第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

企業理念:JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。

行動規範:挑戦。柔軟。誠実。

 

(2) 企業構造

JFEグループは鉄鋼、エンジニアリング、商社の3つの事業を中心とした企業グループです。

鉄を中核として、エネルギー技術や資源リサイクル技術など幅広い分野に領域を広げており、世界最高の技術に裏打ちされた3つの事業が生み出し続けるシナジーを、持続可能な社会の構築に向けてさらに拡大していきます。

 

(3) JFEグループの競争力の源泉
(鉄鋼事業・商社事業)

鉄鋼事業は、世界有数の生産規模と高い技術開発力を有する銑鋼一貫メーカーのJFEスチール㈱を中核としており、お客様や社会の多様なニーズにお応えする鉄鋼製品をグローバルに供給しています。

また商社事業は、JFE商事㈱を中核として、鉄鋼製品を中心に、鉄鋼原料・非鉄金属・化学品・資機材・船舶から食品・エレクトロニクスまで幅広く取り扱い、サプライチェーン全体の付加価値を向上させるサービスをグローバルに提供しています。

鉄鋼・商社事業の競争優位の源泉は、①お客様のニーズに基づいた最先端の「技術開発力」と、②製造現場で培われてきた「生産」の実力、および③JFEスチール㈱とJFE商事㈱が一体となって長年築いてきた強固なお客様との信頼関係に基づく「販売力」の3つを基礎としています。これらをベースに、お客様のニーズに沿った新たな価値を創造し、最適なソリューションを提供し続けてきました。これらの競争優位性は私たちが長年の努力により積み重ねてきた貴重な財産であり、他社が容易に真似できない持続的成長のドライバーです。

 

○新たな価値の創造を可能とする技術開発力(鉄鋼事業)

世界各地のお客様の高度なご要望にお応えすることで、業界をリードする技術力を蓄積してきました。幅広い分野での高機能・高品質の商品やサービスの開発と提供を通じて新たな価値を創造し、世界中の産業や社会の発展と人々の生活の進化に貢献しています。また、優れた環境保全・省資源・省エネ技術により、世界で最も低いレベルの環境負荷で鉄鋼製品を生産することができ、その技術を世界各地の環境対策に役立てるとともに、成長の機会として活用しています。

 

○高い競争力を持つ、集約された国内2大製鉄所(鉄鋼事業)

JFEスチール㈱の競争力の第一の源泉は、東西2製鉄所への拠点集約により固定費が抑えられ、高効率生産が可能であることです。特に世界有数の規模を誇る西日本製鉄所は、年間2,000万トンレベルの鋼材を生産でき、コストや商品ラインナップ、技術力の観点からも高い競争力を持っています。現場では長年の努力を通じて優れた製造・商品技術や知的財産、ノウハウ等が無数に蓄積されており、これらにより培われた製造実力は、同社固有の競争力の源泉です。

 

 ○ニーズへの対応力と安定したお客様基盤(鉄鋼事業・商社事業)

 長年のお取引による数多くのお客様との双方向のコミュニケーションにより、お客様との信頼関係を構築してきました。お客様との綿密なニーズの摺り合わせや、開発初期段階からの協働等の取り組みを通じて新たな価値を創造し、お客様の課題解決に貢献してきました。結果として、他社が容易に入り込むことができない堅固なお客様基盤を構築しています。

 

○JFEグループのグローバル鋼材SCM(Supply Chain Management)網(商社事業)

JFEスチール㈱と戦略的に連携を取りながら日本、中国、北米、アセアンの4極を主軸にグローバル展開する鋼材SCMを構築しています。日本で製造されるJFEスチール材のみならず、JFEスチール㈱の海外製造拠点やJFEグループのアライアンス先で製造される鋼材も含めたJFEブランドを、世界各地に製造拠点を展開するお客様へ良質なサービスとともに提供しています。またお客様のニーズに合わせ、スリットなどの切断加工製品や、環境規制・省エネを背景に拡大している自動車用モーターコアや高効率変圧器用トランスコアなどの鋼材加工部品をグローバルに提供できる体制を整えています。

 

○JFEグループの中核商社としての機能(商社事業)

変化が激しいグローバル市場においてお客様のニーズを先取りし、中核商社としてJFEグループの全体最適を考えながらトレードビジネスや事業を展開し、お客様への価値貢献を最大化しています。こうした他社にはないグループ全体最適を追求する商社事業モデルを通じ、グローバル市場におけるグループ全体の競争優位性を維持拡大していきます。

 

(エンジニアリング事業)

エンジニアリング事業は、JFEエンジニアリング㈱を中核として、ガス・石油・水道パイプライン、再生可能エネルギー発電設備、都市ごみ焼却炉、水処理システム、橋梁・港湾構造物など、人々が生活するうえで不可欠となるインフラの構築等を行っており、それらのEPC(設計・調達・建設)、O&M(運転・維持管理)に加え、リサイクル・発電事業などの事業運営を展開しています。

また数多くの国内支店・営業所、海外現地法人・海外支店を有することでグローバルかつきめ細かな販売ネットワークを構築しており、長年にわたり、官公庁や、大手電力会社・ガス会社など様々な民間企業のお客様へ高度な技術・サービスを提供しています。

エンジニアリング事業の競争力の源泉は、時代の変化に対応する先進かつ多種多彩な商品・サービスや、高度なプロジェクト遂行能力、ものづくりのノウハウを強みにした事業運営に至るまでの幅広い事業展開を基礎としています。

 

○高度な基盤技術、多種多彩な商品技術

造船事業がベースの加工・組立技術と鉄鋼事業がベースの素材・燃焼技術を融合・進化させた高度な技術力を強みとして、エネルギー・環境や橋梁など幅広い分野で事業を展開してきました。

とりわけ、世界的な課題となっている地球温暖化に対しても、次世代エネルギーの創出や、高効率発電プラントによるCO排出量の抑制など、課題解決に向けた技術を数多く保有しており、これらの技術に基づいた新たなビジネスモデルの企画・立案・推進に積極的に取り組んでいます。

 

○豊富な実績と多様な人材によるプロジェクト遂行能力

エネルギー・環境や橋梁など様々な分野で、設計から引き渡しまで、お客様のニーズに即した高機能・高品質な施設を数多く建設してきました。また、国内最大級の鋼構造物製作工場をはじめとする生産拠点を有しており、高品質・低コストでの製品供給を可能としています。さらに、アジア諸国を中心とした海外拠点にグローバルエンジニアリング体制を構築し、一段と競争力を強化しています。

 

○ものづくりのノウハウを強みにした事業運営

環境・上下水などのプラントを中心として、長きに亘りオペレーション・メンテナンスのノウハウを培い、公共サービス分野で数多くの官民連携事業を手掛けています。また、自らが建設したプラントで、リサイクル事業や再生可能エネルギー発電事業を行い、循環型社会、持続可能な社会の構築に取り組んできました。こうした、ものづくりや運営ノウハウを強みにした官民連携事業やエネルギーサービス事業などの運営型事業領域をさらに拡大していきます。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

JFEグループは、2018年から開始した第6次中期経営計画の施策を実行してまいりましたが、計画策定時に想定していなかった、米中貿易摩擦の激化や新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による事業環境の急激な変化のために、特に鉄鋼事業の業績が低迷し、前連結会計年度に続き当期利益が赤字となるなど、目標として掲げた主要な財務・収益目標を達成することはできませんでした。

2020年3月に、厳しい事業環境および中長期的な鉄鋼需要動向を踏まえ、鉄鋼事業では抜本的な対策として、東日本製鉄所京浜地区の高炉休止を含む構造改革の実施を決断し、その達成に向けた取り組みを進めております。

 

〈第7次中期経営計画〉
 2021年、JFEグループは、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在としての地位を確立し、経済的持続性を実現することを目指し、第7次中期経営計画を策定いたしました。強靭な経営基盤を確立し新たなステージへ飛躍するために、大胆に変革に挑戦してまいります。この計画は、鉄鋼事業の構造改革が完遂する2024年度までを対象とし、初年度の2021年度においては、5月7日に公表いたしました業績予想、連結事業利益2,000億円の達成に向けて取り組んでまいります。
 主な取り組みは、以下のとおりです。

 

① 鉄鋼事業

・量から質への転換

  国内の鉄鋼市場は人口減少により将来的に縮小に向かうことが想定されます。一方、海外では、汎用品の価格競争激化に加え、鉄鋼製品の地産地消の流れが強まっており、日本からの輸出拡大には限界があります。
 JFEスチール㈱においては、こうした状況に対し、国内生産については収益の源泉を「量」の拡大に求めず、徹底して「質」の追求に転換してまいります。本中期経営計画においては、年間単独粗鋼生産量2,600万トンを前提に、構造改革による固定費削減に加えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による労働生産性の向上や歩留の改善等による大幅なコスト削減を実現いたします。さらに、高付加価値品の比率を引き上げ、プロダクトミックス改善を図るとともに、販売価格体系の抜本的な見直しを推進し、世界トップレベルの「鋼材トン当たり利益」を追求いたします。

 ・労働生産性 :+20%(1,670→2,000トン/人・年)
・コスト削減 :1,200億円
・高付加価値品比率 :50%以上
・鋼材トン当たり利益 :1万円/トン

 

・成長戦略の推進

同社はこれまで、インドのJSWスチール・リミテッド(JSW社)やベトナムのフォルモサ・ハティン・スチール・コーポレーション等、現地のパートナーと提携し鉄源からの現地一貫生産に取り組み、インサイダーとして成長市場の需要捕捉に取り組んでまいりました。これらの提携を強化し、現地生産化による事業戦略の深化を図ることにより収益の拡大に繋げてまいります。
 特にインドにおいては、電力需要の大幅な増加に伴い、変圧器に使用される方向性電磁鋼板の需要拡大が見込まれます。当社の高い技術力をもってこの機会を捉えるべく、JSW社とインドでの方向性電磁鋼板製造販売会社の共同設立について、検討を進めてまいります。
 さらに、高付加価値品製造や環境負荷低減等に関する技術・操業・研究ノウハウを活かして構築したプラットフォームを海外メーカー等に提供することにより、継続的に対価を得るソリューションビジネスを展開し、収益の拡大を目指してまいります。

 

 ② エンジニアリング事業

JFEエンジニアリング㈱においては、独自の技術とサービスを活かして事業規模を拡大し、あわせて社会課題の解決に貢献してまいります。中長期的には、リサイクルや廃棄物発電等の「Waste to Resource事業」、再生可能エネルギー、カーボンリサイクル等の「カーボンニュートラル事業」、上下水やガス、電力、リサイクル等の運営事業を相互に連携・複合化させる「複合ユーティリティサービス事業」および橋梁、パイプライン建設等の「基幹インフラ事業」を中核事業と位置付け、M&Aや業務提携等も活用し、2030年度を目途に売上収益1兆円規模を目指してまいります。

 

 

③ 商社事業

JFE商事㈱においては、高機能電磁鋼板の世界Nо.1のグローバル流通加工体制を構築いたします。加えて、グループ連携による自動車向け鋼材の流通加工体制強化および海外現地企業との協業等による建材事業の基盤確立に取り組むとともに、日本国内においても流通加工機能の更なる強化により、マーケットにおけるグループの存在感を高め、収益の拡大に努めてまいります。


④ DX戦略の推進

長年の事業運営を通じて蓄積された膨大なデータやノウハウ等の無形資産に対して最先端のデジタル技術を適用し、業務の全体最適を図り、生産性向上、サプライチェーンの効率化やソリューションビジネス等の新規事業創出により競争力の向上と収益の拡大に取り組みます。またデジタル技術の発展に伴い、サイバー攻撃やシステム不正利用等のリスクの拡大も懸念されることから、セキュリティ対策にも同時に取り組んでまいります。

 

⑤「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の推進

気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定いたしました。カーボンニュートラルの実現に向けてグループ全体で着実に取り組んでまいります。

<JFEグループ環境経営ビジョン2050>

・気候変動問題を極めて重要な経営課題ととらえ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
・新技術の研究開発を加速し、超革新的技術に挑戦します。
・社会全体のCO削減に貢献し、それを事業機会ととらえ、企業価値の向上を図ります。
・TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組みます。

 

 

 <第7次中期経営計画における取り組み>

▶ 2024年度末のCO排出量を2013年度比で18%削減(JFEスチール)
  *2030年度のCO削減目標については、技術開発の進捗に鑑みて本計画期間中に精査・公表

  
 <2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み>

①JFEスチールのCO排出量削減
▶ カーボンリサイクル高炉+CCU(Carbon Capture and Utilization)を軸とした超革新的技術開発への挑戦
▶ 水素製鉄(直接還元)の技術開発
▶ 業界トップクラスの電気炉技術を最大活用した高級鋼製造技術の開発、高効率化等の推進
▶ トランジション技術の複線的な開発推進
 (フェロコークス、転炉スクラップ利用拡大、低炭素エネルギー変革等)

②社会全体のCO削減への貢献拡大

▶ JFEエンジニアリング:再生可能エネルギー発電、カーボンリサイクル技術の拡大・開発

  CO削減貢献量目標 2024年度1,200万トン、2030年度2,500万トン

▶ JFEスチール:エコプロダクトやエコソリューションの開発・提供

▶ JFE商事:バイオマス燃料や鉄スクラップ等の取引拡大、エコプロダクト商品のSCM(流通加工体制)強

              化等

③洋上風力発電ビジネスへの取り組み

▶ 洋上風力発電事業についてグループ全体で事業化を推進
 JFEエンジニアリング:着床式基礎構造物(モノパイル等)製造事業の検討
 JFEスチール:倉敷地区の新連鋳機を活用した大単重厚板の製造

  JFE商事:鋼材、加工品のSCM構築
 ジャパン マリンユナイテッド:洋上風力発電浮体の製作および作業船の建造
 グループ全体:リソースを最大限活用したオペレーション&メンテナンス

 

(注) 1 カーボンリサイクル高炉:高炉から排出されるCOをメタン化し、還元材として高炉に吹き込む技術で

す。

 2 CCU:COの回収・再利用を意味します。

 3 トランジション技術:低炭素や脱炭素への移行を進める技術です。

 4 フェロコークス:鉄鉱石の還元効率を改善し、CO発生量を削減する革新的な高炉原料です。

 

⑥ 選択と集中に基づく効果的な投資の実行と財務健全性の確保

有利子負債(社債、借入金及びリース負債)の残高については、第6次中期経営計画開始時(2018年3月末)に比べ4,752億円増加(IFRS導入による負債範囲拡大および新リース会計基準の適用によるリース負債期首増加額1,660億円を含む)し、1兆8,061億円となりました。その結果、今期末のDebt/EBITDA倍率は8.1倍、D/Eレシオは93.2%となりました。
 このような状況のもと、本中期経営計画においては財務体質の健全化と成長戦略の推進を両立いたします。これまでの鉄鋼事業における設備強靭化の取り組みの成果および構造改革の効果により機能維持投資は減少いたします。また、収益貢献の低い事業や資産の見直しによる徹底した資産圧縮に加えて、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善により必要資金の確保に取り組んでまいります。
 一方で、各事業における成長戦略に必要な投資や、カーボンニュートラルへの投資(GX投資)・DX投資も推進し、競争力強化と成長戦略を積極的に推進いたします。

<第7次中期経営計画 投資計画・資産圧縮計画(4ヵ年合計)>

 

 

第7次中期経営計画

グループ投資額

設備投資

12,000億円程度

事業投融資

2,500億円程度

(投資額のうち)

GX投資

3,400億円程度

DX投資

1,200億円程度

資産圧縮

2,000億円程度

 

 (注)GX投資:グリーントランスフォーメーション投資の略称です。

 

なお、鉄鋼事業の構造改革後の京浜地区の用地活用については、川崎市をはじめ行政と協働で、経済性最大化と地域・社会の持続的発展への貢献の観点から土地利用転換を検討してまいります。扇島地区については、2023年度には整備方針を公表し、2030年度までには一部土地の供用を開始できるよう取り組んでまいります。

 

 ⑦ 主要財務・収益目標、株主還元方針

当社は、本中期経営計画の最終年度に、ROE10%、連結事業利益3,200億円、親会社の所有者に帰属する当期利益2,200億円の財務・収益目標を掲げ、各施策を着実に実行してまいります。
 また、株主の皆様への還元を最重要課題の一つと位置付けており、引き続き配当性向30%程度を方針といたします。

 

 

第7次中期経営計画

グループ全体

連結事業利益

3,200億円

親会社の所有者に帰属する当期利益

2,200億円

ROE

10%

Debt/EBITDA倍率

3倍程度

D/Eレシオ

70%程度

事業会社

鉄鋼事業

 

・トン当たり利益

1万円/トン

・セグメント利益

2,300億円

エンジニアリング事業

 

・セグメント利益

350億円

・売上収益

6,500億円

商社事業

 

・セグメント利益

400億円

 

(注)1 D/Eレシオ:格付け評価上の資本性を持つ負債について、格付け機関の評価により資本に算入しております。

2 鉄鋼事業のトン当たり利益:(連結セグメント利益÷単体出荷数量)

 

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、その先行きは予断を許さない状況が続いております。引き続き動向を注視し、従業員や関係者の感染防止に十分配慮しながら、それぞれの事業特性に応じた迅速かつ的確な対策を実施してまいります。一方、感染防止対策として導入したリモートワークについては、育児・介護との両立を含めた多様な働き方を可能とする仕組みとしてワークライフバランスの推進に繋がりました。従業員の安全・健康管理を強化し、多様な背景を持つ人材の能力・意欲を最大限引き出すことが、グローバル化や複雑化が進む事業環境下での持続的成長には不可欠です。JFEグループは引き続き、ダイバーシティ&インクルージョンや働き方改革の取り組みを高めてまいります。
 JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続してまいります。
 本中期経営計画においては、コーポレートガバナンスの更なる充実に向けて、環境や社会に関する非財務指標を経営目標とし、それを投資判断、役員報酬等の様々な指標として適用することについて検討してまいります。
 今後も企業としての持続的成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値最大化に努めてまいります。

 

(注)上記の記載には、2021年5月7日の第7次中期経営計画発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれております。

 

 

2 【事業等のリスク】

本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。それらのリスク要因のいずれも投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、2021年5月7日の第7次中期経営計画発表時点において当社グループが判断したものであります。

当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③経営体制・内部統制体制 c. 内部統制体制・リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

 

(1)経済状況と販売市場環境(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

 [鉄鋼事業・商社事業]

鉄鋼事業・商社事業においては、各製品市場と地域市場において、競合他社との競争に直面しております。国内鋼材販売は、建築・土木、自動車、産業機械、電気機械等各需要分野に広がっており、販売形態も多岐にわたっております。また、これら国内向けに加え、JFEスチール㈱は42%程度(単独・金額ベース)、JFE商事㈱は43%程度(単独・金額ベース・JFEスチール材含む)を海外に輸出しております。主な輸出先としましては、タイ等のアセアン、中国、韓国向けとなっております。従いまして、今後の少子高齢化に伴う国内市場の縮小や、国内およびアジアをはじめとする世界経済の状況等を背景とした国内外の鋼材需給の動向が当社グループの鋼材の販売量や価格に影響を及ぼす可能性があります。とりわけ海外市場においては、中国の内需減少に伴う輸出の増加や、新興国における鉄鋼生産能力の拡大という構造的な変化によりますます競争が激化していく可能性があります。また、海外主要国において関税引き上げやアンチダンピング・セーフガード措置等の輸入規制が課せられた場合には当社グループの輸出取引が制約を受け、業績に影響を及ぼします。一方、当社グループの輸出量が少ない米国、EU等においても、各種輸入規制が行われた結果、その市場から締め出された鋼材が当社グループの主要輸出エリアに還流することにより市場が影響を受け、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、国内外の鋼材需給の変化に対応して生産数量の最適化を図るとともに、長期的な鋼材需給の動向を見据えて設備の統廃合等による最適な生産体制の構築を図ってまいります。この一環として、2023年9月を目途にJFEスチール㈱東日本製鉄所京浜地区の上工程(製銑、製鋼)および熱延設備を休止し、国内の生産体制を高炉8基体制から7基体制へ変更し、粗鋼生産能力を約400万トン(約13%)削減することとしております。一方で、基幹製鉄所であるJFEスチール㈱西日本製鉄所への戦略的な投資を行い、コスト競争力を向上させることで、市場環境が変化しても収益を確保できる体制を整えてまいります。販売面でも新興国ミルに対して技術優位性の高い商品の販売比率の拡大を進め、収益基盤の安定化を図ってまいります。更に、海外での垂直分業体制や海外鉄鋼メーカーへの出資による鋼材の現地製造を進めることで、海外市場環境の変化に柔軟に対応するグローバル供給体制の確立を進めてまいります。

商社事業においては、鉄鋼製品を中心に、製鉄原材料、非鉄金属製品、食品等の仕入、加工および販売を行っており、国内外の各製品市場において市場環境の変化に適切に対応できる流通販売網を構築しております。具体的には、国内においては流通再編等を通じ販売力の強化を進めるとともに、基盤強化に必要な設備の更新をタイムリーに進めております。また海外においてはグローバル4極体制における流通加工機能の強化を積極的に推進し、高付加価値分野におけるJFEスチール材の販売強化を進めております。更に、海外におけるJFEグループ材(アライアンス先含む)や他サプライヤーの製品も活用しながら顧客におけるプレゼンスの維持・強化を図ってまいります。

 

 [エンジニアリング事業]

エンジニアリング事業においては、エネルギープラント・ごみ焼却炉等の環境施設・橋梁を中心とした設備のEPC(設計・調達・建設)を行っております。また、DBO(設計・建設・運転)案件における設備の運転保守の受託や、リサイクル・発電・電力小売等の運営型事業を自ら行っております。上記事業のポートフォリオは、公共インフラ(ごみ焼却施設、橋梁等)関連が過半を占めているため、国内経済状況および国・自治体の方針・政策の影響等による国内公共事業の縮小は、応札案件の減少に直結し、その結果、受注高が減少する可能性があります。

また、海外についても同様に対象国の経済状況や政策の変化により、受注高が減少する可能性があります。また、プロジェクト遂行に当たり、資機材等の価格が上昇した場合、建設コストが上昇することになります。建設コスト上昇の影響に左右されない競争力を確保するために、技術開発等を進めてまいります。また、長期安定的な収益源として運営型事業を強化し、収益の安定化を図ってまいります。

 

(2)原料・エネルギーの市場環境(鉄鋼事業・商社事業)

 [鉄鋼事業]

鋼材の原材料として鉄鉱石、原料炭、合金鉄・非鉄金属・スクラップ等を調達しております。これらの原材料の世界的な需給構造変化や、主要原産国である豪州・ブラジルにおける自然災害や事故の発生等により購入価格が上昇し、それを鋼材価格に反映できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製鉄プロセスに使用する電気・天然ガス等を購入しておりますが、世界的な需給変化や環境規制強化等に起因して電気・天然ガス等の購入価格が上昇し、それらを鋼材価格に反映できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、安価原料の使用技術を開発し、その使用比率の増加を図ることで原料調達におけるコスト削減とコスト変動の低減を図ってまいります。また、調達ソースの分散化等により、調達不安定化のリスクの低減を図ってまいります。更に、製鉄所内の発電所等のリフレッシュを計画的に進めることにより、調達エネルギーのコスト削減とコスト変動の低減を図ってまいります。

 

 [商社事業]

当社グループ向けに原材料を販売するとともに、当社グループ外への原料販売も行っています。従って、世界的な需給環境や当社グループの活動水準の変化により、商社事業の販売量に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、原料調達における低廉化や新たな調達ソースの開発等により、原材料サプライチェーンのリスク低減を図ってまいります。また、当社グループ以外への販路開拓を進め、販売量の維持安定化を進めます。

 

(3)製造設備・システムの安定操業状況(鉄鋼事業)

鉄鋼事業においては、高炉、コークス炉、転炉、連続鋳造機、圧延機、焼鈍炉、発電所等の多数の大規模な製造設備を用いて鉄鋼製品の生産を行っております。これらの設備の中には稼働後数十年を経て更新時期を迎えたものもあります。持続的な安定生産を実現する国内製造基盤を確立するため、第5次中期経営計画以降、集中的な設備投資を計画し、老朽設備の更新を順次進めてまいりましたが、これらの設備において設備・システムトラブルが発生した場合、生産量の減少や修繕コストの増加等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、重要設備の更新投資を計画的に進め、製鉄所の製造実力の強靭化を図ってまいります。高炉の操業安定化に対しては、高炉付帯設備の劣化対応やDX・AI・IoT技術の活用等による100億円規模の基盤整備投資を2019年度より実施して重点的に対策を行っております。

 

(4)設備投資効果・事業投資効果の実現状況(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは収益基盤の維持・向上、事業拡大を目指し、多額の設備投資および事業投資を行っております。

 [設備投資]

鉄鋼事業では、安定生産基盤の確立に加え、生産性・コスト競争力の更なる進展のために、国内製造拠点への戦略的な投資を継続しております。東西製鉄所においては、新連続鋳造機の新設、コークス炉・焼結機の更新、電磁鋼板製造ラインの増強等を行い、これらの設備の最新鋭化・能力増強を図ってまいりますが、これらの稼働が遅れた場合や鋼材需要が変化した場合、予定通りのコスト削減効果や拡販効果が発揮されず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、主要工事の進捗確認を定期的に実施することで、計画的な実施を図っております。また、世界の経済状況や需要動向を常に注視し、変化が生じた場合には、当初の設備投資計画に対して、投資時期や規模等の適切な見直しを行います。

 

 [事業投資]

当社グループは、国内投資に加え、海外成長機会を捉えるための事業投資も推進しております。海外各国における政情や経済情勢の変動、合弁相手先企業の状況の変化等の不測の事態により、期待する収益の獲得や投資回収が困難となる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、世界の経済状況や需要動向を常に注視し、変化が生じた場合には、当初の事業投資計画に対して、投資時期や規模等の適切な見直しを行います。また、事業投資の意思決定の過程では、個社・各地域のリスク評価を行い、そのリスクに応じたフォローを行うことで、リスクの管理を図っております。

 

(5)新製品・新技術の開発状況(鉄鋼事業・エンジニアリング事業)

当社グループは、お客様の高度なご要望にお応えすることで、グローバルで戦うことができる技術力を磨いてまいりました。当社グループの収益基盤を維持・向上していくためには、今後も社会に貢献する世界最先端の新製品・新技術の開発・新規事業の探索を行っていく必要があります。これらが計画通り実施できなかった場合や各種環境変化により計画通りの効果が発揮されなかった場合、新商品の提供機会を逸することによる販売量の減少、十分な付加価値を付与できないことによる収益性の低下、受注機会の逸失等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、鉄鋼事業では自動車・インフラ建材・エネルギー分野を主軸とし、開発の加速化を図ってまいります。また、これまで以上にお客様のご要望を的確にとらえた開発を推進してまいります。例えば、自動車分野では、お客様との交流を深めてEVI(Early Vendor Involvement)を進化させ、先進ハイテンやその利用技術等の先端技術の提案を続けることで、鉄の価値創造に努めています。また、エンジニアリング事業ではプラントの自動運転・遠隔監視等、最先端のAI・IoTを活用した技術開発やエネルギーサービス等の新たな商品・サービスの提案を積極的に進めております。

更に、当社グループでは、技術開発の進捗状況のフォローを行い、市場環境の変化に応じた開発計画の見直しを適宜実施しております。

 

(6)品質保証(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、鉄鋼製品をはじめとした多種多様な製品・サービスをお客様に提供しています。当社グループの製品品質は品質設計・製造部門から独立した品質保証部門により確認し、また、品質保証体制は品質監査部門によりチェックを行うことで保証しておりますが、製品やサービス、品質管理体制等に問題が発生した場合には、補償金の支払いや、社会からの信用失墜により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、グループ会社を含めて品質管理体制を統括する組織を本社内に設置し、品質不具合の撲滅に向けた体制構築を進めております。お客様へ提供する品質データについては、自動測定・伝送化を一層拡充することで、人為的なミスや改ざんの根絶に努めております。また、鋼材の中間素材の識別管理の強化、品質保証体制の社内診断による強化等により、お客様への異常材の流出の未然防止を図っております。

また、エンジニアリング事業における設備のEPC(設計・調達・建設)では、調達した建設資材および機器を使用して建設工事を行っており、設備引渡し後も一定期間は契約不適合責任を負っております。建設した設備において、契約不適合責任のある不具合が生じた場合、請負者の責任において改修工事を実施することになり、追加コストが発生する可能性があります。こうしたリスクに対しては、品質保証体制を整備し、調達品および工事の検査によってリスクの軽減を図っております。

 

(7)受注後の変動リスク(エンジニアリング事業)

エンジニアリング事業における設備のEPC(設計・調達・建設)では、プロジェクト遂行にあたり、資機材の購入、外注業者の起用を行っており、工期が数年間に及ぶプロジェクトもあります。また、運営型事業では、設備の運転に必要な電気・燃料等を購入しており、運営期間が20年間以上に及ぶ事業もあります。市況・景気変動に伴う建設資材費および外注労務費の変動は建設コストに、電気・燃料費等の変動は運営コストに影響を与え、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、受注前の段階(応札段階)においてリスクの洗い出しを実施し、契約条件への織り込み等の対策を行うことで、受注後の変動リスクの軽減を図っております。更に、受注後においては、プロジェクト経験者による第三者視点でのフォローを実施し、リスクを早期に発見し軽減するよう努めております。

 

(8)重大な労働災害(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

多様な事業を展開する当社グループの中には、高所作業、高温作業、重量物の運搬、ガス関連設備での作業等災害の発生率が比較的高い作業を行う職場もあります。当社グループは、高齢者や女性を含め、多様な人材が災害を被ることなく安心して働ける作業環境の整備を進めておりますが、万が一生産設備等の重大事故や重大な労働災害が発生した場合には、事業活動が制約を受け、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対して、各事業会社では重大事故・重大災害の撲滅に努めております。鉄鋼事業では、安全文化醸成の取り組みに先進的なデュポン社による安全に対する診断を行い、これに基づいた内部監査制度を導入しております。また、作業員が立入禁止区域に入ると警報を発して自動でラインを停止させるAI活用画像認知システムや、ガス濃度や重機との近接をリアルタイムでモニタリングして災害を未然に防ぐシステム等の導入を進めております。

 

(9)気候変動問題(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは大量のCOを排出する鉄鋼製造プロセスを有しており、当社グループの気候変動問題への対応は、当社の事業の持続性に関わる極めて重要な経営課題と認識しております。当社グループのカーボンニュートラルに向けた取り組みが十分でなかった場合、コスト競争力を失う、お客様との取引が縮小する、資金調達が困難になる等により、当社グループの業績等に多大な影響を及ぼす可能性があります。
 これに対して当社グループは、第7次中期経営計画において2024年度末のCO排出量を2013年度比で約18%削減すること、2050年にカーボンニュートラル実現を目指すことを経営目標として掲げております。この実現に向けて2020年度にJFEスチール㈱社長直轄のプロジェクトチームを立ち上げ、目標達成に向けた取り組みを強力に推進しております。カーボンニュートラルに向けては、あらゆる手段を対象に精力的に研究開発・投資戦略に取り組みます。特に高炉からの排出ガスを水素と反応させて再利用するプロセス(カーボンリサイクル高炉およびCCU(Carbon Capture and Utilization))は、第7次中期経営計画期間中に研究開発に着手し、2027年にプロセス原理実証の完了を目指します。また、水素製鉄技術は、原料ソース拡大等、海外連携の検討も加えて開発を加速します。更に、電気炉法による高級鋼製造の技術開発を推進するとともに、高効率化による経済合理性を追求します。
 また、カーボンニュートラルの実現においては、多大な技術開発費、設備投資費を要し、また低価格で大量のグリーン水素、グリーン電力の調達が不可欠となります。これらを実行していく上では、社会全体でのコスト負担のあり方の検討や政府等による支援が必要と考えています。

なお、将来想定されるカーボンプライス等の導入については、主要排出国に共通で導入されない場合、他国に対して日本の鉄鋼メーカーのコスト競争力が低下し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、環境規制が適切な制度として制定されるよう、関係機関に働きかけてまいります。

 

(10)大規模な自然災害、新型インフルエンザ等感染症の急速な感染、戦争、内乱、暴動、テロ活動等(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

大規模な地震・台風等の自然災害、新型インフルエンザ等感染症の急速な感染、戦争、内乱、暴動、テロ活動等は、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症のような感染症が大流行した場合、世界的な移動制限や都市部のロックダウン等が行われ、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに、需要産業の生産水準が大幅に低下することにより販売数量が減少し、当社グループの業績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、大型台風により設備や建屋の損壊や製鉄所の浸水が生じた場合には、生産量の減少等により当社グループの業績等に影響する可能性があります。あるいは、当社グループの原料の調達先で港湾施設の機能停止により一定期間の生産・出荷停止が生じた場合には、生産量の減少等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

近年激甚化する国内の台風や豪雨に対しては、製鉄所内の排水設備の増強等を実施しております。また、原料の主要な調達先である海外での大規模気象災害に対しては、代替調達先の確保、調達ソースの分散、設備能力の増強を図ってまいります。なお、非常事態に対するBCPを策定しており、例えば大規模地震では、津波に対する避難場所の設置や、通信規制・停電等の状況下での全社指揮命令機能の維持、データのバックアップ等の対策を実施しております。また、新たな感染症のリスクに対しては、全従業員の健康と安全を第一に考え、安心して働けるよう、衛生管理の徹底や時差出勤・在宅勤務等の柔軟な事業運営や、インフラ構築等の環境整備を進めるとともに対策検討チームを発足させ、迅速な対応をとる体制を構築しております。なお、新型コロナウイルス感染症による影響や対応策については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しております。

 

(11)他素材との競合(鉄鋼事業・商社事業)

当社グループはCOの排出抑制効果の大きいエコプロダクトや環境配慮型技術を販売しております。自動車車体に適用されるハイテンは、アルミニウムや炭素繊維等の他素材と比べコスト優位性を有し、また軽量化にも貢献するため、他素材への置換は限定的と考えますが、他素材の大幅なコストダウンが実現した場合には鋼材需要が減少し、当社グループの業績に影響する可能性があります。これに対しては、継続的なコストダウンや性能向上に努め、他素材への置換を抑止します。

 

(12)情報セキュリティ(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、事業を展開する上で、顧客および取引先の機密情報や個人情報、また、当社グループの機密情報や個人情報を有しております。これらの情報は、外部流出や改ざん等が無いように、グループ全体で徹底した管理を実行しております。過失や盗難、外部からの攻撃等によりこれらの情報が流出もしくは改ざんされた場合、技術優位性の喪失、損害賠償の発生、社会的な信用失墜等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対して当社グループでは、情報管理の諸規定を制定することで、サイバー攻撃やシステムの不正利用による情報漏洩やシステム障害を防止する対策を実施しております。また、情報セキュリティを中心にITに関する重要課題を審議する「グループ情報セキュリティ委員会」を設置し、そこで決定した方針に基づき、情報セキュリティ施策の立案と実施推進を図る社内チームである「JFE-SIRT」にてグループ全体の情報セキュリティ管理レベルの向上を推進しております。

 

(13)カントリーリスク(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、成長する海外での需要を捕捉するため、鉄鋼事業・商社事業における現地の鋼材生産・加工ラインへの投資や現地鉄鋼会社との資本提携、エンジニアリング事業における新興国のインフラプロジェクトの受注等、積極的な海外事業展開を推進しております。事業実施地域における政治・経済情勢の変化、テロ・その他の動乱、法改定、大規模自然災害等の不測の事態が発生した場合、生産量の減少、資本提携先とのシナジー効果の減少、法令改定に起因した費用の発生、物流費の増大、連結財政状態計算書に計上したのれんの減損、受注プロジェクトの製造コストの変動等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、事業投融資の審査の過程で各国のリスクに応じた事業のリスク評価を行うことで慎重な投資判断を行うとともに、不測の事態が発生した場合の影響を軽減するために、監視体制の強化、現地での調達ソースの分散化等を図っております。

また商社事業では貿易取引を行っており、対象国の状況により輸出入ができなくなるリスクや、外貨事情等により相手国政府が対外送金を停止した場合の代金回収リスクを負う可能性があります。これに対しては貿易保険等を活用しております。

 

(14)為替レートの変動(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの業績は、為替レートの変動の影響を受けます。外貨建て取引による外貨の受け取り(製品輸出額等)と外貨の支払い(原材料輸入額等)で相殺されない部分がある場合、為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、為替予約等を利用したヘッジ取引を適宜実施しております。

また、円高が進行した場合、自動車等の需要産業の輸出競争力低下による国内鋼材需要が減少すること、および当社グループの製品の海外市況における競争力が低下することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに対しては、主に(1)、(5)に記した対応による国内鋼材シェアの確保、および海外での垂直分業体制や海外鉄鋼メーカーへの出資による鋼材の現地製造を進めることで、海外市場環境の変化に柔軟に対応するグローバル供給体制の確立を進めてまいります。

 

(15)固定資産の価値下落(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、大規模な鉄鋼製品製造設備等、多くの固定資産を保有しております。当社グループが保有している固定資産について、収益性の低下等に伴い投資額の回収が見込めなくなった場合は、その資産の減損損失の計上を行うことにより、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、主に上記の(1)~(5)、(9)、(11)に記した対応により資産価値の維持向上に努めてまいります。

 

(16)人材確保・育成および職場環境の整備(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループでは、国内の生産年齢人口の減少に伴い、労働力や有能な人材を確保するための各種施策の強化、人材育成による個々の能力向上、省力化による労働生産性向上に取り組んでおりますが、当社グループおよび当社グループのサプライチェーンを構築する企業において、労働力の確保や人材育成が十分でなかった場合、労務費の上昇や安定的な生産体制が損なわれることにより当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、職場環境の改善や各種制度の充実を図ることにより、多様な人材の確保・育成や定着をこれまで以上に進めるとともに、IT・ロボット技術の活用による省力化・効率化についても更に推進して労働力不足に対応してまいります。

また、適切な労務管理が行われなかった場合、人材の流出や当社グループの信用の著しい低下につながり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、適正な労働時間管理や人権啓発研修の実施、ハラスメント相談窓口の開設等を実施することで未然防止を図ってまいります。

 

(17)知的財産の保護(鉄鋼事業・エンジニアリング事業)

当社グループは、事業活動に必要な個々の技術や商標の使用権利を保護する目的で、日本および海外諸国において多数の知的財産権を保有しております。当社グループにおいて事業を遂行する際には、当社外で保有されている知的財産権の調査を行い、その侵害を回避する対策をとっておりますが、万一、第三者より当社グループによる知的財産権の侵害を主張された場合、損害賠償金やロイヤリティの支払い、事業差し止め等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者により当社グループの知的財産権が無効化される場合には、対象となる事業の競争力の低下等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される場合や、社内外の情報保持者により知的財産情報が漏洩する場合には、技術・ブランド価値の低下や損害金の回収不履行等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、当社グループは海外を含めて当社外の知的財産権の調査・監視体制を強化することで、その侵害の未然防止を図っております。また、海外地域を重点的に重要技術の権利化を進めるとともに第三者による模倣技術・模倣品の監視体制を強化し、当社グループの知的財産権の侵害の抑止を図っております。更に、情報管理に対する社内教育の拡充、退職者等の守秘義務の管理強化を図っております。

 

(18)金融市場の変動および資金調達環境の変化(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの中核である鉄鋼事業は、大規模な設備を有しており、その設備の維持更新に多額の資本を必要とするため、財務健全性の維持が重要です。近年、減価償却費を上回る設備投資を行ってきたことから、有利子負債は高水準で推移しております。そのため金融市場の不安定化や金利上昇、また格付機関による当社信用格付の引下げがあった場合等には、資金調達の制約を受け資金調達コストが増加する可能性があります。

これらに対しては、財務管理指標としてDebt/EBITDA倍率やD/Eレシオを用いて、当社グループ全体並びに各事業会社の財務管理を行っております。また一部の借入金等について、金利スワップを利用したヘッジ取引を実施しております。足元では、有利子負債を削減するため、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善、保有株式の縮減等の資産圧縮および設備投資・投融資の優先順位見直し等を行い、財務健全性の維持に取り組んでおります。

 

(19)保有株式等の価値変動(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループが保有している株式等の価値が変動した場合は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、上場株式について、その株式保有の意義が認められる場合を除き、保有しないことを原則としており、上場会社株式の売却を進めております。

 

(20)信用リスク(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループが保有する売上債権について、取引先の倒産により貸倒損失が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。このため、徹底した与信管理を行っており、一部リスクの高い取引については信用保険を活用しております。

 

(21)法令・公的規制(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、日本国内および事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の経済法規、建設業法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。これら法令・公的規制が厳格化された場合、(1)・(9)等で述べた影響の他にも、当社グループの事業活動が制約を受けることや対策費用が発生すること等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、内部統制体制の充実を図りこれら法令・公的規制の遵守に努めておりますが、これら規制等を遵守していないと判断された場合、行政処分を課される等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、法令の制定・改廃の検討段階での意見提出を行う等により、法令の適切な制定・改廃に向けた活動を継続してまいります。また、法令の制定・改廃が生じた場合には、当該法令に関する主管部署が業務への影響度を評価し、社内の関係部署に周知する体制を整えております。また、法令テーマ別にコンプライアンス研修を行い、定期的に従業員への周知を図っております。

 

(22)サプライチェーンにおける人権の尊重(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)
 当社グループは世界各国から原材料や資機材を調達しておりますが、これらのサプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、調達や生産への影響に加え、当社グループの信用の毀損につながり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 これに対しては、人権尊重に関するグループ全体の考え方を示す方針として2018年に「JFEグループ人権基本方針」を制定し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った取り組みを推進しております。また、各事業会社においては、「原料購買基本方針」や「調達基本方針」「サプライチェーンにおけるサステナビリティ基本方針」等を制定し、人権尊重・法令遵守・環境保全に配慮した購買を行っております。加えて、2021年度より人権デューデリジェンスを実施してまいります。
 

(23)退職給付債務(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。金利の変動、制度資産の公正価値の変動、および退職金制度の変更等があった場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(24)持分法適用関連会社の業績悪化

当社および連結子会社は、多数の持分法適用関連会社を有しております。持分法適用関連会社の損失は、当社および連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社および連結子会社は、持分法適用関連会社の回収可能価額が取得原価または帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用関連会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。なお、当社および連結子会社は、一部の持分法適用関連会社の金銭債務に対して債務保証を行っておりますが、将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらに対しては、持分法適用関連会社の収益向上の取り組みをモニタリングするとともに、必要な諸施策を実施し、リスク低減に努めております。

 

なお、現時点では予期できない上記以外の事象の発生により、当社グループの事業活動および業績等が影響を受ける可能性があります

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループにおける生産実績については鉄鋼事業の粗鋼生産量を、また受注実績についてはエンジニアリング事業の受注実績・受注残高を記載しております。

鉄鋼事業は、特定顧客からの受注については反復循環的に生産しているため、受注実績の記載を省略しております。エンジニアリング事業は、請負工事を中心としているため、生産実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。商社事業は、受注生産形態をとらない製品が多いため、生産実績・受注実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

粗鋼生産量(千トン)

前期比(%)

鉄鋼事業

(うちJFEスチール㈱)

23,965

(22,758)

△14.7

(△14.8)

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注実績(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

エンジニアリング事業

501,110

21.3

549,061

4.4

 

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売実績(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業

2,255,216

△15.9

エンジニアリング事業

485,750

△5.2

商社事業

932,510

△14.0

3,673,477

 

調整額

△446,192

合計

3,227,285

△13.5

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

2 本表の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

d.その他

生産実績および販売実績の前期比での変動要因、ならびに販売価格の状況については、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しているため省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。

重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」、重要な見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当連結会計年度の経営成績の分析

JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。

当連結会計年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響を受け、特に年度前半において経済活動が著しく停滞しました。年度後半に入ると、国内経済は輸出や個人消費で持ち直しの動きが見られ、海外においても中国ではいち早く景気が回復し、米国や他のアジア諸国でも、持ち直しあるいは下げ止まりの動きが見られました。

このような状況のもと、JFEグループでは、特に鉄鋼事業において、緊急対策として1,000億円規模のコスト削減や設備投資の絞り込み、およびキャッシュ・フロー改善へ向けた取り組みを進めるとともに、国内製鉄所・製造所の製造実力の強靭化とDX推進による生産性の向上等を着実に実行してまいりました。
 事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、下期は鋼材の販売先である自動車産業等の生産水準が回復したこともあり黒字となりましたが、上期の落ち込みの影響が大きく、通期では赤字となりました。

当連結会計年度のセグメント別の業績は、以下のとおりです。

鉄鋼事業は、年度前半において鉄鋼需要が大幅に減少したことを受けて、高炉2基の一時休止等の緊急対策を実施しました。これにより、当連結会計年度の連結粗鋼生産量は2,396万トンと前連結会計年度に比べ大幅に減少しました。売上収益については、販売数量の大幅な減少を受け、2兆2,552億円前連結会計年度に比べ4,261億円(15.9%)の減収となりました。損益については、生産最適化によるコストミニマム操業の徹底と、データサイエンス技術を駆使した迅速な高炉再稼働により需要の持ち直しを捕捉したこと、および、輸出市況好転による販売価格の改善等により、下期は黒字に転じましたが、上期における収益悪化の影響が大きく、セグメント利益は654億円の損失となり、前連結会計年度に比べ567億円の大幅な悪化となりました。

エンジニアリング事業は、企業買収による増収効果はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による工事遅延等により売上収益は4,857億円となり、前連結会計年度に比べ265億円(5.2%)の減収となりました。損益については、売上収益の減少の影響はありましたが、コスト削減等による利益確保に努めた結果、セグメント利益は240億円となり、前連結会計年度に比べ9億円(4.1%)の増益となりました。

商社事業は、下期に需要が回復基調に転じたことや年度終盤には米国をはじめ世界的な市況上昇がみられたことから、上期に対し収益は大きく好転しました。しかしながら、上期における鋼材需要の大幅な落ち込みの影響が大きく、年間の売上収益は9,325億円前連結会計年度に比べ1,516億円(14.0%)の減収となりました。セグメント利益は200億円となり、前連結会計年度に比べ70億円(25.6%)の減益となりました。

なお、持分法適用会社のジャパン マリンユナイテッド㈱では、新造船市況の回復遅れによる受注船価の低迷や、新型コロナウイルス感染症の拡大による商談の停滞が生じたことから、同社の当連結会計年度の損益は赤字となりました。これを受けて、持分法投資損失41億円を計上しております。

以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当連結会計年度における連結での売上収益は3兆2,272億円となり、前連結会計年度に比べ5,025億円(13.5%)の減収となりました。事業損失は129億円となり、前連結会計年度に比べ507億円の悪化となりました。税引前損失は49億円、親会社の所有者に帰属する当期損失は218億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ2,085億円1,759億円の改善となりました。

 

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが2,472億円の収入であったのに対し、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産、無形資産及び投資不動産の取得による支出を中心として1,642億円の支出であったことから、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは830億円の収入となりました。

また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出を中心として300億円の支出となりました。

この結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ82億円減少し、1兆8,061億円となり、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ557億円増加し、1,424億円となりました。

なお、有利子負債は、社債、借入金及びリース負債であります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入、製造費用、受注建設工事の費用支払および販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、鉄鋼事業における製造基盤整備を目的とした設備投資です。

運転資金は、主に金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行などにより調達しております。投資資金は、自己資金を基本としておりますが、自己資金を上回る資金需要については、金融機関からの長期借入金や社債の発行などで調達しております。

当社グループでは、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定することにより、十分な資金の流動性を確保しております。

 

 

c.目標とする指標の達成状況

JFEグループは、第6次中期経営計画(2018~2020年度)において以下の指標を掲げ、最先端技術による成長戦略の推進や、国内における製造実力の強化、海外事業の推進と収益拡大および持続的な成長を支える企業体質の強化等に取り組んでまいりました。しかしながら、計画策定時に想定していなかった、米中貿易摩擦の激化や新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による事業環境の急激な変化のために、特に鉄鋼事業の業績が低迷し、前連結会計年度に続き当期利益が赤字となるなど、目標として掲げた主要な財務・収益目標を達成することはできませんでした。
 一方で、第6次中期経営計画期間中には、上述の諸施策を着実に実行したことに加えて、今後の持続的成長の基盤確立のため、「鉄鋼事業における構造改革の意思決定」「CO削減目標の発表」「DXの積極的な推進」等を着実に進めてきており、これらの取り組みに基づいて、2021年度から2024年度までを対象とした第7次中期経営計画を策定しています。(第7次中期経営計画については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。)

 

■第6次中期経営計画

 

目標(3ヵ年平均)

実績

2018年度)

2019年度)

2020年度)

当社連結

事業利益

2,900億円/

2,320億円

378億円

△129億円

親会社の所有者に帰属する

当期利益

2,000億円/

1,635億円

△1,977億円

△218億円

Debt/EBITDA倍率

3倍程度

3.6倍

6.7倍

8.1倍

事業会社

連結

セグメント利益

 

 

 

 

鉄鋼事業

2,200億円/

1,613億円

△87億円

△654億円

エンジニアリング事業

300億円/

201億円

231億円

240億円

商社事業

350億円/

357億円

270億円

200億円

 

   (注)IFRSの適用に伴い、中期経営計画の財務・収益指標とその数値の読み替えを実施しております。

 

 

目標

実績

2018年度)

2019年度)

2020年度)

株主還元方針(配当性向)

30%程度

33.5%

―(※1)

―(※2)

 

(注)※1 1株当たり年間20円の配当を実施しておりますが、前連結会計年度の親会社所有者に帰属する当期利益が赤字のため「-」で表記しております。

※2 1株当たり年間10円の配当を2021年6月25日開催の定時株主総会で決議しておりますが、当連結会計年度の親会社所有者に帰属する当期利益が赤字のため「-」で表記しております。

 

なお、当連結会計年度の分析につきましては、「② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 経営上の重要な契約等(技術に関わる契約を除く)

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約締結日/契約期間

当社

㈱IHI

今治造船㈱

造船事業に関する株主間協定書

2020年3月27日

(2021年1月1日改訂)※1

JFEスチール㈱(連結子会社)

日本アイ・ビー・エム㈱

JFEスチール㈱、日本アイ・ビー・エム㈱の包括的提携と、㈱エクサの事業運営に関する合弁協定ならびにJFEスチール㈱から日本アイ・ビー・エム㈱への業務委託契約

2011年4月1日から

2026年3月31日まで※2

倉敷市、中国電力㈱ 他

岡山県倉敷市における資源循環型廃棄物処理施設整備運営事業(PFI事業)

2002年3月15日から

2025年3月31日まで

ヴァーレ(ブラジル)

米国における鉄鋼事業会社カリフォルニア・スチール・インダストリーズ・インクに関する合弁協定

1995年6月27日

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)他

タイにおける電気亜鉛鍍金鋼板の製造販売会社タイ・コーテッド・スチール・シート・カンパニー・リミテッドに関する合弁協定

1999年6月11日

(2001年7月17日改訂)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)他

タイにおける冷延鋼板の製造販売会社タイ・コールド・ロールド・スチール・シート・パブリック・カンパニー・リミテッドに関する合弁協定

2001年7月12日
(2013年2月1日改訂)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)

タイでの鉄鋼事業における協力関係強化に関する提携合意書

2012年10月31日

広州薄板有限公司

(中国)

中国における冷延鋼板および溶融亜鉛鍍金鋼板の製造販売会社広州JFE鋼板有限公司に関する合弁協定

2003年10月29日

(2012年4月11日改訂)

東国製鋼㈱(韓国)

東国製鋼㈱への追加出資ならびに厚鋼板に係る業務協力に関する基本合意

2006年9月25日

伊藤忠商事㈱、㈱神戸製鋼所

ブラジルの鉄鉱石生産・販売会社CSNミネラソン社への投資に係わる会社(ジャポン・ブラジル・ミネーリオ・ジ・フェーフォ・パルチシパソインス・LTDA.)に関する合弁協定

2019年11月29日(2020年2月21日改訂)

JSWスチール・リミテッド(インド)

JFEスチール㈱とJSWスチール・リミテッドの戦略的包括提携に基づく資本参加に関する契約

2010年7月27日

日本製鉄㈱、双日㈱、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構

ブラジルのニオブ生産・販売会社CBMM社への投資に係わる会社(日伯ニオブ㈱)に関する合弁協定

2011年3月4日

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、ゼネラル・ホールディング・コーポレーションPJSC

(アラブ首長国連邦)

アラブ首長国連邦における大径溶接鋼管の製造販売事業に関する合弁協定

2014年9月1日

台湾プラスチックグループ、中国鋼鉄股份有限公司(台湾)他

ベトナムにおける一貫製鉄所プロジェクトに関する運営等を定める当事者間の株主間協定

2015年9月8日

台湾プラスチックグループ

ベトナムにおける一貫製鉄所プロジェクトへの資本参加および技術支援・供与に関する包括提携契約

2015年9月8日

ニューコア・コーポレーション(米国)他

メキシコにおける溶融亜鉛鍍金鋼板の製造販売事業に関する合弁協定

2016年6月8日

 

 

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約締結日/契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

広東韶鋼松山股份有限公司(中国)

中国における特殊鋼棒鋼事業に関する合弁協定

2019年11月28日

アタールホールディングA.S.(トルコ)

トルコにおける鉄鉱石採掘およびペレット製造事業に係るアタール・マデンティリック社に関する合弁協定

2020年7月13日※3

JFEスチール㈱、

JFE商事㈱

(連結子会社)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、阪和興業㈱、メランティスチール・プライベート・リミテッド(シンガポール)他

ミャンマーにおける建材向け溶融亜鉛鍍金鋼板およびカラー鋼板の製造・販売事業に関する合弁協定

2017年10月26日

(2019年12月17日改訂)

JFEケミカル㈱

(連結子会社)

山東傑富意振興化工有限公司(中国)、山東濰焦控股集団有限公司(中国)

中国タール蒸留事業第2拠点新設に関する合弁協定

2013年6月13日

JFEスチール・オーストラリア(BY)プロプライタリー・リミテッド

(オーストラリア)

(連結子会社)

Qコール・バイヤウェンホールディングス・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)、

バイヤウェン・コール・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)

オーストラリアにおけるバイヤウェン炭鉱の権益保有会社バイヤウェン・コール・プロプライタリー・リミテッドに関する合弁協定

2009年10月8日

JFEエンジニアリング㈱

(連結子会社)

㈱三井E&Sエンジニアリング

三井E&S環境エンジニアリング㈱に関する株式譲渡契約

2020年12月3日※4

 

(注)1 ※1 今治造船㈱によるジャパン マリンユナイテッド㈱への資本参加の実施に伴い、2021年1月1日に発効しております。また、2021年1月1日付改訂は、ジャパン マリンユナイテッド㈱の取締役の員数の上限を変更するものであります。

2 ※2 2020年6月24日付で、JFEスチール㈱と日本アイ・ビー・エム㈱との間の合弁協定および業務委託契約の契約期間を2026年3月31日まで延長することについて合意しました。

   3 ※3 2020年1月23日付でアタールホールディングA.S.との間で締結したアタール・マデンティリック社への資本参加に関する契約に基づき、2020年7月13日付で合弁協定を締結しております。

4 ※4 株式の取得は2021年4月1日に完了しております。

 

(2) 技術に関わる契約

① 技術導入契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

東洋製罐㈱

東洋鋼鈑㈱

タルク缶胴用ポリエステルフィルム積層鋼板に関する技術

2008年1月4日から

対象特許の満了日まで

㈱神戸製鋼所

ダストの還元処理方法に関する技術

2007年9月6日から関連設備の操業が恒久的に停止するまで

JFEエンジニアリング㈱

(連結子会社)

マン・ディーゼル&ターボフランス(フランス)

PC型陸用および舶用ディーゼル機関の製造技術に関する特許の非独占的実施権の許諾およびノウハウの提供

1964年7月7日から

解除通知まで

(2013年1月14日改訂)

フェルント・エコロジィ・システムズ・A/S

(デンマーク)

塵芥焼却プラントの設計・建設技術に関する特許の非独占的実施権の許諾およびノウハウの提供

1970年10月2日から

解除通知まで

ソーラーパワーグループGmbH(ドイツ)

太陽熱発電設備技術

2011年5月18日から

2021年5月17日まで

但し契約更新条項あり※1

 

(注)※1 2026年5月17日まで自動延長しております。

 

 

 

② 技術供与契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

広州JFE鋼板有限公司(中国)

連続酸洗圧延設備および連続焼鈍設備を含む冷延工場の建設・操業・保全に関する技術

2008年6月1日から

終了に合意するまで

JSWスチール・リミテッド(インド)

自動車用鋼板の製造技術

2010年9月8日から

2020年9月7日まで※1

JSWスチール・リミテッド(インド)

ビジャヤナガール製鉄所の操業改善に関する技術

2010年9月8日から

2020年9月7日まで※1

JSWスチール・リミテッド(インド)

自動車用鋼板の製造技術 その2

2012年7月12日から

2032年7月11日まで

JSWスチール・リミテッド(インド)

無方向性電磁鋼板の製造技術

2012年11月22日から

2032年11月21日まで

福建福欣特殊鋼有限公司(中国)

ステンレス鋼板の製造技術

2012年11月9日から

解約事由に該当するまで

福建福欣特殊鋼有限公司(中国)

ステンレス鋼板の製造技術 その2

2015年3月19日から

対象特許の満了日まで

フォルモサ・ハティン・スチール・コーポレーション(ベトナム)

鋼板製造技術

2015年9月8日から

解約事由に該当するまで

アルガービア・パイプ・カンパニー(アラブ首長国連邦)

大径溶接鋼管製造技術

2015年9月28日から

解約事由に該当するまで

ニューコア・JFEスチール・メキシコ・S.DE R.L.DE C.V.(メキシコ)

自動車用鋼板の製造技術

2016年10月31日から

解約事由に該当するまで

上海宝武杰富意清潔鉄粉有限公司(中国)

偏析防止プレミックス鉄粉の製造技術

2017年4月5日から

対象特許の満了日まで

宝武傑富意特殊鋼有限公司(中国)※2

特殊鋼棒鋼の製造技術

2020年3月26日から

解約事由に該当するまで

水島合金鉄㈱

(連結子会社)

ケート・リッジ・アロイズ(プロプライタリー)・リミテッド(南ア共和国)

中低炭素フェロマンガン製造技術

1998年6月28日から

解約事由に該当するまで

 

(注)1 ※1 契約期間満了に伴い、2020年9月7日をもって失効しております。

2 ※2 宝鋼特鋼韶関有限公司は、2020年12月10日付で、宝武傑富意特殊鋼有限公司に商号変更しております。

 

③ その他の技術契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ,AG(ドイツ)

自動車用鋼板分野における包括的技術提携

2002年4月8日から

2022年4月7日まで

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、地球環境保全に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。

グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。

今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。

また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、またロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等にも積極的に取り組んでいます。

当連結会計年度における研究開発費は36,205百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業32,499百万円、エンジニアリング事業3,705百万円であります。

なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。

 

(1)鉄鋼事業

鉄鋼事業では、10年先を見据えてお客様や社会のニーズを先取りした新商品・利用技術開発、世界最高水準の地球環境技術や省資源技術の開発を加速するとともに、プロセス革新による画期的新商品の創出と高品質商品製造技術の確立を強力に推進しております。

以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。

 

<プロセス分野>

JFEスチール㈱製鉄プロセスにおけるCO排出量やエネルギー消費量を削減するプロセス実現に向け、JFEスチール㈱と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、㈱神戸製鋼所、日本製鉄㈱と共同で実施中の「環境調和型プロセス技術の開発/フェロコークス技術の開発」において、JFEスチール西日本製鉄所(福山地区)に建設していた日産300トンの中規模フェロコークス製造設備を完成させ、2020年10月9日より実証試験を開始しました。本設備によるフェロコークスの製造技術開発により、2023年頃までに、製銑プロセスにおけるCO排出量とエネルギー消費量を約10%削減する技術の確立を目指します。
 また、現行の高炉法による低炭素化については、「環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発」で技術開発を進めておりますが、ここで得られる知見を足掛かりとして、「ゼロカーボン・スチール」の実現に向けた、高炉を用いない水素還元等の超革新技術が必要とされています。JFEスチール㈱とNEDOは、日本製鉄㈱、㈱神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターと共同で「ゼロカーボン・スチール」の実現に向けた研究開発に取り組むため、現段階での諸課題を抽出し、研究開発を加速させるための先導研究を行っています。
 さらに、鉄鋼製品の品質向上は重要な課題であり、欠陥の無い製品をお客様に提供するため、JFEスチール㈱は様々な検査装置の開発・導入に取り組んでいます。世界で初めて開発した厚板自走式超音波探傷ロボットを厚板オフライン探傷プロセスに導入し、手動探傷作業を自動化することで、検査信頼性と作業効率の更なる向上を実現しました。東日本製鉄所(京浜地区)の厚板工場に3台導入を完了しており、運用を開始しています。今後は、西日本製鉄所(倉敷地区・福山地区)の厚板工場への展開を進めることで、作業の効率化を図りながら、厚板品質の更なる向上に努めていきます。
 

<製品分野>

自動車用鋼板分野においては、西日本製鉄所(福山地区)にある独自の水焼入れ方式(WQ方式)連続焼鈍プロセスの高い冷却能力を活用して、合金の添加と鋼板の微視組織の不均一性を極限まで低減し、1310MPa級高張力鋼板と同等の冷間プレス性を有しながら、1.5GPa級高張力鋼板でも特に高い降伏強度と水素に起因するプレス成形後の静的な脆性割れを発生しにくくする性質(耐遅れ破壊特性)を両立させた1.5GPa(1470MPa)級高張力冷延鋼板を開発しました。この自動車用鋼板は、冷間プレス用途として世界で初めて、自動車の骨格部品に採用されました。
 また、自動車の車体には高い衝突安全性能と軽量化の両立が求められており、構造骨格部品への超高強度鋼板(引張強度980MPa以上)の適用が大幅に増加していますが、超高強度鋼板を適用すると、衝突時の部品座屈や曲げ変形時に部品母材が破断してしまい、必要なエネルギー吸収が得られないため、高強度薄肉化による軽量化が困難でした。そこで、超高強度鋼板をエネルギー吸収部品に適用するため、イイダ産業㈱が開発した高延性・高密着性樹脂を、超高強度鋼板製の部品本体と薄肉鋼板製の部品でサンドイッチした構造を開発しました。樹脂をサンドイッチした結果、車両衝突時にエネルギー吸収部品が座屈・曲げ変形する際の、変形部の曲げRが大幅に拡大し、超高強度鋼板部品が破断しなくなるため、エネルギー吸収性能が大幅に向上しました。
 電磁鋼板分野では、電気機器小型化の観点から電流・電圧等が1秒ごとに振動する回数(駆動周波数)の高周波化が進展しており、電磁鋼板には、高周波域での鉄損の低減が求められるようになってきています。同時に高速モータ用途においては、高周波域での鉄損低減とともに、高トルク化の観点から高磁束密度化への要求も強くなっています。そこでJFEスチール㈱は、浸珪量と拡散条件の最適化によるSi濃度分布のコントロールおよび結晶方位制御に取り組み、従来の無方向性電磁鋼板(3%Si鋼板)並みの磁束密度(トルク)を維持しつつ、モータの大幅な高効率化(省エネ)を可能とする高速モータ用Si傾斜磁性材料「JNRF™」の開発に成功しました。今後は、電気自動車の駆動モータ、家電製品用モータ、およびドローンモータ等、小型・高速化が進展するモータ分野での適用拡大を目指していきます。
 土木・建築分野においては、一般に地すべり抑止杭では、厚肉・高強度杭が適用されることが多く、これらを溶接接合により縦継ぎ作業した場合、①大径・厚肉杭になるほど溶接時間が長くなる、②高強度になるほど現場での品質管理が難しい、③雨天や強風時等の天候によっては溶接作業が困難となる等の課題を有しています。こうした課題を解決するねじ継手として、地すべり抑止杭の現場接合用のねじ継手「JFE ネジール®」をリニューアルし、適用可能な杭径・板厚を大幅に拡大しました。
 

<表彰>

JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「高速モータに適した省資源型Si傾斜磁性材料の開発」が、世界鉄鋼協会が選考するSteelie Awards 2020を受賞しました。また、「環境調和型高品質ステンレス鋼溶製プロセスの開発」の成果が認められ、令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。JFEスチール㈱の同賞受賞は3年連続となります。更に、JFEスチール㈱の開発した微小凹凸欠陥計測装置「T-eye®」が、令和2年度全国発明表彰発明協会会長賞を受賞しました。JFEスチール㈱の全国発明表彰受賞は7年連続で、JFEスチール㈱発足以来11回目となります。
 JFEスチール㈱が開発した炭化水素燃料バーナーを利用したステンレス鋼用クロム鉱石溶融還元プロセスが、第53回(令和2年度)市村産業賞本賞を受賞しました。JFEスチール㈱の市村産業賞受賞は、4年ぶり8回目となります。また、JFEスチール㈱が開発した「ツイン投光差分方式表面検査装置」が、一般財団法人機械振興協会から第55回機械振興賞 機械振興協会会長賞を受賞しました。機械振興賞は、我が国機械工業における技術開発の一層の促進を図るため、優秀な研究開発およびその成果の実用化によって、機械産業技術の進歩・発展に著しく寄与したと認められる企業・大学・研究機関および研究開発担当者に対して毎年与えられるものです。JFEスチール㈱の機械振興賞の受賞は3年連続10回目となります。
 

(2)エンジニアリング事業

エンジニアリング事業では、「モノとサービスの融合で、他社に先駆け新たな価値を提供」という方針に基づき、研究開発を推進しています。当連結会計年度は、主力事業である環境、エネルギー、社会インフラ、リサイクル・発電分野に加え、今後益々その重要性が高まる気候変動対策分野に重点的な投資を実施しました。具体的には、ガス化技術を用いたカーボンリサイクル、廃プラスチック有効活用、AI技術を活用したプラントの最適操業と自動化、ロボット活用による製作所や施工現場の省力化・効率化に関する技術等に取り組んでおります。
 さらに、開発のスピードアップや合理的な開発投資を目的に、国内外の大学や研究機関および他企業との連携・共同開発を推進しております。その一例として、2018年度に開設したシンガポールの研究拠点では、次世代の廃棄物処理技術開発に加え、当該国の大学・研究機関と様々な分野における共同開発事業の探索・創出に向け、取り組みを加速しております。

 

JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されており、環境プラント分野においては、2020年7月にサービス提供を開始した、ごみ焼却炉の完全自動運転システム「BRA-ING(ブレイング)」が「第46回優秀環境装置表彰 経済産業省産業技術環境局長賞」の受賞に続き、「日本燃焼学会技術賞」を受賞しました。これは「BRA-ING」による安定した自動運転と環境負荷低減の両立が高く評価されたものです。