当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、世界的な視野で建設・建築技術の高性能化を図りながら、市場ニーズに呼応した社会資本の充実、貢献に努めております。
当社は、21世紀のスタート、2001年4月1日に新しい経営理念を掲げました。
変化と新しい価値の創造
顧客に満足される新しい機能の創造
社会、自然環境との調和
社員の個性尊重 -意欲と能力の発揮による各人の豊かさの実現-
Making Changes, Creation of New Values for the Next Stage
当社の製品は、創業以来日本の社会資本の形成に大きく寄与してきたと認識しておりますが、日本経済における社会資本の形成が一段落し、プロダクト・サイクルが成熟期に入ったとの認識のもと、新しい理念は、変化と新しい価値の創造により重点を置くものとなっています。
この理念には、日常生活に身近な社会資本も常に人々の新しい要求に対し変化させなければならない、エスイーグループはコアテクノロジーをもとに長年培ってきた経験を活かし、これからも変化を先取りしながら新しい価値を創造し提供し続けていきたいとの想いが込められています。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当初グループの主力事業である建設用資機材の製造・販売事業は、公共投資や建設業界の動向に大きく左右されます。中長期的には、「防災・減災、国土強靭化」、高速道路リニューアル、インフラ老朽化対応等需要面での好環境が続くことが予想されます。反面、これらの好環境の期間は、その終焉後に必要とされる新たな収益の柱となる新事業の創出及び既存事業の収益力の強化のために残された限りある準備期間と考えられます。
そのため、2020年3月には、2030年頃までの環境変化についての洞察を基に、2030年での「ありたい姿」「提供価値」について、「2030ビジョン」を策定しました。「2030ビジョン」実現のため、経営資源の戦略的投入・既存事業基盤の再構築と新たな価値の創造を骨子とした中期経営計画2020-2022を策定し、経営課題の解決に取り組みました。
しかしながら、中期経営計画2020-2022の3ヶ年は、新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ情勢等計画策定時には全く想定していない環境変化が生じ、期間中はそれらの環境変化が計画の遂行に大きな影響を与えました。財務上の数値面での計画比未達以上に、質的な変化を十分果たせなかったことが、大きな課題として残りました。
2022年度後半に、ありたい姿の抽象度が高かった「2030ビジョン」を、具体的な事業開発に結び付くようリニューアルする作業を開始し、その新ビジョンをもとに「中期経営計画2023-2025」を策定し、戦略的資源投入をより強化する計画としました。
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[「中期経営計画2020-2022」の振り返り]
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(百万円) |
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2019年度 |
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2022年度 |
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2022年度 |
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実績 |
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当初目標 |
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実績 |
2019年度比 |
当初目標比 |
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連結売上高 |
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22,839 |
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26,000 |
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25,452 |
+2,613 |
△547 |
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連結経常利益 |
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1,063 |
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1,600 |
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1,376 |
+312 |
△223 |
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親会社株主に帰属する 当期純利益 |
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270 |
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1,023 |
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870 |
+599 |
△152 |
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営業利益率 |
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4.7% |
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6.3% |
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5.3% |
+0.6 |
△1.0 |
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ROE |
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3.2% |
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10.0% |
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8.6% |
+5.4 |
△1.4 |
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戦略的 資源投入 |
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「新たな価値創造」のための研究開発 (人件費・経費)・設備投資 |
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計画 |
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実績 |
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(3ヶ年合計概算額) |
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(3ヶ年合計概算額) |
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25億円 |
→ |
13億円 |
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新たな 価値創造 |
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ESCON |
二次製品開発では、埋設型枠、歩道床版、頭首工用の保護パネルの上市がほぼ予定通り進捗。しかしながら、今後の事業の柱になるには規模が小粒なため、今後は、ESCONスラブ(道路橋床版)等大規模修繕等を中心とした橋梁補修関連に開発資源を集中。 |
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海外 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、長期に亘る渡航制限や現地活動の制限により、マーケティング活動の遅延。 エスイーグループの製品の海外展開とは別に、国内外の連携によるVJECを活用したBIM/CIM設計支援事業を立案。 |
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プラズマ 発電事業 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により研究開発、及び、資材の調達難により新実験棟の立ち上げが遅延。事業化の詳細決定を2023年度、発電所稼働は2026年度を目標としていたが、複数の発電方式の実証実験の優先順位も含め、工程を大幅に見直し。 |
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その他事業 |
土木分野の新製品の開発が主体で、新規事業の種まきまでに至らず。 |
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既存事業基盤 再構築 |
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工務部を中心とした設計折込体制・技術営業の強化や営業支援システムの導入等は進展。 生産面では、多品種少量生産への適応や技術情報の共有・伝承体制構築に遅れ。システム対応による抜本的な対応が急務。 |
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[2030ビジョン(改訂後)] |
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《2030年度にエスイーグループがありたい姿》 |
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エンジニアリングがつなぐ人とインフラ |
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Engineering With You. |
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私たちエスイーグループは、 |
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1967年の創業以来、耐久性が高く、現場での調整が容易なインフラ資材を開発し、その土地の課題に寄り添い、最適なインフラの構造・資材・施工の組み合わせの実現に貢献してきました。橋をつなぐ、道路をつなぐだけでなく、その場所を周りの地域社会に、人々の暮らしを明日につなぐことにも通じるものでした。 |
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時代は、「気候変動と自然災害」「インフラ老朽化」「少子高齢化や地域間格差」などの社会課題が深刻化し、耐久性の高さや維持管理性は、「サステナブルな社会」の仕組みとして意識されるようになりました。 |
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今まで培った技術とエンジニアリングの力に新しい技術を積極的にクロスさせ、ときには、国内外の技術をオーガナイズし、これからも新たな価値の創造に挑戦し、内外のそこに住む人々のサステナビリティに貢献します。 |
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サステナブルな社会へエスイーがつないでいきます。 |
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[具体的な事業の姿(株式会社エスイー)]
これまでメーカーとして築いてきた事業基盤の上に、デジタルを活用したエンジニアリングサービスを展開し、国内外の防災、インフラの整備・維持管理に向けた幅広い貢献を担う企業となる。
・製品の開発による新分野開拓
官公需の分野内では、土木建設関係・道路・防災から砂防・農水等防災分野の拡大、土木建設関係以外の施設増強まで拡大。
官公需の分野を超えて、民需(交通・インフラ・建築)の鉄道・電力・通信等まで拡大。
・新しいビジネスモデルによる新事業
現在のモノ・製品の製造販売から、労役・サービスの提供(設計事業・施工維持管理支援)、更にはソリューションの提供(維持管理クラウドサービス等の新ビジネスモデル構築)まで拡大。
・海外事業
従来のODA・日系民間案件の建材貿易・ベトナム生産拠点構築に加え、海外事業の出発点としてBIM/CIM設計支援を位置付ける。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
長期ビジョンの実現、その前提となる環境変化に優先的に対処するための中期的な課題は以下のように認識しております。
①国土強靭化等の公共事業予算の追い風のある建設用資機材の製造・販売事業での着実な業容拡大と利益体質の強化
②今後の成長を牽引する新事業、新製品・新サービスなどの新しい価値の創造と早期収益化
③海外関連の事業再構築による業容を拡大
④企業価値向上のための資産効率の向上と経営基盤の強化
⑤建設用資機材の製造・販売事業以外では、
・建築用資材の製造・販売業での利益体質の強化
・建設コンサルタント事業の新たな収益の柱の育成
・補修・補強工事業においては抜本的な拡大策の展開
(4)中期経営計画2023-2025
以上の課題に対処するため、2022年度の後半より「中期経営計画2023-2025」の作成に取り掛かり、2023年5月に公表しております。
①中期経営計画の位置付け
この「中期経営計画2023-2025」の期間は、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、「既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間」と位置づけております。
②基本方針
a)思い切った経営資源の戦略的投入の継続・強化
・・・前中期経営計画期間中に十分に実施できなかった戦略的な資源投入を強化します。先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期に比較し低水準となりますが、戦略的な資源投入により2026年3月期以降の飛躍的な成長を遂げることを狙っていきます。
b)未来に向けた種蒔き
・・・従来より実証試験に注力してきた発電事業への先行投資を継続・強化します。
ESCON事業は、本中期経営計画期間中に橋梁大規模修繕関連の収益化を図り、利用分野を拡大します。新たに実施するBIM/CIM設計支援事業は本中期経営計画期間中にビジネスモデルを定着させ、
拡大を図っていきます。既存事業領域から展開する新規事業等については開発体制の確立に注力し、抜本的に新規事業開発体制を改編していきます。
c)既存業務の土台固め
・・・既存事業の持続可能性を確実なものとし、上記の事業の展開に結び付けるために、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材の定着・確保に向けた教育・評価制度改革等を実施していきます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標につきましては、先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期と比べ低い水準となります。2026年3月期には、報告セグメントに属さない研究開発費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでは増益になる目標を掲げております。
資本効率の向上に係る目標の指標は、自己資本当期純利益率(ROE)としておりますが、上記の利益目標と同様に2023年3月期に比し、大幅な低下となりますが、報告セグメントに属さない研究開発部門の人件費・経費(その多くは発電事業に係るもの)を除いた既存事業では、9%を上回る水準を目指します。
株主還元につきましては、前中期経営計画と同様の方針のもと、株主資本配当率(DOE)(*)としております。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
当事業年度を終える時点で、その時点での事業環境を踏まえ、計数計画を一部見直しました。具体的には、建設用資機材の製造・販売事業において、想定していたより当社製品を活用するODA案件が少なかったこと、新規製品の開発遅延等を主な要因として、売上高・利益を下方に修正しました。本項に記載の基本財務目標は、見直し後の数値を記載しております。2026年3月期には、報告セグメントに属さない研究開発部門の人件費・経費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでは増益になる点は変更ございません。
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基本財務目標 |
2023年3月期 |
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2026年3月期 |
2026年3月期 |
当初計画比 |
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売上高 (百万円) |
25,452 |
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28,500 |
27,955 |
△545 |
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経常利益 (百万円) |
1,376 |
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1,205 |
1,010 |
△194 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) |
870 |
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743 |
546 |
△197 |
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経常利益 (百万円) |
1,770 |
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1,893 |
1,777 |
△115 |
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収益性・配当 |
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営業利益率 (%) |
5.3 |
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4.2 |
3.6 |
△0.6 |
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自己資本当期純利益率(ROE) (%) |
8.6 |
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7.0以上 |
5.0 |
△2.0 |
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株主資本配当率(DOE) (%) |
3.8 |
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3.5以上目安 |
3.5以上目安 |
― |
(1)サステナビリティに関する考え方及び取組
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、世界的な視野で建設・建築技術の高性能化を図りながら、市場ニーズに呼応した社会資本の充実、貢献に努めております。経営にあたり、社会・環境の持続可能性、そして企業としての持続可能性の向上は、常に意識して取り組まなければならない重要課題であると認識しています。
当社の経営理念「変化と新しい価値の創造」は、「社会資本は今現在だけでなく、10年、50年、100年と使い続けていくものであり、常に次の世代、一歩先を見据えて社会資本を整備しなければなりません」という認識のもと、創業以来の「事業を通じて社会課題解決に貢献する」というサステナビリティ経営の精神をうたっております。
当社および当社グループは、2020年に2030年に目指す姿として「2030ビジョン:すべての人々にSustainableな発展を」を公表し、「Sustainableな社会の発展に貢献し、自らもSustainableな発展を遂げ、全てのステークホルダーの満足を追求し続けます」と掲げており、サステナビリティを中心とした経営戦略や経営計画を作成し活動してきております。
2023年には2030年ビジョンを目指すべき事業の具体化の観点から刷新し、新しい2030ビジョン「エンジニアリングがつなぐ人とインフラ Engineering With You.」を公表し、今までのインフラ老朽化や国土強靭化、防災といった公共分野だけではなく、もっと広く、人々の生活や自然環境、街づくりをサステナブルなものにしたい、貴方のために貢献したい、という想いを端的に込めたメッセージとしました。
新しいビジョン実現のために、2022年度に取締役会において、2023年4月より開始する新しい中期経営計画の議論を実施し、サステナビリティ関連のリスク及び機会を念頭においた施策、およびその実施状況の管理、手続きについて議論を重ね、「中期経営計画(2023-2025)」を策定しました。
「中期経営計画(2023-2025)」は、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、「既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間」と位置付けております。「既存事業の土台を盤石化」のための施策は、自社のサステナビリティに対するリスクを対処する施策です。既存事業の持続的成長を図るために、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材定着・確保に向けた教育・評価改革を主な施策としております。
「未来に向けた種まき」のための施策は、社会のサステナビリティに貢献する機会を捉えた施策です。社会課題解決のために、発電事業・ESCON事業・BIM設計支援事業等の事業展開を図る施策を実施していきます。
なお、現在のサステナビリティへの対応状況は、以下の2点において課題があると認識しており、その課題を解決するために2024年度に「サステナビリティ対応プロジェクト」を立ち上げ、グループ全体のサステナビリティ対応態勢の再構築を図っていくこととしています。
・当社グループのサステナビリティ対応は、歴史的に社会課題の解決(事業機会としての対応)に重きを置く傾向があり、例えば自社の排出する温室効果ガスの測定・削減のような自社のサステナビリティ対応にはこれからの段階のものがあります。
・主要な開示基準が盛んに議論されている今、求められる要件に対応しつつ、さらに充実した開示を行っていく必要があります。サステナビリティへの対応は、ステークホルダーの皆さまに対応状況を理解していただくためには、開示基準で議論されている手法をより意識的に活用しつつ、網羅すべき分野の漏れがないよう、全社的な最重要課題の絞り込み、すなわちマテリアリティ特定とその対応計画立案というプロセスを行う必要があります。
(2)ガバナンス
①執行体制
「中期経営計画(2023-2025)」の施策については、技術開発要素が強い施策は、既存の事業部門の組織とは独立した組織にて、専門技術に基づく研究開発と事業展開をシームレスに実施していく体制とし、それ以外の施策は、当社内でクロスファンクショナルなメンバーによる分科会を組織し、分科会単位で実施しております。分科会の毎月の実施事項については、それぞれの業務を所管する本部長が毎月の経営会議に相当する会議に進捗を報告し、最終的には当社COOが全体を統括する形態で施策の確行を図っております。
②監督体制
当社の取締役会は、法令で定められた事項やその他経営に関する重要事項を決定するとともに、取締役の業務執行を監督する機関と位置付けております。「中期経営計画(2023-2025)」の施策をはじめサステナビリティに関する事項においても、規程に沿い重要事項を取締役会で決定しております。また、施策の進捗については、取締役会へ定期的に報告することで監督体制を強化しております。
新中期経営計画の実施過程、内外のサステナビリティの議論の動向、限りある経営資源を前提とした効率的な管理体制構築等の観点から必要と判断した場合には、サステナビリティに特化したガバナンス体制も検討していくこととしております。
(3)リスク管理
サステナビリティに関するリスクおよび機会の特定については、長期ビジョン(「2030ビジョン」)および中期経営計画の策定過程において実施しており、そのプロセスは下記のようになっております。また、リスク管理については、現在の枠組みを活用し、事業等のリスクの一環としての管理を実施するとともに、リスクに対する対応策としての中期経営計画の施策は、当計画の管理の枠組みに沿って管理をしております。
新中期経営計画の実施過程、内外のサステナビリティの議論の動向、限りある経営資源を前提とした効率的な管理体制構築等の観点から必要と判断した場合には、サステナビリティに特化したリスク管理体制も検討していくこととしております。
①リスクと機会を特定、評価するプロセス
当社は、創業以来の「事業を通じて社会課題解決に貢献する」というサステナビリティを意識した経営を行ってきました。
2020年3月に「2030ビジョン」を策定する以前より、下記の社会課題の解決を成長戦略における注力分野としてきました。
[成長戦略の4つの領域(社会的課題)(2019年)]
2020年3月には、2030年頃までの環境変化についての洞察を基に、2030年での「ありたい姿」「提供価値」について、「2030ビジョン」を策定しました。「2030ビジョン」の策定に当たっては、経営企画室においてまとめたSDGsの17の目標および22分野でのメガトレンドを基に、社内の中堅社員の選抜チームが重要と考える分野の抽出・整理を実施し、その分野の将来シナリオを策定した上で機会とリスクを特定・評価しました。更に、パーパス(存在意義)・バリュー(価値観)も踏まえ、「社会課題解決への貢献度」と「自社のありたい姿にとっての重要度」を軸に経営陣との議論を進め、エスイーグループの「ありたい姿」と「提供価値」を内容とする「2030ビジョン」を決定しました。そして、「2030ビジョン」のありたい姿を実現していくための戦略として、「中期経営計画2020-2022」を策定しました。
[2030ビジョンにおける機会とリスクの特定]
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シナリオ |
機会 |
リスク |
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インフラ老朽化 |
・維持管理、更新需要増大 ・地方自治体に支援が必要 |
補修・補強マーケットの拡大 地方自治体への技術支援 |
市場が両極端化し、競争激化 |
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国土強靭化 |
・維持管理、更新需要増大 ・早期回復重視 |
事前保全に一定の需要 早期復旧支援 |
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気候温暖化と エネルギー |
・多様なインフラ需要 ・環境負担増の懸念 |
新たな発電設備本体・送電設備資材の需要 |
温室効果ガス関連規制強化 カーボンプライシング |
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デジタル社会 |
・実用化の時期到来 ・データ蓄積・活用が重要 |
データを活かしたビジネス |
資材企業のマージナル化 (低収益化) データ・ICT対応遅延 (失注) 工場効率化の遅れ |
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グローバル社会 |
・途上国のインフラ需要 ・独自発展、グローバルな 都市間競争 |
途上国のインフラ需要 |
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2022年度後半に、新しい中期経営計画を策定するに際して、2020年に検討したメガトレンド、重要分野の抽出・整理、将来シナリオ、機会とリスクの特定・評価を、新たに選抜した中堅社員により構成されたチームにより点検とリニューアルを実施しました。また、その際に、取引先・協力研究機関(大学の研究室)等へのヒアリングを実施し、エスイーグループに対する期待・要請、優先的に取り組むべき課題についての調査を実施しました。その結果、機会とリスクの特定・評価は引き続き有効とし、機会を活かす事業の解像度を上げることで「2030ビジョン」をリニューアルしました。
②リスクと機会を管理するプロセス
特定されたリスクと機会については、中期経営計画において、その期間中に到達すべきあるべき姿を明確にし、そのあるべき姿のメルクマールとなるKPIを設定し、施策を実行しております。KPIについては毎年あるべき姿のメルクマールとして適切なものとなっているかの観点より見直しを実施しております。
(4)戦略・指標及び目標
中期経営計画では、既存事業により「インフラ老朽化」「国土強靭化」の社会課題解決に貢献するとともに、下記の事業を開発・展開することにより社会課題解決に貢献することを推進していきます。
[社会課題解決に貢献する事業の推進]
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施策 |
社会課題 |
中期経営計画での目標 |
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発電事業 |
気候温暖化とエネルギー |
2028年度頃の事業開始 |
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ESCON事業 (橋梁大規模修繕関連等) |
インフラ老朽化 |
材料販売売上4億円(2025年度) |
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BIM設計支援事業 |
インフラ老朽化 デジタル社会 グローバルインフラ |
VJEC(非連結子会社)当期純利益0.2億円(2025年度) |
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新規事業開発 |
(限定せず) |
社会課題解決に貢献する新事業案2件の確立(2025年度) |
上記の他に自社のサステナビリティを意識した施策として、「生産業務の効率化・技術伝承対策」「人材定着・確保に向けた教育・評価改革」等を推進しておりますが、サステナビリティについての主要な開示基準が盛んに議論されている今、ステークホルダーの皆さまに対応状況を理解していただくためには、開示基準で議論されている手法をより意識的に活用しつつ、網羅すべき分野の漏れがないよう、全社的な最重要課題の絞り込み、すなわちマテリアリティ特定とその対応計画立案というプロセスを行う必要があると考えております。そのため、2024年度に「サステナビリティ・プロジェクト」を立ち上げ、グループ全体のサステナビリティ対応態勢の再構築を図っていくこととしています。
(5)気候変動への対応
「2030ビジョン」および中期経営計画における対応すべき社会課題の中で、気候変動への対応は最も重要な課題であると認識しております。
①ガバナンス・リスク管理
ガバナンスおよびリスク管理につきましては、上述のサステナビリティ全体と同様の枠組みにて対応しております。
②戦略・指標及び目標
当社グループでは、気候変動への対応は重要な収益機会と認識しており、以下の戦略・施策を推進していきます。
・発電事業:CO2フリーかつ放射線を出さない、原材料全て国内生産、消費地に近い中規模発電所(災害に強いエネルギー)を特長とする発電事業を展開していきます。中期経営計画期間中は実証実験を継続しつつ、事業モデル構築を本格化させ、次期中期経営期間中に国や自治体との折衝、パートナー企業との共同事業化に向けた検討を進め、2028年度頃の発電事業開始を目指しております。
・既存事業:既存事業は気候温暖化そのものを収益機会と考えておりませんが、気候温暖化が進むことにより、豪雨災害等が激甚化・頻発化し、その結果への対応としての国土強靭化が必要となります。既存事業のうち、国土強靭化に特に関係の深い建設用資機材の製造・販売事業を中期経営計画最終年度である2025年度の売上高を143億68百万円(中期経営計画の直前期である2022年度比+19%)まで伸長させることを目標としております。
・自社のサステナビリティ対応:一方で自社グループの事業プロセスにおいて発生する温室効果ガスについては対応が遅れており、目標値の設定に至っておりません。2024年度に実施するサステナビリティ対応プロジェクトにおいて、Scope3までのCO2 排出量の算定体制構築をマイルストーンとしております。
[気候変動対応の指標および目標]
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指標および目標 |
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発電事業 |
事業開始 |
2028年度 |
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建設用資機材の製造・販売事業 |
売上高(2025年度) |
143億68百万円 |
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CO2排出量の算定 |
体制構築 |
2024年度中 |
(6)人材育成
人材育成には、さまざまな価値観を持った社員が融合することが重要と考え、積極的に採用活動を行っております。建設業界における慢性的な人手不足や高齢化により、現状においては人的資本の確保・充実策実行が急務であると認識しております。
人材定着・確保に向けた教育を行うとともに、より公平公正で明確な評価制度を採り入れ、若手人材の管理職等重要ポストへの早期登用や女性の管理職登用推進など、中期経営計画の一つの柱として立ち上げた社内分科会により、人材定着・確保に向けた採用・教育・評価改革・労務制度見直しに取り組んでおります。
①人的資本に関する戦略
人的資本に関する戦略につきましては、各グループ会社とも共通の認識はあるもののセグメントの特性ならびに地域性に即した対応を行って来ております。そのなかで発行会社である当社におきましては、人材定着、確保に向けた教育、公平公正で明確な評価制度の採り入れ、若手人材の管理職等重要ポストへの早期登用、女性の管理職登用等を推進しております。
・人材定着・確保に向けた新卒採用戦略
2025年度新卒採用者の確保の戦略といたしましては、大学研究室との人材交流を強化し、研究室訪問による当社事業説明、当社製造工場視察見学会の実施、インターンシップ制度の説明を行うこととし、その中でもインターンシップ制度につきましては2026年度新卒採用を対象とした案内を強化する方針であり、より多くの学生に対し当社の情報に触れる機会を増やして行くことで、新卒採用としての人材確保を推進しております。
・人材定着、確保に向けた教育訓練の戦略
人材の定着、確保に向けた教育訓練の戦略といたしましては、求める人材の人物像の策定を行うため、各職種ならびに各階層において業務遂行上必要とされる専門知識、基本スキルの特定を行い、現状目指すべき姿に近づけるための教育訓練の構築、導入を推進しております。また、幅広い職種における社員の能力向上を目的とし、資格取得支援制度の案内・活用も推進しております。
人材定着を推進するためのもう一つの施策として、ブラザー・シスター制度ならびに1on1ミーティング制度の導入による働きやすい職場環境作りを掲げており、両制度を活用するための制度運用教育研修を推進しております。
・人材定着、確保に向けた評価制度、給与制度改革の戦略
人材定着・確保に向けた評価制度・給与制度改革の戦略といたしましては、従来の評価制度から「管理職」については、管理職として能力評価の向上、目標管理の貢献度評価にウェイトを置くことで実力主義に即した適正な評価形成に移行するものとし、「非管理職」については自立型人材が企業成長の源泉となるとの考えから、若手社員の早期登用を可能とする評価制度の構築を推進しております。
評価制度の改革と並行し、従来の報酬制度から「管理職」については役職と責任に対する妥当な報酬体系を確立し、「非管理職」については管理職ですでに運用している年俸制給与を導入することにより早期成長を期待する方針に切り替え、若手社員においても報酬増加が行えるよう報酬制度の構築を推進しております。
②人的資本に関する指標及び目標
「①人的資本に関する戦略」にて述べた事由と同様のため、発行会社である当社にて人的資本に関する指標及び目標を定めております。
[人材育成の指標および目標]
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指標および目標 |
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新卒採用者の確保 |
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新教育訓練体系の構築、導入 |
新教育訓練体系運用開始 |
2024年10月 |
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新人事考課制度導入に伴う新給与体制の導入 |
新給与体系運用開始 |
2025年4月 |
当社グループの経営成績、財務状況および株価等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、外部環境・内部環境それぞれにおいて、経営方針・経営戦略を実施していく上で重要度の高いものは以下のものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
外部環境に起因するリスク
①建設投資減少に関するリスク
当社グループの売上高の約6割が、土木を中心とした国内建設市場向けへの販売等によるものであります。中期経営計画の期間中においては、国土強靭化・インフラ耐震化を進めていくために公共投資予算が割り当てられるとみておりますが、長期的には公共投資は漸減傾向となることが予想されます。また、財政健全化等を目的として公共投資が急減する場合や景気後退による民間の設備投資が縮小する可能性があります。度重なる台風災害や地震による災害の影響の激甚化が見られる状況下、これらのリスクが急激に顕在化する可能性は低いとみておりますが、以下の懸念材料より政府の一時的な政策の優先順位の変更等がないとは言えません。これらは当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
・世界的な金利上昇による日本銀行の金融緩和策からの転換(国債の発行余地低下)
・金利上昇による国債利払い費の増加による財政圧迫
・ウクライナ情勢等の影響による日本の安全保障政策の変更(防衛費の増強)
リスクの影響を軽減する方策:新しい収益の柱となる事業の構築、製品種類の分散化、海外展開
②原材料高騰に関するリスク
当社グループの主力製品群は、製造原価の約7割は原材料費となっております。その中でも鉄や鉄を素材とするPC鋼線・線材等市況により大きく価格が変動するものを多く使用しております。
今後、原材料が急騰した場合には、原材料費の上昇により当社の業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、「原材料高騰に関するリスク」につきましては、鋼材等の一部の原材料の価格が高騰しており、仕入価格への影響が出ております。中期経営計画には作成時に合理的に見込まれる影響については対応策とともに織り込んでおります。このリスクの影響を受ける可能性のある当社セグメントは、建設用資機材の製造・販売事業、建築用資材の製造・販売事業、補修・補強工事業であります。
リスクの影響を軽減する方策:販売価格への適正な反映、調達ルートの多様化
③災害に関するリスク
当社グループの製造拠点は全国に点在しております。また、主力のケーブル製品においては製造拠点が山口工場のみとなっております。近年頻発しています集中豪雨や今後発生が想定されています南海トラフ地震等の災害発生が考えられ、いずれかの工場が被災した場合には、操業に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:拠点の分散化、BCPの更新
④海外事業展開に関するリスク
「中期経営計画2023-2025」では、海外での事業展開を積極的に実施していくことを計画しております。特にベトナムではこれまでもエンジニアリング事業を展開してきましたが、建材市場の開拓、グループ企業の連携による設計支援事業の展開にも注力していきます。また長期的にはベトナム以外のアジア市場向けの販売拡大にも注力していきます。海外展開においては、言語、地理的要因、法制度・税制度等各種規制、当局の監督、政情、商慣習の違い等の様々な潜在的リスクが存在します。これらのリスクに対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:情報収集機能の強化、海外管理体系の整備
⑤気候温暖化への対応に関するリスク
中期経営計画では、発電事業等気候温暖化への対応は新たな事業機会としてこれまでも注視してきております。2020年度に入り各国がCO2の排出目標を引き上げ又は早期化する動きが顕著になり、企業としてもより意識的にサステナビリティに向けた対応が必要となります。また、各国の具体的な規制・制限次第では、企業の持続可能性を維持するための負担に大きな影響を与えることになります。また、機関投資家は投資対象のメルクマールに気候温暖化対応を入れる動きや対応状況の開示を求める動きを活発化させております。機関投資家等の開示をめぐる国際的な動きを背景に日本でも開示制度の改訂が進んできております。気候温暖化における事業環境の変化に適切に対応が出来なければ、企業の持続可能性に大きな影響を与えることになります。
リスクの影響を軽減する方策:情報収集と定量的な対応策の検討・実施、適切な開示
⑥感染症の発生・拡大に関するリスク
当社グループは、感染防止策の徹底や在宅勤務を可能にする規程を導入し、感染機会の抑制策を講じております。しかしながら、想定を超える感染症の拡大等により事業活動の停止や生活様式に変化をもたらすような事態が発生した場合は、当社グループの業績及び事業活動の継続に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:感染の抑制、在宅勤務の実施
内部環境に起因するリスク
①新規事業投資に関するリスク
長期的な公共投資予算の削減に対応すべく、これまでも新規事業の研究開発に積極的に投資してきました。
「中期経営計画2023-2025」においても、新しい価値の創造に積極的に投資していく計画になっております。当社グループの期待する成果が得られない場合、又は想定しなかった重大な問題が生じた場合等には当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:事業化のステージに応じた投資効率の点検
リスクの影響を軽減する方策:財務的なリスクバッファーとしての自己資本の充実
②人材の確保に関するリスク
当社グループの持続的成長は、土木建築等に係る専門性の高い知識・技術に基づく人材の確保・育成に大きく影響されます。こうした人材の確保・育成が想定通りに進まない場合は当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:人材採用力の強化、働き甲斐の向上(会社と従業員の成長同期感向上)
③仕入製品の減少に関するリスク
当社グループでは、販売する製品付属品の一部を外注業者にて製造しております。外注業者への発注量の管理や財務状況は常時管理しておりますが、これら外注先において信用不安や後継者不足による倒産・廃業が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:発注数量の安定化、外注先数の増強
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の解除等から、社会経済活動の正常化と景気の持ち直しが見られました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化などにより、エネルギー価格及び原材料価格の上昇が続いております。また、米国金利の高止まりが継続しており、景気減速のリスクや円安ドル高傾向の継続が懸念されております。また、世界経済についても、各国の政策等による持ち直しが期待されるなか、米欧のインフレ抑制と成長の両立、中国経済の持続的成長の回復には依然として不透明な状況が継続しております。
当社グループと関連の深い建築・土木市場においては、官公庁工事はここ数年の高水準を維持、民間設備投資はコロナ禍から回復しつつありますが、一方でエネルギー価格及び原材料価格の高止まりによるコスト増や建設現場における労働者不足が大きな影響を及ぼしております。アジア・アフリカにおける現地経済活動も新型コロナウイルス感染症拡大前の状況に戻ってきております。
このような経営環境のもと当社グループでは、2023年5月に公表した「中期経営計画2023-2025」において、2030年度を見据え、既存事業の土台固めのため生産を含めたサプライチェーンの効率化等を図るとともに、未来に向けた種まきのための実行体制を編成し、施策を確実に実施する体制としております。また、「中期経営計画2020-2022」の中で取り組んでおりました戦略的資源投入につきましては、エネルギー関連事業は次なる研究ステージに進み、海外関連では新たな事業の展開に着手するなど、新しい事業分野への足掛かりを固めるための先行投資を更に強化してまいりました。これらにより、エスイーグループとして持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでおります。また、昨今の原材料価格の上昇に対しては、営業部門と生産部門の連携により調達を最適化するとともに販売価格への転嫁を進めるなど計画利益の確保に努めております。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ9億38百万円増加し264億32百万円となりました。内訳は、流動資産が前連結会計年度末に比べ3億26百万円増加し175億57百万円、有形固定資産が前連結会計年度末に比べ5億66百万円増加し74億10百万円、無形固定資産が前連結会計年度末に比べ28百万円減少し1億53百万円、投資その他の資産が前連結会計年度末に比べ75百万円増加し13億11百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べ3億42百万円増加し154億8百万円となりました。内訳は、流動負債が前連結会計年度末に比べ1億59百万円減少し98億80百万円、固定負債が前連結会計年度末に比べ5億2百万円増加し55億28百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べ5億96百万円増加し110億24百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度は、建設用資機材の製造・販売事業において高速道路リニューアル関連の耐震金物の案件が増加したこと及び補修・補強工事業において期中に受注・消化した案件が増加したことなどにより、売上高は264億74百万円(前期比4.0%増)と増収となりました。
利益面では、人件費・経費等の増加がありましたが、建設用資機材の製造・販売事業において原材料価格上昇分の価格転嫁が順調に進んだこと及び補修・補強工事業において受注案件の中で増額が認められたことにより、営業利益13億64百万円(前期比2.1%増)、経常利益は為替差損の発生により13億73百万円(前期比0.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は工場移転による補助金の受け入れがあったことで9億69百万円(前期比11.5%増)となりました。
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
前期比 |
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公表期初予想 |
実績と予想 |
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売上高 (百万円) |
25,452 |
26,474 |
+1,022 |
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26,013 |
+461 |
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営業利益 (百万円) |
1,336 |
1,364 |
+28 |
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779 |
+585 |
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営業利益率 (%) |
5.3% |
5.2% |
△0.1 |
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3.0% |
2.2 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(建設用資機材の製造・販売事業)
この事業では、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」への対応が進められているなか、橋梁更新工事や豪雨災害などの対策工事が進められております。
そのようななか、当連結会計年度におきましては、高速道路リニューアル関連において、鉄鋼製品分野等の耐震金物の案件が増加したことやケーブル製品分野の納入が順調に推移したことにより増収となりました。利益面では、人件費・経費の販管費等が増加した一方で、原材料価格上昇分の価格転嫁が順調に進んだことにより、増益となりました。
この結果、この事業の売上高は128億83百万円(前期比6.8%増)、営業利益11億55百万円(前期比27.6%増)となりました。
(建築用資材の製造・販売事業)
この事業では、建築金物分野の内装関連は依然として新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が残っており民間設備投資の意欲は低い状況となっておりますが、一方では仮設建材の販売及び鉄骨工事分野が関連する首都圏の都市再開発におけるビルやマンション等の工事が活発になっております。
そのようななか、当連結会計年度におきましては、建築金物分野において、大型都市開発の案件を中心とした工事が概ね順調に推移しましたが、鉄骨工事分野において、従来売上を牽引してきた一部の地場案件が減少したことにより、建築用資材の製造・販売事業全体としての売上高はほぼ横ばいとなりました。利益面では、販管費の増加分をカバーできず、減益となりました。
この結果、この事業の売上高は104億56百万円(前期比0.3%増)、営業利益5億28百万円(前期比18.7%減)となりました。
(建設コンサルタント事業)
この事業では、アフリカ諸国をはじめ、アジア圏・大洋州地域等の各国において、道路・橋梁建設や設備機材整備等のプロジェクトに関わるコンサルタント事業を展開しております。特にフランス語圏のアフリカ諸国では強みをもっており、数多くの実績を残してきております。また、新規分野として国内外におけるBIM/CIM関連技術を活用した業務への参画を目指しております。
当連結会計年度におきましては、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの期中受注・消化案件数が縮小したこと及び設計原価にかかる外注費及び販管費の増加により、減収減益となりました。
この結果、この事業の売上高は7億46百万円(前期比3.8%減)、営業損失は18百万円(前期は営業利益33百万円)となりました。
(補修・補強工事業)
この事業では、社会インフラ老朽化対策における橋梁、トンネルの補修・補強工事を推し進めております。国土強靱化対策等が進捗しており、受注環境は引き続き良好に推移しております。
当連結会計年度におきましては、期中受注・消化した案件が増加したことにより、増収となりました。また、予定通り進捗している工事の中で増額や利益率改善等、利益確保に努め、増益となりました。
この結果、この事業の売上高は23億87百万円(前期比9.5%増)、営業利益2億66百万円(前期比42.7%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益が14億22百万円(前期比3.1%増)や、有形固定資産の取得による支出が11億7百万円あったことなどにより、前連結会計年度末に比べ7億20百万円増加し、当連結会計年度末には51億16百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、21億14百万円の収入(前連結会計年度末は6億37百万円の支出)となりました。主な資金の増加は、税金等調整前当期純利益が14億22百万円、減価償却費及びのれん償却額が7億5百万円、棚卸資産の減少額が3億75百万円、主な資金の減少は、法人税等の支払額が3億94百万円、売上債権の増加額が1億78百万円、仕入債務の減少額が1億8百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、11億45百万円の支出(前連結会計年度末は6億56百万円の支出)となりました。主な資金の減少は、有形固定資産の取得による支出が11億7百万円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2億54百万円の支出(前連結会計年度末は7億49百万円の収入)となりました。主な資金の増加は、長期借入れによる収入が19億90百万円、主な資金の減少は、長期借入金の返済による支出14億69百万円、配当金の支払額3億90百万円、短期借入金の減少額2億90百万円などであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
14,172,871 |
2.74 |
|
建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
6,617,379 |
△2.22 |
|
建設コンサルタント事業 (千円) |
- |
- |
|
補修・補強工事業 (千円) |
- |
- |
|
合計 (千円) |
20,790,250 |
1.11 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
建設用資機材の製造・販売事業 |
12,275,942 |
5.78 |
2,190,065 |
△21.71 |
|
建築用資材の製造・販売事業 |
8,924,382 |
△13.45 |
625,344 |
△71.02 |
|
建設コンサルタント事業 |
294,381 |
△58.77 |
884,156 |
△33.85 |
|
補修・補強工事業 |
2,084,071 |
15.73 |
639,172 |
△32.22 |
|
合計 |
23,578,777 |
△3.49 |
4,338,737 |
△40.03 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
12,883,385 |
6.76 |
|
建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
10,456,749 |
0.28 |
|
建設コンサルタント事業 (千円) |
746,806 |
△3.79 |
|
補修・補強工事業 (千円) |
2,387,892 |
9.49 |
|
合計 (千円) |
26,474,833 |
4.02 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ9億38百万円増加しましたが、その内訳は、流動資産が3億26百万円の増加、固定資産が6億12百万円の増加となっております。
流動資産の増加は、現金及び預金が7億20百万円増加したことが主因であり、現金及び預金の増加は、未払消費税を主としたその他流動負債が1億79百万円増加したこと、未収入金を主としたその他流動資産が1億74百万円減少したこと、更に借入金を2億30百万円増加させたことにより、手元資金を一時的に厚めに保有することになったことによるものです(*)。
固定資産のうち、工場設備のリニューアル・増強をはじめとする有形固定資産の増加が5億66百万円となっております。いずれも企業価値の維持・向上に資する前向きな長期の投資であり、親会社株主に帰属する当期純利益と株主配当金の支払い等による純資産の増加額5億96百万円と見合っており、調達構造として問題ないものです。
資産の残高ベースのリスク許容度(リスク資産に対して十分なエコノミック・キャピタルを有しているか)については、有形固定資産と投資有価証券の合計額76億77百万円に対し、自己資本(純資産-非支配株主持分)が109億84百万円あることにより、リスク資産に対するバッファー(エコノミック・キャピタル)は十分にある状態になっていると考えております。また、有利子負債は、前連結会計年度末59億19百万円から1億55百万円増加し、自己資本比率は40.7%から0.8ポイント増加し41.6%となり、D/Eレシオは0.57から0.02低下し0.55となりました。当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益の増益により積み上がった内部留保は、財務内容の健全性の向上に寄与するものとなったと判断しております。
(*)運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、57億89百万円から57億57百万円と32百万円減少しました。
(単位:百万円)
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資産 |
負債 |
|||||||||||||
|
2023年 |
2024年 |
増減 |
2023年 |
2024年 |
増減 |
|||||||||
|
3月末 |
3月末 |
3月末 |
3月末 |
|||||||||||
|
25,493 |
26,432 |
|
|
(主な内訳) |
|
15,065 |
15,408 |
|
|
(主な内訳) |
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|||
|
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+720 |
現金及び預金 |
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|
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+230 |
借入金 |
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|||||
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△174 |
未収入金を主とした その他流動資産 |
|
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|
+179 |
その他流動負債 |
|
|||||
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|
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+493 |
電子記録債権 |
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|
△143 |
電子記録債務 |
|
|||||
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|
|
△69 |
商品及び製品 |
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△20 |
支払手形及び 買掛金 |
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|||
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|
△91 |
仕掛品 |
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|
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|
△163 |
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|||
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|
△214 |
原材料及び貯蔵品 |
|
|
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+342 |
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|
|||
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|
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△314 |
受取手形、売掛金 及び契約資産 |
|
純資産 |
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||||||||
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△195 |
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2023年 |
2024年 |
増減 |
|||||||
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3月末 |
3月末 |
||||||||
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|
|
+373 |
建物及び構築物-純額 |
|
10,428 |
11,024 |
|
|
(主な内訳) |
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||||
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+329 |
機械装置及び運搬具-純額 |
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+969 |
親会社株主帰属 当期純利益 |
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△87 |
建設仮勘定 |
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△392 |
株主配当金支払い |
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|||||
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+615 |
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|||||
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|||||
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+938 |
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+596 |
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|||
リスクバッファーとしての自己資本が問題のない水準と考えられる一方で、資本の効率性の観点では、財務レバレッジを上げる余地についての分析も必要と考えております(後述「資本効率の持続的な向上」の項をご参照下さい)。当連結会計年度末での財務レバレッジは2.43であり、前連結会計年度末の2.42から0.01増加しております。今後実際に機動的な資金調達(大型の設備投資やM&A)を実施していくためには、平時には有利子負債による調達余地を残しておく必要があり、外部格付機関が発表している格付別財務指標を鑑みれば自己資本比率は望ましい水準の範囲内と考えております。従って、財務レバレッジを現時点で大きく引き上げることは優先度としては高くなく、当連結会計年度末の水準は妥当な水準と考えております。
2)経営成績
前連結会計年度との比較では下記のように分析しております。
連結売上高は10億22百万円増加しました。セグメント別の内訳は、建設コンサルタント事業のセグメントで29百万円減少しましたが、建設用資機材の製造・販売事業のセグメントにおいて8億15百万円と大きく増加したことに加え、補修・補強工事業のセグメントにおいて2億7百万円増加しました。増加の主な要因は、建設用資機材の製造・販売事業の高速道路リニューアル関連の鉄鋼製品分野などの案件増加とケーブル製品分野の納入が順調に推移したこと及び補修・補強工事業において期中に受注・消化した案件が増加したことなどによるものです。
連結売上総利益は5億3百万円増加し、売上高総利益率は0.9%増加しました。増加の主な要因は、建設用資機材の製造・販売事業において原材料価格上昇分の価格転嫁が順調に推移したこと及び補修・補強工事業において受注案件の中で増額が認められたことなどによるものです。
販売費及び一般管理費は、販売運賃が増加したこと、研究開発費が増加したこと、人員を強化したことなどにより4億75百万円の増加となりました。
以上の結果、営業利益は28百万円の増加、経常利益は2百万円の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は99百万円増加となりました。
当連結会計年度は、「中期経営計画2023-2025」の初年度に当たります。2023年5月12日公表の連結業績予想比では下記のように分析しております。
当連結会計年度の売上高は4億61百万円の計画超過で終わりました。セグメント別では、主要セグメントである建設用資機材の製造・販売事業が83百万円の未達となりましたが、その他のセグメントは建築用資材の製造販売事業が牽引し合計で5億45百万円の超過達成となりました。計画超過の大きな要因は、建築用資材の製造・販売事業で建築金物分野の大型都市開発案件の工事が順調に進捗したことや補修・補強工事業で期中受注・消化した案件が増加したことなどによるものです。
連結売上総利益は1億80百万円の超過、売上高総利益率は計画を0.2%上回りました。建設用資機材の製造・販売事業において原材料上昇分の価格転嫁が順調に進捗したことが計画超過の主な要因です。
販売費及び一般管理費は、計画では戦略的な先行投資を大胆に実施していくことを織り込み、前連結会計年度比で8億80百万円増加する計画でしたが、販売運賃が想定以上に発生しなかったこと、人材の採用が予定通り進まなかったこと等により前連結会計年度比4億75百万円の増加に止まり、期初予想比では4億4百万円少なくなりました。その中には戦略的な先行投資の位置付けである報告セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費の未達1億19百万円が含まれております。
以上の結果、連結営業利益は期初予想比5億85百万円の超過となりました。期初予想比大幅増益とは言え、戦略的な先行投資の研究開発及び人材の調達が遅れるなど、将来を見据えた先行投資の面では課題を残す結果となりました。
(単位:百万円)
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2024年3月期 |
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(実績) |
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2023年3月比 |
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期初予想(*)比 |
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売上高 |
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26,474 |
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1,022 |
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461 |
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建設用資機材 |
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12,883 |
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815 |
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△83 |
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上記以外 |
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13,591 |
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207 |
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545 |
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売上総利益 |
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7,182 |
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503 |
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180 |
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売上高総利益率 |
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27.1% |
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0.9% |
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0.2% |
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先行投資(研究開発) |
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531 |
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137 |
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△119 |
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販売管理費 |
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5,817 |
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475 |
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△404 |
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営業利益 |
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1,364 |
|
28 |
|
585 |
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売上高営業利益率 |
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5.2% |
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△0.1% |
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2.2% |
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経常利益 |
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1,373 |
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△2 |
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573 |
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売上高経常利益率 |
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5.2% |
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△0.2% |
|
2.1% |
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親会社株主に帰属する 当期純利益 |
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969 |
|
99 |
|
509 |
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売上高当期純利益率 |
|
|
3.7% |
|
0.2% |
|
1.9% |
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建設用資機材の 製造・販売事業 |
売上高 |
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12,883 |
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815 |
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△83 |
|
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営業利益 |
|
1,155 |
|
250 |
|
372 |
||
|
利益率 |
|
9.0% |
|
1.5% |
|
2.9% |
||
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建築用資材の 製造・販売事業 |
売上高 |
|
10,456 |
|
29 |
|
410 |
|
|
営業利益 |
|
528 |
|
△121 |
|
64 |
||
|
利益率 |
|
5.1% |
|
△1.2% |
|
0.4% |
||
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建設コンサルタント事業 |
売上高 |
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746 |
|
△29 |
|
△153 |
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営業利益 |
|
△18 |
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△52 |
|
△95 |
||
|
利益率 |
|
― |
|
― |
|
― |
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補修・補強工事業 |
売上高 |
|
2,387 |
|
207 |
|
287 |
|
|
営業利益 |
|
266 |
|
79 |
|
98 |
||
|
利益率 |
|
11.2% |
|
2.6% |
|
3.2% |
||
(※)2023年5月公表
各セグメント別の課題解決状況を踏まえた分析は以下の通りです。
(建設用資機材の製造・販売事業)
国土強靭化、高速道路耐震化、インフラ老朽化対応のため需要の拡大が続くと予想し、その需要を確実に売上高に結びつける営業活動を実施しました。その結果、高速道路リニューアル関連の鉄鋼製品分野等の耐震金物の案件増加とケーブル製品分野の納入が順調に推移したことにより前期比で増収となりました。
増益要因については、人件費・経費の販管費等が増加した一方で、原材料価格上昇分の価格転嫁が順調に進んだことなどによるものです。
以上により、当連結会計年度の売上高は前期比8億15百万円の増収、期初予想比83百万円の減収となりました。営業利益は前期比2億50百万円、期初予想比3億72百万円の増益となりました。
今後につきましては、ケーブル製品分野及び鉄鋼製品分野等において良好な事業環境が続くと思われ、今後も確実に成果に結びつけていくこと、実施した先行投資を確実に事業基盤の強化に結びつけていくことが必要となります。また、中期経営計画の課題である需要拡大及び製品の多品種化への製造面での対応、新商品・新製品の開発にも引き続き取り組んでいく計画です。
なお、翌連結会計年度においては、良好な事業環境が継続しておりますため既存事業は良好に推移すると想定しております。費用面では引き続き戦略的な資源投入に注力していくことや販管費の期ずれ計上等を踏まえ、当連結会計年度より増収減益を想定しております。
(建築用資材の製造・販売事業)
鉄骨工事分野において、従来売上を牽引してきた一部の地場案件が減少しましたが、建築金物分野において大型都市開発の案件を中心とした工事が概ね順調に推移し、売上高は前期比29百万円、期初予想比4億10百万円の増収となりました。
その結果、営業利益は期初予想比64百万円の増益となりましたが、販管費の増加をカバーできず前期比1億21百万円の減益となりました。
翌連結会計年度は、鉄骨工事の減少が見込まれるため減収を想定しておりますが、価格転嫁や営業活動の効率化に取り組むことで増益を想定しております。
(建設コンサルタント事業)
当事業では、新型コロナウイルス感染症の影響により海外現地活動が制限されておりましたが、現在は解除されております。当連結会計年度につきましては、独立行政法人国際協力機構(JICA)からの期中受注・消化案件が縮小したことにより、売上高は前期比では29百万円、期初予想比1億53百万円の減収となりました。加えて、設計原価にかかる外注費及び販管費の増加により、営業利益は前期比52百万円、期初予想比95百万円の減益となりました。
独立行政法人国際協力機構(JICA)以外からの案件受注の増加、海外コンサルタント会社との連携及びBIM/CIM適用事業支援業務への本格参入を引き続き推進していきます。
(補修・補強工事業)
国を挙げての社会インフラ老朽化対応により需要は拡大しており、環境面では良好な状況が続いておりますが、採算を重視した選別受注を行っております。当連結会計年度は、期中受注・消化した案件が増加したことにより、売上高は前期比2億7百万円、期初予想比2億87百万円の増収となりました。
利益面では、選別受注による採算向上があったものの、工事中断の影響で遅れていた工事の原価上昇により、営業利益は前期比79百万円、期初予想比98百万円の増益となりました。
本事業は、規模の拡大は人材の数に制約されるため、採用活動と工事職員のスキルアップを強化することにより、案件消化体制の強化を図ります。また、地場企業への営業強化と元請受注の拡充を図ってまいります。
以上の4つの報告セグメントのセグメント利益の合計額は、連結財務諸表上の営業利益と一致しません。差異は調整額となりますが、調整額のうち特に大きな金額となっているのが、報告セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費です。公共投資の予算規模に大きな影響を受ける建設資機材の製造・販売事業に代わる収益事業を創造していくため、当社グループは、研究開発に特に注力しております。当連結会計年度の実績は5億31百万円、売上高の2.0%となっております。
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2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
増減 |
増減率 |
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報告セグメントに帰属しない 研究開発部門の人件費・経費(百万円) |
336 |
346 |
353 |
394 |
531 |
137 |
34.8% |
|
売上高比率 (%) |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
2.0 |
― |
― |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、基礎営業キャッシュ・フロー(営業キャッシュ・フローから運転資本の増減を除いたもの)と資産売却により合計18億87百万円のインフローに対し、投資(ほとんどが製造設備等に対する固定資産投資)11億68百万円と株主還元(配当金)3億90百万円に配分しました。余剰額3億28百万円、運転資本の減少により生じた2億50百万円及び有利子負債の増加による1億36百万円により、現金及び現金同等物等は7億14百万円増加しました。
中期経営計画の初年度において、企業価値向上のための設備投資等に重点的に投資した後においても、フリーキャッシュ・フロー(ここでは、運転資本と定期預金の増減を含まず、株主還元への配分後)はプラスになりました。翌連結会計年度においても、キャッシュのインフローを成長投資に重点的に配分していく方針であります。
(百万円)
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
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基礎営業キャッシュ・フロー |
1,123 |
1,864 |
|
|
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|
資産処分等 |
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314 |
22 |
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①インフロー |
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|
1,437 |
1,887 |
|
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投資 |
固定資産 |
△951 |
△1,163 |
|
|
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|
有価証券他 |
△20 |
△5 |
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|
|
|
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△972 |
△1,168 |
|
|
|
株主還元 |
|
△420 |
△390 |
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②アウトフロー |
|
△1,393 |
△1,559 |
||
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③ネット資金(①+②) |
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44 |
328 |
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④運転資本 |
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△1,761 |
250 |
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⑤有利子負債 |
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1,170 |
136 |
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⑥現金及び現金同等物、定期預金等からの調達 |
△546 |
714 |
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b.財務戦略
資本コストや株価を意識した経営が求められるなか、当連結会計年度に財務戦略を見直し、財務フレームワークを刷新しました。
経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出力と資本効率を高め、持続的な成長と企業価値の向上を資する財務運営を目指します。
当社グループの企業価値の持続的な向上を図っていく財務運営の基本方針は、以下の通りです。
・資本コストを上回るキャッシュ・リターンの確保
・財務の健全性と成長投資を両立させる投下資本のコントロール(最適資本構成)
・キャッシュ・フロー・アロケーション
(資本コストを上回るキャッシュ・リターンの確保)
・企業価値を真に向上させるには、会計上の利益を積み上げるだけでなく、フリーキャッシュ・フローの創出力を高める必要があり、利益の質の向上を意識していきます。
・具体的には、キャッシュ・フローの源泉となる利益については、既存事業の資産収益性による評価を実施し、成長投資を除いたベースで資本コストを上回るリターンを得ているかを見ていきます。ただし、中期経営計画の初期の段階では、そのためのシステムの構築にも注力するため、徐々に精度と運用面を整えていくこととなります。
・事業利益による営業キャッシュ・フローの創出だけではなく、運転資本の効率化等も意識し、キャッシュ・フローの最大化を目指します。
・現預金は、資本コストがかかっている投下資本の運用先でもあり、資産効率性に大きな影響を与えます。今回の財務フレームワークの刷新において、適正な現預金の水準についても一定の目線を設定することとしました。
(適正な現預金の水準)
・現預金の保有目的は、「定常的資金」と「突発的資金」とに分けて考えております。更に「突発的資金」は「突発的な大規模投資資金(突然の大型投資資金需要にも対応しうる資金)」と「突発的な危機対応資金(突然の不測の事態にも困らないだけの安全資金)」に分けられます。
・「定常的資金」は、日々の運転資金として保有すべき現預金と定めており、連結売上高の月商をもとに決めております。この部分については、グループ企業間でのキャッシュ・マネジメント・システムの運用を開始しており、資金の効率性は向上していると考えております。
・「突発的資金」は、「突発的な大規模投資資金」と「突発的な危機対応資金」を合わせて定額を設定しております。「危機対応」と「大規模な投資」は同時に発生することは稀有であること、別々に金額を設定すると多額の現預金が必要となることより、オールタナティブな資金として設定しました。
・当連結会計年度では、この運用を開始したばかりであり、今後この目線を運用しながら、適正な現預金の水準の実現を図っていきたいと考えております。
(運転資本)
・営業キャッシュ・フローの水準は、毎年運転資本の増減に大きく左右される状況となっております。より適切な管理を目指し、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮も含め、方向性を見出していきたいと考えております。「中期経営計画2023-2025」では、サプライチェーンの最適化を目指していくことになっており、将来的には運転資本の圧縮にも効果を期待しております。
(財務の健全性と成長投資を両立させる投下資本のコントロール(最適資本構成))
・最適資本構成は、事業リスクに見合う有利子負債/自己資本の構成比であり、成長戦略をバランスシートでどう支えるか、成長投資を財務の観点からどう規律付けるか、デット・キャパシティをどのようにコントロールするかは、最適資本構成の水準によって決まってくると考えております。
・今回の財務フレームワークでは、想定格付、事業リスクを踏まえた必要自己資本の水準より、最適資本構成としてのD/Eレシオの目線を設定しました。
・当連結会計年度のD/Eレシオは0.55となっており、目線に沿った運用がなされていると評価しております。
(キャッシュ・フロー・アロケーション)
・当社グループは、「中期経営計画2023-2025」の期間を、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間と位置づけており、中期経営計画期間中に獲得したキャッシュ・フローは重点的に成長投資に配分していきます。
・また、新規事業を立上げるための投資は、大規模な投資に耐えうるよう「中期経営計画2023-2025」の期間中は、デット・キャパシティをある程度維持していくことを考えており、今回設定したD/Eレシオ、自己資本比率の目線を沿うかたちで財務の健全性を向上させていく予定です。
・ただし、M&A等により突発的に資金が必要になった場合や新規事業が予定より早く立ち上がる場合等には、その後のキャッシュ・フローを慎重に精査した上で、D/Eレシオの一時的な大幅悪化を許容する場合もあります。
・キャッシュのアロケーションとしての株主還元につきましては、安定配当を重視してまいります。
(株主還元)
・株主還元・配当政策は経営の最重要課題の一つと認識しております。直接的な利益還元(配当)と成長投資による中長期的な株価上昇によるトータルリターンの向上を基本としています。「中期経営計画2023-2025」においても、これまでの中期経営計画の方針を踏襲し、中長期の成長に向けた投資を優先し、長期に亘る成長を確実に配当還元する方針としております。配当につきましては、短期の業績に左右されず、株主資本の成長に合わせ配当金額が増加する株主資本配当率(*)を配当の水準を決定する際の指標としていきます。具体的には、株主資本配当率3.5%を目安としていきます。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
1,614 |
870 |
969 |
|
株主資本 |
(百万円) |
9,839 |
10,320 |
10,897 |
|
1株当たり配当金 |
(円) |
14 |
13 |
13 |
|
配当金総額 |
(百万円) |
421 |
392 |
392 |
|
配当性向(連結) |
(%) |
26.1 |
45.1 |
40.5 |
|
株主資本配当率 |
(%) |
4.28 |
3.80 |
3.60 |
(当連結会計年度の資本効率の状況)
・中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率の向上が不可欠だと考えており、当社グループは連結財務諸表における自己資本当期純利益率(ROE)を「中期経営計画2023-2025」の終了時には5%超とすることを重要な経営指標として掲げております。「中期経営計画2023-2025」は、発電事業をはじめ将来の飛躍的な成長のための研究開発の先行投資が大きく、ROEは大きく低下します。ただし、既存事業でのROEは9%超となると試算しております。当該水準は既存事業に割り振られる株主資本コストを上回る水準と考えております。
・当連結会計年度末のROEは、9.1%と前連結会計年度末の8.6%より増加しました。売上高当期純利益率(ROS)の増加が要因です。ROEの改善のためにはROSの向上が必要と考えており、財務運営としては、投資を急ぐあまり総資産回転率が悪化したり、有利子負債が平時に極端に増えることのないよう今回設定した目線に基づいて運営していく必要がある(財務レバレッジを大きく上げる段階にはない)と考えております。
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(%、倍) |
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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自己資本当期純利益率(ROE) |
|
純利益/自己資本 |
7.4 |
17.3 |
8.6 |
9.1 |
|
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売上高当期純利益率(ROS) |
|
純利益/売上高 |
2.8 |
6.7 |
3.4 |
3.7 |
|
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総資産回転率(分母平均) |
売上高/総資産 |
1.00 |
1.02 |
1.04 |
1.02 |
|
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財務レバレッジ |
|
総資産/自己資本 |
2.67 |
2.53 |
2.42 |
2.43 |
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績や入手可能な情報に基づいておりますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
特記すべき事項はありません。
当社グループは、「建設用資機材の製造・販売」事業において、長年培ってきたプレストレストコンクリート技術を活かして、あらゆる建設分野に当社製品の適用範囲を拡大し、顧客のニーズに応えるべく低価格で安全な製品を社会に提供していくことを基本方針としております。特に自然災害による被害の予防と復旧のための環境・防災技術(地すべり対策・落橋防止システム等)の開発と応用は、高い社会的評価を得ております。今後ますます多様化する社会インフラ事業分野に、当社グループのソフトエンジニアリングを伴った製品の高性能化を推進し、常に世界レベルの技術を意識した社会資本の整備と維持・補修に貢献してまいりたいと考えております。
また、当社グループは現在、超高強度合成繊維補強コンクリート「ESCON」の拡販と用途開発およびCO2・放射線の発生していないエネルギー発電の研究開発を積極的に行っております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1)建設用資機材の製造・販売事業
当セグメントにおきましては、既設基礎構造物の耐震補強技術に関する研究、新しい法面対策工に関する研究、グラウンドアンカーの維持管理に関する研究開発、橋梁関連製品等の研究開発を行っており、当連結会計年度の成果及び内容の主なものは次のとおりであります。
・新しい法面対策工に関する研究・・・法面補強部材の開発
・グラウンドアンカーの維持管理に関する研究・・・荷重監視システムの開発
・補強外ケーブル性能に関する研究・・・高耐久外ケーブルの開発
・変位制限構造用ブラケットの開発・・・変位制限装置関連部材の開発
当連結会計年度に係る研究開発費は
上記のほか、研究開発費は、特定の事業部門に区分できない基礎研究に要した研究開発費が334百万円あります。
なお、建築用資材の製造・販売事業、建設コンサルタント事業、補修・補強工事業においては、研究開発活動を行っておりません。