第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

なお、文中の将来に関する事項には、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針 

当社は、「創造性に富んだ信頼される製品の提供を通じて科学技術と産業の発展に寄与し企業の成長と発展を期し、親しまれる経営で社会に貢献する」という企業理念を掲げ、1913年の創業以来、理化学用陶磁器、ファインセラミックス製品の提供を通じて日本の工業の発展に寄与し、特に昨今のスマートフォンや自動車のEV化、自動運転などの電子部品の製造にはなくてはならない製品として広く電子部品メーカーにご使用いただいております。

現在は、祖業のセラミックス事業に加え、計測機器や加熱装置といった商品を取り扱うエンジニアリング事業の2事業を展開しており、両事業部門のシナジーを最大限に発揮し、お客様のニーズに応えております。

当社がこれまで100年以上にわたり培ってきた「ものづくり」に対する真摯な姿勢と「社会に貢献する」高い意識が現在の当社の大きな強みであり、それらを基に社会課題、環境問題である「カーボンニュートラル」や「人的資本経営」にも積極的に取組んでおります。

当社は目まぐるしく変化する時代の中においても、常にお客様をはじめとするステークホルダーの皆様に寄り添い、「持続的な成長」並びに「持続可能な社会」の実現に向け貢献していきます。

 

(2)目標とする経営指標

経営指標として、自己資本当期純利益率(ROE)と1株当たり当期純利益(EPS)を重視しております。

目標数値はROE8%以上、EPS65円においております。

 

(3)中期的な会社の経営戦略

当社の経営理念に基づき、「時代が必要とする企業」となるために、様々なステークホルダーから信頼される企業「Reliable Company」を目指すとともに、「新中期経営計画CONNECT30」における「稼ぐ力」・「新たな投資」・「持続的な成長」による企業価値の向上です。

また、全役職員がやるべきことをやってみる、ということを重視したスローガンを策定いたしました。

スローガン「まずやってみる、未来のために。」

取組が道半ばとなっていたものはきちんとやりきる。更に、このままのスピード感で停滞してしまわないように、新たな取組もまずやってみることが重要です。これは会社として、各部門として、「やってみる」ことを明確にし、その「やってみる」ことをやりきることで、これからもニッカトーは成長し続けます。

 



 

(4) ニッカトーの価値創造プロセス

セラミックス素材が持つ特性を引き出す知見・技術を活かし、顧客の製造工程に最適な製品を提供することで、日本のものづくり産業の発展と、環境問題・社会課題の解決に貢献することが、ニッカトーの価値創造プロセスと考えています。

 


 

(5)優先的に対処すべき事業及び財務上の課題

当事業年度は、昨年来長期化するウクライナ情勢と中東情勢の地政学上リスクが引続き深刻な状況は変わらず、加えて1月のトランプ政権発足による米国第一主義に基づく追加関税の問題やこれによる米中問題が一層激しさを増し、アジア諸国をはじめわが国の景気の下押し圧力が強まり、結果景気が後退する可能性があります。

このような環境下、当社は来年度2025年から2030年度に向けた中期経営計画「CONNECT30」をスタートします。この「CONNECT30」における軸は、今まで同様当社の理念、ビジョンを中心に新しく役職員一同でスローガン「まずやってみる、未来のために。」と題し、上述のような地政学上のリスク並びにトランプ政権の不透明感、世界の分断現象等々経営環境は複雑で見通しが非常に予測しづらい状況にありますが、2030年に向け当社の主力のセラミックス事業単体で売上高100億円、エンジニアリング部は売上高30億円、営業利益率15%とする過去最高値を目標とします。また、今般の中期経営計画におけるスローガン「まずやってみる、未来のために。」はこのような環境下だからこそ、まず行動し皆で考え前に進む意識で取組むことが必要であり、かつ戦略的な将来への投資も積極的に実施し、しっかりと将来への礎を築き上げてまいります。そうした取組みが企業価値を向上させ、持続的な成長へつながり、この取組みの結果がPBR1倍割れとなる低位推移する株価改善へとつながるものと考えておりますので、引続き株主の皆様方のご支援・ご鞭撻を賜りますようお願いいたします。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサスティナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ基本方針

当社の企業理念「ニッカトーは、創造性に富んだ信頼される製品の提供を通じて科学技術と産業の発展に寄与し企業の成長と発展を期し、親しまれる経営で社会に貢献する」にあるように、新たな価値を常に創造することで科学技術と産業の発展に貢献し、対話を通じて、地域・社会をはじめとする全てのステークホルダーとの信頼関係を構築することで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、頼りにされる会社「Reliable Company」を目指してまいります。

 

(2)サステナビリティ推進体制

昨今の企業を取り巻く環境が大きく変化する中、当社でもESG/SDGsに対する取り組みは重要な経営課題であると認識し、環境問題や社会課題の解決による持続可能な社会の実現および社会貢献活動が今後の当社の企業価値向上に重要な影響を与えるものとして2022年4月に「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。

当社の持続的成長のための方針や目標およびその推進計画の策定・更新を行い、定期的に取締役会に報告や提言を行います。

サステナビリティ委員会は、常務取締役常務執行役員経営管理部長(CFO)を委員長とし各部門長または選出された委員で構成されます。

 


 

 

(3) サステナビリティ課題への取り組み方針

 


 

                           (ご参照:当社ウェブサイト https://nikkato.co.jp  サステナビリティ

 

(4)気候変動関連情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

①ガバナンス

当社では、気候変動に関連するリスクおよび機会に関する重要事項は、取締役会で審議・決議いたします。気候変動問題を含む、サステナビリティ課題への対応は重要な経営課題であり、取締役会の監督のもと常務取締役常務執行役員経営管理部長(CFO)を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。「サステナビリティ委員会」では他の委員会と連携しつつ、サステナビリティに関する方針や目標及び対応策の検討に努め、必要に応じ取締役会に報告・提言を行っております。また、取締役会での決議事項は、取締役、執行役員及び各部部門長が出席する「経営会議」を通じて各業務執行部門に展開され、サステナビリティ経営を徹底してまいります。

 

 

②戦略

当社は、TCFDのフレームワークに基づきIPCCやIEA等のシナリオを参考に分析し、リスクと機会の評価を行い、気候変動が当社の事業環境や財務に及ぼす影響について検討しております。

リスクと機会

事業への影響(一例)

発現時期

影響度

影響額

 

対応策

短期

中期

長期

リスク

 

移行
リスク

政策・法規制
リスク

・炭素税の導入

 

184百万円※1

 

再生可能エネルギーへの転換、製造プロセス
の効率化及び高効率設備の導入によるエネル
ギー消費量の削減

・国や地方自治体によるGHG排出規

 制の強化

8百万円

・情報開示の義務化(及び対象範

 囲の拡大)

 

積極的な情報開示による省エネルギー活動の周知

技術
リスク

・既存製品の低炭素技術への転換

 

 

環境に配慮した新技術の積極的な導入及び
省エネルギー製造プロセスの開発を通じて
製品製造時・使用時のエネルギー使用量の削減

・低排出製品の開発

 

 

市場
リスク

・原材料コストの上昇

 

無駄の排除及び歩留りの向上

・環境意識の高まりによる従来製

 品の売上減少

 

 

従来製品のCFP算定の推進及び低排出製品の上市

評判
リスク

・気候変動対応・開示遅れによる

 評価・評判の下落

 

 

計画的な気候変動対策及び開示の充実

物理的
リスク

急性リスク

・台風・洪水による操業停止

1,600百万円

操業拠点の分散化及びBCP対策の強化

・台風・洪水による輸送停止

 

慢性リスク

・平均気温の上昇による熱中症対 

 策コスト(冷房等)の上昇

 

 

作業環境の改善及び熱中症のリスクの高い
エリアの無人化、省力化

機会

資源の効率性

・製造プロセスの効率化によるコ 

 スト削減

 

製造プロセスの無駄の排除、無人化・省人化
による効率化を通じたコスト削減

エネルギー源

・省エネルギー化の推進によるコ 

 スト削減

 

 

製造プロセスでの省エネルギー設備の導入
及び省エネルギープロセスの開発によるコスト削減

製品/サービ

・低炭素製品の開発による市場競

 争優位性の獲得

 

 

低炭素製品の提供を通じてサプライチェーン排出量を削減

・リサイクル技術確立による新規

 サービスの創出

 

使用済製品や廃棄物のリサイクルを通じた新規サービスの創出

市場

・新規市場の開拓による販路の拡

 充

 

 

客先での環境関連製品やサービスの開発・製造プロセスで使用される製品の提供

・気候関連情報の開示促進による

 企業イメージの向上

 

 

TCFD開示の充実やCDPスコアの向上を目指した
活動の強化及び発信の強化

強靭性
レジリエンス

・気候関連取組の推進によるサプ

 ライチェーンの強化

 

上流・下流企業との協業の推進及び関係の強化

 

※1 財務影響額については「IEA」NZEシナリオのカーボンプライスを基に計算しております。

 

・期間の定義は以下の通りです。

 

期間

定義

短期的リスク

~1年

直近の事業業績に影響を及ぼす可能性があるリスク

中期的リスク

1~5年

2~5年の期間で顕在化するリスク及び気候関連インパクトの影響が当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があり、
当社の中期経営戦略の大幅な修正を必要とする可能性のあるリスク 

長期的リスク

5年~

5年~の期間で顕在化するリスク及び当社のビジネスモデルの実行可能性に根本的に影響を及ぼす可能性のあるリスク

 

 

・影響度の定義は下記の通りです。

 

定義

影響の出る分野

財務

人命

業務影響

環境

評判

やや軽い影響

1000万円未満

不休災害

1日程度の影響

軽い汚染

1つの媒体に
記事が出る 

中程度

1000万円~1億円

休業災害

数週間の影響

中程度

マスコミに小さく
取り上げられる 

大きな影響

1億円以上

死亡/複数名の休業災害

1ヶ月以上の影響

重篤な害

中程度の範囲で
取り上げられる 

 

 

③リスク管理

気候変動問題は環境におけるメインテーマであり、経営の重大なリスクとして「サステナビリティ委員会」が関係各部と協議の上、全社的なリスクの分析及びその評価を毎年実施しております。そしてこのプロセスにより特定された重大なリスクの対応方針並びに対応策に関して、「サステナビリティ委員会」及びリスクを所管する関係各部と協議し、年次で見直してまいります。このリスクアセスメントの結果を取締役会並びに全社的なリスクとして「リスク管理委員会」等に提言・報告しております。また、全社的なリスクへの対応策等の進捗状況について定期的にモニタリングしてまいります。万が一重要なリスクが顕在化した場合は、代表取締役社長を委員長とする「危機管理委員会」を設置し、リスク対策等速やかに検討してまいります。

 

④指標及び目標

当社は、「脱炭素社会の実現に貢献」すべく、CO₂排出量(Scope1,2)に関する削減目標を2030年までに2018年度比50%削減とし、SBTi(Science Based Targets initiative)による認定を取得しております。尚、現在Scope3については開示に向けて準備・検討しております。

 

(t-CO2)

2018年
(基準年度)

2020年

2021年

2022年

2023年

2024年

Scope1

8,258

6,197

6,890

7,328

6,034

5,543

Scope2

3,381

2,189

2,705

2,621

2,614

26

Scope1+2

11,639

8,386

9,595

9,949

8,648

5,569

 

 


 

 

(5)人的資本

①人材育成の考え方


②多様性への取組

多様な知と知の組み合わせが持続的な成長を実現するとともに、従業員一人ひとりが自律し、働きがいを感じ、主体的に業務に取組むことができる環境整備に努めます。尚、女性管理職比率等の指標・目標については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」 に記載の通りであります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。

 

(1) セラミックス分野に依存していることについて

当社は、事業の73.5%がセラミックス製品の製造販売であり、かつセラミックスを一部に使用した複合品ではなく、セラミックス100%で形成される製品であります。

したがいまして、現状はセラミックス事業においては、100%セラミックス分野に依存しており、セラミックスに代替される新素材が登場すれば、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 電子部品業界向けの売上構成比率が高いことについて

セラミックス事業、エンジニアリング事業それぞれのIT(情報技術)分野関連の電子部品向けの売上構成比率については、昨今のITの発達に伴い上昇傾向にあり、2025年3月期決算においてセラミックス事業で54.2%、エンジニアリング事業で20.9%と高くなっております。したがいまして、電子部品業界の景気動向が悪化した場合には当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) セラミックスコンデンサー製造方法の変更について

セラミックスコンデンサー(MLCC)製造工程の中で、原料の粉砕用としてジルコニアの微小球が使用されておりますが、粉砕工程でジルコニア微小球に代わる粉砕方法が考案され実施された場合には、ジルコニア微小球は使用されなくなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります

 

(4) 特定仕入先への依存度が高いことについて

当社は、セラミックス事業において原料仕入金額のうち74.6%を東ソー株式会社から仕入れております。これは、原料仕入金額のうち原料単価の高いジルコニアが75.5%を占めますが、ジルコニア仕入の98.7%を同社から仕入れているためであります。

仕入依存度が高い要因としては、同社の原料の安定性が優れていることや主力製品でありますYTZボールの欧米向けの販売については全面的に同社に依頼をしていること等があげられます。同社とは良好な取引関係が継続しておりますが、何らかの理由により同社から原材料仕入ができなくなった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) ジルコニアより高品質で安い原料の出現について

現在はジルコニアが耐摩耗セラミックスとして、原料の粉砕・分散用に最も高い評価を得ておりますが、ジルコニアに代わる高品質で安い原料が出現し、かつ当社にその原料が入手できない場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ジルコニア原料の値上げリスクについて

現状ジルコニアの仕入価格は、概ね安定的に推移しておりますが、将来ジルコニア製品需要の拡大や原料供給量の減少により仕入価格が大幅に値上がりした場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 自然災害、インフラ障害によるリスク

当社は、大阪府下に2工場を有しており、不慮の自然災害、インフラ障害についてBCP(事業継続計画)により備えておりますが、想定を超えた大規模な地震や津波、台風や洪水等自然災害による大きな被害を受ける可能性があります。それらの影響を受け、製造中断、輸送ルート寸断、インフラの損壊・途絶もしくは顧客自身に大きな被害が生じた場合など、受注や供給が長期間にわたって滞り、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 新型コロナウイルス感染症等拡大の影響

2020年に世界中に拡大した新型コロナウイルス感染症を始めとした感染症等の長期に渡って蔓延することによる集団感染の発生や都市封鎖等に伴い、事業活動への制約や影響を受けます。当社は従業員の安全と健康を第一に考え、感染防止対策を徹底するとともに、働き方改革やコロナ収束後の事業活動の在り方等について検討し改善してまいりました。しかしながら、感染症の収束時期やその影響等によっては事業活動に一定の制約や影響を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 知的財産権におけるリスク

当社は、事業収益に資する知的財産権を重要な経営資源の一つと位置付けており、知的財産権の保護、それに絡む紛争の回避は重要な経営課題としております。

しかしながら、特定の地域や、その地域固有の事由によって当社の知的財産権が完全に保護されない場合があり、当社の知的財産権が第三者により無効とされる可能性やそのノウハウが漏洩する等、当社の事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティにおけるリスク

当社は、事業活動の中で、入手した顧客及び取引先の機密情報や個人情報及び当社内の機密情報や個人情報を有しております。これらの情報は、外部への流出や破壊・改ざん等が発生しないように、管理体制を構築しております。また、情報の大半が電子データとして蓄積しており、その電子データへの不正アクセスや不正使用に対処するため、情報セキュリティ統括責任者を定め、社内情報システムへの外部からの侵入防止策、データの暗号化等を講じるとともに、従業員への啓蒙活動を実施しております。

しかしながら、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや内部的過失や盗難等により、これらの情報が流出、破壊もしくは改ざん及び情報システムの停止等が起きる可能性があります。

このような事態が生じた場合には、信用低下や被害を受けた方への損害賠償等の費用の発生、または業務の停止等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 人材育成と採用に関するリスク 

当社は、顧客の技術の高度化や技術革新が加速する中、その多様な技術に対応するため優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。その人材を獲得するために新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開しております。また、目標管理制度に基づき公平・公正な評価、処遇制度の充実などの仕組みづくりにも注力し、従業員のエンゲージメントを高め、人材の定着にも努めております。しかしながら、これからの少子高齢化やそれに伴う労働人口の減少等、その優秀な人材採用の競争は厳しく、雇用環境の変化等により当社が求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社の将来の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) コンプライアンスに関するリスク

当社は、国内や諸外国・地域において、法規制や政府の許認可など、様々の公的規制の適用を受けて事業を展開しております。当社は、役職員が規範に基づきコンプライアンスに即した行動をするための体制や仕組みづくりを構築するとともに、企業倫理規範を定め、誠実で公正で透明な企業風土の醸成にも努めております。

しかしながら、このような施策や教育を講じても関連する規制に抵触したり、役職員による不正行為は完全に回避できない可能性があります。このような事象が発生した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の棄損、社会的信用の失墜等により、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 環境規制に関するリスク

当社は、地球温暖化防止、水質汚濁、大気汚染、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品等に含有する化学物質などに関する様々な環境法令の規制を受けております。当社は、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが今後一層の規制強化に伴う、その対策費用の増加など予想されます。また、現在地球温暖化対策としての温室効果ガスの削減の取組強化が進められています。当社もこの取組は今後大きな経営のテーマとして、様々な影響を検討し、その対策に取組んでまいります。

しかしながら、その環境規制の適応が極めて厳しく困難な場合、想定を超える費用の発生や事業の部分撤退、社会的信用が損なわれる可能性も想定され、業績への重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)地政学的リスク

近時、地政学的な問題として、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾を巡る緊張の高まり、米中の対立関係等々の要因により、エネルギー関連や原材料費の高騰などの影響により業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における我が国経済は、1月のトランプ政権発足に伴い米国第一主義に基づく、特に相互関税による国ごとの追加課税の問題が大きく、今後輸出が停滞する可能性も出てきており、特にアジア諸国における景気への影響やわが国製造業の企業収益に大きな打撃を受ける可能性等、その影響により賃金や設備投資が伸び悩み、景気が後退するリスクが見込まれる先行き予断を許さない状況下にあります。一方当社の主力販売先である電子部品業界の在庫調整は落着き、下半期は受注改善傾向にて順調に推移しておりましたが、一部製品在庫の市場動向を見据え113,474千円の棚卸資産の評価損を実施しました。

このような状況の中、当社事業全体の売上高は前年同期比1.6%減の10,076,578千円となりました。損益面につきましては、営業利益は前年同期比30.5%減の637,832千円、経常利益は前年同期比27.5%減の719,756千円、当期純利益は前年同期比28.3%減の503,567千円となりました。

結果、当社目標数値としているROE(自己資本当期純利益率)8%以上、EPS(1株当たり当期純利益)65円以上につきまして、当事業年度の実績としてROEが3.8%、EPSは42円16銭となり目標数値を下回る結果となりました。

 

セグメントの経営成績は次のとおりであります。

セラミックス事業

セラミックス事業につきましては、当社主力販売先である電子部品業界の市況について、下期は改善傾向にありましたものの上半期の低調分をカバーできなかったことが影響し、売上高は前年同期比1.7%減の7,405,514千円となりました。利益面については、上述いたしましたが市場動向を踏まえ一部製品の仕掛品を評価損したことや原燃料価格等の上昇によるコスト増により、売上原価率が前年同期比3.4ポイント増加した結果、セグメント利益が前年同期比37.8%減の448,532千円となりました。

エンジニアリング事業

エンジニアリング事業につきましては、売上高が前年同期比1.4%減となりましたものの、自動車・重機関連等を中心に設備投資が昨年来堅調に推移した結果2,671,063千円となりました。セグメント利益については、売上原価率や経費については前年同期比ほぼ横ばいで推移したことから、減収によるものが大きく前年同期比4.0%減の189,300千円となりました。

 

①財政状態の状況の概要

当事業年度末の財政状態につきましては、総資産が前期末比0.4%減の17,124,855千円となり、内訳として流動資産が前期末比微増の10,091,569千円、固定資産が前期末比1.0%減の7,033,285千円となりました。流動資産の主な増加要因については、売上債権の回収による現金化が進んだことで、現金及び預金が前期末比7.6%増加したことによるものです。固定資産の主な減少要因は、建物や機械及び装置の取得により有形固定資産が前期末比4.1%増加しましたが、投資有価証券の時価下落により投資その他の資産が前期末比10.6%減少したものであります。

一方、負債は前期末比2.6%減の4,011,494千円となりました。内訳として、流動負債が前期末比5.9%増の3,496,139千円、固定負債が前期末比37.0%減の515,355千円となりました。流動負債の主な増加要因は仕入債務が前期末比19.0%増加したことであり、固定負債の主な減少要因は長期借入金が前期末比66.8%減少したものであります。

最後に純資産は前期末比0.3%増の13,113,360千円となりました。内訳としては、利益剰余金が前期末比2.3%増の10,012,279千円、評価・換算差額等が前期末比23.2%減の635,746千円となりました。利益剰余金の増加要因は当事業年度の内部留保の蓄積により繰越利益剰余金が前期末比5.0%増加したものであり、評価・換算差額等の減少要因は株価下落に伴うその他有価証券評価差額金の減少によるものであります。


 

②キャッシュ・フローの状況

 

前事業年度
(千円)

当事業年度
(千円)

前年同期比増減額
(千円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

785,118

1,676,675

891,557

投資活動によるキャッシュ・フロー

△398,902

△925,637

△526,735

財務活動によるキャッシュ・フロー

△509,929

△493,090

16,838

現金及び現金同等物期末残高

3,384,604

3,642,551

257,947

借入金期末残高

935,236

720,844

△214,392

 

 

当事業年度末における現金及び現金同等物は3,642,551千円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益が717,534千円と前年同期比266,595千円減少し、売上債権の増減額が303,189千円と前年同期比476,456千円、仕入債務の増減額が311,757千円と前年同期比685,609千円それぞれ増加し、加えて法人税等の支払額が△185,662千円と前年同期比218,969千円減少しました。結果、営業活動によるキャッシュ・フローは1,676,675千円と前年同期比891,557千円収入が増加いたしました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、生産体制の充実と合理化および既存設備の更新や耐震補強工事等の設備投資を実施したことで、有形固定資産の取得による支出が△895,760千円と前年同期比502,987千円増加しました。結果、投資活動によるキャッシュ・フローは△925,637千円と前年同期比526,735千円支出が増加いたしました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出、配当金の支払額が前年同期比ほぼ横ばいで推移しました。結果、財務活動によるキャッシュ・フローは△493,090千円と前年同期比16,838千円支出が減少いたしました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

セラミックス事業

7,463,731

9.7

 

(注) 金額は売価換算値で示してあります。

 

b. 仕入実績

当事業年度における製品・商品仕入実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

セラミックス事業

116,321

19.8

エンジニアリング事業

2,184,797

△2.0

合計

2,301,119

△1.1

 

(注)  金額は仕入価格で示してあります。

 

c. 受注状況

当事業年度における受注状況をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

セラミックス事業

7,320,523

5.5%

2,218,693

△3.7

エンジニアリング事業

3,035,378

25.0%

1,381,234

35.8

合計

10,355,902

10.6%

3,599,927

8.4

 

 

d.販売実績

当事業年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

セラミックス事業

7,405,514

△1.7

エンジニアリング事業

2,671,063

△1.4

合計

10,076,578

△1.6

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

売上高は下記の如く、10,076,578千円となりました。

 

2025年3月

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

構成比
(%)

前期比(%)

セラミックス事業

 

 

 

 機能性セラミックス

451,792

4.5

46.6

 耐摩耗セラミックス

5,075,771

50.3

△3.2

 耐熱セラミックス

1,678,669

16.7

△6.0

 理化学用陶磁器その他

199,280

2.0

4.9

小計

7,405,514

73.5

△1.7

エンジニアリング事業

 

 

 

 加熱装置

786,907

7.8

△1.9

 計測機器その他

1,884,156

18.7

△1.2

小計

2,671,063

26.5

△1.4

合計

10,076,578

100.0

△1.6

 

 

b.売上原価、販売費及び一般管理費

売上原価率が前年同期より2.6ポイント増加し79.9%となりました。これはセラミックス事業で、当社主力販売先である電子部品業界の市況について、下期は改善傾向にありましたものの上半期の低調分をカバーできなかったことが影響し、売上高は前年同期比1.7%減となり、また、市場動向を踏まえ一部製品の仕掛品を評価損したことが大きく、売上原価率が前年同期比3.4ポイント増加し79.4%となったことによるものです。一方、エンジニアリング事業は、売上高が前年同期比1.4%減となりましたものの自動車・重機関連や鉄鋼関連等を中心に設備投資が昨年来好調に推移し、売上原価については、前年同期比0.1ポイント増加の81.3%となりました。

販売費及び一般管理費は、荷造運送費等のコスト増に伴い販売費は増加しましたが、売上および利益の減少に伴い人件費等が減少しました結果、前年同期比1.3%減の1,384,570千円となりました。また、売上高販売管理費率は、前年同期と同水準の13.7%となりました。

 

c.営業外収益、営業外費用

営業外収益は、前年同期比10.2%増加し94,476千円となりました。
 主な内容としては受取配当金74,971千円、受取賃貸料5,641千円であります。

営業外費用は、前年同期比6.0%増加し12,552千円となりました。

主な内容としては支払利息7,001千円、コミットメントフィー5,499千円であります。

 

d.特別利益、特別損失

特別利益の発生はございません。

特別損失は、前年同期比72.5%減少し2,222千円となりました。
 内容としては固定資産廃棄損2,222千円であります。

 

 

e.資産

総資産は、前期末比0.4%減の17,124,855千円となり、内訳として流動資産が前期末比微増の10,091,569千円、固定資産が前期末比1.0%減の7,033,285千円となりました。流動資産の主な増加要因については、売上債権の回収による現金化が進んだことで、現金及び預金が前期末比7.6%増加したことによるものです。固定資産の主な減少要因は、建物や機械及び装置の取得により有形固定資産が前期末比4.1%増加しましたが、投資有価証券の時価下落により投資その他の資産が前期末比10.6%減少したものであります。

 

f.負債

負債は前期末比2.6%減の4,011,494千円となりました。内訳として、流動負債が前期末比5.9%増の3,496,139千円、固定負債が前期末比37.0%減の515,355千円となりました。流動負債の主な増加要因は仕入債務が前期末比19.0%増加したことであり、固定負債の主な減少要因は長期借入金が前期末比66.8%減少したものであります。

 

g.純資産

純資産は前期末比0.3%増の13,113,360千円となりました。内訳としては、利益剰余金が前期末比2.3%増の10,012,279千円、評価・換算差額等が前期末比23.2%減の635,746千円となりました。利益剰余金の増加要因は当事業年度の内部留保の蓄積により繰越利益剰余金が前期末比5.0%増加したものであり、評価・換算差額等の減少要因は株価下落に伴うその他有価証券評価差額金の減少によるものであります。

 

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの概況につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

資本の財源及び資金の流動性については、当社の主要な資金需要は、主に製品製造のための原材料並びに生産設備の新設・改修等生産体制の構築及び新製品の開発などへの投資であり、これらの資金は営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、巨額の資金需要に対応する場合等は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性確保及び財務の健全性・安定性を維持するため金融機関からの借り入れによる資金調達にて対応していくこととしております。なお、運転資金の効率的な調達のため取引金融機関との間に1,000,000千円のコミットメント契約(実行残高400,000千円)を締結しております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④ 経営者の問題認識と今後の方針について

当社は永年培われてきた「基盤技術」と「コア技術」があります。これを継承し、つぎの世代に繋げていくこと即ち、当社の技術力の礎をこれからも大事に役職員一同意識し、一層進化させていくことが戦略のベースであることを忘れることなく様々な事に取組んでいきます。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

(セラミックス事業)

持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組みや環境・社会課題への対応が企業活動における重要な経営テーマとなっています。また新型コロナウイルス感染症蔓延を機にリモートワークやWeb会議といった新しい働き方が一般化し、ネットワークによる組織間の結びつきやその重要性がより一層拡大・強化されるようになりました。こうした流れの中で、IoT機器や各種デジタルデバイスのニーズが急速に高まっており、それらを支える電子部品に対しても、高性能化・高信頼化が強く求められるようになってきました。       

このような背景の中、当社製品は特に電子部品の製造工程で使用されるものが多く、環境負荷の低減やリサイクル性の向上といった顧客からの要求並びに環境配慮型製品の開発が強く求められるようになっています。

当社においても、「環境課題の解決に寄与する企業」を目指し、環境負荷低減技術や3R(リユース・リサイクル・リデュース)促進技術開発に取組んでおります。

私たちは今後も、社会的責任を果たしつつ、持続可能な未来に貢献する製品を次世代へとつなげていくことを目指して研究開発のさらなる向上に努めてまいります。

当事業年度における研究開発費は256,807千円であります。

 

(エンジニアリング事業)

該当事項はありません。