第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

(1)連結経営指標等

 

回次

第75期

第76期

第77期

第78期

第79期

決算年月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

売上高

(百万円)

32,464

35,240

41,132

36,402

31,226

経常利益

(百万円)

759

3,719

7,057

5,207

3,877

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

284

3,020

4,910

2,944

2,662

包括利益

(百万円)

1,055

3,478

3,581

2,728

2,901

純資産額

(百万円)

58,182

60,986

64,096

65,706

66,622

総資産額

(百万円)

69,797

74,223

74,951

76,082

76,075

1株当たり純資産額

(円)

2,741.06

2,884.66

3,019.47

3,097.00

3,174.52

1株当たり当期純利益金額

(円)

13.71

145.52

234.52

140.40

126.95

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

145.25

自己資本比率

(%)

81.4

81.0

84.5

85.4

87.5

自己資本利益率

(%)

0.5

5.2

8.0

4.6

4.0

株価収益率

(倍)

136.8

24.4

9.3

16.2

15.9

営業活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

5,120

6,972

5,759

5,149

7,020

投資活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

4,127

5,951

4,318

4,017

1,011

財務活動による

キャッシュ・フロー

(百万円)

1,270

1,216

1,169

1,372

2,099

現金及び現金同等物の期末残高

(百万円)

6,424

6,361

6,414

6,101

12,093

従業員数

(人)

1,903

1,710

1,678

1,700

1,658

(外、平均臨時雇用者数)

(153)

(214)

(230)

(254)

(275)

(注)1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.第75期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、希薄化効果を有している潜在株式が存在しないため記載しておりません。また、第77期以降の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

3.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第78期の期首から適用しており、第77期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。

 

(2)提出会社の経営指標等

 

回次

第75期

第76期

第77期

第78期

第79期

決算年月

2016年12月

2017年12月

2018年12月

2019年12月

2020年12月

売上高

(百万円)

22,903

24,324

29,615

26,631

22,687

経常利益

(百万円)

283

2,533

5,650

4,907

3,318

当期純利益

(百万円)

182

1,866

4,032

3,358

2,381

資本金

(百万円)

7,692

7,810

7,947

7,947

7,947

発行済株式総数

(株)

20,750,688

20,865,488

20,992,588

20,992,588

20,992,588

純資産額

(百万円)

43,950

45,611

49,099

51,419

52,768

総資産額

(百万円)

53,509

55,799

57,985

60,175

60,604

1株当たり純資産額

(円)

2,114.95

2,184.76

2,341.10

2,451.71

2,516.07

1株当たり配当額

(円)

普通配当25.00

普通配当30.00

普通配当50.00

普通配当50.00

普通配当50.00

(うち1株当たり中間配当額)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益金額

(円)

8.79

89.89

192.61

160.12

113.55

潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額

(円)

89.73

自己資本比率

(%)

81.9

81.6

84.7

85.4

87.1

自己資本利益率

(%)

0.4

4.2

8.5

6.7

4.6

株価収益率

(倍)

213.3

39.4

11.3

14.2

17.8

配当性向

(%)

284.35

33.37

25.96

31.23

44.03

従業員数

(人)

946

847

824

832

828

(外、平均臨時雇用者数)

(61)

(121)

(145)

(161)

(169)

株主総利回り

(%)

103.9

196.9

125.1

132.9

121.6

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(100.3)

(122.6)

(103.0)

(121.7)

(130.7)

最高株価

(円)

1,925

3,915

4,300

2,660

2,339

最低株価

(円)

1,240

1,622

1,998

1,830

1,181

 (注)1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.第75期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、希薄化効果を有している潜在株式が存在しないため記載しておりません。また、第77期以降の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

3.最高株価および最低株価は東京証券取引所(市場第一部)におけるものであります。

4.「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を第78期の期首から適用しており、第77期に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を遡って適用した後の指標等となっております。

 

2【沿革】

年月

事項

1947年7月

近藤カーボン工業㈱を大阪市西淀川区(登記簿上は香川県三豊郡観音寺町(現 香川県観音寺市))において資本金198千円で設立

1948年9月

大阪市西淀川区に登記簿上の本店移転

1949年11月

社名を東洋炭素㈱に変更

1956年5月

米国 ナショナルカーボン社と代理店契約を締結

1957年8月

西ドイツ リングスドルフカーボン社と日本総代理店契約を締結

1961年2月

香川県三豊郡柞田町(現 香川県観音寺市)に四国工場(1980年5月に東炭化工㈱として分離)を設置

1962年4月

本社工場内に研究所(1989年6月に大阪研究センターへ昇格、1995年2月に大野原技術開発センターへ移設)を設置

1974年3月

香川県三豊郡大野原町(現 香川県観音寺市)に大野原工場(1994年3月 大野原技術開発センターに改組、2007年12月 東洋炭素生産技術センターに改称)を設置

1975年2月

本社工場を廃止し、大野原工場へ集約

1981年8月

香川県三豊郡大野原町(現 香川県観音寺市)に萩原工場を設置

1985年12月

香川県三豊郡詫間町(現 香川県三豊市)に詫間工場(1995年2月 詫間事業所に改組)を設置

1986年3月

米国 イリノイ州にTOYO TANSO AMERICA,INC.を設立

1987年4月

米国 オレゴン州にTTA,INC.を設立

1987年7月

TTA,INC.がTOYO TANSO AMERICA,INC.を合併

1987年9月

TTA,INC.をTTAMERICA,INC.に社名変更

1988年8月

フランス トラッピス市にGRAPHITES TECHNOLOGIE ET INDUSTRIE S.A.を設立

1991年4月

イタリア ミラノ市にGRAPHITES TECHNOLOGY APPLICATIONS S.R.L.を設立

1991年5月

米国 ペンシルベニア州にPENNGRAPH,INC.を設立

ドイツ リンデン市にGTD GRAPHIT TECHNOLOGIE GMBHを設立(2000年3月 ランゲンス市へ本店移転)

1991年11月

台湾台北市に株式取得により精工碳素股份有限公司を設置(2001年9月 桃園縣(現 桃園市)へ本店移転)

 

米国 オレゴン州(登記簿上はデェラウェア州)にTOYO TANSO USA, INC.を設立

1992年8月

TTAMERICA,INC.を清算

1994年8月

中国上海市に上海東洋炭素有限公司を設立

1997年1月

イタリア ミラノ市に全株式取得によりTOYO TANSO EUROPE S.P.A.を設置

1998年3月

TOYO TANSO EUROPE S.P.A.がGRAPHITES TECHNOLOGY APPLICATIONS S.R.L.を合併

1998年5月

TOYO TANSO USA, INC.がPENNGRAPH,INC.を合併

1999年4月

福島県いわき市にいわき工場を設置

1999年9月

大阪府豊中市に全株式取得により大和田カーボン工業㈱を設置

2001年4月

詫間事業所に第二工場を設置

2001年6月

米国 オレゴン州(登記簿上は デェラウェア州)にADVANCED GRAPHITE,INC.を、ペンシルベニア州(登記簿上は デェラウェア州)にTOYO TANSO PA GRAPHITE,INC.を設立

TOYO TANSO USA, INC.のPENNGRAPH DIVISIONを分割し、TOYO TANSO PA GRAPHITE,INC.に営業譲渡

2003年9月

中国上海市に上海東洋炭素工業有限公司を設立

2004年5月

ADVANCED GRAPHITE,INC.およびTOYO TANSO PA GRAPHITE,INC.を清算

2005年4月

中国済寧市に嘉祥東洋炭素有限公司を設立

2006年3月

東京証券取引所市場第一部に株式を上場

2006年9月

韓国 ソウル市にTOYO TANSO KOREA CO.,LTD.を設立

2007年12月

大阪市北区梅田に本社を移転
旧本社事業所を近藤照久記念東洋炭素総合開発センターに改称

2008年2月

GRAPHITES TECHNOLOGIE ET INDUSTRIE S.A.をTOYO TANSO FRANCE S.A.に社名変更

2008年3月

タイ バンコク市にTOYO TANSO(THAILAND)CO.,LTD.を設立(2008年8月 バングプリー市へ本店移転)

2010年2月

詫間事業所に第三工場を設置

2010年8月

シンガポールにTOYO TANSO SINGAPORE PTE. LTD.を設立

2011年3月

インド ベンガルール市にTOYO TANSO INDIA PRIVATE LIMITEDを設立

2013年4月

トルコ イスタンブール市にTOYO TANSO GRAPHITE AND CARBON PRODUCTS INDUSTRY AND COMMERCIAL A.Sを設立

2013年11月

大阪市西淀川区に本社を移転

2014年9月

中国平湖市に東洋炭素(浙江)有限公司を設立

2015年5月

インドネシア 西ジャワ州にPT. TOYO TANSO INDONESIAを設立

2015年12月

メキシコ グアナファト州にTOYO TANSO MEXICO S.A. DE C.V.を設立

2017年6月

当社が所有する嘉祥東洋炭素有限公司の持分全部を嘉祥県正大炭素製品有限公司に譲渡(嘉祥東洋炭素有限公司は連結子会社から除外)

2018年12月

TOYO TANSO GRAPHITE AND CARBON PRODUCTS INDUSTRY AND COMMERCIAL A.Sを清算

2019年6月

中国成都市に成都東洋炭素工業有限公司を設立

2020年6月

ATNグラファイト・テクノロジー㈱に資本参加

2020年8月

TOYO TANSO INDIA PRIVATE LIMITEDを清算

 

3【事業の内容】

当企業グループは、当社、連結子会社11社(国内2社、海外9社)、非連結子会社5社(海外5社)および持分法適用の関連会社2社(国内1社、海外1社)で構成されております。当企業グループは、主に等方性黒鉛材料(注)を素材として、高機能分野におけるカーボン製品の製造、加工および販売を主たる事業としております。当企業グループのカーボン製品は様々な分野で使用されており、顧客が必要とする仕様も多岐にわたるため、多品種少量生産への対応が必要であります。

当企業グループでは、1974年に国内外の企業に先駆けて等方性黒鉛材料を量産化し、続いて大型化も実現させたことで、使用用途も拡大してまいりました。この等方性黒鉛材料を中心としたカーボン素材の製造拠点を国内に集約することで効率的に生産し、国内および米国、欧州、アジアの海外各国に展開する加工および販売拠点に供給、現地の顧客に直接販売する体制を構築しております。当企業グループでは、このような素材から製品まで一貫した生産、販売体制により、安定的かつ短納期の製品供給を確立するとともに、直販体制による顧客との協調関係の中で、顧客の多様なニーズを迅速に取り入れた開発を行っております。

また、当企業グループは、カーボン専業メーカーとして長年蓄積してきたカーボン素材の分析データと顧客ニーズを基にして、基礎研究および応用研究に取り組んでおります。その結果、当企業グループ製品の用途は、産業機械、自動車、家電等の産業用途や民生用途から、原子力、宇宙航空、医療、エネルギー等の最先端分野まで幅広い分野に拡大しております。

 

(注)等方性黒鉛材料

炭素材料には、高温熱処理により製造される黒鉛材料とその他の炭素材料があります。黒鉛材料の中で等方性黒鉛材料は、三次元の方向に対して同じ性質を持つという特性があります。

等方性黒鉛材料を製造するには、成形工程においてすべての方向から均等な圧力をかけることが必要でありますが、当社では静水圧成形法(水中で圧力をかける成形法)による製造法を国内外の企業に先駆けて確立いたしました。

黒鉛材料の主な特徴は次のとおりであります。

① 熱伝導(*)性および電気伝導性に優れている。

② 高温や薬品への耐性が高い。

③ 軽量で加工が容易である。

④ 摩擦、摩耗が起こりにくい。

等方性黒鉛材料には、上記に加えて次の特徴があります。

① 熱膨張(*)等の特性がどの方向にも同じである。

② 微粒子構造で高強度、材料のばらつきも非常に小さい。

 

それぞれの素材、分野、品目、製品例および特徴は以下のとおりであります。

 

素材/分野/品目

製品例

特殊黒鉛製品

エレクトロニクス分野

単結晶シリコン製造用

単結晶シリコン引上げ炉用るつぼ、ヒーター

化合物半導体製造用

MOCVD装置用サセプター、LPE装置用ボート

太陽電池製造用

単結晶・多結晶シリコン製造炉用るつぼ、ヒーター、

反射防止膜成膜用キャリア

一般産業分野

 

連続鋳造用ダイス、放電加工電極

各種工業炉用ヒーター・構造材

その他

先端プロセス装置用

イオン注入装置用電極、ガラス封着用治具

原子力・宇宙航空

医療用

高温ガス炉用炉心材、核融合炉用炉壁材、ロケット用部品、CTスキャン用部品

一般カーボン製品

機械用カーボン分野

一般産業機械用

ポンプ・コンプレッサー用軸受、シール材

輸送機械用

パンタグラフ用すり板、自動車用部品

電気用カーボン分野

小型モーター用

掃除機用カーボンブラシ、電動工具用カーボンブラシ

大型モーター用

大型モーターブラシ、風力発電機用カーボンブラシ

複合材その他製品

 

Si-Epi装置サセプター、核融合炉用炉壁材、自動車用ガスケット、MOCVD装置用サセプター、太陽電池製造用部材

 

(1) 特殊黒鉛製品
特殊黒鉛製品につきましては、主に等方性黒鉛材料を使用しております。

 

① エレクトロニクス分野

(a) 単結晶シリコン製造用

単結晶シリコンをスライス加工したシリコンウエハーは、高集積メモリー等の半導体基板としてエレクトロニクス産業の発展を支える基幹材料であります。この単結晶シリコン引上げ炉で使用されるヒーター、るつぼ(*)等の炉内主要消耗部品には、高純度で優れた耐熱性が求められることから、等方性黒鉛製品が用いられております。

単結晶シリコンは大径化が進み、300mmウエハーを用いた製造工程が主流となっています。当社は、世界最大の等方性黒鉛材料の生産能力を有しており、加工、高純度の設備能力を利用して、国内外からの需要に対応しております。

 

(b) 化合物半導体製造用

発光素子や通信素子、パワーデバイス等で使用される化合物半導体(*)は、長寿命、省電力という特性を活かして、携帯電話やDVD、液晶等のデジタル家電、その他自動車用ヘッドランプや蛍光灯の高効率発光源素子として使用されております。

これらの化合物半導体の製造工程において使用される発熱体やMOCVD装置用サセプター(*)等の主要消耗部品には、高純度で加工精度の高さが求められることから、当社の等方性黒鉛製品が、国内外で用いられております。

 

(c) 太陽電池製造用

クリーンエネルギーの代表格である太陽電池は、各国で家庭用発電の買上げや設備設置に対する補助金の法制化等の国策により普及が図られており、世界的に使用の拡大が進んでおります。

太陽電池素子の主力材料である単結晶シリコンおよび多結晶シリコンの製造工程で使用されるヒーター、るつぼ、反射防止膜成膜工程で使用されるPE-CVD装置用キャリア等の主要消耗部品には、優れた耐熱性と耐久性が求められることから、当社の等方性黒鉛製品が用いられております。

 

② 一般産業分野

等方性黒鉛材料は、黒鉛材料の中でもより耐熱性、電気伝導性、耐薬品性に優れた材料であります。これらの特性を活かし、金属溶解るつぼや連続鋳造ダイス(*)、金型製造時の放電加工電極(*)、セラミック、粉末冶金材料の焼結や自動車部品の焼鈍等の各種工業炉向け高温発熱体や炉内構造材等の分野に使用されております。

当企業グループは、さらなる成長が見込まれる中国・東南アジア・南米等国内外のこれら幅広い産業分野へ製品供給を行っております。

 

③ その他

(a) 先端プロセス装置用

半導体や液晶の製造工程における微細加工に用いられるイオン注入装置用電極や、ダイオード、水晶振動子等の封着治具等、先端プロセス装置部品の製造用として様々な等方性黒鉛製品が使用されております。優れた耐熱性と熱伝導性、高純度、高強度という特性や高い加工精度が求められることから、当社製品は大手装置メーカー等に広く採用されております。

 

(b) 原子力・宇宙航空・医療用

高温ガス炉の炉心材や核融合炉の炉壁材等の原子力用途には、高い信頼性と品質が要求されます。優れた耐熱性や黒鉛の持つ多様な特性に加え、耐放射線性や耐プラズマ性が求められることから、当社の製品が、これらの原子力分野で使用されております。また、ロケット用部品等の宇宙航空分野、CTスキャン等の医療分野でも使用されております。

 

(2) 一般カーボン製品

一般カーボン製品につきましては、主に従来の成形法で製造された炭素材料を使用し、等方性黒鉛材料も一部で使用しております。

 

① 機械用カーボン分野

(a) 一般産業機械用

耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性、自己潤滑性(*)という特性を活かし、ポンプやコンプレッサーの軸受け等のしゅう動部品、ピストンリング(*)、メカニカルシール(*)等の気体や液体のシール材として、国内外の機械メーカーに幅広く製品を販売しております。当社では、材料の均質性の向上と素材サイズの最適化を図ることで、コスト競争力に強みを有した海外展開を行っております。

 

(b) 輸送機械用

カーボンに銅を高圧含浸することにより自己潤滑性、電気伝導性および耐摩耗性を向上させたパンタグラフ用すり板(*)を、鉄道会社向けに販売しております。当社のパンタグラフ用すり板は、従来の金属製すり板に比べて架線の摩耗の低減、低騒音化を実現しております。

 

② 電気用カーボン分野

(a) 小型モーター用

掃除機や電動工具等、民生用途の小型モーター用カーボンブラシを、家電メーカーおよび工具機メーカー等に販売しております。当社の製品は、高速回転に対する耐久性や整流特性が良く、長寿命という特性があります。また、中国に製造販売子会社をいち早く設立する等、地産地消に早くから取り組み、現地での密な顧客対応を実現しております。

 

(b) 大型モーター用

自己潤滑性、優れた電気伝導性、易加工性等の特性を活用し、産業用途の大型モーター用カーボンブラシとして、製鉄メーカーおよび製紙メーカー等で使用されております。カーボンブラシは回転体にしゅう動しながら安定的かつ継続的に電気を供給する部品であり、風力発電の集電設備等の環境・エネルギー分野においても使用されるようになっております。

 

(3) 複合材その他製品

複合材その他製品につきましては、主に等方性黒鉛材料を基材に他の材質をコーティングした複合材料(SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛(*)等)、カーボンとカーボンファイバーとの複合材料(C/Cコンポジット製品(*))、天然黒鉛材料(黒鉛シート(*))等を製造販売しております。

 

① SiCコーティング黒鉛製品

SiCコーティング黒鉛製品は、耐熱性、耐エッチング性(*)が高く、アウトガスの発生を押さえた高純度な特性を活かし、シリコンおよび化合物半導体製造工程の薄膜製造プロセスにおけるサセプター材料として、国内外の半導体業界向けに販売を行っております。

 

② C/Cコンポジット製品

C/Cコンポジット製品は、軽量、高強度およびカーボンの持つ良好な熱特性を兼ね備えた先端材料であり、国内外の核融合炉壁材等の特殊分野、太陽電池製造工程、単結晶シリコン製造工程、真空炉部材等の幅広い分野で使用されております。

 

③ 黒鉛シート製品

黒鉛シート製品はシート状の軽量な製品であり、高温下においても他物質と反応しにくいという特性によって、ガスケットやマフラー等の自動車部品に使用されております。合成石英の製造工程や、単結晶シリコン製造工程におけるカーボン部材の保護用としても安定した需要が見込まれます。面方向の熱伝導の良さを利用した、ヒートシンク等の熱対策分野での応用も期待されております。

 

④ 多孔質炭素製品

多孔質炭素製品は、メソ孔(2~50nmの細孔)を大量に有する粉末状の製品であり、従来の多孔質材料にはない機能を有しております。様々な物質の吸着材料への適用の他、蓄電デバイスの電極材、添加剤などのエネルギー貯蔵関連用途、タンパク質吸着や分離、生体センサー部材などのバイオ系用途への使用が期待されています。

当企業グループの当該事業に係る主な位置付けは、2020年12月31日現在次のとおりであります。

なお、次の4地域は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

セグメントの名称

 主要な会社

主要な事業の内容

日本

当社

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造および販売をしております。

 

東炭化工株式会社

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造をしており、当社がその販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

大和田カーボン工業株式会社

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造をしており、当社がその販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

米国

TOYO TANSO USA, INC.

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他の製品の製造および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

欧州

TOYO TANSO EUROPE S.P.A.(イタリア)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)の製造および販売、複合材その他の製品の販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

TOYO TANSO FRANCE S.A.(フランス)

特殊黒鉛製品および一般カーボン製品(機械用カーボン分野)の製造および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

GTD GRAPHIT TECHNOLOGIE GMBH(ドイツ)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)および複合材その他製品の製造および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

アジア

上海東洋炭素有限公司(中国)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野)の製造および販売の他、複合材その他の製品の販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

上海東洋炭素工業有限公司(中国)

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に東洋炭素(浙江)有限公司より行っております。

 

東洋炭素(浙江)有限公司(中国)

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

精工碳素股份有限公司(台湾)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)の製造および販売の他、複合材その他の製品の販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

 

成都東洋炭素工業有限公司(中国)

一般カーボン製品(電気用カーボン分野)の製造および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に東洋炭素(浙江)有限公司より行っております。

 

(非連結子会社および関連会社)

・上海永信東洋炭素有限公司(中国)

ブラシホルダーおよびフェノール樹脂製品の製造をしており、上海東洋炭素工業有限公司がその販売をしております。

・TOYO TANSO (THAILAND) CO.,LTD.(タイ)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。

素材(半製品)の仕入は主に当社より行っております。

・TOYO TANSO KOREA CO.,LTD.(韓国)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の販売をしております。

・TOYO TANSO SINGAPORE PTE. LTD.(シンガポール)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の販売をしております。

・TOYO TANSO MEXICO S.A. DE C.V.(メキシコ)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。

・PT. TOYO TANSO INDONESIA(インドネシア)

特殊黒鉛製品、一般カーボン製品(機械用カーボン分野および電気用カーボン分野)、複合材その他の製品の加工および販売をしております。

・ATNグラファイト・テクノロジー株式会社(日本)

熱膨張性黒鉛の製造および販売を行う準備中であります。

以上に述べました当企業グループの事業系統図は、以下のとおりであります。なお、取引関係については、主要なもののみ記載しております。

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事業系統図の略名は以下のとおりであります。

会社名 (TTU) … TOYO TANSO USA, INC.

(TTE) … TOYO TANSO EUROPE S.P.A.

(TTF) … TOYO TANSO FRANCE S.A.

(GTD) … GTD GRAPHIT TECHNOLOGIE GMBH

(STT) … 上海東洋炭素有限公司

(STI) … 上海東洋炭素工業有限公司

(ZTT) … 東洋炭素(浙江)有限公司

(CTT) … 成都東洋炭素工業有限公司

(TTT) … 精工碳素股份有限公司

(YTT) … 上海永信東洋炭素有限公司

(KTT) … TOYO TANSO KOREA CO.,LTD.

(TTTh)… TOYO TANSO (THAILAND) CO.,LTD.

(TTS) … TOYO TANSO SINGAPORE PTE. LTD.

(TTM) … TOYO TANSO MEXICO S.A. DE C.V.

(TTID)… PT. TOYO TANSO INDONESIA

 

なお、(*)表記がある用語につきましては、以下に用語解説を添付しておりますので、ご参照下さい。

ただし、この用語解説は、投資家に本項の記載内容をご理解いただくためのご参考として、当社の理解と判断に基づき、当社が作成したものであります。

 

[用語解説]

〔熱伝導〕

物質の持つ熱の伝えやすさ。

 

〔熱膨張〕

温度の上昇にともなう物質の伸び。

 

〔るつぼ〕

高温の液体等を入れるための鉢状の容器。

 

〔化合物半導体〕

複数の元素からなる物質(化合物)からなる半導体で、ガリウムヒ素、チッ化ガリウム、炭化ケイ素等がある。シリコン半導体にはない性質が利用される。

 

〔サセプター〕

各種ウエハーの表面に薄膜結晶を成長させるとき等に使用する台。

 

〔連続鋳造ダイス〕

溶融金属を連続的に冷却し鋳造する連続鋳造において、溶融金属に接して冷却し凝固させる型。この型の断面を持った金属製品が連続的に得られる。

 

〔放電加工電極〕

被加工物と対になる電極のことをいい、被加工物と電極との間で放電を発生させ、電極の形状を被加工物に転写させる。

 

〔自己潤滑性〕

層状結晶構造を有すること、また摩擦係数が低いこと等から凝着が起こりにくい性質。

 

〔ピストンリング〕

往復動圧縮機において、シリンダー内壁とピストンとの隙間からの漏れを防ぐシールリング。

 

〔メカニカルシール〕

流体機器の回転軸、往復運動による側壁または圧力容器等からの漏れを制限したり、外部からの異液等の侵入を防ぐための機械部品。

 

〔パンタグラフ用すり板〕

電車へ電力を供給するために、架線にしゅう動させながら接触させて集電する集電体。

 

〔SiC(炭化ケイ素)コーティング黒鉛〕

等方性黒鉛表面に炭化ケイ素の緻密な薄い膜を生成させた製品で、黒鉛からの微量のガス発生や反応を抑制することができる。

 

〔C/Cコンポジット製品〕

炭素繊維強化黒鉛で、軽量で強度が高いことが特徴である。

 

〔黒鉛シート〕

特殊な製法により黒鉛を紙のようなシート状に成形したもの。曲げやすい性質を持ち、ガスケット等に使用される。

 

〔耐エッチング性〕

反応性の高い気体や液体による消耗の少なさの度合い。

 

4【関係会社の状況】

名称

住所

資本金又は出資金

主要な事業の内容

議決権の所有割合(%)

関係内容

役員の兼任

(人)

資金援助等

(百万円)

営業上の取引

設備の賃貸借

業務の提携等

(連結子会社)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東炭化工㈱

(注)1,4,5

香川県

三豊市

百万円

65

炭素製品の製造

100.0

2

短期借入金

500

当社へ製品を販売

あり

なし

大和田カーボン工業㈱

(注)1,4

大阪府

豊中市

百万円

18

炭素製品の製造

100.0

2

短期借入金

300

当社へ製品を販売

なし

なし

TOYO TANSO USA, INC.

(注)4,6

米国

オレゴン州トラウトデール市

千米ドル

107

炭素製品の製造販売

100.0

1

長期貸付金

1,216

当社より半製品を購入

なし

なし

TOYO TANSO EUROPE S.P.A.

(注)4

イタリア

ミラノ市

千ユーロ

500

炭素製品の製造販売

100.0

1

債務保証

184

当社より半製品を購入

なし

なし

TOYO TANSO FRANCE S.A.

(注)4

フランス

トラッピス市

千ユーロ

200

炭素製品の製造販売

100.0

短期貸付金

76

当社より半製品を購入

なし

なし

GTD GRAPHIT

TECHNOLOGIE GMBH

(注)4

ドイツ

ランゲンス市

千ユーロ

3,100

炭素製品の製造販売

100.0

債務保証

71

短期貸付金

1,107

長期貸付金

215

当社より半製品を購入

なし

なし

上海東洋炭素有限公司

(注)1,3,8

中国

上海市

千人民元

122,754

炭素製品の製造販売

100.0

(30.0)

3

当社より半製品を購入

なし

なし

上海東洋炭素工業有限公司

中国

上海市

千人民元

49,660

炭素製品の製造販売

100.0

3

当社より半製品を購入

なし

なし

東洋炭素(浙江)有限公司

中国

浙江省 平湖市

千人民元

36,760

炭素製品の製造

100.0

3

当社より半製品を購入

なし

なし

成都東洋炭素工業有限公司

(注)3

中国

四川省 成都市

千人民元

13,733

炭素製品の製造販売

100.0

(75.0)

3

なし

なし

精工碳素股份有限公司

(注)3,7

台湾

桃園市

千NT$

18,750

炭素製品の製造販売

97.2

(2.8)

2

当社より半製品を購入

なし

なし

(持分法適用関連会社)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上海永信東洋炭素有限公司

 

中国

上海市

千人民元

8,942

炭素製品の製造販売

45.0

1

なし

なし

ATNグラファイト・テクノロジー㈱

和歌山県

和歌山市

百万円

100

炭素製品の製造販売

34.5

なし

なし

(注)1.特定子会社であります。

2.上記子会社には有価証券届出書または有価証券報告書を提出している会社はありません。

3.議決権の所有割合の( )内は間接所有割合で内数であります。

上海東洋炭素有限公司と精工碳素股份有限公司に対するものは東炭化工株式会社が所有しております。

成都東洋炭素工業有限公司に対するものは上海東洋炭素工業有限公司が所有しております。

4.資金援助等の金額は2020年12月31日現在であります。

5.東炭化工㈱の登記簿上の所在地は大阪市西淀川区であります。

6.TOYO TANSO USA, INC.の登記簿上の所在地はデラウェア州であります。

7.当社は2020年12月16日に精工碳素股份有限公司の株式を追加取得いたしました。

8.上海東洋炭素有限公司については、売上高(連結会社相互間の内部売上を除く)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

名称

主要な損益情報等

売上高

(百万円)

経常利益

(百万円)

当期純利益

(百万円)

純資産額

(百万円)

総資産額

(百万円)

上海東洋炭素有限公司

5,444

274

237

8,810

10,616

 

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2020年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

日本

946

(242)

米国

108

(6)

欧州

119

(23)

アジア

485

(4)

合計

1,658

(275)

(注)従業員数は就業人員(当企業グループからグループ外への出向者を除く)であり、臨時雇用者数(契約社員、パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

 

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2020年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

828

(169)

42.7

17.9

5,749,813

(注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)であり、臨時雇用者数(契約社員、パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。

3.当社は、「日本」の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員の状況の記載を省略しております。

 

(3)労働組合の状況

当社の労働組合は、東洋炭素労働組合と称し、2020年12月31日現在における組合員数は379人で上部団体には加盟しておりません。

なお、労使関係は安定しております。