文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
グループ経営理念を「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」と定め、大同特殊鋼グループとして、素材または素材に関する技術をもって素材が秘めている可能性をひきだし、新たな価値を創造することで、人と社会の未知のニーズに応え、その発展につながるよう貢献し続けることを目指しております。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
今後の経営環境は、欧米を中心とした金融引き締めや金融不安の高まりなどによる景気の下振れリスクに加え、ウクライナ情勢の長期化、台湾をめぐる米中対立などの地政学リスクを内包した経営環境が継続すると見込まれます。当社の主要需要先である自動車関連の需要は、半導体を中心とした部品の供給不足が徐々に解消され、2023年度後半にかけて緩やかに回復するものと考えております。一方、半導体関連、電気電子関係では2022年度末から在庫調整の動きが見受けられ、需要動向に関して慎重に見ていく必要があります。
このような状況の中、コスト面では地政学リスクによるサプライチェーンの混乱などにより原燃料や資材の価格がさらに高騰するリスクも想定され、引き続き徹底したコスト削減努力を継続するとともに、適正マージンの確保に努めてまいります。
中長期的な視点では、世界規模での地球温暖化抑制への取り組みが本格化し、CO2排出量削減を目的とした社会構造の転換が進展することが見込まれます。自動車産業においては電動化が加速し、内燃機関自動車は2020年代半ばにピークアウトすることが想定されます。化石燃料からグリーンエネルギーへのシフトにより、水素などが新たなエネルギー源として注目されております。またデジタル革命の加速により、情報通信などデジタル化を支える半導体産業は、今後も持続的な成長が見込まれます。
このような経営環境の中、2023年度は「大同特殊鋼グループ2023中期経営計画」の最終年度となります。中期経営計画の行動方針をさらに進め、2030年のありたい姿[高機能特殊鋼を極め、「グリーン社会の実現」に貢献する]を具現化することで中長期的な成長を目指してまいります。
<2030年のありたい姿>
現在、世界を取り巻く環境変化はかつてないほど大きく激しくなっております。またその動きはカーボンニュートラルの実現に象徴されるように、今後の地球環境に重大な影響を及ぼすものも少なくありません。そういった社会環境変化においても特殊鋼に求められる高い機能性には大きな期待と新たな要請が寄せられてくると考えております。
当社グループは経営理念を実践していくなかで、2030年のありたい姿を[高機能特殊鋼を極め、「グリーン社会の実現」に貢献する]と定め取り組んでまいりました。グリーン社会の実現には数々の克服するべき課題があり、また当社だけで達成できるものではありません。顧客との共創のなかで目指していくとともに、またサプライチェーンの最上流に位置することを念頭に、強い使命感を持って取り組んでまいります。
<2023中期経営計画行動方針>
①成長分野のビジネス拡大(将来を見据えた種まき)
今後の成長市場である、CASE(自動車)、半導体関連製品、グリーンエネルギー分野の需要を捕捉するための取り組みを強化いたします。高周速対応減速機用歯車など特殊鋼鋼材については、これまでの製造技術に関する知見を活かし、さらに信頼性の高いソリューションを提供してまいります。また、主機・補機・センサ用磁石については、中津川先進磁性材料開発センターの最大活用により特徴ある製品で新たな需要を捕捉してまいります。通信・情報分野で一層の急成長が期待される半導体関連につきましては、高温ガス腐食試験機を導入するなど、高耐食材料の開発強化により、グループの幅広い高機能製品群でビジネス拡大を推進してまいります。グリーンエネルギー分野においては、高温・高圧水素環境下で耐え得る対水素脆化用鋼の開発、工業炉用水素バーナの実用化などでそのニーズに確実に応えてまいります。
②事業体質の強靭化
鉄屑、ニッケル・モリブデンなど原材料市況の高騰に加え、原油高などによりエネルギーコストが上昇する中、営業サイドではサーチャージ制の導入拡大を進めるなど、適正マージンの確保を進めております。今後も、引き続き適正マージンの確保を進めるとともに、外部環境の変化に対応しながら成長分野におけるビジネス拡大を通じてポートフォリオ改革を推進してまいります。生産サイドでは長期的な内燃機関向け特殊鋼の需要減少への対応として、工場間生産集約、生産性向上、歩留向上等の損益分岐点引き下げに寄与する諸施策を実行し、生産効率向上およびコスト削減を進めてまいります。また生産体制についても、人員の最適配置・適正化、DX推進による省工数・省人化を図り、労働生産性の向上を目指してまいります。また、低収益事業への対応として、型鍛造製品およびハウジング製品の撤退など事業の選択と集中を進めてきました。今後、型鍛造事業においては、高速精密鍛造製品に経営資源を集中しCASE関連の新たな需要を捕捉してまいります。
③海外展開拡大
2021年8月に取得した中国子会社「大同斯蒂尓材料科技(上海)有限公司」を拠点として、東アジア市場を中心に海外での高機能ステンレス鋼、高合金、工具鋼の売上拡大を目指します。また、2023年度上期には、ベトナムにおいて工具鋼製品の新工場建設を予定しており、東南アジアでの工具鋼販売を拡大してまいります。また、海外規格対応による欧米市場の開拓、インド市場ではサンフラッグ社とのアライアンス活用など、各地域での販売強化に向けた取り組みを加速してまいります。なお、米国において、2023年3月に熱間鍛造金型製造事業の工場設備を取得し「Lexington Technologies Company LLC.」を設立しております。北米における製造拠点「OHIO STAR FORGE CO.」とのシナジーを発揮し、北米市場での自動車、エネルギー産業向け部品の収益拡大と競争力の強化を目指してまいります。
④ESG経営の推進
持続的な企業価値向上を目指し、ESG経営を推進するため、2023年1月にESG推進統括部を設置し、地球環境の保護、社会への責任と貢献、ガバナンスの強化に向け、各種の取り組みを強化しております。
気候変動への取り組みについては、2021年4月に、「Daido Carbon Neutral Challenge」を公表し、「2030年度でのCO2排出量を2013年度対比で50%削減、2050年でのカーボンニュートラル実現を目指す」という目標を掲げ、活動を推進しております。
社会への責任と貢献に関し、グループ人権基本方針を2023年2月に公表しました。今後は、グループにおける人権尊重の風土醸成に向けて、人権デューデリジェンスを推進してまいります。また、人的資本経営については、次期中期経営計画における経営戦略との融合を図るべく、当社グループにおける現状解析と目標設定を進めております。
ガバナンスの強化に関しては、業績連動型株式報酬制度の導入、政策保有株式の縮減などコーポレート・ガバナンス強化を進めてまいります。なお、政策保有株式については、2023中期経営計画中で、みなし保有株式含めた政策保有株式の純資産比率20%以下を目指し、縮減を進めております。2022年度は、6銘柄16億円を縮減し、2023年3月末の、政策保有株式(含むみなし保有株式)の純資産に対する比率は前期末対比1.3ポイント減少し、24.3%となっております。
<2023中期経営計画目標と2022年度実績>
2022年度の「営業利益」「自己資本利益率」は、自由鍛造品、半導体製造装置向けなどの高収益製品の拡大などポートフォリオ改革を進め、エネルギーコスト増大に対し適正マージン確保に努めてきたことなどにより中期経営計画の目標値を上回りました。2023年度においても、本計画で掲げた行動指針の遂行により、下記指標の実現を目指します。
*グループ通算制度、有価証券・固定資産売却益、固定資産減損損失の影響を除外
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社は、1916年の創業以来、特殊鋼をベースとしたモノづくりで社会からの要請に応え、その発展に貢献してきました。世界が大きな変革期を迎える中、未来社会からも評価され求め続けられる企業グループを目指し、2030年のありたい姿として“高機能特殊鋼を極め「グリーン社会の実現」に貢献する”を掲げております。
当社は気候変動対策や高機能製品供給を通じた「地球環境の保護」をマテリアリティの第一と考え、モノづくりによるサステナビリティへの貢献に取り組んでまいります。また人権の尊重、人的資本の強化、地域社会との共生といった「社会への責任と貢献」に対しても、責任ある一企業として実践し、取り組んでまいります。さらにマテリアリティの実践基盤としての「ガバナンスの強化」についても、積極的な取り組みを図ってまいります。
経営理念である“素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます”はこれらのサステナビリティに対する考え方に反映され、当社の企業活動として実践されております。
サステナビリティに関する事項を検討・審議する組織として、従来のCSR委員会を再編し、2022年4月より新たにサステナビリティ委員会を設置しました。当委員会は社長執行役員を委員長とし、ここで審議、決定した事項を取締役会に上程します。サステナビリティ委員会の事務局は、2023年1月に新設されたESG推進統括部に置かれております。
サステナビリティ委員会は以下の事項を取り扱います。
・サステナビリティ経営の基本方針およびサステナビリティ推進活動の基本計画の策定に関する事項
・全社および各部門、各委員会におけるサステナビリティ推進状況の確認に関する事項
・TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)において要求される気候変動リスク低減に向けた施策に関する事項
・CSR(人権、社会貢献活動、健康経営等)およびこれらに関わるガバナンスに関する全社方針、施策に関する事項
・統合レポートの編集および発行に関する事項

(リスク管理)
当社は、サステナビリティの管理プロセスとして、サステナビリティ委員会において、マテリアリティとそのマテリアリティごとのリスクと機会を特定し、それぞれの進捗管理等を実施してまいります。
サステナビリティ委員会において審議、決定された内容は取締役会に上程され、リスク管理を行っております。
なお、気候変動への取り組みにおいては、シナリオ分析を実施し、気候関連リスクの優先順位付けを行い、影響度の高い事項に注力して対策に取り組んでまいります。
①気候変動への取り組み
(戦略)
気候変動が当社に与えるリスク・機会とそのインパクトを把握し、当社の中長期的な戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的に、2030~2050年についてシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IAEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ※)を参照しております。リスク、機会の抽出は幅広く行い、「発生する可能性が高いもの」と「発生したときに影響が大きいもの」の観点から、当社の事業に及ぼす影響が高いリスクと機会を選定し、対策を検討しました。また、今回分析の対象としなかったリスク・機会についても、継続的に注視してまいります。
各リスクと機会への対策を検証した結果、脱炭素に向かう社会変容に対して、中長期経営計画の基本戦略を軸に、今後の成長市場であるCASE(自動車)、グリーンエネルギー分野向けの高機能材料や革新的な環境対応エンジニアリング製品を開発し販売拡大していくことで、企業価値を向上させていくことができると結論付けました。以上より、当社戦略はレジリエンスを有していると評価しました。
※1.5℃シナリオ :気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ
4℃シナリオ :気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ
TCFDシナリオ分析
(指標及び目標)
大同特殊鋼では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス(CО2)の総排出量を指標として削減目標を設定しております。
2021年4月にDaido Carbon Neutral Challengeを公表し、「2013年度対比2030年CO2排出量50%削減、2050年カーボンニュートラル実現を目指す」を目標として、CО2排出量削減活動を推進しております。
Daido Carbon Neutral Challenge


※CO2排出量は大同特殊鋼単体のSCOPE1+SCOPE2(エネルギー起源)
CO2排出量実績(2013年と2022年)の電力係数は契約電力会社の各年度の排出係数にて算定
②人的資本経営への取り組み
当社は経営理念である“素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます”を実現する人材像として、5つの行動指針を定めております。
<行動指針>
〔高い志を持つ〕 時代の先を読み、パイオニア精神を持つ
プロフェッショナルとして、自身のミッションに最後まで取り組む
〔誠実に行動する〕 相手の立場で考え、多様な価値観と存在を認め合う
ステークホルダーの期待に応える
〔自ら成長する〕 常に成長を意識して仕事に取組む
進んで経験を重ね自分を磨く
〔チームの力を活かす〕組織を超えてグループの知恵を結集する
スピード感をもち、協力してやり遂げる
〔挑戦し続ける〕 自由な発想で時代を切り開く
失敗を恐れず困難に立ち向かう
この5つの行動指針は創業107年の歴史を振り返り、当社の強み(Core competence)を生み出してきた人材の行動様式を端的にまとめたもので、我々にとってサステナブルな人的資本の姿であると考えております。変化の激しい時代にあっても素材に求められるニーズや可能性を追求する姿勢は我々の強みであり続けると考えております。これを実践し続けるための人的資本の確保を目指し、以下の施策を実践しております。
なお、今後、従業員には環境変化に対応するための新たな知識やスキル習得の促進を進め、人的資本経営の深化とともに事業戦略に合わせた指標及び目標を設定していきます。
a.人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針
(人材育成について)
当社の高品質な素材を安定して生産しつづける力の源泉は、高いスキルをもった信頼性の高い製造現場の人的資本です。当社は1952年に設立した入社採用者向け教育施設である「大同特殊鋼技術学園」を保有しており、特殊鋼製造のエキスパートとしての知識・技術の基礎を身に着けるとともに、社会人・企業人としての心構え、自立した生活の支援を行っております。技術学園における研修期間は1年間で、集中したカリキュラムの中で育成を図っております。
また、管理部門および営業・開発技術部門においても、「5つの行動指針を実践できる人材育成」を念頭に、各職能グレードで期待される具体的な行動様式を設定し、体系づけた上で教育訓練を実践しております。この内容は「能力開発ガイドブック」としてまとめられ、人材育成目標として周知されるとともに従業員の評価基準としても活用されております。職能グレード別教育の他にも将来の経営を担う中核人材を育成するための選抜研修、グローバル人材育成のための海外トレーニー・留学制度や各種の資格取得奨励など、各人の成長、挑戦を後押しする教育・訓練制度が揃っており、行動指針の〔高い志を持つ〕〔自ら成長する〕〔挑戦し続ける〕人材育成に努めております。
(ダイバーシティへの取り組み)
行動指針の一つである〔誠実に行動する〕には、“多様な価値観と存在を認め合う”という意味が込められており、当社のダイバーシティへの取り組み姿勢を表しております。少子高齢化の影響で優秀な人材を確保することが難しくなっていく中、性別、国籍、価値観、性的指向、障がいの有無など、お互いの違いを尊重し認め合える職場環境を整備することが不可欠となっております。当社では2014年にダイバーシティ推進プロジェクトを発足し、<ダイバーシティ推進3Step>としてStep1〔多様性の理解・受容〕、Step2〔多様性の活用・促進〕、Step3〔多様性による創造性の発揮〕を定め、これまで段階を踏みながら活動してまいりました。現在はStep2〔多様性の活用・促進〕を図っており、人事部内のダイバーシティ推進室を中心に活動推進しております。具体的には、個人、組織の成果の最大化、心身の健全化を図り、時代変化対応力に優れた多様な人材が活躍できる風土の形成と持続的に成長するための基盤構築を推進しており、今後も社員一人ひとりが「いきいきと働くことができる会社」を目指し、これからもダイバーシティ経営実現のための基盤構築に取り組んでまいります。なお、女性管理職については2030年までに人数を倍増(15人から30人)させる目標を定め、環境整備等に取り組んでおります。
b.社内環境整備に関する方針
(働き方改革への取り組み)
労働人口の減少や働くスタイルの多様化など、『働く姿』を取り巻く環境は大きく変化しております。当社においても従業員が「自分に合った働き方」を通じたワークライフバランスの実現が図れるよう「新しい働き方改革WG」を中心とした各種の取り組みを実践してまいりました。活動目的としては、生産性向上を図るための「価値を生み出さない時間を減らす」取り組みと、従業員が安心して自律的に働ける場の実現を目指した「働きがいのある職場づくり」としており、これらの活動を通じて行動指針に掲げた〔チームの力を活かす〕働き方を推進してまいります。
これまでの取り組みとしては、在宅勤務の拡大、会議の効率化、ペーパーレス化の推進といった各種の効率化・働く自由度拡充のほか、従業員が安心して自律的に働ける職場づくりや働きがい調査を通じた従業員とのエンゲージメントの充実、意欲の向上を図ってきました。また、コミュニケーション活性化を通じた職場での安心感の醸成を目的に、2021年度から「明日も行きたくなる会社をつくろうプロジェクト」を立ち上げ、職制や階層に対応した研修や職場毎のアプローチなど、知多工場をモデル職場として推進しております。
(安全・健康への取り組み)
当社は「安全と健康は幸せの原点であり企業経営の基盤である」という基本理念を掲げ、労働災害の撲滅と健康経営の推進に取り組んでおります。従業員が安心して働くことができる職場づくりと、一人ひとりが心身とも将来にわたって健康であり続けることは、人的資本経営の骨格です。当社では社長を頂点とした安全健康管理体制を整備し、専門組織である安全健康推進部を主体にグループ一体となった活動を継続しております。
取り組みの一例として2022年より各生産職場に安全教育に精通したベテランを「安全伝道師」として配置し、若年層や経験値の浅いメンバーへの現地指導、危険感受性の向上を図っております。また健康経営としては、メンタルヘルス・フィジカルヘルス向上のための4本柱〔感染予防/疾病予防、フィジカル、受動喫煙防止対策、メンタル〕をキーワードに取り組んでおり、最終目標として「心身活力を持って業務に取り組めている評価割合(※)50%以上」を目標に活動しております。
※健康診断時の問診表回答より評価割合は測定します
当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクを、以下の表にて発生の可能性や時期、影響の大きさの観点から重要性が高いと判断している項目順に記載しております。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、または重要とは見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
○:対応着手済、●:今後対応予定
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進み、緩やかに持ち直してまいりました。その一方で、ウクライナ情勢の長期化に起因する原燃料供給の制約や世界的な物価上昇、欧米各国の金融引き締めなどによる景気後退懸念、急激な為替の変動による混乱など景気の下振れリスクを内包した不透明な経営環境が継続しております。
このような状況の中、特殊鋼の主要需要先である自動車関連の受注は、半導体を中心とした部品の供給不足の影響などにより前期比で減少しました。同様に産業機械の受注も減少基調となりました。また、半導体関連の受注は、5Gの普及やデータセンターの建設・更新需要により堅調に推移しておりましたが、年度末にかけてはシリコンサイクルの弱含みによる在庫調整の影響が見受けられました。この結果、鋼材売上数量は前期比で減少しました。一方で、エネルギー関連、環境対応で需要が増加している自由鍛造品については、2016年以降、将来の需要増加を見越した戦略設備の投資効果により、その需要を捕捉することができており、高付加価値製品の受注が増加しました。
主要原材料である鉄屑価格は、国際価格の影響により高値で推移し、ニッケルなどの各種合金類については供給制約などにより前年を上回る価格で推移しました。また原油・LNG価格高騰により電力などエネルギーコストも増大しました。これらのコスト増大に対し、適正マージン確保のため、徹底したコスト削減および販売価格への反映に継続して取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の連結経営成績は、売上高は前期比488億97百万円増収の5,785億64百万円、営業利益は前期比100億4百万円増益の469億86百万円、経常利益は前期比89億21百万円増益の481億22百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比95億43百万円増益の364億38百万円となり、各利益において過去最高を更新しました。
なお、2023中期経営計画で掲げた「営業利益400億円以上」の指標に対しては、自由鍛造品、半導体製造装置向けなどの高収益製品の拡大などポートフォリオ改革を進め、エネルギーコスト増大に対し適正マージン確保に努めてきたことなどにより目標値を上回りました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材
構造用鋼は、主要需要先である自動車関連や産業機械向けの受注減少を受け、前期比で数量が減少しました。工具鋼も、自動車減産の影響により前期比で数量が減少しました。主要原材料である鉄屑やモリブデンなど各種合金類は、国際価格の影響により高い水準で推移し、また、エネルギーコストは原油価格の高騰により増大しました。
この結果、当連結会計年度における特殊鋼鋼材の売上高は、売上数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことにより前期比8.6%増加の2,147億70百万円、営業利益は前期比59億43百万円増益の97億71百万円となりました。
機能材料・磁性材料
ステンレス鋼および高合金は、自動車関連向け需要の減少に加え、半導体関連や電気電子関係では年度末にかけて在庫調整の動きがあり、前期比で数量は減少しました。一方で、ポートフォリオ改革の推進により戦略製品である半導体関連の高機能ステンレス鋼の数量は増加しており、内容構成は良化しています。磁石製品は、自動車減産の影響を受け、売上高は前期比で減少しました。粉末製品は、自動車減産により数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことで、売上高は前期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度における機能材料・磁性材料の売上高は、ステンレス鋼などにおいて売上数量が減少したものの、ニッケルなどの各種合金の価格上昇を販売価格に反映させたことにより前期比11.2%増加の2,197億24百万円、営業利益は前期比23億63百万円減益の242億86百万円となりました。
自動車部品・産業機械部品
エンジンバルブ部品および精密鋳造品は、自動車減産の影響を受け、それぞれ売上高は前期比で減少しました。また、型鍛造品は、自動車減産の影響により数量は減少したものの、原燃料市況の上昇を販売価格に反映させたことで、売上高は前期比で増加しました。一方、自由鍛造品は、重電需要、船舶用バルブが堅調に推移し、航空機需要も回復基調となったことから売上高は前期比で増加しました。
この結果、当連結会計年度における自動車部品・産業機械部品の売上高は、自由鍛造品の売上高増加により前期比9.4%増加の1,012億32百万円、営業利益は前期比32億38百万円増益の82億17百万円となりました。
エンジニアリング
CО2削減につながるカーボンニュートラル製品の受注拡大に加え、資材高騰に対応した見積り精度向上を図ることで、当連結会計年度におけるエンジニアリング部門の売上高は、前期比4.1%増加の189億56百万円、営業利益は前期比27億2百万円増益の14億25百万円となりました。
流通・サービス
当連結会計年度における流通・サービスの売上高は、前期比1.4%増加の238億81百万円、営業利益は前期比4億59百万円増益の32億93百万円となりました。
当社グループが目標とする経営指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。2023年度の当該指標の達成を目指し、行動方針として掲げております①成長分野のビジネス拡大、②事業体質の強靭化、③海外展開拡大、④ESG経営の推進を実施してまいります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
② 受注状況
当社グループ(当社および当社の連結子会社)の受注・販売形態は、素材供給等のグループ間取引が多岐にわたり、また受注生産形態をとらない製品もあるため、セグメントごとに受注規模を金額あるいは重量で示すことは行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手別の販売実績は、総販売実績に対する販売割合が100分の10以上の相手先が
ないため、記載を省略しております。
当社グループの当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ456億64百万円増加し7,738億51百万円となりました。総資産の増加の主な内訳は、「棚卸資産」の増加268億99百万円、「受取手形、売掛金及び契約資産」の増加24億79百万円、「電子記録債権」の増加63億25百万円、減少の主な内訳は、「有形固定資産」の減少34億52百万円であります。
総資産の増減の主な内訳と要因は、下記のとおりであります。
・「棚卸資産」は、主として原燃料市況の高騰により増加しております。
・「受取手形、売掛金及び契約資産」および「電子記録債権」は、原燃料市況の高騰に対して、販売価格への反映に取り組んだことにより増加しております。
・「有形固定資産」は、設備投資を事業基盤再構築投資等に厳選したこと、特殊鋼鋼材事業および自動車部品・産業機械部品事業において収益性が低下した事業用資産を当期に減損したことにより減少しております。
また、当社グループの当連結会計年度末の非支配株主持分を含めた純資産は、前期末に比べ404億74百万円増加し4,054億79百万円となりました。純資産の増加の主な内訳と要因は、親会社株主に帰属する当期純利益364億38百万円の計上等による「利益剰余金」の増加279億10百万円であります。
この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は47.6%となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前期末に比べ8億44百万円増加し、564億88百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、226億34百万円(前期は166億84百万円の資金の減少)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益493億63百万円、非資金損益項目である減価償却費260億54百万円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加257億32百万円、売上債権及び契約資産の増加79億97百万円、仕入債務の減少59億38百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、200億84百万円(前期は145億68百万円の資金の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出214億50百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、26億68百万円(前期は194億2百万円の資金の増加)となりました。収入の主な内訳は、長期借入れによる収入362億67百万円、社債の発行による収入100億円、短期借入金の増加20億75百万円であり、支出の主な内訳は、コマーシャル・ペーパーの減少210億円、長期借入金の返済による支出200億2百万円であります。
当社グループでは、原材料およびエネルギー価格の高騰や高付加価値品の拡大により運転資金が増加していることから、原燃料コストの上昇に応じた販売価格の改訂を進めるとともに、生産リードタイム短縮による棚卸資産の削減や原価低減活動、固定費等の圧縮を推し進め、安定的なキャッシュ・フローを創出するよう事業活動を続けてまいります。設備投資資金は長期借入金や社債により、運転資金は短期借入金により安定的に調達することを基本方針としております。また、手元流動性の適正レベルは時々の環境を考慮し、弾力的に運営してまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
技術援助等を与えている契約
当社グループは特殊鋼をベースにした高い技術力を背景に「素材の可能性を追求し、人と社会の未来を支え続けます」を経営理念とし、「新製品・新事業の拡大」「既存事業の基盤強化」のため、積極的な研究開発活動を行っております。現在、当社「技術開発研究所」を中心に、新製品、新材料、新技術の研究開発を推進しており、研究開発スタッフはグループ全体で300名であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
主に当社が中心となり、自動車用構造材料、工具鋼などの素材開発および溶製から製品品質保証までプロセス革新等の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は
自動車部品の軽量化のため、超ハイテン部品の適用が増加しております。超ハイテン成形に適したホットスタンプ工法では、金型への鋼板めっきの凝着が品質や生産性に悪影響を及ぼします。当社で鋼板めっき凝着のメカニズム解明と対策の検討を進めた結果、金型に高熱伝導率材料DHATM-HS1と大同DMソリューション㈱製特殊窒化を適用することで、汎用鋼SKD61を使用した場合に比べ、めっき凝着量を90%低減※できる技術を確立しました。本技術は、ホットスタンプ部品メーカーで採用され高い評価を得ております。(※当社で比較)
主に当社が中心となり、耐食・耐熱材料、高級帯鋼、接合材料、電磁材料等の素材開発および電子デバイスの研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は
ハイブリッド自動車のバッテリー電圧を上げる部品(リアクトル)をトヨタ自動車㈱、㈱豊田中央研究所、㈱デンソー、㈱ファインシンターと共同開発し、当社の粉末が最新のハイブリッドシステムにも採用されております。使用される金属磁性粉末は、当社が持つアトマイズ技術と粉末加工技術を応用し、独自開発技術を取り入れることで実用化に至りました。目標とする材料特性と部品性能を達成したことで、リアクトル部品の小型化が可能となり、部品コスト削減に貢献しております。適用車種の拡大に伴う増産対応を推進しております。
・大型の金型造形に対応するダイス鋼系3Dプリンタ用金属粉末「LTXTM」
DAPTM-AMシリーズの第二弾として、ダイカスト金型やプラスチック射出成形金型に適したダイス鋼系粉末LTXを開発、販売を開始いたしました。LTXは金型に広く用いられているSKD61(JIS鋼)をSLM方式の造形に適した組成に調整し、従来のダイス鋼系粉末では困難であった150mm角以上の造形を可能にいたしました。SKD61の鋼材で製造した金型と同等の金型性能が得られる他、特定化学物質のコバルトを含有しておりません。また、一部の3Dプリンタメーカーで造形テストを実施し、良好な結果が得られております。
・日産自動車㈱より2022年「Nissan Global Supplier Award - Global Innovation Award」を受賞
本賞は、商品力向上やブランド力向上に繋がる、サプライヤー企業の革新的な取り組みを表彰するもので、「VC-Turboエンジン溶射シリンダーボア用ステンレス鋼の開発」が日産自動車の業績に顕著な貢献をしたことが評価されました。当社の溶射ワイヤは、溶射被膜特性の向上を目的に、成分組成を適正化しワイヤ表面に”銅めっき”を施すことで、高耐食シリンダーボア溶射膜を実現、VC-Turboエンジンの大幅な燃費向上に貢献しております。
主に当社が中心となり、ターボチャージャーやエンジンバルブ等の自動車部品および各種産業機械部品の研究開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は
より高効率の次世代型地熱発電方式である超臨界型EGSに用いられる高強度-超高耐食合金の開発を開始いたしました。本開発は(米)Damorphe社の地熱井シール技術開発とのジョイントプログラムとして日本財団 - DeepStar 連携技術開発助成プログラムに採択され、当社開発の超高耐食合金を用いたEGS型地熱発電用部材の開発・評価を進めております。2022年度はラボスケールにて合金開発を完了し、次年度以降は本合金を用いた地熱発電部材試作品を製造し、Damorphe社と共同で耐久性評価を実施してまいります。
主に当社が中心となり、環境保全・リサイクル設備や省エネルギー型各種工業炉等の開発を行っております。当事業に係る研究開発費の総額は
当社と、㈱テツゲン、㈱グリーンテック、学校法人中央大学、および宮城県気仙沼市が共同で提案した表題の技術が、国土交通省の令和5年度下水汚泥革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)に採択されました。
本事業では、下水汚泥の活性炭利用等による高付加価値化の実現に向け、熱効率を高めた省エネ型超高温炭化システムによる活性炭代替材等の製造、および温室効果ガス排出量の削減効果、ならびにコスト削減効果の実証を行い、提案技術の普及拡大を図っていきます。
・ラジアントチューブ式水素燃焼バーナの開発
当社は、工業炉の脱炭素化に向け、水素を燃料とするラジアントチューブバーナを独自に開発し、水素混焼および専焼テストに成功いたしました。本バーナは、当社主力製品であるSTC炉などの熱処理炉への適用を目指して開発しております。今後、製品化に向けて実機相当レベルでの実証評価を推進してまいります。