第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、

1.社会との共生、地球環境の保護に努め、社会的責任を果たします。

2.「象の歩む道」には踏み込まず、付加価値の高い製品で社会に貢献します。

3.技術の向上と革新を継続し、品質とサービスで、お客様のマインド・シェアNo.1を目指します。

4.社員の個性を尊重し、自由闊達な風土のもと、活力ある会社を目指します。

 以上の経営方針のもと、いかなる環境の変化にも耐え得る個性的な企業体質の構築に努めます。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

 世界経済は、ウクライナや中東地域などで不安定な国際政治情勢が続いていることに加え、米国を中心とした保護貿易政策の拡大、原材料・エネルギー・副資材・物流の価格の高止まりなどのインフレ圧力も継続し、不透明な状況が続くことが予想されます。国内経済におきましても、実質賃金の上昇を受けて個人消費が持ち直し、緩やかな景気回復が継続することが予想されるものの、コストプッシュ要因での諸コストの上昇や金融政策の見直しによる政策金利の上昇などが見込まれます。また、中長期的にも、産業構造の変化や国際競争の激化など、今後も厳しい事業環境が続くものと想定しております。

 このような状況の中、引き続き原材料などの諸コスト上昇を反映させた販売価格の是正、徹底したコストダウン、品質向上、生産効率の改善など全社的な収益改善活動を継続し、業績の向上に努めてまいります。

 次期の見通しにつきましては、当連結会計年度において継続した国内サプライチェーン間での自動車部品の在庫調整が進展し、需要の回復が見込まれますが、EV化が加速的に伸長する海外での非EV車の販売不振や、中国経済の成長率鈍化などを背景とする世界経済の停滞予想により、当社グループの事業環境は不透明で厳しい状況が継続すると見込まれます。また、原材料などの諸コストの上昇等を反映させた販売価格の是正につきましても、その価格が反映されるまでのタイミングの遅れなどもあり、業績の本格的な改善は下期にずれ込むものとの予想から、第2四半期(累計)では損益が均衡するに留まるものの、通期における連結業績の売上高は53,400百万円、営業利益900百万円、経常利益600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益500百万円としております。当社グループとしましても、できる限りの対策を取って業績の早期改善に努めてまいります。

 なお、当社グループは、第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」(10カ年計画)の「ターゲットアイテム拡大・事業化」と「高収益体質の実現」をコンセプトとした第3フェーズ(2025年度~2029年度)のスタート年度となる第119期を迎えました。

『人と地球にやさしい新たな価値を共創するMulti & Hybrid Material企業』をビジョンに掲げ、生活様式や次世代技術が急速に変化していくことが予測される中、「マルチ&ハイブリッドマテリアル(多種多様な素材を活用する)」、「ニアネットシェイプ(最終製品形状に近い複雑な成形加工を実現する)」、「ニアネットパフォーマンス(最終製品に要求される性能を素材・部材で実現する)」をキーワードに、当社の原点である圧延技術と加工技術を極め、新たなニーズに対応する新技術・新製品を主力に事業構造を変革し、当社独自の環境配慮製品であるエコプロダクトの販売強化など、競合他社との差別化を図ってまいります。さらに、全てのお客様、取引先並びに当社グループ会社とのリレーションシップを深化させていくことで、更なる成長を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)気候変動

 当社グループは、世界各地で異常気象による大規模な自然災害が多発する中、気候変動課題について取り組むべき重要課題であると位置づけ、企業理念、経営方針、環境理念、環境方針に基づき、2020年度からスタートした第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」における「人と地球にやさしい新たな価値を共創するMulti & Hybrid Material企業」というビジョンのもと、カーボンニュートラル社会の実現への貢献と持続的な企業成長を実現する取り組みを推進してまいります。

 

①ガバナンス

 当社グループは、気候変動課題を取り組むべき重要課題として位置づけ、取締役社長を委員長とする「環境委員会」(年2回開催)において、気候変動課題に対する取り組みの方針、具体的な対応策の検討や活動の進捗状況について確認を行っております。

 「環境委員会」にて検討・協議された重要課題については、「取締役会」に報告・上程され、当社グループの重要な経営課題として審議し、気候変動課題への取り組みの管理と監督を行っております。

 また、気候変動課題に関わる取り組みの実務は、「環境委員会」の下部組織である「カーボンニュートラル分科会」にて行っており、議長はエネルギー管理統括者である技術本部長が務め、全社を横断した構成員でカーボンニュートラル・省エネルギーに関する取り組みを推進しております。

 

②戦略

 「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、2050年までの気候変動による各事業への影響を分析することにより、当社グループの気候変動リスク・機会を特定し、対応策を検討しました。

 

シナリオ分析は、次のとおりであります。

0102010_001.jpg

※ 上記表の時間軸は、短期:0~3年、中期:4~10年、長期:11年~ としております。

 

※ [財務的影響度の定義]

大:年間十億円以上の売上の増減もしくは損失又は利益といった業績に大きな影響を及ぼす可能性があるリスク・機会

小:年間数億円の売上の増減もしくは損失又は利益など、業績に一定の影響を及ぼす可能性があるリスク・機会

 

③リスク管理

 当社グループでは、気候変動課題を含む環境に関連するリスク管理等に関する施策、情報を議論・検証・共有する場として、環境委員会を設置しております。同委員会で当社グループ内に潜在するリスク及び機会についての影響度と発生可能性を検証し、リスク評価を行った上で、その対策などについて議論、検証などを行い、特に重要な経営リスク及び機会と判断したものについては、取締役会に報告・上程しております。

 なお、気候変動課題に係るリスク管理等の実務については、環境委員会の下部組織で、組織を横断したメンバーで構成されたカーボンニュートラル分科会にて行っております。同分科会では、環境委員会で決定した方針・指示に基づき気候変動課題への取り組みを行い、その取り組みの進捗状況と顕在化した課題について環境委員会へ報告を行っております。

 

④指標及び目標

 当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、3つのステップに分けて目標を策定いたしました。

Step 1 では、2030年までに基準年※1比で、Scope1,2※2のCO2排出量を30%削減します。

Step 2 では、2040年までに基準年比で、Scope1,2のCO2排出量を48%削減します。

Step 3 では、2050年までにCO2排出量をNet Zeroを目指します。

Scope3※2の削減は、当社エコプロダクト(環境配慮製品)の使用によるお客様のCO2排出量の削減貢献分を加味したものとなります。Scope3の中間目標は現在算定中で、早期公表を目指しています。

※1 基準年は、政府宣言2013年にて設定。

※2 温室効果ガス(GHG)排出量の算定と報告の国際基準であるGHGプロトコルにおけるScope1,2,3のこと。

 

CO2排出量削減目標・活動方針は、次のとおりであります。0102010_002.jpg

※ 経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で成長が期待される14の重要分野のこと。

  なお、連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。

 

(2)人的資本

 当社グループは、経営方針及び第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」に掲げる重要な方針である「活力ある会社・活力ある職場づくり」に基づき、社員一人ひとりの心身の健康状態を維持・向上させることが、個人並びに組織のパフォーマンスを最大化するために重要であると考えております。

 こうした考えのもと、社員の良好な健康状態を基盤とした「いきいきと働くことができる」会社・職場づくりを重要テーマと認識しており、この取り組みを継続することによって、当社グループが将来にわたって社会に貢献し、目標達成・成長に資するものと考えております。

 

①戦略

 「活力ある職場づくり」を実現するため、第11次経営計画「NIPPON KINZOKU 2030」では、「活力ある職場づくりと人材強化」を基本方針に掲げ、次の人材育成方針のもと、会社と社員が共に成長し支え合う好循環を目指しております。

■日本金属人材育成方針

1.経営戦略を実現し、競争力を確保するための中長期的人材の育成

2.問題解決に積極的に取組む人材の育成

3.自己啓発、OJTを主軸とした教育風土の醸成

 また、社員の心身の健康状態を維持・向上させる取り組みとして、2019年度より「健康経営」を推進しています。メンタルヘルスケアや健康維持増進活動の継続によって、「健康優良企業 銀の認定」取得のほか、「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に5年連続(2021~2025)で認定されております。

 なお、連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。

 

②指標及び目標

 「活力ある職場づくり」の主な指標として、人材育成、いきいきと働ける職場環境、健康経営の3項目を掲げております。

 

主な指標(目標及び実績)は、次のとおりであります。

指標

2025年度目標

2024年度実績

[人材育成] スタッフ人材のOff-JT受講回数(一人当たり)

3.6

4.3

[職場環境] 月平均所定外労働時間

10.0時間

10.7時間

[職場環境] ワーク・エンゲイジメント

2.7pt

2.2pt

[健康経営] ストレスチェック受検率

97.5

96.2

[健康経営] 総合健康リスク

100未満

95

[健康経営] WLQ-Jスコア

95.0

93.5

(注)1. 男女の賃金格差については、従業員の状況にて記載しているため、ここでは省略しております。

2. 連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生に備えての対策を講じていく予定であります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 景気変動について

当社グループの製品は、直接あるいは顧客を通じて間接的に、全世界の様々な市場で販売されております。従って、日本、北米、欧州、アジア等の主要市場における景気後退などは当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの製品の多くは、主に自動車業界に納入されており、EVやCASEの進展による需要構造の変化の影響等を受ける可能性があります。

 

(2) 金利及び為替の変動について

当社グループは、海外売上高比率が23.8%で、顧客を通じたものを含めると相当な比率となり、また、在外子会社の財務諸表は現地通貨建で作成されているため、為替変動の影響を受けます。さらに、当社グループは、金利変動の影響を受ける可能性もあります。従って、急激な金利及び為替相場の変動等が、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新製品開発について

当社グループは、魅力ある新製品を開発するため、継続的な研究開発投資を積極的に行っております。しかしながら、技術の急速な進歩や顧客ニーズの変化により、期待通りに新製品開発が進まない場合、将来の成長と収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 価格競争について

当社グループが属しているステンレス業界の需要及び価格動向は、国内外の景気動向やユーザーの需要動向、国内外メーカーの市場参入・拡大・強化による競争激化、為替相場の変動、海外各地域の政治的、経済的又は法的環境等により当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外販売に潜在するリスクについて

当社グループは、販売の一部を中国やアジア諸国並びに欧米諸国に対して行っております。これらの海外市場への販売には、1)予期しない法律又は税制の変更、2)不利な政治又は経済要因、3)テロ、戦争、その他の社会的混乱等のリスクが常に内在されております。これらの事象が起これば、当社の事業の遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 主原料の供給体制について

当社グループは、主原料をグループ外の企業から供給を受けております。これらの供給元企業が、災害等の事由により、当社グループの必要とする数量を予定通り供給できない場合、生産遅延、販売機会損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 主原料の仕入価格の変動について

当社グループが取扱う製品の主原料は、主にステンレス鋼であります。価格については、国内外の鋼材需給の動向や原燃料生産国における資源政策、自然災害、国際紛争、投機的取引等に起因する相場変動、為替変動等により、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 製品の欠陥について

当社グループは、厳格な品質管理基準にのっとり各種の製品を製造しております。しかし、すべての製品について欠陥がなく、将来的にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 知的財産について

当社グループは、研究開発等によって得られた成果については、特許、意匠及び商標等産業財産権によるか当社独自技術(ノウハウ)として当該技術の保護・管理を図っております。しかし、特定の地域においては産業財産権による保護が充分でなく、第三者が当社グループの知的財産を使用し類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、当社グループの将来の製品又は技術が、他社の産業財産権を侵害しているとされる可能性があります。

 

(10) 公的規制について

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、関税をはじめとする輸出入規制等、様々な政府規制・法規制の適用を受けております。これらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの事業活動が制限され、コストの増加につながる可能性があります。従って、これらの規制は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 災害等のリスクについて

当社グループでは、地震や洪水等を含めた防災対策を徹底しており、過去の自然災害発生時にも事業への影響を最小限に止めた実績があります。しかし、想定を超える大規模な自然災害が発生した場合には、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できない可能性があります。

また、生産設備等において、電気的又は機械的事故、火災や爆発、労働災害等が生じた場合には、一部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延すること等により費用や補償の支払が発生するとともに、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生するなどして、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 人材の確保について

新技術及び新商品の開発及び製造には、有能な技術者及び熟練技術者の確保が重要であります。当社グループでは、有能な技術者の確保に注力し、また熟練技術者の育成を図っておりますが、有能な人材確保及び育成を継続できない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 固定資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性について

当社グループは、生産設備や土地等の固定資産を有しておりますが、経営環境の変化等により固定資産の収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上することとなり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づき繰延税金資産を計上しておりますが、経営環境の変化等により将来の課税所得の見積り等に変動が生じた場合、繰延税金資産の取崩しが発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度のわが国経済は、実質賃金の改善やインバウンド消費の拡大など緩やかに持ち直している一方で、物価高騰により個人消費が伸び悩み、建築分野では建設コストの上昇や人材不足による計画の見直しなど不安定な状況が継続いたしました。また、世界経済は、不動産市場や個人消費の停滞などを背景に中国経済での回復が遅れており、ウクライナや中東地域での地政学的リスクの長期化に加え、米国による自動車・鉄鋼製品などへの追加関税政策など、経済の先行きに対する不透明感が増す状況が継続しております。

 ステンレス業界におきましては、当社グループの主要な市場である自動車分野において、国内では自動車メーカーの認証問題により自動車生産台数が低迷し、海外では中国市場の停滞や世界的に普及が進むEV化への対応が遅れた日本車の販売が減速するなど、厳しい事業環境が継続いたしました。

 このような状況のもと、当社グループでは、原材料、エネルギー、副資材、物流などの高騰する諸コストを適時反映させた販売価格の是正、販売費及び一般管理費を含む事業コストの徹底した削減、生産効率や品質の改善など全社的な収益改善活動を継続してまいりましたが、自動車分野を中心とした需要回復の遅れにより生産・販売数量が大幅に減少した影響をカバーするには至りませんでした。

 この結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高は前期と比べ112百万円(0.2%)減収の51,298百万円となりました。損益面につきましては、営業損益は189百万円の損失(前期は1,095百万円の損失)、経常損益は474百万円の損失(前期は1,261百万円の損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、遊休地の譲渡による固定資産売却益1,822百万円を計上したものの、本社ビルの譲渡による特別利益として固定資産売却益4,232百万円を計上した前期に比べ841百万円(54.5%)減益の703百万円の利益となりました。

 

 セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。

 

a. みがき帯鋼事業

 冷間圧延ステンレス鋼帯につきまして、当社の主力製品である自動車関連用途の国内向けは、下半期からは自動車メーカーの認証問題が解消に向かいましたが、新型車の型式指定の取得に時間がかかるなど新型車の投入がずれ込んだことなどにより、販売が伸びない結果となりました。また、海外向けでは、特に当社の主力輸出先である中国で当社製品のシェアが高い欧米車・日本車の非EV車からEV車、PHV車などの新エネ車へのシフトが進むなど、販売が低迷したことに加え、現地ステンレスメーカーが低コストを武器にシェアをさらに拡大したこともあり、主にモール向けの販売数量が大幅に減少しました。一方で、AIの普及によるデータセンターの拡大でサーバー用ハードディスクや精密ベアリング用途、ゲーム機や自動車、家電で使用されるコイン電池、新型ゲーム機向け機構部品などの電子部品関連の販売が回復しました。また、メタリック感を活かした黒加飾ステンレス鋼(ファインブラック)は、国内大手自動車メーカーの高級車(SUV・ミニバン)の外装モール用材への採用がさらに増加しました。2026年3月期以降、黒加飾ステンレス鋼は新製品のマット調(艶消し)ファインブラック仕様も採用が決定しており、今後さらに数量が拡大する見通しです。その他、医療関連は注射針用材でインスリンや肥満防止薬の注射針用途での需要増に伴うユーザーでの設備増強で、国内及び中国、インド向けで増加しております。当社の独自製品や独自技術に対する国内外の需要家への認知度向上を図るため、既存の販売ルートに加えて、プレスリリースを活用した国内、海外への情報発信を積極的に実施した結果、自動車関連がインドや東南アジア、医療関連が欧州や中国、インド向けに受注を拡大しています。

 みがき特殊帯鋼につきましては、ステンレス鋼帯と同様に自動車関連の販売数量が減少しました。また、主に建屋内装で使用する刃物用途で北米市場の政策金利引き上げを受けた住宅販売件数の減少に伴う販売減もあり、全体として販売数量は伸びを欠く結果となりました。

 原材料価格やエネルギー・副資材などの製造コストの上昇に対しては、全ての変動要因に対し販売価格へ反映させる指標を策定し、継続的に販売価格の是正に加えて、労務費増や物流費増などについても、国が示す「労務費転嫁の指標」及び「トラック運送事業の新しい標準的運賃」に基づき、販売価格の是正を進めました。さらに低収益品の販売価格の是正や差別化製品のエキストラ改定など、付加価値に見合った価格へ是正を進め、収益の維持に努めましたが、販売数量の大幅な減少による業績の悪化を避けることはできませんでした。

 以上の結果、みがき帯鋼事業の売上高は、前期と比べ92百万円(0.2%)増収の41,136百万円、営業損益は601百万円の利益(前期は418百万円の損失)となりました。

 

b. 加工品事業

 福島工場取扱製品につきましては、主力製品である自動車駆動部品用高精度異形鋼が自動車電動化の影響を受けた大幅な需要減を受け販売が減少しました。自動車駆動部品用高精度異形鋼は、需要減を受けた需要家の購買方針の決定を受け、2025年3月期の契約数量販売をもって終息することが決定しております。一方、半導体装置向けの産業機器製品や当社フォーミング部材が国の補助金制度を活用した住宅リフォームに継続採用されていることもあり堅調に推移しました。また型鋼製品は市場が縮小する中で、治水関連やエネルギー(LNG)関連用途などの獲得に加え、当社独自製品である異形鋼(Iバー)の販売が伸びたことで前年同様の販売を維持しました。その他、原材料価格や製造コストの上昇に対しては、鋼帯製品と同様に販売価格の是正を進めました。

 岐阜工場取扱製品につきましては、自動車関連で内燃機関(ICE)を有する自動車向け部品の販売減少が継続しましたが、文具向けでは当社ユーザーの製品在庫調整が完了し、受注は回復しております。また、医療機器、計測機器、分析機器や半導体製造装置向けで、従来の加工技術をさらに細径まで深化させ開発した内面高精度管が品質やコスト優位性及び米中貿易摩擦を背景として中国向け引き合いが拡大をしております。その他、生産時に使用する副資材の高騰に対する販売価格の是正も進めました。

 以上の結果、加工品事業の売上高は、前期と比べ205百万円(2.0%)減収の10,162百万円、営業利益は前期と比べ241百万円(43.4%)減益の315百万円となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ5,187百万円減少の69,897百万円となりました。

 流動資産は、3,858百万円減少の38,693百万円となりました。これは主に、売上債権が2,828百万円、棚卸資産が合計で1,141百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。

 固定資産は、1,329百万円減少の31,204百万円となりました。これは主に、遊休地の売却等により有形固定資産が896百万円減少したことに加え、繰延税金資産が297百万円、投資有価証券が121百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。

 負債合計は、前連結会計年度末と比べ6,181百万円減少の42,040百万円となりました。

 流動負債は、1,457百万円減少の28,987百万円となりました。これは主に、短期借入金が1,738百万円増加したものの、仕入債務が2,510百万円、未払法人税等が644百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。

 固定負債は、4,723百万円減少の13,053百万円となりました。これは主に、長期借入金が4,780百万円減少したこと等によるものであります。

 純資産は、前連結会計年度末と比べ993百万円増加の27,856百万円となりました。

 株主資本は、703百万円増加の19,664百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が703百万円増加したこと等によるものであります。

 その他の包括利益累計額は、290百万円増加の8,191百万円となりました。これは主に、土地再評価差額金が88百万円、その他有価証券評価差額金が80百万円それぞれ減少したものの、円安の進行により為替換算調整勘定が412百万円増加したこと等によるものであります。

 以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の35.8%から4.1ポイント上昇し、39.9%となりました。また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の4,012.92円から148.48円増加の4,161.40円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による収支と投資活動による収支を合わせると、2,917百万円の収入(前期3,993百万円の収入)であり、これに、財務活動による収支を加味すると、269百万円の支出(前期3,491百万円の収入)となり、前連結会計年度末に比べ資金は41百万円(0.3%)の減少となり、当連結会計年度末には11,834百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、1,209百万円の収入(前期203百万円の支出)となりました。これは主に、売上債権の減少2,947百万円(前期1,639百万円の増加)があった一方、仕入債務の減少2,623百万円(前期519百万円の減少)があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、1,708百万円の収入(前期4,197百万円の収入)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出が1,106百万円(前期2,705百万円の支出)であった一方、有形固定資産の売却による収入2,616百万円(前期7,090百万円の収入)があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、3,187百万円の支出(前期502百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入による収入が2,960百万円(前期20百万円の支出)であったのに対し、長期借入金の返済による支出が6,002百万円(前期5,898百万円の支出)であったこと等によるものであります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

みがき帯鋼事業

32,481

2.2

加工品事業

6,879

△14.9

合計

39,360

△1.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.金額は販売価格によっております。

 

b. 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

みがき帯鋼事業

40,210

1.2

5,126

△15.3

加工品事業

10,100

△1.1

765

△7.4

合計

50,311

0.7

5,892

△14.3

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

みがき帯鋼事業

41,136

0.2

加工品事業

10,162

△2.0

合計

51,298

△0.2

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

田島スチール㈱

5,114

9.9

5,184

10.1

 

5【重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

当社は、2025年2月25日開催の取締役会において、以下のとおり固定資産の譲渡について決議を行い、2025年2月28日に譲渡契約を締結いたしました。

 

(1)譲渡の理由

資本効率の向上、財政基盤の強化及び成長投資資金の確保を目的に、当社が保有する不動産の譲渡を行うものです。

 

(2)譲渡資産の内容

資産の内容及び所在地

現況

[所在地]東京都板橋区舟渡三丁目15番1,71,77~80,83

[土地]3,471.42㎡

遊休地

 

(3)譲渡先の概要

譲渡先との取り決めにおいて守秘義務があるため、公表を控えさせていただきます。なお、譲渡先は国内法人1社であり、譲渡先と当社の間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はなく、譲渡先は当社の関連当事者にも該当いたしません。

 

(4)譲渡の日程

①取締役会決議日  2025年2月25日

②契約締結日    2025年2月28日

③物件引渡日    2025年2月28日

 

(5)業績に与える影響

本固定資産の譲渡に伴い、特別利益(固定資産売却益)として1,821百万円を計上いたしました。

 

「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日内閣府令第81号)附則第3条第4項の規定により、2024年4月1日前に締結した契約については、記載を省略しております。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループの研究開発活動費は、総額388百万円であり、環境に配慮した日本金属エコプロダクト製品を中心に新商品・新用途・新技術の研究開発を行っております。さらに、様々なニーズに適合する多種多様な素材を活用したマルチ&ハイブリッドマテリアルや、最終製品形状に近い複雑な成形加工を実現するアネットシェイプ、最終製品に要求される性能を素材・部材で実現するニアネットパフォーマンス等の製品開発に注力し、同時に生産プロセス及び製造技術の確立・向上を進めております。

また、技術研究所では中長期的視野に基づく基礎研究と、開発部門及び製造部門が対象とする新商品の技術サポートを行い、新商品開発、新規事業化への展開を促進しております。

 

事業の種類別セグメントに関する研究開発活動を以下に示します。

 

(1) みがき帯鋼事業

冷間圧延ステンレス鋼帯では、電子機器の小型化・低背化ニーズに対応する表面絶縁ステンレス鋼 FI(Fine Insulation)仕上げを開発しました。

また、国内・欧米自動車メーカー向け高級車の外装モール用材には、メタリック感と深みのある黒加飾ステンレス鋼「Fine Black」や「マット調(つや消し)」などの意匠バリエーションを開発。弊社圧延技術による高い表面品質と、コイルによる連続加工メリットで、お客様の工程省略や歩留向上に貢献でき、高評価を得ております。

極薄電磁鋼帯関連では、地球環境的視点等から更なるモーターの高効率化や小型軽量化等が求められており、これらに適した素材として、高パワー密度(小型・高周波・高磁束密度)かつ、低損失(高効率)の素材を提供しております。

みがき帯鋼事業に係る研究開発費は、236百万円であります。

 

(2) 加工品事業

加工品事業では、各種産業で必要とされる機能部品やコスト削減に貢献する製品として、異形鋼(異形断面形鋼)製品、精密管、型鋼製品(冷間ロール成形)などを中心に研究開発を進めております。異形鋼は、独自の冷間圧延技術や専用設備を組み合わせ、鉄系から非鉄系まで様々な金属に対応した“冷間異形圧延製品”を、「Fine Profile(ファイン・プロファイル)」と命名し商標登録致しました。Fine Profileは、お客様の製造コスト削減、歩留向上、省資源・省エネルギーによるカーボンニュートラルの実現等に貢献します。

ステンレス精密管においては、お客様の内面研磨工程を削減できる、内面高精度小径厚肉管を開発。半導体製造装置などに欠かせないマスフローコントローラー(mass flow controller、流量制御機器)において、お客様に高品質と安定性を評価されております。

加工品事業に係る研究開発費は、152百万円であります。