%から3.2ポイント減少し、1.4%となりました。

 

d.金融収益

  当連結会計年度の金融収益は60,841百万円となり、前連結会計年度の60,839百万円と比較し、ほぼ横ばいとなりました。

e.金融費用

  当連結会計年度の金融費用は27,653百万円となり、前連結会計年度の18,836百万円と比較し、8,817百万円(46.8%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の上期において米ドルの円高進行により為替差損を計上したことによるものです。

  当社では、外貨建の債権債務に係る為替変動リスクの低減を図るために、主に先物為替予約を利用しています。当社は、先物為替予約については、外国為替レートの変動をヘッジする目的に限定して利用しており、トレーディング目的のための先物為替予約は行っていません。

f.持分法による投資損益

  当連結会計年度の持分法による投資損益は165百万円の損失となり、前連結会計年度の526百万円の損失と比較し、361百万円損失が減少しました。

g.税引前利益

  当連結会計年度の税引前利益は63,631百万円となり、前連結会計年度の136,143百万円と比較し、72,512百万円(53.3%)減少しました。当連結会計年度の税引前利益率は前連結会計年度の6.8%から3.6ポイント減少し、3.2%となりました。

  コアコンポーネントセグメント及び電子部品セグメントにおける生産設備の稼働率低下や人件費等の増加に加え、コアコンポーネントセグメントの半導体部品有機材料事業での有形固定資産等の減損損失40,148百万円を計上したことにより、前連結会計年度に比べ大幅な減益となりました。

h.法人所得税費用

  当連結会計年度の法人所得税費用は36,177百万円(実効税率56.9%)となり、前連結会計年度の31,316百万円(実効税率23.0%)と比較し、4,861百万円(15.5%)増加しました。これは主に、税引前利益が減少した一方、海外子会社において繰延税金資産の取り崩し等による税金費用を計上したことによるものです。

i.非支配持分に帰属する当期利益

  当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は3,357百万円となり、前連結会計年度の3,753百万円と比較し、396百万円(10.6%)減少しました。

 

j.レポーティングセグメント別営業概況

コアコンポーネント

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,028百万円(0.4%)減少の567,117百万円となりました。事業利益は、同58,337百万円減少し、1,111百万円の損失となりました。

  売上高は、半導体製造装置向けファインセラミック部品等の販売は増加したものの、汎用データセンター向けFCBGAの販売減少を主因に、ほぼ横ばいとなりました。事業利益は、半導体部品有機材料事業における減収及び有形固定資産の減損損失等約430億円の計上を主因として、大幅に減少しました。

 

電子部品

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,369百万円(0.7%)増加の354,646百万円となりました。事業利益は同7,339百万円減少し、818百万円の損失となりました。

  売上高は、欧州自動車市場低迷により当社製品の需要が減少したものの、情報通信及び産業機器市場向けコンデンサや水晶部品等の販売増加及び円安効果により、ほぼ横ばいとなりました。事業利益は、KAVXグループにおいて、前連結会計年度に発生した構造改革費用の影響はなくなったものの、同社グループにおける新工場の稼働率低迷に伴う原価率の上昇及び人件費等の増加により、大幅に減少しました。

 

ソリューション

  当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ9,383百万円(0.9%)増加の1,111,008百万円となりました。事業利益は同3,079百万円(4.4%)増加の72,920百万円となり、利益率は6.6%へ向上しました。

  売上高は、ドキュメントソリューション事業が円安効果により増収となったことから、他の事業の減収を吸収し、ほぼ横ばいとなりました。事業利益は、主にドキュメントソリューション事業の増収に加え、コミュニケーション事業の構造改革による収益性改善もあり増加しました。

 

 

レポーティングセグメント別売上高

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

増減金額

増減率

(%)

コアコンポーネント

569,145

28.4

567,117

28.2

△2,028

△0.4

 

産業・車載用部品

224,574

11.2

233,055

11.6

8,481

3.8

 

半導体関連部品

314,649

15.7

300,765

14.9

△13,884

△4.4

 

その他

29,922

1.5

33,297

1.7

3,375

11.3

電子部品

352,277

17.6

354,646

17.6

2,369

0.7

ソリューション

1,101,625

54.9

1,111,008

55.2

9,383

0.9

 

機械工具

310,740

15.5

305,876

15.2

△4,864

△1.6

 

ドキュメントソリューション

452,162

22.5

479,964

23.8

27,802

6.1

 

コミュニケーション

224,403

11.2

225,497

11.2

1,094

0.5

 

その他

114,320

5.7

99,671

5.0

△14,649

△12.8

その他の事業

17,680

0.9

17,114

0.8

△566

△3.2

調整及び消去

△36,506

△1.8

△35,431

△1.8

1,075

売上高

2,004,221

100.0

2,014,454

100.0

10,233

0.5

 

レポーティングセグメント別税引前利益(△損失)

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増  減

金  額

売上高比

(%)

金  額

売上高比

(%)

増減金額

増減率

(%)

コアコンポーネント

57,226

10.1

△1,111

△58,337

 

産業・車載用部品

26,409

11.8

24,979

10.7

△1,430

△5.4

 

半導体関連部品

30,375

9.7

△27,824

△58,199

 

その他

442

1.5

1,734

5.2

1,292

292.3

電子部品

6,521

1.9

△818

△7,339

ソリューション

69,841

6.3

72,920

6.6

3,079

4.4

 

機械工具

16,837

5.4

15,707

5.1

△1,130

△6.7

 

ドキュメントソリューション

43,940

9.7

49,038

10.2

5,098

11.6

 

コミュニケーション

6,964

3.1

9,347

4.1

2,383

34.2

 

その他

2,100

1.8

△1,172

△3,272

その他の事業

△41,049

△46,990

△5,941

事業利益計

92,539

4.6

24,001

1.2

△68,538

△74.1

本社部門損益等

43,604

39,630

△3,974

△9.1

税引前利益

136,143

6.8

63,631

3.2

△72,512

△53.3

(注)当社は、当連結会計年度より、前連結会計年度まで「その他の事業」に含めていたエネルギーソリューション事業

   を「ソリューション」セグメントの「その他」に含めることとし、「本社部門損益等」に含めていたエネルギー関

   連出資に伴う持分法損益等についても同セグメントに含めて業績管理することとしました。これに伴い、前連結会

   計年度の業績は、この管理区分にて表示しています。

 

k.本社部門損益等

  本社部門損益は、金融資産に係る収益や、各セグメントに対して本社部門から提供される経営管理サービスに伴う収入等から構成されます。

  当連結会計年度は39,630百万円の収益となり、前連結会計年度の43,604百万円の収益と比較し、3,974百万円(9.1%)減少しました。当連結会計年度において、労務費及びシステム関連費用が増加したことにより減益となりました。

l.生産、受注及び販売の実績

レポーティングセグメント別受注高

(百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率

(%)

金  額

構成比

(%)

金  額

構成比

(%)

コアコンポーネント

549,472

27.9

564,782

27.8

2.8

 

産業・車載用部品

227,364

11.6

245,537

12.1

8.0

 

半導体関連部品

291,888

14.8

285,352

14.0

△2.2

 

その他

30,220

1.5

33,893

1.7

12.2

電子部品

346,153

17.6

353,100

17.4

2.0

ソリューション

1,092,741

55.5

1,132,012

55.8

3.6

 

機械工具

313,802

15.9

307,386

15.2

△2.0

 

ドキュメントソリューション

450,998

22.9

477,501

23.5

5.9

 

コミュニケーション

225,742

11.5

242,213

11.9

7.3

 

その他

102,199

5.2

104,912

5.2

2.7

その他の事業

16,859

0.8

12,286

0.6

△27.1

調整及び消去

△36,072

△1.8

△32,386

△1.6

受注高

1,969,153

100.0

2,029,794

100.0

3.1

(注)1  当社は、需要の増加や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績は販売実

績に類似しています。このため、生産及び販売の実績は「j.レポーティングセグメント別営業概況」に関連付けて示しています。

2  当連結会計年度より、前連結会計年度まで「その他の事業」に含めていたエネルギーソリューション事業を

「ソリューション」セグメントの「その他」に含めることとしました。これに伴い、前連結会計年度の受注高

は、この管理区分にて表示しています。

(3)流動性及び資金の源泉

a.資金の源泉

<当連結会計年度末の資金の状況>

  当社の主な資金の源泉は、営業活動によって獲得した現金です。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは237,918百万円であり、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を444,744百万円保有しています。うち海外の連結子会社が保有する現金及び現金同等物は、当連結会計年度末において276,751百万円になりますが、当社での使用を目的として、これらを当社へ還流することは現時点において想定していません。

  また、当社は将来の更なる成長に向けた投資のために金融機関からの借入も実施しています。当連結会計年度末の借入金残高は246,963百万円(総資産に対し5.5%)であり、主として円建です。

  当連結会計年度末の運転資本(流動資産から流動負債を控除した金額)は944,066百万円であり、自己資本比率(親会社の所有者に帰属する持分比率)は71.3%と、引き続き強固な財務体質を保っています。

  このように強固な財務体質を維持していることに加え、一部の借入には資金調達コストの引き下げを目的として、当社が保有するKDDI㈱の株式の一部を担保に設定していることから、比較的低いコストで資金を調達しています。なお、借入金の詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記19. 借入金」を参照ください。

 

<当連結会計年度の資金需要>

  当社の当連結会計年度における主な資金需要は、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金並びに配当金の支払等となりました。

  当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の161,684百万円と比較し、19,752百万円(12.2%)減少し、141,932百万円となりました。これは主に、半導体関連市場や情報通信関連市場向け製品の需要増加に対応するため、前期に引き続き生産能力拡大のための設備投資を実施した一方、前期にコアコンポーネントセグメントにおいて、工場建屋を建設したことによるものです。研究開発費は、前連結会計年度の104,290百万円と比較し、11,797百万円(11.3%)増加し、116,087百万円となりました。

  また、当社は、当連結会計年度において1株当たり50円、総額70,435百万円の配当金の支払いを行いました。

  当社は、当連結会計年度においてこれらの設備投資、研究開発並びに配当金の支払について、自己資金で賄いました。

 

<翌連結会計年度の資金需要>

  当社は、翌連結会計年度における主な資金需要として、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当金の支払、自己株式の取得等を見込んでいます。

  翌連結会計年度においては、180,000百万円の設備投資と120,000百万円の研究開発費を予定しています。設備投資額は、半導体関連市場や情報通信関連市場向け製品を中心に生産体制をさらに拡充するため、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。研究開発費についても、コア事業強化に向けた新技術・新製品開発を継続する考えであり、当連結会計年度に比べて増加する見通しです。なお、設備の発注契約を含め、当社の契約債務の詳細については後述の「d.契約債務」を参照ください。

  配当金の支払については、2025年6月26日に開催される当社の定時株主総会で決議予定であり、1株当たり25円、総額35,219百万円の期末配当を予定しています。

  また、当社は2025年5月14日に開催された取締役会における決議により、資本構成の適正化と株主還元の充実を目的として、総額200,000百万円を上限とする自己株式の取得を予定しています。詳細は、「第4 提出会社の状況 2 自己株式の取得等の状況(2)取締役会決議による取得の状況」を参照ください。

 当社は、これらの資金需要については、営業活動等で獲得した自己資金に加え、当社が保有するKDDI㈱株式の売却資金にて対応する予定です。KDDI㈱株式の売却についての詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記37. 後発事象」を参照ください。

 また、既存事業のシェア向上や技術力強化を重視したM&A等、多額の資金需要が生じる場合には、金融機関からの借入や社債、株式の発行といった資金調達手段も有しています。当社は、主要な取引先金融機関と良好な関係を構築していることから、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しています。なお、現時点では格付機関による信用格付に影響を与えるような外部からの資金調達を行う予定はありません。

 ただし、今後主要市場での需要動向が悪化した場合や、製品価格が当社の予想を大きく超えて下落した場合等においては、当社の資金の流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

b.キャッシュ・フローの状況

(百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減金額

営業活動によるキャッシュ・フロー

269,069

237,918

△31,151

投資活動によるキャッシュ・フロー

△158,413

△150,481

7,932

財務活動によるキャッシュ・フロー

△82,596

△64,937

17,659

現金及び現金同等物に係る換算差額

23,232

△2,548

△25,780

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

51,292

19,952

△31,340

現金及び現金同等物の期首残高

373,500

424,792

51,292

現金及び現金同等物の期末残高

424,792

444,744

19,952

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・インは、前連結会計年度の269,069百万円に比べ31,151百万円(11.6%)減少し、237,918百万円となりました。これは主に当連結会計年度の当期利益に半導体部品有機材料事業の減損損失40,148百万円が含まれるものの、これを上回って当期利益が減少したことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の158,413百万円に比べ7,932百万円(5.0%)減少し、150,481百万円となりました。これは主に債券等の購入による支出が増加した一方、定期預金の解約による収入が増加したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー

  当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・アウトは、前連結会計年度の82,596百万円に比べ17,659百万円(21.4%)減少し、64,937百万円となりました。これは主に借入金の調達が減少した一方、自己株式の取得による支出が減少したことによるものです。

 

  なお、当連結会計年度において現金及び現金同等物は、換算により2,548百万円減少しました。これは主に、前連結会計年度末に比べ当連結会計年度末は欧米通貨に対し若干円高となったことによるものです。

 

  以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末の424,792百万円から19,952百万円(4.7%)増加し、444,744百万円となりました。当社の保有する現金及び現金同等物は主に円建ですが、海外の連結子会社では、主として米ドルを含む外貨建の現金及び現金同等物を保有しています。

c.資産、負債及び資本

  当連結会計年度末における当社の資産合計は、前連結会計年度末の4,465,376百万円から45,931百万円(1.0%)増加し、4,511,307百万円となりました。

  現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から19,952百万円(4.7%)増加し、444,744百万円となりました。詳細は上記「b.キャッシュ・フローの状況」を参照ください。

  棚卸資産は、資産水準の適正化に向けた削減を行ったことを主因に、前連結会計年度末から18,412百万円(3.4%)減少し、521,813百万円となりました。

  資本性証券及び負債性証券は、KDDI㈱株式の株価上昇に伴う増加を主因に、前連結会計年度末に比べ64,670百万円(3.9%)増加し、1,704,708百万円となりました。

  有形固定資産は、コアコンポーネントセグメントの半導体部品有機材料事業において減損損失を計上したこともあり、前連結会計年度末から14,041百万円(2.1%)減少し、651,949百万円となりました。なお、当連結会計年度の設備投資額は141,932百万円、減価償却費は112,077百万円でした。

  その他の非流動資産は、退職給付に係る資産の増加を主因に、前連結会計年度末に比べ14,398百万円(16.2%)増加し、103,408百万円となりました。

 

  当連結会計年度末における当社の負債合計は、前連結会計年度末の1,212,518百万円から55,555百万円(4.6%)増加し、1,268,073百万円となりました。

  流動負債における借入金は、外国通貨建売掛金の流動化による資金調達を実行したことを主因に前連結会計年度末に比べ34,992百万円(372.5%)増加し、44,386百万円となりました。

  繰延税金負債は、KDDI㈱株式の株価上昇に伴う増加等により、前連結会計年度末に比べ27,436百万円(6.2%)増加し、468,781百万円となりました。なお、日本において、「所得税法等の一部を改正する法律」(令和7年法律第13号)が2025年3月31日に国会で成立したことに伴い、2026年4月1日以後に開始する事業年度より、「防衛特別法人税」の課税が行われることになりました。この影響により、当連結会計年度の繰延税金負債の金額(繰延税金資産の金額を控除した金額)は12,776百万円増加しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記17. 法人所得税」を参照ください。

 

  当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の3,252,858百万円から9,624百万円(0.3%)減少し、3,243,234百万円となりました。

  利益剰余金は、親会社の所有者に帰属する当期利益24,097百万円及び有価証券の売却差額等21,296百万円を計上した一方、支払配当金70,435百万円を計上したことにより、前連結会計年度末の1,967,527百万円から25,042百万円(1.3%)減少し、1,942,485百万円となりました。

  その他の資本の構成要素は、KDDI㈱株式の株価上昇を主因として、前連結会計年度末に比べ17,040百万円(1.5%)増加し、1,183,792百万円となりました。

  当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分比率は、前連結会計年度末の72.2%から0.9ポイント減少し、71.3%となりました。

d.契約債務

  当社の予定決済日ごとの契約債務は次のとおりです。

(百万円)

 

 

2026年3月期

2027年3月期-

2028年3月期

2029年3月期-

2030年3月期

2031年3月期

以降

合  計

長期借入金

(1年以内返済予定分を含む)

9,401

192,564

5,370

4,643

211,978

支払利息(長期借入金)

(1年以内返済予定分を含む)

(注)

1,726

2,035

597

1,242

5,600

リース負債

27,175

34,186

19,027

24,332

104,720

設備の発注契約

111,222

21,377

549

133,148

合  計

149,524

250,162

25,543

30,217

455,446

(注)変動金利による借入金の支払利息については、当連結会計年度末の実質利率を使用して、将来見込まれる支払利息を算出しています。

  当社は翌連結会計年度において、確定給付制度に対し10,388百万円を拠出する予定です。また、当社は、当連結会計年度末において不確実な税務ポジションとして負債を5,329百万円計上していますが、将来の解決時期を合理的に見積ることができないため、上記の表には含めていません。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。これらの連結財務諸表を作成する際には、見積り、判断及び仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、及び開示期間の収益・費用の金額に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断及び仮定は実際の結果とは異なる場合があります。

  当社の連結財務諸表における見積りは、次の場合において会計上非常に重要な見積りとなります。すなわち、当社が見積りを行った時点では、その対象となった事象が非常に不確実な状況にも関わらず見積りを行う必要があった場合、また、当該期間において当社が実際に採用したものとは異なるが、当社が採用することができた見積りがある、もしくは複数の会計年度にわたって変更が発生すると予想される見積りがあり、その見積りが当社の財政状態及び経営成績の開示に重要な影響を及ぼす場合です。当社は会計情報の開示を行う上で、下記の項目を重要な会計上の見積りとして認識しています。各項目の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」を参照ください。

 

a.棚卸資産の評価

  当社は、棚卸資産が適正な価値で評価されるように評価損の金額を見積っています。過剰、滞留、並びに陳腐化した棚卸資産に対して評価損を計上しています。また、棚卸資産は正味実現可能価額まで評価損を計上しています。当社は通常、一定の保有期間を超える棚卸資産を滞留もしくは陳腐化していると見なします。また、当社では、将来の需要予測や市況、そして関与する経営者の判断のもとに、一定の保有期間に満たない棚卸資産についても評価損を計上することがあります。今後も市場の状況や製品の需要が当社の想定を下回れば、棚卸資産の評価損を計上しなければならない可能性があります。

b.有形固定資産及び無形資産の耐用年数

  有形固定資産は、事業ごとの実態に応じた見積利用可能年数等に基づき、定額法で減価償却しています。償却性無形資産は、資産の将来の経済的便益が消費されると予測される期間に基づき、定額法で償却しています。

  将来、技術革新等による設備の陳腐化や用途変更並びに事業環境の変化等による利用可能期間の見直しの結果、耐用年数を変更する場合には、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

c.有形固定資産、のれん及び無形資産の減損

  当社は、有形固定資産及び償却性無形資産について、帳簿価額を回収できない可能性を示す事象が発生した時点、もしくは状況が変化した時点で、減損テストを行っています。また、のれん及び耐用年数が確定できない無形資産は償却をせず、年1回及び減損の可能性を示す事象が発生または状況が変化した時点で減損テストを行っています。減損損失は、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回った場合に認識しています。

  資産または資金生成単位の回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値は、マネジメントが承認した事業計画を基礎としたキャッシュ・フローの見積額を、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率により、現在価値に割り引いて算定しています。

  使用価値は様々な仮定に基づき算定されているため、使用価値の減少をもたらすような予測不能な事業環境の変化等が生じた場合には、減損損失が発生するリスクがあります。

d.償却原価で測定する金融資産の減損

  当社は、主に営業債権等の償却原価で測定される金融資産について、回収可能性や信用リスクの著しい増加等を考慮のうえ将来の予想信用損失を測定していますが、実際の損失が予想信用損失より過大または過少になる可能性があります。

e.金融商品の公正価値

  当社は、特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いています。観察可能ではないインプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

f.法人所得税

  当社は、繰延税金資産について、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産の評価は将来の課税所得の見積りと税務上、実現可能と見込まれる計画に依拠します。仮に将来の市場環境や経営成績の悪化により将来の課税所得が見込みを下回る場合は、繰延税金資産の金額が大きく影響を受ける可能性があります。

  当連結会計年度末においては、繰延税金資産を156,977百万円認識しています。当社は、当連結会計年度の税引前利益及び法人所得税費用と比較し、当該繰延税金資産が将来において合理的に実現するものと考えます。

  また当社は、税務調査を受けることを前提に税務上認識された不確実な税務ポジションについて発生の可能性が高いと判断した場合、当該部分を不確実な税務ポジションとして負債に計上しています。なお、法人所得税における不確実性に関する会計処理の金額と税務当局との解決による金額は異なる可能性があります。

  当連結会計年度末においては、不確実な税務ポジションを総額で5,329百万円計上しています。当社は、法人所得税の不確実性に関する最終的な解決が将来の連結損益計算書へ重要な影響を及ぼすことはないと考えています。

g.確定給付制度

  確定給付制度において、確定給付負債または資産の純額は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除して算定されます。

  確定給付制度債務の現在価値は数理計算上の仮定に基づき算定されます。数理計算上の仮定には割引率、昇給率等の基礎率についての見積り及び判断が求められます。

  当社は、優良社債の利回り等を参考に割引率を決定します。昇給率は主に過去の実績、近い将来の見通し、物価変動等により決定されます。当社は毎年、数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じてその時点の市場環境をもとに調整を行っています。

  日本及び世界的な経済の停滞により、金利が低下し、当社が割引率を引き下げる場合には、確定給付制度債務及び関連する勤務費用等が増加します。

h.引当金及び偶発債務

  当社は、通常の事業活動を営む上で、様々な訴訟や賠償要求を受ける可能性があります。当社は、法律専門家と相談の上、こうした偶発債務が重要な結果を引き起こす可能性を予測しています。当社は、不利益な結果を引き起こす可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には当該債務を計上します。見積りを行う際当社は、受けている訴訟の進捗、及び他の会社が受けている同種の訴訟やその他関連する事項を考慮します。発生した負債は見積りに基づいており、将来における偶発債務の発展や解決に大きく影響されます。

 

i.収益認識

  当社は、半導体、情報通信、自動車関連等の市場における販売を主な収益源としています。当社におけるレポーティングセグメントは、「コアコンポーネント」、「電子部品」、「ソリューション」で構成されており、事業単位並びに主要事業及び子会社は次のとおりです。

 

レポーティングセグメント及び事業単位

主要事業及び子会社

コアコンポーネント

 

産業・車載用部品

ファインセラミック部品、自動車部品、光学部品

半導体関連部品

セラミック材料、有機材料

その他

医療機器、宝飾・応用商品

電子部品

電子部品、Kyocera AVX Components Corporation

ソリューション

 

機械工具

機械工具

ドキュメントソリューション

情報機器(京セラドキュメントソリューションズ㈱)

コミュニケーション

通信機器、

情報通信サービス(京セラコミュニケーションシステム㈱)

その他

スマートエナジー、エネルギーソリューション、

ディスプレイ、プリンティングデバイス

 

  なお、当社において、顧客への販売は、顧客と締結した取引基本契約書及び注文書に記載された条件に基づいて行われます。当該契約書及び注文書には、価格、数量、並びに所有権の移転時期が記載されています。

 

(a) 販売奨励金

  「電子部品」セグメントにおいて、各種電子部品を販売する代理店への販売については、以下の様々な販促活動が定められており、顧客との契約において約束された対価から販売奨励金を控除した金額で収益を測定しています。

ⅰ.ストック・ローテーション・プログラム

  ストック・ローテーション・プログラムとは、品質に問題のない在庫について、直近6ヵ月の売上高に対して特定の比率を乗じ算出される金額分を、代理店が半年毎に返品することが可能な制度です。売上高に対するストック・ローテーション・プログラムの引当金は、現時点までの推移、現在の価格と流通量の情報、市場の特定の情報や売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて算出した代理店の売上高に対する比率に基づき収益認識時点で算定し、計上されており、これらの手続きには重要な判断を必要とします。当社は、ストック・ローテーション・プログラムによる将来の返品について妥当な算定ができていると考えており、これまでの実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。なお、製品が返品され、検収された時点で、代理店に対する売掛金を減額しています。

ⅱ.シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム

  シップ・フロム・ストック・アンド・デビット・プログラム(以下、シップ・アンド・デビット)は、代理店が顧客への販売活動における市場での価格競争に対して代理店を補助する仕組みです。シップ・アンド・デビットが適用されるためには、代理店が在庫から顧客へ販売する特定部分についての価格調整を代理店が要求する必要があります。シップ・アンド・デビットは、現在及び将来の代理販売において、代理店が顧客へ販売する特定部分について適用されることがあります。IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に準拠し、当社は代理店に対して収益を認識した時点で、その代理店への売上高にシップ・アンド・デビットが適用される可能性を考慮して、その売上高に関連する代理店の将来の活動に対して変動対価を見積り、計上しています。当社は、当該期間における売上高、代理店に対する売掛金の残額、代理店の在庫水準、現時点までの推移、市場状況、設備製造業やその他顧客に対する直接的な販売活動に基づく価格変動の傾向、売上情報、マーケティングやその他主要な経営手段を用いて売上高に対する変動対価を見積り、計上しています。これらの手続きは慎重な判断のもとで行われており、またその結果、当社はシップ・アンド・デビットにおける変動対価について妥当な算定、計上ができていると考えています。これまでの当社の実際の結果と算定額に重要な乖離はありません。

 

(b) リベート

  「機械工具」事業及び「ドキュメントソリューション」事業における代理店への販売において、当社は、定められた期間内に予め定めた売上目標を達成した代理店に対し、現金でリベートを支払っています。このリベートについては、収益を認識した時点で見積った各代理店の予想販売額に基づき、リベート額を算定して、これを収益から控除しています。

(c) 返品

  当社は、収益を認識した時点で過去の実績に基づいて返品による損失額を見積り、収益から控除しています。

(d) 製品保証

  当社は、主に「ドキュメントソリューション」事業において、製品に対して通常1年間の製品保証を提供しています。また、最終消費者への販売において、1年間の保証期間終了後、延長保証契約を締結する場合があります。この延長保証契約については別個の履行義務として識別し、取引価格の一部を当該履行義務に配分した上で延長保証期間にわたり収益を認識しています。

  また、製品販売、製品保証等、複数の財またはサービスを提供する複数要素取引に係る契約については、契約に含まれる履行義務を識別し、契約の対価を配分する必要がある場合には、取引価格を独立販売価格に基づき配分しています。独立販売価格は、類似する製品またはサービスの販売価格やその他の合理的に利用可能な情報を参照して算定しています。

 

5 【重要な契約等】

(1)技術受入契約

会社名

相手先名

国名

内容

契約期間

当社

Qualcomm,Inc.

米国

車載用通信機器に関する特許実施権の許諾

1996年8月31日から

2026年3月31日まで

 

(2)相互技術供与契約

会社名

相手先名

国名

内容

契約期間

京セラドキュメント

ソリューションズ㈱

キヤノン㈱

日本

電子写真技術に関する特許実施権の許諾

2012年4月1日から

対象特許の満了日まで

 

 

6 【研究開発活動】

  当社は、市場性や当社のコア技術、及び将来性を考慮した上で、社会課題の解決に向けた研究開発活動を積極的に推進しています。具体的には5Gや6G、次世代光通信、高度道路交通システム、エネルギーデバイス及びエネルギーマネジメント、デジタルヘルスケア等での事業機会獲得に向けて、国内外の研究開発拠点の再編を通じた技術力や人材育成の強化、及び社内外の連携強化による新技術、新製品開発に努めています。また、グローバルベースで多様化する顧客ニーズへの一層の対応に向けて、新たな海外研究開発部門を設け取り組んでいます。さらに、アカデミア等の社外リソースを活用するとともに、オープンイノベーションを推進し、新たな事業領域の創出に努めています。

  各レポーティングセグメントにおける主な活動は次のとおりです。

 

(1)コアコンポーネント

  当レポーティングセグメントでは、創業以来培ってきたファインセラミックスをはじめとする材料、プロセス、設計、加工技術等のコア技術を活かし、半導体、6G、産業機械や自動車関連等の幅広い市場向けに高付加価値製品の開発に努めています。また、総合力を生かした新製品、新事業の開発強化に向けて、各部門を横断したプロジェクトを進めています。

  当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。

 

a.産業・車載用部品事業

  半導体製造装置市場向けには、特に今後も拡大が見込まれる先端半導体に対応した微細配線、三次元構造等、高集積化の進む次世代装置に向けた部品や材料の開発に取り組むとともに、高温対応を可能にする優れた熱伝導性や機械特性を持つ新材料や新たな機能部品の開発を、グループ内だけでなく外部と共同で実施する等、社外リソースも積極的に活用して進めています。

  自動車関連市場向けには、自動車の安全性向上に寄与する高度な画像センシング技術を活用した車載カメラ等の開発に取り組んでいます。

  また、ファインセラミック技術を活かし、環境・エネルギー市場で新たなクリーンエネルギー供給システムとして普及が期待されるSOFC向けセルスタックの高効率化に向けて開発を強化しています。

 

b.半導体関連部品事業

  情報通信市場においては、データセンター用サーバーやネットワーク機器の高速大容量化や低消費電力化に伴い、半導体部品の微細化、高機能化が進んでいます。また、IoTの進展も加わり、5G等の端末機器に加え通信インフラの整備が進んでいます。一方、自動車関連市場においては、ADASの進展による電装化や低消費電力化への一層の対応が求められています。さらに、これらの主要市場での各種センサーの需要が増加しています。

  このような市場動向に対し、セラミック材料事業においては、微細配線が可能で、かつ高強度、高剛性の超小型・薄型の電子デバイス用及びセンサー用パッケージや、5G等のより高い周波数に対応する光通信用パッケージ、高輝度な自動車ヘッドライト向けに放熱性や耐久性に優れたLED用パッケージ等の開発に取り組んでいます。

  有機材料事業においては、生成AI関連を中心に高成長が見込まれる情報通信市場向けには、データ伝送の高速大容量化対応として高速信号・広帯域メモリー接続に適した大型高多層製品のパッケージの開発を、自動車関連市場向けにはADAS用高信頼性パッケージ及びミリ波レーダー用基板の開発を中心に取り組んでいます。

 

c.その他

  主に人工関節や人工歯根を展開している医療機器事業では、患者様のQOL(生活の質)の向上に貢献できる製品開発を進めています。具体的には、人工関節の緩みを抑え長寿命化を実現する3D積層造形技術や、抗菌性を付与した製品開発に取り組んでいます。これら技術の他分野での展開に向けて、社外の研究機関とも連携して研究開発を進めています。また、新規医療分野への取り組みとして、デジタルヘルスケア関連製品の開発等を推進しています。

 

(2)電子部品

  当レポーティングセグメントでは、京セラ㈱の電子部品事業とKAVXの技術融合による新製品開発の強化に努めています。具体的には、京セラ㈱の電子部品事業の生産技術力とKAVXの設計力を融合し、自社特許技術を活用したセラミックコンデンサの開発等に取り組んでいます。

  情報通信市場では、5GやIoT関連製品の普及に伴う通信端末や基地局の高機能化に加え、AI機能搭載の機器が増加するトレンドにより、部品の小型化や高機能・高信頼性等が求められています。これらの要求に対し、温度や湿度への信頼性を高めた小型高容量のセラミックコンデンサやSAWデバイス、小型高周波特性の水晶部品やシリコンMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動子、高周波対応のコネクタ、高効率なアンテナ等の開発を進めています。

  また、ADASや電装化が進む自動車関連市場や、先端半導体の拡大により高温度保証の要求が高まっている半導体関連市場向けには、高温信頼性や耐圧性を高めたセラミックコンデンサやコネクタ、小型・高放熱のディスクリート及びパワーモジュールを含むパワー半導体に加え、各種制御部品等の開発を行っています。

 

(3)ソリューション

  当レポーティングセグメントでは多様な事業を有している特長を活かし、ビジネスモデルや開発モデルの共有等を通じ、相乗効果の最大化に取り組んでいます。これまで各事業で培ってきた技術の活用により、情報通信、環境・エネルギー関連等において、イノベーションの創出に向けた研究開発を進めています。

  当レポーティングセグメントの各事業で取り組んでいる主な研究開発は次のとおりです。

 

a.機械工具事業

  機械工具事業では、ソリューション型ビジネスによる顧客の課題の解決と、産業市場や建築市場への事業領域の拡大に取り組んでいます。自動車やエネルギー、航空機、医療分野等の幅広い市場での金属加工等に使用される切削工具では、ユーザーの生産性向上に寄与する高品質・高精度な製品開発に取り組んでいます。また空圧・電動工具では、建設等の産業におけるプロ向け、DIY等一般向けの工具、消耗品等、安全で快適に使用できる製品について、京セラグループが有する多様な技術を活用し新製品開発を推進しています。

 

b.ドキュメントソリューション事業

  当社製品の特長である環境性と経済性に優れた製品の開発を進め、競合他社との差別化を図っています。プリンター及び複合機等のオフィス向け製品については、低ランニングコストと高い環境性能の両立を図るため、長寿命な機器及び廃棄を極少に抑えた消耗部品の開発を進めています。また、高品質なトナー開発にも取り組み、付加価値の向上に努めています。

  商業用インクジェット事業では、印刷市場に新しい価値を提供できるよう、高画質・高耐久性・高生産性と同時に、多品種大量印刷ニーズの増加に伴うバリアブル印刷やカスタマイズ印刷に対応した製品の開発に取り組んでいます。

  ドキュメントソリューションサービス関連では、モバイル機器やクラウド環境、並びに顧客が所有するドキュメント管理システムとの連携により、情報共有の質や業務効率改善に貢献するアプリケーションソフトウェア等の開発を進めています。また、企業内の情報を電子化し、包括的かつ効率的に管理・運用するECM事業をさらに強化し、既存事業との融合による新サービスの開発に取り組んでいます。

 

c.コミュニケーション事業

  通信機器事業では、法人企業向けを中心に5G対応スマートフォン端末やタブレット端末、5Gコネクティングデバイスの開発を行っています。さらに、当社が有している部品や端末、システム技術、並びに通信端末事業で培った無線通信技術の活用とともに、外部機関との連携による新技術の開発を進めています。ADASや自動運転システムの高まりに伴い需要の増加が期待される車載用通信機器の開発にも取り組んでいます。

  情報通信サービス事業においては、IoTプラットフォームやローカル5G構築といったインフラ系サービスの他、あらゆる場面で利用されるようになったAIやセキュリティの製品・サービス開発等、DXの推進により複雑化・高度化する顧客ニーズへの対応を進めています。

 

d.その他

  スマートエナジー事業においては、太陽光発電等の再生可能エネルギーの自家消費ニーズに対応し、エネルギーを効率良く使用するための製品及びシステムの開発に努めています。太陽電池モジュールや当社の独自技術を活かし、量産技術を確立した高い安全性・長寿命のクレイ型蓄電池、小型・高効率発電の燃料電池(SOFC)等、様々な新製品の開発や品質の向上に取り組んでいます。さらに、電力を効率良く活用するためのエネルギーマネジメントシステムの開発に注力しています。

 

  上記の各レポーティングセグメントでの取り組みに加え、その他の事業においては、事業部門やレポーティングセグメントの枠組みを超えて、京セラグループの総合力及び社外リソースも活用し、社会課題の解決に貢献する新事業の開発を進めています。

  生産年齢人口の減少による生産現場における労働力不足問題の解決に貢献するため、協働ロボットをAIと3Dビジョンで知能化するクラウドシステム「京セラロボティックサービス」を開発していることに加え、安全な自動運転を実現する路車協調システムの事業化に向けて、通信と車載、光学の分野で培ってきた技術を応用したITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)無線路側機、FIR(Far Infrared Rays:遠赤外線)カメラセンシングシステム等のインフラ向け機器、車載用無線機の開発に取り組むとともに、より高度な情報通信社会の実現に貢献する5Gミリ波や6Gのエリア拡大に対応した通信インフラ機器の開発にも取り組んでいます。

  また、低炭素社会の実現に貢献する基幹材料である窒化ガリウム(GaN)デバイスの応用システム開発等に取り組んでいます。

 

 

レポーティングセグメント別研究開発費

 

 

(百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減率(%)

 

コアコンポーネント

17,802

20,838

17.1

 

電子部品

14,490

13,988

△3.5

 

ソリューション

40,416

41,594

2.9

 

その他の事業

31,582

39,667

25.6

 

研究開発費

104,290

116,087

11.3

 

売上高比率

5.2%

5.8%

(注)当社は、当連結会計年度より、前連結会計年度まで「その他の事業」に含めていたエネルギーソリューション事 業を「ソリューション」セグメントに含めて業績管理することとしました。これに伴い、前連結会計年度のレポ ーティングセグメント別研究開発費は、この管理区分にて表示しています。