第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は以下のとおりです。

なお、文中における将来の事項については、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものです。

当社グループは、鉄鋼事業を中核とした資源循環型事業を通じて社会と共生し、日本経済と地域社会の発展に貢献することを経営理念に定めています。この理念の実現を目指し、安全とコンプライアンスを徹底する経営風土を作り出すこと、進取と変革に挑戦する企業風土を醸成すること、メーカーの原点である現場重視の経営体制を構築することを行動指針とし、グループ一丸となって取り組んでいます。

 

(1) 中期経営計画について

当社グループは、2024年4月に、2026年度を最終年度とする3か年の中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」(以下、「本中期計画」)を策定・公表しました。

前中期経営計画「NeXuS 2023」に続き、本中期計画のタイトルに用いている英単語“nexus”は、「つながり・連携」を意味しており、ここでは次の3つの意味を持たせています。

 

・「グループ内をつなぐ力」▶ グループ総合力の強化

・「外部とつなぐ力」   ▶ 外部との連携強化

・「次代につなぐ力」   ▶ 見えざる価値の向上

 

この「3つのつなぐ力」の強化は、息の長い取り組みが必要であり、本中期計画においても、定性面の中核に据えて取り組んでまいります。

 

当社は創業以来「鉄づくりを通じて社会に貢献する」ことを企業理念として、業容を拡大してきました。当社グループの中核である電炉事業は、鉄スクラップを鉄鋼製品に再生し、社会に送り出す資源循環型事業であり、持続可能な社会の実現に貢献しうる存在です。当社は「100年企業」に向け、創業の精神である“Spirit of Challenge”という経営理念の下、「世界のインフラづくりや地球の環境保全に貢献する企業」「すべてのステークホルダーに貢献する企業」「安全で働きやすい職場づくりを進める企業」「コンプライアンスや品質を重視する信頼性の高い企業」をありたい姿とし、社会の発展と地球環境との調和に貢献する「エッセンシャル・カンパニー」を目指します。

 

①重点方針

本中期計画では、以下の6点を重点方針として取り組みます。

 

<事業の成長に向けた取り組み>

a.「海外鉄鋼事業」:北米事業の強化とベトナム事業の再構築

当社グループの成長戦略は、強みである国内鉄鋼事業におけるコスト競争力と営業力を武器に、成長するグローバル市場への横展開を図ることと考え、「グローカル・ニッチ戦略」のもと、「世界3極体制の確立」に向けて取り組みを進めています。しかしながら、足元の海外鉄鋼事業の業績は、特にベトナムの事業環境悪化に伴い赤字に陥っており、世界3極体制の再構築が最優先課題と認識しています。そこで海外鉄鋼事業については、すでに大型投資が一巡したベトナム事業から北米事業に投資戦略をウエイトシフトすることとします。ベトナム事業については、北部では、すでに建設中の新圧延ラインの稼働開始(製鋼・圧延生産一貫体制の完成)によってコスト競争力を強化、また南部では、生産量を抑えた低在庫操業で業績の変動リスクを軽減させることにより、質の強化と事業の再構築を図ります。一方、北米事業については、米国・カナダともに堅調な需要を捕捉し拡販するため、約600億円の投資を行います。米国における設備老朽化への対応を主眼に、M&Aも視野に、コスト競争力の強化と生産性向上、生産量・出荷量の増加により、収益の拡大を目指します。

 

b.「国内鉄鋼事業」:国内4事業所体制による連携強化と質的向上

2024年3月に連結子会社の関東スチール株式会社を吸収合併、「共英製鋼株式会社関東事業所」としました。国内4事業所体制になったことで、さらなる連携強化による販売体制の効率化、製品の安定的な供給体制の構築を図るとともに、最大需要地である「関東圏」における当社の存在感を高めてまいります。さらに原材料である鉄スクラップ調達の多様化などの川上戦略や加工品など付加価値製品の強化を図る川下戦略、デリバリー機能の強化など質的向上に資する施策を講じ、安定した収益確保を図ります。

 

c.環境リサイクル事業および鉄鋼周辺事業

環境リサイクル事業については、これまで35年にわたり鉄づくりと廃棄物処理を一体として行ってきた当社の強みを改めて訴求し、アフターコロナの反動で落ち込んでいる廃棄物処理量の改善を図ります。特に電炉溶融処理の先駆者としての処理実績と保有する多くの許認可を背景に、アスベスト処理など社会課題となっている難処理廃棄物の取扱い強化に努めます。また資源循環型社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーへの取り組みも強化します。

鉄鋼周辺事業については、国内とベトナムで展開する鋳物事業の安定した成長を図ります。

 

<成長を支える基盤強化>

d.無形資産投資に向けた取り組み強化

財務資本や製造資本だけでなく「見えざる価値」である「人的資本」や「ブランド価値」など無形資産に対する投資を積極的に行い、企業価値の向上に努めます。人的資本投資については、「企業は人なり」の原点に立ち返り、従業員に対し「物質的メリット」「自己実現」「連帯感」「企業理念への共感」が感じられるような施策を実施し、エンゲージメントを高め「3つのつなぐ力」を強化します。具体的には、事務所・厚生棟の新設、省人化・安全対策投資の推進、多様な人材の確保、研修制度の充実、トレーニー制度の活性化、健康経営の促進などに取り組みます。ブランド価値については、「電炉を中核に鉄鋼事業と環境リサイクル事業を同時に行う資源循環型事業」である当社のビジネスモデルをブランディングし、幅広くステークホルダーの皆様への浸透を図り、企業価値向上につなげたいと考えます。

 

e.「100年企業」を目指したESG経営

「環境」に関する取り組みとして、「2050年のカーボンニュートラル」に向け、2030年度に国内生産拠点のCO₂排出量を2013年度対比50%削減します。具体的方策としては、引き続き、燃料転換や太陽光パネル設置、再エネ電力利用の検討など、CO₂削減への取り組みを推し進めます。また、鉄鋼副産物の資源循環に向けた取り組みも継続します。

「社会」に関する取り組みとして、「メスキュード医療安全基金」をはじめとする寄付活動や山口事業所近郊で行っているオリーブ植樹活動など地域社会に貢献する活動を推進し、それらの活動に対し連結当期純利益の0.5%程度を支出します。

「企業統治」に関する取り組みとしては、取締役会の多様性確保やリスクマネジメント委員会のさらなる充実によるリスク管理体制の強化、情報セキュリティ体制の強化などに取り組みます。

 

f.経営基盤の強化

前中期計画中に発生した事故への対応として、安全・安定操業に向けた取り組みを強化します。具体的にはエンジニアリング部門を設置し、国内外の工場の定期診断によるトラブル防止や若手技術者への教育など技術伝承を進めます。

また、前中期計画では営業業務改革として、業務フローの標準化やシステム化など営業面の基盤強化を図ってきましたが、本中期計画では、生産拠点のスマートファクトリー化も進展させ、製造、営業、管理の全方位でデータやデジタル技術を活用した「ものづくり起点のDX」に取り組みます。

加えて、積極的な施策を実行するための投資計画を支えるため、資金調達の多様化を検討、財務規律を堅持し現状の格付水準を維持します。

 

 

②本中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」における定量目標

本中期経営計画の最終年度である2026年度の定量目標・KPI(重要業績評価指標)は次のとおりです。

<財務KPI>

連結売上高

3,800億円

連結経常利益

250億円

出荷量

400万トン体制(国内160万トン・海外240万トン)

ROE

8.0%以上

自己資本比率

50%以上

ネットDEレシオ

0.5倍以下

配当性向

30~35%(1株当たり下限配当額30円)

投資計画

1,100億円/3か年

 

<非財務KPI>

CO₂排出量

50%削減

(2013年度対比2030年度目標:国内生産4拠点)

女性総合職比率

15%以上(単体)

女性管理職比率

3.0%以上(単体)

教育研修費/人

15万円(単体)※2022年度の1.5倍

社会貢献活動支出額

連結当期純利益の0.5%程度

 

設備投資については、維持更新投資のほか、海外鉄鋼事業、特に北米事業の強化に向けての戦略投資、人的資本やブランド価値など無形資産への投資、CO₂削減に向けた環境投資などを中心に、前中期計画で実行が後ろ倒しとなった投資も含めて、3か年累計で約1,100億円を計画しています。

 

③資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応

当社の2025年3月期のROE(自己資本利益率)は、5.4%と目標である8.0%には未達であり、また株主資本コスト(7%程度)も下回っている状況です。ベトナムの事業環境悪化に伴う海外鉄鋼事業の業績低迷などから、現状では市場からの評価は十分に得られておらず、PBR(株価純資産倍率)は1.0倍を下回る低水準で推移しています。

こうした状況に対し当社は、ベトナム事業を含む海外鉄鋼事業の再構築を最優先課題とし、上記重点方針にある「事業の成長に向けた取り組み」を一つひとつ実現することで、ROE8.0%以上を達成し、安定した収益基盤を確立します。併せて、株主還元を強化するため配当方針を見直し、配当性向の目途を従来の「25~30%」から「30~35%」に引き上げました。また「成長を支える基盤強化」の取り組みである人的資本やブランディングなどの無形資産投資も積極的に行い、さらにIR活動の強化を図ることなどを通じ、PBRの改善に取り組んでまいります。その結果が、「100年企業」に向けた持続可能な経営、そして「資源循環型社会の実現に貢献するエッセンシャル・カンパニーになる」ことの実現につながると考えています。

 

(2) 2026年3月期(2025年度)の対処すべき課題

中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」の2年目となる2026年3月期においては、成長のための布石として、大きく3つの取組みに注力していきます。1つ目は、ベトナム北部拠点ベトナム・イタリー・スチール社のハイフォン工場における新圧延工場の稼働開始です。これまではハイフォン(製鋼)とフンエン(圧延)に工場が分かれていた操業面の課題を解消し、ハイフォン工場は、競争力のある製鋼圧延一貫工場として新たなスタートを切ります。これを機に、ベトナムにおける競争力強化とブランド価値のさらなる向上に努めます。

2つ目は、北米における成長投資です。特に、米国拠点のビントン・スチール社は、老朽化対策として、製鋼工場の新設・圧延ラインの大規模リニューアルを実施します。この設備投資は日本円で380億円規模となる大規模投資であり、製造コストの抜本的な削減による増益効果を目的としています。2027年初頭の完成を目指し、当社技術陣の総力を挙げて計画を進めていきます。

3つ目は、2024年5月に公表した「エシカルスチール」を軸としたブランド戦略です。当社は35年以上にわたり、電気炉で鉄をつくる工程において、その高熱を活用して医療廃棄物・産業廃棄物の無害化溶融処理を行ってきました。CO₂削減のみならず、地球の資源を有効活用する資源循環型社会の実現に貢献する企業集団を目指していく、という思いと決意をブランド化し、廃棄物処理から鉄鋼製品の生産・出荷までトレーサビリティを確保した製品を「エシカルスチール」と銘打ち、様々な施策を通じて積極的に発信していきます。今後、環境意識の高い需要家に数多く利用されていくことを期待しています。

当社グループは、今後も資源循環型社会に貢献するエッセンシャル・カンパニーを目指し、強い会社、安定した収益力を備えた企業集団となるべく努めてまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものです。

 

(1)サステナビリティ課題への対応

 当社グループの中核事業である電炉業は、社会で役割を終えた鉄を原材料として鉄鋼製品を製造し、社会に再び供給する資源循環型事業です。また、原材料の鉄スクラップを溶融する過程で数千度の熱を発する電気炉の特性を活かして、医療廃棄物をはじめとする産業廃棄物の無害化溶融処理事業も35年以上にわたり行っています。当社グループは、こうした自らの事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、次の「サステナビリティ基本方針」を定めています。

 

~未来への挑戦~

グループ経営理念のもと、持続可能な社会の実現に向けて

資源循環型事業を通じ、挑戦を続けながら社会の発展と地球環境との調和に貢献する

『エッセンシャル・カンパニー』を目指します。

 

 このサステナビリティ基本方針に基づき、マテリアリティ(経営の重要課題)を特定しています。マテリアリティの特定に当たっては、ステークホルダーの視点で課題を抽出し、当社グループの事業性に照らして評価と分析を重ね、当社グループにとっての重要課題を絞り込みました。

 

マテリアリティ(経営の重要課題)

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快適で安全な社会のために

人々の暮らしの中で役割を終えた様々な資源のリサイクルを通じて、地球環境保全に貢献し世界のインフラを支えます。

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美しい地球環境に向けて

当社グループが発生させる地球温暖化効果ガスや副産物を削減するだけでなく、社会で発生する様々な廃棄物をリサイクルすることで、環境負荷の少ない社会の実現に貢献します。

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価値創造をともにする皆様の期待に応えるために

お客様や取引先からの様々な期待と要請に応える製品・サービスを提供することや、環境負荷の低い原材料・資材を調達することで、バリューチェーンを通じた社会への貢献を目指します。

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より安全で働きやすい職場に向けて

労働災害の撲滅や職場環境の整備、多様な人材の登用、柔軟な働き方の採用を通じて、安全で働きやすい魅力的な職場を実現します。

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地域社会の一員として貢献するために

様々な地域活動や防災活動など地域への貢献を通じて、当社グループが地域になくてはならない存在となることを目指します。

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より公正で誠実な企業活動に向けて

経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制と透明性の高い経営システムを構築し、公正で誠実な企業活動を実践することで社会から信頼される存在を目指します。

 

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する課題への対応を全社的に推進するため、明確なガバナンス体制および枠組みを構築しています。以下の図に示すとおり、各委員会、専門部会、ならびに各事業所およびグループ会社の業務担当部門が連携し、個別の課題に対する検討と対応を行っています。取締役会は、これらの活動に関する報告を定期的にまたは必要に応じて受け、サステナビリティ課題への取り組み状況を監督しています。これにより、全社的な視点からの持続可能な経営の実現を目指しています。

サステナビリティ課題への対応に係るガバナンス体制

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② リスク管理

 当社グループは、サステナビリティ課題の解決に向けて、以下の図に示すようなマネジメント体制を構築しています。グループ全体のリスクを経営的観点から網羅的にスクリーニングし、重要リスクを特定・評価したうえで、マテリアリティの実現に資する対応策を策定・協議しています。また、策定した対応策については、定期的に進捗状況のモニタリングおよびレビューを実施し、必要に応じて見直しを行うことで、継続的な改善を図っています。これにより、リスクの顕在化を未然に防ぐとともに、発生時には迅速かつ的確な対応を可能とする体制を整備しています。

 

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③ 戦略

 当社グループは、マテリアリティの実現に向けた取り組みを進めることが、当社グループの中長期的な成長や、資源循環型社会の実現への貢献につながると考えています。

 マテリアリティの実現に向け、当社グループは、中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」において、マテリアリティに沿った目標・KPIと具体的取り組みを織り込んでいます。これらの取り組みを推進していくことで、経済価値(経済的リターンの獲得)と社会価値(自然との共生や地球環境との調和)を一体的に創出し、持続的な成長と企業価値の中期的な向上を図っていきます。

 

④ 指標と目標

 中期経営計画において、以下の表のとおりマテリアリティに沿った目標・KPIを定め、取り組みを推進していくことによりマテリアリティの実現を目指しています。

マテリアリティ

NeXuSⅡ 2026におけるKPI

具体的な取り組み

快適で安全な

社会のために

人々の暮らしの中で役割を終えた様々な資源のリサイクルを通じて、地球環境保全に貢献し世界のインフラを支えます。

● 売上高:3,800億円

● 経常利益:250億円

● 出荷量:400万トン

(国内160万トン/

海外240万トン)

<国内鉄鋼>

● 関東圏におけるプレゼンスの向上

● 加工品事業の強化(川下戦略)

● スクラップ安定調達(川上戦略)

●付加価値向上の取り組み継続

<海外鉄鋼>

● 3極体制のウエイトシフトによる収益力強化:北米重視、ベトナム北部強化

<環境リサイクル>

● 事業の独自性のブランド化

● 産廃処理ネットワークの再強化

美しい

地球環境に

向けて

当社グループが発生させる地球温暖化効果ガスや副産物を削減するだけでなく、社会で発生する様々な廃棄物をリサイクルすることで、環境負荷の少ない社会の実現に貢献します。

● 2030年度にCO₂国内生産拠点排出量を2013年度対比50%削減

● エネルギー原単

△1.0%/年

● 海外関係会社のCO₂排出量削減に向けた取り組み

● CO₂低排出係数燃料への転換

 ・各拠点での省エネルギーの推進

 ・燃料転換

 ・太陽光発電

 ・海外拠点のCO₂排出量削減に向けた取り組み

● スラグ、ダストの有効利用

価値創造を

ともにする

皆様の期待に

応えるために

お客様や取引先からの様々な期待と要請に応える製品・サービスを提供することや、環境負荷の低い原材料・資材を調達することで、バリューチェーンを通じた社会への貢献を目指します。

 

● 加工部門、加工業者向けサポート推進

● 今後増加が見込まれる産業廃棄物への処理拡大

● 製品荷積み待ち時間の短縮

より安全で

働きやすい

職場に向けて

労働災害の撲滅や職場環境の整備、多様な人材の登用柔軟な働き方の採用を通じて、安全で働きやすい魅力的な職場を実現します。

● 労働災害ゼロ

● 女性総合職比率15%以上(単体)

● 女性管理職比率3.0%以上(単体)

● 教育研修費:15万円/人(単体)

● エンジニアリング部門強化による各工場の安全、安定操業レベルの向上

● 原料検収や生産工程におけるAI導入

● 生産工程における自動化推進

● 人的資本マップに基づく具体的施策の実行

地域社会の

一員として

貢献するために

様々な地域活動や防災活動など地域への貢献を通じて、当社グループが地域になくてはならない存在となることを目指します。

● 社会貢献活動支出額:

連結当期純利益の0.5%程度

● オリーブ園造園による地域社会貢献

● 地域社会貢献基金、メスキュード医療安全基金などを通じた寄付活動の継続

より公正で

誠実な

企業活動に

向けて

経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制と透明性の高い経営システムを構築し、公正で誠実な企業活動を実践することで社会から信頼される存在を目指します。

● 東証プライム上場維持

● 取締役会の機能強化(スキルマトリックスの充実)

● リスクマネジメント体制の強化

● 各種委員会の体制見直し

 

(2)個別のマテリアリティへの取り組み

 上述のマテリアリティのうち、特に重要な課題として識別された項目に係る当社グループの考え方および取り組みは、次のとおりです。

 

■美しい地球環境に向けて:気候変動問題への対応(TCFD提言に沿った取り組み)

 当社グループでは、気候変動問題への対応を重要な経営課題の一つと位置付け、様々な取り組みを行ってきました。今後も、“レジリエンス”(1.5℃および2℃未満シナリオと4℃シナリオに適応する力)の強化のため、2030年、2050年に向けた気候変動に係るリスクと機会への対応を進めていきます。

 ※TCFD:気候関連財務情報開示タスクフォース

 

① ガバナンス

 リスクマネジメント委員会傘下の気候変動部会において、定期的に気候変動リスクのアセスメントと評価について議論していく体制を整備しています。特定したリスクと機会について、業務担当部門である各事業所・グループ会社と共有し、対応策の立案と取り組みの加速を図っています。また、取締役会は、リスクマネジメント委員会から定期的にまたは随時報告を受け、取り組みを監督しています。

 

② リスク管理

 当社グループでは、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しています。気候関連リスクマネジメントを正常に実装・サポート・維持するために以下のプロセスを組織に構築しています。

1) 経営企画部ESG推進室を事務局とする気候変動部会は、グループ全社の気候変動関連リスクと機会の洗い出し、評価を行う。

2) 気候変動部会は、当社グループの気候変動関連リスクマネジメントに係る方針、対応計画の策定を行う。

3) 業務担当部門は、計画に沿いリスクの回避・低減・移転など適切な対応を取る。

4) 気候変動部会は、定期的にリスクマネジメント委員会にリスクマネジメントの効果や成果を報告する。

 

③ 戦略

 当社グループは、1.5℃および2℃未満と4℃のシナリオにおける、2050年の当社グループを取り巻く社会の変化を定義し、それぞれのシナリオにおけるリスクと機会を、経営への影響度および顕在化する可能性と併せて分析・特定しました。さらに、特定した1.5℃および2℃未満シナリオ15項目、4℃シナリオ10項目のリスクと機会を、「カーボンコスト」、「エネルギーコスト」、「原料高騰」、「製品市場」、「自然災害コスト」、「労働環境」の6項目に整理しました。

 これらの課題に対し、下表の取り組みを進めています。

 

 

 

重要なリスク・機会

項目

中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」での対応策

1.5℃および2℃

未満

移行リスク

政策・法

脱炭素政策の躍進

①カーボンプライシングの導入、再エネ賦課金の増加、温対法の強化による事業コストの増加

カーボン

コスト

・省エネルギーの推進

・重油・灯油から都市ガス・LNGへの転換推進

②石油燃料の使用制限によるCO2低排出燃料への移行によるLNGの争奪、価格高騰

エネルギーコスト

技術

脱炭素・省エネ技術の要請

③脱炭素・省エネルギーへの対応技術がニーズに追従できないことによる操業の困難化

カーボン

コスト

・脱炭素・省エネルギー技術の開発推進

・重油・灯油から都市ガス・LNGへの転換技術開発

・リサイクルに適した鉄スクラップを収集・選別し、ロスなく鉄鋼製品にする技術の向上

④高炉から電炉への生産移行による鉄スクラップ・電極の争奪、価格高騰

原料高騰

市場

社会における脱炭素意識の高まり

⑤脱物質主義、人口減少による市場の縮小、製品・サービスの需要減少

⑥高炉から電炉への移行による競争の激化

⑦デベロッパーの価値観変化に伴うコンクリートから木材への切替による需要減少

製品市場

・高強度鉄筋やPC工法など新たな建築工法に対する新製品の開発

・顧客ニーズを踏まえた加工品事業などの新事業への積極的な取り組み

⑧バリューチェーンでの脱炭素の要求に追従できず販売機会の喪失

カーボン

コスト

エネルギー

コストの高騰

⑨発電の電源構成における再エネ拡大による電力コストの増加

エネルギーコスト

・製品価格転嫁と省エネルギーの推進

・太陽光発電・自家消費の推進

物理的リスク

急性

自然災害の

増加

⑩台風や洪水などの自然災害による事業所や各拠点の操業停止

⑪自然災害の発生による原材料調達の困難化

自然災害

コスト

・物理的な影響に備えた事業継続マネジメント(BCM)体制の構築と第三者へのリスク移転

・原材料安定調達のためのサプライチェーンの拡充

 

機会

製品・

サービス

製品市場の

拡大

⑫「資源循環型事業」に対するさらなる貢献への評判による新たな製品市場の形成

⑬CO2排出量の低い製品としての需要増加、販売機会の増加(電炉による鋼材製造、グリーン鋼材やカーボンフットプリントのラベリング製品)

⑭自然災害に対する「国土強靭化」製品としての需要増加、販売機会の増加

⑮平均気温上昇により現場施工の省人化につながるネジ節鉄筋やPC工法などユニット製品の需要の高まり

製品市場

・ESG情報の積極的な開示によるESGレーティングなどの外部評価向上

・高強度鉄筋やPC工法など新たな建築工法に対する新製品の開発

・顧客ニーズを踏まえた加工品事業などの新規事業への積極的な取り組み

 

 

重要なリスク・機会

項目

中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」での対応策

4℃

移行リスク

政策・法

国土強靭化の推進

①「国土強靭化」製品への要求の高まりに対する建築・土木基準の改定対応の遅れによる販売機会の喪失

製品市場

・顧客ニーズを踏まえた加工品事業などの新規事業への積極的な取り組み

技術

国土強靭化の要請

②災害対策の観点からより高強度の鋼材が求められるが、技術開発の遅れによる販売機会の喪失

・高強度鉄筋やPC工法など新たな建築工法に対する新製品の開発

市場

石油燃料の

枯渇

③石油燃料枯渇によるエネルギー、原材料コストの増加

エネルギーコスト

・製品価格転嫁と省エネルギーの推進

物理的リスク

急性

平均気温の

上昇

④平均気温上昇による労働環境の悪化(人的安全確保の困難化)

労働環境

・操業のロボット化・自動化のための設備投資の充実

自然災害の

激甚化

⑤台風や洪水などの自然災害による事業所や各拠点の操業停止

⑥自然災害発生による原材料調達の困難化

自然災害

コスト

・物理的な影響に備えた事業継続マネジメント(BCM)体制の構築と第三者へのリスク移転

・原材料安定調達のためのサプライチェーンの拡充

機会

製品・

サービス

製品市場の

拡大

⑦自然災害に対する「国土強靭化」製品としての需要増加、販売機会の増加

⑧平均気温上昇により現場施工の省人化につながるネジ節鉄筋やPC工法などユニット製品の需要の高まり

⑨生活環境悪化による医療の進展から、医療系廃棄物が増加し、また災害廃棄物の増加からリサイクル事業のニーズ拡大

⑩経済発展と国際的需要増加により、グローバルで販売機会の増加

製品市場

・高強度鉄筋やPC工法など新たな建築工法に対する新製品の開発

・顧客ニーズを踏まえた加工品事業などの新規事業への積極的な取り組み

・北米事業強化のための設備投資

<参考レポート>

●IEA / World Energy Outlook (2020)

●IEA / Energy Technology Perspectives (2020)

●IEA / Iron and Steel Technology Roadmap

●IMF / World Economic Outlook Database (2021)

●ILO / Working on a warmer planet

●IEA / World Energy Outlook (2023)       等

 

④ 指標と目標

 当社グループは、1.5℃および2℃未満シナリオにおける当社グループの移行リスク対応と4℃シナリオにおける社会の物理的リスク緩和を配慮し、当社グループとしていかにCO2排出量を削減するかが重要と考えます。

 従って、CO2排出量を指標とし、目標は、政府が掲げる2050年の温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標に沿って、「2030年度のCO2排出量50%削減(対2013年度:国内生産拠点)」としました。

 上記の目標のほかに、CO2排出量削減に向けて「エネルギー原単位△1.0%/年」をKPIとして設定しています。

 当社グループの2025年3月期のCO2排出量(Scope 1およびScope 2)やエネルギー原単位の実績については、当社ウェブサイトのサステナビリティに関する記載(https://www.kyoeisteel.co.jp/ja/csr/esg/Mate-utsukusii/Mate-utsukusiiCO2.html)をご参照ください。なお、当該実績値は、有価証券報告書提出日現在においては速報値であり、2025年7月末に確定値に更新する予定です。

 

■より安全で働きやすい職場に向けて:人的資本に係る取り組み

 当社は、人的資本が企業価値創造の重要な源泉であるとの考えのもと、人的資本への投資を重要な経営課題の一つと位置づけています。「資源循環型事業を通じて社会に貢献する」という経営理念を社員一人ひとりが常に認識し、得意分野を活かして活躍できるステージを整備すべく、各種施策を実施しています。社員同士が切磋琢磨して個々の能力を高めつつ、社内外との連携や協働によって知見やノウハウを得ながら、次の世代に引き継いでいくことで「100年企業」の実現に資する人材の育成・獲得を目指します。

 こうした考えに基づき、前中期経営計画「NeXuS 2023」では「グループ内をつなぐ力」、「外部とつなぐ力」、「次代につなぐ力」の「3つのつなぐ力」を強化することを重要なテーマとして掲げ、様々な施策を実施してきました。その成果と課題を踏まえ、2024年4月に公表した新中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」においても、引き続き「3つのつなぐ力」の強化に取り組む方針です。「NeXuSⅡ 2026」では、中期経営計画プロジェクトの進捗を管理していくために複数のワーキンググループ(WG)を設けており、その一つである人的資本WGが中心となって施策を推進しています。

 

① ガバナンス

 安全に関する課題は中央安全衛生委員会が、人的資本に関する課題や取り組みについては、本社人事総務部および本社人事総務部のメンバーを含む人的資本WGが中心となり、上記方針に基づいて、業務担当部門である本社各部、各事業所およびグループ会社が具体的な対応にあたっています。取締役会は、これらの取り組みについて、中央安全衛生委員会と本社人事総務部・人的資本WGから定期的にまたは随時報告を受け、監督しています。

 

② リスク管理

 業務担当部門は、中央安全衛生委員会または本社人事総務部・人的資本WGの立案する施策に基づき、自主的なリスク管理・推進計画を策定し、実行しています。中央安全衛生委員会または本社人事総務部・人的資本WGは、業務担当部門との日常的なコミュニケーションの他、定期監査や意識調査の実施等により、各業務担当部門のリスク管理活動をフォローしています。

 

③ 戦略

 当社の人的資本経営戦略は、「資源循環型社会のエッセンシャル・カンパニー」になるという当社の長期シナリオの達成に貢献できる人材を獲得・育成することを主眼としています。その実現のためには、社員が活き活きと働き、能力を発揮する環境を整え、「3つのつなぐ力」を強化する各種施策の実施により、生産性の向上やエンゲージメントの向上を図ることが重要であると考えます。2026年度を最終年度とする「NeXuSⅡ 2026」の策定に当たっては、「企業は人なり」という企業経営の原点に立ち返り、4つのテーマ「物質的メリット」、「自己実現」、「連帯感・チームワーク」、「企業理念への共感」への施策を通じて、エンゲージメント向上に取り組むこととしています。なお、「NeXuSⅡ 2026」においては、人的資本に対して3年間で約50億円の投資を計画しています。

 

<4つのテーマに紐づく主な取り組み>

a.物質的メリットの向上

 物質的メリットについては、主に「社員が心身ともに安心・安全な状態で働ける環境であること」と定義しています。所得水準の引き上げ、工場などの職場環境や寮、福利厚生施設の充実を図るとともに、安全に関する取り組み、健康経営、働き方改革などを進めています。

ⅰ 所得水準の引き上げ

社員の所得水準の継続的な引き上げを目指します。

 

ⅱ 職場環境の整備

工場などの生産設備のみならず、事務所や厚生棟、寮など生産設備以外の環境も整備し、社員が快適に働けるための投資を行っています。当期においては名古屋事業所の事務所棟を更新したほか、山口事業所においても新事務所の建設を進めています。

また、労働生産性を高めるとともに、社員同士が交流する(つながる)ための時間的・心理的余裕が生まれるよう、生産拠点のスマートファクトリー化やIT化による業務効率化を推進します。

 

 

ⅲ 安全に関する取り組み

当社グループでは、生産活動のすべてのプロセスにおいて社員の安全を最優先すべく、グループ全体を横断した中央安全衛生委員会を設置し、安全衛生に関する活動の巡視、課題の解決を行い、安全感度向上を図っています。さらに企業が競争力を維持し続けるためには、安心して活き活きと働ける職場環境を整備することが重要であると考えています。

電炉工場の作業環境は製造業の中でも厳しく、リスクを伴う作業もあることから、今後の事業継続の観点からも作業環境整備は重要な経営課題です。例えば、社員の安全を守り、安心して働ける環境づくりの一環として、製鋼工場にロボットを導入するなどこれまで手作業で行っていた炉前作業の自動化を進めています。引き続き危険作業の撲滅を目指してまいります。

また、VR(仮想現実)技術を利用し、転倒や感電、挟まれなどに繋がる危険行為をまるで現実であるかのように体感することで、安全感度の向上を図るなど、事故の防止について考える機会を設けています。

 

ⅳ 健康経営の取り組み推進

当社グループは、社会の発展と地球環境との調和に貢献する「エッセンシャル・カンパニー」へと成長するためには、企業の根幹である社員一人ひとりが心身ともに健康であることが何よりも重要であると考え、2021年4月に「健康宣言」を制定し、以下の取り組みを推進しています。

イ.社員の健康増進に関する取り組み

・社員の健康課題の把握と必要な対策の実施(35歳以上の従業員・配偶者に人間ドックの受診を奨励・費用支援)

・産業医や協会けんぽと連携した健康保持・増進策(保健指導など)の実施

・健康の保持・増進をテーマとした健康セミナーの実施

・仕事と介護の両立セミナーの実施

・健康管理アプリを活用した生活習慣の見直しと健康チャレンジ活動を実施

・時間外労働の削減、長時間労働の抑止、メンタルヘルスケアの取り組み

・有給休暇の取得推進

・従業員意識調査において、パフォーマンス発揮度合いを評価する設問を設定し、その結果をもとに生産性向上の改善施策へつなげる取り組みを実施

 

ロ.ハラスメント防止への取り組み

当社グループでは、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等のすべてのハラスメント行為については、これを禁じ、見逃しません。問題発生時には、迅速に調査を行うとともに、被害者の救済と再発防止に向けた処置を取ることにしています。

〈ハラスメント防止策〉

・「コンプライアンス・マニュアル」に明記し、社内ポスター・携帯カード等にて周知

・ハラスメント防止ハンドブックの配布

・コンプライアンス研修(年2回)

・相談ルートの体制整備(社内外にコンプライアンス相談窓口を設置)

・従業員意識調査の実施

 

ハ.人権の尊重

当社グループは、自らの事業活動において影響を受けるすべての人びとの人権が尊重されなければならないことを理解し、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進し、その責務を果たします。その指針として「共英製鋼グループ人権ポリシー」を定め、人権尊重の取り組みを推進しています。今後も継続的にグループ内での啓発、理解推進に向けた教育・研修を実施していきます。

 

ⅴ 男性社員の育児参加促進を目的とした育児休暇や育児目的休暇制度の導入

育児休業制度については、女性の取得率が100%であるのに対し、男性の取得率が低迷していた(2021年度では4.3%)ことから、2022年度に男性社員の育児参加促進を図るため、育児制度の大幅改定を行いました。男性が積極的に育児参加することで、職場全体が育児への理解を深めるとともに、育児を応援する職場環境の醸成に繋げたいと考え、時間単位や半日単位での取得が可能な有給の育児目的休暇制度を新設するなど環境整備に努めています。こうした取り組みにより、2024年度の男性の育児休業および育児目的休暇取得率は25.8%となりました。今後は、男性の育児休業取得率のさらなる向上とともに育児目的休暇の取得も推進してまいります。

※実績数値は共英製鋼単体で算出

このような取り組みを評価いただき、2025年3月には、4年連続で経済産業省/日本健康会議による「健康経営優良法人」に認定されました。さらに、事務所棟や厚生棟の更新や研修センターの開設、福利厚生制度の充実など、働く社員にとって快適で魅力ある職場環境整備に向けた取り組みを評価いただき、2025年3月には、福利厚生の充実・活用に取り組む法人を表彰・認証する制度「ハタラクエール」において5年連続で「福利厚生推進法人」に認証されました。

 

b.自己実現(成長機会の提供)

自己実現については、あらゆる階層、職種のすべての社員に学ぶ機会を提供していきます。経営理念のもと挑戦を続けながら社会の発展に貢献し、一人ひとりがプロフェッショナルとして自律して行動する「共英人」を育成し、当社の将来を支える「次世代の人材力」を高めるために、社内外での研修機会の費用を、1人当たり15万円にすることを目指します。

ⅰ 社内教育の充実

2022年4月に人事総務部内に「人財開発室」を設置するとともに、全社の教育拠点となる「研修センター」を開設しました。人財開発室では、全社的な研修体系の再構築を行うとともに、特に製造現場の技術伝承や更なる技術力向上に向け、国内に留まらず海外拠点も含めた教育研修のグローバル化を目指し取り組んでいます。

次世代経営幹部候補には、ビジネスリーダーに求められる戦略思考や行動変革につなげるため、外部の経営アカデミーに派遣し、他社人材との他流試合の機会を設けるなど、若手層から管理職層に至るまで様々な教育機会を提供することにより、将来の経営人材を計画的に育成しています。

また、「世界3極体制」の下、国内外での事業展開により成長を目指す当社グループにとって、特に海外人材の育成は重要な課題と認識しています。2023年4月には、当社の将来を担う若手社員を6か月程度海外に派遣する海外トレーニー制度を開始したほか、国内では語学教育に注力するなどグローバル人材の育成に取り組んでいます。

 

ⅱ 人事評価制度

2021年4月に運用を開始した人事評価制度並びに処遇体系は、職能型と職務型のハイブリッド型とするとともに、目標設定と評価結果のフィードバック時の面談を通じて上司と社員間のコミュニケ―ションを高めることで、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上を図り、公平で透明性が高く、変化の激しい時代においても、柔軟かつ強靭な組織構築が可能な制度としました。「NeXuSⅡ 2026」においても、評価者・被評価者研修を継続的に行い、公正公平な人事評価の徹底を図ります。

 

c.連帯感・チームワークの強化

連帯感・チームワークについては、国内生産拠点で従前より実施している製造技術開発連絡会や、海外子会社も参加するJK大会(職場の小グループで課題解決に取り組む自主管理活動(JK活動)の発表会)、事業所長とグループ全社の社長が一堂に会して当社グループの現状と課題を議論するグループマネジメントカンファレンスなど業務面での交流機会に加え、コロナ禍で休止していた行事を復活・充実させるなどして相互理解を深める機会を増やし、国内外で働く同じ仲間としての連帯感、チームワークの醸成に努めています。

また、新たに2025年4月からは、「グループ内をつなぐ力」の強化施策として、「特定課題の解決」「知識・スキルの習得等」を目的としたグループの人的派遣行為により「グループ内をつなぐ力」を体現する人材を「おむすび」と称し、グループ内交流の活性化を進めています。

さらに、女性、キャリア人材、シニア、外国人、障がい者など多様な人材の採用に積極的に取り組み、様々な視点を取り入れることで、「つなぐ力」の強化を図っています。特に業種柄、女性社員比率が低い(10.3%)中、近年は女性総合職の積極採用を継続し、キャリアデザイン研修などを通じて女性活躍の必要性や役割意識を高めるとともに、持続的に活躍できる職場環境づくりやワーク・ライフ・バランス実現に向けた環境整備に努めています。さらに製造・技術系の女性総合職採用も積極的に進めています。

キャリア人材に関しても、当社は従前より事業の展開に応じて積極的に外部の人材を採用し、社内における経歴に関わらず活躍できる場を整えており、現在は管理・総合職のうち約4割がキャリア採用者となっています。

一方、離職率(定年退職者を除く)は3~4%前後の低水準で定着しており、会社と個人との「選び選ばれる関係」の基盤が構築されています。

※実績数値は共英製鋼単体で算出

 

 

d.企業理念への共感

当社は創業以来、「鉄づくりを通じて社会に貢献する」ことを企業理念として、各種インフラを支える建設用鋼材の供給を中心に事業を行ってきました。さらに、1988年には、感染性の高い使用済み注射針の不法投棄が社会問題になったことをきっかけに、製鋼工程における電気炉稼働時の高温を利用して医療廃棄物を無害化溶融処理する「メスキュード・システム」を開発し、山口事業所を拠点として事業を開始しました。以来、約35年にわたり、当社グループの事業の柱のひとつである「環境リサイクル事業」として、社会課題の解決に貢献しつつ当社グループの成長を支えてきましたが、このたび、鉄づくりと医療廃棄物処理や産業廃棄物処理を一体として行うことで医療・産業廃棄物を資源循環のサイクルに乗せるという当該事業の独自性をブランディングし、改めて訴求することとしました。これにより、社外のみならず、社内にも当社の事業の社会的意義を伝え、企業理念、会社の姿勢への共感を醸成することを目指します。

企業理念への共感については、上記のブランド戦略とも連携し、当社の存在意義や方向性について、社員各層に正確に伝えます。また、各研修には必ず社長が登壇し、会社の課題や展望について直接語り掛けることで、社員のモチベーション向上やコミュニケーションの醸成に努めています。

 

以上のような取り組みを通じて、社員一人ひとりの意欲を高め、組織としての力につなげていくことを目指します。その効果を測るため、2018年から従業員意識調査を実施しています。当該調査では「社員エンゲージメント」と「コンプライアンス」の二軸が測定されており、よりよい組織づくりのために優先的に解決すべき課題の抽出に活用するとともに、重要な経営データとして人事戦略やリスクマネジメント戦略に活用しています。

今後も社員の声を真摯に受け止め、「働きがい」を持って取り組める職場環境整備に努めていきます。

 

④ 指標と目標、取組実績

 当社では前中期経営計画「NeXuS 2023」に続き、現中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」においても、人的資本に関する目標を掲げ、より安全で働きやすく、女性をはじめとした多様な人材が活躍しやすい職場環境の構築に向け取り組んでいます。また、エンゲージメントに関しては、年に1回実施する従業員意識調査のスコアを定点観測することにより、取り組みの進捗を管理していきます。

 なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われていますが、連結グループに属する各社においては、それぞれ課題や取り組み状況が異なるため、連結ベースでは同一指標による管理を行っておりません。このため、次の指標に関する目標および実績は、提出会社のものを記載しております。

 

a. 中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」等における指標・目標と実績

 

目標

実績

目標値

達成年度

2022年度

2023年度

2024年度

女性総合職比率)(注)2、3

15.0

2026年度

12.0

12.6

14.2

女性管理職比率)(注)3

3.0以上

2026年度

3.5

3.0

3.6

有給休暇取得率

85.0

2026年度

74.7

81.5

80.8

1人当たり教育研修費万円

15.0

2026年度

9.9

9.7

10.7

労働災害(度数率)

(注)4、5

0.00

2026年度

1.62

0.40

1.66

(注)1 2023年度の数値には、2024年3月31日付で合併した関東スチール株式会社を含みます。

2 総合職には管理職を含みます。

3 女性総合職比率および女性管理職比率については、事業年度終了の日の翌日を基準日として算定しています。

4 当社と関東スチール株式会社(2024年3月31日付で当社と合併)を合算した数値を記載しています。

5 度数率は100万延べ労働時間当たりの労働災害による死傷者数(災害発生の頻度)です。

 

 

b. その他の人的資本に係る取り組み実績

人的資本に係るその他の取り組みを以下の比率等でモニタリングしています。

 

2022年度

2023年度

2024年度

管理職に占めるキャリア採用者の比率)(注)1

52.6

49.6

46.0

障がい者雇用率)(注)2

2.6

2.6

2.3

男性労働者の育児休業取得率)(注)1

4.3

17.2

15.8

男性労働者の育児休業および育児目的休暇取得率

(注)1、3、4

31.9

25.8

(注)1 2023年度の数値には、2024年3月31日付で合併した関東スチール株式会社を含みます。

2 障がい者雇用率については、「障害者雇用状況報告書」(各年6月1日時点)に基づいています。

3 当該年度に未就学児を扶養する男性労働者に占める育児休業および育児目的休暇取得者の割合を記載しています。

4 育児目的休暇制度は2023年度より導入したため、2022年度の実績はありません。

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項(事業等のリスク)には次のようなものがあります。これらのリスク発生の可能性を的確に認識し、リスクの軽減と発生の回避、リスクが顕在化した際の迅速な対応にグループの総力を挙げて取り組んでいきます(リスクマネジメント体制については、「第4、4、(1)、②、『3 リスク管理体制の整備状況』」のとおりです)。

 なお、文中における将来の事項については、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において判断したものです。

 

(1) 日本製鉄株式会社との関係について

 2025年3月末日現在、日本製鉄株式会社は当社発行済株式の28.1%(間接保有を含む)の議決権を保有する当社の筆頭株主であり、当社は同社の持分法適用関連会社です。しかしながら、当社は自ら経営責任を負い、独立した経営を行っており、今後もかかる経営を継続していく方針です。ただし、同社は当社に対して相応の株式を保有していることから、当社の筆頭株主として議決権行使等により当社の経営等に影響を及ぼし得る立場にあり、同社の利益は当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。

 

(2) 原材料・副資材およびエネルギーの価格上昇ならびに調達制約について

 当社グループが使用する原材料(鉄スクラップ)、副資材(電極、合金鉄等)やエネルギー資源(石油、液化天然ガス等)は、グローバルな需給要因による価格変動リスクにさらされています。特に副資材やエネルギー資源は、原産地が世界的に遍在しており、各国ともに輸入に大きく依存している状況にあります。グリーンフレーションや地政学的要因等により、これらについて価格上昇や供給不足が生じた場合、製造工程におけるコストの他、輸送コストが増加し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、世界3極(日本・ベトナム・北米)に事業展開する強みを活かし、世界各地の最新のマーケット情報を収集しながら、調達価格・時期等について的確な判断を行うとともに、安定的な原材料、副資材調達のため、サテライトヤードの設置や、信頼できる複数の調達先とのアライアンス強化等に取り組みます。また、電力原単位の低減や操業におけるAI等の技術活用を中心とした生産性の向上等、コスト削減の取り組みや、営業力強化、製品品質の向上および付加価値製品の開発等、競争力の向上のための具体的取り組みにより、コスト上昇の影響を吸収するよう努めるとともに、コスト上昇を製品価格に適切に転嫁できるよう、商慣習の見直しに向けて取り組んでいます。

 

(3) 国内鉄鋼市場の縮小に伴う市況の悪化および需要の減少について

 当社グループの中核事業である国内鉄鋼事業は、競合する電炉メーカーが多数存在し、構造的な供給能力過剰問題を抱えています。他方、人口減少が進む成熟した日本経済の下、長期的に見て、国内の公共事業、民間建設需要が大きく伸長することは考えにくく、当社グループの主力製品である異形棒鋼の需要もそれに伴い減少することが考えられます。特に足下では人手不足や働き方改革、夏場の猛暑等による工事量の減少が顕著であり、競合メーカーとの競争に伴う販売価格の下落および出荷量の減少により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、人口増加や経済発展により建設需要の見込まれる海外へ積極的に進出しています。現在、世界3極体制(日本・ベトナム・北米)を盤石とするため、グローカル・ニッチ戦略のもと、各エリアにおいて事業投資を進めるとともに、積極的な設備投資を行い、グループ全体で業績の最大化・安定化に取り組んでいます。また、国内外に多数の拠点を有する強みを活かし、国内外の最新のマーケット情報を収集しながら、国内市場における鉄鋼需要を的確に捕捉するとともに、海外市場の需給と経済先行きを注視し、全社横断的な営業社員育成などによる営業力の強化、新規事業推進室を中心とした新規顧客の開拓、開発室による付加価値製品の開発、ブランド戦略といった取り組みを通じ、競争力の向上を図っています。特に、最大需要地である関東圏においては、2024年3月の吸収合併により当社事業所となった関東事業所を中心に、グループ会社間の協業を一層強化して、同地域における当社グループのプレゼンス向上に注力します。

 

(4) 気候変動に係るリスクについて

 気候変動リスクへの対応が世界的に進む中、温室効果ガス排出規制の強化、カーボンプライシングの導入、情報開示義務の拡大、脱炭素化に向けた技術開発や設備投資負担など、カーボンニュートラル社会へ移行する過程で生じる「移行リスク」や、地球温暖化などの気候変動に伴う台風、洪水、猛暑など異常気象の深刻化による当社グループの工場操業停止、また仕入れ先企業などの事業活動の停滞による原材料調達の困難化、加えて、従業員の安全・健康への悪影響などの「物理的リスク」により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループは、気候変動問題への対応を重要な経営課題の一つと位置付け、リスクマネジメント委員会傘下の気候変動部会において、定期的に気候変動リスクのアセスメントと評価について議論していく体制を整備しています。気候変動部会においては、気候変動が当社の事業活動に与える影響についてTCFDの枠組みに基づいてシナリオ分析し、課題を整理した上で、課題に対する対応として、様々な取り組みを進めています。具体的には、製造工程で排出するCOの排出量削減のため、エネルギー原単位の低減や燃料転換、太陽光パネルの設置による自家発電、緑化事業などに取り組んでいます。また、夏場の暑熱対策や省人化・自動化に向けた設備投資等により、気候変動に伴い過酷化する職場環境の整備を進めるとともに、事業継続計画(BCP)を策定して、有事の際に従業員の安全と製品の安定供給を確保するための手順等を定めています。これらのシナリオ分析に基づくリスクおよび収益機会に関する情報、課題への取り組みについては、有価証券報告書や統合報告書、ホームページなどにおいて継続的な開示を行っています(詳細については、「第2、2、(2)、『■美しい地球環境に向けて:気候変動問題への対応(TCFD提言に沿った取り組み)』」をご参照ください)。

 

(5) 企業の成長に必要な人材の確保に関わるリスクについて

 少子化等による労働市場の需給逼迫や人材流動化が進展する中、「資源循環型社会のエッセンシャル・カンパニー」になるという当社の長期シナリオの達成に貢献できる人材を獲得・育成できないことで、中長期的に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、人的資本に係る取り組みを重要な経営課題の一つと位置付け、「物質的メリット」、「自己実現」、「連帯感・チームワーク」、「企業理念への共感」を4つのテーマとして、種々の施策を実施しています(詳細については、「第2、2、(2)、『■より安全で働きやすい職場に向けて:人的資本に係る取り組み』」をご参照ください)。

 

(6) 自然災害、感染症、戦争・テロ行為等の発生について

 当社グループは日本、ベトナム、米国、カナダに製造、販売等の拠点を設け事業を展開しています。これらの国あるいは地域において、地震、火災、台風および洪水等の自然災害、新たな感染症、戦争・テロ行為やそれらによる軍事的緊張等が発生した場合、さらに当社グループの事業展開がない国あるいは地域でこのような事象が発生した場合、当社グループの事業活動そのものの停滞、または仕入れ先企業等の事業活動の停滞による原材料調達の困難化等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、これらの事象等に係るリスクに備え、事業継続計画(BCP)の策定・訓練の実施、耐震対策、在庫の確保、世界3極(日本・ベトナム・北米)に事業展開する強みを活かした製品・半製品や設備予備品等の拠点間融通など、従業員の安全確保、製品の安定供給のための体制を整備するとともに、損害保険への加入等を通じてリスクの移転に努めています。

 

(7) 為替および金利の変動について

 当社グループのカナダやベトナムの海外子会社は、主に米ドル建ての鉄鋼製品の販売や原材料(鉄スクラップ)等の輸入取引を行っています。また、海外子会社の財政状態や経営成績は連結財務諸表上で日本円に換算されます。そのため、想定を超えた為替相場の変動が生じた場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、為替予約の締結や同一外貨建ての債権債務ポジションの保有により、一定の為替変動リスクの低減を図っています。

 当社グループは、事業資金の一部を金融機関からの借入、社債の発行等により調達しています。金利が急激に上昇した場合、資金調達コストの増加により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、固定金利借入による資金調達や金利スワップ導入による金利の固定化により、金利変動リスクの低減に努める他、棚卸資産の圧縮、売掛・買掛期間の適正化やグループ内資金の有効活用等により資金効率を高めることで、金利負担の削減にも取り組んでいます。

 

(8) 人権に関するリスクについて

 当社グループにおいて、長時間労働やハラスメントその他の人権問題が生じた場合、従業員の心身両面における健康が毀損され、ひいては生産性や従業員エンゲージメントが低下することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、事業拠点ごとに実施するアセスメント、従業員意識調査や相談窓口の運用等を通じて、上記諸問題の端緒を早期に把握することに努めるとともに、省人化・自動化に向けた設備投資や教育機会の充実等を通じて、職場環境の整備、適正な企業風土の醸成に取り組んでいます。

 また、当社グループの事業活動にかかわるサプライチェーンにおいて生じ得る種々の人権問題に対して関心を払わず、あるいは放置した場合、レピュテーションの低下、訴訟対応等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、経営方針として人権尊重に取り組むことを人権ポリシーとして明文化して社内外に公表しています。当該方針に基づき、当社の事業活動における人権への影響評価と、影響評価を基礎とした適切な予防・是正措置の実施およびモニタリングを進めていきます。

 

(9) コンプライアンスに反する事象の発生について

 当社グループが展開する事業に関しては、製品の品質・取引関係・環境・労務・安全衛生・会計基準・税務等の多岐にわたる法規制や、種々の社会的要請が存在することから、コンプライアンス関連のリスクを完全に回避することは困難です。そのため、法規制や社会的要請に反する事象が発生した場合、許認可その他の事業資格の喪失や、レピュテーションの低下、訴訟対応等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、行動指針に高い倫理観を持ち、公正・誠実を旨として行動すべきことを謳い、リスクマネジメント委員会およびリスク・コンプライアンス部会における議論や役員・従業員に対する啓蒙・教育の実施等を通じてコンプライアンス体制を構築するとともに、事業拠点毎にコンプライアンス推進計画を策定・実践するなど、自主的・自律的なコンプライアンス活動の推進に努めています。また、コンプライアンスに関する疑義が生じた場合に、当社グループの役員・従業員等が相談または内部通報できる「コンプライアンス相談窓口」を社内外に設置し、コンプライアンスに反する事象の発生を早期に把握し、自浄作用を発揮できる体制を整備しています。

 

(10) 情報セキュリティおよび情報システム障害リスクについて

 当社グループでは、情報技術を広範囲に活用しており、サイバー攻撃等が発生した場合、業務や操業の停止等の可能性がある他、情報漏洩による機密情報の悪用、情報保有主体との間における紛争の発生およびレピュテーションの低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、ネットワーク境界線の防御、定期的なデータのバックアップ、機器の脆弱性検知や監視サービスの活用等、情報セキュリティインフラ基盤の整備を図るとともに、リスクマネジメント委員会および情報セキュリティ部会におけるリスクの特定や対応方法の検討等の情報セキュリティマネジメントの推進、社員へのセキュリティ教育の実施、セキュリティ専門会社との連携等、機器強化と運用強化の両面で情報セキュリティリスクの回避、低減に努めています。

 また、情報システムやネットワークに障害が発生した場合、業務や操業の停止等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、システム稼働状況の監視、ネットワーク回線の冗長化、障害発生時の復旧手段の標準化、緊急時対応体制の整備等、障害発生の未然防止と速やかな復旧体制の確保に努めています。

 

(11) 海外事業固有のリスクについて

 当社は、ベトナム、米国およびカナダに子会社を所有していますが、各国での予期し得ない政治または法令・規制・社会制度等の変化等により事業活動が停滞する等の事態に陥った場合、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、現地経営陣から定期的に現地の経済状況・鋼材市況や業績の報告を求めるとともに、進出先の国あるいは地域の法令・税制やその変更点等について、外部専門家を活用しながら能動的に情報収集を行っています。

 当該子会社が外国資本との合弁会社である場合、意思決定や事業運営に一定の制約が生じます。この結果、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、子会社の合弁相手先との意思決定の方法や事業運営の役割分担について、当社グループに不利益のないよう合弁契約等において明確に定め運用するとともに、合弁相手先と定期的に子会社の経営に関する情報交換を行う等、連携強化を図り円滑な事業運営に努めています。

 海外事業においては信用リスクが相対的に高く、取引先の業績悪化などで予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、損失・引当の計上が必要となった場合には、当社グループの業績または財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、取引先の信用状態を評価・判断の上で取引先別の与信限度額を設定し、必要に応じ担保・保証を取得することで保全を図るとともに、与信管理を徹底することで、貸倒れリスクのミニマイズ化を図っています。

 

(12) 環境リサイクル事業固有のリスクについて

 環境リサイクル事業においては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、廃掃法)により定められた許可を要しますが、法規制に反する事象が発生した場合、許認可その他の事業資格の喪失等により事業が継続できないことで、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、廃掃法を遵守するよう役員・従業員に対する啓蒙・教育の場を設けるとともに、法令等に関する最新の情報を社内で共有するなど管理体制強化を図っており、廃棄物処理の実務における法令遵守状況の管理強化に努めています。

 また、排出事業者の排出方法に起因して収集および仕分・処理中に事故が発生し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、排出事業者に対し、適切な排出方法を遵守するよう適宜啓蒙・指導を行い、廃棄物処理の実務における安全環境の構築に努めています。

 長期的には廃棄物の排出量の減少が予想される中、顧客である排出事業者からより高度なリサイクル方法への要求が高まっている一方、有力な競争事業者も増加してきている環境下、新しいリサイクル技術の開発や設備導入に係る費用の増加、また技術開発・設備導入遅延などに起因する顧客の減少により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、①機密性の高い完全溶融処理、②4大都市圏に処理拠点を構えた全国的な展開、③全国にある代理店による小口回収という強みを活かした営業の推進、他社処理施設とのネットワーク構築によるワンストップ体制の強化、資源循環型社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーへの取り組み強化等を通じて需要を捕捉するとともに、鉄づくりと医療廃棄物・産業廃棄物処理を一体として行ってきた当社グループの特異性や社会貢献性をブランド化、見える化して訴求力を高め、新たな需要を喚起していきます。

 

(13) 品質に関する問題の発生について

 当社グループの製品に関する品質については、産業標準化法に基づくJISや建築基準法、評定等の公的規準ならびに取引先との品質保証に関する契約等によって規定されています。また、近年各業界において、品質違反、品質偽装等の問題が発生して社会的な耳目を集める状況下、当社グループの製品は、不特定多数の生命・財産に影響を及ぼす建設物や工作物に関連するものが多く、その品質には社会的にも強い関心が寄せられているものと認識しています。品質に関する問題が発生した場合、公的認証や取引の喪失、レピュテーションの低下等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、品質管理室においてグループ横断的な品質統括管理を行い、計画的に品質監査を実施するとともに、中央品質管理委員会において、品質監査で把握された品質管理に関する重要課題に改善指示を行ない、グループ全体の品質問題発生リスクを早期に検出できるようガバナンス強化に努めています。また、複数の生産拠点においてISO9001(品質マネジメントシステム)を取得し、品質管理のための体制整備を行っています。さらに製造工程においては、製品の微細な疵を検出する装置や本数を画像でカウントする機器等を、検査・試験工程においては、手介入によるデータ改竄・誤入力のリスクを低減する自動測定機器や自動伝送システムをそれぞれ導入するなど、ハード面においても品質管理上の問題発生を抑制するための対応を進めています。

 

(14) 環境に関する問題の発生について

 当社グループが展開する鉄鋼事業および環境リサイクル事業(廃棄物処理業)は、操業に伴いばい煙やばい塵、残さが不可避的に発生するという性質上、各種環境法令の規制を受ける他、当社グループの実施する環境保全施策については、生産拠点の所在する近隣住民をはじめ、高い社会的関心が寄せられているものと認識しています。そのため、規制対応や環境保全施策の実施等が不十分であること等によって環境問題が発生した場合には、行政処分等に基づく事業停止やレピュテーションの低下等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、環境監査において法令に基づく環境データの測定や測定結果の照合を行うとともに、環境問題が発生するリスクが残存していないか確認しています。また、複数の拠点において環境マネジメントシステムISO14001 を取得し、環境保全のための体制整備を行っています。排ガス集塵機など環境設備の維持更新、排水量の総量削減のための工場で使用する冷却水のクローズドシステムの構築など、環境保全に資するハード面の整備にも取り組んでいます。さらに、鉄鋼生産および廃棄物処理時に発生する副産物を有効利用するために外部研究機関や技術保有企業と連携を行い、ゼロエミッションの実現に取り組んでいます。加えて、鉄鋼製品については「SuMPO EPD」環境ラベルを取得し、製品の環境負荷データを開示しています。

 

(15) 製造設備のトラブルおよび安全に関するリスクについて

 当社グループが展開する鉄鋼事業は、様々な設備を使用しており、予期せぬ設備故障等のトラブルが発生した場合には、設備の復旧に相当の期間を要して業績に大きな影響を与える可能性があります。

 そこで設備面においては、各種センサー等のIoT技術を用いた予兆保全に取り組むとともに、日頃から設備の老朽化にも留意して綿密な設備管理を行い、製造設備の定期的な保全および計画的な更新に取り組んでいます。また、世界3極(日本・ベトナム・北米)に事業展開する強みを活かし、製品・半製品や設備予備品等を拠点間融通できる体制を構築しています。さらに、エンジニアリング部門を強化し、国内外の製造拠点の設備および操業をチェックし、製造・操業技術を伝承する仕組みや、電気炉炉床耐火物管理システムや取鍋耐火物計測システムの導入により、安全安定操業が実現可能となる仕組みの更なる強化に取り組んでいきます。

 当社グル-プが展開する鉄鋼事業においては、高所作業、高温作業、重量物の運搬、可燃ガスの取扱い等リスクを伴う作業もあり、他業種と比較して類型的に事故や災害が発生しやすい環境にあります。

 当社グループでは、生産活動のすべてのプロセスにおいて社員の安全を最優先すべく各種施策を実施していますが、万一、事故や災害が発生した場合には、当社グループおよび協力会社の社員等の生命・身体が害されることはもちろん、当社グループの業績にも影響を与える可能性があります(安全面の取り組みについては、「第2、2、(2)、『■より安全で働きやすい職場に向けて:人的資本に係る取り組み』」をご参照ください)。

 

(16) 企業買収や資本提携等に係るリスクについて

 当社グループは、今後の事業拡大に向けて企業買収や資本提携等が重要かつ有効であると認識していますが、買収後に偶発債務の発生等、未認識の債務が判明し損失が発生する可能性も否定できません。また、買収後の事業環境や競合状況の変化等により買収当初の事業計画遂行に支障が生じ、計画どおりに進まない場合は、のれん等の減損損失等の損失が発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、企業買収や資本提携等を検討する場合、対象会社の事業・財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うとともに、コストアプローチ法、インカムアプローチ法などにより、買収対象たる企業や事業等の価値を多角的に検証・精査することで、極力リスクを回避するように努めています。なお、企業買収に係るのれんの当連結会計年度末の連結貸借対照表計上額は7億円です。

 

(17) 固定資産の減損リスクについて

 当社グループは、国内鉄鋼事業、海外鉄鋼事業を中心に生産設備や土地等の固定資産を有していますが、設備投資による効果が得られないこと等により、保有資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用による減損損失が発生し、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 当社グループでは、事業成長や老朽化に伴う維持更新を目的とした設備投資を行う中で、特に大規模な設備投資については投資効果・採算性の検証等、投資可否判断の厳格化、精度向上に取り組んでいます。また、製造技術・ノウハウ・営業情報をグループ横断的に展開し、事業収益性の継続的な維持、確保を図ることで減損リスクの低減に努めています。

 

(18) 中期経営計画の未達リスクについて

 当社グループは、2024年4月に中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」を公表し、当該計画に掲げた取り組みを実行していきます。当該計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定していますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれており、当該計画に掲げた取り組みが完了しても、目的の効果が得られない可能性があります。また、当該計画は、上記記載の(1)ないし(17)に記載した事項を含む様々なリスク要因の影響を受けるため、取り組みが思うように進捗せず、当初掲げた目標を計画した期間内に達成できない、または全く達成できない可能性があります。

 

 なお、足下では、米国の関税政策などにより世界的に大きな変化が起こっていますが、電炉事業は基本的に地産地消のビジネスであることから、直接的な影響は限定的であり、「世界3極体制」を基本とした当社の戦略は、世界経済のブロック経済化などのパラダイムシフトがあっても十分機能すると考えております。引き続き動向を注視し、適時適切に対応していきます。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態および経営成績の状況

a. 財政状態

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて9,594百万円(4.3%)減少し、211,297百万円となりました。これは、現金及び預金が6,857百万円、原材料及び貯蔵品が3,031百万円、流動資産その他が1,750百万円増加し、売掛金が12,325百万円、電子記録債権が9,070百万円減少したこと等によります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて8,205百万円(6.2%)増加し、141,531百万円となりました。これは、土地が298百万円、建設仮勘定が9,127百万円、退職給付に係る資産が1,001百万円増加し、機械装置及び運搬具が1,199百万円、無形固定資産その他が597百万円、投資有価証券が534百万円減少したこと等によります。

この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて1,389百万円(0.4%)減少し、352,828百万円となりました。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて4,666百万円(4.3%)減少し、103,259百万円となりました。これは、電子記録債務が2,597百万円、1年内返済予定の長期借入金が352百万円、流動負債その他が1,928百万円増加し、支払手形及び買掛金が904百万円、短期借入金が4,982百万円、未払法人税等が3,762百万円減少したこと等によります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて4,450百万円(9.9%)減少し、40,411百万円となりました。これは、長期借入金が4,560百万円減少したこと等によります。

この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて9,116百万円(6.0%)減少し、143,671百万円となりました。

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べて7,727百万円(3.8%)増加し、209,157百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を10,791百万円計上し、為替換算調整勘定が2,379百万円、退職給付に係る調整累計額が643百万円増加した一方で、その他有価証券評価差額金が823百万円、非支配株主持分が621百万円、利益剰余金の配当により4,563百万円減少したこと等によります。

この結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べて192円08銭増加し、4,670円79銭となりました。また、自己資本比率は、前連結会計年度末の54.9%から57.5%となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度における当社グループの連結売上高は前期対比1,868百万円(0.6%)増収の322,849百万円、連結営業利益は同5,722百万円(27.2%)減益の15,332百万円、連結経常利益は同5,289百万円(25.1%)減益の15,745百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、同3,035百万円(22.0%)減益の10,791百万円となりました。

 

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。

 

国内鉄鋼事業

当事業部門については、国内の建設用鋼材需要は、建設・物流現場での人手不足や働き方改革、夏場の猛暑などによる工事の遅延・長期化の影響により弱基調で推移しました。そうした中で当社の製品出荷量も前期対比13.1万トン減の145.1万トンとなりましたが、価格面では、原材料である鉄スクラップの価格が海外需要の減退により前期対比4.6千円(8.8%)下落した一方、製品価格は需要に見合った生産・販売に徹することで同3.1千円(2.9%)の下落に留めることができたため、売買価格差(製品価格と原材料価格の差異)は同1.5千円(2.8%)拡大しました。しかし、人件費や運賃の上昇に加え、生産量の減少に伴う固定費の負担増など、諸コストの負担は増加しました。

以上の結果、売上高は前期対比17,120百万円(10.7%)減収の142,602百万円、営業利益は同6,697百万円(27.8%)減益の17,365百万円となりました。

 

海外鉄鋼事業

当事業部門については、ベトナムおよび北米(米国・カナダ)にて鉄鋼事業を展開しており、いずれも決算期は12月です。

ベトナムにおいては、長期化する不動産不況に対し、政府主導のインフラ投資等による需要喚起策が取られたことから、年度後半より鋼材需要は回復に向かいました。南北拠点ともに製品出荷量は前期を上回りましたが、中国の安価鋼材の影響を受けて製品の市況が低迷したため競合環境がより激化し、当期においても赤字を計上しました。しかし南部拠点のプロジェクト案件獲得や輸出強化の取り組みなどにより、ベトナム全体の収益は前期対比大幅に改善しました。

北米においては、米国の鋼材需要は堅調に推移しましたが、米国拠点では設備の老朽化の影響により十分な生産・販売ができない状況が続きました。本社から技術者を派遣してのコスト削減の取り組みも奏功し、操業上の課題は解消に向かいつつありますが、業績面では前期に続き赤字を計上しました。カナダ拠点では、上期の需要家の買い控え等の影響を受けて出荷量は前期対比減少しましたが、新たに生産・販売を開始した利益率の高い細物鉄筋の拡販による貢献もあって、前期を上回る利益を計上しました。

以上の結果、売上高は前期対比18,940百万円(12.6%)増収の169,016百万円、営業損益は1,713百万円の営業損失となりましたが、前期(2,827百万円の営業損失)対比1,114百万円改善しました。

 

環境リサイクル事業

当事業部門については、医療廃棄物処理における競合先との価格競争が激化する中、処理単価の高い難処理廃棄物案件の獲得を中心に業績改善に努めましたが、処理設備の不調による処理量の減少とそれに伴うコスト増などの影響等により、売上高は前期対比240百万円(3.7%)減収の6,243百万円、営業利益は同260百万円(27.9%)減益の673百万円となりました。

 

その他

当事業部門については、ベトナムでの港湾事業や国内およびベトナムでの鋳物事業などを行っています。売上高は前期対比287百万円(6.1%)増収の4,989百万円となり、営業利益は同368百万円(457.9%)増益の448百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて11,959百万円増加し、38,052百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下の通りです。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、39,408百万円の収入となりました。収支の主な内訳は、税金等調整前当期純利益16,280百万円、減価償却費8,638百万円、減損損失2,637百万円、売上債権の減少額24,103百万円、棚卸資産の増加額1,469百万円、仕入債務の増加額1,153百万円、保険金の受取額2,765百万円、利息の支払額2,927百万円、法人税等の支払額9,331百万円等によります。

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、9,882百万円の支出となりました。収支の主な内訳は、定期預金等の預入による支出24,719百万円、定期預金等の払戻による収入30,219百万円、有形固定資産の取得による支出13,555百万円等によります。

 

財務活動によるキャッシュ・フローは、18,224百万円の支出となりました。収支の主な内訳は、短期借入金の純減額7,751百万円、長期借入金の返済による支出4,840百万円、配当金の支払額4,563百万円等によります。

 

③生産、受注および販売の状況

a. 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

前年同期比(%)

国内鉄鋼事業(百万円)

114,506

92.1

海外鉄鋼事業(百万円)

135,749

115.9

環境リサイクル事業(百万円)

4,922

98.3

その他(百万円)

3,886

103.5

合計(百万円)

259,062

103.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。

2 金額は、製造原価によっています。

 

b. 受注実績

 当社グループの販売実績のうち、見込生産形態によるものが大半を占めるため記載を省略しています。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

前年同期比(%)

国内鉄鋼事業(百万円)

142,602

89.3

海外鉄鋼事業(百万円)

169,016

112.6

環境リサイクル事業(百万円)

6,243

96.3

その他(百万円)

4,989

106.1

合計(百万円)

322,849

100.6

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

阪和興業株式会社

36,475

11.4

32,920

10.2

 

主要な原材料価格および販売価格の変動については「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載しています。

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループは、2026年度(2027年3月期)を最終年度とする中期経営計画「NeXuSⅡ 2026」において、最終年度の売上高3,800億円、経常利益250億円、製品出荷量400万トン体制の確立、自己資本利益率(ROE)8%以上などを目標として掲げ、その達成に向けてグループ一丸となって取り組んでいます。初年度となる当連結会計年度においては、国内・海外ともに想定以上に厳しい事業環境となり、期初の目標には達しませんでしたが、当連結会計期間中に修正した利益目標(経常利益150億円)は達成することができました。

 

 

2024年3月期

 

2025年3月期

2027年3月期

実績

 

実績

最終年度目標

売上高

3,210億円

 

3,228億円

3,800億円

経常利益

210億円

 

157億円

250億円

製品出荷量

307万トン

 

313万トン

400万トン

(国内)

158万トン

 

145万トン

160万トン

(海外)

149万トン

 

168万トン

240万トン

ROE

7.4%

 

5.4%

8%以上

配当性向

28.3%

 

36.2%

30~35%

 

国内鉄鋼事業については、建設現場の人手不足や猛暑の影響を受けた建設用鋼材需要の減少が想定以上となり、当社グループの製品出荷量も前期対比減の145万トンとなりました。そうした中で国内鉄筋市場のトップシェアを確保しつつ製品価格の維持・引き上げを進めて売買価格差の拡大につなげ、前期対比減収減益となったものの一定水準の利益を計上したことは、相応に健闘したと総括しています。

海外鉄鋼事業については、想定よりも回復が遅れ、前期に続き赤字を計上する結果となりましたが、全体の業績面は底を打ったと考えております。ベトナムでは、現地鉄鋼メーカーの供給過剰による安値販売状況が続くなど競争環境は依然厳しく、赤字が継続しましたが、需要は回復基調にあり、各拠点の出荷量は増加しました。これによる稼働率の改善効果もあり、各拠点の製造コストは大幅に低減したことに加え、北部拠点のひとつである単圧工場(製鋼工程を持たない圧延工程のみの工場)では、スクラップ相場とビレット相場の変動に合わせた低在庫経営の徹底により通期で黒字を達成、南部拠点も月次では黒字基調に転換してきています。

北米では、米国拠点は2023年の火災事故以降の操業不調が続く中、市況の軟化もあり赤字が継続しましたが、日本からの技術支援や人員の削減などにより、業績回復に向かいつつある状況です。一方、好調なカナダ拠点については細物鉄筋の商業生産開始の相乗効果が想定以上にあり、大幅増益で着地しました。海外鉄鋼事業については、短期的な対策に加え、中長期的な対策についても、ベトナム北部と米国における大型設備投資など必要な手を打つことができたことから、海外鉄鋼事業の収益回復に目途が付きつつあると総括しています。

環境リサイクル事業については、医療廃棄物処理における競合先との価格競争の激化などもあり、前期対比大幅減益となりました。料金体系の見直しや業務の効率化、営業体制の見直しなど、抜本的な戦略の見直しを行っていますが、新型コロナウイルス関連案件が多くあった2021年度の利益水準に回復するまでには少々時間を要すると考えております。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しています。

 

 なお、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりです。

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 自己資本比率

54.7%

51.9%

53.2%

54.9%

57.5%

 時価ベースの自己資本比率

25.6%

18.5%

20.7%

29.6%

23.2%

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率

521.8%

523.9%

387.0%

215.6%

 インタレスト・カバレッジ・レシオ

11.2倍

8.1倍

6.9倍

13.5倍

(注)1.各指標の算出は以下の算式を使用しています。

- 自己資本比率:自己資本/総資産

- 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

- キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

- インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

2.いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

3.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

4.2022年3月期については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオを記載していません。

 

b. 資本の財源および資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは原材料である鉄スクラップ、合金鉄等の副資材の購入費用、その他製造費用、販売費および一般管理費等の営業費用です。

投資を目的とした資金需要は製造設備の更新等の設備投資、M&Aによる株式取得等によるものです。

当社グループは、原材料価格と製品販売価格の市況変動に対応可能な事業資金を安定的に確保することを基本方針としています。

短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等の投資資金は金融機関からの長期借入および社債の発行を基本としています。

また、経営基盤である財務の健全性や経営の透明性を高めるとともに、資金調達の多様化や安定化を図り、経営環境の変化に対応した機動的な資金調達を可能にするため、当社は株式会社日本格付研究所から格付けを取得しており、本報告書提出時点において、格付は「A-(見通し:安定的)」となっています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。

 

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。

当社グループは、特に次の重要な会計方針が、財政状態および経営成績に大きな影響を及ぼすと考えています。

 

固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損の検討にあたり、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会))および「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)等を適用しています。将来、企業収益が大幅に低下する場合、経済環境の著しい悪化および市場価格の著しい下落等により、固定資産の減損処理が必要となる可能性があります。

 

 

5【重要な契約等】

 当社および連結子会社の運営等に関する契約は次のとおりです。

締結年月

契約の名称

契約の締結当事会社

相手先

契約内容

2006年6月

株主間協定

共英製鋼㈱

合同製鐵㈱

中山鋼業㈱の運営に関する株主間協定

2012年10月

株主間協定

共英製鋼㈱

㈱メタルワン

Marubeni-Itochu Steel Pte. Ltd.

キョウエイ・スチール・ベトナム社の運営に関する株主間協定

2012年11月

株主間協定

共英製鋼㈱

ベトナム鉄鋼公社

三井物産㈱

Marubeni-Itochu Steel Pte. Ltd.

ビナ・キョウエイ・スチール社の運営に関する株主間協定

2018年1月

株主間協定

共英製鋼㈱

㈱辰巳商會

㈱海外交通・都市開発事業支援機構

HOANG GIANG TRADING COMPANY Ltd.

VIETNAM STEEL CORPORATION

チー・バイ・インターナショナル・ポート社の運営に関する株主間協定

2020年11月

株主間協定

ビントン・スチール社

Grinding Media INC.

ビントン・ボール社の運営に関する株主間協定

 

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は283百万円であり、主に主力事業である国内鉄鋼事業部門において計上されています。

 国内鉄鋼事業については、開発センター、開発室、サステナブルテクノロジー研究センター等において、高強度鉄筋およびネジ節鉄筋を中心とした高付加価値・差別化製品の開発、高強度せん断補強筋などの加工品の開発、鉄鋼副産物(スラグ)の有効利用や用途開発などを行っています。