第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

パウダーテックは、情報と市場を広く世界に求め、絶え間なく技術の前進を続ける企業であります。
当社の経営理念は、以下のとおりであります。
   1.技術を以て社会の繁栄に貢献する
   1.誠実を以て貫く
   1.チャレンジ精神、開拓精神に徹する
   1.社会のニーズに迅速に対応する

 

(2)パーパス

『 ”技術の一粒”小さな粒から、未来につなぐ 』

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、3ヵ年ごとに中期経営計画(中計)を策定し、各年度の課題に取り組むことにより事業展開を図っております。

 

(4)目標とする経営指標

当社グループは、パーパスを踏まえて2040年の「ありたい姿」を描き、そこからバックキャストで25中計(2025-2027年度)を策定しております。25中計の最終事業年度にあたる2027年度の売上高102億円、経常利益8億円、ROE4.4%を目標としております。

 

■中期経営計画「22中計」の振り返り

2022年4月からスタートした「22中計」においては、当社の経営理念をもとに「独自技術で社会課題を解決し、社会に必要とされる『エッセンシャル企業』を目指す」をありたい姿とし、「既存事業の収益性維持強化」「新規事業の利益貢献実現」「新規事業の継続的育成」「事業基盤を支える本社機能強化」の4つの基本方針のもと、目標達成に向けて取り組んでまいりました。

しかし、2024年度の経常利益は約3.7億円と、目標である13.4億円には大きく届かず、結果として、22中計で計画した経営目標はほぼ全ての項目において未達となりました。

当社の主力製品である電子写真用キャリアの需要は、コロナ前の水準近くまで回復すると予測したもののそこまで戻らず、新規機能性材料は主要顧客の失速により大きく計画から乖離、品質保持剤事業は鉄粉関連製品の販売を2022年9月末で終了したことや2023年11月の工場火災による製造ラインの一部停止といった要因により、いずれの製品も販売数量が伸び悩んだことが主要因であります。

 

経営目標の進捗状況は以下のとおりであります。

 

 

22中計目標

進捗状況

 

2022年度

2023年度

2024年度

2022年度決算

2023年度決算

2024年度決算

経常利益

10.0億円

11.3億円

13.4億円

7.4億円

4.7億円

3.7億円

ROE

5.9%

6.2%

6.9%

4.4%

2.2%

2.5%

新規機能性材料売上高比率

3.2%

5.2%

7.8%

0.8%

1.8%

2.0%

 

 

 

■中期経営計画「25中計」の取り組み

2025年度を初年度とする3ヵ年計画「25中計」を策定し、本年4月よりスタートしました。成長戦略及び財務・資本戦略の実行により持続的な成長と中長期的な企業価値向上の「礎」を構築してまいります。

成長戦略として「製品ポートフォリオマネジメント強化」「新規機能性材料製品の開発強化」「全社のコア人材育成の強化」「工場環境整備(グランドデザイン)実施」の4つの戦略、財務・資本戦略では、「ROE(自己資本利益率)の改善」「株主還元の維持強化」の2つの戦略を実施することにより持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

 

 

(ご参考)中期経営計画「25中計」(2025年4月~2027年3月)の概要

 1. 基本戦略

成長戦略と財務・資本戦略の実行により、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の「礎」を築く

 

 2. 成長戦略

「製品ポートフォリオマネジメント強化」

「新規機能性材料製品の開発強化」

 ・25中計は、利益率の回復、成長に向けた資本の再配分を通じ、製品ポートフォリオ組替えを進める

 ・「注力製品」「育成製品」への投資を拡充し、2027年度に売上高1,387百万円(2024年度比5.6倍)を目指す

 ・成長戦略の実行に向け、豊富な手元資金を活用し、過去中計で最大となる投資を計画

  (新コート工場、研究開発棟新設など)

「全社のコア人材育成の強化」

「工場環境整備(グランドデザイン)実施」

 ・人材育成強化に加え、柏工場の再エネ活用、インフラ整備、耐震性向上、工場環境の整備・強化等を織り込んだグランドデザインを実施

 

 3. 財務・資本戦略

「ROE(自己資本利益率)の改善」

 ・2030年度に8.0%以上を目指す

「株主還元の維持強化」

 ・配当方針:業績などを総合的に勘案しながら、株主の皆様へ安定的かつ継続的に利益還元を行う。中間配当を実施する。

 ・目  標:DOE(株主資本配当率)3.0%以上を目指す

 

 

 4. 25中計非財務指標

マテリアリティを見直し、より適切なKPIを設定、ESG経営のさらなる進化を目指す

 

・気候変動への対応

CO₂排出量の削減

2030年削減目標46%(2013年比)

2050年実質カーボンニュートラル実現

再生可能エネルギーの活用

2030年導入比率10.8%

環境配慮型製品の拡販

2027年目標300%(2024年比)

 

・自立型人材の育成

・安心安全な労働環境

・地域社会への貢献

 ダイバーシティ&
 インクルージョン

女性新卒者比率 2030年目標30%

女性管理職比率 2030年目標5%

障がい者雇用率2.7%(2027年)

人権の尊重

人権研修実施回数 1回/年

人権研修参加率 100%

人材マネジメント

人的資本総投資額4億円(3年間)

 安心・安全な
 まちづくり

地域防災活動への参加回数 1回/年以上

教育機関との連携

実施回数 1回/年以上

 

・コーポレートガバナンスの強化

・サステナビリティ経営の推進

経営の健全性・
透明性の向上

指名・報酬委員会の社外取締役比率60%以上

取締役会の多様性

社外取締役比率4名以上(1/2以上)

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ委員会の実施回数4回

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)ガバナンスとリスク管理

当社グループは、サステナビリティに関連して、ESG経営の推進として取り組んでおります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

E(環境)については、環境方針に基づき、ISO14001認証を通じて環境への配慮を進め、サステナビリティの実現を目指しております。代表取締役社長を委員長とする省エネ推進委員会で毎月、省エネ活動、脱炭素の取り組みに関して検討し、その内容を各種会議で報告しています。

S(社会)、G(企業統治)については、行動指針、CSR方針、労働安全衛生方針、品質方針に基づき、ISO45001、ISO9001の認証を通じて人権、安全衛生、人材育成等に取り組んでおります。

 

社内体制としましては、2022年4月にESG推進室を設置してサステナビリティ活動を推進してまいりましたが、2024年10月に社長を委員長とするサステナビリティ委員会とESG推進室長をリーダーとするサステナビリティワーキンググループを新設いたしました。サステナビリティ委員会は、年度計画の承認と実行のモニタリング、取締役会への報告等を行うもので、年4回の開催を予定しております。サステナビリティワーキンググループは、年度計画の立案と実行、リスク管理等を行うもので、原則として毎月開催を予定しております。なお、サステナビリティ関連のリスクを含む当社事業等のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を併せて参照ください。

重要な戦略と指標及び目標については、中期経営計画に織り込み、取締役会の承認を得て、適宜進捗報告を行っております。

 

(2)戦略と指標及び目標

2022年度をスタートとする中期経営計画(22中計)で掲げた取り組み、目標および進捗状況については以下のとおりであります。

区分

非財務KPI

取り組み

目標

進捗状況

環境

エネルギー原単位及びCO2削減

・省エネ対策の実行

・政府目標に向けた計画の策定

・脱炭素に貢献できる製品の開発

・二酸化炭素排出量2024年度

「2013年度比△15%」

(政府目標:2030年 2013年度比△46%)

・2024年度実績「2013年度比△29%」

・太陽光発電設備「オフサイトPPA」を2024年10月に稼働

・原単位は、省エネ効果と設備稼働率上昇により好転

社会

働く環境/従業員満足度

・多様な人材が働き続けられる環境整備の実現

・安全衛生教育の強化

・育児休業の取得促進

・研修制度のアップデート

・新福利厚生棟利用開始

・労働災害の撲滅

・女性活躍推進(採用と育成)

・新福利厚生棟は完成、供用中

・2024年度育児休業取得率83.3%

・健康優良企業銀の認定取得(健保)、健康経営優良法人認定取得(経産省)

・2024年度採用者の女性比率53%

企業統治

ガバナンス強化

社会的評価/IR活動・情報開示

・取締役会の機能強化

・非財務情報の拡充

・コンプライアンス教育の継続実施

・取締役会のスキル公開、実効性評価とフィードバック

・ESG情報の開示

・取締役・執行役員に対する中長期インセンティブを2024年度に導入

・ESGアドバイザー採用

・コンプライアンス・ESG教育を全社員に実施

 

 

人的資本に関する方針は以下のとおりであります。

□人材育成方針

当社グループは、技術開発の業務を主体とする会社であります。採用につきましては、計画的に技術者を中心に採用する方針を掲げております。また、多様性を確保するため、中途採用者を含め、性別、国籍、年齢を問わず公正な採用をしております。入社後は階層別・分野別教育を行い、人事考課面談などを通じ人材の育成に積極的に取り組んでおります。

□社内環境整備方針

多様な人材が働き続けられる環境の整備として、福利厚生施設の充実や働き方改革として、テレワーク制度、育児休業の推進、健康増進などを進めております。

 

ダイバーシティの推進と働き方改革をモニタリングするため、2025年4月1日~2028年3月31日の3年間は、以下のような指標を設定しています。

 

(女性活躍推進)

女性が活躍できる雇用環境整備

① 指標 : 性別に関係なく業務に適材となる人材を採用

  目標 : 女性新卒採用を3年間平均で最低20%

 

② 指標 : 女性管理職の増加に向け、女性が長期に継続就労できる環境を整備

  目標 : 女性管理職の増加(全管理職のうち目標5%)

 

(次世代育成支援対策推進)

従業員が仕事と家庭の両立ができるよう、働きやすい職場環境をつくることによって、その能力を十分に発揮できるようにする

① 指標 : 所定外労働時間の削減

  目標 : 年間360時間厳守と全社平均10時間/月

 

② 指標 : 年次有給休暇の取得しやすい職場環境の整備(取得率の向上)

  目標 : 有給休暇全社平均取得率85%

       有給休暇個人の取得率最低50%

 

③ 指標 : 男女ともに子育てに関する諸制度を周知し、育児休業の取得促進

  目標 : 出産特別休暇もしくは育児休暇の取得100%

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。当社グループにかかる全てのリスクを網羅したものではありません。

 

分類

区分

リスクの内容・対応策等

顕在化した場合に緊急性の高いリスク

大規模自然災害、

感染症の大規模流行

 地震や台風、集中豪雨等の大規模自然災害のリスクが増大しています。大規模自然災害のリスクが顕在化した場合、従業員、生産設備等の資産、サプライチェーンにおいて被害が発生し当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、同様に感染症のパンデミック(世界的大流行)や自社内でのクラスターの発生によって、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループはこれらのリスクが顕在化した際には、人命の保護を最優先に、BCP等を実施し、資産を守り、サプライチェーンを維持し、操業の早期復旧と継続を図ります。当社グループでは、定期的にBCP等の対策の有効性を検討し、大規模自然災害に係るリスクの低減を図っております。また、感染症に対しては防止策を徹底し、感染症に係るリスクの低減を図っております。

情報セキュリティ

 サイバー攻撃や関係者の故意または過失等により、機密情報の漏洩、改ざん、消失が起きた場合、多額の損害賠償や訴訟の恐れがあります。その結果、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、ICTを活用し機密情報を統一的に管理し、情報システム管理規則の遵守や提携先との秘密保持契約締結により、情報セキュリティに係るリスクの低減を図っております。

環境事故

 当社グループの設備の故障や老朽化、または操作ミス等により環境事故が発生した場合、損害賠償責任が生じる可能性があります。その結果、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 重要な設備につきましては、予防的な保全計画を立てて、故障する前に主要部品等の交換をしております。他の設備については定期的なメンテナンスを行うとともに、突発的な修理にも対応できるよう予備部品を確保しております。操作ミス等の防止については、品質・環境・安全衛生各マネジメントシステムに基づいた担当者の教育を実施しております。毎年継続して発生源対策等の環境対策投資を行い、リスクの低減を図っております。

プラント、設備の事故

 当社グループの設備において故障や老朽化等で操業が停止した場合、販売機会の損失、サプライチェーンにおける損害賠償等が生じる恐れがあります。その結果、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 予防保全の実施に加え、突発的な事故等に対して迅速に初動対応できるよう、緊急事態対応体制や初動対応計画(IMP)を構築しております。加えて、供給継続・生産再開計画(BCP)により事前事後の体制を確立しております。なお、主要な生産設備やインフラ設備につきましては、予備部品の確保や定期的なメンテナンスの実施とともに、操作ミス等の防止に向けた品質・環境・安全衛生各マネジメントシステムに基づいた担当者教育を実施し、リスクの低減を図っております。

全社横断リスク

製品の品質

 当社グループの製品は、グローバルで高いシェアを持つキャリアや、食品に関連する脱酸素剤等があり、品質問題が発生した場合、顧客、社会への影響が大きくレピュテーションの低下も含め当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループは1995年に品質ISO9001を導入し、品質の管理と向上に努めております。品質問題が発生した場合は、ISOのルールに則り原因の追求と再発防止策を講じております。

原材料等の安定調達

 経済・国家間の情勢の著しい変化、大規模な自然災害等により、原材料や副資材の安定調達が困難になった場合、当社グループの生産活動や経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 各地域の規制、制限、変化などの情報を収集することで、対応の迅速化を図っています。また、複数の原料ソースの確保、適正在庫の管理およびサプライヤーの監査等によりリスクをミニマイズしております。

労働力の確保

 日本国内における労働人口の減少に伴い、労働力の確保が難しくなる傾向にあります。労働力が不足した場合、製品開発力が低下し、また、交替勤務による安定生産ができなくなり、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、多様な人材が働きやすい職場環境の整備や定年延長等を通じて魅力を高め、優秀な人材の確保に努めております。さらに、生産設備の自動化にも以前から注力しており、労働力不足に係るリスクの低減に努めております。

化学物質規制

 当社グループは多種多様な化学物質を扱っていますが、世界各国地域で規制が強化されており、使用が禁止または制限されることにより製品供給に支障が出る恐れがあります。その結果、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 国内外の化学物質の法規制の制定・改定は定期的に専門部門がチェックし、当社グループに関係する制定・改定が予定されている場合は、迅速に対処できる仕組みを作っております。

 

 

分類

区分

リスクの内容・対応策等

経営成績等に影響を与えうるESGリスク

環境

 ESG環境リスクとして、温室効果ガス排出、 エネルギー管理、 水の管理、廃棄物と有害物質の管理を特定しております。今後、法規制強化により温室効果ガス排出にコストが発生する可能性があります。また、有害物質が流出・漏洩して環境汚染を引き起こす可能性があります。さらに、生産拠点が位置する地域の生物多様性に事業活動が影響を与える可能性があります。これらのことから、環境リスクが当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 生産設備のエネルギー効率の改善や省エネタイプの設備への転換、再生可能エネルギーの導入検討などを進めて、生産量あたりの二酸化炭素発生量の削減に努めております。排水に関しては、規制基準に基づいた適正な管理目標を設定し、自動モニタリングをしながら汚染を起こさないための対応を徹底しております。また、当社グループは、環境ISO14001のマネジメントシステムに基づき、環境関連法規の最新版の運用管理や、廃棄物の分別や量の管理、さらに PRTR法に基づく届出対象物質の排出量に関しても、環境リスクのマネジメントを展開し継続的に削減等の改善を行っております。合わせて、カーボンニュートラル社会の実現に資する既存製品の拡販および新規製品の研究開発にも取り組んでおります。

社会

 当社グループは、ESG項目のうち、社会リスクとして、「人権」、「安全衛生」を特定しております。

①人権

 サプライチェーン上での人権リスクの可能性があると認識しております。自らの事業またはサプライチェーンにおいて人権侵害が発覚した場合、調達や生産への影響だけでなく当社グループのレピュテーションリスクにもつながり、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 行動指針、CSR方針および就業規則に基づき、人権の保護に努めております。また、サプライヤーの潜在的リスクを洗い出し、抽出された課題についてはサプライヤーと共に改善し、人権リスクの低減を図っております。 

②安全衛生

 製造拠点において、従業員の安全や衛生に係る労働災害が発生するリスクがあります。労働災害による行政処分などのリスクが、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 労働安全衛生を徹底するために労働安全衛生IS045001を取得し、このマネジメントシステムに基づき継続的改善を図っております。また、従業員に対しては、安全衛生の関連法規やルールの遵守・危険感受性を高めるための訓練、非常時に備えた訓練、個別作業ごとの保護具の使用等についてトレーニングを実施し、安全衛生に係るリスクの低減を図っております。

企業統治

 将来、事業・外部環境の変化等により不測の事態が発生した場合、ガバナンスの実効性が低下し法令違反等のコンプライアンスのリスクにつながる恐れがあります。結果として、ガバナンスリスクが当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

 当社グループは、持続的に企業価値を高めるため、コーポレート・ガバナンスの仕組みや機能を規律づけ、ガバナンスの実効性が強化されるよう継続的に改善を図っております。ガバナンスの実効性を確保するため、コーポレートガバナンス・コードへの対応や、取締役会における議論の活性化等によりガバナンス機能の強化を図っております。

セグメントにおけるリスク

機能性材料事業
セグメント

 キャリア事業は、テレワークの普及やペーパーレス化により印刷機会が減少し、需要が徐々に減少する可能性があります。また、事務機器メーカーの業界再編の動きが起こっています。新規機能性材料事業は、半導体産業に関連した受動部品に使用される機能素材が主製品のため、半導体産業の景況により需要が大きく変動します。また、半導体産業の技術革新、業界再編や地政学的要因により、価格競争の影響を大きく受ける可能性があります。

 キャリア事業は、カラー化の進展、デジタル商業用印刷分野の拡大に向けて、次世代キャリアの開発を進めるとともに、生産においては、工程改善・省エネ活動・歩留改善活動等によるコストダウン施策を進めております。新規機能性材料事業は、半導体産業の需要動向の把握によるリスク管理を適切に行うとともに、当社の基盤技術の深化と拡大に取り組み、より競争力の高い商品による事業展開に努めております。

品質保持剤事業
セグメント

 脱酸素剤関連製品は、季節要因やインバウンド動向など需要に波があり、販売量の大きな変動が当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 在庫の著しい増減の回避に向け、タイムリーな需要動向把握と最適生産に努めております。また需要が安定しており、その変動が比較的少ない高付加価値製品の比率を高め、安定生産と収益性の維持に努めております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

①営業の全般的状況

 当期におけるわが国経済は、人手不足、海外景気の減速といった逆風もあったものの、物価、地価および賃金などの上昇によりデフレ脱却が進む一方、インバウンド需要も拡大するなど、回復基調を維持しました。米国は、消費と投資が経済を牽引し、インフレ率も横ばいで推移しましたが、政権交代により関税政策が大きく変わる見込みで、不透明感が強まっています。欧州は、個人消費が下支えとなり緩やかな回復を維持しましたが、独仏の政治不安定により成長に勢いを欠き、インフレ率は高止まりしているものの、ECBは利下げを実施しました。中国は、成長率5.0%を達成しましたが、内需の鈍化や不動産市場の低迷が課題で、デフレ懸念も払しょくできていないことから、政府は消費刺激策を実施しています。

 当社の主力製品である電子写真用キャリアの需要は、昨年度までの流通在庫の調整も終わり、実需相当で堅調に推移しました。新規機能性材料製品も前期比で増販となりました。

 食品などの品質保持に使用される脱酸素剤の需要は、やや減速感はあるものの底堅く推移しておりますが、販売競争の激化と原材料価格の上昇などの影響で厳しい事業環境が継続しております。なお、製造子会社である株式会社ワンダーキープ高萩の高萩工場にて2023年11月17日に発生した火災により損害を受けた工場建物は、今期末に復旧いたしました。

 この様な市場環境下、当期の連結売上高は機能性材料製品の数量増や価格適正化もあり、9,136百万円(前期比6.9%増)となりました。

 損益面におきましては、主に機能性材料事業の減益により、連結営業利益は332百万円(前期比18.2%減)、営業外損益を加えた連結経常利益は376百万円(前期比21.3%減)となりました。

 特別損益では、前期の火災による受取保険金144百万円の利益計上に対し、新規取得となる固定資産の圧縮損137百万円と固定資産処分損12百万円の損失を計上いたしました。

 この結果、連結税金等調整前当期純利益は371百万円(前期比7.9%減)となり、法人税、住民税及び事業税、ならびに法人税等調整額を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は318百万円(前期比13.5%増)となりました。

 

②セグメントごとの状況

 

   機能性材料事業

 当セグメントにおきましては、電子写真用キャリアおよび新規機能性材料とも前期比で販売数量は増加いたしました。一方、前期にやや過剰だった在庫を適正化した影響に加え、原材料価格や人件費・減価償却費の上昇といった原価の押上げ要因も生じた結果、売上高は8,081百万円(前期比8.8%増)と増販となったものの、セグメント利益は874百万円(前期比0.1%増)と横ばいとなりました。

 

   品質保持剤事業

 当セグメントにおきましては、前期に発生した工場火災による製造ラインの一部停止により低下したシェアの回復が進まないこともあり、売上高は1,055百万円(前期比5.7%減)と減少いたしました。一方セグメント利益は、販売価格の適正化に加え、火災に伴う一過性費用の解消などにより、13百万円(前期比327.2%増)となりました。

 

③経営成績の分析

当連結会計年度は、年度当初においてはロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢が緊迫化し、地政学リスクの高まりとともに、資源価格を始めとする物価の先行きに一層の不透明感が増していることを前提に業績予想を発表いたしました。

経営成績としましては、機能性材料事業において、主力製品である電子写真用キャリアの販売が当初予想よりも上回ったことにより売上高が増加しました。品質保持剤事業においては、低下したシェアの回復が進まないこともあり、当初予想した売上高を下回りました。損益としましては、原材料価格の上昇や人件費・減価償却費の増加により、収益が圧迫され、経常利益は予想を下回りました。

その結果、通期の業績としましては、売上高は当初予想の8,830百万円に対し3.5%増の9,136百万円、経常利益は当初予想の510百万円に対し26.2%減の376百万円となりました。

前連結会計年度との比較では、機能性材料製品の数量増や価格適正化もあり、全体の売上高は6.9%増加いたしました。損益面では、主に機能性材料事業の減益により、営業利益は18.2%減、経常利益は21.3%減、税金等調整前当期純利益は7.9%減、当期純利益は法人税等の減少により13.5%増となりました。

 

④生産、受注及び販売の状況

(a) 生産実績

 

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

機能性材料事業

8,137,328

11.1

品質保持剤事業

1,004,725

△12.8

合計

9,142,053

7.8

 

(注) 1.金額は販売価格(消費税等抜き)によっております。

 

(b) 受注状況

当社グループの主要製品については、見込み生産が主で受注生産はほとんど行っておりません。

 

(c) 販売実績

 

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

機能性材料事業

8,081,232

8.8

品質保持剤事業

1,055,062

△5.7

合計

9,136,295

6.9

 

(注) 1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

京セラ
ドキュメントソリューションズ㈱

1,547,865

18.1

1,818,568

19.9

㈱コニカミノルタサプライズ

995,735

11.6

1,296,707

14.2

富士フイルム
マニュファクチャリング㈱

1,165,872

13.6

1,269,422

13.9

上野キヤノンマテリアル㈱

1,155,921

13.5

1,160,153

12.7

 

 

(2) 財政状態

当期末は前期末に比べて、流動資産は売掛金及び電子記録債権が増加したことにより、450百万円増加いたしました。固定資産は太陽光発電オフサイトPPA導入に伴うリース資産の増加などにより、378百万円増加いたしました。以上により、総資産は827百万円増加いたしました。

負債は主に支払手形及び買掛金の増加並びに太陽光発電オフサイトPPA導入に伴うリース債務の増加により、744百万円増加いたしました。

純資産は主に利益剰余金の増加により、84百万円増加いたしました。

自己資本比率は、負債の増加により80.8%と前期末比3.9%減少いたしました。

 

(3)キャッシュ・フロー

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

180百万円

856百万円

676百万円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△378百万円

△504百万円

△126百万円

財務活動によるキャッシュ・フロー

△235百万円

△275百万円

△40百万円

現金及び現金同等物の期末残高

2,723百万円

2,804百万円

81百万円

 

 

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金収入が676百万円増加し、856百万円の収入となりました。主に売上債権の増減額が増加したことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ現金支出が126百万円増加し、504百万円の支出となりました。主に有形固定資産の取得による支出が増加したことによります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度並みの275百万円の支出となりました。

以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べ81百万円増加し2,804百万円となりました。

 

また、当社は流動性をさらに確保するため、複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結し、全額未使用のまま10億円の融資枠を維持しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準により作成されております。この財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っております。当社の連結財務諸表において採用する重要な会計方針及び重要な会計上の見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

上記のような仮定を考慮して見積り及び予測を行っておりますが、現時点で全ての影響について合理的に見積り及び予測を行うことは困難であり、また、需要環境によっても変動する可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

  特記事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 機能性材料事業につきましては、環境対策用、微粒品キャリア等の新製品開発および粉体技術を応用展開した新規用途開発、品質保持剤事業につきましては、脱酸素剤等の新製品の開発に積極的に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費は、各事業に配分できない基礎研究費用を含め総額で567,973千円を計上いたしました。