第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは持株会社体制のもと、社会に貢献できる可能性をあらゆる角度から検討し、傘下の事業会社のそれぞれの特性と機能を活かし、活力と調和のとれたグループ経営を推し進めるとともに、世界市場をターゲットとした事業を展開してまいります。

 また、当社グループでは、2019年に創立75周年を迎えたことを機に、これまでの伝統を踏まえつつ、これからの当社グループの方針・理念をより明確にするため、あらたに下記のとおりMission, Vision, Yamato SPIRITを制定いたしました。

 


 

 鉄鋼事業・軌道事業ともに日本国内市場は成熟していることから、当社グループとしてこれからも更に発展していくために、需要が堅実な市場や今後インフラ投資の伸びが期待出来る新興国などに拠点を持ち、その国の成長に寄与していくと同時に成長の果実として収益を取り込んでいく所存です。このMission, Vision, Yamato SPIRITのもと、当社グループの成長の源泉が、海外事業にあることを改めて発信し、今後も海外事業を更に安定・発展・拡大させてまいります。そのためにも、モノづくり企業として技術、経営のベースである国内姫路の工場を当社の海外展開を支えるグループのマザー工場として位置付け、更なる基盤強化を推し進めるとともに、コスト競争力の強化、品質の安定と向上、デリバリーを含む顧客サービスの向上に不断の努力を続けてまいります。また、人材教育・育成にもより一層力を入れ、更なる事業の発展に努めてまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社は、世界的な経済構造の激しい変革に対応できる経営方針として、事業の一極化をさけ、主に海外に事業投資を行い、投資の分散化を進めてまいりました。健全な財務体質を維持しつつ、将来の成長分野へ投資する方針であり、キャッシュ・フローを重視した経営を行ってまいります。なお、当社グループの業績は、製品販売価格と原材料価格の変動に大きく影響され、各々の市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境に大きく影響を受けることから、中長期の収益計画は作成しておりません。

 短期的な業績の見通しにつきましては、中国の経済活動再開による鉄鋼需要回復の期待があるものの、一方で世界的なインフレ長期化や米中対立など世界景気の下振れ懸念が続いております。当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材の需要は全体的に盛り上がりに欠けるものの、中間材も含め販売数量確保に努めることで、グループ総販売数量は概ね前期並みを見込んでおります。

 

 以上を踏まえ、次期の業績予想につきましては、売上高は160,000百万円、営業利益は9,500百万円、経常利益は68,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は48,000百万円を予想しております。

 

 なお、現時点での各国・地域の事業状況の前提は以下のとおりとしております。

 

日本
 形鋼需要は再開発プロジェクト及び半導体工場や物流施設など大型建築案件を中心に引き続き堅調に推移する見
通しであり、土木関連も引き続き堅調な需要が期待されます。
 販売面では需給が引き締まった状態が続くなか、原料価格の高止まりやエネルギー価格、物流コストの上昇など
コスト高を反映した販売価格の浸透に努めてまいります。なお、圧延設備の更新工事を計画的に順次実施すること
に伴う生産・販売数量減の影響を織り込んでおり、前期比で減収減益を予想しております。


タイ
 タイ国内景気は回復基調にあり、インフラ投資を中心に建設活動が上向き、形鋼需要は徐々に回復する見込みで
す。一方、ASEAN市場では中国メーカー等との厳しい競争環境が継続し、販売数量及び販売価格が落ち込むことを織
り込んでおり、業績につきましては、前期比で減収減益を予想しております。


米国
 インフレによる経済の先行き不安が続くなか、半導体、電気自動車及び再生可能エネルギー関連の建設需要は堅
調ながら、流通顧客向け等は需要の伸び悩みが懸念されます。業績につきましては、販売価格が過去にない高値圏
で推移した前期に比べ減益も、需給が引き締まった状態は続き、高収益を確保する見込みです。


中東
 中東諸国は原油高を背景に財政状態が改善し、ビジネス活動の活発化が期待されております。インフラ投資など
建設需要も回復基調であり、引き続きフル生産を見込んでおります。業績につきましては、先行き不透明感もある
ことから、販売価格の下落を織り込んでおり、連続黒字であるものの前期比で減益を予想しております。


ベトナム
 経済回復とともに公共投資予算が増加するなど、形鋼需要の回復が期待されますが、中国経済への依存度が高く、先行き不透明感があります。業績につきましては、販売数量増により前期比若干の増益で引き続き黒字を予想しております。


韓国
 金融引き締めの影響による不動産市況の軟化が懸念され、鉄筋需要は減少する見込みです。業績につきましては、販売数量減及び販売価格下落により、営業利益ベースでは前期比で減益を予想しております。

 

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、グローバルな鉄事業を通して、国際社会の発展や豊かな地域社会の実現に貢献するため、更なる事業成長を図るとともにサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを継続してまいります。

 更なる事業成長に向け、当社グループは、成長の源泉である海外事業を更に安定・発展・拡大させていく所存です。既存の海外事業拠点に於ける事業の良質化に向けた取り組みの深化に加え、将来に向けた新たな成長投資にも積極的に挑戦していくと共に、それを支える人材育成に一層注力して参ります。そのためにも、グループのマザー工場であるヤマトスチールにおいて、最新の技術・設備を導入し、安全性の向上、コスト競争力の強化、品質の安定と向上に取り組み、国内事業の基盤強化を推し進めるだけでなく、そこで培ったノウハウをグループ展開して参ります。これら取り組みの一環として、圧延ライン更新などの戦略的設備投資をここ数年掛けて実施する計画としております。

 海外におきましては、成長市場であるASEAN地域を米国事業に次ぐ第二の収益の柱に育成すべく、ASEANでの形鋼300万トン体制構築を目指してまいります。具体的には、既存拠点であるタイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドを当社ASEAN展開のマザー工場と位置付け、技術力の向上と競争力の強化を図るために圧延ラインの戦略的更新を計画しております。また、ベトナムのポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニーにおきましては、操業改善の継続に加え、今後成長が見込まれるベトナム国内の形鋼需要に対応すべく、上工程の製鋼能力の余剰を活用した中小型形鋼圧延ラインの増設を合弁パートナーとともに検討していく所存です。これら既存の海外拠点の充実に加え、M&Aを通じたASEAN地域での新拠点の獲得にも積極的に取り組んでまいります。

 なお、当社グループにおきましては従来から鉄鋼製品製造会社間で技術会議を定期的に開催し、技術情報の交換と技術向上に努めておりますが、人材育成面や更なる技術交流の機会を創出していくためにも、海外の関係会社と姫路のヤマトスチールとの間でエンジニアの交流等を一層活発化させることでグループの技術情報の共有及び人材の底上げを図り、競争力の強化にも努めていく所存です。

 当社グループはサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与して参ります。2025年度をターゲットとした「サステナビリティ中期計画」を策定しており、中期的な視点から当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めて参ります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ基本方針

大和工業グループは、「鉄で未来を 未来の鉄を」をミッションに掲げ、鉄事業で新たな価値を創造し豊かな社会の実現に貢献することを目指しています。この理念の下、当社はサステナビリティへの取り組みを重要な経営課題と位置づけ、事業活動を通じて各国・各地域の発展と人々の未来を支え、持続可能な社会の実現に寄与していきます。

◆ マテリアリティの特定と取り組み推進

当社は、サステナブルな社会の実現と、当社グループの持続的成長・企業価値の向上を両立するサステナビリティ経営を実現するために、当社グループ及びステークホルダーにとって重要度が高いと考えるテーマをマテリアリティとして特定しています。マテリアリティは中・長期的にリスクまたは機会となる優先的に取り組むべき課題であることから、これらを当社の経営戦略やサステナビリティ中期計画の中に組み込み、事業活動を通じて本方針を実践します。

◆ 当社のサステナビリティ経営

当社は、サステナビリティ経営を「事業基盤である環境・社会を維持しながら企業が持続的に成長すること」と定義し、以下の各点に取り組んでまいります。

1 長期に亘り市場から求め続けられること

市場・経営環境を十分に見極め、将来予測に基づき迅速かつ適切に対応し、競争力の維持・向上とサステナブルな社会の実現に取り組みます。

2 供給(原材料・人材・知財)を長期的に維持すること

鉄スクラップを資源として活用し新たな鉄鋼製品として蘇らせるリサイクル事業を通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実践します。

多様なプロフェッショナル人材が国籍、性別、年齢を超えてチームワークを発揮し、持続的に高付加価値な製品・サービスを創出できるよう人材育成に取り組みます。

鉄・軌道のプロフェッショナルとして、鉄鋼事業・軌道用品事業におけるモノづくりの技術を一層進化させ、社会・環境課題の解決と経済価値の創造を両立します。

3 社会から信頼されること

世界基準の製品・サービスを徹底した安全のもと提供します。

高い倫理観を持ち、公正・誠実に判断・行動します。

 

 

(2) サステナビリティ推進体制(ガバナンス)

当社グループは2020年8月、社長を委員長とし、独立社外取締役を含む取締役がサステナビリティ委員として構成する「CSR委員会(現・サステナビリティ委員会)」を設置しました。

サステナビリティ委員会のもと、環境・社会・ガバナンスの各部会において、サステナビリティ中期計画で定めたテーマを中心に当社グループのサステナビリティへの取り組みを具体的に推進し、持続的な成長を支えるためのリスクと機会への対応について積極的に進めてまいります。また、サステナビリティ委員会運営規則を制定し審議決裁に係る整備を実施、事務局も設置してサステナビリティ活動状況の管理体制も確保しています。

2022年度のサステナビリティ委員会は3回開催されました。

 


 

(3) リスク管理

当社グループは、定期的に開催されるサステナビリティ委員会において審議されたサステナビリティに関する事項を、大和工業株式会社の取締役会または経営会議に報告し、取締役会・経営会議は事業計画や年度予算などを検討する際、サステナビリティ課題が経営に与えるリスク、機会といった影響を考慮し判断しています。

当社グループは、自社のサステナビリティへの取り組みの現状から短期と中長期の時間軸で把握した課題を「ステークホルダーにとっての重要度」と、リスク・機会の観点による「大和工業グループにとっての重要度」の2軸で総合的に評価し、さらに有識者(2名)に妥当性を確認いただき、サステナビリティ課題のリスク・機会を評価しています。ステークホルダー・当社グループ両者にとって重要度が高いテーマをマテリアリティとして特定し、サステナビリティ委員会で審議した上で承認されました。特定したマテリアリティについて、中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定したサステナビリティ中期計画を策定し、リスク・機会への対応を進めております。

 

 

(4) マテリアリティの特定

① マテリアリティ特定プロセス

グループ各社のそれぞれの担当部署にてサステナビリティ課題を抽出し、対応してきましたが、グループとして優先的に取り組むべき課題の特定が重要であると考え、以下のとおり、マテリアリティ(最重要テーマ)を定めました。

 


 

② 特定したマテリアリティ

上記のプロセスを経て、環境(Environment)、社会(Society)において、以下のとおりマテリアリティを特定しました。ガバナンス(Governance)は企業経営の基盤と位置付けています。

 


 

(5) 戦略・指標及び目標

サステナビリティ中期計画

特定したマテリアリティについて、2025年度をターゲットとした中期的な目標と、それを実現するための短期的な年度目標を設定しました。これに基づき、PDCAを回し、推進していくとともに、サステナビリティ委員会での検討を経て深化させていきます。

 

 


※1 特段の記載が無い限り、大和工業グループにとって最も影響の大きい鉄鋼事業を対象とした記載となります。

※2 日本政府の削減目標に従い2013年度を基準年としています。

※3 Scope1・2合計を対象。電炉は事業の特性上、大量の電力を使用することから、電力会社の電源割合の変動による影響を大きく受けます。

※4 エコリーフ及びカーボンフットプリント認証

 

その他、サステナブルな社会の実現に向けた取り組みについては、当社ホームページをご参照ください。

(https://www.yamatokogyo.co.jp/yamato/yamato1/csr/index.html)

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中東合弁事業のリスク

当社は、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。2007年に中東地域への進出を決定し、中東事業の合弁パートナーであるFoulath社と共に、2009年にバーレーンにスルブカンパニーBSC(c)(以下、SULB)を設立し、主にH形鋼の生産・販売のため、直接還元鉄から製鋼、圧延の一貫工場を建設いたしました。また、Foulath社と共に2011年には特別目的会社を通じてサウジアラビアの中小型形鋼メーカーの資産買収を行い、ユナイテッド・スルブカンパニー(“サウジスルブ”)LLC(以下、Saudi Sulb)を設立し、中東地域での合弁事業を拡大いたしました。

SULBは2013年7月末より商業生産を開始し、早期にフル生産体制を確立いたしましたが、中東地域での公共投資の低迷、安価な輸入品の流入、政府補助カットに伴う湾岸諸国での電気、ガス、水道価格の実質上の値上げによるコスト増などその経営環境は当初想定していなかった様々な要因の影響を受けてきました。直近は世界的な鉄鋼需要の引き締まりを受け、GCC域外からの輸入材の圧力低下や鉄スクラップ高を背景とした鉄鋼製品・半製品の価格上昇など市場環境は改善傾向にあります。また、原油高を背景に中東諸国の経済情勢が上向き、公共投資などの建設需要も回復基調にあり、販売数量も増加し、初の連続黒字計上を果たしました。しかしながら、世界景気の減速懸念など、業績の下振れ要因もあり、経営環境は依然として楽観視できる状況には至っておりません。また、Saudi Sulbにおいても同様の状況となっております。

当社は中東合弁事業に多額の投資(貸付、債務保証含む)を行っております。業績は改善傾向にあり、金融機関への借入金返済に伴う債務保証額の減少など、当該リスクは軽減してきているものの払拭できる状況には至っておりません。今後、経営環境の変化により、中東の営業活動に伴う損失に加え、多額の投資損失が発生した場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 海外進出に潜在するリスク

 当社グループの生産及び販売活動は、国内のみならず、米国、タイ、韓国、バーレーン、サウジアラビア並びにベトナムで行われ、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しております。これらの海外市場への事業進出においては、各国で発生する恐れのあるテロ、戦争、その他の要因による社会的混乱により関係会社の業績と財務状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国での予期し得ない政治又は法環境の変化、経済状況の変化等により、事業の遂行に問題が生じる可能性もあります。

 

(3) 製品販売価格と主原料価格の変動

 当社グループの主力である鉄鋼事業の業績は、製品販売価格と主原料であるスクラップ価格の変動に大きく影響されます。また、SULBでは当社グループで唯一、鉄鉱石ペレットを主原料としております。これらの市場価格は、国内外の経済情勢をはじめ外部環境により大きく影響を受ける可能性があります。

 

 

(4) 為替レートの変動

 当社グループは、世界市場をターゲットとして、グローバルに事業を展開しており、在外子会社、関連会社等の業績が連結の経営成績に大きく影響を及ぼします。連結財務諸表は、各国の現地通貨を円換算して作成しているため、為替レートの変動により財務内容に影響を及ぼします。また、当社グループが保有する現金及び預金のうち、外貨の占める割合は高く、一般に、他の通貨に対する円高は、当社に悪影響を及ぼし、円安は当社に好影響をもたらすことになります。なお、為替レートの変動による為替換算調整勘定の増減が包括利益並びに純資産に大きく影響を及ぼしますが、為替換算調整勘定は在外子会社等を保有することで生じる連結財務諸表の報告上のものであり、当社の業績そのものを左右するものでなく、今後とも引き続き海外事業の展開を続ける方針であることから為替換算調整勘定の変動に対してヘッジは行っておりません。

 

(5) 電力リスク

 当社グループはグローバルに事業を展開する電炉メーカーであり、大量の電力を使用する当社グループにとって、大幅な電力単価の引上げや電力使用制限があれば、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 気候変動リスク

 気候変動リスクにつきましては、原材料、電力等エネルギー、水等のコストが上昇、または供給が不安定になる可能性及びカーボンプライシングなどに伴い燃料価格が高騰し、コストが上昇する可能性などがあります。

 詳細につきましては、当社ホームページをご参照ください。

 (https://www.yamatokogyo.co.jp/yamato/yamato1/csr/environment.html#anc02)

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度における当社グループの経営環境については、ウクライナ問題の長期化、世界的な資源価格の高騰及び中国経済減速等の影響により、世界的な鋼材需要・市況の落込みが見られました。このような環境のなか、当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材の需要・価格への影響は、当社がグローバルに事業を展開している国・地域別に見ますと、米国・日本・中東の需要は期を通じて底堅く推移しましたが、中国経済との連動性が高いASEAN地域では下期以降、軟化傾向となりました。しかしながら、主原料の鉄スクラップ価格が4月をピークに値下げに転じるなか、各拠点において鋼材マージンの改善及びコスト低減に努めたことで、業績は総じて順調に推移しました。 

 

日本におきましては、中小建築案件は建設資材価格高騰の影響により低調であったものの、都市再開発や物流施設、半導体工場などの大型建築案件を中心にH形鋼等の需要は底堅く推移しました。ヤマトスチールにおきましては、昨年より高炉メーカーが鋼板等の製品に注力するなか、新規顧客の開拓や大型サイズの生産・販売強化に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼を中心に受注量を確保し、販売数量は前期比で増加しました。営業利益につきましては、5月以降下落基調であった鉄スクラップ市況は8月に底を打ち、エネルギー価格は期初から上昇基調が続きましたが、販売価格の押上げにより鋼材マージンが改善し、前期比で大幅な増益となりました。

 

連結子会社を有するタイ、また持分法適用関連会社を有する米国、バーレーン、サウジアラビア、ベトナム、韓国におきましては、いずれも2022年1月~12月の業績が当連結会計年度に反映されます。

 

タイの連結子会社サイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッド(SYS)におきましては、タイ国内のH形鋼等の需要は大規模公共投資を中心に回復の兆しも見られましたが、鉄スクラップ市況の下落に伴い、鋼材市況の先安を見越した顧客が買い控えるなど全体的に盛り上がりに欠け、販売数量は伸び悩みました。輸出市場ではASEAN域内の建設活動が回復傾向にあるなか、中国・韓国製品の流入が比較的低水準であった上期において販売数量を伸ばしましたが、下期に入り、競争環境が徐々に厳しくなりました。営業利益につきましては、販売数量の減少により前期比で減益となりましたが、鉄スクラップ市況の下落時も販売価格維持に努めたことで鋼材マージンは改善し、高水準の利益を確保しました。

 

米国の持分法適用関連会社ニューコア・ヤマト・スチールカンパニー(NYS)におきましては、ウクライナ問題や中国経済減速の米国経済への影響は他地域に比べ限定的である一方、インフレが景気の押し下げ要因となっております。経済の先行き不安等により、年末にかけて流通顧客は発注に慎重な姿勢も見られましたが、半導体や電気自動車関連工場など大型工場建設案件を中心に形鋼需要は底堅く推移し、総じて需給が引き締まった状態が続いております。下期は鉄スクラップ市況の下落等により、鋼板等の販売価格が下落し、形鋼市況も軟化傾向となりましたが、期を通じて高水準の鋼材マージンを維持し、業績につきましては、前期比で大幅な増益となりました。

 

中東の持分法適用関連会社スルブカンパニー(SULB)におきましては、ウクライナ問題等の影響により油価は高値で推移し、GCC域内の経済情勢は上向いております。インフラ投資など建設活動も回復基調にあるなか、輸出を含めた販売面の強化に努め、製品販売数量は大幅に増加しました。国際的に鉄スクラップ市況が上昇基調の間は鉄鋼製品・中間材の販売価格はともに高値で推移し、収益性が高まりました。鉄スクラップ市況の反転に伴い販売価格も下落基調となりましたが、販売数量の増加により、業績につきましては、前期比で大幅な増益となりました。

 

 

ベトナムの持分法適用関連会社ポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニー(PY VINA)におきましては、新型コロナウイルス関連の規制撤廃後、経済活動の回復に伴い形鋼需要も徐々に増加しておりましたが、中国経済の減速や不動産市場の悪化の影響により回復ペースは鈍化し、下期に入り販売数量は伸び悩みました。業績につきましては、鋼材マージンの改善により一定の収益を確保したものの、販売数量の減少により、前期比で減益となりました。

 

韓国の持分法適用関連会社ワイケー・スチールコーポレーション(YKS)におきましては、住宅供給拡大政策により、上期の鉄筋需要は比較的堅調に推移しましたが、下期に入り、徐々にインフレと金利上昇の影響を受け、販売数量は前期比で減少しました。業績につきましては、販売数量は減少したものの、現地パートナーの大韓製鋼社との製販両面での連携強化や高水準の鋼材マージン確保により、営業利益ベースでは増益となりました。

なお、前連結会計年度において、YKSが韓国公正取引委員会より審査報告書を受領しておりました件につきまして、当連結会計年度において、課徴金の確定を受け、追加損失額1,794百万円(持分法による投資利益のマイナス594百万円及び公正取引法関連損失(特別損失)1,199百万円)を計上しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※7 公正取引法関連損失」をご参照下さい。

 

なお、当連結会計年度の経営分析の結果は以下のとおりです。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高180,438百万円であり、前連結会計年度に比べ30,408百万円増加しました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の売上原価148,755百万円であり、前連結会計年度に比べ24,967百万円増加しました。また、販売費及び一般管理費は14,869百万円であり、前連結会計年度に比べ1,918百万円増加しました。

 

(営業外収益、営業外費用)

当連結会計年度の営業外収益は73,857百万円であり、前連結会計年度に比べ29,219百万円増加しました。これは、主に持分法による投資利益が66,258百万円と前連結会計年度に比べ25,909百万円増加したことによります。また、営業外費用は175百万円であり、前連結会計年度に比べ106百万円減少しました。

 

(特別利益、特別損失)

当連結会計年度の特別利益は19百万円であり、特別損失は1,278百万円でありました。

 

(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税法人税等還付税額及び法人税等調整額の総額は21,030百万円であり、前連結会計年度に比べ7,370百万円増加しました。

 

(非支配株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益2,887百万円であり、前連結会計年度に比べ909百万円減少しました。

 

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比30,408百万円増180,438百万円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度比3,522百万円増16,813百万円、経常利益は前連結会計年度比32,847百万円増90,494百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比25,400百万円増65,317百万円となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新しております。

 

 セグメントの業績は、次のとおりです。

① 鉄鋼事業(日本)

中小建築案件は建設資材価格高騰の影響により低調であったものの、都市再開発や物流施設、半導体工場などの大型建築案件を中心にH形鋼等の需要は底堅く推移しました。ヤマトスチールにおきましては、昨年より高炉メーカーが鋼板等の製品に注力するなか、新規顧客の開拓や大型サイズの生産・販売強化に製販一体となって取り組み、主力の物件向けH形鋼を中心に受注量を確保し、販売数量は前期比で増加しました。営業利益につきましては、5月以降下落基調であった鉄スクラップ市況は8月に底を打ち、エネルギー価格は期初から上昇基調が続きましたが、販売価格の押上げにより鋼材マージンが改善し、前期比で大幅な増益となりました。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比15,518百万円増72,873百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比6,355百万円増8,701百万円となりました。

 

② 鉄鋼事業(タイ国)

タイ国内のH形鋼等の需要は大規模公共投資を中心に回復の兆しも見られましたが、鉄スクラップ市況の下落に伴い、鋼材市況の先安を見越した顧客が買い控えるなど全体的に盛り上がりに欠け、販売数量は伸び悩みました。輸出市場ではASEAN域内の建設活動が回復傾向にあるなか、中国・韓国製品の流入が比較的低水準であった上期において販売数量を伸ばしましたが、下期に入り、競争環境が徐々に厳しくなりました。営業利益につきましては、販売数量の減少により前期比で減益となりましたが、鉄スクラップ市況の下落時も販売価格維持に努めたことで鋼材マージンは改善し、高水準の利益を確保しました。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比14,878百万円増97,331百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比1,989百万円減10,735百万円となりました。

 

③ 軌道用品事業

当事業の売上高は、前連結会計年度比687百万円減6,491百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比282百万円減250百万円となりました。

 

④ その他

その他の売上高は、前連結会計年度比699百万円増3,742百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比42百万円減129百万円となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は以下のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

73,432

+24.7

鉄鋼事業(タイ国)

96,450

+9.2

軌道用品事業

6,600

△7.2

その他

3,180

+28.8

合計

179,663

+14.6

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

② 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

71,693

+5.3

15,058

△7.3

鉄鋼事業(タイ国)

95,840

+17.7

6,963

△17.6

軌道用品事業

6,574

△2.6

911

10.0

その他

3,136

+25.9

81

△12.9

合計

177,245

+11.6

23,014

△10.1

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

72,873

+27.1

鉄鋼事業(タイ国)

97,331

+18.0

軌道用品事業

6,491

△9.6

その他

3,742

+23.0

合計

180,438

+20.3

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年4月1日

   至 2022年3月31日

当連結会計年度

(自 2022年4月1日

    至 2023年3月31日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

阪和興業㈱

18,485

12.3

20,982

11.6

 

 

 

(2) 財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は238,243百万円であり、前連結会計年度に比べ70,532百万円増加しました。増加の主な要因は、現金及び預金の残高が62,705百万円増加したことによります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は276,756百万円であり、前連結会計年度に比べ29,539百万円増加しました。増加の主な要因は、出資金の残高が23,316百万円増加したことによります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は21,498百万円であり、前連結会計年度に比べ2,086百万円増加しました。増加の主な要因は、未払法人税等の残高が1,127百万円増加したことによります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は23,289百万円であり、前連結会計年度に比べ3,459百万円増加しました。増加の主な要因は、繰延税金負債の残高が3,395百万円増加したことによります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は470,211百万円であり、前連結会計年度に比べ94,525百万円増加しました。増加の主な要因は、利益剰余金の残高が49,449百万円増加したことによります。

また、自己資本比率は85.6%であり、前連結会計年度に比べ1.2ポイント増加しております。

 

(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローが52,654百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローが10,346百万円減少し、財務活動によるキャッシュ・フローが17,719百万円減少いたしました。これに資金に係る換算差額の増加13,803百万円を加えた結果、当連結会計年度末の資金残高は、前連結会計年度末比38,391百万円増133,859百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は52,654百万円(前連結会計年度は11,457百万円の増加)となりました。これは主に、当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益89,235百万円(前連結会計年度は57,373百万円)及び、利息及び配当金の受取額50,888百万円(前連結会計年度は18,275百万円)であったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は10,346百万円(前連結会計年度は76,736百万円の増加)となりました。これは主に、当連結会計年度において、定期預金の払戻による収入1,485百万円(前連結会計年度は89,004百万円)及び、有形固定資産の取得による支出3,866百万円(前連結会計年度は3,478百万円)であったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は17,719百万円(前連結会計年度は15,904百万円の減少)となりました。これは主に、当連結会計年度において、配当金の支払額による支出が15,854百万円(前連結会計年度は6,481百万円)であったこと等によります。

 

 

② 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料、副資材、電気代、燃料代等の製造費用と販売費及び一般管理費等、営業費用によるものです。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、安定収益源としての既存設備の維持更新、生産効率向上・品質強化・省力化及び省エネルギー化等を伴う既存設備能力の戦略的増強のための投資、将来の成長に向けた新たな事業拠点・事業領域への投資や環境対策等によるものです。当社グループが事業を営む業界では、新規工場建設、買収資金等の投資額が非常に多額となること、市況産業であることから業績は景気変動に大きく影響を受けること、当社が展開している中東事業において、多額の貸付金、債務保証等を実施していること等を踏まえ、今後も財務健全性の維持に努めながら、将来の成長投資にも積極的に手元資金を配分していく方針です。なお、株主還元につきましては、毎期の営業キャッシュ・フロー未使用分を適切に配分してまいります。配当につきましては、当事業年度までは連結配当性向30%を目処、翌事業年度からは連結配当性向40%を目処に毎期の配当額を決定するとともに、継続的かつ安定的な配当の維持に努めてまいります。また、自己株式の取得につきましては、中長期的に株主価値を高める観点から、市場環境や事業投資機会などを総合的に勘案し、機動的に実施を検討してまいります。

 

③ 資金調達

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、営業活動により獲得した資金及び内部資金を充当することを基本方針としております。また、戦略的な資金についても主として内部資金によって充当していく方針です。なお、不測の事態に備え、当社と金融機関3社との間で10,000百万円のコミットメントライン契約を設定しており、資金調達が適時滞りなく実施可能と認識しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、可能な限り合理的な根拠に基づいた仮定を用いて会計上の見積りを行っております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、鉄鋼事業(日本)及び軌道用品事業を中心に各製造工程の技術スタッフが共同して行っております。

鉄鋼事業(日本)では主に製鋼・圧延工程の生産効率及び品質向上等に関連した生産技術及び付加価値の高い新製品の開発に取り組んでおります。

軌道用品事業では新しい締結方法の開発に取り組み、ユーザーの求める鉄道の高速化・重量物輸送に適し、かつ保守性に優れた軌道用品の開発に努めております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は64百万円であります。

当連結会計年度における各セグメント別の主な研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりであります。

 

(1) 鉄鋼事業(日本)

新製品の開発、生産工程の効率化及び省力化並びに製品の品質向上に関する研究を自社並びに産学連携等で行っております。

当事業に係る研究開発費は28百万円であります。
 

(2) 軌道用品事業

ローラー床板、PCまくらぎ分岐器、各種締結装置等の開発を行うことにより、分岐器の省メンテナンス化に取り組んでおります。また、新幹線用の地震対策に関する脱線防止ガード等の受託研究を共同で行っております。

当事業に係る研究開発費は、受託研究費を含めて36百万円であります。