文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、経営基本方針である「エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上」「受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換」「早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備」のもと、事業活動を行っております。
この経営基本方針は、当社グループの価値として掲げる「塗る・切る・磨く」の3つの領域にわたるコア技術により、付加価値の高い製品・サービスの提供を目指すものであります。
① エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上
ハイテク関連である精密分野と一般研磨分野の双方でお客様に対する付加価値の高い製品を提供するため、積極的な研究開発や、新事業への取組みを図ってまいります。
② 受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換
単に受託業という枠に留まらず、お客様にとってのカスタマーズサクセスを創り上げるエンジニアリングパートナーとなるため、お客様のニーズに対してよりスピーディーで包括的なサービスが提供できる体制づくりを図ってまいります。
③ 早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備
積極的なIT投資によるさらなる効率化とともに、多様性を尊重した働き方や人材育成の推進を図ってまいります。また、IT等を活用した場所を選ばない働きかたの促進により、従来より多くの社内コミュニケーションやステークホルダーの皆様との繋がりを促進してまいります。
当社グループでは、創立100周年となる2026年3月期に向け、MipoxWayとして定める使命、価値、志に基づく事業活動を多角的かつ積極的に進めてまいります。また、経営基本方針に基づく安定的で継続的な成長を重視しており、各段階利益を主な経営指標としております。
当社グループでは、上記3つの経営基本方針をもとに、各種課題への取組みを図ってまいります。
安定収益を確保し、成長し続けるためには、既存製品・サービスの伸長に加え、当社独自の技術で新たな製品・サービスを創出していくことが重要な課題と認識しており、次世代半導体の「課題」解決に対するニーズにMipoxのコア技術を組み合わせた「創造」×「エンジニアリング」で応えてまいります。
受託請負ではなく、課題に一緒に取組むエンジニアリングパートナーとしてMipoxにしか出来ない付加価値を提供してまいります。
製品事業・受託事業の両事業の設備・ノウハウ・人材の共有により製品能力・開発力を向上させることで両事業で最先端のニーズに対応してまいります。
さらに、通信インフラやデータセンター関連等への注目も引き続き高まっていることから、電子デバイス関連と同様に当分野へ取組み強化が重要と捉え、取組みの強化を図り、将来の安定利益の実現へつなげてまいります。
当社グループ生産拠点の再編、製品の安定供給を目的とした製造設備の有効活用、原材料における複数購買及び代替品の調査や不測の事態等へ速やかに対処することが出来るよう努めており、2022年4月1日に栃木県鹿沼市に工場を取得いたしました。受託事業生産能力の拡大、事業成長のための場所の確保、BCPの観点からの生産体制の分散となります。
現在稼働に向けて、受託事業を中心に設備、機械、人材の移動・新規導入、増強を実施しており、順次立上げを行っており、グループ内での製造・受注等の複雑化の解消と日本国内での一気通貫体制の構築、生産体制の再編を行ってまいります。
このような活動によりステークホルダーの皆様へ安定的な供給を図っております。
人・もの・情報全てとつながる工場、スマートファクトリー化の強化に向けて、引き続きデジタルデータ活用により業務プロセスの改革、品質・生産性の向上を継続発展的に実現する工場へ向けた取組強化を進めてまいります。
その中で、工場やシステムだけでなく、働く人のDX化にも注力してまいります。組織内でのDX人材を中長期的に育成し、各製造部門や、開発部門、生産管理部門等でDXに関わる知識やスキルを持つことで、スマートファクトリー化に向けた動きをより加速させることができます。
カスタマーエクスペリエンス(CX)向上の実現に向け製品・サービスの提供能力を強化していきます。
セールス部門の細分化により、リード獲得までの連携とフォローアップ体制の強化生産リードタイムの短縮と適正在庫の見直しによる即納体制の構築エンジニアリングによる製品・サービスの向上及び新しいニーズにあった新製品の開発メーカーとして「モノをつくって売る」だけのビジネスから、「価値を提供する」ビジネスへ、様々な取組みや改革でカスタマーエクスペリエンスの向上を実現してまいります。
当社は、サスティナビリティに責任ある会社となるため、環境・社会・ガバナンスを重視しております。またその中でも特に環境への配慮を最重要課題として、品質・環境方針を定めております。今後も環境に配慮した設備を設置し、大気への有害物の排出量を削減するとともに、エネルギーの効率化に努めてまいります。
2026年には創業100周年を迎えますが、その次の100年も見据えた経営を目指してまいります。
当社は、長期的利益を重視しております。企業が長期的に企業価値を高めていくためには、「お客様」(お取引先や地域社会等)を満足させること、そして、お客様を満足させる良い製品を作るためには、優れた従業員の企業貢献意欲が必要となります。
当社は、株主の皆様より提供された資本を安全に、正確かつ有効に活用し、公正な収益を生み出し、その企業利益を「株主の皆様」、「お客様」、「従業員」へ適正に配分すること、つまり、企業のさまざまな利害関係者に共通の企業利益を極大化することを企業の目的とし、経営の意思決定を行う際には、これらの利害関係者を公平にかつ同等に考慮する多元的な企業概念に基づいて経営を行い、企業価値・株主価値の増大を目指しコーポレート・ガバナンスや経営の透明性が有効に発揮するよう努めております。
当社の経営基本方針は、以下のとおりでございます。
・エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上
・受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換
・早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備
当社の「エンジニアリング」とは、社会やお客様に付加価値を創造し続ける精神、姿勢を表します。我々のコア技術「塗る・切る・磨く」で、その分野のプロフェッショナルとしてチャレンジし続け、社会やお客様が実現したいことを具現化し、世界を変えていきます。さらに、お客様の成功のための付加価値を創造する環境をつくるため、多様な働き方を推進してまいります。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針
当社が100周年を迎え、さらなる先の100年を視野に入れた経営を目指すためには、社員一人ひとりの「個」の相乗効果が不可欠です。自律的にキャリアを構築できる人材づくりと、心理的安全を基に組織風土の醸成を進めてまいります。
1.多様性を活かす
多様な考え方、バックグラウンドを持つ人材を活かす土台として、立場に関係なく本音で話せる心理的安全性の高い職場づくりに向けた取り組みを強化します。そのためには、組織づくりとして重要なポジションである管理職のマインド・スキルを向上させるための施策を講じてまいります。
2.自律的にキャリアを構築できる人材づくり
経営戦略の実現のためには、当社で働く一人ひとりが自ら考え、自ら行動をする「考動」が重要な要素となります。全社員が「自律自走」ができる仕組みづくりを進め、強いMipoxを作ってまいります。
当社は、サスティナビリティに責任ある会社となるため、担当部署を中心に全社的にリスク管理を行っております。特に環境面においては、環境に配慮した設備を設置し、大気への有害物の排出量を削減するとともに、エネルギーの効率化に努めております。
当社北杜事業所にはLNG(液化天然ガス)ボイラが設置されています。LNG(液化天然ガス)はCO2やNOx(窒素酸化物)の排出量が石油に比べて少なく、SOx(硫黄酸化物)や煤塵がまったく発生しない燃料となっております。北杜事業所では最新鋭の機器を設置し、熱源をLNG化することにより大気への有害物の排出量を削減するとともに、エネルギーの効率化に努めています。また、鹿沼事業所、福山事業所では同じくLNGを主燃料とした都市ガスを利用しております。
また、蓄熱式直接燃焼装置(RTO)を北杜・鹿沼事業所に設置し、研磨フィルム等を製造する際、コーティングの乾燥工程から発生する有機溶剤ガス(揮発性有機化合物:VOC)を集め、燃焼することにより無害化しております。
当社は、サスティナビリティに責任ある会社となるため、経済産業省が公表した「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想」に賛同しております。2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが宣言され、2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として、2013年度から46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針が示されました。当社はこの新たな方針を達成するために設立されたGXリーグの基本構想に賛同し、他の企業と協力しながら目標達成に向けて新しい取り組みを検討して参ります。
また、女性の管理職比率、男性の育児休業取得率においては、厚生労働省が発表している雇用均等基本調査結果における全国平均よりも低い数値となっております。まずは、全国平均に到達できる様に、今後も継続して環境整備を始めとした取り組みを推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
EUV露光装置の登場等、半導体を筆頭とする電子部品業界で数年ごとに生じる製造プロセスの世代交代に伴い、半導体メモリー市場は、定期的に需給バランスが大きく崩れ、季節変動が激しくなるリスクがあります。
当社グループの営業収入は国内外のエレクトロニクス業界の需要動向と密接に関係があります。従いまして、当社グループの業績は、エレクトロニクス業界を取巻く市場における景気後退と回復、並びにそれに伴う需要の増減に影響され、財務状況にも影響が及ぶ可能性があります。この市場を避けたニッチ戦略を目指し対応を進めてまいります。
また、受託事業においては、委託先の生産量によって工場稼働率が左右してしまう可能性があります。お客様・装置・最終製品用途を一極集中することなく、分散させ工場稼働率安定化を図るような営業活動を行うなど、対応を進めてまいります。
(2) 海外情勢の変化によるリスク
ウクライナ情勢緊迫化による各国間の制裁措置で、原油と天然ガス、電気といったエネルギー価格の高騰と切迫が起こり、レアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの半導体に必要な部品の製造が滞る可能性があります。電子機器材料不足はエレクトロニクス業界のサプライチェーンに影響し、当社研磨フィルムの販売数の増減やマーケットエリアの大幅変更が考えられます。
当社グループと密接な関係にあるエレクトロニクス業界の技術変化は、目覚ましいものがあります。従来から継続的に活用されている技術にとって代わる新技術が台頭する可能性があります。技術革新動向については、細心の注意を払っておりますが、予想だにしない代替の技術開発が世の中に提供された場合は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
技術情報漏洩、自社従業員、退職者、取引先、外部からの不正アクセス等、情報流出のリスクがあります。それに対して、法的保護、秘密管理体制の構築が必要となります。
当社グループが主に事業展開しているエレクトロニクス市場は需要動向の変動が激しい産業構造となっております。また、技術革新も目覚ましく当社で取り扱っているハードディスクビジネスにおいては新記録方式リリース時に使用部材変更の可能性の恐れがあります。また、最先端受託研磨ビジネスにおいては常に高品質化が求められており、技術革新により新たな競合が現れる可能性あります。技術革新動向については、外部環境含めて最新の注意を払っておりますが、自社開発スケジュールが著しく遅延した場合、競合他社に参入される恐れがあります。
(5) 商品在庫に関するリスク
当社グループは、お客様の多様な商品ニーズに対する即納体制の確立のために、多品種の在庫を有しています。そのため、市況の変化により過剰在庫を抱える可能性があり、また、商品評価損の計上により当社グループの業績及び財務状態に影響を与え、キャッシュ・フローが滞る可能性があります。
当社グループは、今後も継続的な成長を維持するため、新規事業への取組みを行ってまいりますが、その内容によっては研究開発・設備投資・人材確保のための費用が発生する可能性があり、また、安定的な収益を得るまでに一定期間が必要であることから、その期間の当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの外国通貨建取引については、為替変動リスクを軽減するための施策を実行しておりますが、完全にリスクを排除できるとは限らず、為替相場の変動によっては、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、連結財務諸表作成にあたっては、在外連結子会社の現地通貨建ての報告数値を円換算しております。換算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらない場合でも、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(8) 災害によるリスク
当社グループには、国内及び海外に活動拠点があり、これらの拠点、特に工場では、予想を遥かに超える地震や火災等により重大な被害が発生した場合には、相当期間にわたって生産活動が停止し、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクについて、事業継続計画(BCP)や危機管理規程を策定し迅速な復旧対応ができるように体制を整備するなど防災体制づくりを進めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国の経済は、引き続き消費者物価の上昇による家計への影響が懸念される中、雇用・所得環境の改善、個人消費や設備投資、輸出の持ち直しにより、景気は緩やかな回復の動きがみられました。一方、米国の通商政策や中国経済の停滞継続等により先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社グループは、経営基本方針である「エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上」、「受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換」、「早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備」のもと、当社グループの使命である「塗る・切る・磨くで世界を変える」を実現するための取り組みを継続してまいりました。
当社グループの事業環境におきましては、原材料やエネルギーコストの高騰の影響を受けるものの、世界的なAIサーバー投資から、抑制されていた汎用データセンター投資が復調傾向となり、データセンター向け光ファイバー及びハードディスク市場の回復が牽引したことによって、ハイテク関連製品全般の売上高が堅調に推移しました。受託事業については、新規顧客獲得に向けた取り組みを積極的に進めており、試作件数や問い合わせの増加が見られるものの、最終製品の市場動向や開発状況により量産開始まで時間を要する見込みであります。
その結果、当連結会計年度における当社グループの業績は売上高111億72百万円(前年同期比19.4%増)、営業利益は9億42百万円(前年同期は営業損失4億42百万円)、経常利益は8億55百万円(前年同期は経常損失1億86百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は9億11百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失4億8百万円)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
製品事業の売上高は99億56百万円(前年同期比30.7%増)、セグメント利益は13億21百万円(前年同期は75百万円のセグメント損失)となりました。米国の光ネットワークインフラ整備や生成AI関連のデータネットワーク設備強化の影響により、光ファイバーやハードディスクのハイテク関連製品の売上高が高水準を推移しました。半導体関連はプローブカードクリーニングシートを中心とした消耗材の売上高が堅調に推移しました。
受託事業の売上高は、12億15百万円(前年同期比29.9%減)、セグメント損失は3億79百万円(前年同期は3億66万円のセグメント損失)となりました。当社の受託事業は主にPCやタブレット、スマートフォン等のエレクトロニクス商品向けサービスが多く、関連製品の需要動向や最終製品の仕様変更等の影響を受け売上高は減少しました。また、製品事業と設備や人的リソース共有による固定費低減があったものの、減収減益となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ46百万円減少の159億31百万円となりました。
主な内容は、仕掛品の増加1億55百万円、有形固定資産の増加1億40百万円、投資有価証券の増加1億7百万円、現金及び預金の減少2億84百万円、売掛金の減少3億52百万円等であります。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ10億25百万円減少の74億67百万円となりました。
主な内容は、支払手形及び買掛金の増加2億65百万円、短期借入金の増加4億17百万円、未払法人税等の増加1億14百万円、賞与引当金の増加1億51百万円、未払金の減少2億35百万円、長期借入金の減少12億84百万円、繰延税金負債の減少2億60百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ9億79百万円増加の84億63百万円となりました。
主な内容は、親会社株主に帰属する当期純利益9億11百万円、為替換算調整勘定の増加71百万円等であります。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、53.1%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1億79百万円減少の23億14百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、15億96百万円の増加(前年同期は4億51百万円の増加)となりました。
主な内容は、税金等調整前当期純利益8億58百万円、減価償却費6億34百万円、売上債権の減少による増加3億84百万円、仕入債務の増加2億62百万円、棚卸資産の増加による減少2億30百万円、未払金の減少2億66百万円等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、6億95百万円の減少(前年同期は6億33百万円の減少)となりました。
主な内容は、定期預金の払戻による収入1億40百万円、有形固定資産の取得による支出6億81百万円、投資有価証券の取得による支出1億7百万円等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、10億56百万円の減少(前年同期は1億44百万円の増加)となりました。
主な内容は、短期借入金の純増額4億14百万円、長期借入金の返済による支出13億79百万円等であります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社グループの事業は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
(注) 前連結会計年度におけるFiber Optic Center, Inc.に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社の主要顧客マーケットである半導体、ハードディスク、光ファイバー関連市場は生成AIの普及等の影響もあり好調な状況が継続する見通しである一方、地政学的リスクや米国の通商政策による貿易コストの上昇、資源価格の高騰や為替変動リスクなどの先行き不透明感が依然強く、事業環境の大きな変化に備え、慎重かつ柔軟な対応が一層求められると想定されます。
このような環境下で、当社グループは2025年11月に創業100周年を迎えます。100年にわたり培ってまいりました「塗る・切る・磨く」の領域を一層拡げるべく、製品事業・受託事業共にさらなる成長を目指してまいります。製品事業においてはハイテク関連分野の新製品の開発に加え、一般研磨分野ではIH粉体塗装技術を活用した自社製品の開発を進め、受託事業では研磨加工分野でCMP案件を中心に領域拡大を目指しております。また、引き続きECを活用した販売チャネルの多様化や製造DXによる工場の自動化・省力化等を進めると共に、将来に向け人材育成をはじめとする人的資本への投資を強化してまいります。
2026年3月期の業績予想につきましては、売上高は110億円、営業利益は9億円、経常利益は10億円、親会社株主に帰属する当期純利益は7億円を見込んでおります。
当社グループは、国内外での事業活動について中長期的な視野から資金需要を認識しており、運転資金及び設備投資資金については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金の他、社債の発行、エクイティファイナンス及び金融機関からの借入等による資金調達にて対応しております。
資金調達については、調達コストとリスク分散を勘案し、調達手段の多様化を図ることで、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めております。
また、これらの資金需要に対応するため、GCMS(グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、当社グループにおける資金の可視化、資金の有効活用や金融費用の削減、またリスク管理の高度化を図っております。
当連結会計年度末における社債及び借入金、リース債務を含む有利子負債残高は、10億27百万円減少し、53億39百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は23億14百万円となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
1.財務上の特約が付された金銭消費貸借契約
(1) 借入契約
当社は、既存借入金のリファイナンスを目的として、国内金融機関2社各社のそれぞれと借入契約を締結しております。
主な契約内容は以下のとおりであります。
(日本生命保険相互会社)
① 契約締結先 日本生命保険相互会社
② 借入総額 300,000千円
③ 借入期間 2023年7月31日~2026年7月31日
④ 借入金利 固定金利
⑤ 担保 なし
⑥ 財務制限条項 a.2024年3月期決算(当該期を含む)以降、各年度の決算期の末日における連結貸借対照表に
示される純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日または2024年3月に終了する決算期の末日における連結貸借対照表に示される純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上に維持できなかったとき。
b.2024年3月期決算(当該期を含む)以降、各年度の決算期における連結損益計算書に示され
る経常損益が2期連続損失となったとき。
⑦ 借入残高 150,000千円(2025年3月31日現在)
(株式会社足利銀行)
① 契約締結先 株式会社足利銀行
② 借入金額 500,000千円
③ 借入期間 2023年9月27日~2028年8月31日
④ 借入金利 変動金利
⑤ 担保 担保については、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しておりま
す。
⑥ 財務制限条項 a.債務者の各事業年度の末日における報告書等に含まれる、連結の損益計算書に記載される経
常損益を、2024年3月期以降、2期連続して損失としないこと。
b.債務者の報告書等に含まれる各事業年度の末日における連結の貸借対照表に記載される純資
産の部の合計金額を、2024年3月期以降、借入人の2023年3月末日における報告書等に含まれる連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%(1円未満は切り捨てる。以下、本号において同じ。)、又は直前の事業年度の末日における報告書等に含まれる連結の貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額の75%のいずれか大きい方の金額以上に維持すること。
⑦ 借入残高 341,654千円(2025年3月31日現在)
(2) シンジゲートローン契約
当社は、既存借入金のリファイナンスを目的として、株式会社みずほ銀行をエージェントとするシンジケートローン契約を締結しております。
主な契約内容は以下のとおりであります。
(第1回)
① 契約締結先 株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行
② 組成金額 2,000,000千円
③ 借入期間 2016年9月16日~2026年8月27日
④ 借入金利 変動金利
⑤ 担保 担保については、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しておりま
す。
⑥ 財務制限条項 a.2017年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の
金額を直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
b.2017年3月期決算以降の決算期を初回の決算期とする連続する2期について、各年度の決算
期における連結の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
⑦ 借入残高 280,000千円(2025年3月31日現在)
(第2回)
① 契約締結先 株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行
株式会社商工組合中央金庫、株式会社山梨中央銀行
② 組成金額 1,200,000千円
③ 借入期間 2020年12月30日~2025年12月30日
④ 借入金利 変動金利
⑤ 担保 担保については、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しておりま
す。
⑥ 財務制限条項 a.2021年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の
金額を直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
b.2021年3月期決算以降の決算期を初回の決算期とする連続する2期について、各年度の決算
期における連結の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
⑦ 借入残高 180,000千円(2025年3月31日現在)
(第3回)
① 契約締結先 株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社三井住友銀行
② 組成金額 1,600,000千円
③ 借入期間 2022年4月28日~2027年4月30日
④ 借入金利 変動金利
⑤ 担保 担保については、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しておりま
す。
⑥ 財務制限条項 a.2022年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の
金額を直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
b.2022年3月期決算以降の決算期を初回の決算期とする連続する2期について、各年度の決算
期における連結の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
⑦ 借入残高 720,000千円(2025年3月31日現在)
(3)コミットメントライン契約
当社は、運転資金の効率的な調達を行う目的として、2025年3月24日付で株式会社みずほ銀行をアレンジャー兼エージェントとするコミットメントライン契約を締結しております。
主な契約内容は以下のとおりであります。
① 契約締結先 株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行
株式会社商工組合中央金庫
② 借入極度額 4,500,000千円
③ 契約期間 2025年3月31日~2027年3月31日
(但し、当社に1年間の延長オプションが付与されており、オプションを実行した場合には、2025年3月31日~2028年3月31日へ延長可能)
④ 借入金利 変動金利
⑤ 担保 担保については、「第5 経理の状況 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しておりま
す。
⑥ 財務制限条項 a.2025年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の
金額を直前の決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
b.2025年3月期決算以降の決算期を初回の決算期とする連続する2期について、各年度の決算
期における連結の損益計算書に示される経常損益が2期連続して損失とならないようにすること。
⑦ 借入残高 2,000,000千円(2025年3月31日現在)
当連結会計年度における研究開発活動におきましては、当社経営基本方針に掲げる「エンジニアリングアプローチによる製品事業の付加価値向上」「受託事業からエンジニアリングサービス事業への転換」「早い変化と多様性に対応できる経営基盤の整備」に基づき進めてまいりました。
当社では、受託事業においてSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの次世代半導体材料・ウェーハの加工や結晶評価の研究開発に取り組んでまいりました。製品事業においては、ハードディスクメディアや光ファイバー、半導体検査用プローブカード、プリント基板などのハイテク用途向け研磨材および環境に配慮した研磨材など高付加価値品の研究開発を中心に取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
主な研究開発活動は次のとおりであります。
(1) ハードディスク関連
次世代熱アシスト磁気記録メディアに対応するため、新たな研磨材、バインダー、および塗布技術を用いて研磨フィルムの開発に取り組んでまいりました。
(2) 光ファイバー関連
米国における光ネットワークインフラの整備や生成AIを支えるデータネットワーク設備の拡充によるデータセンター用コネクタ市場の活況を受け、同コネクタ向けの初期工程用の粗研磨フィルムから最終仕上げ用の精密研磨フィルムおよび研磨スラリーの開発に注力してまいりました。
(3) 一般研磨関連
一般研磨関連製品では、次世代半導体パッケージ向けとする研磨ホイールの開発を進めてまいりました。次世代半導体パッケージでは大型化が進んだことによる反りの問題を解決するために、熱膨張係数の低い材料(低CTE材料)が積極的に採用されております。この低CTE材料の一部は非常に高硬度であり、従来の研磨ホイールでは十分な研磨レートが得られませんでした。今後の需要拡大が見込まれる低CTE材料を採用した次世代半導体パッケージへの対応として、研磨力向上を図った不織布ホイールの開発を進めております。
また、労働環境に関する法令の厳格化に伴い、より安全性に配慮した製品の開発にも取り組んでまいりました。2024年4月1日から適用された労働安全衛生法の一部改正にともない主要研磨材であるGC砥粒(炭化ケイ素)が発がん性区分1Bに分類されたことにより、作業環境改善に対する関心は近年急速に拡大しております。このようなニーズの高まりに応える最初の取り組みとして、発がんリスクのない研磨布紙のラインナップ拡充を進めております。
この結果、当連結会計年度における製品事業の研究開発費は
国立研究開発法人からの助成を受け、昨年から継続して溶液法SiC結晶の内部欠陥を観察する装置を開発してまいりました。大学との共同研究開発成果についても国内外の学会発表等を積極的に行い認知も向上しており、今後はこれらの成果をベースとしたビジネスモデルを構築してまいります。また、経済産業省グリーンイノベーション基金、次世代デジタルインフラの構築に参画し、「超高品質・8インチ・低コストSiCウェーハ開発」活動を行っております。「大口径ウェーハ用ラインの開発」「ウェーハ加工工数削減技術の開発」「溶液法結晶の評価技術の確立」の3項目でそれぞれ年度の開発目標を設定し、2024年度は目標を達成しております。これら研究開発した技術を用いて、8インチ用SiC加工ライン、評価装置の提供を今後計画してまいります。
また、前年度から引き続き、8インチSiCウェーハ市場向けアプリケーションに重点を置いた開発を進めてまいりました。専用研磨フィルムの開発と平行し、本用途に適した仕様を有する新型ノッチ/エッジ研磨装置の開発に着手し、同装置を活用した新たな水準での受託研磨加工サービス提供に向け、準備を進めております。
この結果、当連結会計年度における受託事業の研究開発費は