当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「トピー工業グループは、事業の存続と発展を通じて、広く社会の公器としての責務を果たし、持続可能な循環社会の実現に貢献する。」をグループ基本理念としております。すなわち、当社グループは、顧客の満足を得られる品質とコストを追求した商品を提供することで、社会の発展に寄与し、また、適時・適切な情報開示、地域社会への貢献、地球環境問題への積極的な取り組み等を通じて、企業として社会的責任を果たしていくことにより、持続的な成長を目指し、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を一層高めていくことを使命としております。
(2)経営環境及び対処すべき課題
今後の当社グループを取り巻く事業環境は、国内鋼材需要の動向、米国の通商政策影響等に伴う自動車・建設機械生産の動向等により先行き不透明な状況が続くことが想定されます。
このような環境下、当社グループは、事業環境の変化に対して柔軟かつ迅速に対応すべく、2025年度から2027年度を実行期間とする新中期経営計画「TOPY Active & Challenge 2027」をスタートいたしました。基本方針として、「既存事業の構造改革による収益力向上」と「コアコンピタンスを生かした成長事業の種まき」を掲げ、企業価値向上に取り組んでまいります。
経営目標
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項目 |
2027年度目標 |
2030年度目標 |
|
自己資本利益率(ROE) |
6.0%以上 |
8.0%以上 |
|
(参考)営業利益 |
130億円 |
- |
非財務目標
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ESG視点 |
評価指標 |
数値目標 |
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環境 |
CO2排出量 |
カーボンニュートラルを目指す(2050年) |
|
社会 |
女性管理職比率 |
10%以上(2030年度) |
|
国内労働災害件数 |
毎年0件を目指す(休業災害以上) |
|
|
ガバナンス |
重大なコンプライアンス違反件数 |
毎年0件を継続 |
各セグメントにおける対処すべき課題は、次のとおりです。
(鉄鋼セグメント)
安定稼働率の向上やエネルギー効率向上によるコスト低減を進めるとともに、当社独自の異形形鋼等の高付加価値製品の販売強化を図り、収益力の向上に努めてまいります。また、リサイクル事業の高度化と循環型ビジネスの展開を進め、当社の製鋼工程のCO₂排出量の削減と循環型社会の実現に貢献します。
(自動車・産業機械部品セグメント)
持続可能な販売価格の形成に引き続き努めるほか、国内事業の構造改革、海外事業の再編、米国事業の再構築、鉱山機械用ホイールの市販品の販売強化等により、収益力の向上を図ります。また、鉄鋼セグメントとの協力による一貫生産製品(当社鋼材を用いて社内で加工した製品)の品種拡大、新市場・成長市場の新規開拓、高付加価値ホイール等の新製品開発を推進することで、持続的な成長事業創出を図ります。
(その他)
マイカ事業においては、化粧品基礎原料である合成マイカは色にくすみが少なく、安全性が評価されています。肌ざわりの良い着色マイカ等、顧客ニーズに合致する多彩な製品バリエーションを生かして新分野の開拓を進めるなど、国内外で販売を拡大します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティ基本方針>
トピー工業グループは、「グループ基本理念」に基づく経営を推進し、技術革新の追求と社会課題の解決によって、持続的な企業価値の向上を図るとともに社会の持続的な発展に貢献することを目指します。
・グリーンイノベーションへの継続的な挑戦を通じて、かけがえのない地球環境の保全と未来への継承に貢献します。
・トピー工業グループの事業活動に関わるすべての人々にとって持続可能で豊かな未来の実現を目指します。
・すべてのステークホルダーから信頼される健全かつ透明性の高い経営の実現に努めます。
各種方針:人権方針、調達方針、サプライチェーンマネジメント方針、腐敗防止方針、知財方針、タックス
ポリシー
(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ戦略委員会(委員長はサステナビリティ戦略管掌取締役、原則年2回以上開催)を設置し、サステナビリティ経営の推進に取り組んでいます。
同委員会では、基本方針の策定や中長期戦略をはじめとする重要事項についての協議・決定、モニタリングを行うほか、協議・決定した内容の経営会議や取締役会への報告や審議を行っています。なお、委員会の傘下にはサステナビリティ推進協議会およびカーボンニュートラル推進協議会を設置し、当社グループ内での連携を図りながら具体的なサステナビリティ施策を立案・実行します。

(2)戦略
①サステナビリティ長期ビジョン
当社グループは、2050年の豊かで持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ長期ビジョン「TOPY Sustainable Green Vision 2050」を掲げています。2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現や安心・健やかに暮らせる豊かな社会の構築に貢献するとともに、当社グループが末永く社会から信頼される企業であり続けるため、気候変動問題への取り組みをはじめとした各種ESG課題への取り組みを推進します。
②マテリアリティ
当社グループは、サステナビリティ戦略委員会および取締役会でのディスカッションや外部有識者からの助言を踏まえ、当社グループが取り組むべき6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。特定したマテリアリティについては、具体的なアクションプランと目標を定めて持続的成長を目指した事業活動を展開しています。
<マテリアリティ特定プロセス>
<6つのマテリアリティ>
環境(E):グリーンイノベーションの推進、循環型社会構築への貢献
社会(S):人権の尊重、多様な人財の活躍支援、事業を通じた社会への貢献
ガバナンス(G):確固たる経営基盤の構築
③人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
<人財育成方針>
当社グループは、グループ行動規範において「従業員の人格、個性を尊重し、皆が安全で元気に働ける環境を確保して、従業員の充実した生活を実現する。」と宣言しています。人財は最大の財産であり、その力を高めることこそが、当社グループの価値創造の源泉であると考え、人財基盤の強化に向けた取り組みを推進しています。
・仕事を通じて成長し続ける人財を創る
・社員の環境変化への適応力を強化する
・社員のキャリア自律を支援する
・経営者人財を継続的に輩出していく
・人財育成を通じて、多様な人財が活躍できる組織環境づくりを進める
当社グループでは、上記の人財育成方針に基づき、多様性の確保のための社員教育を行っています。また、社員一人ひとりの個性を尊重した人財の活用を推進し、社員と会社が共に成長できる風土を醸成するため多様で柔軟な働き方の実現のための制度導入や、職場環境の整備を行っています。中期経営計画においては、専門人財の育成促進、グローバル人財の育成、および自律型人財の育成を目標とし、人財育成の強化に努めております。
<2030年度までの目標達成に向けた進捗状況>
人財の確保と育成についての2030年度までの目標に向けた対応を順調に進めています。人財確保の面では、インターンシップなどの対応が奏功してほぼ採用計画どおりに推移し、総合職における女性の採用比率40%以上を達成しています。また、ダイバーシティ推進のための環境整備の取り組みの一つとして進めている育児休業取得率においても、男女ともに目標を達成しました。女性管理職比率については、2024年度は5.7%となり、2030年度の目標10%以上に向けて順調に進捗しています。
<DX(デジタルトランスフォーメーション)推進への取り組み>
当社グループは、DXの推進を重要な経営戦略の一つと位置付け、基幹業務システムの刷新、エネルギーおよび生産性の見せる化、設備稼働監視、品質管理や物流改革等を推進し、スマートファクトリーによるモノづくり領域のデジタル変革をさらに加速しています。こうした全社的なDX推進の取り組みなどが総合的に評価され、2024年6月にはデジタルガバナンス・コード2.0の基本事項への対応が認められ、経済産業省の定める「DX認定事業者」として認定更新を受けました。
当社グループは中期経営計画に基づき、DXによる業務とプロセスの効率化・高度化を通じて人的資本を支え、生産革新、品質管理の高度化を図ります。また、2024年度は、DXをリードする人財育成目標300名を達成しました。さらに2025年度には累計600名を目標に人財のデータリテラシー強化を進めていきます。
<健康安全基本理念>
当社グループは、安全の基本は「健康」との考えのもと、安全を全てに優先させ、当社グループで働く全ての人の参画により、継続的な健康増進・本質安全活動に取り組み、持続可能な安全で快適な職場環境づくりを推進します。
社長をトップとした健康安全推進体制を整備し、社長からの安全メッセージをグループ全体へ周知しています。また、中央健康安全委員会による労使一体となった労働安全活動を実施しています。さらに、グループ会社との安全交流会などの活動を通じて、グループ全体で安全に対する情報交換や課題の共有を行っています。
当社は、継続的な健康増進・本質安全活動に取り組み、持続可能な安全で快適な職場環境づくりを推進するために、中央健康安全委員会の下に各所健康安全委員会、中央健康安全分科会、健康推進協議会および健康推進分科会を組織しています。
<調達・サプライチェーンマネジメント>
現代のサプライチェーンにおいては、人権、倫理、環境、情報セキュリティなどの世界的な規模の問題への対応が重要な課題となっています。また、政情不安、異常気象、市況・為替変動、技術・情報漏洩などの調達に関連するリスクが高まっており、当社グループの安定的かつ効率的な生産活動を継続的に支える調達を実現する必要があります。
当社グループは、このような課題への対応として「トピー工業グループ 調達方針」および「トピー工業グループ サプライチェーンマネジメント方針」を掲げています。これらの方針に従い、当社グループは、サプライチェーンを構成するすべてのお取引先さまとの相互理解と信頼関係の構築を通じ、高い倫理観の下、人権保護や地球環境保全をはじめとした安全・安心なサプライチェーンの構築・維持に努力し続け持続可能な社会の実現に貢献するとともに、お取引先さまに高いレベルの品質・納期・コストを維持していただき、当社グループの安定的・効率的な生産活動を実現させます。
また、「サプライチェーン全体の共存共栄と規模・系列等を超えた新たな連携」および「振興基準」(注)の遵守を推進することをうたった「パートナーシップ構築宣言」を公表し、お取引先さまとのより良い関係の構築を進めています。
(注)「振興基準」とは…親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行のこと。当社では取引適正化の5分野(①価格決定方法の適正化、②型管理などのコスト負担の適正化、③手形などの支払条件の適正化、④知財・ノウハウの保護、⑤働き方改革に伴うしわ寄せの防止)を重点項目と設定しています。
<人権の尊重>
・基本的な考え方
当社グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的な人権規範を支持・尊重しています。また、当社グループの基本理念やサステナビリティ基本方針に基づき、すべての人々が生まれながらに持っている基本的な人権を尊重することに取り組んでいます。具体的には、差別、児童労働、強制労働の禁止、ハラスメントの防止、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、労働における基本的権利の尊重等を実践しています。
これらの人権の尊重に関する基本的な考えとして、当社グループは、グループ行動規範において「従業員の人格、個性の尊重」について定めています。また、当社グループのマテリアリティとして「人権の尊重」を掲げるとともに、当社グループにおける人権尊重の各種取り組みについての具体的な考えを定めた「トピー工業グループ人権方針」を制定しています。この人権方針の下、当社グループは今後もより一層の人権の尊重に取り組んでまいります。
・人権教育、人権を尊重する風土の確立
当社グループでは、外部講師や社内の人権啓発担当者による研修会のほかに、ハラスメント防止指針をはじめ人権に関連する社内ルールを、イントラネットへの掲示や「コンプライアンスガイドブック」への掲載を通して役員・従業員へ人権啓発風土の醸成を実施しています。また、就業規則等において人権侵害時の罰則を明記し、人権を尊重する企業風土を確立しています。
人権の負の影響の防止・低減に向けては、「グループ企業倫理相談室」および「グループ・コンプライアンス・ホットライン」の2つの窓口を設け、従業員・家族等からの相談・通報を受け付けています。
・サプライチェーンにおける取り組み
当社グループは、グローバルに事業を展開し、多様なサプライチェーンを構築しており、グローバルな事業活動を円滑に推進する上で、サプライチェーンの担い手が連携して人権の尊重等の課題に取り組むことが重要であると考えています。
当社グループでは、サプライチェーンにおけるさまざまな課題について社会的責任を果たし持続可能な社会に貢献すべく、2022年に「トピー工業グループ サプライチェーンマネジメント方針」を定めました。この方針では、人権・労働に関する事項を定め、当社グループがサプライチェーンにおける人権の尊重に取り組むことを宣言するとともに、当社グループのお取引先の皆さまにも当社の取り組みをご理解いただき、協力してサプライチェーンにおける人権の尊重の取り組みを進め、ともに発展していくことを目指しています。
加えて、当社の国内のお取引先さまとの取引基本契約において労働関連法令の遵守義務を定めるなど、契約レベルでも人権の尊重のための措置を講じています。
また、人権問題に関し、当社グループの内部通報窓口で当社グループのお取引先さまからの相談・通報を受け付けるなど、サプライチェーンにおける人権問題の是正・救済のための措置も講じています。
・人権デュー・デリジェンスの構築に向けて
当社グループは、マテリアリティの「人権の尊重」に関する目標の一つとして「人権デュー・デリジェンスの構築」を掲げています。外部・社内講師によるセミナーを開催し人権意識の向上を図るとともに、「人権の負の影響」の特定をはじめ、人権課題の軽減を継続し「人権デュー・デリジェンスの構築」を進めています。
(3)リスク管理
当社のリスクマネジメント委員会が主導して、当社の各部門およびグループ各社が、リスクマネジメントに関わる年間活動計画を策定し、改善活動を推進しています。また、当社グループにおいて、リスクマネジメントに関わる事案が発生あるいは発生のおそれがある場合は、リスクマネジメント委員会等に報告され、リスクマネジメント体制を通じて、適宜指導を行っています。リスクマネジメント委員会の活動内容は、実効性を確認するため取締役会に報告しています。大規模災害等が発生したときは、代表取締役社長を本部長とした特別対策本部等を設置して対応する体制を構築しています。また、事業継続計画を策定し、定期的に見直すとともに、建物および生産設備の耐震化、災害発生を想定した定期的な訓練等を行っています。
また、財務面では資金調達に係る流動性リスク管理の一環として金融機関とコミットメントライン契約を締結し、緊急時の手許資金の流動性確保に努めています。
(4)指標及び目標
当社グループのサステナビリティに関する指標及び目標は、次のとおりです。
気候変動への対応については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく情報開示を行っており、CO2排出量に関する目標を次のとおり定めています。
<2050年度目標>CO2排出量Scope1、2&3:カーボンニュートラルに挑戦
(トピー工業+国内外連結子会社)
<TCFD提言に基づく開示>
当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しています。TCFDに基づく情報開示の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。
<管理職の登用状況とその考え方>
当社グループでは、性別や国籍、新卒・中途等の採用区分を問わず社員の能力、識見、人格等を公正に評価して管理職への登用を行っています。
中期経営計画の中では、2030年度までに当社グループ全体における女性管理職比率を10%以上(2024年度5.7%)にする目標を掲げています。これらの目標を達成するために、若手・中堅社員の早期育成を進め、将来の管理職候補を育ててまいります。
外国人や中途採用の社員の管理職への登用に関しては、上記管理職登用の考え方の下、特段の目標は設定していませんが、適任者は国籍や新卒・中途等の採用区分を問わず管理職に登用しています。
<労働災害ゼロに向けた取り組み>
当社グループは、「健康が安全の基本である」との考えの下、社員の健康安全を確保することが企業としての第一の責任であると考えています。安全をすべてに優先させ、当社グループで働くすべての人の参画により、継続的な健康増進および本質的な安全活動に取り組んでいます。これにより、持続可能で安全かつ快適な職場環境の構築を目指したさまざまな取り組みを実施しています。また、労働災害統計調査の結果を社員一人ひとりの意識向上のために、社内イントラネットや社内報などで周知・啓発しています。
(5)知的財産権
当社グループでは、トピー工業グループ知財方針を定め、事業部門、研究開発部門及び知的財産部門が一体となり、新技術や新製品の開発を推進しております。その中で知的財産部門では、知財情報の調査を重要な活動の一つとして位置付けており、例えば、各事業におけるコア技術及びノウハウを踏まえながら、事業部門や研究開発部門に対する教育を通じて、知財人財の育成に取り組んでおります。これにより、第三者の知的財産権に対する侵害防止の徹底を図るとともに、知財情報の活用を積極的に行うことで、事業部門や研究開発部門における新技術・新製品の開発活動を支援し、また、新しい事業の創出に向けた取り組みも進めております。
さらに、それらの活動の結果として得られた新たな技術やノウハウを守り、知的財産権の取得、維持のための投資を活発に実施しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループのリスク管理体制は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)
コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しています。この管理体制の下、以下のリスクに対応してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済状況の変化によるリスク
① 販売状況
当社グループの営業収入は、主に鉄鋼、自動車・産業機械部品で構成されています。自動車・産業機械部品の販売については、当社グループの製品を装着した完成車の販売に大きく影響を受け、さらにそれは完成車の様々な市場における経済状況の影響を受けます。同様に鉄鋼関連の製品の需要は、これを販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。
したがって、日本、北米、アジアという当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
② 原材料調達
当社グループが消費する主要原材料である鋼材、鉄スクラップ、燃料などの価格は国際的な経済状況の動きを反映して、大幅に変動する可能性があります。
原材料が高騰し、かつ製品の適正な価格形成ができない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 為替リスク
当社グループの事業には、日本から北米・アジア向けを中心とした輸出と、同地域における製品の生産・販売が含まれています。為替レートの変動は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 金利の変動、有利子負債依存度
当社グループは、有利子負債の圧縮に努めておりますが、総資産に占める有利子負債の比率は依然として高い水準にあります。そのため有利子負債にかかる金利の変動により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 資金調達
当社グループは、金融機関からの借入れを中心に資金調達を行っています。資金の調達コストは、金利や格付け機関による当社グループに対する評価の影響を受けます。金利上昇や当社グループの業績悪化などにより、高い金利での調達を余儀なくされたり、必要な資金が確保できなくなった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)販売価格低下によるリスク
当社グループは、鉄鋼、自動車・産業機械部品という価格競争が極めて激しい市場において事業を展開しており、価格低下が生じた場合、利益率の悪化が生じる恐れがあります。当社グループは購買面での努力、生産性の向上をもって利益の確保に努めてまいります。
(3)海外展開によるリスク
当社グループの生産・販売活動は、国内の他、従来から米国でも行われています。また近年の中国をはじめとしたアジア諸国の経済発展にともない、これらの地域でも、直接投資を実施し、生産販売活動を行っています。しかし、これらの海外への事業進出には、例えば、社会的・技術的インフラの未整備、予期しない法律又は規制の変更、不利な政治又は経済要因、人材の採用と確保の難しさ、といったいくつかのリスクが内在しています。
(4)新製品・新技術開発によるリスク
当社グループが市場・顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を的確に予測し、商品化できるかどうかに関してはリスクが内在しています。
製造業である当社グループが、各事業分野で長期的に安定的な収益を上げていくためには、他社との競争環境の中で、技術面で確固たる地位を確立する必要があります。特に自動車・産業機械部品事業において、自動車の技術革新を背景とした、高度化する完成車メーカーの要請に的確に対応してまいります。
(5)災害によるリスク
各事業所の周辺地域において大規模な地震、台風等の自然災害が発生した場合、当社グループは、操業に支障が生じ業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、自然災害に備え連絡体制の整備や定期的な防災訓練の実施、建物の耐震補強など着実に施策を進めております。
(6)製品の欠陥によるリスク
当社グループは、製造物に係る賠償責任については保険に加入していますが、保険でカバーされないリスクや、顧客の安全確保の為に大規模なリコールを実施した場合などに、多額のコストが発生するなど、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、製品の安全性を最優先の課題として、日本国内及び事業展開する各国において認められている品質管理基準に従って製品を製造しています。
(7)法的規制によるリスク
当社グループの事業活動は、国内及び海外各国においてさまざまな規制や、法令の適用を受けております。これらの法規制の変更等により当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度における当社グループの事業環境は、国内鋼材需要の低迷、世界的な建設機械需要の減少、国内自動車メーカーの認証不正問題による生産停止に加え、海外一部地域での自動車生産の減少等により、厳しい状況で推移しました。
このような経営環境下、当社グループは中期経営計画「TOPY Active & Challenge 2025」を着実に実行してまいりました。事業基盤の再構築を目指し、事業ポートフォリオの最適化や、持続可能な販売価格の形成等を推進しました。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、政策保有株式の縮減を進めるとともに、自己株式の取得を実施しました。
当連結会計年度における業績につきましては、国内鋼材需要の低迷、建設機械用足回り部品や自動車用ホイールの販売数量減等により、売上高は300,610百万円(前期比10.0%減)、営業利益は5,300百万円(前期比49.2%減)、経常利益は6,246百万円(前期比40.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の計上等により6,387百万円(前期比36.6%増)となりました。
中期経営計画「TOPY Active & Challenge 2025」実績
財務実績
|
項目 |
2025年度目標 |
2024年度実績 |
|
売上高営業利益率 |
4.5%以上 |
1.8% |
|
EBITDA |
320億円 |
174億円 |
|
自己資本利益率(ROE) |
8.0%以上 |
4.6% |
非財務実績
|
ESG視点 |
評価指標 |
数値目標 |
2024年度実績 |
|
環境 |
CO2排出量 |
2013年度比46%削減を目指す(2030年度)※1 |
61%削減(2013年度比) ※2 |
|
社会 |
女性管理職比率 |
10%以上(2030年度) |
5.7% |
|
国内労働災害件数 |
毎年0件を目指す(休業災害以上) |
休業災害発生のため未達 |
|
|
ガバナンス |
重大なコンプライアンス違反件数 |
毎年0件を継続 |
0件を継続 |
※1.当社および国内連結子会社のScope1&2が対象。
※2.速報値(第三者保証取得前)
当社グループは、2025年5月20日、事業環境の変化に対して柔軟かつ迅速に対応すべく、2025年度から2027年度を実行期間とする新中期経営計画「TOPY Active & Challenge 2027」を発表し、新たにスタートしております。
セグメントの業績は、以下のとおりです。
なお、当連結会計年度より、従来「賃貸」として記載していた報告セグメントについては、量的な重要性が低下したため、「その他」に含めて記載する方法に変更しています。
また、従来「発電」として記載していた報告セグメントについては、前連結会計年度において同事業を廃止したことに伴い、「その他」に含めて記載する方法に変更しています。
これらの報告セグメント区分の変更に伴い、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に読み替えたうえで算出しています。
(鉄鋼セグメント)
鉄鋼業界では、建築案件の工期遅れ等により国内鋼材需要は低調に推移しました。原材料である鉄スクラップ価格は前期を下回りました。
このような環境下、需要の低迷に伴う鋼材販売数量の減少やエネルギーコストの上昇等により、当社グループの売上高は102,618百万円(前期比7.4%減)、営業利益は6,355百万円(前期比34.1%減)となりました。
(自動車・産業機械部品セグメント)
自動車業界では、国内自動車生産台数は認証不正問題等の影響により前期比で減少しました。海外では米国の乗用車生産台数が減少し、中国では日系メーカーのシェアが減退しました。また、東南アジア地域でも自動車生産台数が減少しました。建設機械業界では、油圧ショベルのグローバル需要の減少が続きました。また、鉱山機械の需要は停滞傾向が見られました。
このような環境下、持続可能な販売価格の形成を進めたものの、建設機械用足回り部品の販売数量が大幅に減少したことをはじめ、国内自動車メーカーの認証不正問題の影響等による乗用車用ホイールの販売数量減、海外拠点での販売数量減等により、当社グループの売上高は190,745百万円(前期比5.4%減)、営業利益は4,447百万円(前期比18.1%減)となりました。
(その他)
合成マイカの製造・販売、土木・建築、不動産の賃貸及びスポーツ施設の運営等を行っております。発電事業廃止の影響等により、売上高は7,246百万円(前期比66.4%減)、営業利益は428百万円(前期比65.1%減)となりました。
(2)財政状態
① 資産
当連結会計年度末の総資産は、281,751百万円となり、前連結会計年度末比16,540百万円の減少となりました。これは主に、投資有価証券の減少11,831百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少8,318百万円、有形固定資産の減少3,941百万円によるものです。
② 負債
当連結会計年度末の負債合計は、145,038百万円となり、前連結会計年度末比12,264百万円の減少となりました。これは主に、長期借入金の減少6,490百万円、短期借入金の増加5,220百万円、電子記録債務の減少5,114百万円によるものです。
③ 純資産
当連結会計年度末の純資産合計は、136,713百万円となり、前連結会計年度末比4,275百万円の減少となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金の減少7,577百万円、利益剰余金の増加4,030百万円、為替換算調整勘定の増加3,549百万円によるものです。この結果、1株当たり純資産は、6,133.88円となり自己資本比率は48.0%になりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,412百万円増加し、当連結会計年度末には26,621となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は、前連結会計年度比6,927百万円減の15,390百万円となりました。これは主に減価償却費12,199百万円、税金等調整前当期純利益8,982百万円、売上債権の減少額8,932百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により使用した資金は、前連結会計年度比7,428百万円減の1,974百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出7,902百万円、投資有価証券の売却による収入3,484百万円、補助金の受取額1,173百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により使用した資金は、前連結会計年度比1,750百万円減の10,828百万円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出7,555百万円、短期借入金の純増額6,069百万円、社債の償還による支出5,000百万円によるものです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動における資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料等の調達及び生産性向上を中心とした設備投資によるものです。
当社グループは、原則内部資金または借入及び社債の発行により資金調達することとしています。当社グループは財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、当社グループの将来必要な資金を調達することが可能と考えています。なお、緊急時の手許流動性確保を目的に金融機関とコミットメントライン契約を締結しています。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載しております。特に以下の項目が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に帰属する当期純損益が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、割引率等数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待運用収益率等の見積りに基づいて算出しております。これら見積りの変動は、将来の退職給付費用に影響を与えると共に、親会社株主に帰属する当期純損益が変動する可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、親会社株主に帰属する当期純損益に影響を与える可能性があります。
なお、見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
(5)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%)
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鉄鋼セグメント(百万円) |
101,582 |
89.4 |
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自動車・産業機械部品セグメント(百万円) |
187,489 |
91.1 |
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報告セグメント計(百万円) |
289,072 |
90.5 |
|
その他(百万円) |
1,061 |
7.1 |
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合計(百万円) |
290,134 |
86.8 |
② 受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%)
|
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鉄鋼セグメント(百万円) |
102,618 |
92.6 |
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自動車・産業機械部品セグメント(百万円) |
190,745 |
94.6 |
|
報告セグメント計(百万円) |
293,364 |
93.9 |
|
その他(百万円) |
7,246 |
33.6 |
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合計(百万円) |
300,610 |
90.0 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しています。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
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トヨタ自動車㈱ |
39,622 |
11.9 |
36,683 |
12.2 |
当連結会計年度において、重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当社グループの研究開発活動は、「素材から製品までの一貫生産」という強みを生かし、世界各地でお客様が求める価値に応えるため、「顧客を起点とした新技術・新製品開発」を念頭に進めています。
当連結会計年度におけるグループの研究開発費は、
(鉄鋼セグメント)
新形鋼製品や新鋼種開発を実施するとともに、圧延製品の品質向上及び廃棄物削減・リサイクルなどの環境改善に関する研究開発を進めています。
成果としては、新形鋼製品の受注、既存製品の原単位削減、廃棄物削減・リサイクルに関する技術開発を実現しました。
これらに関わる研究開発費は、
(自動車・産業機械部品セグメント)
燃費改善に貢献するホイールの軽量化および、意匠性向上・品質向上・コスト削減などに関する研究及び新商品開発に関する研究開発を進めています。
主力商品の自動車用スチールホイール及びアルミホイールについては、解析及び評価技術の精度向上、軽量化などの新商品の開発、既存製品のコスト低減と品質向上など技術開発に成果を上げることができました。
建設機械部品においては、油圧ショベル用履帯製造ラインの省力・少人化や、その他履帯部品加工の自動化・効率化によるコスト低減、保有技術の新用途向け部材に関する研究開発を実施しました。さらに、履帯の塗装に関する研究にて、水溶性塗装を実用化した成果により、継続してVOC(揮発性有機化合物)低減に貢献しています。
これらに関わる研究開発費は、
(その他)
事業開発戦略センターでは、鉄鋼事業及び自動車・産業機械部品事業に関連する基礎的な要素技術の研究開発を進めています。一方で全社に関わるAIを活用した研究にも注力しています。また、上記事業以外の新分野や、サーキュラーエコノミーに関する研究開発も産学連携などにより積極的に進めています。その他、化粧品用途の合成マイカ新商品開発なども実施しました。
これらに関わる研究開発費は、714百万円です。