第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)企業理念、経営戦略、経営方針

 当社は、「1.世界に通じる基礎を造る 2.進歩の原点は現場にあり 3.仕事を天職として社会に尽くす」を企業理念とし、総合基礎建設業として社会に貢献してまいります。この企業理念の下、当社は基礎建設の事業を日本国内市場からアセアン市場に拡大するため、持株会社体制を採用し、アセアン各国の基礎資材の製造及び建設を事業とする企業と連携し、アセアン市場と日本市場を一体化して基礎建設事業の推進を図ってまいります。

 

(2)経営環境

 国内の主たる事業会社であるジャパンパイル㈱は、コンクリート杭の製造・施工に加え、鋼管杭並びに場所打ち杭による杭基礎工事全般を手掛ける国内唯一の総合基礎建設会社であります。業界屈指の設計部門と施工部門を擁し、お客様の多種多様なニーズに応じて杭基礎工事のすべての分野から最適な設計提案を行うとともに、独自の施工マニュアルに基づいて高品質の施工を実施しております。海外においては、現地パートナー企業の生産能力や営業力、日本で培ってきた建設基礎の高度な技術力を活かして他社との差別化を図っております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、品質の向上と効率化により施工及び生産体制の強化を実現し、安定した経営基盤の確立を図ることの連結経営指標として、営業利益、自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。また、中期経営計画(2024年4月~2029年3月)「新5か年計画」において、当社の目指す姿と基本方針として「基礎建設業界を代表し、高い専門性を有するリーディングカンパニー」を掲げ、事業戦略とサステナビリティ戦略を策定しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、中期経営計画(2024年度~2028年度)「新5か年計画」において、当社グループの目指す姿と基本方針として、「基礎建設業界を代表し、高い専門性を有するリーディングカンパニー」を掲げ、事業戦略とサステナビリティ戦略を策定し以下のとおり中長期的に取り組んでまいります。

① 事業戦略

 大径・大規模工事へのシフトなど、ビジネス変革を実現するための最適かつ最短ルートの効率化を進め、マンパワー余力を創出することで、既存事業の競争力を強化し全杭種でのトップシェア実現や新分野マーケット開拓に向けた体制を整備してまいります。また、事業領域拡大に向け、国内での技術革新を進めると同時に、海外市場開拓に向けグループ全体の技術力向上に努めてまいります。

② サステナビリティ戦略

 「気候変動への取組」、「働きやすい職場の実現」、「ガバナンス体制の一層の充実」などのESGの取組を推進し、持続的に成長できる経営基盤の構築を進めてまいります。

 「気候変動への取組」については、経営上の重要課題の一つとして認識し、各種環境対策を実行するとともに、TCFD提言に基づく情報開示に向けて更なる取組を進めてまいります。

 「働きやすい職場の実現」については、長期的視野に立ったグループの人材育成、人材増強に取り組んでまいります。また、性別・国籍・年齢等にかかわらず誰にとっても働きやすい職場(健康で安心できる働きやすい会社)であるよう多様性の確保に努めてまいります。

 「ガバナンス体制の一層の充実」については、指名・報酬諮問委員会を設置(2024年6月)し、取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化し、コーポレートガバナンス体制の一層の充実を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、「世界に通じる基礎を造る」「進歩の原点は現場にあり」「仕事を天職として社会に尽くす」を企業理念として、基礎建設事業を通じて、大規模地震等の自然災害に対する安全性、信頼性の確保という社会的課題解決に取り組むことで、持続的成長と中長期的な企業価値の向上の実現を目指しております。当社グループは、社会貢献活動等を通じて、サステナビリティ全般に関する理解を深め、「気候変動への取り組み」と「人的資本」の2点をサステナビリティに関する重点項目として取り組んでおります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス

 気候変動への取り組み、人的資本に関連するグループ内の関係部門の部門長を中心に、当社の社長直属のワーキンググループを組成し、サステナビリティ関連のテーマについて集中的に検討を行い、定期的に取締役会、執行役員連絡会に報告を行っております。

 

(2)気候変動への取り組み

 当社グループはTCFD提言に賛同し、TCFD提言に基づいた取り組みを通じて、企業価値の向上と社会への貢献を実現してまいります。

① ガバナンス

 当社グループでは、気候変動への取り組みを経営課題の一つとして認識し、CO2排出削減をはじめとした気候変動に関する重要な案件について、取締役会にて報告・審議・決議を行っております。最高執行責任者である社長は、取締役会において、CO2排出削減に関する重要な案件、気候変動関連問題についての最高責任を負っており、社長直属の「気候変動に関するワーキンググループ」において、気候変動関連の業務や活動を行っております。

② 戦略

a.重要なリスクと機会

 2030年(短期)、2050年(中期)、2100年(長期)を想定して気候変動に伴う当社のリスク・機会を特定し、重要度の評価を行いました。特定されたリスク・機会のうち、特に重要なものは次に示す表のとおりです。

 特定されたリスク・機会の重要度は「確からしさ」(外部レポート、過去に生じた影響、当社の計画・方針)の評価と、「影響の大きさ」(リスクについては影響の深刻度、影響をうける部門、影響をうける範囲、機会については市場規模、生産能力、競争優位性)により重要度を判定しました。

 特定されたリスクと機会のうち、「炭素税の導入」と「気候変動による災害の激甚化」については、当社の組織戦略に反映すべく、公的機関の将来予測結果に基づくシナリオ分析を行い、財務影響の試算を行いました。

 

◆重要なリスク

主なリスク

自社への影響

重要度評価

時期

優先課題との関係※

炭素税の導入

・エネルギー価格上昇による電気使用コスト、原材料・製品輸送コストの増加

・原材料・セメント・鋼材価格の上昇による資材調達コストの増加

中~高

短中期

①・③

環境規制

/GHG排出規制の強化

・省エネ設備の導入、既存設備の更新、関連インフラの整備が必要となり、設備投資コストが発生・増加する。

・低炭素コンクリート等、使用材料の変更が求められ、新たな機材等を導入するコストが発生する/材料変更に伴い生産コストが増加する。

中~高

短中期

自然災害の頻発化

・工場、ピット(建設機械や機器の設置個所のくぼみ)の浸水被害や落雷による機械故障により、生産が停止/生産能力が低下し、売上や利益が減少する。

中長期

平均気温の上昇

・労働環境が悪化することにより建設・製造部門で人員不足が生じることで、人員コストが増加/人員不足による事業縮小による売上の減少

中~高

中長期

 

 

◆重要な機会

主な機会

自社への影響

重要度評価

時期

優先課題との関係※

炭素税の導入/環境規制の強化に応じた効率の改善

・従来のコンクリート工法の見直しにより発生残土を軽減することで、残土の運搬コストを低減/同工法の活用が増えることによる売上の増加

・リサイクル杭(既存杭)と新規環境配慮杭のハイブリッド設計の組み合わせによる売上の増加

中~高

短中期

①・②

低炭素技術への移行による低炭素工法、建物における再エネ活用、ZEB・ZEH、DX対応施設に対するニーズの増加

・省エネルギーにつながる新工法の開発による売上の増加

・地熱を活用した地熱トルネード工法、施工効率の高いSmart-MAGNUM工法の受注機会・売上の増加

短中期

①・②

土砂災害、洪水、高潮の頻発・激甚化

・災害・浸水地域からの工場等移転に伴う新築需要/浸水リスク増による避難所(学校を含む)の増改築需要が増加し、売上が増加する

中~高

中長期

物流コストの上昇に伴う市場の変化

・海外投資事業から国内事業へのシフトが進むことで、国内の建設需要が増加し、当社の受注機会・売上が増加する。

短中期

①・③

※「優先課題との関係」の符号は以下の当社優先課題の通りです

① 事業の拡大:効率的施工による省資源化、生産・施工における継続的技術革新

② 収益構造の転換:再エネ分野での基礎工事、アセアン地域の事業拡大

③ 経営基盤の強化:パートナーシップの推進、人材育成、デジタル化の推進

 

b.シナリオ群の定義

 移行リスクとして炭素税導入による追加コスト、物理的リスクとして洪水・高潮発生時に拠点が浸水することによる追加コスト・被害額、を対象とし、シナリオ分析は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、1.5℃/2℃上昇、4℃上昇を想定しました。

 

使用するシナリオ群

温度上昇帯

(2100年)

IEA

WEO

IPCC

RCP

IPCC

SSP

4℃上昇

RCP8.5

SSP5-8.5

(化石燃料依存)

2℃上昇

APS

(ネットゼロ宣言国は全て達成)

RCP2.6

SSP1-2.6

(持続可能性重視)

1.5℃上昇

NZE

(2050年ネットゼロ達成)

SSP1-1.9

(持続可能性重視)

使用する財務影響試算

炭素税導入

洪水

高潮

 

 

c.インパクト評価

 重要度が高く、試算可能なリスクについて、移行リスクとして炭素税導入による追加コスト、物理的リスクとして洪水・高潮発生時の拠点の浸水による追加コスト・被害額を試算しました。

イ.移行リスク

 国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、国内(連結含む)の事業所等のエネルギー消費に伴い排出される温室効果ガス排出量に応じて課税される追加コストを算定しました。1.5℃上昇シナリオで追加コストが大きくなり、2050年の影響額は約6億円、2024年3月度売上に対して約0.6%となります。

リスク

シナリオ

財務影響(売上対比)

2030年(短期)

2050年(中期)

炭素税導入

1.5℃上昇

4億円(0.4%)

6億円(0.6%)

2℃上昇

4億円(0.4%)

5億円(0.5%)

(注) 1.計算方法

現在の二酸化炭素排出量×将来の炭素税価格

2.使用した炭素税価格の将来シナリオ

IEA(国際エネルギー機関)が提供するWorld Energy Outlook2022に記載される下記シナリオを採用。

・ 1.5℃上昇:NZE2050(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)

・ 2℃上昇 :APS(Announced Pledges Scenario)

 

ロ.物理的リスク

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提供する将来予測データを用いて、国内事業所・工場が、洪水又は高潮で浸水被害を受けた場合、事業継続に必要な代替オフィスの借り上げ費(追加コスト)、事業停止による売上減少額、浸水による資産毀損額を算定しました。4℃上昇シナリオで財務影響が最も大きくなり、2100年の影響は約24億円、2024年度3月期売上に対して約2%となります。

リスク

シナリオ

財務影響(売上対比)

2030年(短期)

2050年(中期)

2100年(長期)

洪水・高潮による拠点の浸水

1.5℃上昇

(高潮)

-億円( -%)

-億円( -%)

-億円( -%)

2℃上昇

(洪水・高潮)

3億円(0.3%)

6億円(0.6%)

22億円(2.1%)

4℃上昇

(洪水・高潮)

11億円(1.1%)

15億円(1.5%)

24億円(2.3%)

(注) 1.計算方法

自然災害による追加コスト・被害額(将来-現在)を計算

追加コスト・被害額は、公的機関が公表するデータを用いて洪水・高潮発生時の各拠点の浸水深を判定し、浸水被害実績に基づく国の算定方法に準拠して、拠点別にオフィス代替費用、売上減少額、資産毀損額を試算。

2.使用した浸水深の将来シナリオ

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が提供する下記シナリオを採用。

・ 洪水:AR5(第5次評価報告書)のRCPシナリオ(2℃、4℃上昇相当)

・ 高潮:AR6(第6次評価報告書)のSSPシナリオ(1.5℃、2℃、4℃上昇相当)

 

③ リスク管理

 当社では、グループの横断的且つ網羅的なリスクの監視及び対応の報告・協議を社長が主宰する「執行役員連絡会議」にて行っています。国内事業のリスクについては、関連会社も含めた各部門のリーダクラスの職員が参加するワークショップを適宜開催して対応しております。

 

 ワークショップにおける具体的なリスク洗い出し手順は以下の通りです。

a.気候変動に伴い、短期、中期及び長期的に想定される事業環境の変化を洗い出して取りまとめる。

b.これをもとに各部門で国内事業の不確実性に与える影響の洗い出しと評価を行う。

c.各部門からの不確実性についてワークショップにてレビューする。

d.不確実性の重要度の判定、その原因となる状況変化の特定・見直しを行い、結果を国内事業リスクとして「気候変動に関するワーキンググループ」が取りまとめる。

e.「気候変動に関するワーキンググループ」から「執行役員連絡会議」に報告し、検討する。

f.特定されたリスクは、ワークショップのメンバーを通じて、国内事業全体でPDCAサイクルにのせて「執行役員連絡会議」が総括レビューする。

 

④ 指標及び目標

 当社では、2023年度(2023年4月~2024年3月)における当社国内連結事業*に伴う温室効果ガス排出量を、国際基準であるGHGプロトコルに準拠して算定しました。算定の対象は、2022年度はScope1(燃料の燃焼、工場廃水の処理)、Scope2(他社から供給された電気使用)としましたが、2023年度はこれらに加えてScope3(その他の間接排出)についても算定しました。Scope1、Scope2及びScope3の排出量は以下のとおりです。

 今後、グループ全体として温室効果ガス排出削減の取組みを進めるため、具体的な排出量削減目標の設定に取り組んでまいります。

*対象となる「国内連結事業」の子会社:ジャパンパイル㈱、ジャパンパイル基礎工業㈱、シントク工業㈱

 

区分

2022年度

排出量(tCO2)

2023年度

排出量(tCO2)

Scope1(燃料の燃焼、工場廃水の処理)(注)1.2

14,081

12,127

Scope2(電気の使用)

ロケーション基準(注)3

4,664

4,212

マーケット基準(注)4

4,713

4,432

計(Scope1+2)

(ロケーション基準)

18,745

16,339

(マーケット基準)

18,794

16,559

Scope3(その他の間接排出)(注)5

算定せず

388,841

(注) 1.燃料の燃焼:年間使用量×単位発熱量×CO2排出係数×44/12

単位発熱量、CO2排出係数は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」に基づく値を採用。ただし、ジャパンパイル㈱の都市ガスに関する単位発熱量は供給会社より入手した値を採用した。

2.工場廃水の処理:年間の工場廃水処理施設流入水量×流入水中の濃度

3.全国平均係数に基づき算定

4.「地球温暖化対策の推進に関する法律」で定められた電気事業者別の調整後排出係数に基づき算定

 

5.その他の間接排出内訳

Scope3内訳

2023年度排出量(tCO2)

備考

カテゴリ1

購入した製品・サービス

350,527

主にコンクリートパイルの原材料

カテゴリ2

資本財

8,167

 

カテゴリ3

その他燃料

5,080

 

カテゴリ4

輸送・配送(上流)

4,404

 

カテゴリ5

事業廃棄物

161

 

カテゴリ6

出張

155

 

カテゴリ7

雇用者の通勤

356

 

カテゴリ8

リース資産(上流)

対象外

カテゴリ9

輸送(下流)

対象外

カテゴリ10

販売した製品の加工

13,068

 

カテゴリ11

販売した製品の使用

対象外

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

5,566

 

カテゴリ13

リース資産(下流)

90

 

カテゴリ14

フランチャイズ

1,263

 

カテゴリ15

投資

対象外

合計

388,841

 

 

 

(3)人的資本

① 戦略

 当社グループは、経営目標として「基礎建設業界のリーディングカンパニーとしてサステナビリティ社会に貢献する」を掲げ、その実現のための最重点施策として長期的視野に立ったグループの人材育成、人材増強に取り組んでおります。また、性別・国籍・年齢等にかかわらず誰にとっても働きやすい職場(健康で安心できる働きやすい会社)であるよう多様性の確保に努めております。

 斯業界では、少子高齢化に伴う技術者・技能労働者の不足、時間外労働の特例の撤廃等への対応が急務となっております。そのような環境の中、基礎建設の設計に関する専門家である建築基礎設計士、杭基礎工事を安全かつ効率的に施工する国の登録基礎ぐい工事試験合格者等の公的資格取得の他、社内資格制度、施工マニュアル、施工管理者育成プログラムを整備するなど、基礎建設に関する専門的人材の育成に注力しております。

 そのほか、海外技能実習制度等の在留資格を活用して海外事業部門の人材育成にも取り組んでおります。これらの戦略により、基礎建設事業の専門性、独自の技術体系の構築を目指しております。

 

② リスク管理

 適切な労働時間管理を維持すべく、勤怠管理システムの導入、専門コンサルタントによる労働管理研修の実施など、労務管理上のリスク対応を行っています。

 国内の女性管理職は1名(外国籍、2025年3月31日現在)で、海外から技術者・技能者を国内工場及び設計部門等へ受け入れるにあたって、日本での受け皿としての役割を担っております。なお、有価証券報告書提出日現在における国内の女性管理職は4名です。

 

③ 指標及び目標

 建築基礎設計士54名、同士補38名、工学博士5名、国の登録基礎ぐい工事試験合格者の基礎施工士269名を育成しております。今後、資格の対象となる業務の従事者全員の資格取得を目標とし、目指してまいります。また、ベトナムの事業子会社Phan Vu Investment Corporationからはこれまで技能実習生など累計34名を受け入れてきました。また、ミャンマーの事業子会社VJP Co., Ltd.からも同様に19名の人材を受け入れてきました。

 基礎建設業としての当社グループ独自の強みとなっております基礎設計部門は、総勢52名の陣容に成長し、業界随一の規模を有しています。その内30名が女性部員であり、女性の活躍が大きなウエイトを占めています。将来的には同部門に限らず女性管理職が増え、一層活躍するようになることを期待しています。

 なお、人数は2025年3月末時点での実績です。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合でも適切に対処するよう努める方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、当社グループの投資に関連するリスクを全て網羅するものではありません。

(1)当社グループの再編等について

 当社グループは、2010年7月にベトナム最大のコンクリートパイル製造・施工会社であるPhan Vu Investment Corporationと資本提携及び業務提携を締結、持分法適用関連会社化を経て2013年12月には子会社化、2015年6月にはミャンマーにおいてVJP Co., Ltd.を共同出資で設立するなど、当社グループの競争力を強化するため、同業他社との提携や同業他社への資本参加等を積極的に推進しております。また、2015年10月には国内外での更なる積極的な事業展開を見据えて各国に事業子会社を配置する持株会社体制に移行しております。当社は、今後も引き続き、成長著しいアセアン地域における基礎建設関連事業を推進するため、こうしたグループ拡大策を検討し取り組んでいく方針ですが、当社が期待する効果が実現する保証はありません。

(2)製品・工法開発について

 当社グループは、他社との差別化を図り付加価値を高めるため、永年にわたり技術やノウハウを蓄積してまいりました。また、総合基礎建設業として地域・環境面への社会に貢献するという企業行動基準から、優秀な技術者の育成や杭材及び杭施工法の開発に力を注いでまいりました。これらの製品や施工法の開発及び公的な評定取得や国土交通省の認定取得には多くの時間とコストが必要とされますが、これらの投資が常に迅速に回収される保証はありません。

 また、当社グループは製品・工法開発にあたり知的財産(商標権、特許権、意匠権等)の調査を行い、他者の権利に抵触する製品・工法開発を避ける努力をしております。しかしながら他者が知的財産の申請を行ってから公表されるまでに一定の時間を要することや、権利が確定するまでに時間がかかることがあり、当社グループが開発し製造・販売した製品や工法が他者の知的財産に抵触する可能性を排除することができません。その場合、他者から営業権や知的財産権の侵害と損害賠償請求されることも想定され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)業界の寡占状況について

 当社グループが属するコンクリートパイル業界において、他社との差別化を図るためには、上記で述べたように優秀な技術者の育成のみならず、製品及び施工法の開発や認定工法を取得することが重要性を増しているものと認識しております。このため、これら多額の開発費負担を抑えるため、認定工法の供与やコンクリート杭の相互供給などが行われるものと考えられると同時に、これらの費用負担が可能な大手企業による再編と寡占化が進みつつあります。当社グループは、業界大手企業として、業界再編と寡占化の状況に対して必要な施策をとり主導的な役割を果たしていく方針でありますが、当該方針が実現する保証はありません。また、寡占化の進展に伴い、当社グループが想定する以上の価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料等の市況変動の影響について

 当社グループは、プレストレスト高強度コンクリートパイルの製造・施工を主力業務としております。その原材料にはセメント、PC鋼棒等を使用しており、仕入先からの価格引き上げ要請により変動し、コストが上昇することもあります。当社グループといたしましては、随時市況価格を注視しながら価格交渉を行い仕入価格を抑制しつつ、原価上昇分を販売先へ転嫁する努力を行っておりますが、価格動向によっては製造原価及び工事原価高により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)市場環境について

 当社グループが扱うコンクリートパイルの製造・施工業務は、建築物の基礎工事に関連する事業であり、当然ながら建設投資の多寡が受注に影響します。当社グループは、同業他社と比較して相対的に公共投資関連事業への依存度は低いものと認識しておりますが、民間投資も含めた住宅投資や設備投資等の動向によっては受注が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制について

 当社グループの主たる事業は建設業に属しており、建設業法第3条第1項及び第2項により法的規制を受け、「建築基準法」に準拠するように求められております。主要な子会社であるジャパンパイル㈱は建設基礎杭の販売・施工にあたり、以下のとおり許認可及び登録をしております。

 当社グループは、これらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現状において当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、法令違反等によりその許認可等が取り消された場合には、当社グループの運営に支障をきたし、財政状態及び経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、2007年6月に実施された建築確認制度の変更のように、これらの規制の改廃や新たな法的制度が設けられる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

許認可等の名称

有効期限

取消事由等

建設業許可

(特定建設業許可)

土木工事業

(大臣許可第25777号)

2030年5月

建設業法第29条・第29条の2・第29条の4、第28条第3項及び第5項

 

とび・土工工事業

(大臣許可第25777号)

2030年5月

 また、当社グループは、国内及びアセアン地域において基礎工事関連事業を行っており、国内においては上記の建設業関連の法令に加えて、会社法、金融商品取引法、環境関連法令、各種法令のほか、海外においては各国の法令・規制の適用を受けております。これらの法令遵守及び社会規範の遵守をグループの全役職員に浸透させるべく、企業行動基準を作成して徹底を図っておりますが、万が一、コンプライアンス違反が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの棄損により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)施工物件の瑕疵について

 当社グループは、日本全国及びアセアン地域において基礎工事を行っており、工事の際には十分な地盤調査、基礎設計、施工方法等の事前検討を行っておりますが、地盤は様々な土質で構成され、また予期せぬ障害物が現われることもあり、予見できない瑕疵によって施工品質の悪化や施工期間の延長が生じる可能性があります。瑕疵に伴う損害賠償請求等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)労災事故災害について

 当社グループは、各地で年間数千件もの基礎工事を行っており、その作業現場は重機に囲まれた屋外作業が中心となっているため、他の産業に比べ重大な労災事故が発生する危険性が高いものと認識しております。当社グループとしては、現場の安全教育の徹底や定期的なパトロールの実施等により事故の発生防止に全力を挙げております。また、事故が発生した場合の金銭的な損失に備え、各種損害保険に加入しておりますが、仮に死亡事故等の重大災害が発生した場合は、人的損失はもちろんのこと、それに伴う社会的信用の失墜、補償等を含む災害対策費用、工期の遅れによる収益の悪化等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9)海外事業について

 当社グループは、アセアン地域において関係会社を通じて基礎工事関連事業を展開しておりますが、関係会社が所在している国における政治・経済状況の変化、法律・税制の改正、外国通貨レートの変動の影響などによって、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(10)自然災害等について

 当社グループは、国内及びアセアン地域において事務所、工場並びに施工現場を展開しており、風水害、地震、津波等の大規模自然災害の発生により、建物・設備や従業員への直接的な被害のほか、通信システム、原材料等の供給網の遮断等による間接的な被害を受ける可能性があります。また、新型コロナウイルス等感染症の蔓延により事業の中断や延期が発生する可能性もあります。このような自然災害や新型コロナウイルス等感染症の被害が発生した場合、被害復旧にかかる費用や中断・延期による損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要が堅調に推移し、雇用・所得環境の改善から緩やかな回復基調が続く一方、世界各地の地政学的リスクに加え、米国通商政策の動向等で、先行き不透明な状況が続いています。

 当社グループが事業展開しているアセアン地区においては、ベトナムでは経済全体は回復基調にあり、地域差はあるものの、不動産・建設市場に回復の兆しが見られます。また、ミャンマーでは、クーデター以降、政情不安の影響が続き、経済全体の停滞が続いています。

 

当連結会計年度における各セグメントの概況は以下のとおりです。

a.国内事業

 国内事業では、先行きの建設需要は底堅いものの、建設資材高騰や労働需給の逼迫及び時間外労働の上限規制を背景として、ゼネコンサイドにおいて、着工時期の設定等に慎重になる傾向が続いており、国内コンクリートパイル業界の全体出荷量は前期比で6.3%の減少となりました。

 当社グループは、事業基盤の強化を図るべく大径・大規模工事へのシフトを継続して推進しておりますが、一方で、大規模工事において着工時期の変更が生じた場合、業績変動幅が短期的に大きくなる傾向にあります。こうした中、主力工法である「Smart-MAGNUM工法」の性能向上・施工効率改善に注力し、当社グループのコンクリートパイル出荷量は前期比9.6%の増加となりましたが、場所打ち杭・鋼管杭での大型工事の減少や、前期末からの受注競争激化から、工事の収益性は低下しました。

 結果、国内事業の売上高は829億78百万円(前期比4.6%減)、営業利益は48億18百万円(同21.6%減)となりました。

b.海外事業

 海外事業では、ベトナムの事業子会社Phan Vu Investment Corporationは、不動産・建設市場での回復の兆しは見られますが、競争環境は依然として厳しい状況が続いています。また、ミャンマーの事業子会社VJP Co., Ltd.は事業活動がほぼ停止した状況が続き、ミャンマー事業については合弁を解消し撤退する方針としました。

 結果、海外事業の売上高は178億77百万円(前期比9.8%増)、営業損失は5億19百万円(前年同期は営業利益 9億13百万円)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は1,008億3百万円(前期比2.3%減)となりました。利益面では、営業利益43億33百万円(同38.2%減)、経常利益38億72百万円(同38.0%減)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、国内で政策保有株式の売却による投資有価証券売却益3億75百万円の計上や、ミャンマー事業撤退にかかる事業撤退損4億95百万円の計上などで、23億46百万円(同38.6%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は196億98百万円となり、前連結会計年度末より34億15百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動において得られた資金は、前年同期比4億30百万円増加し46億71百万円となりました。この要因は、支払サイトを短縮したことなどによって、ファクタリング未払金が25億9百万円減少、また、法人税等の支払い18億46百万円などにより減少しましたが、税金等調整前当期純利益の計上35億98百万円、減価償却費の計上34億52百万円、売上債権の減少22億40百万円などにより増加したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動において使用した資金は、前年同期比15億43百万円減少し24億5百万円となりました。この要因は、投資有価証券の売却による収入4億78百万円などにより増加しましたが、有形固定資産の取得による支出27億99百万円などにより減少したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動において得られた資金は、11億10百万円(前年同期は39億60百万円の支出)となりました。この要因は、短期借入金の純増加7億71百万円、長期借入れによる収入40億円、長期借入金の返済による支出17億70百万円、配当金の支払額18億9百万円などによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

25,043

115.8

海外事業

10,961

113.9

合計

36,005

115.2

 (注) 金額は、製造原価によっております。

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

84,323

119.9

34,333

144.2

海外事業

22,838

116.2

8,201

108.2

合計

107,161

119.1

42,535

135.5

 (注)1.受注金額には、工事代金が含まれております。

2.国内事業は主要な子会社であるジャパンパイル㈱の受注実績を記載しております。

3.国内事業における受注残高の算出については、工事完成基準における受注残高から工事進行基準及び原価回収基準による取込み額を控除しております。

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

82,926

95.5

海外事業

17,877

109.8

合計

100,803

97.7

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.販売金額には、工事代金が含まれております。

3.主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありませんので、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

(資産)

 総資産は前連結会計年度末に比べ21億65百万円増加し、973億95百万円となりました。主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産などの売上債権が合計17億2百万円減少しましたが、現金及び預金が33億5百万円増加したことによるものであります。

(負債)

 負債は前連結会計年度末に比べ19億73百万円増加し、480億81百万円となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金などの支払債務が合計18億14百万円減少しましたが、借入金が合計34億96百万円増加したことによるものであります。

(純資産)

 純資産については、利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加23億46百万円、配当金の支払いによる減少18億9百万円などにより、7億60百万円増加しました。また、その他有価証券評価差額金の減少2億51百万円、為替換算調整勘定の増加2億50百万円、非支配株主持分の減少5億74百万円などの結果、純資産は前連結会計年度末に比べ1億91百万円増加し493億14百万円となりました。

b.経営成績

(営業損益)

 当連結会計年度の売上高は、建設資材高騰、労働需給の逼迫及び時間外労働の上限規制を背景として受注環境や着工時期に影響を受け、23億48百万円減少し1,008億3百万円(前期比2.3%減)となりました。

 杭種別では、コンクリート杭は、国内コンクリートパイル業界の全体出荷量は前期比で6.3%の減少となりましたが、当社グループは、事業基盤の強化を図るべく大径・大規模工事へのシフトを継続して推進しており、当期においてシェアの拡大を図ることができました。海外事業、特にベトナムでは、経済全体は回復基調にあるものの、不動産・建設市場回復の足取りは鈍いため、競争環境は依然として厳しい状況が続いています。その結果、コンクリート杭の売上高は前連結会計年度に比べ45億51百万円増加し861億4百万円(同5.6%増)となりました。また、鋼管杭・場所打ち杭での大型工事が減少し、前期末からの厳しい受注環境の中、鋼管杭は46億26百万円(同21.8%減)、場所打ち杭は78億93百万円(同39.7%減)と低調となり、全体としては前期比減収となりました。

 利益面では、新工法「Smart-MAGNUM工法」の施工効率が向上したこと、原材料価格の高騰が続いたものの、お客様のご理解を得ながら価格転嫁が進みましたが、受注環境の変化により競争が激化、収益性が低下し、売上原価は853億77百万円(同0.5%減)、売上総利益は154億26百万円(同11.1%減)と減益、売上総利益率は1.5ポイント悪化し15.3%となりました。

 販売費及び一般管理費につきましては、研究開発費は減少しましたが、貸倒引当金繰入額が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ7億62百万円増加し、110億93百万円(同7.4%増)となりました。

 これらにより、営業利益は前連結会計年度に比べ26億82百万円減少し、43億33百万円(同38.2%減)となりました。

(経常損益)

 営業外収益は、受取配当金が増加した一方で受取利息が減少したことを主因として、前連結会計年度に比べ41百万円減少し、3億40百万円(同10.9%減)となりました。営業外費用は、ベトナムにおける金利低下の影響を受け支払利息が減少したことを主因として、前連結会計年度に比べ3億49百万円減少し、8億1百万円(同30.4%減)となりました。

 これらにより、経常利益は前連結会計年度に比べ23億74百万円減少し、38億72百万円(同38.0%減)となりました。

(特別損益)

 特別利益は、政策保有株式の売却したことによる投資有価証券売却益を3億75百万円計上いたしました。特別損失は、ミャンマー事業活動の実質停止状態が長期化しており、正常化の目途が立たないことから、ミャンマー事業の撤退を決断し、事業撤退損を4億95百万円計上いたしました。

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ14億74百万円減少し、23億46百万円(同38.6%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費などの非資金項目に加え、営業活動に係る債権・債務及び税金等の加減算を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フローは46億71百万円の獲得となり、投資活動によるキャッシュ・フローの減少24億5百万円を賄うことができました。投資活動による支出は主に工場投資関連及び施工機材の投資に伴うものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、国内事業の長期借入金による資金調達等により、11億10百万円の収入となりました。

 資金の流動性につきましては、財務の健全性の維持を前提として事業活動に必要な流動性を確保しております。また、㈱三井住友銀行及び㈱みずほ銀行との間で合計40億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

(契約債務)

 2025年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

9,826

9,826

長期借入金

7,252

2,099

3,399

1,660

93

リース債務

483

216

145

39

81

 上記の表において、連結貸借対照表の流動負債に計上されている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

(財務政策)

 当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金、借入または社債により資金調達することとしております。このうち、借入または社債による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備・施工機械などの長期資金は、長期借入金または社債で調達しております。

 2025年3月31日現在、長期借入金の残高は1年内返済予定を含めて72億52百万円であります。また、当連結会計年度末において、㈱三井住友銀行及び㈱みずほ銀行との間で合計40億円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高-百万円、借入未実行残高40億円)。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

④ 経営方針・経営戦略を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、品質の向上と効率化により施工及び生産体制の強化を実現し、安定した経営基盤の確立を図ることの経営指標として、営業利益、自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。当連結会計年度におけるROEは、目標値の9.0%に対して5.2%となり、前連結会計年度に比べ3.7ポイント減少しました。

指標

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業利益

7,016百万円

4,333百万円

2,682百万円減( 38.2%減)

自己資本(A)

(純資産-非支配株主持分)

44,964百万円

45,730百万円

765百万円増(  1.7%増)

親会社株主に帰属する当期純利益(B)

3,821百万円

2,346百万円

1,474百万円減( 38.6%減)

ROE(自己資本利益率)

(B/A)

8.9%

5.2%

3.7pt減

 

⑤ 次期の見通し

 今後の見通しについては、我が国経済は、世界各地の地政学的リスク、米国通商政策の動向等で、先行き不透明な状況が続くと思われます。

 このような環境のもと、当社グループは中期経営計画(2024年度~2028年度)「新5か年計画」(以下「5か年計画」という)において、当社グループの目指す姿と基本方針として、「基礎建設業界を代表し、高い専門性を有するリーディングカンパニー」を掲げております。

 国内事業では、大型物流施設・半導体関連工場、都市部の大型再開発など、大企業の設備投資意欲は強い一方、建設コストの増加や労働力不足による工期長期化・着工遅延が続いており、前期からの大型繰り越し案件等に期待できるものの、中小企業の設備投資が増加基調に転ずるのにはまだ時間を要する見込みです。当社グループは、すべての基礎杭(コンクリート杭、鋼管杭、場所打ち杭)の設計・製造・施工を一貫して提供し、それぞれの杭種の特性を最大限に生かした建物基礎構築をサポートし、ワンストップ営業を推進してまいります。また、中小型案件向け新工法「JP-Pile工法」の拡販など新規マーケットの開拓を進めるとともに、引き続き需要の期待できる大型工事分野での受注確保に特に注力してまいります。

 海外事業では、ベトナムの不動産・建設市場に回復の兆しは見られるものの、本格化までには時間を要する見通しです。当社グループとしては、国内事業と海外事業の有機的な融合を強め、国内外の人的資本を最大限に活用するとともに海外での一層の品質・技術力向上を目指してまいります。ミャンマー事業については撤退方針とし、諸手続きを進めてまいります。

 

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、子会社ジャパンパイル㈱の技術部門が中心になって、施工部門、設計部門及び生産部門、営業部門などから構成されるプロジェクトチームによって行われています。当連結会計年度には下記のテーマを中心に活動を行いました。

 

(1)杭製品技術分野

 主力工法「Smart-MAGNUM工法」の高支持力性能を向上させるため、高強度化・大径化した杭材に関する評定取得を行うとともに、既存杭材の評定更新及びJIS認証更新を実施しました。

 

(2)施工技術分野

 「Smart-MAGNUM工法」の経済性を考慮した自由度の高い支持力性能を積極的に提案するとともに社内への技術的講習会実施や社外への各種展示会及び技術広告などに投稿を行いました。また、当社独自工法である小径鋼管杭新工法「JP-Pile工法」を開発し、水平展開を始めました。

 

(3)基礎周辺技術分野

 地中熱利用杭工法である「地熱トルネード工法」を採用した施工物件の技術支援と各種展示会及び技術説明会等で普及活動を行いました。

 

(4)基礎関連研究開発分野

 基礎杭に関する研究開発として、二次設計への対応や杭と上部構造物の接合部、支持力機構あるいは地中熱利用などについて、大学、学会、他社、協会などと共同研究や委員会活動を行いました。当連結会計年度の成果については論文にまとめ、(公社)地盤工学会、(一社)日本建築学会等で発表しました。

 

(5)設計技術・品質管理技術分野

 (一社)基礎構造研究会では基礎設計能力の向上に努めました。また、低固定度杭頭接合工法「F.T.Pile構法」、高支持力杭対応杭頭接合工法「ジョイントカプラ工法」の普及に取り組み、多数の実プロジェクトの設計に活用しました。

 

(6)その他

 各種技術資料の作成、営業部門の支援活動などの業務を行いました。また、知財担当は、特許の出願や調査など特許関係全般の業務のほか、既存特許の管理に取り組みました。当連結会計年度の特許出願数は3件となっています。「TPJ(トリプルプレートジョイント)」と「PJ(ペアリングジョイント)」の無溶接継手の研究会活動に参加しました。さらに、(一社)日本建築構造技術者協会や(一社)コンクリートパイル・ポール協会、(一社)日本基礎建設協会等の業界団体の委員会活動にも積極的に参加しました。

 

 当連結会計年度の研究開発費の総額は、280百万円であり、セグメント別の内訳は、国内事業262百万円、海外事業18百万円であります。