第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当企業グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当企業グループは、「C(カーボン)の可能性を追求し世界に貢献すること」を経営理念とし、「どこにもないモノをつくる」という創業来のパイオニア精神を忘れず、最高の品質と最高の技術を誰よりも先に提供し、人々の暮らしをより豊かにすることで、広く社会に貢献できる企業を目指しております。

 

(2)目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当企業グループを取り巻く事業環境は、地政学的リスクや気候変動リスクの増大等、世界全体を覆う重大な課題にさらされており、今後も不透明かつ不安定な状況が続くと見られます。一方で、これらの課題解決も含めて産業構造やライフスタイルの変化が生じており、デジタル社会や循環型社会の急速な進展はその顕著な一例であります。当企業グループの事業分野においても、エレクトロニクスやエネルギー、モビリティ等の分野を中心に、新たなニーズの出現や技術革新の進展による事業機会の創出・増加が見込まれております。

当企業グループとしては、これらの環境変化をチャンスと位置付け、その動きを機敏に捉えて、変化・高度化する市場のニーズや要請に応える高付加価値な技術・製品をグローバルに提供することにより、大きな成長を目指してまいる所存です。そのためにも、事業環境や市況の変化に左右されない事業ポートフォリオの構築、ならびにグローバルかつ強固なガバナンス体制と経営基盤の確立が課題であると認識しております。

中長期的な経営戦略につきましては、これらの環境認識と課題を踏まえ、2030年経営Vision『「どこにもないものを、あるに」地球に優しい製品と技術で世界No.1』のもと、会社方針に掲げる「グローバル企業になる」「世のため、社会のためになる」「強い会社になる」ことを実現するべく、高成長・高付加価値事業の徹底拡大、省エネ・省人化等含めた生産技術革新・競争力強化、ならびに海外展開強化等の取り組みを着実に進めてまいる所存です。そしてこれらの取り組みを支えるグローバル人材の育成を強化してまいります。

事業を通じて環境・社会に貢献する企業として、「さらなる成長」と「企業価値および社会的価値の拡大」を目指し、目標とする経営指標につきましては、2028年に売上高880億円、営業利益220億円を達成し、全社でのROEは12%以上とすることを掲げております。

 

(3)経営環境

今後の国内外の経営環境につきましては、地政学リスクや米中貿易摩擦の影響が懸念される等、先行き不透明な状況が続くものの、持ち直しの動きは継続するものと予想されます。

当企業グループを取り巻く事業環境におきましては、デジタル投資やカーボンニュートラル実現の動きが継続すること等により、エレクトロニクスやモビリティ、エネルギー等の産業を中心に、着実な需要が見込まれます。当企業グループにおきましては、シリコン半導体用途の需要は力強さを欠くものの、SiC半導体用途における旺盛な需要が継続するほか、冶金用等においても堅調な需要を見込んでおります。

このような状況のもと、当企業グループは、2030年経営Vision『「どこにもないものを、あるに」地球に優しい製品と技術で世界No.1』のもと、外部環境の変化を機敏に捉え、顧客ニーズに真摯に向き合いながら、先を見据えた製品・技術開発を通じて革新的なソリューションを提供するとともに、事業を通じた温室効果ガス排出量削減への貢献をはじめとするサステナビリティの取り組みを益々加速することで、高い付加価値を創造し、中長期的な事業成長ならびに企業価値向上を目指してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「(2)目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の「目標とする経営指標」のとおりです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当企業グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業グループが判断したものであります。

 

<サステナビリティ>

1.サステナビリティ方針

東洋炭素グループは、取締役会におけるガバナンス方針に基づき従業員一人ひとりが自主性と責任感を持って自らの業務に取り組み、全てのステークホルダー(お客様、取引先、地域社会、株主・投資家、従業員)から期待される価値の提供に努めるとともに、サステナビリティ(社会の持続的な発展や地球環境の維持)の向上に貢献する企業であり続けるために、事業活動を通じた弛まぬ発展と、会社自身のサステナブル(持続的)な成長性を高めて行く事を方針としております。

斯様な方針のもとに、技術革新と当社製品による社会的価値・顧客価値の創出をはじめ、地球環境への配慮、安全と健康の確保、コンプライアンスとリスクマネジメント、公正な事業慣行、人権と多様性の尊重、社会貢献活動による社会との調和等、社会への貢献と持続的な成長の実現を強く意識した基本姿勢により、バリューチェーン全体を対象にあらゆる事業活動を推進してまいります。

 

2.ガバナンス

事業活動による環境・社会課題解決等のサステナビリティ実現に向けた取り組みを一層強化し、グループ全体で戦略的に推進するとともに経営の重要機関として、サステナビリティ推進委員会を設置しております。委員長には代表取締役会長兼社長兼CEO、その傘下に各三つの推進グループを設置し、各役員がオーナーとして配置されております。サステナビリティ推進委員会は、原則として四半期に1回開催され、サステナビリティに関する方針、戦略、計画、施策の設定、目標とすべき指標の審議・設定、重要課題に関する方針の対応討議、サステナビリティ浸透活動の実施等進捗報告を行っております。サステナビリティ推進委員会で検討された内容は取締役会に報告され、取締役会において検討、承認された上で、サステナビリティ推進委員会を通じて関連部署や関連会社に対応が指示されております。

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3.リスク管理

当企業グループは、「リスク・コンプライアンス基本規程」に基づき、法令・定款および企業倫理の遵守とリスク管理体制の確立のため、これらを統括する組織としてリスク・コンプライアンス委員会(以下RC委員会)を設置し、リスク・コンプライアンス上、重要な課題について審議し、方針を決議しております。個別のリスクについては、主幹部署が管理・対応を行い、RC委員会がこれらを統括しております。

サステナビリティに関連するリスク項目は、サステナビリティ推進委員会で管理されるとともに全社のリスクマネジメントの一環として、RC委員会において評価・検討を行い、取締役会に報告されております。

 

4.戦略・指標および目標

1)マテリアリティ(重要課題)

2021年12月、東洋炭素では、サステナビリティに関連するマテリアリティ(重要課題)についてサステナビリティ推進委員会での検討を経て、取締役会に報告し承認に至っております。今後、マテリアリティ(重要課題)への取り組みを加速していくことにより、自社の持続可能性を高めるとともに、社会・環境への貢献を拡大していくことを目指してまいります。

マテリアリティ(重要課題)の特定を行うにあたり、GRIやSASB、SDGs等の国際的な取り組みやガイドライン等で示される課題を参考とし、バリューチェーンに沿って自社と社会・環境との関係を調べ、当社のサステナビリティ課題を洗い出しております。

それらの課題について自社が社会・環境に与える影響と社会・環境が自社に与える影響についてインパクト評価を行い、そのいずれかにおいてとても重要とされたものをマテリアリティ(重要課題)と特定しております。

マテリアリティ(重要課題)は、変化する経営環境や社会状況に対応するために、次年度以降、見直しを実施していく予定であります。

東洋炭素グループのマテリアリティ(重要課題)は、社会の課題において、グローバルに事業展開する素材メーカーとして果たすべき4つのカテゴリーと14の重要項目で構成されております。

特に、半導体等のエレクトロニクス、モビリティ、ライフサイエンス、クリーンエネルギー等各市場分野において、社会や顧客のニーズに基づいて開発・製造・販売する製品は、サステナブルな社会の実現に向けた高い貢献性とポテンシャルを有しております。

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2)気候変動への対応

当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同署名を行っており、TCFDが提言する開示フレームワーク(気候関連のリスクと機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理および指標と目標)に沿った情報開示を進めております。

①ガバナンス

サステナビリティ推進委員会の支援プロジェクトとしてTCFD対応プロジェクトを設置し、気候変動対応に関するシナリオ分析、リスク機会の分析、対応策の策定等を行い、その内容はサステナビリティ推進委員会に報告しております。

サステナビリティ推進委員会で検討された内容は取締役会に報告され、取締役会において検討、承認された上で、サステナビリティ推進委員会を通じて当社の各事業部門およびグループ各社に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映されております。また、その内容によっては取引先にも協力を要請しております。

 

②戦略

TCFDが推奨するガイダンスに則り、2040年までの事業環境をシナリオ分析の手法を活用し、気候変動が当社に与える影響を分析・評価しております。

[シナリオ分析の概要]

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[気候変動対応に関連する主なリスクと機会]

気候変動に関連したリスクと機会をより具体的に明らかにするために、1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ下における事業環境の変化を想定し、発生する可能性のあるリスクと機会を抽出しました。その中でも当社の経営に大きく影響を及ぼす可能性があると推測されるものが次表となります。

シナリオ分析からは、当社の事業は、気候変動に関連した社会変化、市場変化に部分的に影響を受ける反面、再生可能エネルギー関連製品の市場拡大等事業機会も大きいことが分かりました。

当社では、経営の持続可能性と発展のためには、今後の事業環境を見極めつつ迅速な対応を行っていく必要があると評価しております。

対応については、現在、検討を進めている段階であります。

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(注)具体的な項目にて財務影響を記載しているため、総合的な政策・規制の財務影響額は「-」としております。

 

③リスク管理

3.リスク管理」に記載のとおりであります。

 

④指標と目標

当社では温室効果ガス排出量について、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを進めております。

Scope1、Scope2およびScope3における過去の温室効果ガス排出量については、GHGプロトコルに準拠し算定を行いました。

2030年度目標として、売上あたり温室効果ガス排出量原単位(Scope1、Scope2)30%削減、2019年度比(単体)を設定いたしました。

気候変動に関する詳細情報は、当社ウエブサイトをご確認願います。

URL https://www.toyotanso.co.jp/sustainability/environment/tcfd.html

 

<成長を支える人材の確保(人的資本)>

1.戦略

グローバル化をはじめ、DX活用による働き方改革および価値観・ビジネスモデルの変容等、目まぐるしく変化する経営環境のもと、当社はサステナブル(持続可能)な社会の実現に貢献する人事環境の構築を推進しております。

社員にとって働きがいのある会社を目指すことは勿論、多様性の尊重、適所適材による人材配置、中長期的な人材育成、健康経営の推進、公正な評価および総合的な報酬政策によるエンゲージメントの向上を重視しております。

こうした各種人事施策を通じて、「人と組織」のパフォーマンスを最大化するとともに、「すべての人の安全と安心が保障された『誰一人取り残さない』社会の実現」に向け、一人ひとりが情熱と誇りを持って挑戦できる活躍の舞台を提供し続けてまいります。

当社にとって人材は最も大切な資産であり、人の成長こそが、会社発展の原動力であると考えております。様々な人事課題を受け、アイディア豊かな多様な個性を尊重し、人と人との信頼と共創により、サステナブルな未来の実現に貢献してまいります。

 

2.指標及び目標

人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は次のとおりであります。

当事業年度(2023年1月1日~2023年12月31日)

区 分

指 標

目 標

実 績

人材開発・育成

資格・講習等の受講延べ人数

500人以上

497人

働きやすい環境風土の構築

男性育児休業取得率(注)2

30%以上

19.2%

流動性

採用者に対する定着率(注)3

100%

95.0%

健康管理

ストレスチェック受診率(注)4

100%

95.0%

(注)1.指標・目標については当社について記載しております。

2.当事業年度に誕生した子供を有する従業員のうち、育児休業を取得した従業員の割合を記載しております。

3.当事業年度に採用した採用数に対する定着率を記載しております。

4.従業員全体に対するストレスチェック受診率を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

以下におきましては、当企業グループの事業の状況および経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況にリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項およびその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。

当企業グループは、リスク・コンプライアンス委員会において、経営上重要なリスクを特定・算定および評価を行ったうえで、優先対応リスクの決定を行い、その結果に基づき「リスクマップ」を作成しています。リスクマップは定期的に見直しを行い取締役会に報告しています。

なお、当社の有価証券に関する投資判断は、本項および本書中の本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

また、以下の事項のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当企業グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる場合があります。

 

<リスクマップのイメージおよびリスク管理体制>

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(特に重要なリスク)

(1)大規模災害等による事業活動の停止について

当企業グループは、大規模災害による主要製品の操業停止の影響を最小限にするため、事業継続計画(BCP)を策定しており、地震、風水害等の大規模な自然災害を想定して建物・生産機器等の耐震性・安全性確保、情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持などの施策を講じております。

また、大規模災害が発生した場合は、地域の安全確保および地域への積極的な支援(人命の救助、物資の提供、施設の提供、社会貢献、その他支援)を行います。

しかしながら、主要な生産設備が集中する香川県をはじめとした、販売および生産拠点等の所在地において当企業グループの想定を超える災害の発生等により、操業を停止する場合には、当企業グループの財政状態および経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(2)海外事業活動が経営成績に与える影響について

当企業グループは、顧客ニーズへの迅速な対応および適時に供給できるよう販売および生産拠点の拡大を積極的に進めております。当企業グループの連結売上高に占める海外売上高比率は、当連結会計年度において56.3%でありますが、今後、グローバル展開の進展により当該比率がさらに高まる可能性があります。また、海外市場における為替レートの変動、政治情勢の変化および法規制の変化等が当企業グループの経営成績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。特に中国における事業の拡大から、中国における政治および政策の変化が、当企業グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)原燃料価格が経営成績に与える影響について

当企業グループは、原燃料の価格上昇の影響を抑えるため、2社購買および販売価格への転嫁等の対策を講じておりますが、予想以上に原燃料価格が上昇した場合には、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(4)棚卸資産について

当企業グループは、加工製品につきましては受注生産でありますが、加工製品の素材となる等方性黒鉛材料の製造に約5ヶ月を要することから、等方性黒鉛材料につきましては見込生産を行っております。また、当企業グループでは、等方性黒鉛材料の需要予測を毎月行い、生産計画を作成することで、過剰在庫を持たないように努めておりますが、予想以上に等方性黒鉛材料の需要が落ち込んだ場合には、製品自体に経時変化はないものの一時的に過剰在庫となる可能性があります。

なお、当企業グループでは、直接販売を基本とすることで、顧客情報を直接入手し、顧客との共同研究開発、自社による製品開発および改良等に反映させることに努めており、その結果、棚卸資産の回転期間が当連結会計年度で5.3ヶ月となっております。

 

(重要なリスク)

(1)市場動向が経営成績に影響を与えることについて

当企業グループの主要製品である特殊黒鉛製品は、エレクトロニクス、金型、冶金、化学および原子炉用等の幅広い分野において利用されておりますが、特にエレクトロニクス分野におきましては、シリコン半導体製造、化合物半導体製造(発光ダイオード、レーザーダイオード)向け市場の拡大にともなって販売を伸張してまいりました。また、複合材その他製品におきましても同様にエレクトロニクス分野に多く使用されております。

当企業グループは、エレクトロニクス分野の市場変動による経営成績への影響に適切に対応すべく、特殊黒鉛製品以外の機械用カーボン製品および電気用カーボン製品のシェア確保、冶金用等での新用途開拓に努め事業リスクの分散を図るとともに、エレクトロニクス業界の動向を分析予測し、適切な経営判断を行うよう努力しておりますが、予想に反しエレクトロニクス業界が低迷した場合には、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(2)競合について

当企業グループは、多岐にわたる顧客に対してカーボン製品を供給しておりますが、カーボン製品業界においては技術競争や価格競争が行われております。当企業グループでは、生産部門と営業部門の連携により様々な顧客ニーズに合致した高付加価値製品やそれを掘り起こす製品の早期開発を進めるとともに、原価低減や経費削減によるコスト低下に努めておりますが、競合他社の動向や価格競争の結果、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(3)法的規制の影響について

当企業グループのカーボン製品は「外国為替及び外国貿易法(外為法)等輸出関連法規」および国際原子力機関(IAEA)による「原子力関連機器の輸出に関する規制等」の適用を受けているほか、各国での事業・投資に関する許認可制度、関税・租税等の税制、公正競争や環境・リサイクル関連などの法的規制の適用も受けております。このような中、当企業グループは法令遵守に努めておりますが、これらの法的規制による指導を受ける可能性があります。また将来において現在予期し得ない法的規制等が設けられた場合には、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(4)情報セキュリティについて

当企業グループは、事業上の機密情報や事業の過程で入手した顧客情報や個人情報を保有しております。

当企業グループでは、これら情報の取扱いに関する管理を強化するとともに、CSIRT体制を構築し、情報システムのウイルス感染やサイバー攻撃によるシステム障害、社外への情報漏洩に対する対策を図っております。

しかしながら、当企業グループの想定を超える攻撃等により、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす場合には、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(5)今後の投資戦略について

当企業グループの投資戦略においては、定常の設備更新投資・研究開発投資に加えて、戦略的投資を積極的に推進する方針としています。これらの投資においては、市場環境の急激な変化、投資回収期間の長期化等によって、当企業グループの経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

①経営成績

当連結会計年度においては、世界景気は一部の地域において弱さが見られるものの、持ち直しの動きが見られました。しかしながら、資源価格が高止まりしているほか、金融引き締めによる欧米の景気減速や米中両国による輸出規制の影響が懸念される等、先行き不透明な状況が継続しました。

当企業グループを取り巻く事業環境は、エレクトロニクス分野では、上期好調だったシリコン半導体用途の需要が、第3四半期以降、調整色を強めたものの、SiC半導体用途の高い需要に支えられ順調に推移しました。また、モビリティ分野においては、自動車産業の稼働回復を背景に、一般産業分野においては、企業の底堅い設備投資等を背景に、それぞれ堅調に推移しました。

このような状況の中、当企業グループでは、中期経営計画における経営目標の達成に向け、外部環境の変化を機敏に捉えた事業展開を推進するとともに、生産性向上によるコスト競争力の向上、技術革新に追随しうる新製品および高付加価値製品の開発・増強に着手する等、顧客ニーズに真摯に向き合いながら、事業機会を着実に取り込むべく事業を推進してまいりました。加えて、原燃料価格高騰の影響を軽減するべく採算性の確保・維持に向けた取り組みを進めてまいりました。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、カーボンブラシ製品の需要が減少したものの、円安の影響に加え、半導体や冶金用途における堅調な需要に支えられ、売上高は49,251百万円(前期比12.5%増)となりました。利益については、価格転嫁や販売構成差等の影響で限界利益が増加したこと等により、営業利益9,283百万円(同39.2%増)、経常利益10,182百万円(同38.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,506百万円(同44.9%増)となりました。

 

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に

帰属する当期純利益

予    想

48,500百万円

8,500百万円

9,300百万円

7,000百万円

実    績

49,251百万円

9,283百万円

10,182百万円

7,506百万円

予  想  比

751百万円

783百万円

882百万円

506百万円

増  減  率

1.5%増

9.2%増

9.5%増

7.2%増

 

セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。

 

日本

半導体用は強い需要に支えられ前期を大きく上回り、機械用カーボン分野や工業炉用・連続鋳造用等の冶金用が堅調に推移したこと等により、売上高は25,736百万円(前期比13.1%増)、営業利益は8,238百万円(同28.0%増)となりました。

 

米国

半導体用が好調に推移したほか、工業炉用を中心とした冶金用や放電加工電極が堅調に推移したこと等により、売上高は4,187百万円(同23.8%増)となり、人件費等の固定費が増加したこと等により営業利益は43百万円(同52.4%減)となりました。

 

欧州

カーボンブラシ製品の売上は前期並みの水準に留まったものの、主力の冶金用が好調に推移したことに加え、半導体用が大幅に伸長したこと等により、売上高は4,881百万円(同31.6%増)、営業利益は42百万円(同18.5%増)となりました。

 

アジア

カーボンブラシ製品は顧客の生産調整の影響等により減少したものの、冶金用や半導体用の需要は堅調に推移しました。これらの結果、売上高は14,446百万円(同3.8%増)となり、営業利益はカーボンブラシ製品の販売減による限界利益の減少や一部地域の需要減の影響等により966百万円(同10.2%減)となりました。

 

品目別の概況は以下のとおりであります。

品目

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

特殊黒鉛製品

20,230

24,052

18.9

一般カーボン製品(機械用カーボン分野)

3,985

4,116

3.3

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)

4,823

4,457

△7.6

複合材その他製品

11,765

14,129

20.1

商品

2,969

2,494

△16.0

合計

43,774

49,251

12.5

 

特殊黒鉛製品

エレクトロニクス分野におきましては、単結晶シリコン製造用は下期において小幅な販売減となったものの上期の大幅な販売増が奏功し前期比増となり、SiC半導体向けの化合物半導体製造用は大きく伸長しました。また、太陽電池製造用は高付加価値品にフォーカスした選別受注を推進する中、底堅い需要に支えられ前期比増となった結果、当分野の売上高は前期比30.6%増となりました。

一般産業分野は、連続鋳造用や工業炉用等の冶金用に加え、放電加工電極が堅調に推移したこと等により、前期比13.0%増となりました。

これらの結果、特殊黒鉛製品全体としては、前期比18.9%増となりました。

 

一般カーボン製品

機械用カーボン分野は、主力の軸受・シールリング等が堅調に推移したこと等により、前期比3.3%増となりました。

電気用カーボン分野は、顧客の生産調整により家電・電動工具向けの小型モーター用の需要が減少したこと等により、前期比7.6%減となりました。

これらの結果、一般カーボン製品全体としては、前期比2.7%減となりました。

 

複合材その他製品

SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛製品は、SiC半導体向けが大幅に伸長したほか、シリコン半導体向け等も底堅く推移したこと等により、前期を大きく上回りました。C/Cコンポジット製品は、工業炉用の需要が増加したこと等により、前期を上回りました。また、黒鉛シート製品は、主力の自動車用、半導体用および冶金用がいずれも底堅く推移したこと等により、前期並みの水準となりました。

これらの結果、主要3製品は前期比22.8%増となり、複合材その他製品全体としては、前期比20.1%増となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ1,828百万円増加し、13,601百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は6,216百万円(前期比10.5%増)となりました。これは主に為替差益385百万円(同18.8%増)、売上債権の増加額459百万円(同77.3%減)、棚卸資産の増加額2,883百万円(同47.2%増)、前渡金の増加等によるその他の減少額692百万円(前期は1,131百万円の増加)および法人税等の支払額2,879百万円(前期比70.1%増)等の資金の減少に対し、税金等調整前当期純利益10,317百万円(同41.4%増)および減価償却費3,375百万円(同7.0%増)等の資金の増加によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は2,693百万円(同48.7%減)となりました。これは主に定期預金の払戻による収入8,018百万円(同3.8%増)等の資金の増加に対し、定期預金の預入による支出5,722百万円(同31.3%減)および有形固定資産の取得による支出4,698百万円(同11.4%増)等の資金の減少によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は1,970百万円(同41.9%増)となりました。これは主に短期借入金の純減額297百万円(前期は101百万円の純増額)および配当金の支払額1,467百万円(前期比16.5%増)等の資金の減少によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

日本

25,974

114.3

米国

4,252

123.1

欧州

5,095

135.5

アジア

15,885

111.7

合計

51,207

116.0

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

受注金額

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

日本

23,912

106.1

8,107

113.7

米国

5,111

127.1

4,346

135.8

欧州

5,000

114.3

2,109

125.5

アジア

11,979

102.1

2,064

83.2

合計

46,003

107.8

16,628

114.8

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.外貨建てで受注したもので、当期中の為替相場の変動による差異については、当期受注金額に含めております。

3.半製品(素材製品)は、主として見込生産であるため、上記の金額には含まれておりません。

4.当連結会計年度の受注実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

受注金額

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

特殊黒鉛製品

22,526

109.3

7,084

105.3

一般カーボン製品

(機械用カーボン分野)

3,837

95.1

804

83.4

一般カーボン製品

(電気用カーボン分野)

4,500

105.3

813

101.4

複合材その他製品

15,140

110.2

7,926

132.2

合計

46,003

107.8

16,628

114.8

5.欧州および一般カーボン製品(機械用カーボン分野)については内示による受注を含めております。

販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

日本

25,736

113.1

米国

4,187

123.8

欧州

4,881

131.6

アジア

14,446

103.8

合計

49,251

112.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

3.当連結会計年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

特殊黒鉛製品

24,052

118.9

一般カーボン製品(機械用カーボン分野)

4,116

103.3

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)

4,457

92.4

複合材その他製品

14,129

120.1

商品

2,494

84.0

合計

49,251

112.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当企業グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②財政状態の分析

資産・負債および純資産の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,180百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が305百万円減少したものの、受取手形及び売掛金が888百万円増加、棚卸資産が3,390百万円増加、有形固定資産が2,104百万円増加および投資その他の資産が638百万円増加したこと等によるものであります。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ143百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金が389百万円増加および未払金が633百万円増加したものの、電子記録債務が172百万円減少、短期借入金が285百万円減少、前受金の減少等により流動負債のその他が461百万円減少および長期リース債務の減少等により固定負債のその他が144百万円減少したこと等によるものであります。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,323百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が6,038百万円増加および為替換算調整勘定が1,109百万円増加したこと等によるものであります。

③経営成績の分析

売上高

当企業グループの当連結会計年度の売上高は、カーボンブラシ製品の需要は減少したものの、半導体や冶金用途における堅調な需要に加え、円安の影響等により、49,251百万円(前期比12.5%増)となりました。

 

売上原価、販売費及び一般管理費

売上高に対する売上原価の比率は64.0%となりました。また、販売費及び一般管理費につきましては、売上高に対する比率が17.1%となりました。

 

営業外損益

営業外収益は、受取利息90百万円(同2.5%減)、持分法による投資利益304百万円(同92.5%増)および為替差益361百万円(同28.2%増)等を計上したことにより、952百万円(同23.5%増)となりました。

営業外費用は、支払利息25百万円(同23.2%減)および減価償却費16百万円(前年同期は同額)等を計上したことにより、52百万円(同23.6%減)となりました。

 

特別損益

特別利益は、補助金収入382百万円(同793.2%増)および固定資産売却益87百万円(同663.6%増)を計上したことにより、470百万円(同263.3%増)となりました。

特別損失は、固定資産除却損215百万円(同91.5%増)および減損損失120百万円(前期は計上なし)等を計上したことにより、336百万円(前期比67.5%増)となりました。

 

親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は7,506百万円(同44.9%増)となりました。

 

④キャッシュ・フローの分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当企業グループの運転資金需要は主に、原材料等の購入費用、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備であります。

当企業グループは、事業運営上必要な運転資金および設備投資資金については、自己資金で賄うことを基本方針としつつ、金融機関からの借入により調達する場合もあります。

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等は行われておりません。

 

6【研究開発活動】

(1)研究開発活動の方針

当企業グループは、「C(カーボン)の可能性を追求し世界に貢献する」という経営理念の基に、等方性黒鉛材料製造で培われた材料開発技術を基盤とした新しい等方性黒鉛材料やカーボン系複合材料等の新素材の研究開発を進めています。また、新規用途の開発への着目や、従来の特性を超えたカーボン製品開発へ挑戦することにより、顕著に差別化され独自性を有する高品位、高付加価値製品を提供し、顧客満足を得るとともに、“技術の東洋炭素”を永続的に強化することで、“常に経済的利益を生み出せる強い企業体制”にし、それを担う技術人材を育成することで会社を持続的に成長させ、“顧客と従業員”および“社会”に対して価値を提供し続けることを基本方針としております。

 

(2)研究開発体制

当企業グループでは、以下の三部門による階層的な研究開発体制を構築しており、各部門の人材や技術が社内連携しながら、要素技術から製造技術までの開発を行っております。

基礎研究部門:顧客ニーズに立脚した要素研究、将来技術の発掘および醸成

技術開発部門:基幹事業における新製品・新用途開発、評価技術の発展、進化技術等、新たな生産技術の創出

生産技術部門:革新的な生産プロセスの構築

また新しい技術を獲得するため、ユーザーや大学、国内・海外研究機関等との共同研究も積極的に進め、顧客ニーズに合致した製品やそれを掘り起こす製品の早期開発を推進しております。これら研究開発における管理は、当社独自の管理システムによる技術審査を、海外子会社を含め全社的に実施することで、技術・ノウハウの体系的管理を強化しております。

なお、当連結会計年度末における研究開発要員は42名であります。

 

(3)研究開発活動

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,043百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

特に、ユーザーのニーズをいち早く掴み技術動向の先頭を走るべく、省エネ・環境負荷低減用途における製品の充実を図るとともに、既存用途の延長線上にはない製造技術や原材料、製品特性などの検証により、環境規制物質・クリーンエネルギー市場の動向に適合した品質を確立するなど、市場要求にマッチした製品をタイムリーに投入するための研究開発活動を強化しております。また、新規製品の開発および生産技術の強化にとどまらず、長期将来を見据えた基礎研究にも力を入れるべく、近藤照久記念総合開発センターを基盤に基礎研究体制の整備を行い、未開拓用途や新技術の取り込むとともに、資源循環(サーキュラーマテリアル)技術など限りある資源の有効活用に向けた技術開拓を推進するなど、社会に貢献する技術開発を強化しております。

 

①特殊黒鉛製品

新機能材料の開発につきましては、エレクトロニクス分野において半導体製造用の新型黒鉛材料を開発し、市場評価が進んでおります。とりわけ、次世代半導体であるSiCウエハー製造部材向けに開発した新たな黒鉛材料につきまして、顧客要望の変化にオンタイムで応えることで、さらなる技術開発を進めております。また、さらなるニーズに対応するべく黒鉛材料の開発に着手するとともに、社内における評価技術も強化しております。加えて、長期的に原料を確実に調達するべく、品質を確保しうる新規原料探索ならびに粗原料の使いこなし技術の確立を推進しております。エネルギー関連材料につきましては、原子力用途において、地上に太陽エネルギーを人工的に創るべく研究が進められている核融合炉のプラズマ対向壁用黒鉛材料やそれらに使用される周辺部材の開発および改善、また多目的高温ガス炉用黒鉛材料の開発を継続しております。

 

②一般カーボン製品(機械用カーボン分野)

一般産業機械用につきましては、メカニカルシール用としての高機能カーボン材料の市場評価を含めた開発を継続しております。また機械用カーボンの製造技術向上のために導入した製造試験装置を用い、生産性改善および自動化を用いた技術プロセスの開発によるさらなるコストダウンの可能性を見出すことに成功しております。自動車の電動化進展にともない、軽量化や耐久性向上など、自動車部品に対する要求特性がより高度化する中、高い特性に加え、省エネルギーなど環境負荷低減にもつながる部品等の開発・製品化、顧客の納期および品質要求に応える新たな生産技術の導入により、ユーザーニーズを的確に捉えてまいります。とりわけ量産製品に関しての品質維持・向上に向け、原料・副資材における調達難の回避やコストを低減しうる代替原料および代替技術の開発に注力しております。

 

③一般カーボン製品(電気用カーボン分野)

小型モーター用につきましては、主に高性能掃除機用カーボンブラシ、バッテリータイプ電動工具用カーボンブラシの開発を推進するとともに、海外向け洗濯機用カーボンブラシおよび自動車用カーボンブラシの市場ニーズにオンタイムに応えるべく開発を継続しております。カーボンブラシ製品は近年ますますコスト低減への対応が重要な開発課題となっており、当企業グループにおいても生産技術を含めた、総合的な技術開発を加速しております。また、環境規制物質に対する各国の法規制に先駆的に対応するべく、新たな原料の検討を行うなどの開発活動を展開しております。また、風力発電などに代表される再生エネルギー用途、大量輸送機器などに使用されるモーター用途等の大型モーター用の材料の開発を進めており、小型モーター用における従来技術と素材開発技術を掛け合わせ、顧客評価を受けながら機敏な試作品展開を進めるなど、産業用ブラシ市場への展開を積極的に進めております。カーボンブラシの技術を用いた次世代製品に関する研究につきましては、外部機関等との共同開発なども積極的に行い、新しい技術の取り込みを進めております。

 

④複合材その他製品

SiCコーティング黒鉛製品につきましては、半導体製造向けの黒鉛部材に対する品質要求のさらなる高度化に応えるべく、基盤となる黒鉛製品に施す高純度化処理の技術向上に取り組むとともに、需要増へのタイムリーな対応を生産技術改善により実現、さらなる生産性の向上と品質向上を図るべく、顧客ニーズを取り込みながら製造技術強化に注力しております。さらに、次世代の品質要求をも満足しうる膜質の実現など、新規プロセスによる新たな高品質グレード品の開発や従来製品における品質向上のための技術開発や製造設備の検討にも積極的に取り組んでおります。

多孔質炭素CNovel(R)(クノーベル(R))につきましては、燃料電池の国内外のユーザーでの評価が進展し、触媒担体としての高い評価実績を得ており、顧客やユーザーから公的な場において多数の報告がなされるなど、着実な用途展開が進んでおります。水素エネルギーの利用により環境負荷低減が期待できる燃料電池の触媒担体等、クリーンエネルギー分野での採用を視野に、当該商品を積極的に展開し、社会課題の解決に貢献してまいります。また、特殊色材用途での採用も進んでおり、新規バイオセンサー用途や、ポストリチウムイオン二次電用材料等、新しい高付加価値領域での活用の可能性も拡がる等、外部機関との共同研究も活発に進んでおります。

連結子会社の上海東洋炭素有限公司においては、独自の製造方法を用いて、電子部品の放熱フィラー材料である窒化アルミニウムの市場提供を継続し、市場ニーズに応えながら、改良・改善した材料の開発と提供を進めています。通信機器の放熱用途など、通信の高速化により高機能化する電子デバイスなどへの適用を見据え試作品を展開し、ユーザー評価を推進しております。

その他当企業グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。