第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、創業以来一貫して、人類共通の財産である地下資源の有効活用に取り組んでまいりました。地下資源のもつ秘められた可能性にますます大きな期待がかけられている現在、当社グループは、長年培ってまいりました「品質と技術」をさらに研鑽し、多様化するニーズにグループ各社が一丸となって、積極果敢に挑戦して、企業価値の一層の向上を図り、社会に貢献していくことを経営の基本としております。

 

(2) 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略

当社グループは2023年度を初年度とする3ヵ年中期経営計画を策定し、2025年度に連結売上高180億円、連結営業利益20億円、ROE6.4%以上を目指しております。株主資本コストを5~6%と想定して、株主資本コストを上回るROEを達成する為、ベントナイト本来の性能を最大限に活かした高付加価値製品の開発、生産販売の省人化、デジタル化を通じて、社会課題の解決、顧客の価値創造を実現し、高収益事業構造を構築してまいります。

具体的な戦略としては、次のとおりであります。

① 脱炭素関連・国土強靭化関連・静脈産業への取組み

・地熱発電事業/放射性廃棄物処理事業への注力(環境建設分野)

・森林整備事業(アグリビジネス分野)

・インフラ整備事業(国土強靭化)の取込み推進(環境建設分野)

② 新規事業領域拡大

・種子コーティング事業(アグリビジネス分野)

・ガスバリア材料(ファインケミカル分野)

③ 海外市場展開・海外鉱探査

・素形材分野、ファインケミカル分野のアセアン市場展開推進

・高品質原鉱の安定調達に向けた海外鉱利用

④ 企業体質強化

・ESG経営及びDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

・新鉱区開発、採鉱技術開発

 

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

世界経済は、ウクライナ、中東情勢を始めとする地政学リスクに加え、各国中央銀行による政策金利の高止まり等による景気減速のリスク、我が国経済においては、円安常態化、生産年齢人口の減少等、不確実性の高い状況が継続すると認識しております。このような見通しのもと、当社グループは、より一層のコストダウンへの取組みを進めるとともに、高付加価値製品・サービスの提案、適切な価格改定などの販売活動を強化する事で、収益確保を図ってまいります。一方で成長戦略の実現のため、研究開発・人材教育に注力するとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた体制の整備に努めてまいります。

各事業部門の経営環境及び事業上の課題については、下記の通りであります。

    ベントナイト事業 素形材分野

  世界的な脱炭素化への潮流を受けた自動車の国内生産台数の減少、化石燃料車のEVシフトに伴う鋳造部品点数の減少により、国内鋳造向けベントナイト需要の低減が予想され、将来的な国内市場縮小への対応が課題となっております。対処といたしましては、海外事業会社のKUNIMINE (THAILAND) CO.,LTD.を通じてアセアンへ進出する日系企業との連携を強め、海外ユーザーへ対応していくとともに、国内においても高い販売占有率(シェア)を活かした関連商材の拡販、製品と技術サービスの充実を図ることにより、収益の拡大に努めてまいります。

 

 

    ベントナイト事業 環境建設分野

  建設業界においては、外部環境の回復基調もあり、民間の設備投資は前年と比較して増加傾向にありますが、一部大型公共工事において、自治体の財源不足、地域との調和不足による工期遅延等が発生しております。大型工事の遅延や急な再開による出荷変動が発生した場合、出荷量が計画に対して大きく変動するため、業績予測が困難なことが課題となっております。当分野の安定した成長を図るため、国内インフラ整備事業、地熱発電事業の取り込み、放射性廃棄物処理事業に対して積極的な営業活動を行うとともに、止水材等の高付加価値品の販売を拡充してまいります。

 

    ベントナイト事業 ペット分野

  近年、ペット用トイレ砂では為替影響による輸入品の割高感から国内品への回帰が見られ、当社鉱物猫砂製品の出荷量も増加傾向にあります。国内の猫飼育頭数も増加しており、需要の拡大は見込まれますが、インフレ進行により原料、包装資材、物流費の上昇が課題となっております。原料調達から生産販売までのバリューチェーンを国内で完結できる強みを活かして、コストダウンを進めるとともに、関連商品の拡充を図ることで収益の拡大に努めてまいります。

 

    クレイサイエンス事業 ファインケミカル分野

  当分野の製品は、一般工業用途として各種産業で広く利用されておりますが、環境規制強化にともなう市場ニーズの変化や、代替技術・素材の出現が、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当分野は、粘土本来の秘められた効能を最大限引き出す新規用途開発を進めておりますが、社会実装に時間を要することも課題となっております。今後も産学官連携を高めて、先端機能材料分野等での速やかな研究・製品開発を目指すとともに、国内外への市場拡大を図るべく市場ニーズを捉えた製品開発を進めてまいります。

 

    クレイサイエンス事業 アグリビジネス分野

  当分野は農薬等の受託生産が中心であるため、農薬市場の縮小等による委託元の販売不振や、委託方針の変化による受注減少等が懸念され、当社側で生産量を主体的にコントロール出来ず販売量が減少することが課題となっております。当分野では、種子コーティング等の新規受託領域の拡大を進めるとともに、製剤技術力、特に造粒技術の高度化にさらに磨きをかけ、事業分野の成長を図ってまいります。

 

    クレイサイエンス事業 ライフサイエンス分野

  生命を事業領域として粘土の可能性を追求する当分野では、農林水産業向け製品から化粧品原料まで様々な領域での展開を進めているため、各領域に関する関連法規の改正により販売に影響を受ける場合があります。また、製品は効果検証のために複数年の実地試験が必要となり、上市までに時間を要することも課題となっているため、産学官の連携を高め、検証の効率化を進めてまいります。無機鉱物である粘土の特性を活かし、天然由来の化粧品原料のニーズに対応していくとともに、飼料添加物や赤潮対策、食品添加物などのサステナビリティに貢献する製品の販売を通じて、生命に関する社会課題の解決に貢献してまいります。

 

    その他

  生産関連につきましては、継続した省人・省力化投資を推し進めることによって生産体制を強化し、人手不足の問題解消や生産性向上を実現することで、事業機会を確実に捉えるよう努めてまいります。またベントナイト資源確保の観点から、鉱量の確保や新鉱区開発のための積極投資も行ってまいります。輸入原鉱の急激な為替変動によるリスクへの対策としては、為替予約、外貨預金等を活用する事でヘッジを行ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

クニミネ工業グループは『経世済民』の経営理念を掲げ、貴重な地下資源であるベントナイトを中心に、高付加価値商品やサービスの展開により基幹産業を支え、国の繁栄に貢献してまいりました。当社が中核事業として取り扱うベントナイトは、自然環境への負荷が少なく、生命体と環境にやさしい無機鉱物です。この貴重な資源を科学し、未来のニーズを創造することで、社会への価値を提供していきたいと考えています。当社グループの技術を活用して、廃棄物処理などの社会課題の解決や、新たな産業を支援・創出していくことがESGへつながる取り組みと考えており、事業活動を通じて社会的な目標であるSDGsの達成を目指しております。

 

(2)サステナビリティ全般に関する事項について

①ガバナンス

当社グループでは、持続可能な社会、環境への意識の高まりを事業機会と捉えて、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。ESGをより意識した経営の実現に向け、これまで社内の部署や事業単位で取り組んできた施策や啓発活動を企業・グループ全体に展開し、部署横断的な取り組みとして強化・加速させるため、情報収集や課題認識、解決策の提案など、中枢となる役割を担います。また、必要に応じ、経営委員会や取締役会へ付議し、事業およびガバナンス双方の視点から意見交換を活性化させてまいります。

 

②リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ推進委員会において、サステナビリティに関連するリスクおよび機会を識別し、その優先度を評価、選別しております。リスクおよび機会評価プロセスにより特定された重要リスクおよび機会に対して、サステナビリティ推進委員会事務局が関係各部と協議の上、対応を行って参ります。その後、リスクおよび機会評価の結果は、サステナビリティ推進委員会を通じて取締役会に報告されます。

 

③戦略

当社グループでは、サステナビリティに関連する事業機会として『重金属、放射性廃棄物処分事業』『地熱発電事業』『農林水産振興事業』を重要事業機会と捉えて営業活動の強化、CO2排出量の削減、関連する研究開発投資、設備増強投資に注力して参ります。

 

④指標及び目標

当社グループが重点事業機会として認識している『重金属、放射性廃棄物処分事業』『地熱発電事業』『農林水産振興事業』に関して、下記の目標を掲げております。同時に重点事業機会向け生産に係るCO2削減にも取り組んで参ります。

◆中期経営計画目標(2026年3月までの3年間)

 

目標(2026年3月までの3年間)

2023年3月期実績

2024年3月期実績

2023~2024年度累計実績

関連売上高

2,320百万円

430百万円

371百万円

801百万円

関連設備投資

300百万円

130百万円

127百万円

257百万円

CO2削減量

△3,000t

△1,114t

△4,081t

△5,195t

 

 

 

◆中長期目標(2031年3月期までの8年間)

・関連売上高5,000百万円

・関連設備投資1,000百万円

・2030年にかけてScope2 の排出量ゼロを目標。(約8,000t削減)

CO2排出削減への取組に関する詳細な情報については、以下の当社ウェブサイトに公表されている2024年3月期決算説明会資料をご参照ください。

https://www.kunimine.co.jp/ir/zaimu.html

 

(3) 人的資本に関する事項について

①戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

 

人材育成方針

当社グループは、製品・サービスを通し、持続可能な社会の創造および当社グループが永続的な成長を遂げるため、絶えざるイノベーションに向け挑戦し続ける人材を育成します。
 そのために、社員一人ひとりがチャレンジ精神を持ち、経験を成長の糧として、次なる挑戦へとつなげられるマインドの養成を目的とした教育体制を構築および組織風土の醸成を推進します。
・社員が成長を実感し、それをモチベーションとして次のステップへの挑戦の原動力とできる教育機会を提供する。
・多様な経験を通し、独自の発想・新たな視点を生み出す人員配置を行う。
・自主性を尊重し、チャレンジしたことが称賛される制度・組織づくりを行う。

 

社内環境整備方針

当社グループは、性別・年齢・国籍・人種・宗教・障害の有無・性自認および性的指向等に関わらず、社員一人ひとりが、感受性や価値観等の違いを尊重し、企業価値向上および社会貢献を目指せる社内制度構築および環境整備を推進し、多様性を新たな発想、視点へとつなげ、組織横断的に連携し、イノベーションに向けて突き進んでいく集団を作り上げることを目指します。

 

②指標及び目標

当社グループでは、上記①において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

指標

目標(2025年度

実績(当連結会計年度)

キャリア支援制度利用数

45

33

e-ラーニング利用数(注1)

80.0/月

55回/月

エンゲージメントサーベイ”自己成長への支援”スコア(注2)

68

61

女性管理職数

4

1

平均勤続年数(注3)

13

11.9

重大労働災害発生件数(注4)

0

0

 

(注)1.株式会社ビズアップ総研が提供するオンライン研修サービス「e-jinzai」への月毎のアクセス数の平均。

同一講座の重複受講及び全体教育は除外しております。

  2.調査には、株式会社アトラエが提供するエンゲージメントサーベイ・解析ツール「wevox」を利用

  3.役員・短期臨時員・パートタイマーを除く

  4.重大労働災害:死亡、負傷又は疾病により、障害等級第1~7級に該当した労働災害

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 他社との競合と販売価格の変動について

当社グループの主要事業であるベントナイト事業、クレイサイエンス事業のファインケミカル分野およびアグリビジネス分野は、いずれも市場での厳しい競争にさらされております。そのため、新技術や新製品の開発、あるいは、競合他社との価格低減競争等により、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 貸倒れについて

当社グループは、十分な与信管理を行っておりますが、取引先に予期せぬ貸倒れが発生した場合は、追加的な損失や引当金の計上が必要となり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替相場の変動について

当社グループは、原料の一部を海外から輸入しております。そのため、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、為替予約等で対策を講じております。しかしながら、リスクヘッジにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響を完全に排除することは不可能であり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原料の確保について

当社グループには、鉱山会社が3社あり、原鉱採掘を行っております。毎年、探鉱ボーリングを実施して原鉱埋蔵量の確保は行っておりますが、災害や事故等の発生により、採掘が不可能になる危惧や、品質の低下および原鉱の枯渇等が発生する危惧があります。また、一部海外より原鉱を輸入しておりますが、原鉱の輸入につきましても、災害や事故等の発生や国際情勢の変化等により、輸入が困難となる危惧があります。こうした状況の発生が経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) エネルギー価格の変動について

当社グループでは、主に製造工程において重油や電力等のエネルギーを使用しております。これらのエネルギー価格の変動により、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 原材料の仕入価格について

当社グループでは、原鉱の輸入の他様々な原材料を外部より購入しております。これらの原材料は、為替相場の変動や原油価格の変動、その他の要因等によって仕入価格が上昇するおそれがあり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 製品の品質に係るものについて

当社グループでは、徹底した品質管理のもとで製品を製造しておりますが、すべての製品が完全無欠という保証はありません。また、製造物賠償責任保険等に加入しておりますが、これらの保険が賠償額の全額を賄える保証もありません。そのため、製品の欠陥が、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 災害等による影響について

当社グループは、鉱山および工場において安全対策等を十分に実施しておりますが、大規模な地震や近隣の火山の噴火、火災、事故等が発生した場合は、生産、出荷等が著しく低下するおそれがあり、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(9) 新型コロナウィルス等の大規模感染症について

新型コロナウィルス感染症は第5類への移行により、行動制限は行われなくなりましたが、今後、新たな大規模感染症が当社グループの想定を超える規模で発生した場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止や各事業拠点における事業活動の停止等で事業が停止・停滞する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 法的規制について

当社グループの行う事業に適用される主な法的規制として、鉱山でのベントナイト原鉱石採掘に関連する採石法、アグリ事業での製品製造に関連する農薬取締法等があります。これらの関係法令は社会情勢の変化等に応じて適宜、改正や解釈の変更等が行われる可能性があります。その場合には経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。主な法的規制に関する許認可の内容は以下のとおりです。

① 採石法関連

当社グループは、採石法第32条に定める採石業者登録および採石法第33条で定める採取計画の許認可を以下のとおり受けております。なお、現状これら許認可等について、その継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、万一、採石法第32条の10および第33条の11、12の規定やその他の関連法令に抵触する等により、業務停止又は取消し等の処分を受けることとなった場合には、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

取得年月

許認可等の名称

所管官庁等

許認可等の内容

有効期限

1971年10月

採石業者登録

宮城県

採石法第32条による宮城県採石登録第69号

川崎鉱業㈱

なし

1971年10月

採石業者登録

新潟県

採石法第32条による新潟県採石登録第9号

関ベン鉱業㈱

なし

1995年1月

採石業者登録

山形県

採石法第32条による山形県採石登録第601号

クニマイン㈱

なし

2000年4月

採石業者登録

宮城県

採石法第32条による宮城県採石登録第5000号

当社蔵王工場

なし

2020年3月

岩石採取計画認可

宮城県

採石法第33条による宮城県(産立)指令第119号

当社蔵王工場

2025年2月

2022年7月

岩石採取計画認可

宮城県

採石法第33条による宮城県(産立)指令第38号

川崎鉱業㈱

2027年7月

2021年8月

岩石採取計画認可

山形県

採石法第33条による山形県指令村総産企第17号

クニマイン㈱

2026年8月

2021年6月

岩石採取計画認可

新潟県

採石法第33条による新潟県津振第620号
関ベン鉱業㈱ 細越鉱山

2025年12月

2019年11月

岩石採取計画認可

新潟県

採石法第33条による新潟県津振第369号

関ベン鉱業㈱ 白崎鉱山

2024年10月

 

 

② 農薬取締法関連

当社グループは、農薬取締法第2条に定める農薬登録につきまして、当社小名浜工場、郡山工場および太田工場において、製造品目ごとに農薬登録票の許認可を受け、製造場の名称および所在地登録を行っております。なお、現状これら登録について、その継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、万一、農薬取締法第14条の規定やその他の関連法令に抵触する等により、業務停止又は取消し等の処分を受けることとなった場合には、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を通じてお客様や取引先の個人情報および機密情報を入手することがあり、また、営業・技術上の機密情報を保有しております。 当社グループでは、これら情報に関する管理体制の強化と社員教育を展開し、適切なセキュリティ対策を講じています。しかしながら、予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルス侵入等により、重要情報が流出した場合や、重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合は、当社グループの信用低下により、業績および財務状況に影響を及ぼす場合があります

 

 

(12) 環境について

当社グループは、事業活動による地球環境への影響を認識し、CO2排出量の削減や資源の有効活用に努め、環境負荷の低減を進めております。 しかしながら、CO2の排出に対する新たな規制等が導入された場合には、ベントナイト事業を中心に当社グループの事業活動が制約を受けたり、事業活動に係る費用が増加する可能性があります

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く環境は、経済活動の正常化や賃上げが景気を下支えし、総じて緩やかな回復基調となりました。鉱工業生産は、主力の自動車産業では大手メーカーによる不正問題発覚での生産停止による落ち込みがあったものの、半導体不足が緩和したことや生産能力の増強の影響などにより、生産台数の回復が見られました。一方、世界経済ではウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化による資源・エネルギー価格の高騰を起因とした物価上昇が見られ、急激な為替変動や各国の金融引き締め政策による景気の冷え込み懸念により、先行き不透明な状況が継続しております。

このような状況のもと、当社グループは、高付加価値製品・サービスの提案、適切な価格改定などの販売活動を強化するとともに、より一層のコストダウンへの取り組みを進める事で、収益確保に向けて注力して参りました。今後も、円安・インフレの進行とエネルギー価格高騰によるコスト上昇が懸念され、予断を許さない状況が続いておりますが、引き続き製品・サービスの高付加価値化、販売価格の適正化、原価低減による収益の改善に取り組んでまいります。

以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は16,821百万円となり、前連結会計年度末に比べ411百万円増加いたしました。これは主に有価証券が748百万円減少したものの現金及び預金が1,098百万円増加したことによるものであります。

固定資産は8,406百万円となり、前連結会計年度末に比べ256百万円増加いたしました。これは主に有形固定資産が90百万円減少したものの、無形固定資産が183百万円、投資その他の資産が投資有価証券の為替評価等により163百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は、25,228百万円となり、前連結会計年度末に比べ668百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は2,118百万円となり、前連結会計年度末に比べ69百万円増加いたしました。

固定負債は前連結会計年度末に比べ80百万円増加し、1,242百万円となりました。

この結果、負債合計は、3,360百万円となり、前連結会計年度末に比べ149百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は21,867百万円となり、前連結会計年度末に比べ518百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が357百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は84.0%(前連結会計年度末は84.5%)となりました。

 

 

b.経営成績

当連結会計年度の業績は、売上高は15,675百万円(前年同期比2.3%増)、営業利益は1,231百万円(同48.6%増)、経常利益は1,644百万円(同19.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,043百万円(同23.9%増)となりました。

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(ベントナイト事業)

素形材分野は、昨年度から引き続き取り組んでいる価格改定の効果により、大幅な増収となりました。環境建設分野は、復興関連事業の終息や一般土木工事が低調に推移したこと等により、減収となりました。ペット分野は、PB品の需要が堅調に推移し、増収となりました。

この結果、当セグメントの売上高は11,329百万円(前年同期比 3.1%増)、セグメント利益は1,387百万円(同 125.4%増)となりました。

(クレイサイエンス事業 ファインケミカル分野)

クニピアの一般工業用途としての輸出向けの需要が減少したものの、下期以降は価格改定が進んだことから若干の増収となりました。利益面については、製造原価が上昇したことにより、大幅な減益となりました。

この結果、当分野の売上高は1,372百万円(前年同期比 2.7%増)、営業利益は34百万円(同68.0%減)となりました。

(クレイサイエンス事業 アグリビジネス分野)

農薬受託加工において、主に水稲用除草剤の需要が減少した事に加え、製造原価が上昇したことにより、大幅な減収減益となりました。

この結果、当分野の売上高は2,703百万円(前年同期比 2.6%減)、営業利益は400百万円(同30.6%減)となりました。

(クレイサイエンス事業 ライフサイエンス分野)

2022年3月より販売を開始した赤潮防除剤の需要が増加した事に加え、下期以降は化粧品用途向けでの価格改定も進んだことから、増収増益となりました。

この結果、当分野の売上高は269百万円(前年同期比 18.8%増)、営業利益は8百万円(前年同期は営業損失45百万円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前連結会計年度末に比べ325百万円増加し、8,242百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、1,921百万円(前年同期比721.0%増)となりました。これは主に、法人税等の支払額493百万円があったものの、増加要因として税金等調整前当期純利益1,563百万円、減価償却費884百万円等があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、1,040百万円(同82.8%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が812百万円、無形固定資産の取得による支出が186百万円あったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、726百万円(同57.8%減)となりました。これは主に、配当金の支払額686百万円があったことによるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ベントナイト事業

9,104,906

104.0

クレイサイエンス事業ファインケミカル分野

1,397,637

87.4

クレイサイエンス事業アグリビジネス分野

2,142,792

92.2

クレイサイエンス事業ライフサイエンス分野

40,172

101.5

合計

12,685,509

99.8

 

(注) 1.金額は販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ベントナイト事業

1,266,626

91.6

クレイサイエンス事業ファインケミカル分野

138,618

110.6

クレイサイエンス事業アグリビジネス分野

12,106

44.9

クレイサイエンス事業ライフサイエンス分野

5,414

73.7

合計

1,422,765

92.2

 

(注) 1.金額は仕入価格によっております。

 

c.受注実績

当連結会計年度におけるベントナイト事業の一部およびアグリ事業の受注実績を示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ベントナイト事業

17,784

90.7

16,290

108.7

クレイサイエンス事業アグリビジネス分野

2,133,467

91.6

63,563

51.5

 

(注) 1.ベントナイト事業の一部およびアグリ事業以外は、見込み生産を行っております。

2.金額は販売価格によっております。

 

d.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ベントナイト事業

11,329,123

103.1

クレイサイエンス事業ファインケミカル分野

1,372,733

102.7

クレイサイエンス事業アグリビジネス分野

2,703,789

97.4

クレイサイエンス事業ライフサイエンス分野

269,602

118.8

合計

15,675,248

102.3

 

(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が 100分の10を超える相手先がないため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成につきましては「第5 経理の状況 1.連結財務諸表及び財務諸表の作成方法について (1)」、重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.(1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1.(1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当連結会計年度における売上高の概況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。

(営業利益の状況)

売上原価につきましては、11,216百万円と前連結会計年度に比べ232百万円の減少(前年同期比2.0%減 )となり、売上原価率は前連結会計年度の74.7%から当連結会計年度は71.6%と3.1ポイント減少いたしました。これは主に円安による輸入原鉱価格の上昇や各種原材料価格の高騰は前連結会計年度から継続しているものの、主にベントナイト事業部門の素形材分野やクレイサイエンス事業のファインケミカル分野、ライフサイエンス分野で価格改定が進んだことによるものであります。

販売費及び一般管理費につきましては、足元の物価高騰を受けて、給与水準の引き上げ(ベースアップ)を実施したことや新型コロナウィルス感染症の5類への移行により出張等の回数が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ179百万円増加(同5.9 %増)の3,227百万円となりました。

以上の結果、営業利益は1,231百万円となり、前連結会計年度に比べ402百万円の増加(同48.6 %増)となりました。

(経常利益の状況)

営業外収益につきましては、有価証券売却益が前連結会計年度に続き発生したものの121百万円で前連結会計年度よりも135百万円減少したことにより、前連結会計年度に比べ168百万円減少の425百万円となりました。営業外費用につきましては、前連結会計年度に発生した超過保管料36百万円が当連結会計年度は無いこと等により、37百万円減少の11百万円となりました。

以上の結果、経常利益は1,644百万円となり、前連結会計年度に比べ271百万円の増加(同19.7%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益の状況)

特別利益につきましては、固定資産売却益が増加したことにより前連結会計年度に比べ4百万円増加の10百万円となりました。

特別損失につきましては、固定資産除却損が減少したものの、固定資産撤去費用引当金繰入額77百万円が発生したことにより63百万円の増加となりました。

また、法人税等合計につきましては、法人税、住民税及び事業税が12百万円増加したこと等により前連結会計年度に比べ26百万円増加の488百万円となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,043百万円となり、前連結会計年度に比べ201百万円の増加(同23.9%増)となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.キャッシュ・フローの状況

当社グループのキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

b.財務政策

当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または必要に応じ借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、金融機関とコミットメントライン契約10億円を設定し、資金調達の機動性および安定性を確保しております。

当社グループは、今後も営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。

 

⑤ 経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、現在の経営環境および入手可能な情報に基づき、最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、当社グループをとりまく経営環境は今後も厳しい状況が続くものと考えられます。このような状況下で、当社グループといたしましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略」にも記載しましたとおり、戦略的課題に重点的に取り組むことで、他社との差別化を図って、高収益化構造を実現することを最優先課題として考えております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動は、将来を見据えた新商品の開発を主眼に産学連携・企業連携による異分野とのコラボレーションを主体とした技術協力及び材料開発に取り組みました。

ベントナイト事業では、鋳物、土木・建築基礎、産業廃棄物及び放射性廃棄物地層処分分野に対する商品の安定供給と市場ニーズに適合させた機能性の高い製品の提案を図るため、既存品の品質向上のための改良技術開発を行い、より高い品質の把握のため新規の特性評価技術の考案を進めました。また、低炭素化へ貢献するための3R(リデュース・リユース・リサイクル)を実現するための取り組みも研究開発課題として取り組んでいます。新たに農業分野における土壌へのベントナイトの活用に取り組みを始めました。さらに、長年培った既存技術を応用し、産学官連携による共同研究を推進して生産動物医療分野への参入へ向けた取り組みを引き続き行いました。

止水材分野では、独自技術による高機能性商品の開発やコストダウンのための原材料及び配合検討を行いました。

クレイサイエンス事業では、粘土膜の市場浸透が進んだことにより、多くの川下企業にてバリア性付与のニーズが喚起され、連携による材料開発・課題解決に向けた取り組みを行いました。JAXA、産業技術総合研究所との共同研究にて開発した水素ガスバリアコーティング材に関しては、市場展開に向け営業活動並びに追加データ収集を継続的に実施しました。2021年5月に発行されたガスバリア用途向けナノクレイに関するISO規格に関しては、実運用に向け掲載規格項目の評価サービスを担う指定試験所に申請し認定に至りました。また、大阪大学との共同研究にて見出した粘土鉱物の三次元細胞培養におけるスフェロイド促進機能を市場展開するべく、2024年度の製品化に向け準備を進めました。合成・精製粘土、親油化粘土に関しては、引き続き新規用途開発に取り組み、先々の需要拡大への対応として生産効率向上に向けた製法開発及び設備設計も並行して行いました。

化粧品分野では、5月に開催された化粧品産業技術展(CITE JAPAN2023)にてモンモリロナイトを用いた界面活性剤フリー乳化粉末技術がアワード技術部門の銀賞を受賞し、その市場展開に向けユーザー連携による材料開発を進めました。

造粒技術分野では、造粒体の高機能化及びバリエーションの強化に向けた取り組みを行いました。

なお、当連結会計年度の研究開発費は、176百万円でありました。

当社グループの研究開発活動は、ベントナイト事業のみならず、すべての事業に関連する研究が多いため、研究開発費をセグメントに区分して記載しておりません。