第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

企業理念:JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。

行動規範:挑戦。柔軟。誠実。

パーパス:

   ・JFEスチール㈱      ねがう未来に、鉄で応える。

   ・JFEエンジニアリング㈱  くらしの礎を 創る・担う・つなぐ – Just For the Earth

   ・JFE商事㈱        世界をつなぐ。鉄でつなぐ。

 

(2) 企業構造

JFEグループは鉄鋼、エンジニアリング、商社の3つの事業を中心とした企業グループです。

鉄を中核として、エネルギー技術や資源リサイクル技術等幅広い分野に領域を広げており、世界最高の技術に裏打ちされた3つの事業が生み出し続けるシナジーを、持続可能な社会の構築に向けて更に拡大していきます。

 

(3) JFEグループの競争力の源泉
(鉄鋼事業・商社事業)

鉄鋼事業は、世界有数の生産規模と高い技術開発力を有する銑鋼一貫メーカーのJFEスチール㈱を中核としており、お客様や社会の多様なニーズにお応えする鉄鋼製品をグローバルに供給しています。

また商社事業は、JFE商事㈱を中核として、鉄鋼製品を中心に、鉄鋼原料・非鉄金属・化学品・資機材・船舶から食品・エレクトロニクスまで幅広く取り扱い、サプライチェーン全体の付加価値を向上させるサービスをグローバルに提供しています。

鉄鋼・商社事業の競争優位の源泉は、①お客様のニーズに基づいた最先端の「技術開発力」と、②製造現場で培われてきた「生産」の実力、および③JFEスチール㈱とJFE商事㈱が一体となって長年築いてきた強固なお客様との信頼関係に基づく「販売力」の3つを基礎としています。これらをベースに、お客様のニーズに沿った新たな価値を創造し、最適なソリューションを提供し続けてきました。これらの競争優位性は私たちが長年の努力により積み重ねてきた貴重な財産であり、他社が容易に真似できない持続的成長のドライバーです。

 

○新たな価値の創造を可能とする技術開発力(鉄鋼事業)

世界各地のお客様の高度なご要望にお応えすることで、業界をリードする技術力を蓄積してきました。幅広い分野での高機能・高品質の商品やサービスの開発と提供を通じて新たな価値を創造し、世界中の産業や社会の発展と人々の生活の進化に貢献しています。また、優れた環境保全・省資源・省エネ技術により、世界で最も低いレベルの環境負荷で鉄鋼製品を生産することができ、その技術を世界各地の環境対策に役立てるとともに、成長の機会として活用しています。

 

○製造現場で培われてきた「生産」の実力(鉄鋼事業)

JFEスチール㈱の製造現場においては、長年の鉄鋼製品製造で培われてきた質が高く、高い生産性を有する製造技術、知的財産、操業ノウハウ等が無数に蓄積されています。これらに加えて、低COでの高品質鋼材製造を可能にするGX対応技術、データサイエンス・ロボティクス等のDX技術等が融合した製造実力は、同社固有の競争力の源泉です。なお、内需の減少という事業環境の変化に対応するため、高炉休止による生産効率の維持・向上を実行し、常に国内最適生産体制を構築してまいります。具体的には、現在の粗鋼生産能力2,600万トン(高炉7基体制、仙台製造所電気炉を除く)に対し、2027年度の粗鋼生産能力を2,100万トン程度へスリム化します。また2028年度には西日本製鉄所(倉敷地区)で革新電気炉を稼働させ、高炉5基+電気炉1基体制とします。

 

 ○ニーズへの対応力と安定したお客様基盤(鉄鋼事業・商社事業)

長年のお取引による数多くのお客様との双方向のコミュニケーションにより、お客様との信頼関係を構築してきました。お客様との綿密なニーズの摺り合わせや、開発初期段階からの協働等の取り組みを通じて新たな価値を創造し、お客様の課題解決に貢献してきました。結果として、他社が容易に入り込むことができない堅固なお客様基盤を構築しています。

 

○JFEグループのグローバル鋼材サプライチェーンマネジメント網(商社事業)

JFEスチール㈱と戦略的に連携を取りながら日本、中国、北米、豪州、インド、欧州でグローバル展開する鋼材サプライチェーンマネジメントを構築しています。日本で製造されるJFEスチール材のみならず、鉄鋼事業の海外製造拠点やJFEグループのアライアンス先で製造される鋼材も含めたJFEブランドを、世界各地に製造拠点を展開するお客様へ良質なサービスとともに提供しています。またお客様のニーズに合わせ、スリット等の切断加工製品や、環境規制・省エネを背景に拡大している自動車用モーターコアや高効率変圧器用トランスコア等の鋼材加工部品をグローバルに提供できる体制を整えています。

 

○JFEグループの中核商社としての機能(商社事業)

変化が激しいグローバル市場においてお客様のニーズを先取りし、中核商社としてJFEグループの全体最適を考えながらトレードビジネスや事業を展開し、お客様への価値貢献を最大化しています。こうした他社にはないグループ全体最適を追求する商社事業モデルを通じ、グローバル市場におけるグループ全体の競争優位性を維持拡大していきます。

 

(エンジニアリング事業)

エンジニアリング事業は、JFEエンジニアリング㈱を中核として、ガス・石油・水道パイプライン、再生可能エネルギー発電設備、都市ごみ焼却炉、水処理システム、橋梁・港湾構造物等、人々が生活する上で不可欠となるインフラの構築等を行っており、それらのEPC(設計・調達・建設)、O&M(運転・維持管理)に加え、リサイクル・発電事業等の事業運営を展開しています。

また数多くの国内支店・営業所、海外現地法人・海外支店を有することでグローバルかつきめ細かな販売ネットワークを構築しており、長年にわたり、官公庁や、大手電力会社・ガス会社等様々な民間企業のお客様へ高度な技術・サービスを提供しています。

エンジニアリング事業の競争力の源泉は、時代の変化に対応する先進かつ多種多彩な商品・サービスや、高度なプロジェクト遂行能力、ものづくりのノウハウを強みにした事業運営に至るまでの幅広い事業展開を基礎としています。

 

○高度な基盤技術、多種多彩な商品技術

造船事業がベースの加工・組立技術と鉄鋼事業がベースの素材・燃焼技術を融合・進化させた高度な技術力を強みとして、エネルギー・環境や橋梁等幅広い分野で事業を展開してきました。

とりわけ、世界的な課題となっている地球温暖化に対しても、次世代エネルギーの創出や、高効率発電プラントによるCO排出量の抑制等、課題解決に向けた技術を数多く保有しており、これらの技術に基づいた新たなビジネスモデルの企画・立案・推進に積極的に取り組んでいます。

 

○豊富な実績と多様な人材によるプロジェクト遂行能力

エネルギー・環境や橋梁等様々な分野で、設計から引き渡しまで、お客様のニーズに即した高機能・高品質な施設を数多く建設してきました。また、国内最大級の鋼構造物製作工場をはじめとする生産拠点を有しており、高品質・低コストでの製品供給を可能としています。更に、アジア諸国を中心とした海外拠点にグローバルエンジニアリング体制を構築し、一段と競争力を強化しています。

 

○ものづくりのノウハウを強みにした事業運営

環境・上下水等のプラントを中心として、長きに亘りオペレーション・メンテナンスのノウハウを培い、公共サービス分野で数多くの官民連携事業を手掛けています。また、自らが建設したプラントで、リサイクル事業や再生可能エネルギー発電事業を行い、循環型社会、持続可能な社会の構築に取り組んできました。こうした、ものづくりや運営ノウハウを強みにした官民連携事業やエネルギーサービス事業等の運営型事業領域を更に拡大していきます。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

JFEグループを取り巻く事業環境は、国内における需要の減少や中国材の廉価での輸出拡大による海外市場の混乱等足元の厳しい状況が継続することが見込まれ、更に、保護主義の流れが加速する等、これまで以上に環境悪化のリスクが高まることが想定されます。このような厳しい環境において、「JFEグループの目指す姿」に向かっていくために、「JFEビジョン2035」および「第8次中期経営計画」(対象:2025~2027年度)を策定しました。

 


 

<JFEビジョン2035・第8次中期経営計画(収益目標)>


 

 


 

[第8次中期経営計画]

(鉄鋼事業)

徹底的に強靭化した国内体制において、競争優位性の源泉であるカーボンニュートラルを含めた革新技術や高付加価値品を生み出し、海外成長地域において優位性のある技術・商品・人材を活かして事業を拡大してまいります。

○国内:高付加価値品比率の引き上げと国内生産体制の徹底したスリム化による収益力の向上

・高付加価値品の比率向上

JFEスチール㈱の技術力を活かした高性能電磁鋼板や自動車用高張力鋼板、着床式洋上風力発電の基礎構造物用大単重厚板、新エネルギー対応用厚板/シームレスパイプ等の商品を拡販し、輸出汎用品から更に置換していくことで、高付加価値品比率を2024年度実績48%から2027年度60%へ引き上げ、製品トン当たり利益の向上を図っていきます。

・国内生産体制の再構築および事業の再編

粗鋼生産能力2,600万トン(高炉7基体制(仙台製造所電気炉除く))に対し、高炉休止により2027年度粗鋼生産能力2,100万トン程度へとスリム化を実施します。2028年度には西日本製鉄所(倉敷地区)にて革新電気炉を稼働させ、高炉5基+電気炉1基体制とします。

 


 

○海外:海外成長地域のトップクラスのパートナーとのインサイダー型事業拡大

JSWスチール・リミテッド(インド)、ニューコア・コーポレーション(北米)とのパートナーシップはJFEスチール㈱の強みの一つです。グローバルな成長機会を求め、海外トップクラスのパートナーとのインサイダー型事業を推進します。既存事業での利益拡大に加え、引き続き技術優位性がある分野・領域(電磁鋼板/自動車用鋼板・グリーン鉄源等)の事業に注力し、ポートフォリオの最適化を図るとともに、インドにおける電磁鋼板拡販等の前中期投資案件の早期立ち上げに経営資源を集中させていきます。

 

 


 

(エンジニアリング事業)

多様な事業によるポートフォリオを強みとして収益基盤を強化しつつ、「サーキュラーエコノミーの実現」を通じて事業を拡大するとともに気候変動問題の解決を図ってまいります。

 


 

(商社事業)

国内は数量・案件数に拘り存在感を高め、海外では需要が伸張するエリアにおいてM&Aも含めた加工拠点の増強等によりインサイダー化による現地完結型ビジネスを推進します。

 


 

(京浜地区の土地活用)

「OHGISHIMA2050」の推進にあたり、公共・公益性の高い土地利用転換を図っております。土地事業では、2027年度での累積事業収支は850億円、2035年度に1,000億円を達成します。加えて、京浜地区の立地と当社グループが持つリソースを活用した新規事業の立上げにより企業価値の向上を図り、2035年度に土地事業(賃貸)および事業利用による利益100億円/年を目指します。

 


 

(環境的持続性に向けた取り組み)

前中期で経営上の極めて重要な経営課題と位置付けてきた「気候変動問題」を中心に、グループ全体で積極的に取り組んでいきます。

 


 

 


 

人財戦略等

当社グループでは変革の時代において「人材こそが企業成長の原動力」であると考えています。今回長期ビジョンの策定においては、その経営戦略の実行・実現に向けて「会社の成長」と「社員の成長」を連動させる施策が必要であるとの認識から、長期的な目線での人財戦略を策定しました。

 


 

コーポレートガバナンス

カーボンニュートラルやDX等、当社事業を取り巻く経営環境が、急激かつ大きく変化していくことが想定される中、2025年度より「監査等委員会設置会社」に移行することとしました。前中期で取り組んできた取締役会の実効性向上・監督機能強化に向けた取り組みを更に進展させ、経営の意思決定の迅速化、取締役会における経営方針や戦略に関する議論の充実、および更なる取締役会の監督機能の強化等を目指します。

また、役員報酬に関しても、2025年度に、役員報酬に占める業績連動報酬の比率の向上、ESG報酬として新たな算定指標の追加、株式報酬について株価や株主資本コストを意識した算定指標への変更を実施しました。

 


 

なお、JFEエンジニアリング㈱は、同社が2017年6月および2020年6月に沖縄県竹富町と契約した海底送水管更新工事に関して、入札談合等関与行為防止法違反および公契約関係競売入札妨害罪により同社元社員が有罪判決を受けたことから、建設業法に基づき、2025年5月に国土交通省より全国における水道施設工事業に関する営業のうち公共工事に係るものについて、営業停止命令を受けました。本事案を厳粛かつ真摯に受け止め、再発防止策を引き続き実行することにより、早期の信頼回復に努めてまいります。

 

 

(DX)

当社グループでは「長年蓄積された操業データ・ノウハウ」と「広範な事業領域から生み出される技術」が競争優位性の源泉であると捉えています。前中期に引き続きDXによるビジネス変革と生産プロセス・業務プロセス革新により、強靭な収益基盤構築を目指します。

 


 

 

(財務健全性の確保)

第8次中期経営計画期間中のキャッシュアロケーション(3ヵ年総額)は以下のとおりになります。なお、第8次中期経営計画の財務目標としては、Debt/EBITDA倍率およびD/Eレシオを、それぞれ3倍程度、60%程度と設定しました。財務健全性を確保しつつ、成長投資・カーボンニュートラル対応投資と安定的な株主還元を両立させるべく、財務目標を意識した経営を実行してまいります。

 

 


 

(株主還元方針)

当社は株主の皆様への利益還元を最重要経営課題の一つと考えており、グループ全体として持続性のある企業体質の確立を図りつつ、積極的に配当を実施していく方針としております。第8次中期経営計画においては、引き続き配当性向30%程度といたしますが、安定的に配当を実施する観点から80円/株を下限とする方針といたします。

 

(企業価値向上に向けた取り組み)

当社は、株価を重要な経営指標の一つとして認識しており、現状当社のPBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく下回っていることを重要な課題として認識しております。株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)の安定的な実現、市場からの信頼性を向上させていくことで、企業価値を向上させ、資本市場の評価を高めてまいります。また、社会の持続的発展と人々の安全で快適な暮らしに寄り添う「なくてはならない」存在であり続けることを目指してまいります。

 


 

(注) 上記の記載には、2025年5月8日の第8次中期経営計画、決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス

 (2025年3月31日現在)

[サステナビリティへの取り組みの監督]

JFEグループの企業価値の毀損防止と向上の観点から、リスクマネジメントを含むグループ全体のサステナビリティへの取り組みを監督・指導する体制として、JFEホールディングス㈱社長を議長とし、副社長、執行役員、常勤監査役、各事業会社社長等で構成される「グループサステナビリティ会議」を設置しています。「グループサステナビリティ会議」のもとに「グループコンプライアンス委員会」、「グループ環境委員会」、「グループ内部統制委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「開示検討委員会」、および「企業価値向上委員会」を設置し、グループとしての方針審議や方針の浸透状況の監督、課題や発生した問題および対処事例等についての情報共有を行い、JFEグループのサステナビリティへの取り組みを監督・指導しています。また、「グループサステナビリティ会議」における審議事項のうち、グループの基本方針、活動計画、重要施策の内容および重要事態発生時の対応等について、取締役会に定期的に報告し審議することにより、指示監督を受けています。

 

特に気候変動問題については、「JFEグループ企業行動指針」の中で、地球環境との共存を図るとともに、快適な暮らしやすい社会の構築に向けて主体的に行動することを定めており、環境保全活動の強化や気候変動問題への対応等の「地球環境保全」は持続可能な社会を実現する上で非常に重要な課題として認識しています。

 

[グループサステナビリティ会議の活動状況]

「グループサステナビリティ会議」は、約3ヶ月に1回程度開催し、独占禁止法、公務員等に対する贈収賄を含む汚職防止に関する法令等の遵守、および人権、人事労働、安全・防災、環境、気候変動、品質、財務報告、反社会的勢力への対応、情報セキュリティ等のESGリスクも含むリスクマネジメントや社会貢献等の多岐にわたる範囲を対象として、グループの取り組みに関する方針審議(重要案件に対する指示・指導を含む)、方針の浸透状況の監督、および課題、発生した問題への対処事例等についての情報共有、水平展開を行っています。

 

[各事業会社との連携]

各事業会社においても各々の会議体を設置しており、JFEグループの企業価値の毀損防止と向上の観点からグループ全体の取り組みを推進するため、グループサステナビリティ会議と連携して運営しています。JFEスチール㈱では、「サステナビリティ会議(議長:社長)」の中に、コンプライアンス、地球環境、リスクマネジメント、安全・防災、顧客満足、社会貢献等の委員会・部会を設け、対象分野ごとの積極的な活動を展開するとともに、グループ会社を含めたサステナビリティ意識の浸透を図る活動を進めています。JFEエンジニアリング㈱およびJFE商事㈱においても、コンプライアンスや環境に関する委員会等を設け、サステナビリティの実現に向け取り組んでいます。

 

サステナビリティ推進体制図>(2025年3月31日現在)

 


 

(2)サステナビリティ全般に関するリスク管理

JFEホールディングス㈱が持株会社として、「内部統制体制構築の基本方針」に基づきグループの包括的なリスク管理を担っており、当社の取締役会がリスク管理の監督およびその実効性を確認する体制を構築しています。

具体的には、事業活動、コンプライアンス(独占禁止法・公務員等に対する贈収賄を含む汚職防止に関する法令等の遵守等)、企業理念や「JFEグループ企業行動指針」等の会社方針・規程の遵守、環境、気候変動、人事労働、安全・防災、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント等の人権侵害、品質管理、財務報告、情報セキュリティ等のESGリスクも含むリスクについて責任を有する執行役員等がその認識に努め、必要に応じてJFEホールディングス㈱のCEO(社長)が議長を務める「グループサステナビリティ会議」において確認・評価し、その対処方針やリスク管理に関する活動計画について審議・決定しています。

取締役会はリスク管理に関するグループとしての方針および活動計画等について定期的に報告を受けるとともに、リスク管理に関わる重要事項について審議・決定することを通じてリスク管理の監督および実効性の確認を行っています。

 

特に、気候関連リスクの企業レベルでの特定・評価については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)から提言されたフレームワークに従いシナリオ分析を踏まえて行っています。事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、より詳細な影響を分析することによって中期経営計画等の事業戦略策定に活用しています。

 

〇気候変動関連リスクのモニタリング方法

「グループサステナビリティ会議」「グループ経営戦略会議」または「経営会議」では、経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクについてモニタリングしています。モニタリング方法としては、各事業会社の環境委員会等で審議した気候関連問題について四半期に一度報告を受けており、対策を講じています。JFEグループ環境委員会ではリスクに関する情報の集約と管理の強化を行い、リスクの発生頻度や影響の低減を図るだけでなく、機会の最大化に取り組んでいます。

 

(3)当社が重要であると判断したサステナビリティ項目の個別開示

[経営上の重要課題の特定]

JFEグループは、さまざまなステークホルダーのニーズに対し、グループの資本をどのように投入すれば、社会に対するマイナスの影響を最小化し、当社グループならではの社会的価値創造の最大化につながるのかという観点から、重要課題の特定とKPIの設定による課題への取り組みを推進してきました。2016年には、グループ事業特性を踏まえた「社会からの期待事項」として35項目のCSR関連課題を網羅的に抽出し、①ステークホルダーからの期待度、②事業との関連性(社会への影響度)の両軸から優先順位付けを行うことにより、CSR重要課題(5分野・13項目)を特定しました。

2021年度には、第7次中期経営計画の策定において、「環境的・社会的持続性(社会課題解決への貢献)」を確かなものとし、「経済的持続性(安定した収益力)」を確立することが、JFEグループの持続的な発展のために重要であると認識し、これまでのCSR重要課題に、経済面の重要課題を加えて再編し、「経営上の重要課題」を特定しました。

特定した経営上の重要課題は以下の13項目です。このうち、サステナビリティに関する項目として、「気候変動問題解決への貢献」「労働安全衛生の確保」「多様な人材の確保と育成」「コンプライアンスの徹底」「人権の尊重」の課題の分野に分類される重要課題を選定しました。

 

<第7次中期経営計画で特定した経営上の重要課題>

 


 

①気候変動問題解決への貢献
[ガバナンス・リスク管理]

気候変動問題に関するガバナンスについては「(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス」に、リスク管理については「(2)サステナビリティ全般に関するリスク管理」に、それぞれ記載しております。

 

[戦略]

気候変動問題に関わるさまざまなリスク・機会は、当社グループの事業戦略に以下のように統合されています。当社グループは、2021~2024年度の事業運営の方針となる第7次中期経営計画を策定し、グループの中長期における持続的な成長と企業価値の向上を実現するために、気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付けました。引き続き、2025~2027年度の事業運営の方針となる第8次中期経営計画においても同様に位置付けています。

そして、「環境的・社会的持続性の確保」を主要施策の一つとして掲げ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定することで、気候変動問題への取り組みを事業戦略に組み込むとともに、TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組んでいます。シナリオ分析をはじめとするTCFD提言に沿った情報開示を進めると同時に事業に影響を及ぼす重要な要因を選定し、特定したリスクと機会、評価を経営戦略に反映しています。

「JFEグループ環境経営ビジョン2050」では、カーボンニュートラルの実現に向けて、「鉄鋼事業のGHG(温室効果ガス)排出量削減」「社会全体のGHG削減への貢献拡大」「洋上風力発電ビジネスへの取り組み」という3つの戦略を軸に企業活動を行っていくことを掲げています。製鉄プロセスにおいては、GHG排出削減に向けた取り組みとともに、水資源・エネルギーの再利用に加え、環境に配慮した商品・プロセス技術の開発や資源循環ソリューションの提供を通じて積極的に環境負荷低減を推進していきます。

 

[指標及び目標]

当社グループは、鉄鋼事業会社であるJFEスチール㈱が所属する(一社)日本鉄鋼連盟にて策定された、3つのエコと革新的製鉄プロセス開発を柱とする低炭素社会実行計画を推進しています。この計画では、(一社)日本鉄鋼連盟として、2030年度までに900万トン‐CO削減を目標としてきました。2020年に低炭素社会実行計画のフェーズIが終了、「カーボンニュートラル行動計画」と改め、フェーズⅡ目標として2030年度のエネルギー起源CO排出量を2013年度比30%削減へと改訂されました。鉄鋼事業においてもこの計画の目標達成に向けて積極的な活動を推進しています。(一社)日本鉄鋼連盟は、これらの取り組みに加え、最終的な「ゼロカーボン・スチール」の実現を目指した2030年以降の「長期温暖化対策ビジョン」を策定し公表しました。JFEスチール㈱もこの長期ビジョンの策定に中核的な立場で参画しました。更に、2021年「我が国の2050年カーボンニュートラルに関する日本鉄鋼業の基本方針」を発表し、日本鉄鋼業として早期のゼロカーボン・スチールの実現に向けて、果敢に挑戦することを宣言しました。

また、当社グループは、鉄鋼事業を取り巻く環境変化に対応すべく事業構造改革を実施していく中で、地球規模の気候変動問題の解決を通じた持続可能性の向上を目指しています。GHG排出量削減目標は、第7次中期経営計画において、2013年度比で『2024年度▽18%削減』として活動してきました。更に、2024年度までの技術開発の進捗等を精査および検証した結果を反映して、第8次中期経営計画におけるGHG排出量削減目標は『2027年度▽24%』と設定しました(※)。『2030年度に▽30%以上削減』という目標に向けて取り組んでいきます。

更に、JFEスチール㈱の国内の主要グループ会社においてもJFEスチール㈱と同レベルのGHG削減目標を策定しています。国内外のグループが一丸となって気候変動問題への取り組みを事業戦略に組み込むとともに、TCFDの理念を経営戦略に反映し、GHG排出量削減に向けた取り組みを体系的に推進していきます。

 

(注)※ 第8次中期経営計画より、COを含むGHGの排出量削減を目標として設定。

 

 

課題の

分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

気候変動問題解決

への貢献

JFEグループのCO

排出量削減

JFEスチール㈱:

・2024年度末のCO排出量を2013年度比で18%以上削減達成

・「2024年度末のCO排出量を2013年度比で18%以上削減」において、

 省エネ/技術開発によるCO削減目標306万トンの100%の達成

・グリーン鋼材需要喚起による、JGreeX®採用拡大

JFEエンジニアリング㈱:

・自社工場、オフィスにおけるCO排出量の削減
 2024年度:2013年度比40%削減

JFE商事㈱:

・再生可能エネルギー由来の電力調達等によるCO排出量削減
2024年度国内CO排出量:2019年度比20%削減

(2021年度から2024年度までの4年間で毎年2019年度比5%削減)

社会全体の

CO削減

への貢献

JFEスチール㈱:

環境配慮型商品・技術(※)の市場投入・実装化:

 2024年度:15件以上(2021~2024年度累計60件以上)

JFEエンジニアリング㈱:

・再生可能エネルギー発電施設の提供およびリサイクル事業(プラスチック、食品等)の拠点拡大等により、社会全体のCO削減へ貢献
CO削減貢献量(2024年度):1,200万トン/年

JFE商事㈱:

 鉄スクラップのグローバルな資源循環
 2024年度スクラップ取引量:2020年度比+5%

②バイオマス発電所向け燃料の取扱い数量の拡大と安定供給の仕組み作り

・2024年度バイオマス燃料(PKS・木質ペレット)取引量:2020年度比100%増

・安定供給のため仕入先の拡大

 

(注) ※ 鋼材の製造時または使用段階で、省エネ、省資源、廃棄物・環境負荷物質の排出量削減、有害物質の不使用に貢献できる商品または技術

 

2024年度のCO排出量(Scope1~3)を含むKPI実績については、2025年9月発行予定のJFEグループサステナビリティ報告書に記載予定です。

 

②労働安全衛生の確保、多様な人材の確保と育成(人的資本)
[戦略]

JFEグループは、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在としての地位を確立することを目指しています。複雑化する変化の激しい経営環境の下で、将来にわたって企業価値を向上させ続けるためには、これを支える一人ひとりの従業員の力が重要です。当社は「JFEグループ人材マネジメント基本方針」や「JFEグループ健康宣言」を制定し、人的資本への投資を通じて従業員の能力や活力を最大限に引き出す施策に取り組んでいます。

具体的には、「労働安全衛生の確保」および「多様な人材の確保と育成」を人的資本に関する経営上の重要課題として定め、定量的なKPIを設定して取り組みを推進しています。

 

<JFEグループ人材マネジメント基本方針>

1.人権の尊重と公平・公正な人材マネジメントの推進

すべての社員の人権を尊重するとともに、JFEグループ行動規範、企業行動指針の精神を実現する人材を育成し、公平・公正な人材マネジメントを行う。

 

2.「人を育てる企業風土」の醸成と「働きがいのある職場」の構築

双方向のコミュニケーションの充実により、風通しの良い、人を育てる企業風土を醸成し、安全で魅力に富み、働きがいのある職場環境を構築する。

 

3.ダイバーシティの推進

女性・外国人・高齢者・障がい者等を含めた多様な人材が、その能力を最大限に発揮し活躍できる環境を整える。

 

4.優秀な人材の確保および育成の着実な実施

複雑化・多様化する変化の激しい経営環境のもと、グローバル競争を勝ち抜くため、多様かつ優秀な人材を安定的に採用し、技術力・現場力の強化に必要な技術・技能の蓄積と伝承、グローバル人材の育成を着実に実施する。

 

 

<JFEグループ健康宣言>

1.企業理念の実現のためには、社員一人ひとりの安全と健康は欠くことができないという認識のもと、すべての社員がいきいきと働くことができる職場を実現していきます。

 

2.会社と健康保険組合が一体となって、社員とその家族の心と身体の健康保持・増進に向けたあらゆる取組みを進めていきます。

 

3.安全と健康を最優先する意識の醸成を図り、社員一人ひとりが自立的に活動を実践する健康文化を構築していきます。

 

 

<労働安全衛生の確保>
 労働災害の防止

安全な作業環境を整備し労働災害を防止することは、多様な社員が安心して働くための基本的な要件と考えています。そこで、JFEグループは「安全はすべてに優先する」という基本姿勢のもと、死亡災害件数(0件)および休業災害度数率に関するKPIを定め、取り組みを推進しています。第7次中期経営計画では安全対策への優先的な投資(グループ全体で年間100億円規模)を実施し、類似の災害や繰り返しの災害を防止するための活動強化に加え、最新技術の活用により設備そのもので災害の発生を防止する取り組みに注力しています。例えばAIやセンサーの活用により、作業者を検知し自動で設備を止める技術の開発と適用を進めています。

これらの労働災害防止の取り組みを加速させるインセンティブとするため、2022年度より役員の業績連動報酬に安全に関する指標を導入しています。

 

 社員とその家族の健康確保

安全で魅力に富み働きがいのある職場を実現するため、2016年に「JFEグループ健康宣言」を制定し、健康保険組合や産業保健スタッフと連携して特定保健指導実施による生活習慣の改善等、従業員の健康保持・増進に取り組んでいます。また、喫煙率の低減による受動喫煙の防止等、従業員だけではなく家族の健康保持・増進にも繋がる取り組みに注力しています。

 

<多様な人材の確保と育成>
 ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)

変化の激しい経営環境においては、様々な価値観や考え方が融合する中でこれまでになかった発想や解決法が生まれ、企業価値の持続的な向上に繋がると考えています。そのためJFEグループではDEIの推進を重要な経営課題として位置付け、性別、国籍や価値観、異なるライフスタイル等多様な背景を持つ人材が能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。特に女性の活躍について、取締役会での議論を経て、2022年度より女性管理職登用・女性採用比率等について更なる意欲的なKPIへの見直しを行いました。各事業会社では社長をトップとするDEI推進に関する委員会を設置する等、経営層とDEIの推進組織が一体となって議論し、全社方針の策定・展開を実施しており、女性管理職の候補者を拡大する「採用」、社内外ネットワーキングの充実やロールモデル提示等の「定着」、女性社員の個別育成計画作成等の「配置・育成」の観点から様々な施策を推進しています。

 

 人材育成の推進

従業員一人ひとりの能力向上と、海外事業の拡大に対応したグローバル人材の育成に重点を置き、研修・教育の充実を図っています。また、JFEグループの経営戦略の一つであるDX戦略の推進に必要な人材の確保・育成にも注力しています。例えばJFEスチール㈱では実際の業務や製造プロセスを熟知する社内人材を、習熟度別にリスキリングすることにより、社内データサイエンティストの養成を進めています。2024年度末時点で662名を養成済みであり、今後も更なるDX人材の確保・育成に注力していきます。

 

 働きがいのある職場の実現

多様な人材が活き活きと能力を発揮するために、従業員が働きがいを感じられるための社内環境の整備に取り組んでいます。

当社および各事業会社ではエンゲージメントサーベイを年1回実施して社員意識を定期的に把握し、働きがい等に関する課題の特定や施策の検討を行っています。これまで、自発的アクションにより新たなキャリア獲得の挑戦機会を提供する「社内公募制」の実施や、従業員の成長を支援するための「1on1ミーティング」の実施等、働きがい向上につながる様々な施策を実行してきました。また、賃金も働きがい向上に重要な要素の一つであり、当社および各事業会社では初任給を含む処遇の引き上げを実施しています。

JFEスチール㈱では、人事制度のみならず企業文化変革も含めた多面的な施策を推進する「人財戦略本部」を2024年4月に新設し、社員の働きがいを高め、会社と社員がともに成長することを目指す企業改革の取り組み(「ReFuture PROJECT」)を推進しています。2024年度に策定したパーパスおよびバリューの従業員への浸透活動や、タウンホールミーティング実施を通じた経営層と従業員の対話強化、より働きやすい職場環境実現のための製造現場を中心とした事務所・福利厚生施設等への投資、従業員一人ひとりの働きがいを向上させることを目指した人事賃金制度改訂をはじめとした一連の施策を展開しており、今後も継続して取り組んでいきます。 

また、従業員が働きがいを感じるためには働きやすい職場づくりも重要な要素です。JFEグループでは、多様な従業員が一人ひとりの事情に応じた、柔軟な働き方を選択できるようにすることで、働きがいや充実感を得ながら仕事をし、その上で会社の生産性向上につなげていくことを目指し、「新しい働き方」の取り組みを推進しています。例えば在宅勤務制度の拡充によるテレワークの推進、コアレスフレックス制度の導入、チャット・WEB会議ツールの導入、RPAの推進、ペーパーレス化等を実施しており、これらの取り組みを通じてより付加価値の高い働き方を目指しています。またワークライフバランスの充実を図るため、年休奨励日の設定等により、休暇を取得しやすい風土を醸成しています。

これらの働きがい向上の取り組みを加速させるインセンティブとするため、2025年度より役員の業績連動報酬に従業員の働きがいに関する指標を導入しています。

 

[指標及び目標・実績]

(※ST:JFEスチール㈱、EN:JFEエンジニアリング㈱、SH:JFE商事㈱)

課題の

分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

2024年度実績

労働安全衛生の確保

労働災害の防止

①共通:死亡災害件数 0

0

休業災害度数率

ST:0.10 以下

EN:0.25 以下

SH:0.15 以下

 

ST:0.15

EN:0.22

SH:0.37

③重点施策

ST:

(1)類似災害防止活動の強化ヒヤリも含めた対策の全社水平展開継続
 

 

ST:

(1)類似災害防止活動の強化

類災対策会議を毎月実施

ヒヤリ以上 210件を対象として、全社水平展開の必要性を協議・決定し、決めた展開事項を完了するまで進捗フォローを徹底

 

(2)本質安全化の推進強化
2次ミル入口電磁ロック等推進

拡大計画に対し、2024年度100 

 

 

EN:

(1)重篤災害根絶のため、

作業床を含む使用設備の着手前点検

確実な作業計画(危険リスク抽出と防止対策)

適切な作業指示(作業計画周知と予定外作業禁止)により、関係者の安全衛生意識向上と災害防止工夫を推進

以下の重点事項を100%実施

 

・着手前確認

使用設備の着手前点検、高所での開口部・作業床端部養生、手摺設置、作業計画の周知、機械の覆い/囲い、非定常作業時電源断

 

・作業中順守

安全帯使用、吊荷下・重機可動範囲内立入禁止措置、実体を伴う誘導員の配置、機器・工具不使用時電源断

 

 

(2)本質安全化の推進強化

2次ミル入口電磁ロック等推進

拡大計画に対し、2024年度100%達成

 

 

EN:

(1)着手前点検、確実な作業計画に基づいた適切な作業指示の周知徹底、および現場日常巡視、店社パトロールにより確実に実施されていることの確認と是正処置の徹底

 

 

 

課題の

分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

2024年度実績

労働安全衛生の確保

労働災害の防止

(2)IT活用を含む多角的な安全衛生管理

・遠隔監視、情報伝達システム活用

・安全管理業務サポートシステム活用

 

(2)IT活用を含む多角的な安全衛生管理

・遠隔監視、情報伝達システム活用(アプリによる問題点・安全指示・是正状況の即時共有、屋外防水大型LEDモニタによる情報伝達・安全教育、広大な工事用地内における現場遠隔監視、IPカメラ等の活用による店社遠隔パトロール)

 

・安全管理業務サポートシステム活用(CCUS/Buidee(建設現場施工管理サービス)の導入推進)

 

SH:

(1)クレーン玉掛訓練等の100%実施(各社1回以上/年)

 

(2)ハード対策推進(コイル吊り上げ装置のインターロック化)

2024年度の対象24台について対策を完了させる

 

(3)新人や配置転換者への教育体制の再確認および再整備

 

SH:

(1)クレーン玉掛訓練等:各社年1回以上 100%実施

 

(2)ハード対策推進:コイル吊り上げ装置インターロック化 24台完了

 

 

(3)新人や配置転換者への教育に関する規定の見直し:各社見直し完了

社員とその家族の健康確保

特定保健指導実施率 60

 

ST:72.7

EN:41.3%

SH:43.0%

2023年度実績 ※1)

喫煙率低減(社員の健康確保と受動喫煙の防止)

1.5/年減(事業会社合計)

 

0.6%/年減(事業会社合計)

多様な人材の確保と育成

ダイバーシティ&インクルージョン

①女性採用比率

ST:総合職(事務)  男女同数程度

   総合職(技術)  10%以上

   現業職      10%以上

EN:事務系(総合職) 男女同数程度

   技術系(総合職、生産・施工技術職)

            15%以上

SH:業務職      男女同数程度

 

ST:総合職(事務)  55%

   総合職(技術)  12%

   現業職      5%

EN:事務系(総合職) 31%

   技術系(総合職、生産・

      施工技術職)9%

SH:業務職      48%

 

 

課題の

分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

2024年度実績

多様な人材の確保と育成

ダイバーシティ&インクルージョン

女性管理職登用
課長級以上
10以上。うち管理・営業部門は20%以上(2030年目標)

 

課長級以上 4.3% ※2

(うち管理・営業部門8.0%)

男性育児休業または育児関連休暇取得率
配偶者が出産した男性社員全員の取得を目指す

 

97.5

人材育成の推進

一人当たり研修時間

ST:40時間/年以上

EN:20時間/年以上

SH:20時間/年以上

 

ST:45.2時間/年

EN:24.2時間/年

SH:25.1時間/年

DX人材の育成
ST:社内データサイエンティスト育成数 

   2024年度末  累計660

EN:社内データサイエンティスト教育受講者数

   2024年度末  累計210名

 

ST:累計662

 

EN:累計207名

 

働きがいのある職場の実現

年休取得率75以上(事業会社合計)

83%(事業会社合計)

エンゲージメントサーベイ
やりがいに関する設問の肯定割合
75以上

 

ST:70

EN:81%

SH:77%

 

(注)1 ※1 特定保健指導実施率の実績は未確定である為、2023年度の実績を記載しております。2024年度

        の実績については、確定次第JFEグループサステナビリティ報告書に記載予定です。

   2 ※2 2025年4月1日時点の実績を記載しております。

 

 

 

③コンプライアンスの徹底
[戦略]

JFEグループは、幅広く国内外でビジネスを展開していく上で、お客様をはじめ、株主・地域社会等すべてのステークホルダーとの信頼関係が重要であり、「コンプライアンスの徹底」は、その信頼関係の基盤であると考えています。コンプライアンス違反に起因する不正や不祥事は、長期にわたり築き上げた信頼関係を一瞬にして損なうものです。こういったことから、JFEグループでは、企業理念・行動規範に基づいた企業活動を実践するための指針として、「JFEグループ企業行動指針」を制定し、企業倫理の徹底について、JFEグループ役員・従業員に対する周知を図っております。また、組織を構成する全員がコンプライアンスの知識や認識を深め、日々実践していくことが重要だと考え、eラーニングやコンプライアンスガイドブックの作成・読み合わせ等を通じて独占禁止法、下請法、公務員への贈賄等の腐敗行為の防止等に関する教育を行っています。

 

[指標及び目標]

課題の分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

コンプライアンスの徹底

企業倫理の徹底と法令遵守

ルール遵守意識の浸透・徹底に向けた研修等の着実な実施

 (受講対象予定者数に対する受講率100

企業倫理に関する意識調査におけるコンプライアンス意識の向上に関する設問の肯定割合 75以上
 

 

2024年度のKPI実績については、2025年9月発行予定のJFEグループサステナビリティ報告書に記載予定です。

 

 

④人権の尊重
[戦略]

JFEグループは、人権尊重が企業の社会的責任であるとともに経営基盤の一つであると考え、企業行動指針に企業活動において一切の差別を行わないことを明示し、活動してきました。

取り組み姿勢をより明確に示すため、2018年度にグループ各社およびその役員ならびに従業員が遵守すべき規範として制定した「JFEグループ人権基本方針」では、サプライチェーンをはじめとするすべてのステークホルダーに対しても人権の尊重・擁護への協力を求めています。

また、2021年度からは「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権デューディリジェンスを開始するとともに外部の専門家を招いた人権に関するセミナーを開催する等継続的に活動に取り組んでいます。更に、2023年4月には昨今の人権に関する意識や課題の変化を踏まえ、JFEグループの人権尊重への取り組みをより一層強化するため、「JFEグループ人権基本方針」を改正し、各事業会社においても本方針に沿って調達ガイドライン等を点検・改正する等、サプライチェーン全体での取り組みを強化しています。

今後も、人権が尊重・擁護される社会の実現に向けた取り組みを推進していきます。

 

[指標及び目標]

課題の分野

重要課題

指標及び目標(2024年度KPI)

人権の尊重

サプライチェーンにおける人権尊重

・人権啓発研修の受講対象予定者数に対する受講率:100

 

・人権デューディリジェンスの推進

サプライチェーン全体における人権尊重の実現に向け、

以下の取り組みを推進

 

(サプライヤーの人権リスク管理体制構築)

・2023年度に調査を実施したサプライヤーに対し、調査結果をフィードバックするとともに、フォローが必要であると判断した取引先に対しては、改善に向けた支援を実施

 

(グループ会社への人権デューディリジェンスの展開)

・人権高リスク国に拠点を有する等、調査優先度の高い海外グループ会社に対して、人権リスクに関する調査を実施

・既に調査を行っている国内主要グループ会社に対し、引き続き人権リスクの是正・改善を支援するとともに、定期的なリスク調査や是正状況の確認方法について検討

 

2024年度のKPI実績については、2025年9月発行予定のJFEグループサステナビリティ報告書に記載予定です。

 

3 【事業等のリスク】

本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。それらのリスク要因のいずれも投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③経営体制・内部統制体制 c. 内部統制体制・リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

 

(1)経済状況と販売市場環境(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

 [鉄鋼事業・商社事業]

鉄鋼事業・商社事業においては、各製品市場と地域市場において、競合他社との競争に直面しております。国内鋼材販売は、建築・土木、自動車、産業機械、電気機械等各需要分野に広がっており、販売形態も多岐にわたっております。また、これら国内向けに加え、JFEスチール㈱は42%程度(単独・金額ベース)、JFE商事㈱は53%程度(単独・金額ベース・JFEスチール材含む)を海外に輸出しております。主な輸出先はタイ等のASEAN、韓国、中国向けとなっております。従いまして、今後の少子高齢化に伴う国内市場の縮小や、国内およびアジアをはじめとする世界経済の状況等を背景とした国内外の鋼材需給の動向が当社グループの鋼材の販売量や価格に影響を及ぼす可能性があります。とりわけ海外市場においては、中国の内需減少に伴う輸出の増加や、新興国における鉄鋼生産能力の拡大という構造的な変化により、ますます競争が激化していく可能性があります。また、海外主要国において関税引き上げやアンチダンピング・セーフガード措置等の輸入規制が課せられた場合には、当社グループの輸出取引が制約を受け、業績に影響を及ぼします。一方、当社グループの輸出量が少ない米国、EU等においても、各種輸入規制が行われた結果、その市場から締め出された鋼材が当社グループの主要輸出エリアに還流することにより市場が影響を受け、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外の主要国・地域において大規模かつ包括的な関税が賦課されるような場合には、当該国・地域における当社グループの需要家においても事業戦略・運営の変更や生産・販売量の減少が発生することにより、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、2022年にウクライナにおいて発生したような国際的な紛争も、国内外の鋼材需給の動向の変化を通じて当社グループの鋼材の販売量や価格に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、国内外の鋼材需給の変化に対応して生産数量の最適化を図るとともに、長期的な鋼材需給の動向を見据えて設備の統廃合等による最適な生産体制の構築を図ってまいります。この一環として、粗鋼生産能力2,600万トン(高炉7基体制、仙台製造所電気炉を除く)に対し、高炉休止により2027年度の粗鋼生産能力2,100万トン程度へとスリム化を実施します。また2028年度には西日本製鉄所(倉敷地区)で革新(高効率大型)電気炉を稼働させ、高炉5基+電気炉1基体制とします。一方で、当社グループの基幹製鉄所である西日本製鉄所への戦略的な投資を行い、コスト競争力を向上させることで、市場環境が変化しても収益を確保できる体制を整えてまいります。販売面でも新興国ミルに対して技術優位性の高い商品の販売比率の拡大を進め、収益基盤の安定化を図ってまいります。更に、グローバルな成長機会を求め、海外成長地域におけるパートナーとのインサイダー型事業の拡大を進めてまいります。

商社事業においては、鉄鋼製品を中心に、製鉄原材料、非鉄金属製品、食品等の仕入、加工および販売を行っており、国内外の各製品市場において市場環境の変化に適切に対応できる流通販売網を構築しております。具体的には、国内においては流通再編等を通じ販売力の強化を進めるとともに、基盤強化に必要な設備の更新をタイムリーに進めております。また海外の成長を事業拡大の原動力とし、鉄鋼事業の事業戦略と連携した高付加価値品のサプライチェーンマネジメントの強化に加え、現地完結型事業を強化していきます。また、低・脱炭素社会実現に向けたビジネスとして、バイオマス燃料やスクラップ取引の拡大に加え、廃タイヤ等のリサイクル分野の環境商材に取り組んでいきます。

 

 

 [エンジニアリング事業]

エンジニアリング事業においては、エネルギープラント・ごみ焼却炉等の環境施設・橋梁を中心とした設備のEPC(設計・調達・建設)を行っております。また、DBO(設計・建設・運転)案件における設備の運転保守の受託や、リサイクル・発電・電力小売等の運営型事業を自ら行っております。上記事業のポートフォリオは、公共インフラ(ごみ焼却施設、橋梁等)関連が過半を占めているため、国内経済状況および国・自治体の方針・政策の影響等による国内公共事業の縮小は、応札案件の減少に直結し、その結果、受注高が減少する可能性があります。

また、海外についても同様に対象国の経済状況や政策の変化により、受注高が減少する可能性があります。また、プロジェクト遂行にあたり、資機材等の価格が上昇した場合、建設コストが上昇することになります。建設コスト上昇の影響に左右されない競争力を確保するために、技術開発等を進めてまいります。また、長期安定的な収益源として運営型事業を強化してまいります。

 

(2)原料・エネルギーの市場環境(鉄鋼事業・商社事業)

 [鉄鋼事業]

鋼材の原材料として鉄鉱石、原料炭、合金鉄・非鉄金属・スクラップ等を調達しております。近年これらの原材料の価格は世界的な需給構造変化、主要原産国である豪州・ブラジルにおける自然災害や事故の発生、更には2022年にウクライナにおいて発生したような国際的な紛争等により上昇しており、それを鋼材価格に反映できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、製鉄プロセスに使用する電気・天然ガス等を購入しておりますが、これらの価格も世界的な需給変化、環境規制強化や国際的な紛争等に起因して上昇しており、それを鋼材価格に反映できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

更にこれら原材料・エネルギーについて、生産国における自然災害や事故の発生、国際的な紛争、サプライチェーンの混乱等により調達が困難となった場合、当社グループの生産量・販売量の減少を通じて当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 これに対しては、安価原料の使用技術を開発し、その使用比率の増加を図ることで原料調達におけるコスト削減とコスト変動の低減を図ってまいります。また、豪州ホワイトヘイブン社ブラックウォーター炭鉱の権益の一部の取得や調達ソースの分散化等により、調達不安定化のリスクの低減を図ってまいります。更に、製鉄所内の発電所等のリフレッシュを計画的に進めることにより、調達エネルギーのコスト削減とコスト変動の低減を図ってまいります。

 

 [商社事業]

当社グループ向けに原材料を販売するとともに、当社グループ外への原料販売も行っています。従って、当社グループの活動水準に変化があった場合や、原材料生産国における自然災害や事故の発生、また国際的な紛争、サプライチェーンの混乱等、仕入環境や販売環境に変化があった場合、商社事業の販売量に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、原料調達における低廉化や新たな調達ソースの開発等により、原材料サプライチェーンのリスク低減を図ってまいります。また、当社グループ以外への販路開拓を進め、販売量の維持安定化を進めます。

 

(3)製造設備・システムの安定操業状況(鉄鋼事業)

鉄鋼事業においては、高炉、コークス炉、転炉、連続鋳造機、圧延機、焼鈍炉、発電所等の多数の大規模な製造設備を用いて鉄鋼製品の生産を行っております。これらの設備の中には稼働後数十年を経て更新時期を迎えたものもあります。持続的な安定生産を実現する国内製造基盤を確立するため、これまでも、集中的な設備投資を計画し、老朽設備の更新を順次進めてまいりましたが、これらの設備において設備・システムトラブルが発生した場合、生産量の減少や修繕コストの増加等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、重要設備の更新投資を計画的に進め、製鉄所の製造実力の強靭化を図ってまいります。2019年度より高炉の操業安定化を中心に高炉付帯設備の劣化対応やDX・AI・IoT技術の活用等による基盤整備投資を実施してきましたが、第8次中期経営計画では全プロセスへの水平展開を進めてまいります。

 

(4)設備投資効果・事業投資効果の実現状況(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは収益基盤の維持・向上、事業拡大を目指し、多額の設備投資および事業投資を行っております。

[設備投資]

鉄鋼事業では、安定生産基盤の確立に加え、生産性・コスト競争力の更なる進展のために、国内製造拠点への戦略的な投資を継続しております。東西製鉄所においては、コークス炉の更新、電磁鋼板製造ラインの増強、革新電気炉の導入等を行い、これらの設備の最新鋭化・能力増強を図っておりますが、これらの稼働が遅れた場合や鋼材需要が変化した場合、予定どおりのコスト削減効果や拡販効果が発揮されず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、主要工事の進捗確認を定期的に実施することで、計画的な実施を図っております。また、世界の経済状況や需要動向を常に注視し、変化が生じた場合には、当初の設備投資計画に対して、投資時期や規模等の適切な見直しを行います。

 

 [事業投資]

当社グループは、国内投資に加え、海外成長機会を捉えるための事業投資も推進しております。海外各国における政情や経済情勢の変動、合弁相手先企業の状況の変化等の不測の事態により、期待する収益の獲得や投資回収が困難となる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、世界の経済状況や需要動向を常に注視し、変化が生じた場合には、当初の事業投資計画に対して、投資時期や規模等の適切な見直しを行います。また、事業投資の意思決定の過程では、個社・各地域のリスク評価を行い、そのリスクに応じたフォローを行うことで、リスクの管理を図っております。

 

(5)新製品・新技術の開発状況(鉄鋼事業・エンジニアリング事業)

当社グループは、お客様の高度なご要望にお応えすることで、グローバルで戦うことができる技術力を磨いてまいりました。当社グループの収益基盤を維持・向上していくためには、今後も社会に貢献する世界最先端の新製品・新技術の開発、製造ソリューションの提供、新規事業の探索を行っていく必要があります。これらが計画どおり実施できなかった場合や各種環境変化により計画どおりの効果が発揮されなかった場合、新商品の提供機会を逸することによる販売量の減少、十分な付加価値を付与できないことによる収益性の低下、受注機会の逸失等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、鉄鋼事業では自動車・インフラ建材・エネルギー分野を主軸とし、開発の加速化を図ってまいります。また、これまで以上にお客様のご要望を的確にとらえた開発を推進してまいります。例えば、自動車分野では、お客様との交流を深めてEVI(Early Vendor Involvement)を進化させ、先進ハイテンやその利用技術等の先端技術の提案を続けるとともに、建材分野における新たな付加価値をお客様と共に創り出すソリューション提案活動「JFESCRUM®」の展開、鉄づくりを通し長年にわたり培った製造・運営技術を、鉄鋼業に限らず幅広いお客様の課題解決ソリューションとして提供するソリューションビジネス「JFE Resolus®(レゾラス)」を提供することで、鉄の価値創造に努めています。また、エンジニアリング事業ではプラントの自動運転・遠隔監視等、最先端のAI・IoTを活用した技術開発やエネルギーサービス等の新たな商品・サービスの提案を積極的に進めております。

更に、当社グループでは、技術開発の進捗状況のフォローを行い、市場環境の変化に応じた開発計画の見直しを適宜実施しております。

 

(6)品質保証(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、鉄鋼製品をはじめとした多種多様な製品・サービスをお客様に提供しています。当社グループの製品品質は品質設計・製造部門から独立した品質保証部門により確認し、また、品質保証体制は品質監査部門によりチェックを行うことで保証しておりますが、製品やサービス、品質管理体制等に問題が発生した場合には、補償金の支払いや、社会からの信用失墜により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

これに対しては、グループ会社を含めて品質管理体制を統括する組織を本社内に設置し、品質不具合の撲滅に向けた体制構築を進めております。お客様へ提供する品質データについては、自動測定・伝送化を一層拡充することで、人為的なミスや改ざんの根絶に努めております。また、鋼材の中間素材の識別管理の強化、品質保証体制の社内診断による強化等により、お客様への異常材の流出の未然防止を図っております。

また、エンジニアリング事業における設備のEPC(設計・調達・建設)では、調達した建設資材および機器を使用して建設工事を行っており、設備引渡し後も一定期間は契約不適合責任を負っております。建設した設備において、契約不適合責任のある不具合が生じた場合、請負者の責任において改修工事を実施することになり、追加コストが発生する可能性があります。こうしたリスクに対しては、品質保証体制を整備し、調達品および工事の検査によってリスクの軽減を図っております。

 

(7)受注後の変動リスク(エンジニアリング事業)

エンジニアリング事業における設備のEPC(設計・調達・建設)では、プロジェクト遂行にあたり、資機材の購入、外注業者の起用を行っており、工期が数年間に及ぶプロジェクトもあります。また、運営型事業では、設備の運転に必要な電気・燃料等を購入しており、運営期間が20年間以上に及ぶ事業もあります。市況・景気変動に伴う建設資材費および外注労務費の変動は建設コストに、電気・燃料費等の変動は運営コストに影響を与え、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、受注前の段階(応札段階)においてリスクの洗い出しを実施し、契約条件への織り込み等の対策を行うことで、受注後の変動リスクの軽減を図っております。更に、受注後においては、プロジェクト経験者による第三者視点でのフォローを実施し、リスクを早期に発見し軽減するよう努めております。

 

(8)重大な労働災害(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

多様な事業を展開する当社グループの中には、高所作業、高温作業、重量物の運搬、ガス関連設備での作業等災害の発生率が比較的高い作業を行う職場もあります。当社グループは、高齢者や女性を含め、多様な人材が災害を被ることなく安心して働ける作業環境の整備を進めておりますが、万が一生産設備等の重大事故や重大な労働災害が発生した場合には、事業活動が制約を受け、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対して、各事業会社では重大事故・重大災害の撲滅に努めております。各製鉄所・製造所においては、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格ISO45001の認証を取得し、労働安全衛生マネジメントシステムを継続的かつ効果的に運用していくことで安全衛生水準の向上に努めています。また、作業員が立入禁止区域に入ると警報を発して自動でラインを停止させるAI活用画像認知システムや、ガス濃度や重機との近接をリアルタイムでモニタリングして災害を未然に防ぐシステム等の導入を進めております。

 

(9)気候変動問題(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは大量のGHG(温室効果ガス)を排出する鉄鋼製造プロセスを有しており、当社グループの気候変動問題への対応は、当社グループの事業の持続性に関わる極めて重要な経営課題と認識しております。当社グループのカーボンニュートラルに向けた取り組みが十分でなかった場合や革新的な技術開発が達成できなかった場合は、コスト競争力を失う、お客様との取引が縮小する、資金調達が困難になる等により、国際的な競争力を失い、当社グループの業績等に多大な影響を及ぼす可能性があります。
  これに対して当社グループは、GHG排出量を2013年度比で2030年度に30%以上削減すること、更に2050年にカーボンニュートラル実現を目指すことを経営目標として掲げ、達成に向けて社内の体制を整備し、迅速かつ効率的な推進を図っております。

また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業として「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトに参画し、高炉における水素還元技術開発、高炉排ガスの低炭素技術開発(カーボンリサイクル高炉、CCU(Carbon Capture and Utilization))、 直接水素還元技術開発、電気炉での不純物除去技術開発等の超革新技術の開発も積極的に進め、2024年12月に直接水素還元技術開発に係る小型試験炉を、2025年2月に電気炉での不純物除去技術開発に係る小型試験炉を立上げて試験を開始しています。その中で、いち早く実装可能な革新電気炉を2027年度に改修時期を迎える高炉の代替プロセスとして導入することを機関決定しました。革新電気炉での高品質・高機能鋼材製造や高炉法でのGHG排出量削減に向け、安定的な直接還元鉄の調達ソースを確保することが必要であり、中東での低炭素還元鉄サプライチェーンを構築すべく,具体的な事業スキームの協議も進めています。

加えて、当社グループはGHG排出削減実績量を用いて鉄鋼製造プロセスにおけるGHG排出量を従来の製品より大幅に削減したグリーン鋼材「JGreeX®」の供給を2023年度上期より開始し、既に自動車、造船、橋梁、建築、産業機械、変圧器用等幅広い分野で採用が拡大しております。引き続き、GHG削減価値をサプライチェーン全体で負担する社会分配モデルの実現に向けて取り組んでまいります。

一方、これらのカーボンニュートラルプロセスの導入には多大な技術開発費、設備投資費を要し、大幅な製造コストの上昇は不可避であると考えています。国家戦略として、「GX実現に向けた基本方針」や、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律により、脱炭素に向けた技術開発や設備投資に対する長期的かつ継続的な政府の支援がコミットされましたが、他の鉄鋼生産国と同等の支援が得られない場合、更には既に国際的に高い水準にある日本の産業用電力価格が更に上昇する場合は、他国に対して日本の鉄鋼メーカーのコスト競争力が低下し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。カーボンニュートラル実現に向けては、低価格で大量のグリーン水素や国際的に競争力がある安価な非化石電力の調達が必要不可欠となりますが、これらが国際的に競争力のある価格で供給されない場合、環境価値が適切に鋼材価格へ反映されない場合にも当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。これらを実行していく上では、グリーン鋼材市場の創出・拡大が必要不可欠であり、優先調達や購入支援、規制的措置等の政策支援が必要と考えております。

なお、タクソノミーや炭素国境調整といった政策・制度においては、世界的な保護主義を招く懸念があり、脱炭素への円滑な移行を阻害する恐れがあります。また、グリーン鋼材に関して、国際機関や民間機関を含めて、世界各地で様々な基準や閾値、定義やGHG定量方法の基準が乱立している状況においては、国際的に取引されている鋼材貿易に混乱を引き起こす懸念があります。2024年10月には、(一社)日本鉄鋼連盟の「グリーンスチールに関するガイドライン」を土台として世界鉄鋼協会(The Worldsteel Association)が国際的なガイドラインを定めております。引き続き、グリーン鋼材の削減価値が顧客の製品カーボンフットプリントへ適切に反映されるようガイドラインの改訂を進め、GHGプロトコルやISO等の国際標準化に向けて政府や関係機関とともに議論を深め、排出削減努力を適切に評価し正当な対価をいただける仕組み作りが進むよう、また環境規制が適切な制度として制定されるよう、関係機関に働きかけてまいります。

 

(10)大規模な自然災害、新型インフルエンザ等感染症の急速な感染、戦争、内乱、暴動、テロ活動等(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

大規模な地震・台風等の自然災害、新型インフルエンザ等感染症の急速な感染、戦争、内乱、暴動、テロ活動等は、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、新型コロナウイルス感染症のような感染症の大流行により、世界的な移動制限や都市部のロックダウン等が行われ、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに、需要産業の生産水準が大幅に低下することにより販売数量が減少し、当社グループの業績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが事業活動を行っている地域において国際的な紛争等が発生した場合においても、需要産業の生産水準が大幅に低下することにより販売数量が減少し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。更に、大型台風により設備や建屋の損壊や製鉄所の浸水が生じた場合には、生産量の減少等により当社グループの業績等に影響する可能性があります。あるいは、当社グループの原料の調達先で港湾施設の機能停止により一定期間の生産・出荷停止が生じた場合には、生産量の減少等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

近年激甚化する国内の台風や豪雨に対しては、製鉄所内の排水設備の増強等を実施しております。また、原料の主要な調達先である海外での大規模気象災害に対しては、代替調達先の確保、調達ソースの分散、設備能力の増強を図ってまいります。なお、非常事態に対するBCPを策定しており、例えば大規模地震では、津波に対する避難場所の設置や、通信規制・停電等の状況下での全社指揮命令機能の維持、データのバックアップ等の対策を実施しております。また、新たな感染症のリスクに対しては、全従業員の健康と安全を第一に考え、安心して働けるよう、衛生管理の徹底や時差出勤・在宅勤務等の柔軟な事業運営や、インフラ構築等の環境整備を進めるとともに対策検討チームを発足させ、迅速な対応をとる体制を構築しております。

 

 

(11)他素材との競合(鉄鋼事業・商社事業)

当社グループはGHG排出抑制効果の大きいエコプロダクトや環境配慮型技術を販売しております。自動車車体に適用されるハイテンは、アルミニウムや炭素繊維等の他素材と比べコスト優位性を有し、また軽量化にも貢献するため、他素材への置換は限定的と考えますが、他素材の大幅なコストダウンが実現した場合には鋼材需要が減少し、当社グループの業績に影響する可能性があります。これに対しては、継続的なコストダウンや性能向上に努め、他素材への置換を抑止するとともに、樹脂等の軽量素材を組み合わせたマルチマテリアル構造等も提案し、鉄と他の素材とを組合せた部材の開発を行い、素材としての持ち味をより引き出し、鉄の需要のすそ野を広げるとともに、軽量化へ貢献していきます。

 

(12)情報セキュリティ(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、事業を展開する上で、顧客および取引先の機密情報や個人情報、また、当社グループの機密情報や個人情報を有しております。これらの情報は、外部流出や改ざん等が無いように、グループ全体で徹底した管理を実行しております。過失や盗難、外部からの攻撃等によりこれらの情報が流出もしくは改ざんされた場合、技術優位性の喪失、損害賠償の発生、社会的な信用失墜等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対して当社グループでは、情報管理の諸規定を制定することで、サイバー攻撃やシステムの不正利用による情報漏洩やシステム障害を防止する対策を実施しております。また、情報セキュリティを中心にITに関する重要課題を審議する「JFEグループ情報セキュリティ委員会」を設置し、そこで決定した方針に基づき、情報セキュリティ施策の立案と実施推進を図る社内チームである「JFE―SIRT」にてグループ全体の情報セキュリティ管理レベルの向上を推進しております。更に、2024年4月にJFEサイバーセキュリティ&ソリューションズ㈱を設立し、セキュリティ人材の獲得、育成およびセキュリティ監視機能の強化を推進しております。

 

(13)カントリーリスク(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、成長する海外での需要を捕捉するため、鉄鋼事業・商社事業における現地の鋼材生産・加工ラインへの投資や現地鉄鋼会社との資本提携、エンジニアリング事業における新興国のインフラプロジェクトの受注等、積極的な海外事業展開を推進しております。事業実施地域における政治・経済情勢の変化、テロ・その他の動乱、法改定、大規模自然災害等の不測の事態が発生した場合、生産量の減少、資本提携先とのシナジー効果の減少、法令改定に起因した費用の発生、物流費の増大、連結財政状態計算書に計上したのれんの減損、受注プロジェクトの製造コストの変動等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、事業投融資の審査の過程で各国のリスクに応じた事業のリスク評価を行うことで慎重な投資判断を行うとともに、不測の事態が発生した場合の影響を軽減するために、監視体制の強化、現地での調達ソースの分散化等を図っております。

また商社事業では貿易取引を行っており、対象国の状況により輸出入ができなくなるリスクや、外貨事情等により相手国政府が対外送金を停止した場合の代金回収リスクを負う可能性があります。これに対しては貿易保険等を活用しております。

 

(14)為替レートの変動(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの業績は、為替レートの変動の影響を受けます。外貨建て取引による外貨の受け取り(製品輸出額等)と外貨の支払い(原材料輸入額等)で相殺されない部分がある場合、為替レートの変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、為替予約等を利用したヘッジ取引を適宜実施しております。円安が進行した場合、円換算の原材料コストの上昇等を通じて当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、製品販売価格への反映を図ってまいります。

また、円高が進行した場合、自動車等の需要産業の輸出競争力低下による国内鋼材需要が減少すること、および当社グループの製品の海外市況における競争力が低下することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらに対しては、主に(1)、(5)に記した対応による国内鋼材シェアの確保、および海外の成長地域におけるパートナーとのインサイダー型事業の拡大を進めることで、海外市場環境の変化に柔軟に対応するグローバル供給体制の確立を進めてまいります。

 

 

(15)固定資産の価値下落(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、大規模な鉄鋼製品製造設備等、多くの固定資産を保有しております。当社グループが保有している固定資産について、収益性の低下等に伴い投資額の回収が見込めなくなった場合は、その資産の減損損失の計上を行うことにより、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、主に上記の(1)~(5)、(9)、(11)に記した対応により資産価値の維持向上に努めてまいります。

 

(16)人材確保・育成および職場環境の整備(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループでは、国内の生産年齢人口の減少に伴い、労働力や有能な人材を確保するための各種施策の強化、人材育成による個々の能力向上、省力化による労働生産性向上に取り組んでおりますが、当社グループおよび当社グループのサプライチェーンを構築する企業において、労働力の確保や人材育成が十分でなかった場合、安定的な生産体制や競争力が損なわれることにより当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、DEIを経営課題として位置付け、採用ソースを拡大して多様な人材の確保・活用を図るとともに、多様な人材や意見を尊重する企業風土を醸成し、定着率や生産性の向上に努めてまいります。更に、職場環境の改善や各種制度の充実、IT技術の活用による省力化・効率化についても推進して労働力不足に対応してまいります。

また、適切な労務管理が行われなかった場合、人材の流出や当社グループの信用の著しい低下につながり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対しては、適正な労働時間管理や人権啓発研修の実施、ハラスメント相談窓口の設置等により未然防止を図っております。

 

(17)知的財産の保護(鉄鋼事業・エンジニアリング事業)

当社グループは、事業活動に必要な個々の技術や商標の使用権利を保護する目的で、日本および海外諸国において多数の知的財産権を保有しております。当社グループにおいて事業を遂行する際には、当社外で保有されている知的財産権の調査を行い、その侵害を回避する対策をとっておりますが、万一、第三者より当社グループによる知的財産権の侵害を主張された場合、損害賠償金やロイヤリティの支払い、事業差し止め等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、第三者により当社グループの知的財産権が無効化される場合には、対象となる事業の競争力の低下等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、第三者により当社グループの知的財産権が侵害される場合や、社内外の情報保持者により知的財産情報が漏洩する場合には、技術・ブランド価値の低下や損害金の回収不履行等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、当社グループは海外を含めて当社外の知的財産権の調査・監視体制を強化することで、その侵害の未然防止を図っております。また、海外地域を重点的に重要技術の権利化を進めるとともに第三者による模倣技術・模倣品の監視体制を強化し、当社グループの知的財産権の侵害の抑止を図っております。更に、情報管理に対する社内教育の拡充、退職者等の守秘義務の管理強化を図っております。

 

(18)金融市場の変動および資金調達環境の変化(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの中核である鉄鋼事業は、大規模な設備を有しており、その設備の維持更新に多額の資本を必要とするため、財務健全性の維持が重要です。近年、減価償却費を上回る設備投資を行ってきたことから、有利子負債は高水準で推移しております。そのため金融市場の不安定化や金利上昇、また格付機関による当社信用格付の引下げがあった場合等には、資金調達の制約を受け資金調達コストが増加する可能性があります。

これらに対しては、財務管理指標としてDebt/EBITDA倍率やD/Eレシオを用いて、当社グループ全体ならびに各事業会社の財務管理を行っております。また一部の借入金等について、金利スワップを利用したヘッジ取引を実施しております。足元では、有利子負債を削減するため、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善、保有株式の縮減等の資産圧縮および設備投資・投融資の優先順位見直し等を行い、財務健全性の維持に取り組んでおります。

 

(19)保有株式等の価値変動(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループが保有している株式等の価値が変動した場合は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、上場株式について、その株式保有の意義が認められる場合を除き、保有しないことを原則としており、上場会社株式の売却を進めております。

 

(20)信用リスク(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループが保有する売上債権について、取引先の倒産により貸倒損失が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。このため、徹底した与信管理を行っており、一部リスクの高い取引については信用保険を活用しております。

 

(21)法令・公的規制(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは、日本国内および事業展開する各国において、環境、労働・安全衛生、通商・貿易・為替、知的財産、租税、独占禁止法等の経済法規、建設業法等の事業関連法規、その他関連する様々な法令・公的規制の適用を受けております。これら法令・公的規制が厳格化された場合、(1)、(9)等で述べた影響の他にも、当社グループの事業活動が制約を受けることや対策費用が発生すること等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、内部統制体制の充実を図りこれら法令・公的規制の遵守に努めておりますが、これら規制等を遵守していないと判断された場合、行政処分を課される等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、法令の制定・改廃の検討段階での意見提出を行う等により、法令の適切な制定・改廃に向けた活動を継続してまいります。また、法令の制定・改廃が生じた場合には、当該法令に関する主管部署が業務への影響度を評価し、社内の関係部署に周知する体制を整えております。また、法令テーマ別にコンプライアンス研修を行い、定期的に従業員への周知・徹底を図っております。

 

(22)サプライチェーンにおける人権の尊重(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループは世界各国から原材料や資機材を調達しておりますが、これらのサプライチェーンにおいて人権問題が発生した場合、調達や生産への影響に加え、当社グループの信用の毀損につながり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

これに対しては、人権尊重に関するグループ全体の考え方を示す方針として2018年に「JFEグループ人権基本方針」を定めるとともに、昨今の人権に関する意識や課題の変化を踏まえ、2023年4月に本方針を改正いたしました。各事業会社においては、「調達ガイドライン」や「調達基本方針」「サプライチェーンにおけるサステナビリティ基本方針」等を制定し、人権尊重・法令遵守・環境保全に配慮した購買を行っております。また、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則った人権デューディリジェンスも開始しており、今後、当社グループにおける人権リスクの特定、是正に向けた取り組みの検討および実行等のプロセスを継続してまいります。

 

(23)退職給付債務(鉄鋼事業・エンジニアリング事業・商社事業)

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。金利の変動、制度資産の公正価値の変動、および退職金制度の変更等があった場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(24)持分法適用関連会社の業績悪化

当社および連結子会社は、多数の持分法適用関連会社を有しております。持分法適用関連会社の損失は、当社および連結子会社の持分比率に応じて、連結財務諸表に計上されます。また、当社および連結子会社は、持分法適用関連会社の回収可能価額が取得原価または帳簿価額を下回る場合、当該持分法適用関連会社の株式について減損損失を計上しなければならない可能性もあります。なお、当社および連結子会社は、一部の持分法適用関連会社の金銭債務に対して債務保証を行っておりますが、将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらに対しては、持分法適用関連会社の収益向上の取り組みをモニタリングするとともに、必要な諸施策を実施し、リスク低減に努めております。

 

なお、現時点では予期できない上記以外の事象の発生により、当社グループの事業活動および業績等が影響を受ける可能性があります

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載しております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループにおける生産実績については鉄鋼事業の粗鋼生産量を、また受注実績についてはエンジニアリング事業の受注実績・受注残高を記載しております。

鉄鋼事業は、特定顧客からの受注については反復循環的に生産しているため、受注実績の記載を省略しております。エンジニアリング事業は、請負工事を中心としているため、生産実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。商社事業は、受注生産形態をとらない製品が多いため、生産実績・受注実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

粗鋼生産量(千トン)

前期比(%)

鉄鋼事業

(うちJFEスチール㈱)

23,196

(21,946)

△6.5

(△6.4)

 

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注実績(百万円)

(※1)

前期比(%)(※2)

受注残高(百万円)

(※1)

前期比(%)

(※2)

エンジニアリング事業

579,560

△3.2

994,468

+0.9

 

(注)1 ※1 自治体等から受託したごみ処理施設等の長期O&M契約について、前連結会計年度以前は単年度の売上収益相当額のみを受注実績に計上しておりましたが、当連結会計年度より、契約時に総額を一括計上する方法へ変更しております。当連結会計年度の受注実績および受注残高を旧計上方法で計算した場合の金額は558,517百万円、603,017百万円であります。

2 ※2 前期比は、新計上方法に基づく前連結会計年度の数値および当連結会計年度の数値を比較して算出しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売実績(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業

3,365,191

△9.4

エンジニアリング事業

569,815

+5.5

商社事業

1,438,559

△2.6

5,373,566

 

調整額

△513,919

合計

4,859,647

△6.1

 

(注) 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、特に記載のあるものを除き、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。

重要性のある会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」、重要な見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の国内および海外経済は、緩やかに持ち直しつつも、中国経済の停滞継続や人手不足の影響等もあり、一部に足踏みがみられました。加えて、物価上昇や、アメリカの通商政策による影響等により、先行きの不透明感が強まっております。

このような状況のもと、JFEグループでは、構造改革の完遂、高付加価値品比率の引き上げ、販売価格体系の見直しにより、収益基盤の強化を進めてまいりましたが、国内需要の低迷、中国による周辺国への廉価での輸出拡大により、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに前連結会計年度に比べ減益となりました。

当連結会計年度のセグメント別の業績は、以下のとおりです。

鉄鋼事業は、国内外の需要や海外鋼材市況の低迷等を背景に、当連結会計年度の連結粗鋼生産量は2,320万トンと前連結会計年度と比べ減少しました。売上収益については、販売数量の減少や海外鋼材市況の悪化等を受け、3兆3,651億円と前連結会計年度に比べ3,509億円(9.4%)の減収となりました。

セグメント利益については、構造改革の効果発現および継続的な販売価格の改善やコスト削減に取り組んだものの、海外鋼材市況の悪化や販売数量の減少に加え、棚卸資産評価差等の一過性の減益要因等により、前連結会計年度に比べ1,664億円(82.1%)の大幅な減益となる363億円となりました。

エンジニアリング事業は、受注済プロジェクトを着実に遂行した結果、売上収益は5,698億円と前連結会計年度に比べ299億(5.5%)の増収となり過去最高を更新しました。セグメント利益については、洋上風力案件(モノパイル)発注時期遅れ等により、前連結会計年度に比べ50億(20.5%)の減益となる193億円となりました。

商社事業は、2024年5月に買収したスタッドコ・ビルディング・システムズ・US・LLCおよびスタッドコ・コーポレーションからの収益貢献等があったものの、国内建設分野の需要低迷継続等により、売上収益は1兆4,385億円、セグメント利益は479億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ379億円(2.6%)の減収、10億円(2.0%)の減益となりました。

以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当連結会計年度における連結での売上収益は4兆8,596億円となり、前連結会計年度に比べ3,150億円(6.1%)の減収となりました。事業利益は1,353億円となり、前連結会計年度に比べ1,629億円(54.6%)の減益となりました。税引前利益は1,443億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は918億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ1,240億円(46.2%)、1,056億円(53.5%)の減益となりました。

 

 

b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが3,789億円の収入(前連結会計年度に比べ収入が1,000億円減少)であったのに対し、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産、無形資産及び投資不動産の取得による支出を中心として2,831億円の支出(前連結会計年度に比べ支出が421億円減少)であったことから、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは957億円の収入(前連結会計年度に比べ収入が580億円減少)となりました。

また、財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出を中心として、1,574億円の支出(前連結会計年度に比べ支出が1,120億円増加)となりました。

この結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ638億円減少し、1兆7,664億円となり、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ702億円減少し、1,728億円となりました。

なお、有利子負債は、社債、借入金及びリース負債であります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入、製造費用、受注建設工事の費用支払および販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、鉄鋼事業における収益向上、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)等の戦略投資および製造基盤整備を目的とした設備投資です。

運転資金は、主に金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しております。投資資金は、自己資金を基本としておりますが、自己資金を上回る資金需要については、金融機関からの長期借入金や社債の発行等で調達しております。

当社グループでは、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定することにより、十分な資金の流動性を確保しております。

 

 

c.目標とする指標の達成状況

当社グループは、2021年5月に公表した第7次中期経営計画(2021~2024年度)の中で、以下の財務・収益目標を掲げ、鉄鋼事業の構造改革の完遂、量から質への転換等の施策を着実に遂行することで、収益基盤の強化を進めてまいりました。しかしながら、想定を大幅に超える鉄鋼の事業環境悪化により、最終年度である2024年度において、主要な財務・収益目標を達成することはできませんでした。

一方、インドを中心とした成長マーケットやカーボンニュートラル社会実現に向けたグリーン鋼材等の需要は底堅いとされ、これらの需要を確実に捕捉するため、「第8次中期経営計画」(2025~2027 年度を対象)に基づく取り組みを進めてまいります。(第8次中期経営計画については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。)

 

■第7次中期経営計画

 

 

目標

(2024年度)

実績

(2021年度)

(2022年度)

(2023年度)

(2024年度)

グループ全体

連結事業利益

3,200億円

4,164億円

2,358億円

2,982億円

1,353億円

親会社の所有者に帰属する当期利益

2,200億円

2,880億円

1,626億円

1,974億円

918億円

ROE

10%

15.7%

7.9%

8.6%

3.7%

Debt/

EBITDA倍率

3倍程度

2.8倍

3.7倍

3.2倍

4.5倍

D/Eレシオ

70%程度

80.8%

67.8%

58.0%

54.3%

事業会社

鉄鋼事業

 

 

 

 

 

・トン当たり利益

10千円/トン

14千円/トン

7千円/トン

10千円/トン

2千円/トン

・セグメント利益

2,300億円

3,237億円

1,468億円

2,027億円

363億円

エンジニアリング事業

 

 

 

 

 

・セグメント利益

350億円

260億円

134億円

243億円

193億円

・売上収益

6,500億円

5,082億円

5,125億円

5,399億円

5,698億円

商社事業

 

 

 

 

 

・セグメント利益

400億円

559億円

651億円

489億円

479億円

 

(注)1 D/Eレシオ:格付け評価上の資本性を持つ負債について、格付け機関の評価により資本に算入しております。

2 鉄鋼事業のトン当たり利益:(連結セグメント利益÷単体出荷数量)

 

 

目標

実績

(2021年度)

(2022年度)

(2023年度)

(2024年度)

株主還元方針

(配当性向)

30%程度

28.0%

28.5%

30.9%

69.2%

 

 

なお、当連結会計年度の分析につきましては、「② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

(1)重要な契約等(技術に関わる契約を除く)

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約締結日/契約期間

当社

㈱IHI

今治造船㈱

造船事業に関する株主間協定書

2020年3月27日

(2021年1月1日改訂)

JFEスチール㈱(連結子会社)

キンドリルジャパン㈱

JFEスチール㈱、キンドリルジャパン㈱の包括的提携と、㈱エクサの事業運営に関する合弁協定ならびにJFEスチール㈱からキンドリルジャパン㈱への業務委託契約

2011年4月1日から

2026年3月31日まで

倉敷市、中国電力㈱ 他

岡山県倉敷市における資源循環型廃棄物処理施設整備運営事業(PFI事業)

2002年3月15日から

2025年3月31日まで

※1

ニューコア・コーポレーション(米国)

米国における鉄鋼事業会社カリフォルニア・スチール・インダストリーズ・インクに関する合弁協定

2022年2月2日

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)他

タイにおける電気亜鉛鍍金鋼板の製造販売会社タイ・コーテッド・スチール・シート・カンパニー・リミテッドに関する合弁協定

1999年6月11日

(2001年7月17日改訂)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)他

タイにおける冷延鋼板の製造販売会社タイ・コールド・ロールド・スチール・シート・パブリック・カンパニー・リミテッドに関する合弁協定

2001年7月12日
(2013年2月1日改訂)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、サハビリヤ・スチール・インダストリーズ・パブリック・リミテッド(タイ)

タイでの鉄鋼事業における協力関係強化に関する提携合意書

2012年10月31日

広州薄板有限公司

(中国)

中国における冷延鋼板および溶融亜鉛鍍金鋼板の製造販売会社広州JFE鋼板有限公司に関する合弁協定

2003年10月29日

(2012年4月11日改訂)

東国ホールディングス㈱(韓国)

東国製鋼㈱(当時)への追加出資ならびに厚鋼板に係る業務協力に関する基本合意

2006年9月25日

伊藤忠商事㈱、㈱神戸製鋼所

ブラジルの鉄鉱石生産・販売会社CSNミネラソン社への投資に係わる会社(ジャポン・ブラジル・ミネーリオ・ジ・フェーフォ・パルチシパソインス・LTDA.)に関する合弁協定

2019年11月29日

(2020年2月21日改訂)

JSWスチール・リミテッド(インド)

JFEスチール㈱とJSWスチール・リミテッドの戦略的包括提携に基づく資本参加に関する契約

2010年7月27日

JSWスチール・リミテッド(インド)

インドにおける方向性電磁鋼板の製造および販売に関する合弁協定

2023年8月2日

日本製鉄㈱、双日㈱、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構

ブラジルのニオブ生産・販売会社CBMM社への投資に係わる会社(日伯ニオブ㈱)に関する合弁協定

2011年3月4日

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、ゼネラル・ホールディング・コーポレーションPJSC

(アラブ首長国連邦)

アラブ首長国連邦における大径溶接鋼管の製造販売事業に関する合弁協定

2014年9月1日

台湾プラスチックグループ(台湾)、中国鋼鉄股份有限公司(台湾)他

ベトナムにおける一貫製鉄所プロジェクトに関する運営等を定める当事者間の株主間協定

2015年9月8日

台湾プラスチックグループ(台湾)

ベトナムにおける一貫製鉄所プロジェクトへの資本参加に関する包括提携契約

2015年9月8日

※2

ニューコア・コーポレーション(米国)他

メキシコにおける溶融亜鉛鍍金鋼板の製造販売事業に関する合弁協定

2016年6月8日

広東中南鋼鉄股份有限公司(中国)

中国における特殊鋼棒鋼事業に関する合弁協定

2019年11月28日

 

 

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約締結日/契約期間

JFEスチール㈱(連結子会社)

アタールホールディングA.S.(トルコ)

トルコにおける鉄鉱石採掘およびペレット製造事業に係るアタール・マデンティリック社に関する合弁協定

2020年7月13日

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

「製鉄プロセスにおける水素活用」に関する技術開発の業務委託契約

2022年1月1日から

2027年3月31日まで

JFEスチール㈱、

JFE商事㈱

(連結子会社)

伊藤忠丸紅鉄鋼㈱、阪和興業㈱他

ミャンマーにおける建材向け溶融亜鉛鍍金鋼板およびカラー鋼板の製造・販売事業に関する合弁協定

2017年10月26日

2024年3月14日改訂)

JFEケミカル㈱

(連結子会社)

山東傑富意振興化工有限公司(中国)、山東濰焦控股集団有限公司(中国)

中国タール蒸留事業第2拠点新設に関する合弁協定

2013年6月13日

JFEスチール・オーストラリア(BY)プロプライタリー・リミテッド

(オーストラリア)

(連結子会社)

Qコール・バイヤウェンホールディングス・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)、

バイヤウェン・コール・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)

オーストラリアにおけるバイヤウェン炭鉱の権益保有会社バイヤウェン・コール・プロプライタリー・リミテッドに関する合弁協定

2009年10月8日

JFEスチール・オーストラリア(BW)プロプライタリー・リミテッド

(オーストラリア)(連結子会社)他

ホワイトヘイブン・ブラックウォーター・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)、サウスブラックウォーター・コール・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)他

ブラックウォーター炭鉱資産の売買に関する契約

2024年8月21日

JFEスチール・オーストラリア(BW)プロプライタリー・リミテッド

(オーストラリア)(連結子会社)

ホワイトヘイブン・ブラックウォーター・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)、NS・ブラックウォーター・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)、ブラックウォーター・オペレーションズ・プロプライタリー・リミテッド(オーストラリア)

オーストラリアにおけるブラックウォーター炭鉱に関する合弁協定

2025年3月31日

JFEエンジニアリング㈱

(連結子会社)

合同会社CEPCO-R※3、東邦ガス㈱、東京センチュリー㈱

愛知県田原市におけるバイオマス発電事業会社(田原バイオマスパワー合同会社)に関する出資者間契約

2021年10月5日

月島ホールディングス㈱

国内水エンジニアリング事業の統合に関わる合弁契約

2022年12月5日

 

(注)1 ※1 契約期間満了により、2025年3月31日付で契約が終了しております。

2 ※2 包括的な技術支援・供与が終了したことに伴い、2024年12月31日付で包括提携契約のうち

     当該技術支援・供与に係る契約が終了しております。

3 ※3 合同会社CEPCO-Rは、中部電力㈱の連結子会社であります。

 

(2) 技術に関わる契約

① 技術導入契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

東洋製罐㈱

東洋鋼鈑㈱

タルク缶胴用ポリエステルフィルム積層鋼板に関する技術

2008年1月4日から

対象特許の満了日まで

㈱神戸製鋼所

ダストの還元処理方法に関する技術

2007年9月6日から関連設備の操業が恒久的に停止するまで

JFEエンジニアリング㈱

(連結子会社)

マン・エナジー・ソリューションズ・フランス・SAS(フランス)※

PC型陸用および舶用ディーゼル機関の製造技術に関する特許の非独占的実施権の許諾およびノウハウの提供

1964年7月7日から

解除通知まで

(2013年1月14日改訂)

 

(注)※ 2025年6月4日付で契約相手方の名称がマン・エナジー・ソリューションズ・フランス・SASからエヴァレンス・フランス・SASとなりました。

 

② 技術供与契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

広州JFE鋼板有限公司(中国)

連続酸洗圧延設備および連続焼鈍設備を含む冷延工場の建設・操業・保全に関する技術

2008年6月1日から

終了に合意するまで

JSWスチール・リミテッド(インド)

自動車用鋼板の製造技術 その2

2012年7月12日から

2032年7月11日まで

JSWスチール・リミテッド(インド)

無方向性電磁鋼板の製造技術

2012年11月22日から

2032年11月21日まで

福建福欣特殊鋼有限公司(中国)

ステンレス鋼板の製造技術

2012年11月9日から

解約事由に該当するまで

※1

福建福欣特殊鋼有限公司(中国)

ステンレス鋼板の製造技術 その2

2015年3月19日から

対象特許の満了日まで

※1

フォルモサ・ハティン・スチール・コーポレーション(ベトナム)

鋼板製造技術

2015年9月8日から

解約事由に該当するまで

アルガービア・パイプ・カンパニー(アラブ首長国連邦)

大径溶接鋼管製造技術

2015年9月28日から

解約事由に該当するまで

ニューコア・JFEスチール・メキシコ・S.DE R.L.DE C.V.(メキシコ)

自動車用鋼板の製造技術

2016年10月31日から

解約事由に該当するまで

上海宝武杰富意清潔鉄粉有限公司(中国)

偏析防止プレミックス鉄粉の製造技術

2017年4月5日から

対象特許の満了日まで
※2

宝武傑富意特殊鋼有限公司(中国)

特殊鋼棒鋼の製造技術

2020年3月26日から

解約事由に該当するまで

JFEミネラル㈱

(連結子会社)

ケート・リッジ・アロイズ(プロプライタリー)・リミテッド(南ア共和国)

中低炭素フェロマンガン製造技術

1998年6月28日から

解約事由に該当するまで

 

(注)1 ※1 相手方との合意によって、2024年9月30日をもって失効しております。

2 ※2 相手方との合意によって、2024年12月25日をもって失効しております。

 

③ その他の技術契約

契約会社名

相手方の名称

契約内容

契約期間

JFEスチール㈱

(連結子会社)

ティッセン・クルップ・スチール・ヨーロッパ,AG(ドイツ)

自動車用鋼板分野における包括的技術提携

2002年4月8日から

2027年4月7日まで

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、世界最高の技術をもって社会に貢献することを企業理念とし、顧客ニーズを先取りした独自新商品の開発、高品質な商品を効率的に生産する技術の開発、カーボンニュートラル達成に寄与する商品および製造技術の開発、ならびにグループ全体としてのシナジーを活かした開発により、常に業界をリードし、新たな分野を開拓していくというグループ共通の開発コンセプトの下、各事業会社が創造性にあふれる研究開発を展開しています。また、各事業会社において、AI・IoT・ビッグデータ等のデータサイエンス技術の活用を推進するための組織を設置し、ロボティクス技術を積極的に活用して、製造設備の生産性や商品・サービスの付加価値向上に向けた研究開発等を積極的に推進しています。

グループ全体の研究開発戦略の策定や横断的に取り組むべき重要課題の選定・推進については、当社社長を議長とする「グループ経営戦略会議」の場で、各事業会社が一体となって取り組んでいます。

今後も、経営環境の変化に柔軟に対応しつつ高い収益力を確保するとともに、市場・社会からの高い信頼を獲得し、将来の経営基盤を育成・発展させるべく、積極的な研究開発に取り組んでいきます。

当連結会計年度における研究開発費は42,987百万円であり、主要事業内訳は鉄鋼事業38,946百万円、エンジニアリング事業4,041百万円であります。

なお、当連結会計年度における主な事業別の研究の目的、主要課題および研究成果は以下のとおりです。

 

(1)鉄鋼事業

鉄鋼事業では、社会の持続的な発展と人々の安全で快適な生活のために、「カーボンニュートラル」達成に向けたイノベーションの推進、「デジタル」による製造基盤強化と超革新的プロセス技術の開発、お客様のニーズを先取りした高付加価値品およびカーボンニュートラル社会の実現に繋がる新商品・利用技術の開発を強力に推進しております。

以下、当連結会計年度の主な研究成果を挙げます。

 

<プロセス分野>

JFEスチール㈱は、自動車用薄鋼板を対象とした製造工程の操業データおよび品質データを収集し、品質に対する操業の影響を解析する仕組みとして、多工程一貫品質データ解析システム『J-astquad®』を構築し、運用を開始しました。本システムは、自動車用薄鋼板の安定製造を目的とした、薄鋼板製造における品質管理業務のためのDX基盤技術のひとつです。自動車用薄鋼板をはじめとした、多工程にわたる製造品から構築・運用を始め、今後順次、各種製品群への展開を予定しています。今回構築した『J-astquad®』では、自動車用薄鋼板の製造における製鋼工程、熱延工程、冷延工程、表面処理工程にわたって鋼板の長辺方向に変動する多数のセンサーデータ等の操業データおよび品質データ等を自動的に収集します。それらのデータから、圧延による鋼板の長さの変化や、工程毎の鋼板長辺方向の反転、鋼板先尾端部の切り落とし処理等を考慮して、細分化した鋼板長辺方向位置を、多工程で精緻に合わせた紐づけデータとして生成し、AI技術に基づく詳細な解析を行うことで、品質不良の要因の推定が可能となり、操業改善の迅速化を実現し、品質不良発生率の低減につながっています。

更に、JFEスチール㈱は仮想空間上に構築したデジタルツイン技術の活用により、革新的ラジアントチューブバーナーの短期開発に成功しました。本ラジアントチューブバーナーを東日本製鉄所(千葉地区)冷延工場で長期運用した結果、従来のラジアントチューブと比較して6倍程度の長寿命効果が見込まれるとともに、低NOx化、省エネ化を実現しています。今回の開発では、試験炉の燃焼実験から得られた試験データと物理モデルを元に、仮想空間上に試験炉を忠実に再現したデジタルツインを構築し、ラジアントチューブの炉内支持構造、チューブ形状、バーナー周り、伝熱促進体、熱交換器を独自に開発しました。その結果、従来のラジアントチューブバーナーに対して、長寿命(変形速度1/6)、低NOx(NOx発生量30%低減)、高効率(3%の省エネ化)の革新的ラジアントチューブバーナーの開発に至り、また、従来の約半分の期間での操業運用を実現しました。また、同社は鋼製配管上を吸着走行しながら減肉点検を行う、走行を妨げるケーブル類を不要とした点検ロボットである無線式「Scan-WALKER®」を開発しました。本ロボットは既存の配管点検ロボット有線式「Scan-WALKER®」を改良したものであり、今回製鉄所内の点検作業に試験導入し、遠隔操作による点検範囲拡大と高所作業負荷低減を実現しました。今回、各製鉄所内において、本ロボットを用いて地上からの遠隔操作による検証試験を実施し、局所的な減肉の発見に成功しました。今後は実運用を進め、配管以外の構造物にも展開することで、更なる鋼構造物の健全性確保と作業負荷低減を進めていきます。

 

 

<製品分野>

JFEスチール㈱は、石油メジャー等が参画する「海洋石油・天然ガスに係る日本財団とDeepStarの連携技術開発助成プログラム」の水素関連技術開発Phase Iにおいて、同社製品の電縫鋼管(マイティーシーム®)を用いた、高圧水素輸送用ラインパイプ材の特性評価に関する研究開発を実施してまいりました。この度、約1年間のPhase Iにおける研究成果が認められ、引き続きPhase IIに採択されました。Phase IIでは、海底パイプラインを想定した厚肉高強度UOE鋼管へ研究対象を拡大し、引き続きDeepStarメンバーである石油メジャーのExxonMobil社、Chevron社(米国)、TotalEnergies社(フランス)と連携し、高圧水素輸送用の鋼管材料等の評価基準および方法を確立し、高圧水素輸送海底パイプラインの実用化を目指します。

また、JFEスチール㈱が開発した『壁折リストライク工法』が、国内大手自動車メーカーの国内向け車両の骨格部品であるロッカーインナーの製造において、1180MPa級高張力鋼板のプレス成形時のスプリングバック抑制成形工法として採用されました。一般的に、プレス成形時に材料に残る応力を低減する、もしくはプレス部品にスプリングバックの要因応力を相殺させる応力を付与することでスプリングバックは小さくなります。今回採用された『壁折リストライク工法』は、多工程あるプレス工程の前工程形状を最適化し、スプリングバックの要因応力を相殺させる応力を付与することを特徴とする技術です。今回の工法が採用された対象として、ドアの車両下部に配置される骨格部品であるロッカーインナーは、㈱協豊製作所(以下、「協豊製作所」)が量産を実施しており、同社と協豊製作所の共同開発により『壁折リストライク工法』の量産金型への適用を実現しました。

更に、JFEスチール㈱はコーティングレスで高温水蒸気中での耐酸化性と導電性を両立する、固体酸化物形燃料電池(SOFC)のインターコネクタ用フェライト系ステンレス鋼『JFE―FC1』を開発し、サンプルの提供を開始いたしました。『JFE―FC1』は、セラミックスコーティングに要するコストと作業工程を削減することができるステンレス鋼です。このたび開発した『JFE―FC1』は、長期間の使用後にもバリア機能を持ち続け、かつ発電効率を低下させないよう導電性も維持できる特殊な構造を持った酸化皮膜が生成する、新たな材料設計に基づいて開発されたステンレス鋼です。『JFE―FC1』を適用することで、セラミックスコーティングに要するコストと工程を削減することができ、カーボンニュートラル実現に向けたSOFCの普及促進に大きく貢献します。

 

<表彰>

JFEスチール㈱が開発してまいりました商品、技術は社外からも高く評価されております。例えば、「海岸近傍でも無塗装使用可能な高耐候性鋼の発明」により、令和6年度全国発明表彰発明賞を受賞しました。同社の全国発明表彰受賞は発足以来14回目となります。また、同社の開発した高濃度硫化水素含有天然ガス輸送鋼管用鋼材が、第71回(令和6年度)大河内記念技術賞を受賞しました。

更に、JFEスチール㈱が開発した「連続鋳造における凝固完了位置測定装置」が、第59回機械振興賞 経済産業大臣賞を受賞しました。また、「長寿命・低NOx・高効率ラジアントチューブバーナー」が2023年度日本伝熱学会・技術賞を受賞しました。同社の日本伝熱学会・技術賞の受賞は初となります。

 

(2)エンジニアリング事業

エンジニアリング事業では、「Waste to Resource」、「カーボンニュートラル」、「複合ユーティリティサービス」、「基幹インフラ」の4事業分野にそれらを支える技術基盤である「DX」を加えた5つを重点分野と位置付け研究開発を推進しています。当連結会計年度は、特に「カーボンニュートラル」を最注力分野として重点的な投資を実施しました。具体的には、廃棄物中の炭素を化学原料として最大限有効利用する「ガス化改質と微生物を用いたエタノール製造による廃棄物ケミカルリサイクル技術の開発」に現在取り組んでおります。本開発は、NEDOグリーンイノベーション基金事業「廃棄物・資源循環分野におけるカーボンニュートラル実現」に採択され、2024年11月より実証試験設備の建設を開始しました。本開発ではJFEエンジニアリング㈱のオンリーワン技術である廃棄物から安定的に精製合成ガスを製造する技術をベースに、廃棄物をプラスチック原料やSAF(Sustainable Aviation Fuel)の他、水素源としても有効利用する一連の資源循環プロセスの確立を目指しております。

 

更に、膜分離と物理吸着双方のメリットを活かしたハイブリッド型低消費エネルギーCO分離回収技術や、水素混焼ガスエンジンコージェネレーションシステム等、カーボンニュートラルの実現に向けて様々な研究開発に取り組んでいます。

また、JFEエンジニアリング㈱が開発した商品・技術は社外からも高く評価されており、廃棄物焼却施設の発電効率向上とボイラ長寿命化を目的とした「水噴射と圧力波を組み合わせた高効率ボイラクリーニング装置」は、(一社)日本産業機械工業会主催の第50回優秀環境装置表彰において、経済産業大臣賞を受賞しました。