文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社は、国際的な視野に立ち、企業集団の総合力を結集して、「研究と創造」の精神で高い技術による魅力ある商品を提供することにより、株主、顧客、社会に貢献することを経営の基本方針としております。この経営の方針は、「経営理念」として掲げており、その内容は次のとおりです。
-経営理念-
国際的な視野に立ち、活力に溢れ、信頼される企業体質をもとに、
魅力ある商品を提供することによって社会に貢献する。
1.研究と創意につとめ、常に時流に先んずる。
2.相互の信頼と理解のもとに、一致協力する。
3.責任ある判断と行動のもとに、常に最善を尽くす。
この経営理念を実践することにより、年々変化する経営環境においても持続的な成長を続けると共に、広く社会から信頼され、必要とされるべく、「世界中で選ばれる会社」を目指しています。
その実現に向けて、「愛知製鋼グループが将来目指す姿」を示した「愛知製鋼グループ 2030年ビジョン」(2020年8月4日公表。以下、「2030年ビジョン」という。)及びその実行計画である「愛知製鋼グループ 2024-26年度 中期経営計画」(2024年5月30日公表。以下、「中期経営計画」という。)に加え、中期経営計画をベースに、稼ぐ力強化を主眼に置いた成長戦略と財務・資本戦略を具体化し、2040年までの当社の目指す姿を示した「愛知製鋼グループ 2024-26年度 中期経営計画のアップデート及び 2030年ビジョンの利益目標の上方修正」(2025年2月26日公表。以下、「中期経営計画アップデート及び2030年ビジョンの利益目標見直し」という。)を策定、公表しております。
1.中期経営計画の基本方針
2030年ビジョンの実現に向け、社会課題解決の重要性の高まりや常に変化する環境を先読みしつつ、お客様のお役に立ち、必要とされる会社を目指し、社会的価値の創造と持続的成長へ繋げる3年間としてまいります。
2.中期経営計画の重点施策
2024-26年度の中期経営計画の3年間で、当社が社会から必要とされる「良き企業」であり、「成長する企業」であることを改めてお約束し、社会的価値の創造と成長戦略を確かなものにし、持続的な社会に貢献してまいります。そのうえで、地球環境・社会への貢献を進めつつ、お客様のお役に立ち続けることを通じて、2030年ビジョンの実現を見据えた、連結営業利益150億円を目指してまいります。
(1)稼ぐ力を強化し、成長戦略を確かなものにする
①スピード感ある価値創造
・お客様の困り事解決に向け素材メーカーの知見、技術を活かし営業、開発一体で部材、部品ニーズへ貢献
②鋼・鍛のポテンシャルを最大発揮
(鋼)・創業から培った鋼づくりを極めカーボンニュートラルへ貢献
・パートナー協業による成長市場のモビリティ社会実現に貢献
(鍛)・業界再編を見据え新たな工法開発でのサプライチェーン維持、鍛鋼一貫で電動化進展へ貢献
③新事業の成長促進
・電子部品:一貫生産の強みを活かし電動化進展へ確実な供給対応と品質保証度を高め競争力に貢献
・GMPS :実証から「構内物流」での社会実装により、少子高齢化、物流の運転手不足問題解決へ貢献
・磁石 :調達リスク高まる重希土類不使用のマグファイン®の技術力を高め、安定供給に貢献
④素材を通じた社会への貢献
・ステンレス: 生産能力増強とエンジニアリング機能拡大・技術力強化でインフラ老朽化対策へ貢献
・鉄供給材:CG(カンキツグリーニング)病の症状軽減を通し世界の農業問題解決に貢献
(2)社会的価値の創造を推進する
①サステナビリティ課題への対応
・当社のアイデンティティである資源循環型のモノづくりを強化し、会社の力・基盤強化につなげ持続的社会へ貢献
②厳しく温かく人が育つ風土の醸成
・社会課題を素早く認識し、正しく問題解決できる人材育成でサステナブル社会に貢献
③将来の持続的成長に向けた財務戦略
・長期目線に立った成長戦略を軸に「成長投資」と「株主還元」にキャッシュを積極配分しPBR改善
3.中期経営計画アップデート及び2030年ビジョンの利益目標見直し
創業の精神を継承・発展させ、「環境に一番やさしい鉄屋」として、資源循環型のモノづくりに磨きをかけるとともに、成長が期待される分野・地域にリソースを投入・積極投資を行うことで中期経営計画の達成を確実なものにし、変化の激しい経営環境の中においても、2030年までの出来る限り早い段階でのROE8%実現を目指し、2030年度の売上収益を4,000億円(既公表比+600億円)、営業利益280億円(既公表比+80億円)と定め、新たな目標の達成に向けてグループ一丸となり邁進してまいります。
(1)マルチパスウェイへの貢献:良品廉価な鋼材・鍛造品生産とさらなるカーボンニュートラル貢献
①次世代製鋼プロセス
・資源循環型モノづくりの強みを生かし圧倒的な品質・コスト・納期を実現する次世代製鋼プロセスを構築
②鍛造設備の最適化
・鍛鋼一貫及び粗加一貫(粗材~加工のワンストップ化)技術をベースとしたグリーン鍛造への進化
(2)需要地変化への対応:グローバルサウス(インド)事業展開
・今後さらなる成長が期待されるグローバルサウス市場(特にインド)において、当社のアイデンティティである資源循環型のモノづくりを展開し、環境負荷最小化及び鋼材・鍛造品の安定供給に貢献
(3)社会課題へのソリューション提供:新技術・新商品の積極投入
①ステンレス鋼の業務領域・付加価値拡大を通じて、事業拡大を目指す
・増え続けるインフラ老朽化への当社エンジニアリング技術によるソリューション提供
②4つの価値創造領域でスマート社会への貢献を目指す
・電子部品:タイムリーな投資による増産体制の確立により、電動車向け製品の確実な生産対応と開発を推進
・磁石:マグファイン®改良品(耐腐食性と低価格)を投入、電池や家電へのソリューション提供
・センサ・金属繊維:GMPS(自動運転支援システム)のトヨタグループ構内物流での採用拡大
・鉄供給材:CG(カンキツグリーニング)病対策として鉄資材のグループ販売網も活用した市場投入でソリューション提供
(4)基盤強化
①DX/情報基盤の整備・強化、物流改革:DX活用による経営判断の迅速化及び、高効率輸送の追求
②非財務資本の取り組み(人的/自然資本):「人を大切にする経営」「地球にやさしい経営」を愚直に実践
(5)財務・資本戦略:成長戦略と財務・資本戦略を両輪で進め資本収益性の向上を図る
①株主還元
・株主還元を強化し、ROE8%(2030年度)目標達成に必要な資本圧縮を段階的に実施
②キャッシュアロケーション
・事業成長と資本効率向上へ、2030年度までに戦略的成長投資(約1,000億円)・株主還元(700億円+α)を実施
4.経営指標
目標とする経営指標につきましては、2030年度時点でのROE8%・連結営業利益280億円以上を達成するため、中期経営計画の最終年度にあたる2026年度に連結売上収益3,400億円、連結営業利益150億円、ROE4%以上の達成を目指してまいります。
5.対処すべき課題
2025年度の国際経済は、トランプ政権による相互関税政策を発端とする貿易摩擦の激化も予想され、世界の貿易及び各国での生産・投資活動の落ち込みや、個人消費の下振れなど経済活動の落ち込みが懸念されます。日本国内においても、輸出の落ち込みによる企業収益の悪化や、輸入物価の上昇により消費者物価が上昇し、個人消費が抑制される可能性があるなど、下振れリスクは大きいと考えられます。
自動車業界では、関税政策の影響を大きく受けるのに加え、足元で成長スピードが鈍化している世界のBEVシフトは、中長期的に再加速する可能性が高く、自動車メーカーによる競争は激しさを増すことが予想されます。当社は創業以来、特殊鋼や鍛造品など素材や部品を通じてクルマの可能性を広げてまいりましたが、今後も、自動車の発展に貢献してきた技術を活かし、自動車のみならず、広く社会課題解決に貢献できる素材を提供する「環境に一番やさしい鉄屋」として社会に貢献してまいります。
また、変化に強い企業体質を作るため、これまで注力してきた「モノを作る力」に加えて、DX・情報基盤の整備、強化によるリアルタイム経営の実現(経営判断の迅速化)や、ムダ・ムラ・ムリを徹底排除した高効率物流網の整備など、環境と物流ドライバーにやさしい高効率輸送の追求といった「物流改革」も含め、全方位での収益構造改革を推進することで、「稼ぐ力」を向上してまいります。
さらに、2050年度を目標としているカーボンニュートラルの早期実現も見据え、7工場のうち5工場は2022年度までにカーボンニュートラルを達成しており、カーボンニュートラルエネルギーの使用も含め、2030年でのCO2排出量50%削減(2013年度比)のメド付けも進んでおります。その先の2050年でのカーボンニュートラル実現には水素活用における技術的なブレークスルーが必要と考えられるため、刈谷工場での水素・都市ガス兼用バーナでの実証実験、実用化に向けた取り組みなど計画的に進めてまいります。
上記のとおり、当社グループは“世のため、人のため”、“お役に立つ”という創業の精神に立ち戻り、課題に現地現物で正面から向き合うことで、変化に強い企業体質を作りながら、成長戦略の実現に向け、当社グループ一丸で取り組み、企業価値を高めてまいります。
具体的には、中期経営計画期間となる2024-26年度の2年目として、引き続き「変革のリーダー、私。」をスローガンに掲げ、一人ひとりが主役となって、以下の方針に則り、施策に取り組んでまいります。
1. 創業の精神に則り、自らの倫理観と仕事への誇りに基づいた正直で真っ当な企業行動
1-(1):常にお客様を意識し、その期待に応える
1-(2):安全・品質は絶対である
1-(3):社会への責任として持続性を自覚する
2.成長戦略を必ずやり遂げ、お約束を守り、未来への責任を果たす
2-(1):「稼ぐ力」を徹底的に鍛え、「成長戦略」のロードマップを具体化し着実に実行する
(自工程完結・日常管理・TPSの徹底と拡販)
2-(2):柔軟でスピーディーなリソーセス配分と強靭かつ機動的な財務政策
3.厳しく温かく人が育つ風土を築き上げ、人を大切にする経営を実践
3-(1):問題解決を通した人材育成の強化(真因を見極め最後までやり抜く改善マインド・改善能力)
3-(2):アイチの価値観の共有・徹底を通じた一体感のレベルアップ
3-(3):一人ひとりがイキイキと活躍できる健康経営の強化
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社グループは「国際的視野に立ち、活力に溢れ、信頼される企業体質をもとに、魅力ある商品を提供することによって社会に貢献する」という経営理念に基づき、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献することが、中長期的な企業価値の向上につながると考えています。その実現に向け、
特に気候変動に対しては、多くのエネルギーを使用する電炉会社として重要な経営課題と認識し、「環境に一番優しい鉄屋」を目指し、重点的に取り組んでいます。
また、当社グループは人的資本が価値創造の源泉であるとの認識に基づき、これまでも人を大切にする経営に取り組んできましたが、更なる人的資本経営の高度化を目指し、多様性の推進、人材育成、社員の健康・安全の確保に向け、気候変動と同様に重要な経営課題と認識し重点的に取り組んでいます。
(2) ガバナンス
経営に重大な影響を及ぼすサステナビリティ全般に関するリスク・機会への対応方針・取り組み状況・事業戦略は、業務執行における最上位の意思決定機関であり、経営に関わる重要事項を審議する「経営トップミーティング(原則月2回開催、議長:取締役社長)」で議論・審議しています。取締役会はその報告を受け、特に重要案件は審議することで監督機能を果たしています。2024年度には、全社横断したサステナビリティ施策を企画、推進するサステナビリティ推進室を設置し、サステナビリティに関する更なる取り組みの充実を図っています。
(気候変動への対応)
地球環境会議(年2回開催、議長:取締役社長)では、気候変動や資源循環をはじめとした自然資本に関わる戦略の実行や活動の進捗を管理しており、その内容は経営トップミーティング及び取締役会にて報告されています。また、地球環境会議の下に6つの分科会を設置し、担当範囲を明確にすることで効率的・重点的に活動を推進しています。経営トップミーティングでは気候変動への対応方針・戦略、CO2排出削減目標計画の策定・見直しなどを審議・決定しています。
(人的資本経営)
社外役員が過半数を占める任意の役員報酬・人事案策定委員会(年3回開催、委員長:社外取締役)における経営陣幹部のサクセッションプラン、HRコミッティ(年2回開催、議長:取締役社長)における経営視点での人事課題などの議論を経て、経営トップミーティングにて人材戦略及び具体的な課題や施策(組織の新設・改編、主要ポストの任免、重要な人事施策の新設・改廃など)に関する検討・決議、進捗状況の共有を行っています。特に人材戦略や経営陣幹部の選任については、取締役会で検討・決議することで監督機能を確保しています。
(サステナビリティのガバナンス体制図)

(3) リスク管理
当社グループではリスク管理体制や、事前の予防対策、緊急事態発生時の対応などを定めた「危機管理規程」を制定し、想定されるさまざまなリスクに備えています。危機管理最高責任者であるCRO(チーフリスクオフィサー)はリスクマネジメント本部長が担当し、平素の予防管理の推進及び危機事象の予見/発生時の対応を推進しています。
リスク管理のプロセスにおいては、各部門・グループ各社が現場で各種施策を立案する際に、業態、事業特性及び社会状況からサステナビリティを始めとしたリスクを抽出しています。抽出されたリスクは各種業務推進会議等にて報告され、影響度・発生頻度・時間軸などから経営に重大な影響を及ぼすリスクを特定、重要度を評価しています。経営に重大な影響を及ぼすリスクは経営トップミーティングにおいて、対応策と管理指標を設定し、経営計画に落とし込み、継続的な監視と予防・軽減策を実施しています。取締役会では経営計画の審議、定期的な執行状況と管理指標の進捗を確認することで監督機能を果たしています。
万が一リスク事象が発生または予見される際には、対策本部を設置し、被害の未然防止、最小化、早期収束に向け、社内外関係先とも連携のうえ、対処することとしています。
(リスク管理プロセス)

(4) 戦略と指標・目標
当社は、サステナビリティを経営の軸に据えた2030年ビジョンを策定し、「事業とモノづくり力の変革で収益力を向上させESG経営を実践」を基本方針に「持続可能な地球環境への貢献」「事業の変革で豊かな社会を創造」「従業員の幸せと会社の発展」という3つの経営指針に基づき、事業活動を推進しています。
その実現に向けて優先的に取り組むべき経営重要課題であるマテリアリティとして掲げ、SDGsにおける169のターゲットを整理・紐づけし、重要課題KPIとして具体的な指標と目標を設定することで、計画的に実行しています。各指標の進捗状況は各業務推進会議でモニタリングすることで、必要に応じ迅速な活動の改善を図っています。
(指標・目標と実績)
(注)気候変動への対応及び人的資本経営の指標・目標は下記の「気候変動への対応」及び「人的資本経営」に記載しています。
(気候変動への対応)
当社は2021年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同表明し、2022年よりTCFDフレームワークに基づき、情報開示を実施しています。戦略においては、気候変動による事業への影響の把握と気候関連リスク・機会に対応するため、シナリオ分析を実施しました。
1.5℃シナリオでは主要顧客である自動車業界のCASE進展、鉄鋼業界への脱炭素化要求などはリスクであると同時に、次世代電動アクスル部品、電子部品などの電動車向け部品の拡大や自動運転支援システムの普及拡大など新たなビジネス機会の創出につながることを認識しました。4℃シナリオでは自然災害等によるサプライチェーンへの影響を改めて確認しました。
上記の結果を踏まえ、引き続き脱炭素に貢献する技術・製品の開発・製造・販売を進めるとともに、サプライチェーンの強靭化やステークホルダーとのコミュニケーションの強化に努めていきます。
■参照シナリオ

■シナリオ分析結果

① CO2排出量削減目標
当社の事業活動におけるCO2排出量を「2030年までに50%削減(2013年度比)及び2050年までにカーボンニュートラルの実現に挑戦」と目標を掲げ、その実現と前倒し達成に向け、取り組んでいます。

(注) 1 排出量は全て提出会社のScope1、Scope2の合計値
2 「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(資源エネルギー庁)及び契約電力会社の各年度の排出係数に基づき算定。2023年度よりSGSジャパン株式会社による独立した第三者検証を取得しています。
3 2024年度の排出量は、2025年5月末時点の速報値です。実排出量については2025年9月に第三者検証を取得予定です。
② 実現に向けたロードマップ
上記の目標の実現に向けて「①省エネの深化・追求」「②再生エネルギーの活用」「③脱炭素技術の開発・導入」を軸に活動を推進しています。

上記の戦略に関する指標及び実績は次のとおりです。
(集計範囲)提出会社
(算定方法)「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(資源エネルギー庁)及び契約電力会社の各年度の排出係数に基づき算定しています。2024年度の排出量は、2025年5月末時点の速報値です。実績排出量は「
(https://www.aichi-steel.co.jp/ir/library/integrate_report/)。
(注)集計値の見直しと係数等の変更に伴い、過年度数値を遡及して修正しています。
(人的資本経営)
当社は、社員が幸せを感じられる「価値ある会社人生」を追求することが、結果として会社の成長につながると考え、従来から「人を大切にする経営」を実践しています。2030年ビジョンでは経営指針の一つとして「従業員の幸せと会社の発展」を掲げ、その実現に向けた人材への投資を積極的に行っています。
① ダイバーシティ&インクルージョン
多様な属性や、感性・能力・価値観・経験を持った社員が、互いに認め合い、相互研鑽して能力を発揮することが、新たな価値創出につながると考えています。そのための人材確保・育成や社内環境整備の充実に取り組んでいます。
a.女性の活躍支援
定期採用においては、従来から女性の採用比率目標を設定して積極的な採用を実施しています。また、研修などを通してキャリア形成を支援するとともに、ライフイベントと仕事の両立をサポートするための、育児支援制度や介護支援制度を軸とした「ナイスファミリー制度」に加え、「コアタイムのないフレックスタイム勤務」「在宅勤務制度」などを導入しています。加えて職場や上司の理解を促進し性別に関係なく育児休業を取得しやすくするため、全ての基幹職に対して育児支援制度に関するe-Learningを実施するなど、意識面への取り組みにも注力しています。
b.シニアの継続的な活躍
労働力人口の減少や現場力の維持・向上などの観点から、シニア社員(60歳以上)のパフォーマンスを最大限に引き出すことが重要と考えています。当社では、定年退職後から年金受給開始までの期間、希望者全員が継続して働くことができる「ナイスシニア制度」を設けています。安心感と高い意欲を持って働き続けられるよう労使で議論しながら、作業環境の整備や処遇の見直しを実施しています。また、今後のキャリアプランや働く意義をあらためて考える機会として、55歳到達者を対象に「働き方」や「退職金と年金」「健康と食生活」などをテーマとしたセミナーを開催するなど、シニア社員の自律的なキャリア形成に向けた取り組みも実施しています。
c.障がい者のイキイキ職場拡大
計画的な定期・中途採用を実施するとともに、障がいのある従業員が、製造現場や事務部門など幅広い職場で活躍できるよう、さまざまな施策に取り組んでいます。仕事への意欲や個人ごとに異なる特性と業務内容の適性を重視し、職場実習や面談を重ねたうえで、配属職場を決めています。配属後も、本人との定期面談や受入職場へのフォローなどの支援や配慮を「障がい者職場生活相談員」が中心となり実施するなど、能力を最大限に活かすためのさまざまな施策を実施しています。また働くうえでの障壁を取り除くため、バリアフリー整備やキャリア形成の支援、従業員の啓発活動や意識向上の取り組みを行い、受入職場の拡大にも注力しています。
② 人材育成
当社は2030年ビジョンの一つとして「人材育成」ビジョンを定めています。「素材でモノづくりの可能性を広げる会社」として、これからもお客様から選ばれ続けるには、世の中の変化に柔軟に対応する力の向上が必要と考え、「専門性」と「基礎力」両面からの人材の育成・確保に取り組んでいます。それぞれの職務に必要な「専門性」に加え、変化に即応できる「基礎力」として、モノづくり企業として永年培ってきた「技能」と「問題解決力」、DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な「デジタルリテラシー」の強化を重点施策として実施しています。

a.問題解決力
「問題解決力」は、「職場でのOJT」を通して身に付けることを基本とし、その効果を「集合研修」で高めるという考え方のもと、研修体系の充実を図ってきました。従業員一人ひとりが将来のキャリアプランを考え、その実現に必要な技能や知識の習得と能力開発に向けた業務アサイン・目標について、定期的に上司と話し合う仕組みを設けています。また各種研修では、OJTとOff-JTの相乗効果を目的に管理・監督者が後進を指導することや、参加者の意識を高めるために経営トップが自らの経験なども交えて講話するなど、研修の効果を高めるための工夫をしています。
b.デジタルリテラシー
競争力を維持・向上するには、スマートファクトリーなど製造現場での取り組みに加え、業務そのものや組織、企業文化・風土を変革するためのDX推進が必要と認識し、DX人材の育成強化に取り組んでいます。デジタルリテラシー基礎教育を実施するとともに、DXアセスメントにより個人別にDXレベルを把握し今後の教育体系構築に活用することで、DXリーダーの育成を加速させています。また、「さわれるDX展示会」や「生成AI活用コンテスト」を開催するなど意識醸成を図り、全社でのDX推進に努めています。
③ 社員の健康・安全
当社は創業以来、人を大切にする経営を実践してきました。人を大切にする経営とは、従業員が心身ともに健康で活動的な生活を送り「価値ある人生」と「従業員・家族の幸せ」を実現し、社会への価値提供につなげることです。「従業員の健康・安全」を重要課題と位置づけ、心と身体の健康保持・増進に努め、人にやさしい職場づくりを推進しています。
a.健康経営の実践
従業員の健康保持・増進に取り組むことは、組織の活力向上や生産性向上などの効果をもたらすと考え、持続的な成長のため「健康経営」の実践に注力しています。中期経営計画において健康に関する定量的な目標を定め、PDCAを回し継続的な改善に取り組んでいます。特に生活習慣病予防とメンタルヘルスを重点課題に掲げ、会社・健康保険組合・労働組合が連携しコラボヘルスを推進することで諸施策の充実に努めています。
b.生活習慣病の予防
生活習慣を改善し健康増進を図ることを目的に、従業員の健康意識向上と行動変容を促すため「健康チャレンジ8」活動を推進しています。体重・朝食・飲酒・間食・禁煙・運動・睡眠・ストレスの8項目に関連する健康習慣の実践に向けて、職場対抗イベントを実施するなど従業員・職場が主体的に楽しく実践できる工夫をしながら健康づくりに取り組んでいます。
c.メンタルヘルス
メンタル相談窓口の設置、一般従業員・管理監督者双方への教育、精神科顧問医によるメンタル不調者への相談対応等により、発生の未然防止と早期発見・早期ケアに取り組んでいます。また年に1回、全従業員を対象にストレスチェックを実施し、高ストレス者・高リスク職場へのケアなどを通じて、心の健康づくりを推進しています。
④ 社員エンゲージメント
当社では全社員を対象としたエンゲージメント調査を毎年実施しています。仕事に対する意欲、仕事を通した成長の実感や上司の支援、職場風土など、さまざまな観点で分析した結果を踏まえ、各種人事施策の展開や、各職場のマネジメント改善に取り組んでいます。また、管理職は、有識者の講演会やリーダー研修などを毎年受講するなど、マネジメント力向上に取り組んでいます。2024年度には、社員の一体感をより一層高める取り組みを開始しました。人にフォーカスした活動として働きやすい環境整備やインナーブランディングの強化、人事制度・育成施策の見直しなどを推進し、「人を大切にする経営」のさらなる充実に向けた取り組みを進めています。
上記の戦略に関する指標、目標及び実績は次のとおりです。
(注) 1 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
2 モラールサーベイは、会社の経営や施策、仕事への意欲などに対する社員の意識調査です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経済状況
当社グループの主力製品である鋼材及び鍛造品の主要需要先は自動車業界であります。経済状況により自動車業界が影響を受ける場合、製品需要の大幅な変動で、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 原材料、エネルギー及び副資材の調達
当社グループが主要原材料として調達する鉄スクラップや合金鉄の価格は、国際商品市況の影響を受けて大きく変動することがあります。また、生産活動全般において大量の電力やLNGなどのエネルギー、製鋼工程等において電極・耐火物等の副資材を消費しており、これらの価格上昇分の売価への転嫁に努めておりますが転嫁できない場合は、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、供給元については、その分散や関係強化により安定調達に努めていますが、地政学的リスクや供給元の災害、事故等による供給能力の制約で調達が困難となった場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 為替相場
当社グループは、製品の一部を輸出するとともに、原材料である合金鉄の大部分を輸入に依存しています。為替相場の変動は、当社グループにおける製品、原材料の輸出入価格及び電力やLNGなどのエネルギー価格に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの外貨建取引及び連結財務諸表作成のための海外子会社の財務諸表数値は、外貨から円貨への換算において、為替相場変動の影響を受け、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 価格競争
当社グループの主要需要先である自動車業界をはじめとする各業界は、厳しいコスト競争の下にあります。激化する価格競争の環境下で、経済変動による需要の減少などに伴い製品価格の大幅な低下や、市場シェア低下の可能性があります。このような場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 製品の品質
当社グループは、厳格な品質管理体制や品質管理基準に従い、鉄鋼製品はじめ、各種製品を製造しています。しかしながら、製品の品質不具合が生じた場合、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 人材の確保・育成
当社グループは、国内において少子高齢化が進むなかで、有能な人材の確保、一人ひとりの能力向上及びその最大限の発揮に取り組んでいますが、計画通りの人材確保、人材育成が進まない場合、当社グループの競争力低下を招き、財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 製造設備
当社グループの製造設備は、安定生産に向けて日々の点検や定期補修に努めていますが、設備トラブルが発生し、操業が中断した場合、生産量の減少や修繕コストの増加等により、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 特定販売先
当社グループの製品の売上収益は、トヨタ自動車株式会社及びトヨタグループ企業集団に対する依存度が非常に高いため、同社の自動車販売台数の動向が、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、同社は、2025年3月31日現在、当社の議決権の24.7%(間接所有含む)を所有しております。
(9) グローバル事業展開
当社グループは、さまざまな国で商品の生産及び販売を行っています。その国々における、不利な政治的又は経済的な要因や予期せぬ法律又は規制の変更、ストライキ、テロ、戦争、疾病等の要因による社会的又は経済的な混乱で、生産・出荷活動が遅延・停止する可能性があります。遅延・停止が長期間にわたる場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 設備投資効果
当社グループは、安定生産基盤の確立や生産性・コスト競争力の強化に加え、カーボンニュートラルかつ資源循環経済の実現に貢献する次世代製鋼プロセスの開発をはじめとした、大型の設備投資の計画的な推進を実施していますが、当初想定した効果が十分に得られない場合などは、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 新技術・新商品開発
当社グループは、積極的な新技術・新商品の開発に努めています。将来においても、継続してお客様のニーズにお応えする新技術・新商品を開発できると考えていますが、そのプロセスは複雑かつ不確実なものであり、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新商品のタイムリーな開発と市場への投入ができない場合には、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 気候変動
当社グループは、資源循環型企業として、気候変動への対応を経営の最重要課題と捉え、2021年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同を表明し、CO2排出量を2030年までに50%削減(2013年度比)、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指しています。今後、顧客からの要求や法規制の強化による生産コストの上昇や新たな税負担で、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 気候変動への対応を除く環境規制
当社グループは、国内外の環境法規制を遵守するとともに、「アイチ環境取り組みプラン2025」を策定し環境への負荷低減に努めています。しかし、環境に関する法規制は、改正・強化される傾向にあり、その対応のため費用が増加し、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 有形固定資産及び無形資産の価値
当社グループが保有する有形固定資産及び無形資産について、経営環境の著しい悪化等により収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった場合、その資産の減損損失の計上を行うことにより、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 情報セキュリティ
当社グループは、顧客及び取引先の機密情報や個人情報、また、当社グループの機密情報や個人情報を有しております。サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失等により、システム障害が生じる場合や、機密情報及び個人情報の外部流出が起きた場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の低下等で、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 自然災害
当社グループの国内工場や取引先の多くが中部地区に所在するため、この地域で大規模地震などの自然災害が発生した場合、生産・出荷活動が遅延・停止する可能性があります。遅延・停止が長期間にわたる場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 人権
当社グループは世界各国から原材料や副資材を調達するとともに、国内外の拠点でグローバルな事業活動を実施しています。当社グループでは、すべての役員・従業員が、当社グループの人権に関する最上位方針である「愛知製鋼グループ人権方針」の遵守を基本として事業活動を進めていますが、サプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、生産・出荷活動が遅延・停止する可能性があります。遅延・停止が長期間にわたる場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(18) その他の法令・公的規制
当社グループは、事業を展開する日本及び各国において、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税等の様々な法令・公的規制の適用を受け、遵守に努めています。今後、これらの法令又は公的規制が改正もしくは変更される場合、対応費用の増加等により、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(19) 訴訟
当社グループは、事業活動を遂行するうえで、訴訟を提起される可能性があります。訴訟の結果によっては、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(当社及び当社取締役等に対する訴訟の提起)
2022年5月16日に、当社及び当社取締役等は、マグネデザイン株式会社及び本蔵義信氏より損害賠償請求訴訟を提起されております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「32.偶発事象」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(経営成績等の状況の概要)
当期の世界経済は、米国においては底堅い個人消費を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州においてはインフレ圧力の緩和はあったものの、エネルギーコスト起因での製造業の不振が顕在化、中国においては、政府は大規模な経済対策を実施したものの、内需の鈍化等で成長に歯止めがかかっていました。一方、我が国においては、物価高騰はあるものの、雇用・賃金環境の改善に伴う個人消費の増加により、景気は緩やかな回復と、いよいよ、失われた30年の終焉の兆しが感じられ始めました。
このような環境のもと、当連結会計年度の売上収益は、販売価格の値上がりにより、前連結会計年度(296,516百万円)に比べ0.9%増の299,287百万円となりました。
なお、セグメント区分ごとの売上収益は、次のようになっております。
鋼(ハガネ)カンパニー
主力製品である特殊鋼の販売価格の値上がりがあったものの、販売数量の減少により、当連結会計年度の売上収益は106,768百万円と、前連結会計年度(108,216百万円)に比べ1.3%減少しました。
ステンレスカンパニー
主力製品であるステンレス鋼の販売価格の値下がりがあったものの、販売数量の増加により、当連結会計年度の売上収益は44,055百万円と、前連結会計年度(41,259百万円)に比べ6.8%増加しました。
鍛(キタエル)カンパニー
主力製品である自動車用型打鍛造品の販売数量の減少はあったものの、販売価格の値上がりにより、当連結会計年度の売上収益は125,506百万円と、前連結会計年度(124,262百万円)に比べ1.0%増加しました。
スマートカンパニー
電子部品の売上の増加により、当連結会計年度の売上収益は20,593百万円と、前連結会計年度(19,940百万円)に比べ3.3%増加しました。
その他事業
当連結会計年度の売上収益は2,363百万円と、前連結会計年度(2,838百万円)に比べ16.7%減少しました。
利益につきましては、販売価格の値上がりや鉄スクラップ等購入品価格の値下がり、原価低減などが増益要因となり、営業利益は前連結会計年度(10,372百万円)に比べ15.9%増の12,016百万円となりました。また、税引前利益は前連結会計年度(10,947百万円)に比べ8.8%増の11,907百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前連結会計年度(6,593百万円)に比べ18.6%増の7,820百万円となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、退職給付に係る資産及びその他の金融資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ43,045百万円減の400,063百万円となりました。
負債合計は、営業債務及びその他の債務、借入金及び繰延税金負債の減少などにより、24,433百万円減の156,664百万円となりました。
資本合計は、確定給付制度の再測定及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に係る純変動の減少などにより、18,612百万円減の243,398百万円となりました。
当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末(46,546百万円)に比べ10,271百万円減少し、36,275百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は25,354百万円と前連結会計年度(33,817百万円)に比べ8,463百万円減少しました。これは、税引前利益が11,907百万円と960百万円増加したものの、営業債権及びその他の債権の増加による資金の減少1,372百万円(前連結会計年度は、営業債権及びその他の債権の減少による資金の増加1,776百万円)、営業債務及びその他の債務の減少による資金の減少3,175百万円(前連結会計年度は、営業債務及びその他の債務の増加による資金の増加1,037百万円)があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は17,918百万円と前連結会計年度(18,895百万円)に比べ977百万円減少しました。これは、有形固定資産の取得による支出が3,168百万円増加したものの、投資有価証券の売却による収入が3,431百万円増加したことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は17,674百万円と前連結会計年度(16,283百万円)に比べ1,391百万円増加しました。これは、コマーシャル・ペーパーの発行による収入4,983百万円(前連結会計年度は該当なし)があったものの、自己株式の取得による支出が4,394百万円増加、長期借入金の返済による支出が1,992百万円増加したことなどによるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、内部振替前の金額によっております。
2 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、スマートカンパニー及びその他事業は見込生産を行っているため、記載しておりません。
(注) セグメント間の内部受注金額は、消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定により、IFRSに準拠して作成しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「3.重要性がある会計方針」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績
当社グループの当連結会計年度の売上収益は、販売価格の値上がりにより、前連結会計年度と比較して0.9%増加し、299,287百万円と過去最高となりました。
セグメント別の売上収益については、鋼(ハガネ)カンパニーは特殊鋼の販売価格は値上がりしたものの、販売数量の減少により、前連結会計年度と比較して1.3%減少、ステンレスカンパニーはステンレス鋼の販売価格は値下がりしたものの、販売数量の増加により、前連結会計年度と比較して6.8%増加、鍛(キタエル)カンパニーは鍛造品の販売数量は減少したものの、販売価格の値上がりにより、前連結会計年度と比較して1.0%増加、スマートカンパニーは電子部品の売上の増加により、前連結会計年度と比較して3.3%増加しました。
利益につきましては、販売価格の値上がりや鉄スクラップ等購入品価格の値下がり、原価低減などが増益要因となり、当連結会計年度の営業利益は12,016百万円となり、前連結会計年度(10,372百万円)に比べ1,644百万円増加しました。税引前利益は11,907百万円となり、前連結会計年度(10,947百万円)に比べ960百万円増加しました。親会社の所有者に帰属する当期利益は7,820百万円となり、前連結会計年度(6,593百万円)に比べ1,227百万円増加しました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末(46,546百万円)に比べ10,271百万円減少し、36,275百万円となりました。
これは、営業活動によるキャッシュ・フローが25,354百万円の資金の増加、投資活動によるキャッシュ・フローが17,918百万円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フローが17,674百万円の資金の減少であったことによるものであります。
当社グループは、中期的には製造設備の合理化や生産能力増強、安定供給のための設備保全に対応するための計画的な設備投資や自己株式の取得等の株主還元を行っていく予定でありますので、今後も、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローの状況を睨みながら、必要に応じて外部資金の調達や政策保有株式等の資産の売却を行い資金の流動性を維持するとともに、営業活動によるキャッシュ・フローの増加に努めていく所存であります。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は58.0%(前連結会計年度末は56.6%)となっており、安定した財務基盤を維持しております。今後も、グローバルで金融機関との良好な関係を維持し、資金流動性と調達力を確保してまいります。
(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループが目標とする経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。当連結会計年度の経営成績は2026年度を最終年とした「愛知製鋼グループ 2024-26年度 中期経営計画」(以下、「中期経営計画」という。)の目標としていた経営指標(連結売上収益3,400億円、連結営業利益150億円)に対して、当連結会計年度の売上収益は299,287百万円、営業利益は12,016百万円となっております。主要ユーザーである自動車産業は、概ね堅調な需要が継続しましたが、中国経済停滞の影響で、産業機械、建設機械向け等の需要は回復が遅れております。また、足元では、米国の関税影響が懸念されるなど、先が見通しにくい経営環境となっておりますが、今後は、さらなるモノづくり力の向上に励むとともに、お客様や世の中のニーズの変化をいち早く捉え、タイムリーに、良品廉価な製品・サービスを提供していくことで、中期経営計画の達成を目指してまいります。
該当事項はありません。
当社グループは、「つくろう、未来を。つくろう、素材で。」のスローガンの下、「素材メーカーのDNA」を活かした用途・商品開発と展開、スマート社会に向けた次世代事業の着実な育成と強化をめざして、自動車向け特殊鋼及びステンレス鋼の開発、特殊鋼を素材とする自動車部品用鍛造品の開発、電子機能材料・部品及び磁石応用製品の開発等を中心に積極的な研究開発活動を行っております。
主力製品である特殊鋼・鍛造品では、自動車のマルチパスウェイへの対応として、電動化(HEV、PHEV、BEV、FCEV)時代の機構革新による、部品機能変化、新規搭載部品、ユニットの更なる小型軽量化、そしてエンジン部品も含め、グローバルコスト競争激化に対し、鍛鋼一貫・粗加一貫の技術力を活かし、材料設計から部品製造までを見据え、プロセススルーで開発を推進、新素材と既存開発鋼を駆使した高機能・高付加価値部品の提供を目指してまいります。
当連結会計年度の研究開発活動に関する支出は、
なお、研究開発活動に係る支出は無形資産に計上された開発資産を含んでおります。
セグメント別の研究の目的、研究の成果及び研究開発活動に関する支出は、次のとおりであります。
(1) 鋼(ハガネ)カンパニー
自動車部品用の新しい特殊鋼の開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
鋼材開発では、省資源・低コストを実現した省Mo(モリブデン)鋼「SCrH20」の拡販を推進、更に他の鋼種についても省Mo化を検討しております。また、カーボンニュートラルへ貢献するため、部品の製造工程の省略を実現する鋼材開発や、CO2の発生の少ない環境対応プロセスに対応したグリーン鋼材の鋼材開発を推進しております。
また、電動ユニットの小型・軽量化、機構変化に対応した高強度用鋼や低歪鋼の開発、鍛鋼一貫開発として、鍛(キタエル)カンパニーに関わる革新的な工法開発の競争力をより引き出す材料開発にも注力しております。加えて、次世代モビリティ時代を見据え東北大学との「次世代電動アクスル用素材・プロセス共創研究所」の設立や、当社での電動アクスル開発挑戦で得た設計技術・評価技術を活かし、更なる高強度鋼・高機能鋼の研究開発を推進しております。
鋼(ハガネ)カンパニーに係る研究開発活動に関する支出は
(2) ステンレスカンパニー
インフラ関連や自動車部品用のステンレス鋼の開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
ステンレス鋼ではエネルギー/社会インフラの高寿命化に貢献する商品であるステンレス鉄筋バーや二相系ステンレス形鋼の商品レパートリーの拡充、また、ステンレス構造部材ビジネスの拡大や、水素社会に対応する安全・安心な省資源・低コストの鋼材開発、そしてグループ会社のアイチ テクノメタル フカウミ㈱と連携した高級刃物用鋼の開発に取り組んでおります。
燃料電池車向けの高圧水素用ステンレス鋼の開発では、2013年に高圧水素用ステンレス鋼「AUS316L-H2」を開発し、同年より水素ステーション向けに、2014年からはその高強度仕様鋼がトヨタ自動車㈱の燃料電池自動車初代MIRAIに採用されております。2020年には、新たにレアメタルであるMoを使用せず、既存の「AUS316L-H2」と同等の強度と耐水素脆化特性を確保すると共に、省資源化によるコスト低減と、お客様の部品加工性の向上にも大きく寄与する省資源高強度高圧水素用ステンレス鋼「AUS305-H2」を開発し、新型MIRAI向けに供給を開始いたしました。加えて、これら開発鋼の強度やサイズレパートリを拡充し、水素インフラへ供給拡大してきております。
また、これらの開発に必要不可欠な、高圧水素ガス環境下での評価技術の構築にも注力しており、世界で初めて90MPa高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験装置を開発し、試験評価を推進しています。
当社は、1993年より水素社会実現に向けたNEDO事業に継続的に参画しており、2023年度から始まったNEDO事業「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/共通基盤整備に係る技術開発/水素社会構築に向けた鋼材研究開発」にも採択されました。NEDO事業を通して、水素社会実現に向けた基盤構築を進めるとともに、そこで得た確かな技術知見を高圧水素用ステンレス鋼の開発に活かしております。
今後、更にこれまで培った技術知見や開発設備により開発を加速し、水素社会の早期実現に貢献していきます。
ステンレスカンパニーに係る研究開発活動に関する支出は
(3) 鍛(キタエル)カンパニー
自動車部品用の鍛造品製造プロセス開発、製造方法の開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
次世代の電動ユニット車における部品の高機能化・低コスト化ニーズを受け、2017年に導入した研究開発用サーボ式鍛造プレスラインをフルに活用し、革新的な工法開発や、より高度な鍛造製品の開発を推進しております。また、新たな計測技術開発やCAEを用いた成形シミュレーションの精度向上、型設計自動最適化技術の開発などのデジタル技術の活用により、商品力の進化や飛躍的に開発スピードを向上させるためのDXの取り組みも推進しております。更に、熱間鍛造品メーカーから部品完成品メーカーへ進化を目指し、部品の付加価値を向上する設計技術開発、機械加工領域も含めた開発にも取り組んでおります。
特に電動ユニット向けの部品開発に注力しており、鍛造技術と材料技術の融合による鍛鋼一貫の温間鍛造技術の開発でニアネットシェイプと熱処理省略を実現、それにより低コスト化とCO2排出量低減を達成し、2022年に量産を開始し、適用を広げてきております。また、更なる受注拡大に向けて、粗加一貫の取り組みによる部品の付加価値向上やコスト競争力向上、自動車部品のカーボンニュートラルへ貢献するグリーン鍛造品技術開発にも取り組んでおります。
また、エンジン部品においてもデジタル技術や新工法開発によりクランクシャフトの競争力向上に取り組んでおります。
鍛(キタエル)カンパニーに係る研究開発活動に関する支出は
(4) スマートカンパニー
車載電子機器用放熱部品の開発、MIセンサを活用した磁気マーカシステムの開発、モータ用磁石の開発など、進化を続けるスマート社会に向けた新しい素材、製品の開発等を行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。
当社が開発した「磁気マーカシステム」は、2017年から国土交通省、内閣府などと共に様々な場所/環境で実証実験を行い、その性能、信頼性において高い評価を得ており、従来からの公道、公共交通分野では、JR東日本の気仙沼線BRT(※1)にて、2022年12月より柳津駅から陸前横山駅間で実用化された自動運転バスに導入されたほか、中部国際空港島などで更に実証を積み重ね、実用化に向けて着実に進捗させております。2021年度からは特に工場敷地内の牽引車の自動走行化について開発を推進し、2024年度にはトヨタグループの量産ラインでの実運用が正式に開始し、磁気マーカシステムを搭載した自動牽引車が物流の効率化に大きく貢献しております。
モータ技術開発の分野では、2022年2月に、34,000回転/分の小型軽量モータに、小型高減速機を組み合わせ、省資源・小型軽量化に貢献する高速回転・高減速の次世代電動アクスルの技術実証に世界で初めて成功しました。2024年度からは、その電動アクスル挑戦で得た要素技術・評価技術を活かし、魅力ある高機能部品・素材の開発とそれらの実用化を推進しています。
また、国公立大学法人などとイネ科植物が根から分泌する天然の鉄キレート剤(※2)「ムギネ酸」(※3)の化学構造を改良した環境調和型の鉄キレート剤「プロリンデオキシムギネ酸(以下、PDMA)」を開発しました。
全世界の陸地の約3分の1は農耕に適さないとされるアルカリ性不良土壌で占められています。PDMAは世界の食料問題を解決する手段の一つとして今後の実用展開が期待されています。2021年9月には国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に当社が代表企業機関となる「高活性生分解性キレート鉄肥料の実用化研究」が採択され、国公立大学法人とともにPDMAの低コスト化の研究開発と、様々な作物の実証を進めており、2024年にはトウモロコシでの実証を国際学術誌で発表し、アルカリ土壌での主要穀物の増産に貢献する可能性を示しました。
スマートカンパニーに係る研究開発活動に関する支出は
※1 Bus Rapid Transitの略。バス専用道等を用いた高速輸送システム。
※2 「キレート」はギリシャ語で「蟹のはさみ」の意。鉄イオンを取り囲んでアルカリ土壌中でも安定に存在させる物質。
※3 植物が分泌する天然の鉄キレート物質。1976年に岩手大学の高城成一博士が「ムギの根から分泌する酸」として発見し、1978年にその化学構造式が竹本常松博士らによって決定され、この名が付けられた。