第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

1. 経営方針

当社グループは、以下の「経営理念」、「行動指針」及び「グループビジョン」を経営の基本方針としております。

 

<経営理念>

中山製鋼所グループは、公正な競争を通じて付加価値を創出し経済社会の発展を担うとともに、社会にとって有用な存在であり続けます。

 

<行動指針>

① 法令や社会的規範を守り、高い倫理観を持って行動します。

② 安全・防災・環境問題は企業の存在の基本条件と位置づけ、生産活動に優先して取り組みます。

③ 社会的に有用な商品・サービスを開発、提供し、顧客の満足度と豊かさを実現します。

④ 従業員の人格・個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現します。

⑤ 社会および株主とのコミュニケーションを大切にし、企業情報を積極的かつ公正に開示します。

⑥ 良き企業市民として積極的に社会貢献活動に取り組みます。

 

<グループビジョン>

中山製鋼所グループは、鉄鋼事業を中核に発展してきた企業集団であり、今後ともお客様と将来の夢を共有し、社会にとって有用な付加価値の高い製品を開発、商品化し、お客様に安定的に提供していく努力を継続してまいります。

 

2. 経営環境

今後の見通しにつきましては、米国の関税をはじめとする国際的な保護貿易政策や中国製品の安値流入拡大懸念などにより不透明感が強く、労務費、物流費など諸コストが上昇するなか、人手不足や資材高騰に伴う工事の見直しにより中小建築案件の需要回復が見込めないことから、厳しい環境が継続するものと思われます。

このような環境下、2025年5月9日に公表しました「中山製鋼所グループの長期ビジョン実現に向けた長期計画の策定と新電気炉投資に関するお知らせ」の通り、当社は長期計画の実現に向けて取り組んでいくとともに、同日併せて公表しました「日本製鉄株式会社との合弁会社設立及び業務提携に向けた基本合意書締結のお知らせ」の通り、日本製鉄との合弁会社設立と業務提携に向けて協議を進めてまいります。カーボンニュートラルへの意識が高まるなか、電気炉の生産能力増強や電気炉材の適用拡大を推し進めることで基盤作りを行い、高付加価値製品の拡販、加工能力の増強など諸施策を着実に実行し、収益性の向上を図ってまいります。

 

3. 対処すべき課題等

[中山製鋼所グループ2030長期ビジョン]

当社は、おかげさまで2019年に創業100周年を迎えましたが、さらに100年先も躍動し続けるグループを目指し、長期ビジョンとして2030年のありたい姿・目指す企業像を策定いたしました。当社グループの経営理念やグループビジョンを踏まえ、電気炉メーカーである強みや優位性を活かした成長戦略を推進するとともに、持続可能な社会の実現に貢献することを目指してまいります。

 

中山製鋼所グループ2030長期ビジョン~ESGにおける5つのマテリアリティ(重要課題)

ありたい姿・目指す企業像

・カーボンニュートラル実現に向けて尽力する企業

・従業員のモチベーションをアップさせ、家族の幸せを追求する企業

・社会に貢献し地域と協調・共生する企業

・お客様に中山製鋼所グループを選んでいただき、喜んでいただける企業

・ステークホルダーに安心していただき、喜んでいただける企業

 

 

 

[中期経営計画(2022~2024年度)の概要と実績]

当社グループは、前記の2030長期ビジョンの実現に向けて、そのスタートとなる3年間の中期経営計画(2022年度~2024年度)を策定し、施策を実施いたしました。当該中期経営計画の重点方針及び最終目標は以下の通りです。

 

(1) 重点方針

① ”中山らしさ”の追求、グループ一体での付加価値向上による連結収益最大化

② カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けた取組強化

③ 中部鋼鈑株式会社との業務提携の推進

④ 経営基盤の強化

⑤ ステークホルダーに貢献する取組強化

 

(2) 経営目標

本中期経営計画の最終年度である2024年度の定量目標・KPI及び2022~2024年度実績は以下のとおりです。

 

 

2024年度(最終年度)

目標

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

経常利益

100億円

134億円

122億円

81億円

投資額

190億円/3年間

40億円

52億円

41億円

ネットD/Eレシオ

0.1倍程度

△0.06倍

△0.07倍

△0.06倍

ROE

7.0%

11.0%

8.8%

5.4%

配当性向

30%

29.1%

30.4%

38.0%

 

 

[中山製鋼所グループの長期計画について]

当社は、2019年に創業100周年を迎えましたが、さらに100年先も躍動し続けるグループを目指し、2022年5月に当社グループの2030年のありたい姿・目指す企業像として「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」を公表しました。その中において、グループ一体での付加価値向上やカーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けた取り組み強化を図っていくため、電気炉鋼材の適用拡大、加工戦略の推進に加え、抜本的な電気炉生産能力の増強策として、新電気炉投資(以下「本投資」といいます。)を検討してまいりました。

特に、近年、世界的に環境意識が高まる中において、鉄鋼業におけるCO2排出量の削減は喫緊の課題となっております。そのような事業環境下において、CO2排出量が高炉鋼の約1/4である電気炉鋼の需要は、今後益々高まると考えられております。

当社グループは、高炉・転炉の技術も持ち合わせた電気炉鋼材を生産できる限られたメーカーの一つであります。2002年に高炉・転炉を休止し、現在は電気炉で生産した鉄源と外部から調達した鉄源により鋼材やその加工品を生産・販売しておりますが、老朽化が進む既設電気炉を休止し、新電気炉を建設して生産能力を大幅に増強し、外部調達から自社鉄源に置き換えることにより、CO2排出量を大幅に削減できるだけでなく、収益性も改善できると見込んでおります。

このような認識に基づき、100年先も躍動し続けるグループの土台となる「中山製鋼所グループ2030長期ビジョン」の実現のため、本投資を決定し、これを中核とする長期計画を策定いたしました。

なお、本投資は、2025年5月9日に公表いたしました「日本製鉄株式会社との合弁会社設立及び業務提携に向けた基本合意書締結のお知らせ」のとおり、日本製鉄株式会社と当社が出資し合弁会社を設立し、当社船町工場構内に電気炉設備を新設するものであり、当社が当該電気炉設備を賃借して電気炉操業を行う予定です。

 

(1) 重点方針

① カーボンニュートラル・循環型社会の実現への貢献

・本投資により完成する新電気炉が稼働することで、2030年度CO2排出量を2013年度比46%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指します。

② 収益構造の改善、製品ポートフォリオの改革

・本投資により、自社鉄源比率の向上、省エネルギーや歩留り改善などコスト競争力を強化し、日本製鉄との業務提携に基づく電気炉鋼片や電気炉熱延製品の供給による収益性の向上や安定化を図ります。

 

・電気炉鋼材の適用拡大を推進し、製品開発などにより製品ラインアップを拡充するなど、新たな顧客価値を創出します。グリーン鋼材への取組みも今後検討してまいります。また、これまで進めてきた加工戦略を一層強化し、付加価値を向上させ製品ポートフォリオを改革します。

・新電気炉稼働までの期間は、既設電気炉で月間5万トンの生産体制を構築するとともに、電気炉鋼比率を高め、電気炉鋼の拡販に注力します。

③ 事業連携の強化

・日本製鉄との合弁契約締結に向けて引続き協議し、両社の業務提携を実現できるよう取り組みます。

・中部鋼鈑株式会社との業務提携契約に基づき、同社からのスラブ供給や同社への厚板生産委託などを推進します。

・加工戦略を一層推進すべく、取引先との加工受委託や製品開発に関する連携も検討してまいります。

④ 新電気炉稼働に向けた体制づくり

・新電気炉は、当社船町工場構内の高炉・コークス跡地に設置され、下工程の熱延工場加熱炉に近接でき、構内物流の整流化や電気炉鋼片の熱延工場加熱炉への直送によるコスト改善も見込まれます。新電気炉の建設とともに、安全かつ効率的な業務運営にも取り組んでまいります。

・新電気炉生産量は120万トン/年で、既設電気炉の2倍以上を想定しております。そのため、鉄スクラップの調達が課題となりますが、当社主要拠点の岸壁を活用したグループ会社による海上輸送や新電気炉による加工スクラップの使用比率低減などの対策を講じてまいります。

⑤ 経営基盤の強化

・④ 新電気炉稼働に向けた体制づくり を踏まえ、労働生産性向上のため、DXによる業務効率化を推進します。生産情報の可視化・リアルタイム共有、サプライチェーン情報の可視化や経営管理の高度化など付加価値の高い業務へのシフトを進めます。

・人的資本経営への取組みとしては、将来人事戦略を具現化し、優秀な人材獲得や離職率の低減、人材育成の仕組みを再構築するとともに、DE&Iを推進し、従業員のモチベーションややりがいを高める職場環境づくりを目指します。

 

(2) 経営目標

本長期計画において重視する経営指標の数値目標は以下のとおりです。

 

 

2024年度実績

2030年度目標

2033年度目標※

経常利益

81億円

100億円以上

130億円以上

EBITDA

113億円

220億円以上

260億円以上

ROE

5.4%

5%以上

6%以上

 

※新電気炉本格的稼働を2030年度期中と想定しており、新電気炉による施策効果が概ね見込まれる2033年度を長期計画の数値目標といたしました。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「公正な競争を通じて付加価値を創出し、経済社会の発展を担うとともに、社会にとって有用な存在であり続けます」という経営理念を掲げており、これはSDGsの考え方と共通していると考えております。SDGsを重要な取り組み課題と認識しており、急激な世界経済の変動や地球規模の気候変動に柔軟かつ適切に対応するために、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3 対処すべき課題」に記載の「中山グループ2030長期ビジョン~ESGにおける5つのマテリアリティ(重要課題)」を下表のとおり特定いたしました。

当社グループの従業員一人ひとりがこれらのマテリアリティを意識して事業活動に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長とともに社会的課題の解決やSDGsへの貢献を実現してまいります。

 


 

1. サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

前記のマテリアリティとその推進方針に従い、取締役会の下に「サステナビリティ委員会」を設置し、同委員会を中心として、サステナビリティ課題に係るリスクや機会を監視し、管理する体制を構築しており、その内容は取締役会に報告され、承認されております。また、同委員会の下部組織として「カーボンニュートラル推進委員会」「環境マネジメント委員会」「品質マネジメント委員会」「情報開示委員会」を設置し、各委員会において、サステナビリティ課題に関するリスク・機会の識別、評価及び管理を行うこととしております。なお、これらの内容についても各委員会よりサステナビリティ委員会に諮問のうえ、取締役会に報告され、承認されております。

 

2. 気候変動に関するガバナンス、リスク管理、戦略、指標及び目標

世界全体で気候変動対策を進めることが喫緊の課題となる中、当社グループは気候変動への取り組みを経営上の重要課題として認識しております。

当社グループでは、鉄スクラップを主原料として電気炉プロセスによる電気炉鋼より鋼材を製造・販売しており、鉄鋼資源のリサイクルを通じて循環型社会へ貢献しております。カーボンニュートラルに向けた取り組みが加速し、バリューチェーン全体でのCO2排出量の削減が求められる中、当社が保有する電気炉プロセスは高炉プロセスに比べ約1/4のCO2排出量で鉄を作ることができる、環境にやさしい製鉄プロセスであり、今後、お客様の電気炉鋼材に対するニーズ・需要は高まっていくものと考えております。

当社グループでは、カーボンニュートラルに向けた取り組みを事業拡大のチャンスと捉え、他メーカーから調達する鉄源を電気炉鋼にシフトするとともに、新電気炉投資による抜本的な電気炉生産能力増強策を推し進め、C02排出量を大幅に削減してまいります。

なお、以下に記載する当社グループの気候変動に対する取り組み体制や取り組み方針等は、TCFD提言が推奨する枠組みに基づき記載しております。

 

また、当社は、TCFDのほか諸団体における活動にも積極的に参加しており、経済産業省が主導する「GXリーグ」に2022年3月に賛同を表明のうえ2023年5月に参画したほか、CDP2024気候変動調査においても最高ランクAリスト企業に選定されております。

 

(1) ガバナンス

 ① 気候変動・環境関連課題の管理・監督体制

当社グループは持続可能な成長と社会的課題の解決に向けたサステナビリティ経営の取り組みの推進と中長期的な企業価値向上のため、サステナビリティ委員会を設置し、年4回以上開催しております。特に気候変動問題は国際的課題として重要視しており、2030長期ビジョンの第一義として「カーボンニュートラルに向けて尽力する企業」を掲げ、その他環境関連課題とともに当委員会において管理・監督する体制を構築しております。

また、その下部組織であるカーボンニュートラル推進委員会、環境マネジメント委員会がカーボンニュートラル実現に向けての方針設定、リスク・機会の特定を行い、その後、業務執行部門が検討、報告(年1回)するCO2排出量削減に向けての具体的な活動、環境目的・目標の設定などに対し、環境マネジメント委員会が承認・指示を行っております。両委員会は年3~4回の定期開催に加え、外部環境やモニター状況の変化など必要となった場合は臨時開催する等、臨機応変に対応しております。

これらの内容はそれぞれの委員会より適宜、サステナビリティ委員会に諮問のうえ、取締役会にて協議、最終承認・指示(年1回以上)されております。また、CG報告書、有価証券報告書にて開示するとともに、統合報告書にも反映しており、当社ウェブサイトなどにも掲載することで、ステークホルダーへの情報共有にも努めております。


 ② 気候変動・環境関連課題を評価・管理する上での経営者の役割

当社グループの気候変動など環境関連問題への対応に中心的な役割を担うサステナビリティ委員会は取締役社長を委員長とし、カーボンニュートラル推進委員会及び環境マネジメント委員会では製造、環境部門などを統括する取締役が推進責任者となり、気候関連、環境に関する課題の抽出と対策立案、モニタリングと確実な履行を評価・管理しております。

 


 

(2) リスク管理

気候変動及び環境関連におけるリスクは、当社グループの事業経営、サステナビリティ経営に影響を及ぼすとの認識の下、年3回の定期更新を行っており、そのマネジメントにあたっては以下のとおり、PDCAサイクルを活用しております。

計画段階(Plan)では、カーボンニュートラル推進委員、EMS管理責任者が国際情勢、国内における社会情勢、政府・自治体の動向、鉄鋼業界・他産業界の動向など様々な情報を参照の上、当社グループにおける気候変動・環境関連への依存・影響を把握のうえ、リスクと機会を抽出しております。そのリスクを財務影響度、発生可能性、ステークホルダーにとっての重要性などを加味した上でカーボンニュートラル推進委員会、環境マネジメント委員会が特定・評価しております。

実行段階(Do)では、業務執行部門が前述の特定されたリスクを踏まえ、エネルギー原単位改善の目標と施策、及び省エネ・CO2削減の設備投資計画を検討の上、経営計画・アクションプランに反映し、実行しております。

実績評価段階(Check)では、環境マネジメント委員会がアクションプラン実績のモニタリング、フォローとともにその達成度のレビュー、環境パフォーマンスの総合評価を実施しております。これらの結果については、環境マネジメントシステム(EMS)における外部機関や社内環境監査委員からの監査を受けることで評価するとともに、ステークホルダーとのコミュニケーション(開示文書などを含む)の中で明示しております。

歯止め(Action)として、レビュー及びパフォーマンス評価の結果を踏まえた改善策を検討の上、次期計画に反映しております。

これら一連の業務については、環境マネジメント委員会がサステナビリティ委員会及び取締役会で報告(年1回)し、承認・指示を受けております。

 



 

(3) 戦略

 ① シナリオ群の定義

シナリオの選択にあたっては、可能な限り温度帯や世界観が異なるシナリオを選択することで「想定外を無くす」ことを意識し、パリ協定で示されている「世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」ことを念頭に置きました。

その上で、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオ(1.5℃~2℃未満及び4℃)を参照の上、2030年、2050年時点における影響評価を行いました。

 

 ② 当社グループにおける事業環境の変化

シナリオで設定した気候変動が当社グループの事業環境に与える影響をマクロ的視点から描写した上でリスクと機会を細分化しました。

・1.5℃~2℃未満シナリオ=脱炭素化ニーズが高まり、産・官・学・金・民による抜本的な対策が講じられる。

・4℃シナリオ=脱炭素化ニーズはなく、異常気象など物理的リスクによる激甚災害が頻発する。

 ③ リスク・機会の重要なアイテムと対策

当社グループの中・長期的な気候変動への対応を全社の取り組み課題として、経営層を含む全従業員がその内容を認識・共有化の上取り組むべく、TCFD提言において推奨されるシナリオ分析を活用しました。

当社グループ及びバリューチェーンにおける気候関連リスクと機会を認識の上、シナリオとして選択した「1.5℃~2℃未満、及び4℃」の2パターンに当て嵌め、事業上の短期・中期・長期的な課題を検討しております。

特に重要度の高い内容について、下記のとおり推進してまいります。

 

<リスクへの対応>

(a) 炭素税、排出量取引などのカーボンプライシング導入に伴うコスト負担増加への対応、及び脱炭素社会に向けての他産業における高炉製品に代わる新素材・新技術の開発による鋼材需要減少への対応

[対  策]CO2削減に向け、現在購入している高炉鉄源を電気炉鉄源に置き換えるべく、電気炉設備の生産能力増強のため、新電気炉建設を決定いたしました。その実現に向けて、持続的な安定収益の確保の実現、スクラップ調達確保策の検討などを推進してまいります。また、既設工場設備では省エネルギーを推進し、加えて太陽光発電設備の導入検討など再エネ化も並行して対応しております。

 

(b) サプライチェーンにおける脱炭素化への対応によるコスト増加分の原材料価格への転嫁に伴うコスト負担増加への対応

[対  策]省エネなど自社によるコスト削減とサプライチェーンへの省エネの働きかけとともに、サプライヤーとのエンゲージメントを継続的に実施のうえ、原材料価格変動に臨機応変に対応すべく、連携を強化します。長期的には新燃料の利用拡大、船舶の燃料転換などを推進してまいります。

 

(c) 気候変動関連対応ニーズへの対応不足による企業評価低下がもたらす株価の下落への対応

[対  策]TCFDに沿った開示を進めるとともに、株主様、機関投資家様などとのコミュニケーションを充実してまいります。

 

(d) 平均気温の上昇や海面上昇に伴う事業環境の変化への対応

[対  策]自社における既存操業の維持が困難となり、拠点の移転、設備対応、物流ルート変更に対するコストの増加が想定される場合、及びサプライチェーンにおいて供給体制が不安定となることを想定した場合への対応として、原材料調達先の多様化、及びBCP(事業継続計画)の実行によるスムーズな復旧を推進します。また、体制固めとして、BCM(事業継続マネジメント)体制を構築することで、鋼材販売遅延の極小化を推進すべく、設備・施設強化、鉄鋼メーカーとの業務連携による融通制度構築などを進めてまいります。

 

<機会への対応>

(e) 脱炭素意識の高まりに伴う消費者意識の変化への対応

[対  策]CO2排出量の低い鋼材ニーズの高まりに伴う電気炉製品販売量の増加への対応として、上記(a)項に記載の電気炉生産能力向上対策の実施に加え、販売戦略として脱炭素・循環型鋼材であることのPRなどを行ってまいります。

 

上記の詳細につきましては、2024年10月に当社ウェブサイトに掲載した「NAKAYAMA STEEL REPORT 2024」38~41頁に記載しております。

 

 

(4) 指標と目標

 ① バリューチェーン全体におけるCO2排出量削減実績と目標

当社グループでは、2050年カーボンニュートラルに向けてバリューチェーン全体での排出量削減が重要であると認識しており、また、自社グループにおける直接・間接排出量(Scope1,2)よりもサプライチェーンの排出量(Scope3)が多いことから、Scope3を含めた2030年目標値として2013年度比46%削減、2050年カーボンニュートラルを掲げております。

当社グループにおけるScope1,2,3排出量は2023年度実績で1,633千t-CO2となり、その内、自社の活動からの排出量(Scope1,2)は298千t-CO2で全体の2割弱となっております。

 


 

なお、2024年度の実績については、2025年秋口に発行予定の統合報告書の中で開示を予定しております。

 

 ② 2050年カーボンニュートラルに向けてのロードマップ

当社グループでは、2050年カーボンニュートラルに向けての取り組みを事業拡大のチャンスと捉え、電気炉製品の生産比率を飛躍的に向上させて、Scope3の排出量を大幅に削減してまいります。また、省エネ設備、熱延直送圧延、太陽光発電などの導入を進め、2030年には2013年比46%以上のCO2排出量削減を目指します。

さらに2050年カーボンニュートラルに向けては、更なる燃料・電力原単位の削減のための新設備技術、新燃料などの生産設備・船舶などへの適用、省エネ設備、廃熱回収発電設備の導入などを推進してまいります。

 


 

 

3. 人的資本経営に対する取組

当社は、人材育成は単に「人を育てる」ということでなく、経営戦略の一環であり、企業の競争力を維持・向上させるための源泉だと考えております。急激に変化する外部環境を的確に捉え、次の時代を見据えた抜本的な変革を実現するために、人材育成の強化、人材のダイバーシティ&インクルージョンの推進、多様性の確保、従業員エンゲージメントの向上戦略という4つの観点からの取り組みを行い、企業理念の浸透、更なる戦略的な人事施策を展開してまいります。

なお、当社グループでは企業理念を共有しグループ一体となった経営を行っておりますが、人的資本経営に関しては各社ごとにその事業規模や業容を踏まえた取り組みを個別に実施しており、連結グループにおける記載が困難であります。このため、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社の取り組みを記載しております。

 

(1) 戦略

① 人材育成の強化

人材育成に向けては、自律的キャリア開発を土台に一人ひとりのポテンシャルを最大化させる「多様なキャリア形成」の実現と次世代経営層、リーダーの早期育成を図ってまいります。当社は「経営に貢献する人づくり」の観点から、OJT・Off-JT両面から従業員の成長を支援し、会社と職場が一体となって個人に寄り添い教育する企業風土づくりを目指しております。Off-JTとしては新入社員、中堅社員や役職員を対象とした階層別研修、スキルアップを目的とした研修など、従業員の能力を最大限に引き出すための人材育成プログラムにより、各階層に求められる知識やスキル習得を支援しております。昨年からは係長クラスの登用を目指す従業員を対象とした研修プログラムを新たに取り入れ、単なる役割認識やマインドセットにとどまらず、業務課題に対する主体的な取り組みと、その成果について発表する場を設け、将来的な組織の中核を担う管理職の育成に注力しております。その他、QC手法を用いた自主管理活動(JK活動)、各種通信教育、資格取得奨励制度を通じて、従業員の自律的な能力開発を支援しております。

今後も当社は従業員一人ひとりの成長を支援し、企業価値向上に資する人材育成施策の強化に努めてまいります。

 

② 人材のダイバーシティ&インクルージョンの推進

人材の多様性を尊重し、誰もが活躍できる職場環境の実現を目指して、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進しております。一方で労働力不足が進む日本では今後も人材を獲得することが難しい状況であり、ダイバーシティを推進し多様な人材を確保するため、新しい採用母集団の形成も必要となっております。その一環として2024年12月より、「リファラル・アルムナイ採用制度」を導入いたしました。また、当社はジェンダー・経験者採用を問わず、管理職への登用を行う方針としており、女性管理職を増やすべく初級管理職である係長(マネージャー)への積極的な女性登用を進めております。多様な人材の活躍を通じて、人的資本の強化と持続的な企業価値の向上を図ってまいります。

 


 

③ 多様性の確保

ワークライフバランスの充実を図るべく、働き方の多様化にも対応しております。育児・介護休業、在宅勤務、時短勤務、半日有休等の制度の整備、リモート環境や福利厚生施設の整備を行っており、出産や育児の両立をサポートする制度の拡充と利用促進に努めております。今後も引き続き、男性育児休業の取得推進やシニア人材の活用など多様な人材が活躍できる制度の充実や環境の整備を進めてまいります。

 

④ 従業員エンゲージメントの向上戦略

従業員一人ひとりが、何が出来て何が課題かを振り返り今後の成長に繋げることが出来るような人事評価制度を構築し、公平な評価のために評価者研修を実施しております。目標設定時と評価時には面談を必須としコミュニケーションの活性化を図るとともに、キャリアアップを目的としたジョブローテーションを行い、モチベーションの向上に努めております。

 

(2) 指標と目標

従業員が個々の能力を発揮しながら仕事と生活の調和を図ることができる働きやすい雇用環境の整備を行うとともに、次世代育成支援に貢献する企業を目指し、行動計画を策定し取り組みを行っております。その内容及び実績は以下のとおりです。

 

 <次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画:計画期間 2025年4月1日~2030年3月31日>

 <女性活躍推進法に基づく行動計画:計画期間 2021年4月1日~2026年3月31日>

指標

2023年度実績

2024年度実績

目標

係長(マネージャー)級にある者に占める女性労働者の割合

16.1%

14.3

2025年度25%以上

2030年度:30%

長期:33%

有給休暇取得率

86.1%

82.8

2025年度80%以上

2029年度:85%以上

長期:100%

男性労働者の育児休業等取得率

33.3%

54.5

2029年度40%以上

 

なお、連結子会社に関しては、三星海運株式会社において、管理職に占める女性労働者の割合を20%以上とする行動計画を策定しております。その他の連結子会社は定量目標を設定しておりません。

 

 

3 【事業等のリスク】

当報告書に記載している事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 主要原材料の価格並びに製品の販売価格の動向に伴うリスク

鉄鋼製品の主要原材料価格は、国内だけでなく国際的な資源需給の動向等の影響を受けます。主原料の国際商品市況が急激に上昇した場合、製造コストの上昇分に見合った販売価格への転嫁を早期に実施することは困難であるため、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。また、原油価格の変動に伴う重油・ガソリン・天然ガスなど、燃料価格の上昇は、製造プロセスにおける燃料コストや販売運送コストに影響を与える可能性があります。

当社グループでは、販売価格や主原料価格の動向により、電気炉鋼片又は購入鋼片をフレキシブルに使い分けた生産・営業体制を堅持し、鋼材スプレッドの最大化を図っております。

② 最終ユーザーの需要動向に伴うリスク

当社グループが製造している鉄鋼製品は、総合商社や鉄鋼商社、問屋や溶断業者などを通じて最終ユーザーに販売されております。最終ユーザーは、主として建設、建設機械や産業機械などに属する企業であることから、建設需要の低迷や建設機械や産業機械の生産量の減少など、最終ユーザーにおける鉄鋼需要そのものが低迷した場合、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、特に問屋、溶断業者とのサプライチェーンを全国にきめ細かく築いております。特定の大手最終ユーザーと直接取引をするより、各地域の多種多様な中小最終ユーザーへ問屋、溶断業者が持つ地場密着のきめ細かな販売、配送機能を利用して販売することで需要低迷時のリスク分散、競合他社との差別化を図っております。今後もこのサプライチェーンをより一層強化するため、全地域に販売拠点を持つグループ会社との連携営業、加工能力増強による商品ラインアップの充実を進めてまいります。

③ 電気料金の価格動向に伴うリスク

現在、国内の原子力発電所の多くが運転を停止し、火力による発電比率が高まる中、電力単価が上昇し、電力費の負担は高水準で推移しております。また、燃料費調整単価は、火力発電に必要な石炭、液化天然ガス及び原油などの価格や為替の動向によって上昇する可能性があります。これらの動向による電力料金の状況により、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、電気炉コストが急激に上昇したり、計画停電などにより減産を余儀なくされた場合においては、鉄源多様化による購入鋼片を増加させることなどにより、生産・販売や収益への影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。

④ 各種法的規制、訴訟等に伴うリスク

当社グループは、日本及び海外各国・地域の法令や規制に従って事業活動を行っております。法規制には、環境、商取引、労務、知的財産権、租税、為替等の各種関係法令に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な官公庁等の許認可規制があります。今後、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難になったり、法令遵守のための費用負担が増加する可能性があります。

当社グループは、「中山製鋼所グループ企業理念」により、法令遵守することを行動指針の一つとして掲げており、全役職員に教育・指導しておりますが、当社グループが何らかの理由により法規制に違反したと認定された場合には、課徴金等の行政処分、罰金等の刑事処分を受ける可能性があり、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

また、重要な訴訟において当社グループに不利な判断がなされた場合には、事業活動の停止・制約、補償等により、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、各種業界団体への加盟やセミナーへの参加等により、各種法的規制に関する必要な情報を適時・的確に収集するとともに、各種法令等遵守の徹底を図るため、コンプライアンス推進部署が、各種法令等への遵守に向けた社員教育及び体制整備に努めております。

 

⑤ 事業活動にかかる環境規制に伴うリスク

当社グループは、現在、鉄鋼事業活動の過程で発生する廃棄物、副産物等の扱いは、国内外の法規制を遵守し、的確な対応を行っておりますが、将来において環境規制が強化された場合、鉄鋼事業活動が制約を受け、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

また、パリ協定の合意以降、世界的に脱炭素化の流れが加速しており、当社グループにおいてもカーボンニュートラルに向けた取り組みを行いCO2排出量削減に努めておりますが、国内外において法規制の厳格化、炭素税や排出量取引制度が導入された場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、各種業界団体への加盟やセミナーへの参加等により、必要な情報を適時・的確に収集するとともに、環境パフォーマンスの改善を図ることを目的としてISO14001を取得するなど、環境マネジメントシステムを構築し運用しております。

⑥ 気候変動が及ぼすリスク

当社は、2022年10月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、気候変動に関するリスクと機会を分析・開示するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを開始しておりますが、気温の上昇や異常気象、自然災害等によって原材料の調達停止やコストの増加、生産停止など事業活動に影響が生じる可能性があります。また、脱炭素への対応が不足又は遅延することで、生産コストの増加や新たな税負担、事業活動の制限等の影響を受ける可能性があります。

⑦ 製品・サービスの品質問題等によるリスク

当社グループは、鉄鋼製品をはじめ様々な製品・サービスについて、お客様に有用な付加価値の高い製品・サービスを提供してまいります。当社グループでは、法令・日本産業規格などの公的な規格・顧客との協定事項の遵守を徹底し、厳密な社内規準の制定や堅固な検査体制の構築を実施し、これを確実に運用しております。ただし、不適合な製品等が社外に流出し、あるいは顧客にて品質問題が生じた場合には、顧客等からの代品の納入や補償の要求などにより、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、品質問題が発生した場合には不適合の発生原因を正確に突き止め、そのうえで確実な再発防止策を講じてまいります。こうした施策により、当社グループ又は当社グループの製品やサービスに関する信頼の損失や売上の減少等を回避し、当社グループの財政状態や経営成績等の維持・向上を図ります。

⑧ 台風・地震等の大規模な自然災害や各種感染症等の異常事態発生に伴うリスク

当社の本社・船町工場は大阪市内にあり、単独の事業拠点、工場をもって事業を展開しております。台風・地震等の大規模な自然災害や、新型コロナウイルスを始めとする感染症拡大など、異常事態が当社グループの想定を超える規模で発生し、工場の生産や製品の販売が困難な状態となった場合、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、有事の際には、在宅勤務等、勤務体制の変更、従業員の行動基準の策定、異常事態発生時の対応マニュアルの運用等により、事業リスクの最小化に向けた施策を推進します。

⑨ 重大な労働災害、設備事故等によるリスク

当社の船町工場をはじめとする当社グループの各製造工場において、重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には、操業に支障をきたし、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、労働災害や工場事故発生時の対応マニュアルの発動や、通常時は安全管理を徹底するなど、事業リスクの最小化に向けて対応いたします。

⑩ 人材の確保におけるリスク

当社グループでは、企業戦略を支えるのは人材であると認識しております。現在、わが国では、少子高齢化が進展していますが、人材の確保が十分にできない場合には、生産・販売・サービス等のレベル低下により、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、新卒採用活動の強化のほか、中途採用も積極的に行うだけでなく、2024年4月より当社の定年年齢を従来の60歳から65歳へ延長し、長期的かつ安定的な人材の確保に取り組んでおります。さらに、有能な人材の確保のために取り組むだけでなく、設備の省力化・合理化等の設備投資も進めております。

 

⑪ システムリスク

当社グループの業務は、基幹システムを導入し業務運営を行っております。不正アクセス、大規模停電、予期せぬシステムトラブルが発生し、復旧等に時間を要した場合、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、データのバックアップを外部のデータセンターに送ることによりシステム障害によるデータ消失への対策を講じております。また、システムハード障害においても重要な機器類を冗長化するとともに24時間365日の障害監視を外部に委託し障害の予兆監視と障害発生時の早期修理対応ができるように対策を講じております。

⑫ 減損会計適用に伴うリスク

当社グループは、事業用の設備、不動産をはじめ、様々な有形・無形固定資産を所有しております。当該資産が将来期待通りのキャッシュ・フローを生み出さない状況に陥る等、その収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなることにより減損処理が必要となる場合には、減損損失の計上が必要となり、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、事業用の設備、不動産の安定した稼働を維持し、安定したキャッシュ・フローの創出に努めてまいります。

⑬ 投資有価証券の価格変動リスク

上場株式の株価が著しく下落した場合には、当社グループが保有する投資有価証券の減損損失計上が必要となったり、年金資産を構成する上場株式の評価下落により、退職給付会計における数理計算上の差異が発生し、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、純投資目的である投資株式は保有しておらず、純投資目的以外の目的である投資株式についても保有の意義が必ずしも十分でないと判断される株式については縮減を図る方針であります。また、年金資産の構成についても、国内債券等安全性の高い資産が過半数を占めるなど、上場株式のリスクについて極力低減させております。

⑭ 資金調達に関わるリスク

当社の金融機関からの借入契約には、各年度の末日の連結純資産及び各年度の連結経常損益に関する財務制限条項が付されております。これに抵触し、借入先金融機関の請求があった場合には、当該借入金について期限の利益を喪失する可能性があります。当社が借入金について期限の利益を喪失し、一括返済の義務を負った場合には、当社グループの財政状態や経営成績等は影響を受ける可能性があります。

当社グループは、経営計画の着実な実行により安定した収益確保と財務体質の強化に努めてまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 (1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

  ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、企業の設備投資や公的需要の増加から回復傾向にはあるものの、物価上昇が下押し要因となったことで民間消費が低調であったことから成長率はほぼ横ばいにとどまりました。

当社グループの主力事業である鉄鋼業界におきましては、資材高騰や人手不足に伴う工期の遅れなどにより建設・製造業向けの国内需要が低位に推移したことに加え、安価な輸入材流入の影響により鋼材販売数量、販売価格がともに下落をしました。またそれに加え労務費、物流コストやエネルギー価格が増加するなど、収益環境は厳しさを増すこととなりました。

これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高1,693億29百万円(前期比151億16百万円減)、営業利益84億36百万円(前期比38億90百万円の減益)、経常利益81億19百万円(前期比41億24百万円の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益56億95百万円(前期比32億8百万円の減益)となりました。

 

当連結会計年度における各セグメントの業績は、次のとおりであります。

鉄鋼につきましては、昨年度の設備トラブルが解消し、安定した操業を継続したことにより製造コストは改善しましたが、鋼材販売数量の減少と販売価格の下落に加え、固定費の増加や在庫影響などにより減益となりました。これらの結果、売上高は1,666億47百万円(前期比149億97百万円減)、経常利益は78億24百万円(前期比39億28百万円の減益)となりました。

エンジニアリングにつきましては、海洋部門の売上減などにより、売上高は18億86百万円(前期比1億71百万円減)、経常利益は36百万円(前期比37百万円の減益)となりました。

不動産につきましては、賃貸収入を中心に安定した収益を確保し、売上高は13億92百万円(前期比45百万円減)、経常利益は6億96百万円(前期比9百万円の減益)となりました。

 

当連結会計年度末の総資産は1,491億48百万円となり、前連結会計年度末と比べ29億39百万円減少しました。これは主として、商品及び製品、原材料及び貯蔵品、機械及び装置が増加した一方、現金及び預金、受取手形、売掛金及び契約資産、差入保証金が減少したことによるものであります。

負債については423億37百万円となり、前連結会計年度末と比べ51億97百万円減少しました。これは主として、支払手形及び買掛金、未払法人税等の減少によるものであります。

純資産については1,068億10百万円となり、前連結会計年度末と比べ22億57百万円増加しました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び剰余金の配当によるものであります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、153億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億40百万円減少△6.9%)しました。当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

営業活動の結果得られた資金は、73億46百万円(前期51億53百万円の収入)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益、減価償却費、売上債権の減少、仕入債務の減少、法人税等の支払によるものであります。

投資活動の結果支出した資金は、46億83百万円(前期23億円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

財務活動の結果支出した資金は、38億4百万円(前期31億41百万円の支出)となりました。これは主として、長期借入れによる収入、長期借入金の返済による支出、配当金の支払によるものであります。

 

 

  ③ 生産、受注及び販売の状況

  a.生産実績

セグメントの名称

品名

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

生産高(千トン)

前期比(%)

鉄鋼

粗鋼

541

10.7

圧延鋼材

976

△8.6

加工鋼材

346

5.4

 

(注) 上記以外については、役務の提供や重要性のないものであるため記載を省略しております。

 

  b.受注実績

セグメントの名称

品名

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄鋼

鋼材

75,707

△18.9

11,629

△31.9

エンジニアリング

魚礁等

1,692

3.5

1,713

△8.8

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 鉄鋼セグメントについては、製造会社である当社、三泉シヤ―㈱の2社の受注高及び受注残高を記載しております。また、当該2社の中山通商㈱、三星商事㈱を介した外部顧客に対する受注高及び受注残高については、実務上算定が困難であるため、上記には含めておりません。

3 当連結会計年度において、鉄鋼事業の受注残高は著しく減少しました。これは、鋼材需要が低位に推移したこと及び輸入材の流入による、受注数量の減少及び鋼材販売価格の下落によるものであります。

 

  c.販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼

166,486

△8.2

エンジニアリング

1,858

△7.2

不動産

984

△1.8

合計

169,329

△8.2

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

阪和興業㈱

36,155

19.6

33,681

19.9

 

 

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 ② 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因についての分析

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1.キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

2.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び貯蔵品の仕入や製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入などによる調達を基本としており、設備投資につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

また、当社グループは、資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的としてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ内の資金管理の一元化を行い、グループ全体の資金効率化を進めております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は90億62百万円、現金及び現金同等物の残高は153億26百万円となっております。

 

 

5 【重要な契約等】

  (合弁会社設立に関する基本合意書締結)

当社は、2025年5月9日開催の取締役会において、日本製鉄株式会社との間で、新規電気炉設備の建設、保有および当社への賃貸を目的とした合弁会社設立ならびに両社の業務提携に関する基本合意書を締結することについて決議し、同日付で基本合意書を締結いたしました。

詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

当社は、多様化・高度化する顧客ニーズへの対応、鉄に関連した複合材の高付加価値化、新規事業化をめざして研究開発活動を行っております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は30百万円であり、研究の目的、主要課題、研究開発費は次のとおりであります。

鉄事業においては、持続可能な社会の実現に貢献すべく、耐食性の高いめっき製品の開発を全社の重点課題として進めております。過年度に導入した実験設備によるめっき皮膜のラボ試作に目処がたち、今年度、実機試験を実施しました。現在、当該試作材の特性や、加工性の評価を進めております。

エンジニアリング事業のうち海洋事業においては、水産庁の漁場整備方針である水産資源の増大及び豊かな生態系の維持・回復と共に、近年の気候変動に対応した漁場づくりにも応えるべく、漁業者をはじめ、地元自治体や大学(水産系)と連携し研究開発を進めております。