文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、1909年の創業以来116年にわたって、お客様満足第一の製品の供給とサービスの提供により、社会のインフラ整備、ライフラインや産業設備の拡充に取り組んでまいりました。引き続き、一層価値ある企業グループであるために、創業から築き上げてきたお客様との信頼関係と豊富な納入実績に裏打ちされたソリューション、提案力という当社グループの強みを活かし、企業理念ならびに経営理念を実践いたします。また、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」に、「未来もよし」を加えた「四方よし」の精神で、当社グループの2030年にありたい姿である「将来にわたって社会へ貢献できる企業グループ」を目指してまいります。
経営理念やありたい姿の実現に向け、「サステナビリティ基本方針」「ダイバーシティ方針」「株主還元方針」を経営方針として定め、サーキュラーエコノミーと持続的成長の両立を可能とするビジネスコンセプトの推進に取り組んでまいります。~モノづくりから価値づくりへ~をキーワードに社会課題の解決や顧客価値の創造に取り組み、最適なサステナビリティを推進する循環型ビジネスモデルの構築を目指してまいります。
① 社是
当社の社是は、クリモトグループの精神、心の拠り所であり、経営者・従業員すべての人々にとって、あらゆる理念や、方針の土台となるものです。
一、技術並びに経営の革新に努める
一、英知を育て、衆知を集める
一、有効性に徹する
われらはこの基本的理念に従い、栗本人としての親和を深め、企業の発展を通じてわれらの福祉向上と人類の幸福に貢献しよう。
② 企業理念
企業全体の目的、方向性、存在意義を表現したもので企業普遍の考え方
1.私達は水と大気と生命(いのち)の惑星、地球を大切にし、人間社会のライフラインを守ります。
2.私達は「安心」という価値を提供し、社会と顧客の信頼に応えます。
3.私達は顧客の声をよく聴き、顧客から学び、独自の技術を深め、新しい技術を加え、顧客にオリジナルな「最適システム」を提案します。
4.私達はモノづくりを通して、社員の幸せと人間社会の幸せを目指します。
5.私達はこれらの実践のため、コンプライアンス経営を徹底し、継承と変革の調和を計り、個性と創意を尊重し、企業の発展と社会への貢献に努めます。
③ 経営理念
私たちは、全てのステークホルダーの期待と信頼に応え、常に最適なシステムを提供し、『夢ある未来』を創造します。
経営者が経営環境に応じて定める、目指すべき将来の姿を描いたこの経営理念に基づき、これからのクリモトに求められる事業活動は、社会インフラ分野・産業インフラ分野へ最適なシステムを提供することとしています。
事業を通じた持続可能な社会の実現に貢献し、これからも社会から必要とされ続ける企業グループを目指してまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、2024年4月に、経営の基本方針に基づいた中期3カ年経営計画を策定いたしました。本中期3カ年経営計画期間である2024年~2026年度を、2030年にありたい姿に向けた変革成長準備期間と位置づけ、①安定収益事業の収益力強化と成長牽引事業への積極的投資で「成長」を推進するとともに、②資本コストや株価を意識した経営の実現に向け積極的な対応を図り、③サステナビリティ経営を継続して進めることといたしております。
なお、新中期3ヵ年経営計画期間における定量目標は以下に記載のとおりです。
本中期3カ年経営計画初年度となる2024年度連結実績は、営業活動の強化等グループ一丸となって取り組んだことにより、売上高および営業利益について、期初の計画値を上回ることができました。
(注)3年間継続して7%以上
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(ライフライン事業)
パイプシステム部門の主要市場である上水道市場では、施設老朽化や耐震化の遅れ等の課題解決に向け、管路設計・施工の一括発注が増加傾向にあるなど、事業環境が変化しております。当社グループにおいても、従来から行っている資材の製造・販売といったビジネスモデルに加えて、工事・サービスも含めたソリューションの提供を行うビジネスモデルの確立が急務となっており、当該ビジネスモデル確立に向け、要員の強化を行っております。生産分野においては、CO2排出削減も視野に戦略的構造改革による「高効率化」「技術・技能の継承」を進めるとともに、農水・下水、民間市場や防衛といった分野に加え、海外販売への対応も拡大し、今後の事業拡大を推進してまいります。
(機械システム事業)
当事業にて、熱間鍛造プレスなどを供給している自動車産業は、「CASE」に代表されるような世界規模の大きな変革の時を迎えております。また建設市場では高度経済成長期に建設された構造物の老朽化により、コンクリート廃材が大量に発生するなど社会問題化しております。当社グループにおきましては、鍛造プレス機や混練・混合機、破砕機などの産業設備の製造技術といった当社グループ保有のコア技術を活かし、二次電池ならびに再生骨材などの製造設備へ最適なシステムを提供することで、様々な分野において、脱炭素社会や循環型社会の実現へ貢献してまいります。
(産業建設資材事業)
建築、下水道、電力、鉄道など様々な市場へ資材を提供している当事業では、グループ経営の新たな柱となる事業を模索しており、特に需要増大が期待される道路・橋梁の維持メンテナンス市場でのビジネス拡大を推進しております。国土強靱化の流れの中、道路や橋梁本体の補修・メンテナンスのみならず、メンテナンス用設備やその周辺資材へのニーズは増加傾向にあるため、当社グループは、多種多様な周辺資材の製造・販売を行うとともに、施工会社も有していることから、提供するソリューションのラインナップ拡充により、国土強靱化へ貢献すると共に事業拡大を目指してまいります。
いずれの事業におきましても、当社グループが主に行ってきた資材や設備の製造・販売といったモノづくりから、社会課題の解決や顧客価値の創造に取り組む価値づくりへ、経営理念で謳う「最適システムの提供」により、広く社会に貢献してまいります。
(財務戦略)
当社グループは、「成長牽引事業への積極的投資」に加え、「資本収益性の改善」と「資本コストの低減」により企業価値向上への取り組みを推進してまいります。
「成長牽引事業への積極的投資」につきましては、キャピタル・アロケーション方針に基づき、「安定収益事業」をベースとした、営業キャッシュフローをメインに、投資有価証券をはじめとした資産売却に加え、必要に応じて有利子負債を活用することで、「成長牽引事業」への投資拡大、また、経営・生産等の効率化を推進する「DX投資」、事業規模の拡大を目指した「M&Aの実行」など成長戦略投資を推進してまいります。
「資本収益性の改善」につきましては、前述の「成長牽引事業への積極的投資」により、利益の最大化、利益効率の向上を図ります。
「資本コストの低減」につきましては、投資有価証券をはじめとした資産の縮減、自己株式の取得などにより資本効率を高めてまいります。
また、企業価値を高める一環として、株主還元策を強化し新中期3ヵ年経営計画期間の各年度の配当性向を50%以上とし「PBR」、「PER」の向上を推進します。
以上により、新中期3ヵ年経営計画期間における経営効率目標として掲げた、ROE7%以上の確実な継続と、安定的なROE8%以上の実現、さらに、PBR1倍超を目指します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する基本的な考え方
当社は、「世の人々にあまねく衛生的で綺麗な水を届けたい」という創業者 栗本勇之助の想いを紡ぎ、社是に謳われる「企業の発展を通じてわれらの福祉向上と人類の幸福に貢献しよう」をサステナビリティの源流とし、これまで、全てのステークホルダーの期待と信頼に応え、常に最適なシステムを提供するという経営理念のもと、社会インフラや産業インフラの分野に貢献してまいりました。
一方、社会を取り巻く環境は刻々と変化し、気候変動や生物多様性の危機につながる環境問題、人権尊重や労働人口減少などの社会問題等にしっかり向き合う必要があります。そこで、当社では、サステナビリティの源流に基づいた経営を推進し、社会課題の解決を意識した事業展開が社会への貢献と新たなビジネスの機会につながると考えています。具体的に、環境問題では気候変動対策としてGHG排出量の削減と循環型社会の形成、社会問題では、DEIなど多様な人材の価値観を尊重し、だれもが活躍できる働きがいのある労働環境の提供などの取り組みを当社グループはもちろんサプライチェーンにおいても推進し、"四方よし"の精神で持続可能な社会の成長と発展に貢献してまいります。
(2) 気候変動に対する取組(TCFD提言に基づく情報開示)
当社は、2022年度よりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示の準備を進め、2023年6月29日提出の有価証券報告書にはじめて情報開示をしました。当社事業はライフライン事業、機械システム事業、産業建設資材事業からなる3つのセグメントで構成されており、気候変動が当社の全ての事業セグメントに与えるリスクと機会に関して、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標及び目標の観点で分析した結果について情報開示しています。
① ガバナンス
当社は、サステナブルな社会の実現に貢献するため、気候変動をはじめESGの諸課題についてのリスク及び機会の管理、対応策、活動に対する監督責任を負い、それらの結果について協議・審議する機関であるCSR委員会を設置しています。CSR委員会は、代表取締役社長が委員長を務め、取締役、執行役員、事業部長、労働組合、監査役(オブザーバー)で構成し、事務局をサステナビリティ推進室として年2回の頻度で開催しています。また、下部組織としてCSR推進会議を設置しています。議長をCSR担当役員とし支社店長、工場長、事業部門長、間接部門長、労働組合で構成し、事務局をサステナビリティ推進室として年4回の頻度で開催することとしています。CSR推進会議では、気候変動をはじめとするESGの諸課題についてのリスク及び機会の抽出及び、それら諸課題について発生の可能性と影響度を軸にした重要度の検討、ESGに関する情報共有、既存の方針の見直しや新たな方針の検討、具体的な活動の企画提案と実践に向けた計画立案などを行い、CSR委員会に報告・意見具申を行います。CSR委員会で決定した事項は取締役会等で付議され、決議された事項をグループ全体の経営に反映いたします。2024年度の取締役会では、サステナビリティに関する主な議題として、TCFDおよびCDPの取り組み課題、人権デューデリジェンスの取り組み課題、サステナビリティの社内浸透課題、財務的マテリアリティの深堀を行うためのリスクと機会の特定、サステナビリティ目標に対応した報酬制度の導入に関して合計4回の報告と協議を行いました。
図1:サステナビリティ推進体制図

② 戦略
気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法(表1)
気候変動による当社事業セグメントへの影響を明らかにするために、「気候変動対応への積極的な政策・法規制により気温上昇が抑えられる1.5℃シナリオ」と「気候変動への対応が現状維持のままの世界を想定した4℃シナリオ」の2つの気候変動シナリオを用いて分析を実施しました(表1)。各シナリオ分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告しているRCPシナリオを参考に気候変動による物理リスク(物理的な影響)の分析を行い、また、IEA(国際エネルギー機関)が報告しているNZE、SDS、STEPSシナリオを参考に移行リスク(脱炭素経済への移行に伴う影響)の分析を行いました。また、対象の時間軸は、2050年カーボンニュートラルを達成するためにマイルストーンとしている2030年に設定し、従来の財務項目と比較する際に気候変動がもたらす影響度を把握するため、試算可能な項目について財務的な影響額を試算しました。なお、財務的影響額のリスクを最大化するために各拠点の資産額を取得時金額で試算しています。
表1:シナリオ分析で参考にした気候変動シナリオ
・シナリオ分析結果(表2)
<1.5℃シナリオ>
1.5℃シナリオでは、脱炭素社会への移行に伴うリスクとして、「炭素税導入によるコストの発生、再エネ・省エネに関する政策・法規制によるエネルギー価格の高騰」、「原材料コストの高騰、顧客・投資家の評判変化」の影響が大きいと予想されます。そのため、GHG排出量の削減に向けた対応策として「再生可能エネルギー由来のカーボンフリー電力の導入」、「生産設備の省エネ化と生産の合理化」、「非化石燃料への転換」、「原材料使用量の低減ならびに代替品の検討」、「脱炭素製品化の促進とダイベストメント対策」などに取り組んでいます。一方の機会としては、「社会課題への解決に向けた商品の需要変化」、「顧客や投資家の評判変化」によるプラスの影響が大きいと考え、「社会課題を見据えた戦略的な事業拡大」を推進しています。具体的には、ライフライン事業セグメントにおいて水力/小水力関連市場への製品展開と脱炭素製品化の推進、機械システム事業セグメントでは、バイオマス発電関連設備や二次電池製造プロセスに係る市場、サーキュラーエコノミーを実現するリサイクル関連市場の強化、産業建設資材セグメントでは、再生可能エネルギー向けの樹脂管関連製品やZEB(Net Zero Energy Building)への市場展開が挙げられます。この1~2年、EV自動車への転換が鈍化しておりそれらの市場動向を注視しています。
<4℃シナリオ>
4℃シナリオでは、気候変動によってもたらされる異常気象の激甚化などの物理的な影響が大きいと予想されます。当社事業へのリスクとしては、異常気象がもたらす自然災害による生産設備の被災や、それに伴う製品販売の遅延や停止が挙げられます。そのため、リスク低減を目的とした拠点・資産の分散や拠点の補強などのBCP対策を促進し、被災しても事業が継続できる体制の構築と、当社だけでなくサプライヤーを巻き込んだ分散型の調達の整備を進める必要があります。一方で、機会としては、異常気象の激甚化によりライフライン事業セグメントの送水網の拡張に伴う鉄管(水道管)需要の増加が挙げられます。今後は、社会インフラに携わる企業グループとして、国土強靭化や災害対応に係る製品の事業拡大に一層注力してまいります。
表2:シナリオ分析結果
図2:リスクと機会の重要度評価

③ リスク管理
当社は、事業を取り巻くリスクおよび機会に対して的確な管理・実践を可能にすることを目的とし体制を整備しています。リスクに関しては、リスクマネジメント体制(図1)を構築し、 気候変動がもたらすリスクについては、CSR委員会と連携しながら全社的なリスクマネジメント体制に統合しています。当社のリスクマネジメント規定に則り、当社および当社グループ会社に関連するリスクを3年毎に特定を行い、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会の専門部会であるリスクマネジメント部会にて棚卸を行いリスクについて一覧化しています。特定されたリスクは、リスクの種類・重大性・発生頻度または可能性・経営への影響度から評価しています。具体的には、リスクの種類を人的・物的・賠償・信用の4つに区分し、リスクの重大性(経営への影響度を含む)を4段階、リスクの発生頻度または可能性を4段階で評価したリスクマトリクス一覧表を作成(毎年4月または大幅な事業環境変化が生じた時に見直し)し、その結果をコンプライアンス・リスクマネジメント委員会が検討・承認を行っています。評価されたリスクを管理するために、対応策を検討し実行する専門部会を設置するとともに、委員会・専門部会での検討事項を従業員へ周知し、取り組みを推進・実行しています。
気候変動に関連するリスクおよび機会は、当社事業が社会課題を解決する取り組みであると同時に収益に連動する重要な要素ととらえ、シナリオ分析によるリスクおよび機会の項目について、発生の可能性を短期(0~3年)、中期(~2030年)、長期(中期以降~)の視点で財務的影響度をマトリクス化してマッピングしました(図2)。重要度評価で優先度が高く評価された項目は、1.5℃シナリオにおけるリスクが大きい「カーボンプライシングの導入」、4℃シナリオにおけるリスクが大きい「洪水・高潮による直接被害」でした。一方、機会として、短期的には「再エネ関連製品の売上増加」と中期的に「二次電池関連の需要増加」が抽出されました。
現在も、当社事業収益との関連性が高い機会については、四半期毎に取締役、執行役員を中心に取り組みの適切性を協議しています。今後も、一層サステナビリティ関連のリスクおよび機会の影響を経営計画へ円滑に反映できるよう取り組みを強化推進してまいります。
④ 指標及び目標
当社は、気候変動に対する影響を評価・管理するためCO2排出量を指標として設定しています。2050年度カーボンニュートラルへの挑戦に向けて、自社活動によるCO2排出量(Scope1、2)を2030年度に2013年度比で50%以上の削減目標として掲げています(図3)。2023年度実績は、2022年度から導入した再生可能エネルギー由来電力の導入の効果により2013年比51.6%のCO2排出量削減となりました。また、2022年度の実績値から開示を始めたサプライチェーン排出量(Scope3)ですが、2023年度実績の算定の際に2022年度実績も精査し算定精度の向上にも取り組んでいます。算定結果は前年度より大きく削減している結果となっておりますが、生産量の変動や販売した製品の種類と構成により、前年度とは単純に比較できないと分析しております。2024年度は、当社グループ全体でのScope1、2、3のCO2排出量の把握に着手しました。2025年度には当社グループ全体のScope1、2を把握し、現在掲げている目標(2030年度に2013年度比で50%以上の削減)を当社グループの削減目標へと見直していく予定です。また、2026年度以降にはScope3の算定範囲を当社グループ全体へと拡げ、Scope3をも含めたサプライチェーン全体の排出量についても削減目標の設定を行う予定です。これらの計画遂行のため、GHG排出量算定精度の向上、迅速化ならびにGHG排出データの見える化を目的としてクラウドサービスによるGHG排出量算定ツールを導入いたしました。現在、当社グループに適用させるためのセットアップ中であり、2025年度中に運用を開始する予定です。
図3:CO2排出量の実績(2023年度)と削減目標(Scope1+2)

表3:温室効果ガス(GHG)排出量[t-CO2]
(3)人的資本
① ガバナンス
代表取締役社長を委員長とし、取締役を委員とする「人材開発委員会」を中心に、人材の活用(採用、配置、評価、育成)に資する全社的な方針・取り組みについて審議し、当社の人的資本経営を牽引する仕組みを設けております。
② 戦略
イ.人事方針
当社グループでは、「人は企業にとって最も重要な資本である」という視点に立ち、持続的な成長を実現するために、人事の考え方を次のとおり定めています。
◇組織風土の改革、社員の意識改革・行動改革をおこします
・社員全員に自らがチャレンジする機会を与え、それを支える体制をつくります。
・自己責任、自己完結型の組織づくりを推進します。
・組織に属する者のすべての能力を結集、発揮させ創造的・独創的な価値を生み出す組織風土を目指します。
◇働きがいのある職場づくりをおこないます
・ワーク・ライフ・バランスを推進し、また多様な人材が活躍できる柔軟な仕組みをつくります。
・年齢に関係なく、行動し成果をあげた者が公正に報われる制度を確立し、やりがい、働きがい、幸福感を感じられるような仕組みを作り、エンゲージメント向上を目指します。
◇ダイバーシティの取り組みを推進します
・「英知を育て、衆知を集める」との社是に則り、女性、外国人、障がい者、様々な職歴をもつキャリア採用者など、多様な人材が活躍することができる職場環境や必要な能力開発の機会を整備します。
・多様な価値観を結集し、最大限に活かすことにより、変化の激しい市場環境に対応し、持続的成長を実現することを目指します。
[参考]ダイバーシティ方針(2024年4月1日制定)
当社のダイバーシティ推進は、経営方針である「四方よし」の精神で「未来もよし」を実現する経営戦略の一環と位置付け、新たな視点でのビジネスモデルを創造する組織風土を醸成し、持続的成長を実現するものととらえています。基本的取り組みとして以下を掲げます。
・積極的採用により人材の多様化をはかります
女性、障がい者、キャリア入社者の採用にかかる目標を設けて採用活動をおこない、従業員の多様性促進をはかります。
・多様な人材が活躍できる環境を整備します
女性、外国人、障がい者、キャリア入社者など、多様な人材が活躍できる職場環境、能力開発環境を整備します。
・女性活躍を推進します
その第一歩として女性活躍を推進します。数値目標を設定するとともに公表を行い、その達成に向けた取り組みを進めます。
ロ.人材育成方針
企業理念の一文にある「私達はモノづくりを通して、社員の幸せと人間社会の幸せを目指します」を受け、以下の基本方針を掲げその実現に努めております。
◇社員の能力開発と組織の活性化を通じて、付加価値ある製品やサービスを生み出し、顧客価値創造と社会貢献を実現します。
◇社員のキャリア形成と能力開発を支援し、社会人・組織人として社会に貢献できる能力と豊かな人間性の形成をはかります。
具体的に取り組むテーマとして、主に以下の5項目に重点を置いて研修等の教育施策を展開し、社員の能力開発と組織力向上を推進しております。
・学習する組織風土の醸成
・企業経営の中核を担う基幹職層の組織マネジメント力の強化
・若手、中堅社員からの計画的なコンセプチュアルスキル(論理的思考力、問題解決力)強化
・次期経営幹部候補者、およびイノベーション人材の発掘・育成
・働き方改革、ダイバーシティ推進および持続可能な社会の実現に向けてのCSR教育
ハ.社内環境整備方針
前記の方針に基づき、中期3ヵ年経営計画(2024~2026年度)にて人的資本に関する戦略を次のとおり掲げ、社内環境の整備に取り組んでおります。
◇人材流動化と計画的育成
・基幹職層、中堅層、若年層にかかわらず就業環境の変化を通じた成長機会の創出
・主体性を強く発揮するリーダーの早期かつ計画的な育成
<具体例>
・2024年7月から主に課長職の既任基幹職80名強を対象とした「マネジメント・アップデート研修」を複数回に亘って実施。「メンタルブロック」をテーマに取り上げ、参加者が自身のマネジメントスタイルを改めて振り返り、その強化をはかるきっかけとすることを目的としております。
◇採用力強化と多様性向上
・事業計画に必要な専門人材を必要な時に確保できる態勢の構築
・職場を構成する人員の多様性を高めて異彩を組織の力量につなげる
<具体例>
・2024年8月に採用ホームページを全面リニューアル。社員インタビューには女性社員を多く掲載すると共に、ダイバーシティ推進やワーク・ライフ・バランス等のコンテンツも充実させることで女性応募者の増加をはかっております。
・2024年9月に「DE&I推進プロジェクト」を新設し、全社員を対象としたダイバーシティ意識調査を実施、その結果に基づいてロードマップを作成し、今後、主に経営層からの継続的な発信、環境・ルールの整備、全社員の意識改革に取り組むことを予定しております。
◇働きがいを実感しながら活躍できる職場環境の整備
・エンゲージメントを高く維持して働き続けたい職場環境の整備
・主体的なキャリア形成を可能とする仕組みの構築
<具体例>
・企業と社員の結びつきの強さを定量的に評価し、社員の価値観や働き方の多様化などの変化を把握する「社員エンゲージメント調査」を毎年度実施しております。同調査結果のフィードバックは職場単位でリーダーを介して職場全体に展開しており、個人のパフォーマンスの最大化と持続的な社員のモチベーション向上をはかって「生産性の向上」や「離職率の改善」などの効果を期待しています。2024年度には社長との直接の対話機会も適宜設け、経営と現場の距離を近づけるように努めております。
③ 指標及び目標
人的資本に関して、「多様性」と「働きやすさ」の観点から次の目標を掲げ、モニタリングしております。
また、当社グループでは、上記「②戦略」において記載した、人事方針、人材育成方針、及び社内環境整備方針に係る指標について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、企業規模、推進体制の違いにより連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
対象範囲:株式会社栗本鐵工所単体
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
リスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があるため、当社グループは事業の継続性を確保する観点から経営戦略と一体となったリスク管理を実践しております。また、当社グループはこれらリスクの発生回避及び発生した場合の迅速な対応に努める所存であり、リスク管理体制等についての詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①経済状況の変動リスク
当社グループの事業は、国際情勢・国内経済・為替・疫病の蔓延等、当社グループに起因しない外部環境の変動が、受注量や原材料調達コストの増減等で当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
②見積り前提条件の変動リスク
当社グループは連結財務諸表を作成するに際して、棚卸資産の評価、工事原価、有価証券の減損、固定資産の減損、売上債権の回収可能性、繰延税金資産に対する評価性引当額、従業員の退職給付制度に関して見積りを行っております。これらの見積りは将来に関する一定の前提に基づいており、その前提が実際の結果と相違する場合には、予期せぬ追加的な費用計上が必要となり、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
③有価証券の損失計上リスク
当社グループの保有する有価証券については、その大半が市場性のある株式であるため、経済状況、株式市場の動向によっては譲渡及び評価損失等が発生し、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
④固定資産の損失計上リスク
当社グループの保有する固定資産については、今後の事業の収益性や市況等の動向によっては譲渡及び評価損失等が発生し、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
⑤環境汚染、公害等のリスク
当社グループの現在及び過去における事業活動において、有害物質の排出・漏洩、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染等を引き起こした場合、その是正措置をとることによって当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
⑥訴訟その他のリスク
当社グループと取引企業との取引において、取引先の予期せぬ倒産等で債権回収に支障が生じた場合、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループを対象とした訴訟において、当社グループの主張や予測と異なる結果となった場合、あるいは当社グループに対して巨額の損害賠償請求や事業の遂行に長期的な制限が加えられた場合等、重大な法的責任の発生及び規制当局による措置は、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
⑦自然災害、事故災害のリスク
地震、台風等の自然災害や火災等の事故災害が発生した場合、当社グループの拠点における設備等の損壊や電力、ガス、水の供給困難により、一部または全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
⑧コンプライアンス違反のリスク
当社グループは、日本及び世界各国の各種法令、行政による許認可や規制に基づき、その遵守に努めております。しかし、各種法令に対する理解が不十分、もしくは改正等への対応が適切でない場合には、各種法令違反と認定され、課徴金支払命令等による損失計上やそれに伴う社会的信頼の低下等によって、当社グループの事業、業績及び財務状況に重要な影響を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の状況
①事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a.事業全体の状況
流動資産
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末と比べて2,085百万円減少し92,901百万円となりました。主な要因は、棚卸資産が増加した一方で、現金及び預金、電子記録債権が減少したことなどによります。
今後は売上債権及び棚卸資産の回転率を上げ、キャッシュコンバージョンサイクル等も意識した資産効率の良い経営を目指してまいります。
固定資産
当連結会計年度末の固定資産は、前連結会計年度末と比べて2,447百万円増加し58,636百万円となりました。主な要因は、有形固定資産の増加1,627百万円及び投資有価証券の増加1,280百万円等であります。
今後は維持・更新および生産合理化に向けた設備投資の他、中期3ヵ年経営計画に基づき、市場成長が見込まれ、自社売上が拡大中の事業である「成長牽引事業」やDX戦略実現のための情報システムの整備に対し、積極的に投資を行ってまいります。
流動負債
当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末と比べて2,205百万円減少し57,236百万円となりました。短期借入金が5,890百万円増加しましたが、一方で支払手形及び買掛金、電子記録債務が9,453百万円減少したことが主な要因です。
固定負債
当連結会計年度末の固定負債は、前連結会計年度末と比べて3,380百万円減少し5,622百万円となりました。退職給付に係る負債が4,741百万円減少したことが主な要因であります。
純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて5,948百万円増加し88,678百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上6,905百万円等であります。
b.セグメント情報に記載された区分ごとの状況
ライフライン事業セグメント関連
ライフラインセグメント関連は、当連結会計年度末のセグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比べて1,546百万円減少し、61,207百万円となりました。その主な要因は、減収に伴う売上債権及び棚卸資産の減少等によるものです。
機械システム事業セグメント関連
機械システムセグメント関連は、当連結会計年度末のセグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比べて1,684百万円増加し、27,645百万円となりました。その主な要因は、増収に伴う売上債権及び棚卸資産の増加に加え、当年度より三協機械の資産が当セグメントに加算されたこと等によるものです。
産業建設資材事業セグメント関連
産業建設資材セグメント関連は、当連結会計年度末のセグメント資産につきましては、前連結会計年度末と比べて2,864百万円増加し、31,637百万円となりました。
その主な要因は、増収に伴う売上債権及び棚卸資産の増加等によるものです。
(2) 経営成績の状況
①事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a.事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、不安定な国際情勢の中、原材料価格やエネルギー価格の高騰、物価の上昇、為替や株価の変動などがある一方で、社会活動及び経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境の改善により景気は緩やかな回復基調で推移しました。
このような状況の中で、当社グループは、引き続き営業活動やコストダウン活動の強化に努め、企業価値の更なる向上と経営基盤強化に向けた事業展開を進めてまいりました。
当社グループの当連結会計年度の業績は、「ライフライン事業」にて売上高が減少しましたが、「機械システム事業」「産業建設資材事業」において売上高が増加したことにより、前連結会計年度比744百万円増収の126,669百万円となりました。
損益面につきましては、販売費及び一般管理費が増加したものの、売上高の増加および売上総利益率の改善により、営業損益では、前連結会計年度比469百万円増益の7,930百万円の利益、経常損益は、受取配当金の増加などにより前連結会計年度比660百万円増益の8,477百万円の利益、親会社株主に帰属する当期純損益は、投資有価証券売却益、事業譲渡益の計上、法人税等の計上などにより、前連結会計年度比1,435百万円増益の6,905百万円の利益となり、過去最高益を更新いたしました。
今後も引きつづき企業価値の向上と持続的な成長を達成に向け、中期3カ年経営計画に基づき、事業を推進してまいります。
b.セグメント情報に記載された区分ごとの状況
ライフライン事業セグメント関連
「ライフライン事業」は、売上高につきましては、バルブシステム部門にて電力・鉄鋼向け案件や海外向けの売上高が増加しましたが、パイプシステム部門にてグループ会社の売上高が減少したことなどにより、前連結会計年度比2,233百万円減収の62,206百万円となりました。
営業損益につきましては、減収による利益減などにより、前連結会計年度比465百万円減益の4,029百万円の利益となりました。
今後は、当セグメントでは老朽化する社会インフラや人口減少に伴う社会構造変化などの社会の課題に向けて、資材供給だけではなく設計、施工、メンテナンスといったソリューションビジネスの拡大や農水・下水・防衛・民間市場のライフライン更新事業への対応拡大により「最適な水環境システムメーカー」として更なる進化を目指すとともに、戦略的構造改革による「高効率化」「技術・技能の継承」を推進することで収益性の向上を目指してまいります。
機械システム事業セグメント関連
「機械システム事業」は、売上高につきましては、機械システム部門にてプレス機器メンテナンスやプラント案件等の売上高が増加したことに加え、素形材エンジニアリング部門にて三協機械株式会社がグループ会社となったことなどにより、前連結会計年度比1,814百万円増収の30,959百万円となりました。
営業損益につきましては、機械部門の増収による利益増などにより、前連結会計年度比255百万円増益の1,747百万円の利益となりました。
今後は、当セグメントではカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーへの対応など、日本国内はもとより世界各国におけるあらゆる産業に対して、商材の拡販ならびに最適システムを提案してまいります。
産業建設資材事業セグメント関連
「産業建設資材事業」は、売上高につきましては、化成品部門にて売上高が増加したことに加え、建材部門にてグループ会社の売上高が増加した影響などにより、前連結会計年度比1,163百万円増収の33,504百万円となりました。
営業損益につきましては、グループ会社の増収による利益増などにより、前連結会計年度比329百万円増益の2,585百万円の利益となりました。
今後は、当セグメントでは道路・橋梁周辺分野を成長牽引事業と位置づけ、維持メンテナンス、新素材などの開発によって新たな事業領域への進出を加速してまいります。
c.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは2025年3月期の目標とする経営指標を「連結売上高124,000百万円」「連結営業利益7,000百万円」としておりましたが、売上高、営業利益ともに目標を上回る結果となりました。営業利益増加の主な要因は、原材料費の高騰の他、管理販売費増加などの影響はあったものの、売上高の増加に加え、製造原価でのコスト低減などによるものです。
当社グループでは、2030年にありたい姿である「将来にわたって社会へ貢献できる企業グループ」を目指して、資本コスト経営ならびにサステナビリティ経営の推進を図り、全てのステークホルダーの期待に応えるべく、2024年度を初年度とする中期3ヵ年経営計画を策定いたしております。
本計画期間である2024年~2026年度を、2030年にありたい姿に向けた変革成長準備期間と位置づけ、①安定収益事業の収益力強化と成長牽引事業への積極的投資で「成長」を推進するとともに、②資本コストや株価を意識した経営の実現に向け積極的な対応を図り、③サステナビリティ経営を継続して進めることといたしております。
次期の連結業績につきましては、ライフライン事業など国内公共事業関連の官需分野では、資機材、労務費等の物価上昇の影響等があるものの、前年度並みの需要がある見込みです。また、民需分野においては、主に機械システム部門において、2024年度に受注を予定した案件が、客先都合により見送りや延期になったこと等により、売上が減少すること等が予想されます。そのような状況を鑑み、2025年度通期の業績見込値は売上高125,000百万円、営業利益7,500百万円としております。
なお、今後の事業環境の変化に伴い、業績見込値の変動が明らかになった場合は速やかに公表いたします。
(3) キャッシュ・フローの状況
①現金及び現金同等物
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より3,642百万円減少し15,663百万円となりました。
②営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、2,338百万円の支出となりました。これは税金等調整前当期純利益9,602百万円及び減価償却費等の非資金項目に加え、下請法の運用ルール改正に伴い、令和6年11月より下請業者に対する支払サイトを60日以内に変更したことによる仕入債務の減少等によるものであります。
③投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,574百万円の支出となりました。これは有形固定資産及び投資有価証券の取得による支出等によるものであります。
④財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,189百万円の収入となりました。これは短期借入金の増加、配当金の支払い等によるものであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの主要な資金需要は、主に製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、更新等に係る投資であります。
当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金または借入により資金調達をすることとしており、事業運営上必要な流動性と資金を安定的に確保することを基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、20,824百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、15,663百万円となっております。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出しております。
3 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。又、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は、売価換算額によります。
b.受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
①繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の評価については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能と認められない金額については、評価性引当額を計上しています。
なお、当社及び一部の国内子会社は、グループ通算制度を適用しているため、繰延税金資産の回収可能性の判断については、グループ通算制度を適用しているグループ全体の課税所得の見積りにより判断しています。
当該見積りについて、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
繰延税金資産の内訳等については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」に記載のとおりであります。
②退職給付債務の算定
当社及び一部の子会社は、従業員の退職給付制度として、確定給付制度を採用しております。退職給付債務に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算定しております。
これらの前提条件には、割引率や年金資産の長期期待運用収益率等の多くの見積りが存在します。当該見積りについて、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付債務に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の前提条件は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)(9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
③工事契約における収益認識
工事契約における一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。
工事契約における収益認識にあたっては、収益を認識する基となる工事原価総額及び進捗度の合理的な見積りが可能であることが前提となります。当該見積りについて将来の事業環境の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する収益の金額に重要な影響を与える可能性があります。
2024年4月1日前に締結された財務上の特約が付された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当社グループは有用な製品とサービスを社会に提供して、人類社会の幸福に貢献するという企業理念のもと、基盤となる事業ドメイン「社会インフラ」および「産業設備」において、鋭意研究開発活動に努めております。近年は新事業創造に向けた研究開発成果の早期創出を目指して、コーポレート研究開発部門(クリモト創造技術研究所)と各事業部門との連携をより一層強化しており、市場直結型の技術開発を推進すると共に、オンリーワンの高機能材料ならびにその生産プロセスの開発に取り組んでおります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
~主要研究開発活動~
(社会インフラ関連)
① 水道管路耐震化に向けた製品開発ならびに製造プロセスにおける環境負荷低減技術開発
地震が頻発するわが国において、管路の耐震性を高めることは重要課題でありますが、現状耐震性を有する管路比率は42.3%程度に留まっております。ところが管路更新が捗らず、管路の老朽化は年々進んでいるため耐用年数を超過した管路の比率(管路経年化率)は既に22.1%を超えています。そのような状況を踏まえ、管路更新・耐震化促進に資するため、長寿命を特長とする耐震管GX形のラインナップを拡充(全口径75mm~450mm)し、拡販に努めており、全国の政令指定都市をはじめ多くの事業体様にご採用いただいております。また、GX形に加え、さらに低コストで軽量化を実現したNS形E種管(全口径75mm~150mm)のラインナップ並びに中大口径管路の更新事業においても当社独自工法となる「ハイブリッドシステム工法」、さらには類似工法となる「DSW(ディ・エス・ダブリュ)工法」もラインナップし、事業体様からの多様な要望に応えるとともに、市場での拡販を精力的に進めてまいります。
また、カーボンニュートラルやゼロエミッション実現に向けた取り組みが必須である状況下、気候変動対策も進めております。ダクタイル鉄管製造プロセスの中でも特にCO2排出量の多い溶解プロセスにおいては、燃料として使用している石炭コークスの代替としてバイオマス原料からなるバイオコークスを導入すると共に、地域のゼロエミッションにも貢献すべく廃棄物を有効活用した新たなバイオ燃料開発を進めております。また、水道管路の更新工事にて発生する使用済み撤去管については、ダクタイル鉄管製造時の鉄源材料として有効にリサイクルすることで、資源循環に貢献する技術開発を進めております。今後も、社会の環境負荷低減やサーキュラーエコノミー実現に貢献する技術開発に注力してまいります。
② 橋梁補修分野の商材拡充ならびにFRP(M)材の再利用に関する研究
当社は連続FW成形技術や連続引抜成形技術をコア技術として、水輸送管および電力ケーブル保護管など、インフラ市場向けにFRP製品の製造ならびに販売を行ってきました。橋梁補修分野において上記連続引抜成形技術を活用したFRP製検査路は、既存の鋼製検査路と比べ軽量であるため施工性に優れ、沿岸部の潮風や道路の凍結防止剤等による塩害の影響を受けにくいことから、採用実績も増加傾向にあります。また、緩み止め性能を有するワンサイドで施工可能なFRPボルトを市場投入し、更なる施工性の向上を図ることができました。今後も当該分野で新商材の開発を進めると共に、橋梁補修技術の発展に努めてまいります。さらに、SDGsを考慮した取り組みとして、連続引抜成形法の適用製品の拡大を進めております。当成形法は、他の成形法と比較して電気使用量が少なく、成形時に発生する端材が減少できるなど、現代社会の要求に合致した特長を有しています。加えて、リサイクルを考慮し、熱可塑性樹脂を使用した製品開発にも取り組んでおり、時代や顧客のニーズにマッチした商材開発ならびに技術革新を積極的に進めています。また、インフラで使用されてきたFRP(M)材は販売から50年が経過し、今後、更新事業の発注拡大に伴って廃材が増加すると予想されています。生産活動で排出される端材や副資材を含め、FRP(M)材の再利用に関する研究開発を加速し、新たに設備導入を進めることでプラスチック資源の有効利用に努めてまいります。
(産業設備関連)
① 二次電池向けプロセス設備の開発
自動車メーカが掲げるEV化への展望を始めとする世界的な二次電池市場の拡大を見据え、二次電池関連の製造設備市場へ装置・システム・プラントで積極的に参入すべく2011年より試験研究、販売活動を推進しています。営業活動、PR効果促進はもとより日進月歩で開発される各種電池材料に対する技術ノウハウの獲得・構築およびコストダウンを加味した各装置の改良・改善に取り組んでおり、販売実績も得られてまいりました。2021年度には粉体機器の組立専用工場も開設しております。また当社住吉工場内テストセンターに、長年の粉体装置事業で培った技術を活かした電池スラリーの混練設備(ドライルーム)、電池原料の乾燥・焼成・粉砕設備を設置し、顧客対応実証実験と自主実験による研究開発を進め、さらに創意工夫を重ねて改良・改善を行い、国内外に営業展開を進めてまいります。また、近年ではエネルギー負荷の低い、次世代型電極製造プロセスにも採用いただいています。
② サーボプレスの応用技術開発
当社は近年、湿式クラッチブレーキの開発、サーボプレスの開発を行い、納入実績を積み重ねております。サーボプレスにおいては油圧装置と組み合わせた複合成形にも取り組み、鍛造技術の開発を進めております。更に、数年前に開発済みのM2M(遠隔監視装置)に加えて、プレスの状態が把握でき、保全性が高まる「見える化」の開発も進めており、両輪により営業活動を強めていく予定であります。
③ 再生骨材製造システムの開発
国内の骨材需要は1990 年代中頃をピークに漸減している一方で、高度経済成長期に建設されたコンクリート構造物の老朽化により、大都市部を中心にコンクリート構造物の解体量は増加しております。これらの状況を踏まえて廃コンクリートからコンクリートの原材料となる再生骨材を製造するニーズが高まってきており、特に従来の高品質(Hクラス*1)ではなく中品位(Mクラス*2)を大量に生産できるリサイクルシステムが望まれております。
この様な中で当社は2024年8月より共同8社と「省エネルギー・省CO2・省資源型サーキュラーコンクリートの開発」*3に着手しました。当社は再生粗骨材・再生細骨材の製造装置メーカとして本開発事業に参画し、偏心ロータ型磨砕機をコア技術とした再生骨材製造システムの開発に取り組んでおります。
2024年度には当社・住吉工場に磨砕機・分級機の試験設備を導入し、各種要素試験を行いながら再生粗骨材・再生細骨材の品質評価、生産システムの検討を進め、実証プラント構築に向けた開発活動を進めております。
今後は再生骨材製造システムの実証試験・商用化・事業化を進め、コンクリートに関わる環境負荷低減を目指していきます。
*1 JIS A 5021 コンクリート用骨材再生骨材H
*2 JIS A 5022附属書A コンクリート用再生骨材M
*3 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」の重点課題推進スキームで実施
(コンポジットプロジェクト関連)
先進的な繊維強化プラスチック(FRP)の量産成形システムおよび成形品の開発
繊維強化プラスチック(FRP)は軽くて強いという性質を持つ優れた部材であり、近年では金属製部品の代替としてインフラ、モビリティなど様々な分野への適用の検討が進んでおります。FRP材料を構造部材に適用する社会ニーズに応えるためには、製造コストの低減や生産サイクルの短縮、品質管理の強化など様々な課題を克服する必要があります。
当社は、混練装置やプレス機などの設備製造技術と国内有数のFRP成形実績を基盤として、独自のFRP量産テクノロジーの開発を進めてまいりました。2019年にお客様との共創の場として開設したクリモトコンポジットセンターには、LFTDシステム*4、ハイサイクルRTMシステム*5および構造材料向け引抜成形システムを完備し、大型試作から小量産まで対応できる体制を構築しております。
近年では、国土強靱化施策を見据え、従来鉄やアルミ製に依存していたインフラ構造部材に対してFRP構造部材の適用に向けた新たな引抜き成形技術を開発いたしました。成形時の属人化要素を低減し、安定した品質管理を実現するDXの開発にも取り組んでおります。また低コストで部品を製造できるLFTDシステムについては、サーキュラリティを念頭にしたリサイクル繊維や樹脂、成形端材などを活用したSDGs市場向けシステムの開発に取り組んでおります。
当社が保有する設備事業の基盤と成形事業の基盤のシナジー化による新しい価値の提案活動を進めながら、成形設備および成形品分野での事業展開を目指します。
*4 LFTDシステム:原材料である炭素・ガラス繊維ロービングと熱可塑性樹脂を直接混練してプレス成形するFRTP成形システム。
*5 ハイサイクルRTMシステム:積層された炭素・ガラス繊維シートに、熱硬化性樹脂を注入・含浸させ、加熱硬化させて成形するシステム。
(クリモト創造技術研究所関連)
① 磁気粘性流体(MRF)の開発
磁気粘性流体とは、オイルの中に鉄微粒子を分散させた機能性流体です。流体に磁力を与えると急激に粘性が増して半固体状態になり、磁力を取り除くと流動性のある液体状態に戻るという特徴があります。当社では、鉄微粒子を今までより小さいナノサイズにしたMRF(商標名:SoftMRFⓇ)を用いた高性能デバイスの創製と感触技術分野での用途開発に取り組んでおります。従来はエンターテインメント分野における採用実績がありましたが、今後、市場成長が期待されるハプティクス市場*6や高齢化社会への対応として健康器具分野における優位性確立を目指し、競争力アップのためコストダウンと品質向上に取り組みます。
*6 ハプティクス:人間が手などを使って得る触覚や力覚を情報として扱う学問分野のことであり、ここではSoftMRFⓇを使って主に力覚を人工的に与えられる装置をハプティクスデバイスと称しています。
② 鉛フリー銅合金の開発
鉛については従来、鋳造性、切削性、耐圧性や摺動性等を向上する目的で、銅合金に添加され続けてきました。しかし、RoHS指令を始めとする環境規制により、工業製品への鉛の使用が制限されてきています。
当社は持続可能な社会の実現に資するため、摺動材用鉛フリー銅合金「BrobeaⓇ」及び水道材用鉛フリー銅合金「クリカシリーズ」を開発し、従来の鉛含有銅合金と同等以上の性能を持つ製品を提供し、拡販に努めております。
鉛フリー銅合金のさらなる改良に努めるとともに、製品のラインナップを拡充し、様々な用途に対応することで国内外の市場での拡販を進めます。
③ マグネシウム合金の開発
実用金属中で最も軽量かつ金属としての強さも兼ね備えた素材である一方、汎用のマグネシウム合金は激しい燃焼を起こす危険性があり、かつ耐食性及び耐クリープ性に劣るという問題があります。
軽量化による燃費やエネルギー効率の向上により温室効果ガス排出量の削減に貢献するべく、難燃耐熱マグネシウム合金「KEHMAⓇ-HR」を開発いたしました。高温環境でも優れた性能を発揮する特長を活かし、輸送機器の軽量化目的での採用を目指しております。一方、分解性合金「KEHMAⓇ-SL」は、食塩水などの水溶液に浸漬すると自己腐食により速やかに分解する特性を持ち、省工程化等の新たなソリューションの開発に貢献します。
マグネシウム合金のさらなる改良と普及に努め、環境負荷の低減と持続可能な社会の実現に貢献いたします。
④ キャビテーションナノバブル(CNB)の開発
地球温暖化や気候変動の影響が深刻化する中、水質改善や水使用効率の向上、ケミカル系材料から自然由来材料の使用へのシフト等、持続的な環境保全が求められる中、当社においては長年蓄積した流体制御技術やキャビテーション*7に関する研究を基盤とし、省エネルギーでキャビテーションを発生する生成器を発明し、水再生装置、環境配慮型の各種原液生成装置及び洗浄装置等を開発いたしました。関係企業や外部組織、学術機関の協力を得て早期の製品化を目指します。
*7 キャビテーション:液体内に微細気泡が発生する現象