文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
①企業理念体系
当社グループは、理念体系として、社会の一員として果たすべき役割を示した「神鋼鋼線ミッション」、すべての従業員・役員で共有する価値観と行動を示した「神鋼鋼線クレド」を策定しております。
理念体系に基づき、一人ひとりが、ミッションを胸に、クレドを実践することで、「なくてはならない価値」を提供し続け、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
②2026年に目指す姿
当社グループは、中期経営計画「Next Innovation 2026」のもと、“環境変化に適応し、持続的に成長できる企業基盤の構築”を目指し、サステナビリティ経営の実践による社会貢献および事業成長の両立と、ROIC5%以上、経常利益21億円以上を継続できる安定収益基盤の確立に向けた各種施策に取り組んでまいります。
(2) 当社グループを取り巻く事業環境
当社グループを取り巻く事業環境は、ロシアによるウクライナ侵攻、中東地域をめぐる情勢等の地政学リスクの長期化、為替変動、金融資本市場の変動等、不透明な状況が継続すると想定しております。また、原材料・人件費を始めとした諸コストは、より一層の上昇が続くと見込んでおります。
<特殊鋼線関連事業>
公共事業分野における新設工事発注数は減少が継続すると見込んでおります。また、自動車分野では、長期的にはガソリン車から新エネルギー車への置き変わり影響により需要が減少すると想定しておりますが、本中期経営計画期間においては足元横ばいで推移すると想定しております。一方で、建設関連分野では、物流施設建設等の需要が増加すると想定しています。
<鋼索関連事業>
各分野において、原材料・人件費を始めとした諸コストの高騰や各業界の労働力不足の影響等により、足元の低水準な需要環境は継続すると想定しています。一方で、労働力不足問題等に貢献する長寿命製品や労務負担軽減・作業効率を重視した製品等の高付加価値製品の需要は高まると想定しております。
<エンジニアリング関連事業>
橋梁分野では複数の大型ケーブル橋案件が見込まれるほか、メンテナンス分野では既設ケーブル橋の点検・補修需要の増加、耐震防災分野では自然災害に備えた建築物の耐震補強ニーズの高まり等、様々な分野において需要が高まると想定しております。
(3) 対処すべき重点課題
このような事業環境の中、当社グループは、これまで培ってきた技術やノウハウを活かし、サステナビリティ分野を始めとした新たな需要開拓やコスト競争力向上に取り組むと共に、原材料・人件費を始めとした諸コストの上昇に対する販売価格改定を強化してまいります。
<特殊鋼線関連事業>
・価格転嫁や生産性向上による収益改善
・市場ニーズにマッチした製品提供の強化
・新エネルギー分野を始めとした新分野の市場開拓と新事業育成
<鋼索関連事業>
・価格転嫁や生産管理見直しによる安定収益基盤の構築
・高付加価値製品と輸出販売拡大
・新エネルギー分野向け製品、長寿命・メンテナンスフリー製品等のサステナビリティ貢献製品の開発と市場開拓
<エンジニアリング関連事業>
・大型新設橋梁案件の供給体制確立
・防災・減災と強靭化向けを始めとしたサステナビリティ貢献製品・サービスの拡大
・価格転嫁による収益改善
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 戦略
<サステナビリティ全般について>
当社グループの理念体系は、社会の一員として果たすべき役割を示した「神鋼鋼線ミッション」と、すべての従業員・役員で共有する価値観と行動指針を示した「神鋼鋼線クレド」によって構成されております。『社会が前に進むために、「なくてはならない価値」を提供し続ける』という旗印の下で、一人ひとりが強い「意志」を持ち、ステークホルダーの皆様とともに「団結」して、高い目標に果敢に「挑戦」し続けることで、持続可能な社会を次の世代へつないでまいります。
当社の理念体系の詳細については以下をご参照ください。
私たちにとってサステナビリティ経営を推進することは、「神鋼鋼線ミッション」を達成する上で必要不可欠な経営戦略の遂行に他なりません。新たな中期経営計画「Next Innovation 2026」においても、「環境変化に適応し、持続的に成長できる企業基盤の構築」を目指し、サステナビリティ経営の実践による社会貢献及び事業成長の両立と、ROIC5%以上、経常利益21億円以上を継続できる安定収益基盤の確立に向けた各種施策に取り組んでいくことを計画の中心に据えております。
ステークホルダーの皆様とともに、社会課題を解決する当社ならではの取組を進め、以下の価値創造モデルに基づき企業価値向上を実現してまいります。

当社の中期経営計画「Next Innovation 2026」の詳細については以下をご参照ください。
以上より、サステナビリティ推進を当社のグループ経営における重要業務と位置付け、サステナビリティ推進の活動指針となる「サステナビリティ推進規程」を策定するとともに、当社として重点的に取り組むべき重要テーマ(マテリアリティ)を特定し、取組を推進してまいります。
・マテリアリティ特定のプロセス
マテリアリティの特定に際しては、以下のステップで当社が取り組むべき課題を広範囲にわたって抽出し、有識者のアドバイスもいただきながらマテリアリティ分析を行いました。社会において解決が求められている多くの課題の中から、当社のリソースを活用することで解決に貢献することができ、かつ当社の企業価値向上にもつながる「今、取り組むべき重要テーマ」を明確にするため、当社の事業推進における重要度、ステークホルダーの皆様にとっての重要度を評価軸として優先順位付けを行い、5つのマテリアリティを取締役会にて承認しました。それぞれのアクションプラン・KPIを踏まえ、推進体制の整備を進めてまいりました。

・特定した5つのマテリアリティ
当社が「今、取り組むべき重要テーマ」として、事業の目的である「神鋼鋼線ミッションの達成」に関する3テーマ、事業を継続するための手段である「価値創造の源泉・資本の強化」に関する2テーマ、合わせて5つのテーマを当社のサステナビリティ経営におけるマテリアリティとすることを取締役会にて承認しました。なお、サステナビリティ経営の基盤となる「ガバナンスの強化」については、かねてより経営の重要課題として注力しており、今後も引き続き改善・進化に取り組んでまいります。

<人的資本経営について>
当社は、「社会が前に進むために、『なくてはならない価値』を提供し続ける」をミッションとしております。人的資本経営を推進し、持続的な成長を実現するためには、①人材を確保し、②世間の変化に対応しながら継続的に企業価値向上をリードできる人材の育成が必要と考えます。その土台として、一人ひとりの個性を活かした、多様な人材に選ばれ、働き続けられる会社となるべく、③人事の仕組みや就労環境を整えてまいります。

・人材の確保
当社の人員構成は40代が最も多くなっており、2030年頃から急速に若返りが必要となる想定です。人材の確保は事業の継続・持続的成長の必要条件ですが、当社の事業分野と必要な技術領域はニッチなため、新卒・中途を含めて即戦力の確保は困難です。そこで当社では、在籍する従業員の離職を抑制するとともに現時点から若年層の人材を積極的に採用し、育成することで当社固有の技術を維持・発展させてまいります。
定年退職者と同数の新卒採用で従業員数を維持した場合の人員構成シミュレーション(従業員数817名/定年以外の退職者なしを想定)

(注)1.従業員数817名:2023年4月現在の従業員数(再雇用者を省いて試算)
1.新卒採用の強化(採用手法の見直し)
OB、リクルーターによる大学訪問の強化、インターンシップの積極的な実施、採用広報ツールの強化を図るとともに、第二新卒者の採用も強化することで毎年10名以上の継続的な採用を目指します。
2.中途採用の強化(採用活動の効率化)
人材エージェントとの協働を深めながら、求人票の作成から書類選考、面接、採用決定までのプロセスを高速化し、求人公開から採用までに要する日数を現状の平均4か月から3か月に短縮します。マッチングの精度を高め、充足率100%と定着率の向上を図ります。
3.離職の抑制(従業員エンゲージメントの向上)
当社では2021年より従業員エンゲージメントの向上を中期経営計画の柱の一つとし、働きがいのある職場づくりに取り組んでいます。経営層と従業員のコミュニケーションを活性化し、さらなる労働条件の改善、働き方変革の推進に取り組み、離職率を低減します。
定着率ならびに従業員エンゲージメント総合スコアの推移・目標

(注)1.1-離職率で算定しています。離職率:月間退職率(月間退職者数÷月間平均従業員数)の年間(12か月分)の総和です。
2.従業員満足度調査における「会社の総合的魅力」の全社スコアです。
・人材の育成
当社では従来よりOJTを中心とした専門的知識・スキルの早期習得に主眼を置き、階層別研修でその補完を図る仕組みの育成体系を運用してきましたが、今後は「マネジメント力」と「価値創造人材」の育成・強化に力を入れるべく人材育成投資を行い、多様な人材を活用して企業価値の継続的な向上につなげてまいります。
1.マネジメント力の育成・強化
従来の基礎的なマネジメント知識の装着にとどまらず、管理職が自ら行動を変えていくきっかけ作りに主眼を置き、次世代経営陣の育成に取り組みます。また、監督職に対してもコミュニケーション力を重視したマネジメント力向上のための新たな研修を開始。並行して管理スパンの適正化を図り、能力発揮の環境を整えます。
2.価値創造人材の育成
神鋼鋼線ミッションの達成に向けて、継続的に価値創造できる人材の育成に取り組みます。これまでの専門的知識・スキルの習得に加え、既存の枠組みを超えて発想し自発的に行動する意識を醸成するため、人事ローテーションや社内公募制度の活性化、評価制度・表彰制度の見直しと活用を進め、実践環境の拡充を図ります。
価値創造人材の育成方針

3.積極的な人材育成投資
中期経営計画では人材開発投資費用の大幅に積み増し、マネジメント力の育成・強化と価値創造人材の育成を着実に推進してまいります。
人材開発投資費用

・人事制度・就労環境の整備
当社ではこれまでも多様な働き方を可能にする制度の整備に取り組み、フレックス・在宅勤務制度、法令を上回る育児・介護休暇制度、時短勤務制度の導入などを行い、建物設備の改修や導入など就労環境の改善にも努めてきましたが、まだ十分とは言えません。これからも引き続き、全従業員が働きやすい環境づくりを着実に進めることで、「一人ひとりの個性を活かした、多様な人材に選ばれ、働き続けられる会社」を目指してまいります。
1.DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進
ダイバーシティの推進は、イノベーションを生み出し企業価値の持続的な向上を実現するためには必要不可欠ですが、当社の多様性はまだまだ乏しいのが実情です。経営の最重要課題の一つとして経営トップから全従業員へメッセージを発信し、自ら旗を振って推進することで職場開発に取り組み、多様なロールモデルの創出と求職者に対する積極的なPRを通じて、様々な立場の多様な人材が互いを認めあい、誰もが働きやすい環境を実現していきます。
(2) 指標と目標
当社グループでは、特定したマテリアリティに基づき、主要KPI(指標と目標)を以下のとおり設定しております。
(注)1.22年度実績の削減率には生産量の減少影響が含まれております。
関連するSDGs
関連するSDGs
関連するSDGs
(注)1.総合スコア:従業員満足度調査における「会社の総合的魅力」の全社スコアを指します。
2.スタッフ職:当社社員制度における管理職・総合職・事技職を指します。
3.1歳未満の子に関する男性従業員の育児休業・育児休暇取得率:当該年度中に本人もしくは配偶者が出産した従業員のうち、育児休業等もしくは育児を目的とした特別休暇を取得した人の割合と定義しています。
4.有給取得 全従業員が年間8日以上取得:対象者は、18日以上有休が付与された従業員のうち、長期休職者等を除いた者です。
関連するSDGs
関連するSDGs
(3) ガバナンス
当社では、取締役社長以下、社外取締役2名を含む取締役会がサステナビリティ経営の方針策定ならびに活動評価・見直しなど推進における権限を有し、その有効性について責任を担っております。当社としてのマテリアリティを特定し、中期経営計画に取り入れた上で、主要KPIを設定し、開示しました。取締役会において定期的にサステナビリティに関する議題を議論し、ステークホルダーの皆様との対話を重ね、必要に応じて計画の見直しも行いながらサステナビリティ経営を推進してまいります。なお、当社の取締役会の構成及び専門性・経験は「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
具体的な活動の推進にあたっては、取締役会に紐づく執行役員会に「サステナビリティ推進の部」を設置し、取締役社長・担当取締役を含む執行役員を中心に、社内においてサステナビリティ課題に関する議論が積極的に行われる環境づくりを行っております。また、取締役社長を全社総括責任者、担当役員をマテリアリティオーナーに任命し、各カテゴリーにおけるアクションプランとKPIを設定。四半期ごとに進捗状況のモニタリングを行い、外部有識者の知見も取り入れながら改善を重ねることで、活動をより力強く推進してまいります。
サステナビリティ推進体制 ※サステナビリティ推進規程より抜粋
なお、執行役員会サステナビリティ推進の部の具体的な検討内容は以下のとおりです。
また、当社グループでは、サステナビリティ経営推進の基盤としてコーポレート・ガバナンスの強化においても、今後も引き続き改善・進化に取り組む決意を全社で共有しております。詳細は「
人権基本方針
CSR調達基本方針
・サステナビリティ推進体制強化のための取組
当社ではサステナビリティ推進規程を整備するとともに、現場でのマネジメントを通じて一人ひとりとコミュニケーションを積み重ねることで、活動の実効性を高めています。たとえば、期初のジョブアサイン時には本人と上司の間で「挑戦目標」を設定し、各期末に達成度を評価します。短期的な業績や目標の管理にとどまらず、中長期的な課題や社会的価値を意識した取組やキャリア形成につながる積極的なチャレンジを奨励しています。
さらに、神鋼鋼線ミッションの実現ならびに中期経営計画達成を促進することを目的とした表彰制度を導入しています。個人や組織・チームで成し遂げた1年間の業績成果を対象に、中期経営計画に掲げる目指す姿をテーマとした複数の部門で構成される「神鋼鋼線ミッションAWARD」、全従業員・役員で共有する価値観と行動を示した神鋼鋼線クレドの実践を称える「神鋼鋼線クレドWAVE」などに今後はマテリアリティに特定したテーマに関する内容を盛り込み、一人ひとりのアクションを後押ししてまいります。
(4) リスクマネジメント
当社グループでは、サステナビリティの観点を含む事業全般のリスクに関し、全社で取り組むべき重要リスクを抽出したリスク管理計画を策定しております。
23年度にはリスク管理体制の強化に取り組みました。これまでのリスク管理規程を刷新し、取締役会に紐づく執行役員会にリスクマネジメントの部を新設し、取締役会へ報告するプロセスを整備するとともに、リスクオーナー制を導入しました。取締役社長を全社総括責任者、担当役員をリスクオーナーに任命し、各カテゴリーにおけるアクションプランとKPIを設定しました。半期ごとに進捗状況のモニタリングを行い、事業年度ごとにリスク管理計画を見直す体制を構築しています。
24年度のリスク管理計画では、「人事」「品質」「安全」「IT」「環境」「調達」「防災」「情報漏洩」「コンプライアンス」「ビジネス」の10カテゴリーを重要リスクとして設定し、「人事」「調達」「情報漏洩」「コンプライアンス」「ビジネス」は総務本部管掌役員、「品質」「安全」「IT」「環境」「防災」は技術総括・DX推進部管掌役員をリスクオーナーに任命し、推進してまいります。
リスク管理推進体制 ※リスク管理規程より抜粋
当社グループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 特定業界の市場動向が業績に及ぼすリスクについて
当社グループは、土木・建築業界、建機業界、自動車業界及び電機業界を主要顧客としております。財政健全化等を目的として公共投資が減少した場合や、国内外の景気後退等による一般消費水準が減退した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 大規模自然災害・感染症等のリスクについて
当社グループが主要施設を有する日本は、過去において、地震、津波、台風等の多くの自然災害や新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症拡大の影響を受けております。今後も大規模な自然災害及び感染症等により事業運営が一時的に困難になる場合や、国内・海外ともに需要家の活動水準が低下し、製品需要の大幅な下振れが発生する場合、当社グループの生産から販売に至る一連の事業活動、経営成績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、大規模自然災害に関しては、大規模地震を想定した事業継続計画(BCP)を定め、有事の際に適切に対応するために、「従業員」、「生産設備」、「製品・調達」、「情報その他」について、「事前」、「直後」、「初期」、「復旧期」のフェーズごとに対応の標準化・迅速化を図っております。
また、様々な種類の資産、死傷及び他のリスクについての第三者保険を付保しております。感染症等に関しては、従業員及びその家族の健康を最優先とし、政府が発出する要請事項や市中感染状況を踏まえ、事業活動継続と感染リスク抑制の両面の観点より、当社グループ全体に対して行動ガイドラインや関連する通達を適宜発信し、感染予防・感染拡大防止の周知・徹底を図っております。
(3) 原材料・部品の調達のリスクについて
当社グループの生産活動は、サプライヤーが合理的な価格で適切な品質及び量の原材料、部品及びサービス等を当社グループに供給する能力に依存しております。需要過剰、後継者不足による廃業、大規模自然災害、感染症等様々な要因により、サプライヤーが当社グループの要求を満たす供給ができないという事象が発生する場合、当社グループの生産から販売に至る一連の事業活動、経営成績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、原材料、部品及びサービス等の不足、インフレ等による原材料、部品及びサービス等の市況価格の上昇は、当社グループの製造コストの上昇要因であり、当社グループの経営成績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、サプライヤーに生産拠点やその代替拠点の有無、有事の際の対応策等についてのヒアリングを実施した上で、事業活動に必要な原材料、部品及びサービス等を可能な限り2社以上から調達可能にする取組を実施しております。また、原材料、部品及びサービス等の市況価格の上昇に応じた販売価格改定の実施による販売価格への転嫁を図っております。
(4) 人材確保・育成及び職場環境の整備
当社グループでは、労働力や有能な人材を確保するための各種施策の強化、人材育成による個々の能力向上、省力化による労働生産性向上に取り組んでおります。しかしながら、国内の生産年齢人口の減少及び人材の流動化の加速等によって、労働力や有能な人材の確保及び人材育成が計画通りにできない場合、適切な販売・生産体制が損なわれ、当社グループの生産から販売に至る一連の事業活動、経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) コンプライアンスに関するリスクについて
当社グループは、事業を行っている国内外における法令、規制、政策、行動規範、その他の社会規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行なうことを指針としております。しかしながら、当社グループ各社及び従業員が、製造物責任法や知的財産権の問題等で訴訟を提起され若しくはその他のクレームを受ける可能性や、法令違反等を理由として罰金等を課される可能性があり、その結果によっては、当社グループの経営成績や社会的信用力に影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、全社員を対象としたコンプライアンス研修、社内業務に関連する法令対応についてのeラーニング等の教育を定期的に実施しております。また、コンプライアンス意識の向上、仕組みの浸透及び定着を目的に、コンプライアンス推進制度の更なる充実を図っております。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績等の状況
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染対策と経済活動の正常化の両立が進んだものの、国際情勢の悪化による資源価格の高騰や半導体をはじめとする各種資材の調達難、金融資本市場の変動等により、回復のペースは鈍いものとなりました。
このような状況の中、当社グループでは、原材料価格やエネルギー価格等の高騰に対する販売価格の改定、高付加価値製品の販売拡大、徹底したコスト削減等に努めた他、在庫評価影響もあり、当期における当社グループの連結業績は、売上高は32,726百万円と前期に比べ1,446百万円の増収、営業利益、経常利益はそれぞれ1,023百万円(前期比84百万円の増益)、1,066百万円(前期比21百万円の増益)となりました。また親会社株主に帰属する当期純利益は906百万円(前期比73百万円の増益)となりました。
経営成績の推移(連結)
セグメント別の経営成績は、次のとおりとなりました。
(PC関連製品)主力分野の橋梁において、老朽化に伴う補修・補強案件が増加する一方で、PC鋼材の使用量が多い新設案件が減少する厳しい事業環境が継続し、販売数量は前期に比べ減少しました。
(ばね・特殊線関連製品)主力の自動車分野において、足元の需要は回復してきましたが、第2四半期までにおける中国での日系自動車メーカーの販売不振や在庫調整等の影響に加え、プリンター分野における需要の低迷等の影響により、販売数量は前期に比べ減少しました。
特殊鋼線関連事業全体では、こうした販売数量の減少に対し、高付加価値製品の販売拡大や販売価格の改定効果の寄与等により、売上高は17,488百万円と前期に比べ1,163百万円の増収となり、営業利益は318百万円(前期比254百万円の増益)となりました。
原材料価格やエネルギー価格、運送費等の高騰や各業界の人手不足による影響等により、需要が低水準に推移したことで、販売数量は前期に比べ減少しましたが、一方で、高付加価値製品の販売拡大や販売価格の改定効果の寄与等により、売上高は13,032百万円と前期に比べ226百万円の増収となりました。営業利益は、販売数量の減少や製造コストの悪化影響等により515百万円(前期比225百万円の減益)となりました。
土木・橋梁分野および建築分野における大型案件の納入等により、売上高は2,144百万円と前期に比べ55百万円の増収となり、営業利益は140百万円(前期比54百万円の増益)となりました。
不動産関連事業の売上高、営業利益はそれぞれ61百万円、48百万円と前期並みとなりました。
財政状態については、次のとおりとなりました。
(資産の状況)
総資産は、前連結会計年度末の42,006百万円に比べ1,191百万円(2.8%)増加し、43,197百万円となりました。流動資産は757百万円(3.3%)増加し、23,682百万円となりました。これは主に現金及び預金1,191百万円(26.5%)の増加によるものです。有形固定資産は151百万円(1.1%)減少し、13,862百万円となりました。無形固定資産は96百万円(58.7%)増加し、261百万円となりました。これは主にソフトウエア98百万円(62.6%)の増加によるものです。投資その他の資産は488百万円(10.0%)増加し、5,391百万円となりました。これは主に退職給付に係る資産609百万円(31.2%)の増加によるものです。
(負債の状況)
負債合計は、前連結会計年度末の20,293百万円に比べ73百万円(0.4%)増加し、20,366百万円となりました。流動負債は1,418百万円(12.0%)減少し、10,418百万円となりました。これは主に1年内償還予定の社債900百万円(100.0%)が減少したことによるものです。また、固定負債は1,491百万円(17.6%)増加し、9,947百万円となりました。これは主に長期借入金1,384百万円(35.6%)が増加したことによるものです。
これらの結果、当座比率(当座資産÷流動負債、短期的安全性指標)は110.8%(前連結会計年度末は96.5%)と十分な流動性を確保していると認識しております。
(純資産の状況)
純資産合計は、前連結会計年度末の21,713百万円に比べ1,117百万円(5.1%)増加し、22,831百万円となりました。
これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.7%から52.9%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。) の期末残高は前連結会計年度末の
2,392百万円に比べ632百万円増加し、3,025百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によって得た資金は、前連結会計年度に比べ785百万円増加の1,369百万円となりました。主な内訳は税金等調整前当期純利益1,199百万円、減価償却費950百万円があった一方で、棚卸資産の増加額755百万円があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって使用した資金は、前連結会計年度に比べて155百万円減少の462百万円となりました。主な内訳は有形固定資産の取得による支出708百万円があった一方で、関係会社株式の売却による収入273百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって使用した資金は、前連結会計年度に比べ107百万円減少の283百万円となりました。主な内訳は社債の償還による支出900百万円、配当金の支払額294百万円があった一方で、長期借入金の純増加913百万円があったことによるものです。
財政状態の推移(連結)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格(セグメント間の内部振替前の数値)によっております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間の取引は含まれておりません。
2. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実績の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産の認識にあたり、将来減算一時差異が将来課税所得を減算する可能性が高いと見込まれるものについて、繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予測される将来課税所得を考慮しております。繰延税金資産に関する会計処理は、事業計画を基礎としており、当社をとりまく社会情勢の変化により、将来課税所得の予測に不確実性を伴うことから、会計上の見積りに該当すると考えております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当該事項につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」をご参照ください。
b. 経営成績
イ. 売上高
当連結会計年度の売上高は32,726百万円、前年同期比で1,446百万円(4.6%)の増収となりました。主な要因として特殊鋼線関連事業部において前年同期比で増収となったことによるものです。
ロ. 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は27,167百万円、前年同期比で1,312百万円(5.1%)の増加となりました。売上総利益は5,558百万円、前年同期比で134百万円(2.5%)の増益となりました。販売費及び一般管理費は4,535百万円、前年同期比で49百万円(1.1%)増加しましたが、売上高の増加により、売上高に占める販売費及び一般管理費の割合は前期の14.3%から13.9%と減少しました。これらの結果、営業利益は1,023百万円、前年同期比で84百万円(9.0%)の増益となりました。営業利益率は前期の3.0%から3.1%となりました。
ハ. 営業外損益、特別損益
営業外損益の純額は受取利息及び配当金を計上したことにより42百万円の利益となりました。この結果、経常利益は1,066百万円、前年同期比で21百万円(2.0%)の増益となり、経常利益率は前期と同水準の3.3%となりました。これらの結果、税金等調整前当期純利益は1,199百万円、前年同期比で32百万円(2.8%)の増益となりました。
ニ. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は906百万円、前年同期比で73百万円(8.8%)の増益となり、売上高純利益率は2.7%から2.8%となりました。また、1株当たり当期純利益は、前期の140.87円に対して153.32円となりました。
c. 財務方針について(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、健全な財務体質を維持しながら、企業価値向上のために戦略的に経営資源を配分することを財務上の基本方針としております。
資本の財源に関しては、主要な取引先金融機関からの継続的な調達に加え、当社及び連結子会社の資金を一元管理することにより、計画通り確保することができました。その結果、自己資本比率52.9%を維持しました。
資金流動性に関しては、様々なリスクに備えた適正な現預金水準を確保した上で、資金需要に応じた適切な配分を実施いたしました。なお、主な資金需要について、営業活動に係る資金支出では、材料購入費、人件費等があり、投資活動に係る資金支出では、安全・安定生産に不可欠な設備や施設への投資、企業価値向上に資する生産設備への投資、生産性向上に関するIT投資等がありました。
d. 経営者の問題認識と今後の方針
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
商標契約
(1) 研究開発活動の概要
当社グループの研究開発活動は開発センターが中心となり、事業所の技術・製造部門と連携して、各事業部の要望に応じた新製品の開発、現製品の改良を行っております。また、新事業企画開発部と連携して、多様化・高度化する顧客ニーズを的確にとらえ、新たな市場・用途の掘り起しを目指すとともに、環境負荷低減(SDGs・カーボンニュートラル)も考慮し、将来を見据えたテーマ設定を積極的に行い、今後の基盤作りを行っております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(2) 主要な研究開発の内容及び成果
(特殊鋼線関連事業)
PC鋼材、ばね用鋼線、ステンレス関連製品について、製品の更なる高強度化や高品質化、及び新たな市場や用途への適用を目指した高機能製品の開発に継続して取り組んでおります。
(鋼索関連事業)
ワイヤロープについて、ユーザーニーズに応じた高機能製品の開発や、ワイヤロープに別の機能を付加した製品開発などに加え、SDGs・カーボンニュートラルなど時代に沿った活動に取り組んでおります。
(エンジニアリング関連事業)
防災関連分野において、耐震ケーブルブレースなど新製品の普及を図ってまいりました。
また、橋梁・建築物の維持・メンテナンス分野では、補修技術と各種モニタリング技術の探索と開発を進めております。