第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

当社は、「グローバル・メジャー・ブランド」すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」となることを長期目標としております。この実現を加速するため、10年後を見据えた長期ビジョン「GMB2030」を策定し、クボタグループのあるべき姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げております。食料の生産性・安全性を高めるソリューション、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション、都市環境・生活環境を向上させるソリューションを通じて持続可能な社会へ最大限の貢献をすることにより、長期にわたる持続的発展をめざします。

また、当年度は新型コロナウイルスが世界中に広まり、当社の事業環境のみならず、人々の生活様式も一変しました。新型コロナウイルス感染症を機に社会が大きく変化し、自然環境や社会へ配慮した企業活動がますます重要となる中で、「食料・水・環境」という重要な社会インフラを支える当社の事業は、エッセンシャルビジネスとして底堅い需要に支えられております。しかしながら、長期的な成長と企業価値の一層の増大を実現していくには、以下のような対応すべき環境変化並びに解決すべき事業上の課題があると認識しております。

・企業を取り巻く社会の変化により企業の社会的責任がより重くなっていること

・10年後の持続的成長を可能とする、社会課題・メガトレンドを見据えた新たなビジネスモデルの確立が求められていること

・既存事業の拡大機会を確実に捉え、更なる成長に向けた基礎固めを進める必要があること

・競争環境の激化や先行投資により利益率が低下傾向にあること

・事業のグローバル化が進む中で、事業運営体制が実態に合わなくなってきていること

これらの環境変化に対応するとともに、事業上の課題を解決するため、2021年から2025年までの5年間を対象とする中期経営計画を策定しました。中期経営計画の5年間をGMB2030の実現に向けた土台づくりを完了する期間と位置付け、以下の重点施策を推進していきます。なお、中期経営計画においては、売上高や営業利益に加え、ROEや営業キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー等も重要指標とし、資本効率を重視した経営をめざしております。

 

(1) ESGを経営の中核に据えた事業運営への転換

企業の社会的責任がますます重くなる中で今後もサステナブルな企業であり続けるため、当社はこれまで以上にESGを意識した取り組みを進めていきます。ただし、「食料・水・環境」分野を事業領域とし、「環境負荷低減・社会問題解決」に事業として取り組む企業として、ESGの一般的な施策に加え、クボタグローバルアイデンティティ(企業理念)に根差した事業関連活動を具現化することによって企業としての存在価値を高めていくことをめざします。

その取り組みを加速・強化するために社長直轄の推進組織を設置し、グループ全体のESGに対する意識を高め、様々な施策を統括していきます。また、社内外のコミュニケーションを拡充・強化することによって、クボタグループの事業に対するあらゆるステークホルダーからの「共感」と「参画」を得て、クボタ独自のESG活動を展開していきます。その中で特に注力すべき重要なテーマとして、2050年のカーボンニュートラルをめざした取り組みを進めます。推進部門を新たに設置し、カーボンニュートラル達成に向けた青写真が5年後の2025年には描けていることをめざします。

 

(2) 次世代の成長ドライバー候補の確保に向けた取り組み

GMB2030の実現に向けて、長期を見据えた開発・事業テーマを選定し、組織的・計画的に経営資源を配分します。イノベーションを生み出すため、テーマ選定から事業化までのあるべき運営・組織体制を早期に構築し、2025年までに次世代の成長ドライバーとなるビジネスモデル、製品、サービス、市場候補を複数件確保することをめざします。また、それを次の5年でビジネス展開することにより、変化に対応できるサステナブルな企業へと発展し、飛躍的な成長につなげていきます。

 

 

(3) 成長機会を活かす事業戦略の推進

GMB2030の実現にチャレンジしていくには、既存事業がしっかりと市場で評価され、着実に成長し続けることが必要不可欠です。各事業部門が強化・成長のシナリオを持ち、必要な施策を強力に推進していきます。特に北米の建設機械やアセアン等の現在未参入・未開拓の地域・製品や、機械のアフターマーケットや環境O&M、管路ソリューション等の製品販売後の事業を今後の成長ドライバーと位置付け、経営資源を重点的に配分することで、既存事業を着実に成長させていきます。

 

(4) 中期事業基盤強化による利益構造の改善

クボタ独自のESGの取り組みやGMB2030の実現には、知的財産、人的資源、DXの推進等の無形資産への積極的な資源投入に加え、様々な災害リスク対応、職場環境改善、安全・品質向上等のESG分野の投資も必要です。利益率の低下を招くことなく、これらの投資を実行するため、利益率の高い分野の着実な伸長、利益の出る体質づくり、事業運営の徹底的な効率化によりその原資を生み出します。

 

(5) 持続的成長を支えるインフラ整備

持続的成長を支えるインフラ整備として、事業運営体制の変革、人的資源確保・活用に向けた取り組み、リスクマネジメントの強化を推進します。

事業運営体制の変革では、グローバル化に対応した運営体制への変革をめざし、生産・調達レイアウトの変革や、グローバルに展開する事業を適切に把握・管理する経営管理体制の構築を推進します。

人的資源確保・活用に向けた取り組みでは、事業拡大に伴うグローバル化もにらみ、全従業員がより高いパフォーマンスを発揮するための教育体制を整備するとともに、実際の運用で確実に育成できるよう具体策を講じていきます。また、コロナ禍で見えてきた様々な課題に対応するために新たなプロジェクトを発足し、働き方改革だけではなく、働き甲斐のある改革を進めます。さらに、現地人財の積極的登用等も進め、グローバル体制で活躍できる人財づくりを推進します。

リスクマネジメントの強化では、近年、事業の継続を揺るがすリスクも多様化している中で、自然災害、パンデミック、地政学リスク等に対するBCP対応や、コンプライアンスリスク、サイバー・セキュリティリスク、事業リスク等の様々なリスクに関してより能動的に対応するための組織整備・拡充を図ります。

 

(6) 共通テーマとしてのDX推進

ICT技術、ビッグデータ、5GやAI等のDXの基盤となるプラットフォームを整備・活用することで、「製品・サービス・生産現場」、「ビジネスプロセス」、「コミュニケーション&コラボレーション」に変革を起こし、前述の5つのテーマの推進を確実なものとしていきます。

 

2 【事業等のリスク】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経済状況

当社製品には生産財・資本財が多いため、民間設備投資、建設投資、国内公共投資等の低迷により、当社製品の需要が減退し、売上が減少する可能性があります。また、農業政策が農業関連製品の売上に影響を与える可能性があります。海外、特に欧米においては、小型トラクタ等の売上が個人消費や住宅建設投資等の一般景気の低迷により減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料の価格高騰・調達難

当社は外部の供給業者から多くの原材料、部品を調達しております。また、事業のグローバル化に伴って海外生産拠点での調達も増加しており、世界規模での調達網の構築による最適地調達を推進しております。しかし、原材料、部品の価格が需給の逼迫や市況の変動等によって急激に高騰し、それが長期化した場合は利益を減少させる可能性があります。また、原材料、部品の調達に支障をきたした場合、製品の製造や販売が困難となり、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 国際的事業展開に伴うリスク

当社が大規模な海外展開を行っている事業は、海外事業に付随したリスクを抱えております。これらのリスクが顕在化した場合、海外市場での安定的な製品の製造及び販売が困難となり、売上の減少等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼし、成長を阻害する可能性があります。重要なリスクとしては次のようなものがあります。

① 重要な市場における政府による許認可政策や補助金政策の変化に伴うリスク

② 政府間で協議決定される国際貿易政策による予期せぬ関税や輸出入割当量の変化に伴うリスク

③ 各国法規制の予期せぬ変化に伴うリスク

④ 発展途上国等における政情不安

⑤ 発展途上国における未成熟な技術水準や不安定な労使関係

⑥ 人的資源確保の困難性

⑦ 各国税制の予期せぬ変化に伴うリスク

⑧ 移転価格や事前確認申請の交渉における予期せぬ結果に伴うリスク

 

(4) 為替レートの変動

当社は海外に経営成績等に大きく貢献する複数の製造・販売・金融子会社を有しております。各海外子会社の現地通貨建ての財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。また、親会社が海外の子会社や外部顧客に輸出する場合、その取引の多くは現地通貨建てで行われ、獲得した外貨は円貨へと換算されます。従って、現地通貨と円貨との為替レートの変動が経営成績等に影響を与えます。通常は他の通貨に対して円高になれば当社の経営成績等にマイナスの影響を及ぼします。為替レートの変動によるマイナスの影響を軽減するため、各販売拠点での製造を目的とした、生産拠点の現地への移行を進めております。また、先物為替契約、通貨スワップ契約及び通貨金利スワップ契約を行っております。しかし、これらの活動にもかかわらず著しい為替レート変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 金利変動リスク

当社は有利子負債を有しており、これらは固定金利または変動金利が課されております。金利が上昇した場合、支払利息が増加するほか、金融事業に関連して特に米国において、インセンティブコストが上昇します。金利の上昇による影響を軽減するため、金利スワップ契約及び通貨金利スワップ契約により固定金利と変動金利の変動に対応しております。しかし、こうしたリスクヘッジに関わらず著しい金利水準の変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 株式相場の変動リスク

当社は有価証券を保有しており、その大半が株式であるため株式相場の動向次第で公正価値が大きく変動する可能性があります。また、株式相場の下落により退職給付制度に関する制度資産が減少する可能性があります。なお、制度資産については許容できるリスクのもとで可能な限りの運用成果を上げることを運用方針としており、リスクを分散するため、金利変動リスク、経済成長率、通貨の種類等の投資収益に影響する要因を考慮の上、投資先の産業、会社の種類、地域等を慎重に検討してポートフォリオのバランスをとっております。しかし、有価証券の公正価値変動、制度資産の減少が当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 第三者との戦略的提携、合併・買収等の成否

当社は今後も第三者との提携、合併・買収等に取り組み、新たな成長を模索する可能性がありますが、このような活動の成否は事業を取り巻く環境、取引相手の能力、あるいは当社と相手が共通の目標を共有しているか否か等に影響されると考えられます。このような活動が成功しない場合や投資に対するリターンが予想を下回る場合は、収益性の悪化により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 他社との競争

当社は各事業において競合他社との厳しい競争にさらされているため、取引条件、研究開発、品質等で他社を凌駕できない場合には、売上の減少等により経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 製品やサービス

当社は品質教育の実施、品質問題の未然防止への取り組み及び品質に関する社内監査等を実施し、品質の維持・向上に努めております。しかし、当社が提供する製品やサービスに重大な瑕疵や欠陥があった場合、多額の賠償責任を負い、利益を減少させる可能性があります。また、そのような事態が発生した場合には、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 環境汚染、公害等

当社は環境法令を確実に遵守して環境事故を未然に防止するため、環境マネジメントシステムを構築し、ルールに基づいた業務運営と環境保全活動の継続的な改善に努めております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社が有害物質の排出・漏洩、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等を引き起こした場合、その是正措置をとるために多額の費用や支出が発生したり、訴訟に発展したりする可能性があります。この結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) アスベスト関連

当社は過去、1954年から2001年にわたりアスベストを含む製品の製造に携わっておりました。アスベスト健康被害に関連して、健康被害にあった方々への支払や訴訟に関する費用が発生し、それらの費用が多額になるような場合には、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) コンプライアンスリスク

当社は法令遵守と倫理に基づいた企業活動を行う旨を宣言し、当社の取締役、執行役員及び従業員が事業遂行にあたって、各種法令や倫理基準並びに社内行動規範等から逸脱した行為を行うことがないよう、グループ全体への徹底を図っております。しかし、万一、それらの行為が発生し、当社がコンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等を招き、売上の減少や費用の増加等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) ITシステム及びネットワーク

当社はデータ及びITシステムの機密性、可用性及び完全性といった情報セキュリティを毀損するような一定のリスクを抱えております。これらのリスクを低減すべく、適切な情報管理を目的としたセキュリティシステム、方針・方策、過程、手法、専門チームや技術を構築しております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社のITシステム及びネットワーク上の問題が発生した場合、業務運営の中断によって事業機会を喪失するほか、社内情報流出に伴う損害賠償責任を負ったり、知的財産権を侵害されたりする可能性があり、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、そのような事態が発生した場合、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 環境規制への対応

当社は製造販売する製品や事業活動に関する様々な環境規制に対応する必要があります。今後さらなる規制の強化、例えば二酸化炭素排出規制や排ガス規制、主要材料の使用制限等が行われた場合、その対応のために相当のコスト負担をする可能性があり、それが当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 自然災害等予測困難な事象による被害

当社は日本、北米、欧州及びアジア等で事業活動を営んでおります。それらの国・地域において予測困難な事象が発生した場合、製品の製造や物流、販売活動に被害を受けることにより、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。予測困難な事象には、地震や津波、洪水、台風といった自然災害や感染症の流行、戦争やテロ、火災等の事故及び情報システムや通信ネットワークの停止等が含まれます。とりわけ、日本は世界でも有数の地震多発国であり、強度の地震もしくは津波の被害を受ける可能性があります。

なお、当年度における新型コロナウイルス感染拡大の影響は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載のとおりです。また、新型コロナウイルスについて未だ終息の兆候が見えないものの、新型コロナウイルス感染拡大による事業活動への影響は翌年度において改善すると当社は見込んでおります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社は当年度より、社内組織をベースとした事業セグメントの構成の変更に基づき、従来、「機械」に含めておりました「空調」を「水・環境」に含めております。この変更に伴い、前年度比及び前年度末比については前年度の数値を変更後の区分に組替えて算出しております。

なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当年度(2020年1月1日~2020年12月31日)における、経営者の視点による当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

① 経営成績

当社は、「グローバル・メジャー・ブランド」すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」となることを長期目標としております。この実現を加速するため、10年後を見据えた長期ビジョン「GMB2030」を策定し、クボタグループのあるべき姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げております。食料の生産性・安全性を高めるソリューション、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション、都市環境・生活環境を向上させるソリューションを通じて持続可能な社会へ最大限の貢献をすることにより、長期にわたる持続的発展をめざしております。

当年度は新型コロナウイルスが世界中に広まり、当社の事業環境のみならず、個々の生活様式も一変しました。そのような先行き不透明な状況の中、「食料・水・環境」という重要な社会インフラを支えるエッセンシャルビジネスを扱う企業として迅速かつ的確な対応に努めました。当社の事業は世界各地で底堅い需要に支えられ、特に主力の北米ではディーラーから最終顧客への小売が大幅に増加しました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生産の遅れ等によりディーラーへの卸売が翌年度にずれ込んだため、売上高、利益ともに減少しました。

当年度の売上高は前年度比668億円(3.5%)減少して1兆8,532億円となりました。

国内売上高は機械部門が新型コロナウイルスの感染拡大や前年度の消費増税の影響等により減少したほか、水・環境部門も環境関連製品や合成管等の民需向けの製品が減少したため、前年度比302億円(4.8%)減の5,952億円となりました。

海外売上高は新型コロナウイルスの感染拡大を背景に巣ごもり需要が伸長する一方で、生産や出荷の遅れ等により機械部門が大きく減少したほか、水・環境部門もわずかに減少したため、前年度比366億円(2.8%)減の1兆2,580億円となりました。当年度の海外売上高比率は前年度比0.5ポイント上昇して67.9%となりました。

営業利益は値上げ効果や米国の金利低下等の増益要因はありましたが、国内外での減収に加え、一時的な生産停止や生産量の低下に伴う生産工場の損益悪化等もあり、前年度比264億円(13.1%)減少して1,753億円となりました。税引前利益は営業利益の減少等により前年度比231億円(11.1%)減少して1,859億円となりました。法人所得税は470億円の負担、持分法による投資損益は25億円の利益となり、当期利益は前年度比177億円(11.1%)減の1,414億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は前年度を205億円(13.8%)下回る1,285億円となりました。

 

 

事業別セグメントの外部顧客への売上高及びセグメント利益の状況は次のとおりです。

(機械)

当部門は農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械により構成されております。

当部門の売上高は前年度比3.2%減少して1兆5,088億円となり、売上高全体の81.4%を占めました。

国内売上高は前年度比4.4%減の2,929億円となりました。消費増税前の駆け込み需要の反動減や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う販売活動の自粛等により、農業機械が大幅に減少しました。

海外売上高は前年度比2.9%減の1兆2,159億円となりました。北米では、4月以降の堅調な需要や新機種効果等により、ディーラーから最終顧客への小売は極めて好調に推移しました。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生産の遅れ等により当社からディーラーへの卸売が翌年度にずれ込んだため、建設機械やトラクタの売上が減少し、ディーラーの在庫水準も大きく低下しました。また、客先の在庫調整等によりエンジンも大幅減となりました。欧州では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いディーラーが一時的に営業を停止した影響やエンジンの客先の減産等により、エンジン、建設機械、トラクタともに前年度を下回りました。アジアでは、タイのトラクタが良好な雨季の天候による当年度後半の回復を受けて小売は微増となったものの、在庫調整の影響により売上は減少しました。一方、経済活動再開後の需要回復を受けて中国のエンジンや農業機械が増加したほか、インドの農業機械等も伸長したためアジア全体では前年度を上回りました。

当部門のセグメント利益は値上げ効果や米国の金利低下等の増益要因はありましたが、生産工場の損益悪化や国内外での減収、円高の影響等により、前年度比11.5%減少して1,796億円となりました。

 

(水・環境)

当部門はパイプインフラ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、官需向けバルブ、素形材、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境関連製品(各種環境プラント、ポンプ、民需向けバルブ等)により構成されております。

当部門の売上高は前年度比4.3%減少して3,158億円となり、売上高全体の17.0%を占めました。

国内売上高は前年度比4.8%減の2,740億円となりました。ダクタイル鉄管や工事事業等が伸長しましたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により合成管、素形材、スパイラル鋼管、空調機器等が民需向けを中心に低調に推移したため、パイプインフラ関連製品は減少しました。環境関連製品は大型案件である福島県双葉町での廃棄物処理施設の建設に伴う売上が一巡したことにより前年度を下回りました。

海外売上高はダクタイル鉄管や素形材が伸長したものの、環境関連製品が減少したため前年度比1.0%減の418億円となりました。

当部門のセグメント利益は原材料価格が低下したものの、国内での減収やプラント建設コストの増加等により、前年度比7.9%減少して259億円となりました。

 

(その他)

当部門は各種サービス事業等により構成されております。

当部門の売上高は前年度比9.3%減の287億円となり、売上高全体の1.6%を占めました。

当部門のセグメント利益は前年度比6.1%増加して38億円となりました。

 

 

② 財政状態

総資産は前年度末(2019年12月末)比500億円増加して3兆1,893億円となりました。

資産の部では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により生産や出荷が遅れている中で、好調な小売を受けてディーラーからの売掛金回収が進んだため、営業債権が減少しました。一方で、小売が好調な北米で販売金融が拡大したことにより、金融債権が増加しました。

負債の部では、社債及び借入金が減少しましたが、当年度後半の生産量の増加に伴い営業債務が増加しました。

資本合計は、為替レートの変動等に伴うその他の資本の構成要素の悪化はありましたが、利益の積上がりにより増加しました。親会社所有者帰属持分比率は前年度末比0.3ポイント増加して46.3%となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,429億円の収入となりました。金融債権の増加に伴う支出の増加や当期利益の減少等はありましたが、営業債権や営業債務等の運転資本の変動により前年度比605億円の収入増となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは471億円の支出となりました。有価証券の取得による支出は増加しましたが、有形固定資産の取得による支出の減少や有価証券の売却による収入の増加等により、前年度比443億円の支出減となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは684億円の支出となりました。資金調達の減少等により前年度比468億円の支出増となりました。

これらのキャッシュ・フローに為替レート変動の影響を加えた結果、当年度末の現金及び現金同等物残高は期首残高から233億円増加して2,229億円となりました。

当社は中期経営計画において、営業活動によるキャッシュ・フロー及びフリー・キャッシュ・フローを重要指標としており、今後もこれらの拡大に取り組んでいきます。

 

(2) 資金の源泉及び流動性

当社の財務の基本方針は、操業に必要となる資金源を十分に確保すること、及びバランスシートの健全性を強化することです。

当社は運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金を親会社や海外の金融子会社に集中させることにより、グループ内の資金管理の効率改善に努めております。

当社は営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の源泉と考えており、資金需要に応じて金融機関からの借入、社債の発行、債権の証券化による資金調達、コマーシャル・ペーパーの発行等を行っております。運転資金及び設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金等を充当しております。当年度の社債及び借入金の使途は主として販売金融にかかわるものです。なお、社債及び借入金の残高については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※14 社債及び借入金」をご参照ください。

現在のところ、当社は健全な財務基盤及び安定したキャッシュ・フロー創出力により、事業運営や投資活動のための資金調達に困難が生じることはないと考えております。

 

 

(3) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当年度における事業別セグメントの生産実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

1,442,961

△4.8

水・環境

313,448

△5.7

その他

28,859

△8.8

合計

1,785,268

△5.0

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  金額は販売額をもって計上しております。

3  金額に消費税等は含まれておりません。

 

② 受注状況

当年度における事業別セグメントの受注状況は次のとおりです。

なお、機械部門は一部を除き受注生産を行っておらず、水・環境、その他の各事業部門についても一部受注生産を行っていない事業があります。

 

事業別セグメントの名称

受注高(百万円)

前年度比(%)

受注残高(百万円)

前年度末比(%)

機械

550

30.3

113

73.9

水・環境

239,045

3.1

230,996

△2.5

その他

5,020

△4.6

2,427

14.7

合計

244,615

2.9

233,536

△2.3

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  金額に消費税等は含まれておりません。

 

③ 販売実績

当年度における事業別セグメントの販売実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

1,508,766

△3.2

水・環境

315,774

△4.3

その他

28,694

△9.3

合計

1,853,234

△3.5

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  販売額が総販売額の10%以上に及ぶ販売先は前年度、当年度ともにありません。

3  金額に消費税等は含まれておりません。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社はIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しており、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を使用しております。実際の業績はこれらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。見積り及び仮定は継続して見直され、当該見直しによる影響は会計上の見積りの変更として、見積りを変更した報告期間及び将来の報告期間において認識されます。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※2 作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※3 重要な会計方針」に記載しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社は「食料・水・環境を一体のものとして捉え、優れた製品・技術・サービスを通じて課題解決し、地球と人の未来を支え続ける」ことを使命としております。当社はこの使命に基づき、事業に直結した製品・技術の開発と、会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。

当年度に発生した研究開発支出は584億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。「その他」事業の研究開発支出及び特定の事業部門に関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。

 

(1) 機械

農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械等の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

自動運転農機 アグリロボ田植機「NW8SA」の開発

田植え作業の省人化と作業効率向上に貢献するアグリロボ田植機「NW8SA」有人仕様・無人仕様の2型式を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  直進、旋回を含む自動運転により圃場全面の田植え作業を行う全面匠植えです。最初に圃場の最外周を有人で走行して圃場マップを取得すると、圃場マップに応じた最適な作業経路が自動生成され、その作業経路に従って自動運転田植え作業を行います。

②  無人仕様は、超音波ソナーを前方・側方・後方に装備して、障害物を検知すると自動で停止します。また有人仕様・無人仕様ともにボイスアラームを搭載しており、注意ポイントを音声でお知らせします。操作方法も音声でガイドするので、操作に不慣れな方でも安心して使用できます。

③  KSAS(注1)を利用することで、パソコン上で圃場1枚をメッシュ状に分割した施肥計画を立てることができ、このデータと田植機を連動させることで、計画どおりの施肥作業をすることが可能になります。これにより稲の生育バラつきを抑え、食味と収量の安定を図ることができます。

(注1) クボタスマートアグリシステム。当社が提供する営農・サービス支援システム。

 

建設機械の故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」の開発

スマートフォンで建設機械の故障診断を効率化するアプリ「Kubota Diagnostics」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  機械が発するエラーコードや不具合症状をアプリに入力することで、自動的に点検箇所や修理方法が示され、診断を効率化・迅速化します。

②  スマートフォンのカメラを製品にかざすことで、3DモデルとAR(注2)による故障箇所ガイダンスが参照でき、作業の効率化に貢献します。これにより、故障した機械の停止時間(ダウンタイム)を削減します。

③  故障情報を当社が効率的に収集できるため、アフターサービスの品質向上や故障予知等に役立てます。

(注2) Augmented Realityの略称。実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を仮想的に拡張するもの。拡張現実。

 

粉粒体供給装置 微量フィーダ「NX-T12」の開発

粉粒体状の原料を生産設備等にごく微量ずつ連続供給することができる粉粒体供給装置である微量フィーダ「NX-T12」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  ホッパやアジテータに独自の形状・方式を採用することによって、流れが悪い原料も滞留なく供給できるとともに、原料の供給流量の測定精度を高めました。また、スクリュへの充填効率も安定化することにより、1時間あたり10mlの繊細な原料供給にまで対応できます。

②  大型カラー画面と簡単キー操作によって、設定流量と現在の実績流量がひと目でわかります。

③  特殊工具なしで容易に分解、清掃できる構造のため、原料を替える時の清掃が楽にできます。ボルト脱落防止機構により、異物混入リスクも低減しております。

 

当セグメントに係る研究開発支出は496億円です。

 

(2) 水・環境

パイプインフラ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、官需向けバルブ、素形材、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境関連製品(各種環境プラント、ポンプ、民需向けバルブ等)の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

ポンプゲート「AI診断システム」の開発

浸水対策のために河川や排水路に設置されるポンプゲートに利用できる「AI診断システム」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  水のない状態での空運転による点検運転が可能になりました。

②  点検運転時の電流データ、潤滑油温度、絶縁抵抗値から、AIがポンプの健全度を診断し評価することにより、状態監視保全ができるようになりました。

③  お客様が保有するタブレットにアプリをインストールすることによって、診断結果をWEBページで閲覧できるようになり、導入コストや通信費用の低減が図れるようになりました。

④  機器の点検記録の入力フォームを搭載しており、入力したデータはクラウドで一括管理が可能になり、点検データの転記や集計にかけていた時間を削減できるようになりました。

 

高集積型液中膜ユニット「SP900-A」の開発

従来製品に比べ、処理能力を大幅に増強した高集積型液中膜ユニット(注3)「SP900-A」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  ろ過機能を従来製品と同等に維持しつつ、また使用環境への耐久性を備えさせながら、膜エレメントの厚みを低減させたことによって、膜モジュール1台あたりの膜エレメントの枚数を増加させ、12.5%増の膜充填率(装置設置面積あたりの膜面積)を実現しました。

②  ユニットのフレーム強度を向上し、搭載できる膜モジュール数を最大12段から16段にまで増加(33.3%増)させることが可能になりました。

③  これらによって従来の最大型式である「SP600」に比べて50%増の膜充填率を実現し、排水処理設備の省スペース化が図れるようになりました。

(注3) 高度な排水処理方式のひとつである膜分離活性汚泥法に使用される膜ろ過装置。

 

当セグメントに係る研究開発支出は46億円です。

 

(3) その他・全社

全社の基盤技術であるメカトロ・センシング・情報通信・高精度制御・AIの高度化を強力に推進しました。これにより、国内・欧米・アセアンのスマート農業システム、水環境インフラソリューション向け遠隔監視・診断システム、モノづくりを革新する社内工場向けの画像認識技術・自動化システム・データ分析技術の研究開発を加速させました。また、農建機の電動化等、カーボンニュートラルに向けた研究開発にも注力し、製品化に向けて大きく進展しました。

 

当セグメントに係る研究開発支出は43億円です。