第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は上下水道、ガス、情報通信を中心とした地域インフラ整備に対して、鋳鉄管、鉄蓋、樹脂管及び関連資材の供給を中心とした事業展開を図ってまいりました。インフラに携わる企業として、その機能の維持継続が使命と考えております。しかしながら、管路老朽化が年々進展し更新の潜在需要が増大する一方、人口減少や節水等による事業体収入の減少や、高齢化等による工事の担い手不足といった課題が解消されない状態が継続しております。需要の回復見通しが不透明な中、管の供給だけにとどまっていては、使命を果たすことができないという危機意識から、管路更新サイクル全般に関与する事業スタイルへのシフトチェンジ、すなわち「管路分野の Innovative All in ワンストップ企業」としての地位を確立すべく、活動を続けております。そうした役割を担うことにより、社会的な使命を果たしつつ、継続的に発展していく企業を目指し、環境変化に俊敏かつ柔軟に対応できる企業体質の強化を推し進めてまいります。

今後も、継続的に株主様等のステークホルダーの皆様にお役立ちできるよう努めてまいります。

 

(2)対処すべき課題

① 鋳鉄管等コア事業の収益力強化

上記基本方針に沿って、以下の3点を課題として取り組んでまいります。
(1)販売力の強化に向けた新商品・新分野を含めた開発・拡販と需要喚起
(2)コスト競争力の一層の向上
(3)人材育成の強化と女性活躍の推進ならびにESG経営の推進
      これらの課題に対する主な取り組みは以下の通りです。

 

1)製造合弁会社(当社の子会社)の設立の検討

当社と株式会社クボタ(以下クボタ)は、今後も社会インフラを支える企業として供給責任を果たしていくため、生産設備を再編し、クボタの京葉工場で生産している小口径(呼び径75mm~250mm)のダクタイル鉄管(直管)の完成品及び半完成品をOEM供給する製造合弁会社の設立に関する契約を締結するとともに、クボタからのOEM受託生産を実行するにあたり必要なダクタイル鉄管(直管)の生産能力の増強に係る設備投資(約27億円)について、2025年3月27日に決定、公表いたしました。OEM供給による生産数量増がもたらすコスト競争力の強化に努めてまいります。

2)サステナビリティへの取り組み

カーボンニュートラルの実現に向け、現在のキュポラ炉からの転換を図るべく、2025年度の電気炉稼働に向けて進めております。

3)環境インフラのデジタル情報基盤の整備

事業スタイル変革の第一歩として、2018年より、当社はパートナーシップ契約を締結しているFracta社のAIを活用した管路劣化診断技術の事業体様への展開を進めてまいりました。Fracta-AI管路診断技術は2025年1月にインフラメンテナンス大賞「内閣総理大臣賞」を受賞し、その有効性が高く評価されました。更なる採用拡大に寄与するものと考えております。

マンホールの点検業務におけるDX推進の一環として開発いたしました「だいさくくん」は、スマートフォンやタブレットで、データ収集・集計、自動編集できるDXソフトです。作業効率の改善を実現したもので、マンホール点検業務でご使用いただき、高評価を得ております。

4)水管橋ドローン点検

従来では点検困難とされていた水管橋上部工の目視不可部を、ドローンに搭載した高解像度カメラで撮影し

水管橋上部工の劣化状況(表層劣化・発錆・破断等)を近接目視と同等の点検が可能となりました。当社の水管橋ドローン点検では、動画撮影だけでなく、静止画撮影を行うことで、劣化状況をより詳細に把握することが可能です。最上川導水管須川水管橋調査業務委託に採用され、水管橋の劣化診断を実施いたしました。国土交通省が、2025年3月28日に公開した「上下水道DX 技術カタログ」に掲載されましたので、今後、拡販を図ってまいります。

5)「楽ちゃく」のサイズ拡大

楽に、早く、確実に一人で接合できるプリセット接合工具を開発し、販売してまいりました。誰でも、楽で正確な接合ができ、従来の半分の時間で接合が可能であり、作業は管上部からできるクリーン施工の三点をセールスポイントとしており、今回中口径サイズでも対応可能にバージョンアップいたしました。

6)「オセール」の拡販

鉄道、交差点、河川横断等、開削工事が困難な箇所で行う非開削工法における、耐震性能を維持するための治具として、当社は、地上で組み立てが極めて容易で、画期的に工数の削減が可能な「オセール」を開発し、2019年6月より販売開始、毎年拡販を進めてきております。今般、大口径サイズでも対応可能といたしました。この商品の有用性をさらに広くアピールしていき、認知度を一層向上させ、さらなる拡販を図ってまいります。

7)㈱水研との業務提携

㈱水研と当社で知的財産を共同保有しておりますポリエチレン管用不断水バルブ「KATANAバルブ」は、当社が製造を担い、㈱水研が販売を開始いたしました。切粉を一切混入させることなく短時間で簡単に管路にバルブを設置できるようにすることで、水質確保や施工時間の短縮といった社会課題解決に寄与しております。ポリエチレン管の需要が高い海外での展開をも視野に入れております。

8)新商品開発とイノベーション

「オセール」・「楽ちゃく」・「だいさくくん」に続く、イノベーティブな新商品開発を推進し、コア事業とのシナジー効果の創出を図ってまいります。

9)一層の合理化の追求と品質の向上

操業の効率化や歩留の向上、エネルギー効率改善など競争力の更なる強化のための継続的な製造コストの低減、およびお客様の満足度を高めるための品質向上活動を推進してまいります。

10)新規及び老朽更新の効率的な設備投資

カーボンニュートラル実現に向け、電気炉の2025年稼働に向け設備投資を進めており、老朽更新計画を着実に実行すると同時に新規案件の優先順を明確にして、適時適切な設備投資を計画的に行ってまいります。

11) 業務効率化と働き方改革の推進 

DX化を進め、業務の効率化を図ってまいります。

働き方改革の推進として、小学校6年生までの育児短時間勤務を認める制度があり、また男性の育児休業の積極的な取得推進を促し、100%という高い取得率となっております。加えて、多様な働き方の一環として在宅勤務の制度化を図っております。

12)  将来を担う若手社員の確保とその育成

30歳代以下の社員が少ないことから、新卒採用や若手を中心とした中途採用を進めてきております。若手・中堅社員への育成を充実させてまいります。

13)  女性活躍の推進

女性社員の活躍を増やすため、育成と登用に取り組んでおり、部長級社員が誕生しただけでなく、課長級の管理職社員も複数活躍しております。昨年度より、取締役の女性起用を実現し、今後とも広く女性活躍の推進に注力してまいります。

14)  ESG経営の推進

ESG経営としての取り組みとして、既述の電気炉導入による脱炭素に加え、世界34か国で活動する水・衛生専門の国際NGOウォーターエイドに対し、ダクタイル鉄管の販売本数に応じた寄付を2021年度より行っております。鋳鉄管を購入いただいた顧客の皆様にも、間接的に参画していただくことでSDGsへの貢献の輪を広げております。また、地元や市民の皆様に自然と親しみ笑顔を届けられる当社の活動として、久喜工場近隣の久喜菖蒲公園において、“Nature Play Carnival in Kuki”と称する地域貢献のイベントを2021年11月より毎月開催しております。

15)  PR・IRの強化

2020年に開設しました情報発信サービスnoteや2021年5月にリニューアルいたしましたコーポレートサイトなどを最大限活用したPR活動などを通じ、さまざまなステークホルダーの皆様との双方向のコミュニケーションを行うことで、一層の企業活動の充実に努めてまいります。

 

以上の課題にスピード感をもって取り組み、ステークホルダーの皆様の期待に沿うよう、引き続き、収益力の強化を図ってまいります。

 

② 経営環境の変化に耐え得る財務体力の強化

引き続き必要な収益改善施策を迅速に実行し、着実な業績の向上、財務体質強化を図ってまいります。

今後とも株主の皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)   サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、サステナビリティに対する重要性を強く認識し、以下の体制で推進・監視を行っております。

 

    リスクの洗い出しとリスクマネジメントにつきましては、各部門が担当役員の指導のもと推進し、その

   推進状況に対して、CSR会議にて確認を行っております。

       経営会議では、経営に資するリスク項目であるサステナビリティ項目について、その推進状況について、

      執行側の視点での確認を行っております。

    取締役会では、サステナビリティ項目の推進状況について、社外の視点も含めた監視を行っております。

    監査役、監査役会は、監査部からの報告も含め、適宜執行の対応状況の監視を行っております。

 


 

(2)   重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。

・環境に関する課題

・社会課題に関する課題

・人的資本に関する課題

・コンプライアンス/人権尊重に関する課題

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

 

① 環境に関する課題

地球環境問題への対応は、世界的に取り組むべき最も重要な課題の一つであり、カーボンニュートラルの実現に向けた生産体制整備は当社にとって極めて重要な経営課題であります。

取組といたしましては、カーボンニュートラルの実現に向け、キュポラ炉からの転換を図るべく、本年の電気炉稼働に向けて準備を進めております(CO2排出原単位55%削減見込み)。

当社とクボタは、生産設備を再編し、クボタの京葉工場で生産している小口径(呼び径75mm~250mm)のダクタイル鉄管(直管)の完成品及び半完成品をOEM供給する製造合弁会社の設立を決定いたしました(2026 年 12 月目途)。今後も社会インフラを支える企業として供給責任を果たしてまいります。

 

② 社会課題に関する課題

当社の事業は、事業体(自治体)向けの取引を通じて市民へのサービス提供に寄与させていただいております。我々の事業に関連する、事業体や施工会社の人材不足・技能者不足は業界としても大きな課題と認識しており、当社としても極めて重要な経営課題であります。

これまで、こうした課題に対応すべく、いくつかの開発を進めてまいりました。具体的には、誰でも楽に簡単に短時間で施工ができる「楽ちゃく」、鉄道・交差点・河川横断等開削工事が困難な箇所で行う非開削工法にて耐震性能維持しつつ画期的に工数の削減が可能な「オセール」、スマートフォンやタブレットで、データ収集・集計、自動編集できるDXソフト「だいさくくん」などがございます。

また、世界34か国で活動する水・衛生専門の国際NGOウォーターエイドに対し、ダクタイル鉄管の販売本数に応じた寄付を2021年度より行ってきております。さらに、地元や市民の皆様に自然と親しみ笑顔を届けられる活動として、久喜工場近隣の久喜菖蒲公園において、“Nature Play Carnival in Kuki”と称する地域貢献のイベントを2021年11月より開始し、毎月開催しております。

 
③ 人的資本に関する課題

当社は、パーパスとして「水が途切れない世界を実現する」を掲げ、原料調達から製造・販売に留まらず、データベース化、診断、設計から工事施工まで一貫して行う「管路分野のInnovative All inワンストップ企業」の実現に向けて取り組んでおります。その実現には卓越した人材集団になる必要があり、採用、人材育成、社員のモチベーション向上は、当社としても極めて重要な経営課題であります。

取組といたしましては、以下の人材育成方針と社内環境整備方針に沿い、活動を進めてきております。

 

a-1)人材育成方針

  パーパスに掲げた「水が途切れない世界を実現する」ために、誠実に挑戦し続ける人材の確保と育成と

モチベーションの向上を特に重要な課題と考えており、以下を進めてきております。

 〇新卒中途採用による人材確保とメンター制度の導入

 〇教育体系整備

 〇360度評価の導入

 〇インナーブランディングの推進

 

a-2)社内環境整備方針

当社は、埼玉県の多様な働き方実践企業のプラチナ認定を受けており、例えば育児短時間勤務を小学校卒業まで認めるなど先進的な取り組みをしてきておりますが、男性と女性の社員数に大きく乖離があるため、女性人材確保・登用を重点課題として取り組んでまいります。

その重点課題に沿って、多様性の視点から、女性取締役の登用を実現しております。

 

b)開示指標・目標及び実績

当社グループにおいて、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みを行っている提出会社のものを記載しております。なお、連結子会社は4社ともに常用労働者101人未満で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく公表を行っておらず、対象を提出会社と致しました。
 

女性活躍の視点から、「係長級にある者に占める女性労働者の割合」につきましては2026年3月末までに30%以上を目標としており、2025年4月1日時点で40%となりました。管理職に占める女性労働者の割合は、2028年3月末までに8%以上を目標としており、2025年3月末時点で5.9%です。

有給休暇取得率につきましては、2026年3月末までに80%以上を目標としており、現在90%です。

男性の育児休業取得状況につきましては、2025年3月末時点で100%となっており、80%以上の継続を目標にしました。

男女の賃金の差異につきましては、2026年3月末までに73%以上を目標としており、2025年3月末時点で全労働者の73.5%、全正規労働者の74.3%でした。

 

指標

(※1)

目標

(※1)

2025年3月末実績

(※1)

管理職に占める女性労働者の割合

(※2)

2028年3月末まで8%以上

(※5)

5.9%

有給休暇取得率(※3)

2026年3月末まで80%以上

(※6)

90.0%

男性の育児休業取得状況

(※3)

80%以上の継続(※7)

100%

男女の賃金の差異(※4)

2026年3月末まで73%以上

(※8)

全労働者   73.5%
正規労働者  74.3%
非正規労働者 61.1%

 

 

(※1)連結子会社は4社ともに常用労働者101人未満で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく公表を行っておらず、対象を提出会社と致しました。

(※2)厚生労働省令に基づく「女性の活躍に関する情報公開項目」として、昨年度までは、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」の8項目から「係長級にある者に占める女性労働者の割合(%) 」を選択しておりましたが、今年度より「女性管理職比率」に変更しました。

(※3)厚生労働省令に基づく「女性の活躍に関する情報公開項目」として、「職業生活と家庭生活との両立」の7項目から昨年まで選択していた「有給休暇取得率(%) 」に加え今年度から「男性の育児休業取得状況(%)」を追加しました。

(※4)男女の制度上の差異はありませんが、構成差による差異が生じております。当社は女性社員の産休・育休の取得率が100%であり、子供の小学校卒業まで育児短時間勤務を利用する割合が高いため、女性の正規労働者の賃金割合が低くなる傾向にあります。

(※5)2030年までに「指導的地位に占める女性の割合を30%程度」としている政府の目標を意識して推進していることから、「係長級にある者に占める女性労働者の割合」を開示しており、2026年3月末までに30%以上の目標に対し、2025年4月1日時点では40%となりました。

    「管理職に占める女性労働者の割合」は、現在5.9%であり、今後の登用、採用を加味し、2028年3月末までに8%以上とする目標といたしました。

(※6)厚生労働省は2025年までの目標として70%を掲げておりますが、当社は既に数年前から70%超を継続して達成してきており、80%以上を目標といたしました。

(※7)男性の育児休業取得状況については、対象者に個別に説明するなどの理解活動を行っており、既に100%を達成していますが、今後とも高水準を継続していくために、80%以上の継続を目標といたしました。

(※8)男女共同参画局が発表している国内企業の平均値は75%となっておりますが、当社は(※3)で示した通り、子供の小学校卒業まで育児短時間勤務を利用する割合が高いため、女性の正規労働者の賃金割合が低くなる傾向にありますので、育児短時間勤務による影響分を加味し、73%以上を目標といたしました。

 

 

 

 

 

 

 

④ コンプライアンス/人権尊重に関する課題

当社グループは、お客様をはじめ、株主・地域社会などすべてのステークホルダーとの信頼関係が重要であり、「コンプライアンスの徹底」は、その信頼関係の基盤であると考えています。そのため、当社グループでは、企業理念・行動規範に基づいた企業活動を実践するための指針として、「グループ企業行動基準」を制定し、グループ全体で役員・従業員に対する周知を図っております。法令遵守を進めていくため、eラーニングなどを活用し、独占禁止法、公務員への贈賄、ハラスメントなどに関する教育を行っています。また、全社員を対象とした意識調査を今後実施し、企業倫理の向上とコンプライアンスの徹底を図ってまいります。

また、当社グループは、人権尊重が企業の社会的責任であるとともに経営基盤の一つであると考え、2023年度に取り組み姿勢をより明確に示すため、「グループ企業行動基準」に沿って、「グループ調達ガイドライン」を制定いたしました。持続可能な社会の実現に向けた活動をサプライチェーン全体で推進していくことを目的としており、お取引先の皆様と本ガイドラインを共有し、サステナビリティに関する取り組みをサプライチェーン全体で推進していきたいと考えております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 

(1)原材料・仕入部品の価格変動リスク

当社は主たる商品を素材から製造しており、原材料の製造原価に占める割合は半分程度となっております。鋼屑、コークス及び石油関連製品の購入価格が国際市況の影響を受け製造原価が大幅に変動する場合があります。

また、主たる商品に付属する部品については、多くを仕入れ先から調達して販売しております。昨今の諸物価の変化に伴うコスト上昇等により、仕入れ価格が大幅に変動する場合があります。

従って、原材料価格ならびに仕入部品価格の変動は当社の業績を大きく左右する要因となっております。

 

(2)市場リスク

当社グループが取り扱う商品の多くは、地方自治体等の公共事業向けとなるため、各年度の公共事業予算に依存しております。従って、公共事業予算が大きく変動した場合、国内需要及び市況価格が変動し、当社グループの売上高及び業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(3) 貸倒損失の発生リスク

当社は、鋳鉄管等の上下水道用資機材を主に各地域の特約店を経由して配管工事業者等に販売しております。当社の販売先である特約店については、各社の規模、財務状況等を精査し与信額を決定しておりますが、予期せぬ原因で特約店向けの債権の回収が困難になるリスクがあります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

2024年度は、能登半島地震を踏まえた政府主導での上下水道の耐震化計画が策定されたものの、材料費及び人件費の高騰の影響を受けたこともあり、水道事業体の管路全体の布設延長工事は前年度を下回る水準で推移しました。また、人手不足等による管路布設工事の遅れも一部にみられ、ダクタイル鉄管の需要量は減少傾向が続いております。加えて、部品仕入れやエネルギー価格、物流費等の諸物価高騰によるコストアップも当社の収益を大きく圧迫する要因となりました。お客様のご理解による販売価格への転嫁やコスト削減の積上げなどの企業努力により収益の確保に努めましたが、当期につきましては、前年同期比増収減益となりました。

 

当社はカーボンニュートラルへの取り組みとして2022年6月に電気炉建設チームを設置して以降、国の目指す排出CO2の削減目標の実現に向けて検討を進め、キュポラ炉からの転換を図ることを2023年8月7日に決定、公表し、電気炉設備の建設を進めてきましたが、今般完成し、本格稼働に向けて試運転を進めております。

また、老朽化に伴う更新需要はあるものの、業界全体の生産設備が過剰な状態にある環境下において、当社と株式会社クボタ(以下 クボタ)は、今後も社会インフラを支える企業として供給責任を果たしていくため、生産設備を再編し、クボタの京葉工場で生産している小口径(呼び径75mm~250mm)のダクタイル鉄管(直管)の完成品及び半完成品をOEM供給する製造合弁会社(当社の子会社として、久喜工場のダクタイル鉄管(直管)の製造部門を分社)の設立に関する契約を締結するとともに、クボタからのOEM 受託生産を実行するにあたり必要なダクタイル鉄管(直管)の生産能力の増強に係る設備投資(約27億円)について、2025年3月27日に決定、公表いたしました。

 

当社は、パーパスとして「水が途切れない世界を実現する」に向けて取り組み、「管路分野のInnovative All in ワンストップ企業」としての活動を行っております。既存事業とのシナジーを期待する新規・周辺事業の拡大等の取り組みについては、さや管推進工法対応部品「オセール」の拡販、プリセット接合工具「楽ちゃく」新サイズの開発、DX推進の一環として開発を行ってきた「だいさくくん」の販売促進、Fracta社とのパートナーシップによるFracta-AI管路診断技術の普及促進があり、将来に向けた活動を引き続き推進しております。

 

当社はESG経営を進め、継続的に発展していく企業を目指し、環境変化に柔軟かつ迅速に対応できる企業体質の強化を引き続き推し進めてまいります。

 

当連結会計年度の経営成績は以下のとおりとなっております。

 

売上高につきましては、諸物価高騰に伴う販売価格の改定による改善を目指したものの、全国的な水道管路布設工事の遅れ・水道事業体の発注量の減少等に伴う数量の伸び悩みや価格競争の激化もあり74百万円(前年同期比0.4%)増加の、169億33百万円となりました。

 

収益につきましては、部品仕入れやエネルギー価格、物流費等の諸物価が高位に推移していることや在庫評価差等の影響などにより、営業利益は5億99百万円(前年同期比69.7%)減少2億60百万円、経常利益は6億28百万円(前年同期比70.1%)減少2億67百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失にカーボンニュートラルへの取り組みとして投資の決定をした電気炉建設工事に関わる周辺工事費用や、地方自治体の整備事業への協力に伴う土地売却損に加え、繰延税金資産の取り崩しに伴う法人税等調整額の計上等により7億5百万円減少し2億30百万円の損失となりました。

 

引き続き、皆様のご期待に添えるような企業運営に努め、さらなる安定利益を確保するよう一層努力してまいりますので、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

 

セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。

 

ダクタイル鋳鉄関連

当連結会計年度の売上高につきましては、全国的な水道管路布設工事の遅れ・水道事業体の発注量の減少により、前年同期と比べ69百万円(前年同期比0.5%)減少し、146億78百万円となりました。

セグメント利益につきましては、鋳鉄管販売量の伸び悩みや価格競争の激化、部品仕入れやエネルギー価格、物流費等の諸物価が高位に推移していることや在庫評価差等の影響などにより、前年同期と比べ4億79百万円(前年同期比92.0%)減少し、41百万円のセグメント利益となりました。

 

樹脂管・ガス関連

当連結会計年度の売上高につきましては、子会社の倉庫・運送業及びリサイクル事業の売上高が増加したこと等により、前年同期と比べ1億43百万円(前年同期比6.8%)増加し、22億55百万円となりました。

セグメント利益につきましては、親会社の樹脂管・ガス関連事業の諸物価の上昇等の影響により、前年同期と比べ1億31百万円(前年同期比38.0%)減少し、2億14百万円のセグメント利益となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

ダクタイル鋳鉄関連

6,689

△15.0

樹脂管・ガス関連

841

△5.1

合計

7,531

△14.0

 

(注) 1. セグメント間取引はありません。

2. 金額は販売価格を以って計上しております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

ダクタイル鋳鉄関連

15,054

+0.7

3,142

+13.6

樹脂管・ガス関連

2,256

+7.2

4

+26.4

合計

17,310

+1.5

3,146

+13.6

 

(注) 1. セグメント間取引はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

ダクタイル鋳鉄関連

14,678

△0.5

樹脂管・ガス関連

2,255

+6.8

合計

16,933

+0.4

 

(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

2. 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

太三機工㈱

2,411

14.3

2,903

17.2

東京ガスネットワーク㈱ 

1,475

8.8

1,588

9.4

 

 

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、222億21百万円と前連結会計年度末と比べ17億64百万円増加しました。

これは主に電気炉建設等による「建物及び構築物(純額)」が8億84百万円、「建設仮勘定」が9億60百万円増加したことによるものであります。

負債合計は、125億82百万円と前連結会計年度末と比べ18億96百万円増加しました。

これは主に電気炉建設に伴う資金準備のため、流動負債の「短期借入金」が10億円増加したこと、及び固定負債の「繰延税金負債」が5億14百万円増加したことによるものであります。

純資産合計は、96億39百万円と前連結会計年度末と比べ1億32百万円減少しました。

これは主に配当金の支払いによる1億41百万円の減少と、「親会社株主に帰属する当期純損失」2億30百万円の計上による「利益剰余金」の減少があった一方、「退職給付に係る調整累計額」が2億4百万円増加したこと等によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、29億8百万円と前連結会計年度末に比べて5億11百万円の減少となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は、1億42百万円(前連結会計年度は9億86百万円の増加)となりました。

これは主に、増加要因としての税金等調整前当期純利益89百万円、減価償却費4億59百万円、棚卸資産の減少額5億38百万円があった一方、減少要因としての仕入債務の減少額が6億23百万円あったこと等により資金の増加が資金の減少を上回ったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、14億74百万円(前連結会計年度は8億16百万円の減少)となりました。

これは主に、有形固定資産の取得による支出11億6百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の増加は、8億20百万円(前連結会計年度は10億54百万円の増加)となりました。

これは主に、配当金の支払による支出1億41百万円があった一方で、電気炉建設に伴う資金準備のための短期借入金の増加額10億円があったこと等によるものであります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、連結財務諸表「注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

 

(1) 製造合弁会社の設立に関する契約

 当社は、2025年3月27日付けの取締役会において、株式会社クボタ(以下 クボタ)との間で会社分割による製造合弁会社の設立に関する契約を締結することを決議し、2025年3月27日に、クボタとの契約を締結いたしました。その内容は次のとおりであります 。

 

① 会社分割の方法

日本鋳鉄管の本事業を吸収分割の方法により新会社に承継させ、日本鋳鉄管の保有する新会社の株式の発行済株式のうちの19.9%をクボタに譲渡する方法とします。

 

② 会社分割の期日

2026年12月を目途に当社のダクタイル鋳鉄管(直管)※の製造部門を承継し、事業を行う予定です。

※:原材料の鉄スクラップ等を溶かし鋳造する鉄製パイプで耐久性・耐震性が高い。直管は直線型のもの。

 

③ 吸収分割に係る割当ての内容

新会社は、本分割に際し、本分割の対価として、普通株式1,000株を新たに発行し、当社に割当て交付します。

 

④  商号、本店の所在地、資本金、純資産、総資産の額及び事業の内容

商号

未定

本店の所在地

埼玉県久喜市菖蒲町昭和沼1番地

資本金の額

300百万円(予定)

純資産の額

未定

総資産の額

未定

事業の内容

ダクタイル鋳鉄管(直管)の製造と販売

 

 

⑤  当社およびクボタとの間の資本関係、人的関係及び取引関係

資本関係

当社の出資比率は80.1%、クボタの出資比率は19.9%となる予定です。

人的関係

取締役として、当社が4名、クボタが1名をそれぞれ指名する予定です。

監査役として、当社及びクボタがそれぞれ1名ずつ指名する予定です。

取引関係

新会社の販売先は、当社とクボタのみ。当社にはダクタイル鉄管(直管)の完成品を、クボタには小口径(呼び径75mm~250mm)のダクタイル鉄管(直管)の完成品及び半完成品を販売する予定です。

 

 

⑥ 新会社の目的

当社は、カーボンニュートラルへの取り組みとして2022年6月に電気炉建設チームを設置し、国の目指す排出CO2の削減目標の実現に向けて検討を進め、電気炉を導入し、キュポラ炉からの転換を図ることを2023年8月7日付けの取締役会にて決定し、同日付けで公表いたしました。

当社の主力製品であるダクタイル鉄管の需要はこの20年でほぼ半減しており、今後も老朽化に伴う更新需要はあるものの、大幅な需要の拡大は見込みにくい環境下にあり、業界全体の生産設備は過剰な状態にありますが、その一方で、ダクタイル鉄管は国内の水道の主要な管材として日本全国に約40万kmが埋設されており、国内の水道においては98%を超える高水準まで普及している公共性の高い製品となっています。そこで、当社とクボタは、今後も社会インフラを支える企業として供給責任を果たしていくため、生産設備を再編・統合することとし、具体的には、クボタの京葉工場の溶解・鋳造工程を休止し、同工場で生産している小口径のダクタイル鉄管(直管)の完成品及び半完成品をOEM供給する新会社を、2026年12月(目途)に当事者の合弁会社とすることなどを合意いたしました。

新会社は日本鋳鉄管久喜工場(埼玉県久喜市)のダクタイル鉄管(直管)の製造部門の事業を本分割を通じて分社化する形で当社から承継した上で合弁会社化し、日本鋳鉄管が販売する全てのダクタイル鉄管(直管)と、クボタが販売する小口径のダクタイル鉄管(直管の完成品及び半完成品)のOEM生産を行います。今後、新会社設立の準備等や生産体制の構築を進めてまいります。

 

<新会社の概念図>


 

 

 

(2) ローン契約に付される財務上の特約

 2024年4月1日前に締結されたローン契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、産業活動や日々の生活に欠かせない水・エネルギー・情報・通信などを輸送・供給するための各種管材料及びその他の商品を提供することにより、社会に貢献することを会社存立の基本理念としてまいりました。

そのなかで、技術対応として商品開発、施工技術の強化を行い、次世代を見据えた商品の育成を推進するとともに、外部各種団体の研究会に参加し、市場動向と研究開発の情報収集に努めてまいりました。製造部門においても、技術開発による生産性と品質の向上をはかり、収益の改善及び企業体質の強化を目指しております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は22百万円であり、各セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。

 

(1) ダクタイル鋳鉄関連

水道用ダクタイル鉄管の主力商品である耐震管につきましては、長寿命が期待できるGX形を積極的に販売しており、これら耐震管の施工性向上を目的とした開発に注力致しました。

その中で、一昨年度に中口径の一部サイズまで開発を行った「楽ちゃく」について、実際に使用された現場からの意見をもとに対応口径のマルチ化を図り、現場での利便性をさらに向上させました。また、管路の維持管理に貢献する手段として「水管橋ドローン点検」技術を構築、実際の水管橋点検にご採用いただき、高評価を得ました。

当連結会計年度におけるダクタイル鋳鉄関連に係る研究開発費は22百万円であります。

 

(2) 樹脂管・ガス関連

当連結会計年度における樹脂管・ガス関連に係る研究開発費の発生はありません。