第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

グループ経営理念を「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」と定め、大同特殊鋼グループとして、素材または素材に関する技術をもって素材が秘めている可能性をひきだし、新たな価値を創造することで、人と社会の未知のニーズに応え、その発展につながるよう貢献し続けることを目指しております。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

今後の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されることで、世界経済の回復が継続すると見込まれます。当社におきましても、自動車関連を中心に一定の需要が見込まれますが、変異種の流行による感染の再拡大や半導体などの部材不足による自動車生産の減少、またウクライナ情勢を起因とした原材料価格の高騰など、収益を下押しする大きなリスクを内包した先行き不透明な環境と認識しております。このような状況の下、原価低減活動のさらなる推進や固定費の徹底的な圧縮策を引き続き推し進めることで、事業への影響が最小限となるよう努めるとともに、再生産可能な価格水準に向けた販売価格の改定を実施してまいります。

他方、中長期的な視点では、世界規模での地球温暖化抑制への取り組みが本格化し、CO排出量の削減を目的とした社会構造の転換が進展することが見込まれます。当社の主要需要先である自動車産業においては電動化が加速し、内燃機関自動車は2020年代半ばにピークアウトすることが想定されます。化石燃料からグリーンエネルギーへのシフトによる水素など新エネルギー市場の拡大が注目されております。またデジタル革命の加速により、情報通信などデジタル化を支える半導体産業は、今後も持続的な成長が見込まれます。

このような経営環境の中、2030年のありたい姿、および2023年度(2024年3月期)までの3年間を実行期間とする中期経営計画(大同特殊鋼グループ2023中期経営計画)を2021年6月に策定いたしました。2023中期経営計画では、2020中期経営計画の行動方針を深化させつつ、2030年のありたい姿を具現化するため、将来の環境変化に備えた事業活動を推進いたします。

 

<2030年のありたい姿>

当社を取り巻く外部環境が目まぐるしく変化するなかでも、経営理念である「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を実現するため、2030年のありたい姿として[高機能特殊鋼を極め、「グリーン社会の実現」に貢献する]を策定しております。当社グループは、これまで機能性に優れた素材でお客様の技術革新を支えてまいりました。この方針に変更はありませんが、これからの外部環境変化に適応するため、事業の強靭化を進め、環境変化への耐性を強化するとともに、高機能特殊鋼を極めることにより新しい社会ニーズに応えることで、グリーン社会の実現に貢献してまいります。

 

<2023中期経営計画行動方針>

①成長分野のビジネス拡大(将来を見据えた種まき)

今後の成長市場である、CASE(自動車)、半導体関連製品、グリーンエネルギー分野の需要を捕捉するための取り組みを強化いたします。

CASE関連においては、高周速対応減速機用歯車など特殊鋼鋼材については、これまでの高品質歯車用鋼の製造技術に関する知見に加え、特殊表面処理技術を組み合わせることによりさらに信頼性の高いソリューションを提供してまいります。また、主機・補機・センサ用磁石については、中津川先進磁性材料開発センターの最大活用により主機モータ用特殊配向磁石に加え、特徴あるセンサ用および補機用ボンド磁石で新たな需要を捕捉してまいります。

通信・情報分野で一層の急成長が期待される半導体関連につきましても、グループの幅広い高機能製品群でそのニーズを確実に捉えてまいります。

グリーンエネルギー分野においては、高温・高圧水素環境下で耐え得る対水素脆化用鋼の開発、工業炉用水素バーナーの実用化でそのニーズに確実に応えてまいります。

 

グリーンエネルギー分野、半導体関連製品においては、それぞれの新市場におけるニーズの探索および当社グループが保有するシーズを幅広く捉え、今後の製品戦略・拡販活動へ繋げていくため全社横断型ワーキンググループを設置しております。

 

②事業体質の強靭化(2020中期経営計画の深化)

外部環境変化への耐性強化、既存事業のプレゼンス拡大を図るため、営業サイドでは適正マージンの確保やポートフォリオ改革により高限利品を拡大してまいります。生産サイドでは堅調なステンレス鋼需要を捕捉するため、2020年中期経営計画に実行した戦略投資の補完として知多工場の製鋼部門を中心に生産上方弾力性改善投資を実行いたします。また長期的な内燃機関向け特殊鋼の需要減少への対応として主力工場間の生産集約、生産性向上投資、歩留向上等の損益分岐点引き下げに寄与する諸施策を今中期より実行し、生産効率向上およびコスト削減を進めてまいります。また生産体制についても、人員の最適配置・適正化、DX推進による省工数・省人化を図り、労働生産性の向上を目指します。

 

③海外展開拡大

東アジア市場を中心に海外での高機能ステンレス鋼、高合金、工具鋼の売上拡大を目指します。2021年8月にティムケンスチール社の中国営業拠点の全持分を取得いたしました。本件を契機に、ティムケンスチール社との協業関係をさらに深化させ、中国市場向けのSBQ製品(Special Bar Quality)のさらなる拡販および高合金や特殊ステンレス鋼の販売力強化に繋げてまいります。

また、海外規格対応による欧米市場の開拓、円安環境下を活かした自由鍛造品を中心とした海外需要の捕捉など、販売強化に向けた取り組みを加速いたします。

 

④ESG経営の推進

当社ではサステナビリティを経営の中核に位置付け、SDGsなど社会課題の解決による持続可能な社会の実現と、持続可能な企業価値向上の両立を目指しております。この取り組みをより強力に推進するため、2022年4月1日付でサステナビリティ委員会を設置するとともに、サステナビリティ施策を全社に展開・推進する専任組織としてサステナビリティ推進室を設置しております。

またESGへの取り組みについては以下のとおりであります。

環境の面では、2030年度でのCO排出量を2013年度対比で50%の削減を目指します。当社は2050年でのカーボンニュートラル実現を目指し、「Daido Carbon Neutral Challenge」を策定しましたが、その過程である2030年においては、自社・既存省エネ技術の全面展開、COフリー電源への切り替えにより、CO排出量削減を推進いたします。加えて、経団連と連携して脱炭素社会の構築に向けた「チャレンジ・ゼロ」のプロジェクト活動も推し進めることで、鉄鋼業界全体のCO削減にチャレンジしてまいります。

社会の面では、引き続き健康経営やダイバーシティの推進など、これまでの取り組みを深化させ、従業員を始めとした各ステークホルダーからの信頼性確保に努めてまいります。

ガバナンス面では、政策保有株式の金額を今中期経営計画期間において目標としていた純資産の20%以下まで縮減いたしました。今後はみなし保有株式を含め純資産の20%以下となるよう、さらなる縮減を目指すことで資本効率の向上に努めてまいります。また2022年6月24日をもって監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の体制を見直すことでコーポレート・ガバナンス強化に繋げてまいります。

 

<経営計画目標>

本計画で掲げた行動方針の遂行により、最終年度である2023年度において、以下指標の実現を目指します。

最終年度(2024年3月期)

営業利益

自己資本利益率(ROE)

D/Eレシオ

投資 3年累計

決裁ベース

鋼材売上数量

(単体)

配当性向

400億円以上

8.0%

0.50

850億円

1,200千t

30%目安

 

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクを、以下の表にて発生の可能性や時期、影響の大きさの観点から重要性が高いと判断している項目順に記載しております。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、または重要とは見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

項目

リスクの内容

主要な取り組み

 (1)事業環境の動向

発生可能性:高

影響度:大

 

〇経営企画部門による経済環境のモニタリング、事業計画の審査

〇競合に対する差別化、技術の向上

〇経営会議・投資検討会を通じた経営戦略、投資の妥当性の審議および収益獲得に向けたフォローアップ

〇CASE時代を見据えた機能製品事業の強化

・国内外の景気悪化、公共投資・民間設備投資の抑制、個人消費の低迷、特に当社グループの主要需要業界である自動車メーカーの減産、電動化の進展加速、当社グループの価格交渉力低下による経営成績および財政状態への影響

・需要環境の構造的変化による事業用資産の減損および戦略的投資を行なった事業の計画未達に伴う固定資産の減損

 (2)原料、エネルギーの価格変動および安定調達

発生可能性:高

影響度:大

 

〇製品価格転嫁の推進

〇製品価格の原材料サーチャージ制の実施

〇調達ソースの複数化、数量に柔軟性を持たせた契約の締結

〇調達先との密な情報交換

〇電力に関する個別相対取引契約

・価格の変動(鉄スクラップ、合金鉄、レアアース、電極や耐火物、電力、LNGなど)

・需給バランスの崩れによる調達の不安定化、電力使用制限の発生に伴う生産活動への支障

・ロシア・ウクライナ情勢長期化による一部品目の価格高騰、供給懸念

 (3)自然災害

発生可能性:中

影響度:大

 

○耐震性の強化などの防災対策、津波対策、BCM・BCP活動

・南海トラフ巨大地震や気候変動に伴う大規模洪水などの自然災害による知多工場、星崎工場の操業への甚大な影響

 (4)設備事故・労働災害

発生可能性:中

影響度:大

 

○停電時の二次災害防止などの設備投資を含めた事故防止対策の実施

〇製造現場を中心とした自主的な設備安全に関する改善活動

○安全研修会等により他社改善事例を社内へ展開

・特殊鋼関連を主とする大規模主要設備の、過酷な環境下での操業による重大な設備事故や労働災害の発生

 (5)環境規制・カーボンニュートラル

発生可能性:中

影響度:大

 

○社会貢献も含めた環境配慮の経営への取組み

○当社グループの事業活動に関連する各種法規制の洗い出し、および遵守状況のモニタリング

○国や群馬県をはじめとした各自治体および民間との協議の上、調査および措置を継続

〇継続的な省エネ、コスト改善の実行

・環境保全に対する法規制の強化・厳格化に伴う対応のための事業活動の制約、費用の発生

・当社渋川工場の鉄鋼スラグ製品および直下の土壌からの環境基準を超えるふっ素等の検出によって、追加的な対策が必要となった場合の、応分の費用負担発生

・CO削減対策費用の増大、再生可能エネルギー発電促進賦課金減免の縮小

 (6)法令・規範の変更

発生可能性:中

影響度:大

 

○法令その他の社会的規範の遵守、変更や厳格化への速やかな対応、公正で健全な企業活動の展開

○法的要求事項等で違反認定された事例の水平展開

○e-ラーニングシステムの導入

・労働、安全衛生、カルテル、輸出管理、個人情報保護、その他事業活動に関連する法令・規範の変更や社会の諸要求の厳格化による課徴金や行政処分の発生

 (7)人材

発生可能性:高

影響度:中

 

○採用HPの整備、就職情報サイトの活用、リクルーター制度整備

○階層別教育制度の拡充

○e-ラーニングシステムの導入

○働きがいのある職場づくり

・少子高齢化などによる必要な人材の確保、育成の未達

・各種ハラスメント防止やダイバーシティへの対応が不十分だった場合の人材定着率の低下

 

 

項目

リスクの内容

主要な取り組み

 (8)新型コロナウィルス

発生可能性:高

影響度:中

 

○出張自粛、マスク着用等を定めた感染症対策ガイドラインに沿った感染防止策の実施と本社部門の出社率管理

○リモート会議、テレワーク環境、サテライトオフィスの整備

○ワクチンの職域接種による感染予防処置の推進

・従業員の健康と安全への影響、社内でのクラスター発生による事業活動への影響

 (9)IT環境・情報セキュリティ

発生可能性:中

影響度:中

 

○サイバーセキュリティ体制の整備

○IT技術とデータの利活用推進

○レガシーシステム整備に向けた課題抽出と中長期方針策定

○情報管理強化に向けた組織横断的ワーキンググループ

・不正アクセスによる情報漏洩

・デジタル技術革新への対応遅延による競争力の低下

・基幹システムの肥大化およびブラックボックス化によるシステムトラブルの発生

(10)海外事業展開

発生可能性:中

影響度:中

 

〇現地情報のタイムリーな収集、関連グループを含めた迅速な情報共有

●海外法規の調査、駐在員管理強化

・海外における政治経済状況の混乱、法令、規制等の予期せぬ変更

・その他の社会的混乱等に起因する事業活動への弊害

(11)関係会社のガバナンス

発生可能性:中

影響度:中

 

○内部統制、重要法規の教育および本社監査部門による監査の実施

○各社監査役の会合、教育を通じた監査役監査の充実

○内部統制、リスクマネジメント等のグループ内啓蒙活動

○e-ラーニングシステムの導入

・関係会社における各種の不正行為や不適切な会計処理等の発生

(12)製品品質保証・製造物責任のリスク

発生可能性:低

影響度:中

 

○品質安定化の追求、厳格な検査・保証管理体制構築、損害保険加入等

・大規模な製造物責任賠償やリコールによる多額の費用発生や社会的な信用低下

(13)金融商品の価値変動

発生可能性:低

影響度:中

 

〇資産圧縮によるリスク低減

・投資先の業績不振、証券市場における市況の悪化による投資有価証券の価格下落

 

○:対応着手済、●:今後対応予定        

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)および(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。また、一部の連結子会社14社について、当連結会計年度より決算日を3月31日に変更、または連結決算日に仮決算を行う方法に変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が普及したことにより、経済活動の正常化に向けた動きが見られましたが、第4四半期以降はオミクロン変異株の発生による感染再拡大やウクライナ情勢を起因とする原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱が加速するなど、依然として不透明な状況が継続しております。

このような経済環境の中、特殊鋼の需要は、新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少した前年と比べ大きく回復しました。主要需要先である自動車関連の受注は、自動車生産の回復に加え、今後の更なる増産に備えた在庫補填の動きが見られましたが、足元では部品不足や新型コロナウイルス感染症の再拡大による生産調整により、回復のペースが鈍化しています。産業機械関連の受注は、国内外の景気回復に伴い堅調に推移しました。また半導体関連の受注は、5Gやデータセンター、車載向けなど幅広い需要が堅調に拡大し、高位な状況が継続しました。この結果、鋼材売上数量は前期比で増加しました。

一方、主要原材料である鉄屑価格は、国内需給のタイト化および国際価格の上昇により前期比で高騰し、ニッケルなどの各種合金類についても、グローバルでの需要増加や供給制約によって大幅な価格上昇が発生しました。また原油・LNG市況がひっ迫したことを受け、エネルギーコストも大きく増加しました。これらを含めたコスト上昇分については、原価低減活動により吸収を図るとともに、再生産可能な価格水準に向けた販売価格の改定にも取り組んでおります。

この結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は前期比1,169億44百万円増収5,296億67百万円、経常利益は前期比265億58百万円増益392億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比223億78百万円増益268億94百万円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

特殊鋼鋼材

構造用鋼は、主要需要先である自動車関連や産業機械向けの受注増加を受け、前期比で数量が増加しました。工具鋼も、自動車関連需要を中心に各業態で受注が高位となり、前期比で数量が増加しました。主要原材料である鉄屑価格は、国内需給のタイト化および国際価格の上昇により前期比で高騰し、エネルギーコストも原油価格の高騰により増大しました。

この結果、当連結会計年度における特殊鋼鋼材の売上高は、売上数量の増加および原材料価格の上昇を販売価格に反映したことにより前期比35.6%増加1,978億3百万円、営業利益は、前期比64億60百万円増益38億27百万円となりました。

 

機能材料・磁性材料

ステンレス鋼および高合金は、自動車関連や産業機械向けの受注増加に加え、半導体関連需要も高位で推移したことで、前期比で数量が増加しました。磁石製品は、自動車関連および半導体関連の需要増加により、粉末製品は、自動車関連を中心とした需要の増加により、売上高は前期比で増加しました。

この結果、当連結会計年度における機能材料・磁性材料の売上高は、売上数量の増加およびニッケルなど各種合金価格の上昇により前期比32.2%増加1,976億4百万円、営業利益は前期比144億77百万円増益266億50百万円となりました。

 

 

自動車部品・産業機械部品

エンジンバルブ部品・型鍛造品は、自動車生産の増加を受け、精密鋳造品は、自動車生産の増加に伴うターボ関連製品の需要が底打ちし、それぞれ売上高は前期比で増加しました。自由鍛造品は、航空機需要が調整継続しているものの、半導体関連や重電需要、舶用バルブが好調に推移し、売上高は前期比で増加しました。

この結果、当連結会計年度における自動車部品・産業機械部品の売上高は、売上数量の増加により前期比14.6%増加925億4百万円、営業利益は前期比70億88百万円増益49億79百万円となりました。

 

エンジニアリング

主に自動車部品向け熱処理炉を中心とした受注減少により、当連結会計年度におけるエンジニアリングの売上高は、前期比9.9%減少182億14百万円、営業損益は前期比21億35百万円減益12億77百万円の損失となりました。

 

流通・サービス

当連結会計年度における売上高は、連結子会社の決算期変更の影響もあり、前期比42.6%増加235億40百万円、営業利益は前期比10億48百万円増益28億34百万円となりました。

 

当社グループが目標とする経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。2023年度の当該指標の達成を目指し、行動方針として掲げております①成長分野のビジネス拡大、②事業体質の強靭化、③海外展開拡大、④ESG経営の推進を実施してまいります。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特殊鋼鋼材

200,505

+37.3

機能材料・磁性材料

201,268

+35.4

自動車部品・産業機械部品

94,362

+17.6

エンジニアリング

18,214

△9.9

合計

514,350

+30.2

 

 

(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、前期に比べ、当社グループの生産実績が著しく増加しており
ます。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響により減少していた自動車関連や
産業機械向けの受注が回復しているためであります。

 

② 受注状況

当社グループ(当社および当社の連結子会社)の受注・販売形態は、素材供給等のグループ間取引が多岐にわたり、また受注生産形態をとらない製品もあるため、セグメントごとに受注規模を金額あるいは重量で示すことは行っておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

特殊鋼鋼材

197,803

+35.6

機能材料・磁性材料

197,604

+32.2

自動車部品・産業機械部品

92,504

+14.6

エンジニアリング

18,214

△9.9

流通・サービス

23,540

+42.6

合計

529,667

+28.3

 

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手別の販売実績は、総販売実績に対する販売割合が100分の10以上の相手先が
ないため、記載を省略しております。

3 当連結会計年度において、前期に比べ、当社グループの販売実績が著しく増加しており
ます。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響により減少していた自動車関連や
産業機械向けの受注が回復しているためであります。

 

 

(2) 財政状態

当社グループの当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ626億80百万円増加7,281億87百万円となりました。総資産の増加の主な内訳は、「棚卸資産」の増加560億92百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」の増加150億57百万円、減少の主な内訳は、「現金及び預金」の減少91億72百万円、「有形固定資産」の減少81億45百万円であります。

総資産の増減の主な内訳と要因は、下記のとおりであります。

・「棚卸資産」および「受取手形、売掛金及び契約資産」は、原材料市況の高騰、堅調な需要への生産対応および売上増加等により増加しております。

・「現金及び預金」は、前期末では新型コロナウイルス感染症に伴う事業や金融環境の変化に対応するため増加させておりましたが、事業の安定および金融情勢の正常化に伴い平常水準に戻したため、当連結会計年度末では減少しております。

・「有形固定資産」は、設備投資を事業基盤再構築投資等に厳選したこと、自動車部品・産業機械部品事業において収益性が低下した事業用資産を当期に減損したことにより減少しております。

また、当社グループの当連結会計年度末の非支配株主持分を含めた純資産は、前期末に比べ256億50百万円増加3,650億4百万円となりました。純資産の増加の主な内訳と要因は、親会社株主に帰属する当期純利益268億94百万円の計上等による「利益剰余金」の増加220億85百万円であります。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は45.3%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前期末に比べ99億14百万円減少し、556億44百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、166億84百万円(前期は337億66百万円の獲得)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益407億46百万円、非資金損益項目である減価償却費267億97百万円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加508億93百万円、売上債権及び契約資産の増加238億96百万円、仕入債務の減少28億17百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、145億68百万円(前期比148億26百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出190億66百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、194億2百万円(前期比164億2百万円の増加)となりました。収入の主な内訳は、コマーシャル・ペーパーの増加370億円、長期借入れによる収入78億円、短期借入金の増加37億34百万円であり、支出の主な内訳は、長期借入金の返済による支出103億69百万円、社債の償還による支出100億円であります。

 

当社グループでは、原材料およびエネルギー価格の高騰により運転資金が増加していることから、原燃料コストの上昇に応じた販売価格の改定を進めるとともに、効率的な生産運営や原価低減活動、固定費の圧縮を推し進め、安定的なキャッシュ・フローを創出するよう事業活動を続けてまいります。設備投資資金は長期借入金や社債により、運転資金は短期借入金により安定的に調達することを基本方針としております。また、手元流動性の適正レベルは時々の環境を考慮し、弾力的に運営してまいります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

技術援助等を与えている契約

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約締結日

契約期間

大同特殊鋼㈱

(当社)

TimkenSteel Corporation

米国

特殊鋼製造・供給に関する協業テーマの推進

2007年1月16日

2007年1月16日から
2025年1月16日まで

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で319名であります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は5,785百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要な研究成果および研究開発費は次のとおりであります。

 

(1) 特殊鋼鋼材

主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および製鋼、精錬、凝固から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は1,437百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・耐高圧用途向け超高強度非調質鋼の開発

コモンレールなどディーゼルエンジン用の耐高圧部品では、燃費、環境性からさらなる高圧化が指向されています。また最近では、カーボンニュートラルに向けた、製造時の熱処理省略も求められています。当社では、鋼材成分を最適化することで、熱処理を省略しつつ、かつディーゼルエンジンとしては最高クラスの高圧にも耐えうる高強度非調質鋼を開発いたしました。本開発鋼は、一部の耐高圧部品に採用され、2021年から量産を開始しております。

 

(2) 機能材料・磁性材料

主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は3,226百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・DAT®57MのASTM登録

当社が開発した、最も幅広く使用されているTi-6Al―4V合金と同等の機械的特性を有しつつ、レアメタル(希少金属)のV(バナジウム)を含まないチタン合金DAT57Mが世界最大規模の標準化団体である米国試験材料協会ASTM Internationalの規格ASTMB348/B348M(チタン・チタン合金の棒およびビレットの規格)にGrade41として登録されました。今後、レアメタルフリー化などを通じて、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献してまいります。

・高信頼性のメタルメッシュ黒化膜用ターゲット材「STARMESH®-β1」

タッチパネルの表面電極、メタルメッシュ用黒化膜を成膜出来るターゲット材料を開発いたしました。従来の黒化膜よりも信頼性(長期変色耐性)が高いため、ITOに代わりタッチパネルのメタルメッシュ化が進むとされる車載ディスプレイや電子黒板などの用途に最適です。今後これらの用途への採用に向けてマーケティングを継続してまいります。

 

(3) 自動車部品・産業機械部品

主に当社が中心となり、エンジンバルブやガスタービンディスク等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は930百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・航空機エンジン向け新Ni基合金「M647」と製造プロセス開発(国際会議で発表)

航空機エンジン用タービンディスクの次世代新材料として新Ni基合金を㈱IHIと共同で開発いたしました。既存の類似合金より高温強度等の特性を向上し、実製品規模の製造プロセス技術も同時に開発いたしました。これらの成果は、世界的に権威のある国際会議Superalloys2020(2021年9月開催)にて発表しております。今後実用化へ向けた取り組みを継続してまいります。

・AIを活用した切削加工データの解析手法

近年発展しているIoT、AI技術を使用し、切削工程をリアルタイムで監視、そのセンシングデータを機械学習で解析することにより工具の異常検知や寿命予知をする基盤技術を開発いたしました。今後この成果を応用し、実操業ラインでの生産能率の向上、製造コストダウンへの貢献が期待されます。

 

 

(4) エンジニアリング

主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は191百万円であり、当連結会計年度の主な成果は次のとおりであります。

・ラジアントチューブ式水素燃焼バーナの開発

日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現に向け、温室効果ガスの排出量削減に対するニーズは年々高まっており、工業炉についてもその対策が求められています。

水素はその燃焼においてCOを全く排出しない、脱炭素化の実現に有効なエネルギーであることから、当社では2021年に水素を燃料とするラジアントチューブバーナの開発に着手し、自社内の実験装置を用いて燃焼テストを重ねることで、環境性能の確認に取り組んでまいりました。

本開発は、今後さらなる検証を重ね、来たる水素社会へ向け製品展開することで、地球環境の保護とお客様の永続的な発展に寄与してまいります。