パウダーテックは、情報と市場を広く世界に求め、絶え間なく技術の前進を続ける企業であります。
当社の経営理念は、以下のとおりであります。
1.技術を以て社会の繁栄に貢献する
1.誠実を以て貫く
1.チャレンジ精神、開拓精神に徹する
1.社会のニーズに迅速に対応する
当社グループは経常利益、ROE、新規機能性材料売上高比率を経営指標として経営基盤の強化に取り組んでおります。なお、中期経営計画では最終事業年度である2024年度に経常利益13.4億円、ROE6.9%、新規機能性材料売上高比率7.8%を目標としております。
当社グループは、3ヵ年ごとに中期経営計画を策定し、各年度の課題に取り組むことにより事業展開を図っております。
■中期経営計画「22中計」の進捗状況
2022年4月からスタートした「22中計」においては、当社の経営理念をもとに「独自技術で社会課題を解決し、社会に必要とされる『エッセンシャル企業』を目指す」をありたい姿とし、「既存事業の収益性維持強化」「新規事業の利益貢献実現」「新規事業の継続的育成」「事業基盤を支える本社機能強化」の4つの基本方針のもと、目標達成に向けて取り組んでおります。
ただ、2023年度の経常利益は約4.8億円と、目標である11.3億円の半分以下にとどまるなど事業環境の変化は想定以上に厳しく、コロナ禍からの景気回復後も、当社の主力製品である電子写真用キャリアの需要がコロナ前ほどに回復するとは見込みにくい状況にあると考えております。
そこで、2024年度は事業環境の激しい変化に対応するため、冷静に市場動向を分析し、新たな成長機会の探索強化、強靭な事業構造の再構築、ESG経営の強化などに取り組む次期中計への助走期間と位置づけることといたしました。
その結果、2024年度は世界的なインフレの高止まりや地政学リスクの高まりといった懸念は残るものの、2023年度を底に販売が増加に転じることを前提に業績を予想いたしました。機能性材料事業においては、キャリア需要は2023年度からの回復を、新規機能性材料は当初計画から2年ほど遅れたものの、拡販は計画通りに進むと見込みました。品質保持剤事業(鉄粉事業から名称変更)においても、工場火災の影響は一部残るものの、脱酸素剤の需要は堅調に続くものと見込みました。以上から、経常利益は5.1億円と予想いたしました。
経営目標の進捗状況は以下のとおりであります。
2023年度までの進捗状況は上記のとおりですが、各事業の基本戦略とESG経営の推進に取り組み、企業価値の向上に努めてまいります。
(ご参考)中期経営計画「22中計」(2022年4月~2025年3月)の概要
1. 経営理念
・技術を以て社会の繁栄に貢献する
・誠実を以て貫く
・チャレンジ精神、開拓精神に徹する
・社会のニーズに迅速に対応する
2. ありたい姿
独自技術で社会課題を解決し、社会に必要とされる『エッセンシャル企業』を目指す
3. マテリアリティ
・収益基盤事業の維持向上
・新規事業の継続的創出
・持続可能な環境整備
・本社機能の強化
4. 中計基本方針
・既存事業の収益性維持強化
・新規事業の利益貢献実現
・新規事業の継続的育成
・事業基盤を支える本社機能強化(ESG経営推進)
5. 財務KPI(経営目標)
6. 非財務KPI
・ガバナンス強化
・働く環境 / 従業員満足度
・社会的評価 / IR活動・情報開示
・環境 / エネルギー原単位およびCO₂削減
7.事業部門の基本戦略
(1)機能性材料事業
・徹底した改善と効率化によるコストダウンの実現
・キャリア商品開発において、お客様の新機種への搭載率を向上
・微粒フェライト粉の供給体制を確立
・新規市場のマーケティング強化と新製品の上市加速により計画プラスαの売上を目指す
(2)鉄粉事業(2023年4月1日から品質保持剤事業に名称変更)
(脱酸素剤事業)
・営業の効率化(DXツール活用)と水分依存型一体化脱酸素剤を中心とした拡販
・労働生産性向上・省力化と歩留改善によるコストダウン強化
・環境配慮型脱酸素剤包材や酸素検知剤の強みを活かした新製品による新市場開拓の加速
(鉄粉事業)
・鉄粉事業の事業構造改革推進
当社グループは、サステナビリティに関連して、ESG経営の推進として取り組んでおります。
E(環境)については、環境方針に基づき、ISO14001認証を通じて環境への配慮を進め、サステナビリティの実現を目指しております。代表取締役社長を委員長とする省エネ推進委員会で毎月、省エネ活動、脱炭素の取り組みに関して検討し、その内容を各種会議で報告しています。
S(社会)、G(企業統治)については、行動指針、CSR方針、労働安全衛生方針、品質方針に基づき、ISO45001、ISO9001の認証を通じて人権、安全衛生、人材育成等に取り組んでおります。
社内体制としましては、2022年4月にESG推進室を新設し、リスク管理の統括を行っております。サステナビリティ関連のリスクを含む当社事業等のリスクについては、「
重要な戦略と指標及び目標については、中期経営計画に盛り込み、取締役会の承認を得て、適宜進捗報告を行っております。
2022年度をスタートとする中期経営計画(22中計)で掲げた取り組みと目標については以下のとおりであります。
人的資本に関する方針は以下のとおりであります。
□人材育成方針
当社グループは、技術開発の業務を主体とする会社であります。採用につきましては、計画的に技術者を中心に採用する方針を掲げております。また、多様性を確保するため、中途採用者を含め、性別、国籍、年齢を問わず公正な採用をしております。入社後は階層別・分野別教育を行い、人事考課面談などを通じ人材の育成に積極的に取り組んでおります。
□社内環境整備方針
多様な人材が働き続けられる環境の整備として、福利厚生施設の充実や働き方改革として、テレワーク制度、育児休業の推進、健康増進などを進めております。
ダイバーシティの推進と働き方改革をモニタリングするため、2022年4月1日~2025年3月31日の3年間は、以下のような指標を設定しています。
(女性活躍推進)
女性が活躍できる雇用環境整備
① 指標 : 性別に関係なく業務に適材となる人材を採用
目標 : 女性新卒採用を3年間平均で最低15%
② 指標 : 女性管理職の増加に向け、女性が長期に継続就労できる環境を整備
目標 : 女性管理職の増加(全管理職のうち目標5%)
(次世代育成支援対策推進)
従業員が仕事と家庭の両立ができるよう、働きやすい職場環境をつくることによって、その能力を十分に発揮できるようにする
① 指標 : 所定外労働時間の削減
目標 : 年間360時間厳守と全社平均12時間/月
② 指標 : 年次有給休暇の取得しやすい職場環境の整備(取得率の向上)
目標 : 有給休暇取得率70%
③ 指標 : 男女ともに子育てに関する諸制度を周知し、育児休業の取得促進
目標 : 出産特別休暇もしくは育児休暇の取得100%
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。当社グループにかかる全てのリスクを網羅したものではありません。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①営業の全般的状況
当期における経済情勢は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加えて中東情勢が緊迫化し、地政学リスクの高まりとともに、資源価格を始めとする物価の先行きに一層不透明感が増しています。米国は、雇用状況は良好かつ株式相場も堅調に推移するなど、総じて経済は好調を維持しており、景気減速を見据えた利下げの先送りを続けています。欧州は、インフレ鎮静化に伴い利上げは停止したものの、依然として景気は弱含みで推移しました。中国ではゼロコロナ政策の解除後、サービス消費は堅調な一方、不動産市況の低迷が続き、デフレ懸念も払しょくできないなど景気の回復ペースは力強さを欠いています。日本では長年続いたマイナス金利政策が解除され、株価も最高値を更新するなど、経済の回復基調が続いています。
当社の主力製品である電子写真用キャリアの需要は、コロナ禍の収束に伴う経済活動やオフィス稼働率の回復はあったものの、流通在庫の調整影響が上半期に強く残り、引き続き軟調となりました。一方、販売価格の適正化は浸透し、単価は概ね改善いたしました。
食品の品質保持に使用される脱酸素剤の需要は、行動制限の緩和を受けて回復基調にあったものの、製造子会社である株式会社ワンダーキープ高萩の高萩工場にて2023年11月17日に発生した火災により、同社の製造ラインの一部が停止する事態となりました。現在は、一部製品を除き、設備を移設して操業を再開しております。
この様な市場環境下、当期の連結売上高は鉄粉関連製品の販売終了もあり、8,548百万円(前期比3.2%減)となりました。
損益面におきましては、主に機能性材料事業の減益により、連結営業利益は406百万円(前期比42.0%減)、営業外損益を加えた連結経常利益は478百万円(前期比35.5%減)となりました。
特別損益では、損失として固定資産処分損53百万円および上記火災に伴う災害損失28百万円を計上いたしました。
この結果、連結税金等調整前当期純利益は403百万円(前期比44.9%減)となり、法人税、住民税及び事業税、ならびに法人税等調整額を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は280百万円(前期比48.4%減)となりました。
②セグメントごとの状況
当期より、「鉄粉事業」としていた報告セグメントの名称を、鉄粉関連製品の販売からの撤退に伴い取扱製品が脱酸素剤関連製品となったことおよび食品市場以外の幅広い分野への展開も進めており、事業内容をより適切に表現するために「品質保持剤事業」に変更いたしました。なお、この変更はセグメント名称の変更であり、セグメント業績に与える影響はありません。
機能性材料事業
当セグメントにおきましては、電子写真用キャリアはエネルギーおよび原材料価格の値上がりによる販売価格の適正化を進めたことと、新規機能性材料の増販はありましたが、流通在庫の調整影響が残ったこともあってキャリアの販売数量が減少し、売上高は7,430百万円(前期比0.3%減)となりました。セグメント利益は、主にキャリアの減販により873百万円(前期比15.6%減)となりました。
品質保持剤事業
当セグメントにおきましては、鉄粉関連製品の販売を2022年9月末にて終了したこと、脱酸素剤が工場火災により製造ラインの一部を停止したこともあり、当セグメント全体の売上高は1,118百万円(前期比18.8%減)と減少いたしました。セグメント利益は、火災に伴う減販が生じたことに加え、原材料価格および人件費が販売価格の適正化の効果以上に上昇したこともあり、3百万円(前期比97.3%減)となりました。
③経営成績の分析
当連結会計年度は、年度当初においては世界的なインフレや金融不安等、世界経済の減速懸念が残る一方、アフターコロナが本格化することを前提に業績予想を発表いたしました。
経営成績としましては、機能性材料事業において、主力製品の電子写真用キャリアでは、コロナ禍の収束に伴う経済活動やオフィス稼働率の回復はあったものの、流通在庫の調整が上半期に強く残った影響で、当初予想した売上高を下回りました。また、新規機能性材料では、半導体市場の世界的な減速の影響を受け、本格的な量産移行が遅れました。品質保持剤事業においては、脱酸素剤は2023年11月の工場火災による製造ラインの一部停止影響により、当初予想した売上高を下回りました。損益としましては、売上高の減少に伴う減益により、当初予想していた経常利益を下回りました。
その結果、通期の業績としましては、売上高は当初予想の9,980百万円に対し14.3%減の8,548百万円、経常利益は当初予想の1,000百万円に対し52.2%減の478百万円となりました。
前連結会計年度との比較では、鉄粉関連製品の販売終了もあり、全体の売上高は3.2%減少いたしました。損益面では、主に機能性材料事業の減収に伴う減益により、営業利益は42.0%減、経常利益は35.5%減、税金等調整前当期純利益は44.9%減、当期純利益は48.4%減となりました。
④生産、受注及び販売の状況
(注) 1.金額は販売価格(消費税等抜き)によっております。
当社グループの主要製品については、見込み生産が主で受注生産はほとんど行っておりません。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当期末は前期末に比べて、流動資産は売掛金及び電子記録債権が増加したことにより、559百万円増加いたしました。固定資産は有形固定資産の減価償却等により、311百万円減少いたしました。以上により、総資産は247百万円増加いたしました。
負債は支払手形及び買掛金、未払金の増加により、201百万円増加いたしました。
純資産は主に利益剰余金の増加により、45百万円増加いたしました。
自己資本比率は、負債の増加により84.7%と前期末比1.1%減少いたしました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が467百万円減少し、180百万円の収入となりました。主に税金等調整前当期純利益が減少したことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が884百万円減少し、378百万円の支出となりました。有形固定資産の取得による支出が減少したことによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度並みの235百万円の支出となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ427百万円減少し2,723百万円となりました。
また、当社は流動性をさらに確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結し、全額未使用のまま10億円の融資枠を維持しております。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準により作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っております。当社の連結財務諸表において採用する重要な会計方針及び重要な会計上の見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
上記のような仮定を考慮して見積り及び予測を行っておりますが、現時点で全ての影響について合理的に見積り及び予測を行うことは困難であり、また、需要環境によっても変動する可能性があります。
特記事項はありません。
機能性材料事業につきましては、環境対策用、微粒品キャリア等の新製品開発および粉体技術を応用展開した新規用途開発、品質保持剤事業につきましては、脱酸素剤等の新製品の開発に積極的に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費は、各事業に配分できない基礎研究費用を含め総額で