当連結会計年度におけるわが国経済は、中国経済の成長鈍化懸念の高まり、資源価格の大幅下落、米国の金利引き上げに伴うドル高による新興国経済の減速感の強まりや地政学的リスクの高まりなど、今後に向けた不透明感が強く、足踏み状態が続きました。
このような経済環境の中、当社グループにおきましては、市場の変化を注視し即応できる体制を取るとともに、中期経営計画の達成に向けて、お客様との共創、成長領域への注力、QCD(品質、コスト、納期対応力)競争力の強化を進めております。
この結果、当連結会計年度における売上高は、売上数量の減少や原材料価格の下落に伴う売上単価の低下等から、前期比230億55百万円減収の4,605億77百万円となりました。経常利益につきましては、主原材料である鉄スクラップ価格の下落やエネルギーコストの低下等が寄与し、前期比33億78百万円増益の251億8百万円となりました。また、特別損失としてソフトウエア開発中止に伴う損失55億86百万円および環境対策引当金繰入額53億8百万円を計上したため、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比41億40百万円減益の67億46百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
①特殊鋼鋼材
構造用鋼に関しましては、年度初から主要需要先である自動車の在庫調整が続きましたが秋頃には一段落し、第3四半期から受注が徐々に回復しました。しかし、夏場以降中国の景気減速による産機・建機向けの減少等もあり売上数量は前期比で減少しました。工具鋼は国内自動車関係を中心に堅調を維持しました。
一方、主原材料である鉄スクラップ価格は、中国が鉄鋼供給過剰を背景に低廉な中間素材の輸出を増やしたことから、原材料としての鉄スクラップに対する韓国等の海外需要が減少し、夏場以降大きく下落しました。
その結果、当連結会計年度における特殊鋼鋼材の売上高は、売上数量の減少や原材料価格の下落に伴う売上単価の低下等から前期比9.8%減少の1,705億13百万円、営業利益は鉄スクラップ価格の下落やエネルギーコストの低下等が寄与し前期比43億82百万円増益の75億60百万円となりました。
②機能材料・磁性材料
ステンレス製品は、パソコン販売低迷を受けてHDD(ハードディスクドライブ)向け需要がやや弱かったことやニッケル先安感からの需要減により、売上数量は前期比で減少しました。磁石製品は自動車用EPS(電動パワーステアリング)モーター向けが堅調であったことおよび前年度末からインターメタリックス ジャパン㈱を新規連結したこと、チタン製品は国内・海外で医療向けが堅調に推移したことから、売上高が前期比で増加しました。高合金製品はリードフレーム用素材の需要低迷が継続していること、粉末製品は海外自動車関連が低迷したことに加え、ニッケル等の原材料価格の下落に伴う売上単価の低下等から、売上高が前期比で減少しました。
その結果、当連結会計年度における機能材料・磁性材料の売上高は前期比4.0%減少の1,552億50百万円、営業利益は前期比11億86百万円減益の123億31百万円となりました。
③自動車部品・産業機械部品
自由鍛造品は、民間航空機向け需要は堅調に推移しておりますが、原油価格下落の影響で石油掘削・プラント関連等の需要が低迷しており、売上高は前期比で減少しました。型鍛造品は新興国でのトラック販売不振等により、売上数量が前期比で減少しました。エンジンバルブは北米自動車販売の好調を受け受注が堅調に推移したこと、鋳鋼品・精密鋳造品はターボ関連需要が増加したことにより、売上高は前期比で増加しました。
その結果、当連結会計年度における自動車部品・産業機械部品の売上高は前期比0.3%増加の996億79百万円、営業利益は前期比2億74百万円増益の12億98百万円となりました。
④エンジニアリング
エンジニアリング部門については、主力製品であるSTC®(Short Time Cycle)焼鈍炉の海外売上の好調、自動車部品メーカー向け真空浸炭炉および磁石メーカー向け真空焼結炉の売上増もあり、当連結会計年度におけるエンジニアリング部門の売上高は、前期比14.0%増加の261億4百万円、営業利益は前期比4億19百万円増益の20億71百万円となりました。
⑤流通・サービス
流通・サービス部門については、情報システム関係の売上高が減少したこと等から、当連結会計年度における売上高は、前期比13.7%減少の90億29百万円、営業利益については前期比1億29百万円増益の11億73百万円となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前期比19億97百万円増加し、337億73百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、457億31百万円(前期比199億92百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益149億80百万円、たな卸資産の減少124億44百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、231億64百万円(前期比90億13百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出210億56百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、201億64百万円(前期比173億71百万円の増加)となりました。これは主に、社債の償還による支出200億円によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
特殊鋼鋼材 | 169,852 | △10.0 |
機能材料・磁性材料 | 154,956 | △4.4 |
自動車部品・産業機械部品 | 99,951 | +0.2 |
エンジニアリング | 26,104 | +14.0 |
合計 | 450,864 | △4.8 |
(注)1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループ(当社および当社の連結子会社)の受注・販売形態は、素材供給等のグループ間取引が多岐にわたり、また受注生産形態をとらない製品もあるため、セグメントごとに受注規模を金額あるいは重量で示すことは行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
特殊鋼鋼材 | 170,513 | △9.8 |
機能材料・磁性材料 | 155,250 | △4.0 |
自動車部品・産業機械部品 | 99,679 | +0.3 |
エンジニアリング | 26,104 | +14.0 |
流通・サービス | 9,029 | △13.7 |
合計 | 460,577 | △4.8 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手別の販売実績は、総販売実績に対する販売割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループを取り巻く中長期の事業環境は、主要需要先の自動車については、新興国を中心に拡大することが想定されます。また、資源・エネルギー関連需要については、新興国の経済発展にともない中長期に拡大することが想定されます。一方、地球温暖化対策として二酸化炭素排出規制など環境規制が強化されていくなかで、自動車をはじめとした内燃機関に対しては更なる燃焼効率の改善が求められ、特殊鋼に対しても、これまでの限界を超えるような高い耐熱性、耐食性、信頼性が要求されることが想定されます。原燃料価格や為替の変化、海外市場での競争激化など、事業を取り巻く環境は刻一刻と変化しております。
当社グループでは、これらの経営環境の見通し・変化に対応するため、2015年5月に、2017年度までを実行期間とする中期経営計画を策定いたしました。当社は本年8月に創業100周年を迎えますが、次の100年も世界の発展に貢献できる特殊鋼メーカーを目指し、『世界に貢献する特殊鋼メーカー DAIDO STEEL お客様との共創を通じて、世界の成長を支える新しい特殊鋼を産み続ける』を経営基本方針として、以下の重点施策を実行してまいります。
(1) お客様との共創
世の中が必要とするイノベーションを、お客様と一体となって産み出してまいります。お客様とより密接なコミュニケーションを取れる営業体制へ組織改編を行い、情報収集能力を高め、グループ内の商品群・技術力を余すところなく提供できる体制へ変革し、当社グループの商品・技術とお客様の加工技術を高度に融合させてまいります。
型鍛造品事業においては、熱間高速横型鍛造機などを活用してお客様のモノづくりと融合した商品開発を進めてまいります。自動車エンジンバルブ事業においては、材料と加工技術の組み合わせにより、さまざまなニーズに対応してまいります。こうしたお客様との共創を通じて、トータルソリューションを提供してまいります。
(2) 成長領域への注力
今後大きく成長が見込まれる分野においては、これまでに培ってきた幅広い特殊鋼先端技術力をさらに磨き上げ、市場の発展を支える新しい特殊鋼を産み続けることで世界に貢献してまいります。
拡大が期待される自動車用ターボ需要向けには、薄肉・複雑形状を得意とする精密鋳造製品をはじめとして、耐熱、耐食などのニーズに対応すべくさまざまな部材の拡大を進めてまいります。磁石事業においては、高い信頼性が求められる車載分野を中心に事業拡大を進めてまいります。高合金事業においては、渋川工場の大型真空誘導溶解炉(VIM)による機能の高度化を進め、当社グループ独自の事業展開を推進し、航空機、重電、石油・ガス掘削などの拡大する需要を着実に取り込んでまいります。
(3) QCD競争力の強化
特殊鋼で世界に貢献するための土台として、世界で戦えるQCD(品質、コスト、納期対応力)競争力をさらに強化してまいります。溶解プロセスの最適化など、製造プロセスの更なる高度化を追求し、QCDすべての点で競争力をさらに高めてまいります。また、グローバルにサプライチェーンを強化し、必要とされる場所で、必要な時に商品を提供できる体制を整えてまいります。
(4) 企業基盤の強化
(1)から(3)の施策を着実に実行していくために、企業活動の基盤強化をさらに推し進めてまいります。社外取締役による取締役会監督機能の強化と迅速な意思決定を可能にするための執行役員制を導入し、経営の透明性を担保してまいります。また、刻々と変化するビジネス環境に効果的に対応するためには、企業活動の根源である人材の多様化が必要と考えており、女性・外国人など多様な人材が活躍できる職場環境づくりを進めてまいります。
当社グループに与えられた使命は、より進化した製品や技術の開発を通して社会に貢献して行くことと認識しております。この使命を果たすため、常に最先端の技術開発とその活用に努め、グループ一丸となって持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
(5) 買収防衛策について
当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者は、当社の企業理念、当社の企業価値の様々な源泉および当社を支える各利害関係者との信頼関係を十分に理解した上で、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を中長期的に確保または向上させることを真摯に目指す者でなければならないと考えております。したがいまして、当社の株式を買い集め、多数派株主として自己の利益の追求のみを目的として濫用的な会社経営を行うものであったり、株主の皆様に当社の株式の売却を事実上強要するものであったり、または、株主の皆様が当該買付けの条件・方法等について検討し、当社取締役会が代替案の提示等を行うための十分な時間を確保しないものである等の当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう株式の大規模な買付けを行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えております。
当社は、上記①の当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」といいます。)の実現に資する特別な取組みとして、上記(今後の経営課題)に記載の企業価値向上に向けた取組みを実施しております。
また、当社はコーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みを基本方針の実現に資する特別な取組みのひとつと位置付けております。コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方およびその充実に向けた取組みにつきましては、「第4 提出会社の状況 6 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
当社は、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益の確保または向上を目的として、平成27年6月26日開催の当社第91期定時株主総会において出席株主の皆様の議決権の過半数のご賛同を得て承認可決されることを条件として、同定時株主総会の終結時に有効期間が満了する原対応方針(平成25年6月27日開催の当社第89期定時株主総会において出席株主の皆様のご賛同を得て導入した「当社の株券等の大規模買付行為に関する対応方針」をいいます。)に替えて、以下にその概要を記載した対応方針(以下「本対応方針」といいます。)を継続して導入することを、平成27年5月8日開催の当社取締役会において決定いたしました。同取締役会には、社外監査役2名を含む当社監査役全員が出席し、いずれの監査役も本対応方針に同意する旨の意見を述べました。なお、本対応方針に関する議案は、第91期定時株主総会において承認可決いただいております。
本対応方針の概要は、当社の株券等を20%以上取得しようとする大規模買付者に対して、取締役会による大規模買付行為の内容の評価・検討等に必要な情報の提供や期間の確保等、本対応方針に定める大規模買付ルールに従うことを求め、大規模買付者が大規模買付ルールに従わない場合や、大規模買付ルールに従っても当該大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なうものであると認められる場合に対抗措置を発動できるとするものです。
本対応方針の内容の詳細につきましては、以下の当社ホームページをご参照ください。
http://www.daido.co.jp/ir/pdf/defence.pdf
上記②の取組みは、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させ、それを当社の株式の価値に適正に反映させていくことにより、上記①に記載されているような当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう株式の大規模な買付けを困難にするものと考えられ、上記①の基本方針に資するものであると考えております。
また、当社は、多数の投資家の皆様に中長期的に継続して当社に投資していただくため、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させることを目的に、上記②の取組みを実施しております。
したがいまして、上記②の取組みは上記①の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えております。
上記③の取組みは、大規模買付行為の内容の評価・検討等に必要な情報の提供と期間の確保の要請に応じない大規模買付者、および当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なう大規模買付行為を行おうとする大規模買付者に対して対抗措置を発動できるとすることで、これらの大規模買付者による大規模買付行為を防止するものであり、上記①の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みであります。
また、上記③の取組みは、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を確保しまたは向上させることを目的として、大規模買付者に対して、当該大規模買付者が実施しようとする大規模買付行為の内容の評価・検討等に必要な情報の提供と期間の確保を求めるために実施されるものであります。
さらに、上記③の取組みにおいては、株主の皆様の意思を確認する手続の導入、独立性の高い委員により構成される特別委員会の設置およびその勧告の最大限の尊重、合理的かつ客観的な対抗措置発動要件の設定、株主意思確認株主総会の決議に基づく対抗措置発動等の当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記③の取組みの合理性および公正性を確保するための様々な制度および手続が確保されております。
したがいまして、上記③の取組みは上記①の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えております。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(平成28年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの事業は、自動車、産業機械、電気機械、IT、インフラなどを主な需要分野としております。したがいまして、当社グループの業績は国内外の景気、公共投資、民間設備投資、個人消費、市況等の動向に影響を受けます。また、各製品市場において、国内外の競合各社との激しい競争状態にあり、その状況次第では当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの主要需要業界は自動車関連産業であり、ユーザーとの厚い信頼関係を基盤に高いシェアを維持しております。このため、種々の事業環境の中でも、国内外における自動車メーカーの生産動向、および当社グループの価格交渉力が業績に影響を与える可能性があります。
当社グループ製品の主要原材料は、鉄スクラップやニッケル等の合金であります。その他に少量ではありますが磁石製造のためにネオジム等のレアアースを使用しております。また、生産活動の過程において大量の電力やLNGなどのエネルギーを消費いたします。したがいまして、原材料の需要変動による価格変動およびエネルギー需給の変動による価格変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また原材料の需給関係が大きく崩れ安定した調達が困難となった場合や、電力需給の悪化による使用制限が発生した場合には当社グループの生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは設備資金、運転資金の一部を金融機関等からの借入金等で調達しております。近年の市場金利は低位で推移しておりますが、景気動向によっては金利情勢の変化も予想され、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループが保有している投資有価証券の価値が、投資先の業績不振、証券市場における市況の悪化等で変動した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、退職給付信託資産を構成する有価証券の価格変動が業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、製品等の輸出および原材料等の輸入において外貨建取引を行っており、また、外貨建の債権、債務を保有しております。このため、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。
当社知多工場をはじめとする当社グループの製造拠点の多くは、愛知県内に立地しております。耐震性の強化などの防災対策を進めているほか、津波被害から人命を守るための取り組み、また、既存のサプライチェーンを寸断させること無きよう様々な活動を行っておりますが、懸念されている「東海地震」「東南海地震」「南海地震」などの自然災害に見舞われた場合は操業に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
また、各種の感染症の大流行に対しては、感染予防に必要な保護具および衛生用品を備蓄し、感染予防に関する従業員等への教育を実施しているほか、緊急対策本部の設置を定めておりますが、大流行時における社会状況の変化によっては、操業に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの電気炉や圧延・鍛造機をはじめとする特殊鋼関連主要設備は、高温・高圧下で操業を行っており、また化学薬品による加工処理も行っております。これらを原因とする事故の防止対策には万全を期して操業しておりますが、万一重大な設備事故や労働災害が発生した場合には、当社グループの生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、米国をはじめ、中国、アジア、欧州などへ製品輸出および事業展開を行っております。したがいまして、海外における政治経済状況の混乱、法令、規制等の予期せぬ変更、その他の社会的混乱等に起因する事業活動への弊害が発生することもありえます。その場合、海外における事業活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内、海外において多岐にわたる分野で事業活動を行なっており、その遂行にあたっては、法令その他の社会的規範を順守し、公正で健全な企業活動を展開しております。しかしながら、将来における法令、規範の変更や社会の諸要求の厳格化による解釈の変更などによって発生する事態が、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、生産活動の過程において廃棄物、副産物等が発生いたします。内部統制システムの整備と改善を図り、国内外の法規制に則った適切な対応に努めておりますが、関連法規制の強化等によって、過去、現在、将来の事業活動に関し、規制等に対応するための費用が発生する可能性を有しております。
また、当社渋川工場の鉄鋼スラグ製品および直下の土壌から環境基準を超えるふっ素等が検出された問題で、現在、国や群馬県をはじめとした各自治体および民間と処置に対する協定書等を締結し安全対策を進めており、その費用を当連結会計年度において53億円を特別損失として計上しております。ただし、今後、渋川工場の鉄鋼スラグ製品を使用した公共および民間工事が新たに判明することも考えられ、その処置に対応するための費用負担が発生する可能性があります。
当社グループでは、製品の製造にあたって、品質安定化の追求と、厳格な検査・保証管理体制を構築するとともに、損害保険加入等の対策をとるなど、品質不適合リスクその他事業活動に伴う種々のリスクについて対策を講じております。しかしながら、当社グループの事業活動に関連して、製造物責任や知的財産等に関し訴訟を提起される可能性があり、その結果によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。
契約会社名 | 相手方の名称 | 国名 | 契約内容 | 契約締結日 | 契約期間 |
大同特殊鋼㈱ (当社) | TimkenSteel Corporation | 米国 | 特殊鋼製造・供給に関する協業テーマの推進 | 平成19年1月16日 | 平成19年1月16日から |
当連結会計年度において解除した契約
契約会社名 | 相手方の名称 | 国名 | 契約内容 | 契約締結日 | 契約期間 |
大同特殊鋼㈱ (当社) | 日立金属㈱ | 日本 | 業務・資本提携 1 生産設備の相互利用 2 生産技術の共同開発 3 原材料・資機材の共 同購入 | 平成18年3月6日 | 平成18年3月6日から 平成21年3月5日まで ただし、期間満了日の3ヶ月前までに双方から書面による更新しない旨の意思表示がない場合、1年間の自動延長。以後も同様。 |
当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「21世紀社会に貢献する創造的、個性的な企業集団」を目指すことを基本理念としており、「新製品・新事業の拡大」および「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究活動を行っております。
現在、当社「技術開発研究所」内の「特殊鋼研究部」、「電磁材料研究部」、「プロセス研究部」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で275名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は57億66百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は14億59百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
自動車用エンジンの電装補機やCVT無段変速機用の軸受で、潤滑油から侵入する水素が起因と考えられる早期転動疲労剥離が問題となっておりました。この水素脆性型転動疲労の長寿命化には浸炭窒化が有効であることは知られており、微細窒化物による水素トラップの効果と考えられ、クロム量やマンガン量の増加で長寿命化することは報告されておりましたが、その詳細な機構は明らかになっておりませんでした。
表層窒化物、水素放出曲線、水素脆性型転動疲労寿命に及ぼす表層窒素量の影響と、窒化物水素トラップによる水素放出曲線の分離抽出により、長寿命化の機構を明らかにいたしました。
今後はこれらの知見をもとに、耐水素脆化軸受用鋼の実用化を目指してまいります。
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は26億95百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
2013年に重希土類元素の使用量を大幅に削減しつつ高い磁力と超高耐熱性を両立させるPLP(Pressless Process)磁石の量産技術を開発し、三菱商事㈱、米国モリコープ・インクと共同で設立したインターメタリックス ジャパン㈱で生産を開始いたしました。2015年3月からインターメタリックス ジャパン㈱は当社の100%子会社とし、新しい経営体制の下、量産技術をさらに向上させ高歩留りの製造を行い、適用アイテムを増やしております。
タッチパネルの配線用材料として、優れた導電性と低反射率を併せ持つメタルメッシュ用 銅合金ターゲット材「スターメッシュ」を開発いたしました。タッチパネルの透明導電膜には一般的にITO(酸化インジウムスズ)が使用されておりますが、パネルの大型化に伴い、より導電性の高い材料が求められております。タッチパネルの入力検出に用いる導電線の材料をITOから網目状の金属に置き換えるメタルメッシュ技術がありますが、金属膜に見られる特有のギラツキを抑える必要がありました。
本製品はITOと同じプロセス(スパッタリング法)に適用可能であり、ガラス、PET樹脂など各種基板との密着性に優れる2桁以上導電性の高い配線を、プロセスを大幅に変更することなく反射率を10%まで抑えることが可能で、さらに銅主体の金属でありエッチングによる細線化も容易であります。
また、本製品はインジウム等の希少金属を使用していないため、ITOと比べて低コストでタッチパネルの生産が可能であります。
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は14億53百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
当社では,高硬度高耐食ニッケル基合金としてDSA760を開発し、ディーゼルターボチャージャーの可変機構部材などで拡販しております。今回、大型製品でもDSA760の高い高温硬度と耐高温腐食特性が得られる製造技術および熱処理方法を確立いたしました。これらの開発により、船舶用排気弁として国内ディーゼルエンジンメーカーでの実船検証試験でも、従来使用されているニッケル基合金の排気弁よりも、高温腐食による損耗速度の低下が確認されております。このDSA760排気弁の適用により既存のニッケル基合金の排気弁対比で、寿命が約2.5倍延長できる見込みと評価され、舶用エンジン排気弁素材として実用化が決定いたしました。今後は、本年度、当社渋川工場で新大型真空誘導溶解炉(25tVIM)が稼働予定であり、生産能力拡大により、小型部材から大型部材まで幅広い需要量拡大に対応できる体制が整います。
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。
当事業に係る研究開発費の総額は1億57百万円であり、当連結会計年度の主な成果としては次のものがあります。
温室効果ガスの排出量削減に対するニーズは年を追うごとに高まっており、機械事業部の製品である工業炉についてもその対策が求められています。機械事業部では2012年より新型省エネ燃焼システム「DINCS:Daido Innovative Neo Combustion System」の開発に取り組み、主力製品の一つであるSTC炉に対しリジェネレイティブバーナと同等のラジアントチューブ式燃焼システムとして省燃費性能を得るべく、その製造ノウハウの蓄積と基礎性能の確認に取り組んでまいりました。
DINCSは炭化珪素製3Dプリンティング技術を用いた熱交換器を搭載しており、それにより燃焼排ガス中の顕熱を燃焼予熱空気へ効率的に回収し、STC炉の省燃費性能の飛躍的な向上と温室効果ガスの排出量削減を果たすシステムです。2015年度はDINCSの発売とそれに向けた総仕上げの年と位置付け、実炉において燃費実績の採取を行うとともに、リジェネレイティブバーナ対比でのメンテナンスの大幅な軽減と炉内温度分布向上への寄与を確認でき、DINCSが市場のニーズに十分に応えられることが分かりました。
今後はDINCSの普及をより一層推し進め、地球環境の保護とお客様の永続的な発展に寄与してまいります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(平成28年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針につきましては、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、貸倒引当金、賞与引当金等の各引当金の計上、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っております。ただし見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社グループの当連結会計年度末の総資産は5,356億円と前期末に比べ529億円の減少となりました。
総資産の主な減少の内訳と要因は次のとおりであります。
・「たな卸資産」の減少134億円…主として原燃料市況の下落および生産量の減少に伴う減少。
・「投資有価証券」の減少164億円…主として保有株式の時価の下落による減少。
・「退職給付に係る資産」の減少129億円…主として年金資産の減少に伴う減少。
また、当社グループの当連結会計年度末の非支配株主持分を含めた純資産額は2,683億円と前期末に比べ240億円の減少となりました。
純資産額の主な減少の内訳と要因は次のとおりであります。
・「その他有価証券評価差額金」の減少113億円…主として保有株式の時価の下落による減少。
・「退職給付に係る調整累計額」の減少108億円…主として年金資産の減少に伴う減少。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は43.5%となり、1株当たり純資産額は545円26銭と前期末に比べ45円8銭減少しております。
当社グループの当連結会計年度の売上高は4,605億円と前期に比べ230億円の減収となりました。セグメント別の増減要因につきましては「1 業績等の概要」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の営業利益は、主原材料である鉄スクラップ価格の下落やエネルギーコストの低下等が寄与し、244億円と前期に比べ40億円の増益となりました。
当社グループの当連結会計年度の経常利益は251億円と前期に比べ33億円の増益となりました。これは、前期対比40億円の営業利益の増益等によるものであります。
当社グループの当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は67億円と前期に比べ41億円の減益となりました。これは、前期対比33億円の経常利益の増益と、特別損失としてソフトウエア開発中止に伴う損失55億円および環境対策引当金繰入額53億円を計上したこと等によるものであります。
当社グループの当連結会計年度の「営業活動によるキャッシュ・フロー」の収入は457億円と前期に比べ199億円の増加となりました。これは主に、経常利益の増加や、たな卸資産の減少を主因とした運転資金の圧縮によるものです。一方、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の支出は231億円と前期に比べ90億円の減少となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出の減少によるものです。以上を合計した「フリー・キャッシュ・フロー」は225億円となりました。
また、社債の償還による支出を中心として、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は201億円の減少となりました。
これらの結果、当連結会計年度の資金は、前期末に比べ19億円増加の337億円となりました。
今後の世界経済は、米国は良好な雇用情勢を背景に個人消費を中心に堅調を維持、欧州も緩やかな回復基調が続くと見込まれるものの、中国をはじめとする新興国経済は成長鈍化の傾向が継続し、全体としては緩やかな成長にとどまると予想されます。日本経済も、個人消費が伸び悩むなど足踏み状態が続いており、緩慢な成長にとどまると予想されます。中国の成長鈍化懸念、原油等資源価格の低迷による資源国経済の悪化懸念、為替変動リスクや地政学的リスクの高まりなど、今後の景気を下押しするリスク要因は多く、さらに鉄鋼業については、中国の過剰生産能力が大きな問題として顕在化してきています。これらは、今後、当社グループに影響を与えうる注視すべきリスクと認識しております。
需要先の動向として、日系自動車需要は、海外市場の緩やかな拡大に伴い、年度後半に向けて需要が増加すると考えております。一方、原油価格の低迷を背景にエネルギー関連の需要は弱く推移すると考えております。
このような経営環境の中、当社グループは、市場の変化・お客様の動向を常に注視し、その変化に即応していくとともに、中期経営計画で目標とした海外売上高の拡大に向けた施策を着実に実施してまいります。更なる品質の向上、継続的なコスト削減への取組み、デリバリー体制の強化も行い、経営基盤となるQCD競争力の強化にも努めてまいります。また、ターボ部材、磁石といった将来成長が期待される事業の拡大についても引き続き推進してまいります。