第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

当社は、「グローバル・メジャー・ブランド(以下「GMB」)」すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」となることを長期目標としております。

世界的に新型コロナウイルスの感染拡大がいまだ収束せず、不安定な経済状況が続いておりますが、当社の事業はエッセンシャルビジネスとして根強いニーズに支えられております。しかし、依然続くコロナ禍において、当年度は生活様式や仕事環境の変化に対応するための進化が求められました。今後も、企業はめまぐるしく変わる社会の価値基準やニーズに応え、さらに進化して社会問題を解決することが求められるものと考えております。

新型コロナウイルスの感染拡大に限らず、世界では多くの社会問題が複雑に絡み合って深刻化しておりますが、当社は次の4つのメガトレンドに着目しております。

・経済成長と資源循環の両立(サーキュラーエコノミー)

・温室効果ガス排出量ネットゼロ(カーボンニュートラル)

・循環・共有を通じて生産物の限界費用が限りなくゼロとなる社会

・グローバル資本主義だけに拘らない新たな中小コミュニティ形成

当社は、これらのメガトレンド及び当社が果たすべき役割を踏まえ、GMBの実現を加速するために2030年を見据えた長期ビジョン「GMB2030」を策定しております。GMB2030の中で、当社はあるべき姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げております。当社はGMB2030を実現するために、既存事業の拡充に加え、新たな事業展開として食料の生産性・安全性を高めるソリューション、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション、都市環境・生活環境を向上させるソリューションの提供に取り組んでいきます。これらのソリューションを通じて持続可能な社会へ最大限の貢献をすることにより、長期にわたる持続的発展をめざします。

加えて、GMB2030の実現に向けた土台づくりとして、2021年から2025年までの5年間を対象とする中期経営計画2025を策定しております。中期経営計画2025において、当社を取り巻く環境変化と事業上の課題について、当社は次のとおり考えております。

・企業を取り巻く社会の変化により企業の社会的責任がより重くなっていること

・持続的成長を可能とする、社会課題・メガトレンドを見据えた新たなビジネスモデルの確立が求められていること

・既存事業の拡大機会を確実に捉え、さらなる成長に向けた基礎固めを進める必要があること

・競争環境の激化や先行投資により利益率が低下傾向にあること

・事業のグローバル化が進む中で、事業運営体制が実態に合わなくなってきていること

これらに対応すべく、当社は中期経営計画2025において次の5項目をメインテーマとして取り組んでいきます。

①ESG経営の推進

②次世代を支えるGMB2030実現への基礎づくり

③既存事業売上高の拡大

④利益率の向上

⑤持続的成長を支えるインフラ整備

「既存事業売上高の拡大」と「利益率の向上」を通じて投資と収益性向上の両立を実現するとともに、その他の3つのテーマに対して積極的、組織的、計画的に経営資源を投入していきます。

なお、中期経営計画2025においては、売上高や営業利益に加えて親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)や営業キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー等も重要指標とし、資本効率を重視した経営をめざしております。

以上を踏まえ、当社は次の重点施策を推進していきます。

 

 

(1) ESGを経営の中核に据えた事業運営の推進

企業の社会的責任がますます重くなる中で今後もサステナブルな企業であり続けるため、当社はこれまで以上にESGを意識した取り組みを進めていきます。「食料・水・環境」分野を事業領域とし、「環境負荷低減・社会問題解決」に事業として取り組む企業として、ESGの一般的な施策に加え、クボタグローバルアイデンティティ(企業理念)に根差した事業活動を推進することによって企業としての存在価値を高めていくことをめざします。

 

(2) K-ESG経営の重要事項(マテリアリティ)

ESGを中核に据えたクボタらしい事業運営であるK-ESG経営の骨格となる4つの領域でそれぞれをブレイクダウンした12の重要事項・マテリアリティを推進していきます。

1つ目の領域は「事業を通じた環境・社会課題の解決」です。GMB2030は、新たなソリューションへの取り組みと既存事業の拡充で実現していきます。その方向性として、「食料の生産性・安全性の向上」、「水資源・廃棄物の循環の促進」、「都市環境・生活環境の向上」を掲げております。メガトレンドを考慮したこれらの方向性に加え、昨今注目されるカーボンニュートラルはもはやトレンドではなく、人と企業が直面している課題であり、当社でも事業を行う上での前提条件・共通課題と捉え、「気候変動の緩和と適応」もK-ESG経営の新たな柱として取り組んでいきます。

2つ目の領域は「課題解決を実現するイノベーションの加速」です。地域や年齢・ジェンダーの枠を越えて多様な人財が本音で意見を交わし合い、互いに尊重しあえる良好な関係を社内外の部門、関連企業、サプライヤーとの間で構築していきます。また、スタートアップや異業種企業、大学等との産官学の連携も進めていきます。そのような姿をめざして「多様な価値観に基づく事業運営」並びに「研究開発とパートナーシップの強化」を進め、当社ならではのイノベーションを生み出していきます。

3つ目の領域は「ステークホルダーの共感・参画」です。ステークホルダーの共感と参画に向けて、「従業員の成長と働きがいの向上」、「お客様の満足と安全」、「透明性の向上と対話」に重点的に取り組みます。当社グループの事業活動や姿勢を透明性高く発信して対話を重ねることで、あらゆるステークホルダーに共感・参画の輪を拡げていきます。

4つ目の領域は、「持続可能性を高めるガバナンスの構築」です。当社を取り巻く環境は複雑で変化が大きく、将来の予測が困難な状況になっております。このような状況で、取締役会の監督機能強化等の「コーポレート・ガバナンスの強化」、業務執行上のリスクを低減する「リスクマネジメント強化」、タウンホールミーティング等による経営層と従業員の対話を通じた「K-ESG経営の浸透と実践」を実行することで、変化へ対応できる仕組み・ガバナンスを構築していきます。

 

(3) 中期経営計画2025の推進

「ESG経営の推進」に加え、その他の中期経営計画2025の骨子についても着実に推進していきます。

「次世代を支えるGMB2030実現への基礎づくり」では、センシング・分析システム、AI等を利用したスマート農業の高度化に取り組んでおり、KSASのオープン化による他システム・アプリとのデータ連携等を進めております。また、出資を通じて資源循環ビジネスの構築に向けた活動を開始しております。

「既存事業売上高の拡大」では、北米工場での建設機械(コンパクトトラックローダ)の生産立上げ準備を順調に進めているほか、アセアン地域では畑作向けインプルメントの開発も進めております。

「利益率の向上」では、材料コストダウン活動や生産性の改善を進めております。

「持続的成長を支えるインフラ整備」では、グローバル需給管理システムの導入、DX人財育成に向けた教育プログラムの展開、問題発生前に未然防止を行う「リスクベースアプローチ」を推進していきます。

「共通テーマとしてのDX推進」では、AIデータ分析や動画解析等による製品・サービス・生産現場での変革を進めるほか、ビジネスプロセスについても事務作業の自動化やペーパーレス化を引き続き推進していきます。なお、当年度においてこれらの取り組みが評価され、国が定める「DX認定企業」にも登録されました。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経済状況

当社製品には生産財・資本財が多いため、民間設備投資、建設投資、国内公共投資等の低迷により、当社製品の需要が減退し、売上が減少する可能性があります。また、農業政策が農業関連製品の売上に影響を与える可能性があります。海外、特に欧米においては、小型トラクタ等の売上が個人消費や住宅建設投資等の一般景気の低迷により減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料の価格高騰・調達難

当社は外部の供給業者から多くの原材料、部品を調達しております。また、事業のグローバル化に伴って海外生産拠点での調達も増加しており、世界規模での調達網の構築による最適地調達を推進しております。しかし、原材料、部品の価格が需給の逼迫や市況の変動等によって急激に高騰し、それが長期化した場合は利益を減少させる可能性があります。また、原材料、部品の調達に支障をきたした場合、製品の製造や販売が困難となり、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 国際的事業展開に伴うリスク

当社が大規模な海外展開を行っている事業は、海外事業に付随したリスクを抱えております。これらのリスクが顕在化した場合、安定的な製品の製造及び販売が困難になり、売上の減少や調達・輸送コストの増加等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼし、成長を阻害する可能性があります。重要なリスクとしては次のようなものがあります。

① 重要な市場における政府による許認可政策や補助金政策の変化に伴うリスク

② 国際貿易政策による予期せぬ関税や輸出入割当量の変化に伴うリスク

③ 各国法規制の予期せぬ変化に伴うリスク

④ 発展途上国等における政情不安

⑤ 発展途上国における未成熟な技術水準や不安定な労使関係

⑥ 人的資源確保の困難性

⑦ サプライチェーンやロジスティクスの混乱に伴うリスク

⑧ 各国税制の予期せぬ変化に伴うリスク

⑨ 移転価格や事前確認申請の交渉における予期せぬ結果に伴うリスク

 

(4) 為替レートの変動

当社は海外に経営成績等に大きく貢献する複数の製造・販売・金融子会社を有しております。各海外子会社の現地通貨建ての財務諸表は、円換算後に連結財務諸表に反映されております。また、親会社が海外の子会社や外部顧客に輸出する場合、その取引の多くは現地通貨建てで行われ、獲得した外貨は円貨へと換算されます。従って、現地通貨と円貨との為替レートの変動が経営成績等に影響を与えます。通常は他の通貨に対して円高になれば当社の経営成績等にマイナスの影響を及ぼします。為替レートの変動によるマイナスの影響を軽減するため、地産地消を目的とした生産拠点の現地への移行を進めております。また、先物為替契約等のデリバティブを利用しております。しかし、これらの活動にもかかわらず、著しい為替レートの変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 金利変動リスク

当社は有利子負債を有しており、これらは固定金利または変動金利が課されております。金利が上昇した場合、支払利息が増加するほか、金融事業に関連して特に米国において、インセンティブコストが上昇します。金利の上昇による影響を軽減するため、金利スワップ契約等のデリバティブにより金利の変動に対応しております。しかし、こうしたリスクヘッジにかかわらず、著しい金利水準の変動は当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 株式相場の変動リスク

当社は有価証券を保有しており、その大半が株式であるため株式相場の動向次第で公正価値が大きく変動する可能性があります。また、株式相場の下落により退職給付制度に関する制度資産が減少する可能性があります。なお、制度資産については許容できるリスクのもとで可能な限りの運用成果を上げることを運用方針としており、リスクを分散するため、金利変動リスク、経済成長率、通貨の種類等の投資収益に影響する要因を考慮の上、投資先の産業、会社の種類、地域等を慎重に検討してポートフォリオのバランスをとっております。しかし、有価証券の公正価値変動、制度資産の減少が当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 第三者との戦略的提携、合併・買収等の成否

当社は今後も第三者との提携、合併・買収等に取り組み、新たな成長を模索する可能性がありますが、このような活動の成否は事業を取り巻く環境、取引相手の能力、あるいは当社と相手が共通の目標を共有しているか否か等に影響されると考えられます。このような活動が成功しない場合や投資に対するリターンが予想を下回る場合は、収益性の悪化により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 他社との競争

当社は各事業において競合他社との厳しい競争にさらされているため、取引条件、研究開発、品質等で競争優位性を維持できない場合には、売上の減少等により経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 製品やサービス

当社は品質教育の実施、品質問題の未然防止への取り組み及び品質に関する社内監査等を実施し、品質の維持・向上に努めております。しかし、当社が提供する製品やサービスに重大な契約不適合や欠陥があった場合、賠償責任を負うことで多額の費用が発生する可能性があります。また、そのような事態が発生した場合には、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 環境汚染、公害等

当社は環境法令を確実に遵守して環境事故を未然に防止するため、環境マネジメントシステムを構築し、ルールに基づいた業務運営と環境保全活動の継続的な改善に努めております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社が有害物質の排出・漏洩、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等を引き起こした場合、その是正措置をとるために多額の費用や支出が発生したり、訴訟に発展したりする可能性があります。この結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) アスベスト関連

当社は過去、1954年から2001年にわたりアスベストを含む製品の製造に携わっておりました。アスベスト健康被害に関連して、健康被害にあった方々への支払や訴訟に関する費用が発生し、それらの費用が多額になるような場合には、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) コンプライアンスリスク

当社は法令遵守と倫理に基づいた企業活動を行う旨を宣言し、当社の取締役、執行役員及び従業員が事業遂行にあたって、各種法令や倫理基準並びに社内行動規範等から逸脱した行為を行うことがないよう、グループ全体への徹底を図っております。しかし、万一、それらの行為が発生し、当社がコンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等を招き、売上の減少や費用の増加等により当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) ITシステム及びネットワーク

当社はデータ及びITシステムの機密性、可用性及び完全性といった情報セキュリティを毀損するような一定のリスクを抱えております。これらのリスクを低減すべく、適切な情報管理を目的としたセキュリティシステム、方針・方策、過程、手法、専門チームや技術を構築しております。しかし、これらの努力にもかかわらず、当社のITシステム及びネットワーク上の問題が発生した場合、業務運営の中断によって事業機会を喪失するほか、社内情報流出に伴う損害賠償責任を負ったり、知的財産権を侵害されたりする可能性があり、多額の費用や支出が発生する可能性があります。また、そのような事態が発生した場合、当社に対する社会的評価及びブランド価値の低下を招き、当社製品に対する需要が減退し、売上が減少する可能性があります。これらの結果、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 環境規制への対応

当社は製造販売する製品や事業活動に関する様々な環境規制に対応する必要があります。今後さらなる規制の強化、例えば温室効果ガス排出規制や排ガス規制、主要材料の使用制限等が行われた場合、その対応のために相当のコスト負担をする可能性があり、それが当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 自然災害等予測困難な事象による被害

当社は日本、北米、欧州及びアジア等で事業活動を営んでおります。それらの国・地域において予測困難な事象が発生した場合、原材料の調達を含む製品の製造や物流、販売活動に被害を受けることにより、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。予測困難な事象には、地震や津波、洪水、台風といった自然災害や感染症の流行、戦争やテロ、火災等の事故及び情報システムや通信ネットワークの停止、電力供給の停止または不足等が含まれます。とりわけ、日本は世界でも有数の地震多発国であり、強度の地震もしくは津波の被害を受ける可能性があります。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大がいまだ収束しない中、当社は各国政府や地域行政機関の方針に従いながら、社内外への感染拡大の防止とお客様をはじめとする関係者の安全確保を最優先に考えて事業活動を行っております。また、事業活動の様々な場面でオンラインを活用しているほか、拠点の特性に応じた在宅勤務の促進やそれに向けた制度・環境の整備に取り組んでおります。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の収束時期や将来的な影響は依然として不透明であり、現時点では想定が困難です。今後、感染拡大の状況が悪化した場合には、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社は当年度より、社内組織をベースとした事業セグメントの構成の変更に基づき、従来、「その他」に含めておりました金融サービス事業を「機械」に含めております。この変更に伴い、前年度比及び前年度末比については前年度の数値を変更後の区分に組替えて算出しております。

なお、文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当年度(2021年1月1日~2021年12月31日)における、経営者の視点による当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

① 経営成績

当年度は、依然続くコロナ禍において、生活様式や仕事環境の変化に対応するための進化が問われる1年でした。めまぐるしく変わる社会の価値基準に適応しつつ、社会が企業に求めることに応え、さらなる進化が迫られる中、当社は「グローバル・メジャー・ブランド」の実現に向けて、長期ビジョン「GMB2030」及びその土台づくりとしての中期経営計画2025の推進を始めました。当年度における中期経営計画2025の推進状況は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中期経営計画2025の推進」に記載のとおりです。

一方で、当年度は不安定な経済状況が続いた1年でしたが、当社の事業はエッセンシャルビジネスとして根強いニーズに支えられ、売上高は初めて2兆円を超え、営業利益も過去最高益を達成しました。

当年度の売上高は前年度比3,435億円(18.5%)増加して2兆1,968億円となりました。

国内売上高は水・環境部門やその他部門が減少しましたが、機械部門が農業機械等を中心に増加したため、前年度比76億円(1.3%)増の6,028億円となりました。

海外売上高は水・環境部門が減少しましたが、農業機械や建設機械が大きく伸長したため、前年度比3,359億円(26.7%)増の1兆5,940億円となりました。当年度の海外売上高比率は前年度比4.7ポイント上昇して72.6%となりました。

営業利益は原材料価格や物流費の高騰等の減益要因はありましたが、国内外での大幅な増収や為替の改善等により、前年度比709億円(40.5%)増の2,462億円となりました。税引前利益は営業利益の増加により前年度比667億円(35.9%)増加して2,526億円となりました。法人所得税は649億円の負担、持分法による投資損益は30億円の利益となり、当期利益は前年度比493億円(34.9%)増の1,907億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は前年度を471億円(36.7%)上回る1,756億円となりました。

 

事業別セグメントの外部顧客への売上高及びセグメント利益の状況は次のとおりです。

(機械)

当部門は農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械により構成されております。

当部門の売上高は前年度比23.6%増加して1兆8,648億円となり、売上高全体の84.9%を占めました。

国内売上高は前年度比6.0%増の3,105億円となりました。消費増税前の駆け込み需要の反動減からの回復や経営継続補助金による需要の増加により、農業機械や農業関連商品が伸長しました。

海外売上高は前年度比27.8%増の1兆5,543億円となりました。北米では、サプライチェーンの混乱による調達の遅れは続いておりますが、郊外移住等に伴う旺盛な需要を背景にトラクタや建設機械が大幅に増加しました。欧州では、前年の新型コロナウイルス感染拡大に伴う販売低迷からの回復により、建設機械、トラクタ、エンジンが増加しました。アジアでは、タイで良好な天候や作物価格の高値安定に支えられた畑作市場の好調により農業機械が大幅に増加したほか、インドでも農業機械が好調に推移しました。その他の地域では、オーストラリアのトラクタや建設機械が政府の景気刺激策を背景に大きく伸長しました。

当部門のセグメント利益は原材料価格や物流費の高騰等の減益要因はありましたが、国内外での大幅な増収や値上げ効果、為替の改善により、前年度比39.1%増加して2,504億円となりました。

 

 

(水・環境)

当部門はパイプインフラ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、官需向けバルブ、素形材、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境関連製品(各種環境プラント、ポンプ、民需向けバルブ等)により構成されております。

当部門の売上高は前年度比3.3%減少して3,054億円となり、売上高全体の13.9%を占めました。

国内売上高は前年度比3.0%減の2,657億円となりました。パイプインフラ関連製品は緊急事態宣言に伴う工期延長の影響等によりダクタイル鉄管や工事事業が減少しました。環境関連製品は排水ポンプ車の増販がありましたが、プラント建設の減少により全体では減少となりました。

海外売上高は前年度比5.2%減の397億円となりました。素形材やダクタイル鉄管等が減少しました。

当部門のセグメント利益は国内での減収と原材料価格の高騰により前年度比14.1%減少して223億円となりました。

 

(その他)

当部門は各種サービス事業等により構成されております。

当部門の売上高は前年度比6.3%減の266億円となり、売上高全体の1.2%を占めました。

当部門のセグメント利益は前年度比6.9%増加して37億円となりました。

 

② 財政状態

資産合計は前年度末比5,842億円増加して3兆7,735億円となりました。小売が好調な北米での販売金融の拡大及び円安による円換算影響により、金融債権が大きく増加しました。また、港湾の混雑に伴う輸送中在庫の増加等により棚卸資産が増加しました。

負債合計は金融債権の増加により主に外貨建ての社債及び借入金が増加しました。

資本合計は利益の積み上がりや為替の変動等に伴うその他の資本の構成要素の改善により増加しました。親会社所有者帰属持分比率は前年度末比1.8ポイント減少して44.5%となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは925億円の収入となりました。当期利益は増加しましたが、棚卸資産の増加に伴い前年度比504億円の収入減となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは1,274億円の支出となりました。有形固定資産の取得による支出の増加や有価証券の売却による収入の減少等により、前年度比802億円の支出増となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは606億円の収入となりました。資金調達の増加等により前年度比1,289億円の収入増となりました。

これらのキャッシュ・フローに為替レート変動の影響を加えた結果、当年度末の現金及び現金同等物残高は期首残高から357億円増加して2,586億円となりました。

なお、当社は中期経営計画2025において、営業活動によるキャッシュ・フロー及びフリー・キャッシュ・フローを重要指標としており、今後もこれらの拡大に取り組んでいきます。

 

 

(2) 資金の源泉及び流動性

当社の財務の基本方針は、操業に必要となる資金源を十分に確保すること、及びバランスシートの健全性を強化することです。

当社は運転資金の効率的な管理を通じて、事業活動における資本効率の最適化を図るとともに、グループ内の資金を親会社や海外の金融子会社に集中させることにより、グループ内の資金管理の効率改善に努めております。

当社は営業活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物を内部的な資金の源泉と考えており、資金需要に応じて金融機関からの借入、社債の発行、債権の証券化による資金調達、コマーシャル・ペーパーの発行等を行っております。運転資金及び設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金等を充当しております。当年度の借入金の使途は主として販売金融にかかわるものです。なお、資金調達に係る債務の残高については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※14 社債及び借入金」をご参照ください。

現在のところ、当社は健全な財務基盤及び安定したキャッシュ・フロー創出力により、事業運営や投資活動のための資金調達に困難が生じることはないと考えております。

 

(3) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当年度における事業別セグメントの生産実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

1,946,762

34.9

水・環境

312,662

△0.3

その他

26,667

△7.6

合計

2,286,091

28.1

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  金額は販売額をもって計上しております。

3  金額に消費税等は含まれておりません。

 

② 受注状況

当年度における事業別セグメントの受注状況は次のとおりです。

なお、機械部門は一部を除き受注生産を行っておらず、水・環境、その他の各事業部門についても一部受注生産を行っていない事業があります。

 

事業別セグメントの名称

受注高(百万円)

前年度比(%)

受注残高(百万円)

前年度末比(%)

機械

879

59.8

325

187.6

水・環境

287,402

20.2

264,213

14.4

その他

6,109

21.7

3,377

39.1

合計

294,390

20.3

267,915

14.7

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  金額に消費税等は含まれておりません。

 

 

③ 販売実績

当年度における事業別セグメントの販売実績は次のとおりです。

 

事業別セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

機械

1,864,803

23.6

水・環境

305,380

△3.3

その他

26,583

△6.3

合計

2,196,766

18.5

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  販売額が総販売額の10%以上に及ぶ販売先は前年度、当年度ともにありません。

3  金額に消費税等は含まれておりません。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社はIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しており、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を使用しております。実際の業績はこれらの見積り及び仮定とは異なる場合があります。見積り及び仮定は継続して見直され、当該見直しによる影響は会計上の見積りの変更として、見積りを変更した報告期間及び将来の報告期間において認識されます。

重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※2 作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 ※3 重要な会計方針」に記載しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当年度において締結した経営上の重要な契約の相手先及び概要は次のとおりです。

契約会社名

相手先

国名

契約の内容

契約締結日

㈱クボタ

エスコーツ Ltd.

インド

エスコーツ Ltd.による第三者割当増資の当社引受けに関する契約

2021年11月18日

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社は食料・水・環境を一体のものとして捉え、技術とソリューションを通じてこの3つを正しく循環させることで持続可能な社会の実現をめざしております。近い将来起こり得る社会課題を予見し、それを見越した製品開発と新たなサービス・事業の創出を通じて、より一層社会に貢献していきます。これに向けて、事業に直結した製品・技術の開発と、会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。

また、当社は、中期経営計画2025のテーマの一つとして「次世代を支えるGMB2030の実現への基礎づくり」を掲げ、グローバル規模での競争を勝ち抜いて持続的な成長を実現するために、研究開発に積極的に資源を投入しております。

当年度に発生した研究開発支出は675億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。なお、事業の研究開発支出及び特定の事業部門に関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。

 

(1) 機械

農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械等の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

インド市場向けトラクタ「MU5502」の開発

台数ベースで世界最大規模のトラクタ市場であるインドでは需要が拡大し続けており、当該市場に適したトラクタ「MU5502」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  インドのエスコーツ Ltd.との合弁製造会社であるエスコーツクボタインディアPvt.,Ltd.での部品調達、現地生産により、調達・物流・生産コストを削減し、機能・性能・品質だけでなく、価格面でも現地お客様に受け入れられる製品としました。

②  現地でのテストを通して、作業に適したエンジンのチューニングや車速段の追加・車速設定等を行い、作業効率の向上や低燃費を実現しております。高いクッション性を持つシートは、道路事情の悪いインドにおいて作業時のみならず移動時もオペレーターの疲労軽減につながります。また、容量を上げたヘッドランプにより、夜間の作業や移動の多い現地においても安心して作業・運転ができます。このような工夫を数多く施すことで、運転時の作業性、安全性、快適性がトータルで高いレベルにあります。

③  オーバーヒート注意喚起ランプやエアフィルターの目詰まりランプの追加、ワイヤーハーネスの分割化等、お客様の日常メンテナンスはもちろん、ディーラーでの整備も快適で高効率となるよう設計を行いました。

 

産業用小型電子制御ディーゼルエンジン「D902-K」の開発

小型エンジン専用に開発された独自のコモンレールシステムを搭載し、クボタオリジナル燃焼システムである新燃焼方式TVCR™を採用した電子制御ディーゼルエンジン「D902-K」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  始動時、加速時、急負荷時においても、視認できないレベルまで黒煙の排出を抑えました。北米EPA(注1) Tier4、欧州Stage V及び中国4次規制への対応に加え、車両を対象とした規制である中国スモークⅢ類にも対応しております。

②  コンパクトな体格や作業性の良さを維持したまま、従来機全負荷時燃費に対し約5%の改善を実現しました。なお、外観寸法、吸排気位置、エンジンマウント取り付け位置及びPTO(注2)については従来機から変更しておらず、容易な載せ替えが可能です。

③  CAN(注3)通信が可能であり、これにより車両からの信号でエンジンの回転/トルクを制御することができます。また、テレマティクスに必要なエンジン運転データをCAN経由で取得可能です。

④  機械式制御では実現できなかったトルク特性により、急負荷時の回転低下を抑制し、ドライバビリティ・作業効率を向上させます。

(注) 1  Environmental Protection Agencyの略称。米国環境保護庁。市民の健康保護と自然環境の保護を目的とするアメリカ合衆国連邦政府の行政機関。

2  Power Take Offの略称。エンジン動力を作業機械用の動力として取り出すための機構。

3  Controller Area Networkの略称。ISOにて国際的に標準化されたシリアル通信規格。ホストコンピューターなしで、マイクロコントローラやデバイスが相互に通信できます。

 

 

立ち乗り型小型建設機械「SCL1000」の開発

米国市場で、狭所での作業性と乗降のしやすさ、また視界に妨げがないことによる操作性の良さから需要が増えている立ち乗り型小型建設機械(CUL:The compact utility loader)を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  CULは前方部に装着するアタッチメントを取り換え、芝刈りや掘削、木材や干し草の運搬等の幅広い用途で活用できることをセールスポイントとしておりますが、「SCL1000」は研究開発、調達、製造、販売を全て北米人員で行っており、機械本体だけでなく、輸送に至るまでムダが無い現地に適した設計になっております。

②  軽量小型かつ出来る限り広いクローラ幅のバランスを見極め、低燃費で高い運動性能ながら芝の損傷を最小限に抑えることを可能としました。

③  立ち乗り型小型建設機械においても快適性は重要と考え、オペレーターの疲労を最小限にする設計を行いました。

 

当セグメントに係る研究開発支出は524億円です。

 

(2) 水・環境

パイプインフラ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、官需向けバルブ、素形材、スパイラル鋼管、空調機器等)、環境関連製品(各種環境プラント、ポンプ、民需向けバルブ等)の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。

 

水道管路の新たな老朽度評価方法の開発

東京大学との共同研究により、水道管として最も多く使用されているダクタイル鉄管(鋳鉄管を含む)の新しい老朽度評価方法を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  機械学習(AI)を活用して新しい「老朽度評価モデル」を構築することで、従来の老朽度予測と比べて精度を大幅に向上させることが可能となりました。

②  管路ごとの予測漏水件数(件/年/㎞)の算出や現状の漏水危険度、将来の漏水危険度マップの提示、管路ごとの更新優先順位の提示が可能です。

③  樹脂管等、ダクタイル鉄管(鋳鉄管含む)以外の管路に対しても高精度な老朽度評価を行うことができ、効率的かつ経済的な水道管路更新計画の立案に貢献します。

 

水田の水位を自動制御する「スマート農業用水管理システム」の開発

河川から農業用水をくみ上げる既設の揚水ポンプと水田の給水栓を電動で操作する装置「WATARAS」を連動させて、水田の水位を自動制御できる「スマート農業用水管理システム」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。

①  自動で水田の水位を制御することで、大幅な省力化に加え、省エネや水資源の有効活用が可能になります。農研機構(農業・食品産業技術総合研究機構)の研究では、「WATARAS」を活用すれば、水管理に要する労働時間が約8割削減、出穂から収穫までの用水量は約5割減少するというデータが出ており、本システムではさらに大きな効果が期待できます。

②  揚水ポンプの運転状態や各水田の給水栓開閉状況、水位不足の情報を「KSIS(注4)」のウェブサイトでリアルタイムに確認可能です。

(注) 4  クボタスマートインフラストラクチャシステム。様々な水環境インフラ施設や機器を遠隔監視・診断・制御する当社独自のクラウドシステム。

 

当セグメントに係る研究開発支出は60億円です。

 

 

(3) その他・全社

当社はK-ESG経営を推進しており、研究開発においても環境・社会課題の解決に資するイノベ-ションの創出に向けた取り組みを加速しております。喫緊の課題であるカーボンニュートラルでは、電動農業機械・建設機械についてBEV(注5)トラクタとBEVミニバックホーの製品化に向けた取り組みを加速しております。また、燃料電池トラクタの研究を、農村部における水素インフラや水素充填方式のあるべき姿を検討するため、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証事業も活用して進めております。これらの新動力源の取り組みだけでなく、燃焼効率向上等の低燃費化やバイオディーゼル含有率向上等のこれまでに進めてきた研究開発も引き続き注力していきます。これらに、自動運転技術による作業ロス低減や最適省エネ運転、バイオマス(農業残渣や食料残渣)の活用等、多面的な取り組みを結集することで、カーボンニュートラルを実現していきます。

近年注力しているスマート農業については、前年度の時点で他社に先駆けてトラクタ・コンバイン・田植機の自動運転技術を確立しておりますが、より一層使いやすい機械とすべく、AIや先進センサの活用研究等のさらに高度な取り組みを進めております。天候情報、生育モデル、リモートセンシングの活用等、データ農業の取り組みも現地実証を計画的に進める等の充実したものになりました。また、田んぼダムに関する研究等、営農支援システム「KSAS(注6)」、圃場水管理システム「WATARAS」、水環境プラットフォーム「KSIS」の連携に関する研究開発も着実に推進できました。

材料や解析等の基盤技術にAIやDX等の先進技術を組み合わせることで、今までより大幅に研究開発期間を短縮すると共に、研究開発の質の向上を図る等の技術基盤の抜本的底上げにも取り組みました。

(注) 5  Battery Electric Vehicleの略称。バッテリー式電気自動車。

6  クボタスマートアグリシステム。当社が提供する営農・サービス支援システム。

 

当セグメントに係る研究開発支出は91億円です。