当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、世界的な視野で建設・建築技術の高性能化を図りながら、市場ニーズに呼応した社会資本の充実、貢献に努めております。
当社は、21世紀のスタート、2001年4月1日に新しい経営理念を掲げました。
変化と新しい価値の創造
顧客に満足される新しい機能の創造
社会、自然環境との調和
社員の個性尊重 -意欲と能力の発揮による各人の豊かさの実現-
Making Changes, Creation of New Values for the Next Stage
当社の製品は、創業以来日本の社会資本の形成に大きく寄与してきたと認識しておりますが、日本経済における社会資本の形成が一段落し、プロダクト・サイクルが成熟期に入ったとの認識のもと、新しい理念は、変化と新しい価値の創造により重点を置くものとなっています。
この理念には、日常生活に身近な社会資本も常に人々の新しい要求に対し変化させなければならない、エスイーグループはコアテクノロジーをもとに長年培ってきた経験を活かし、これからも変化を先取りしながら新しい価値を創造し提供し続けていきたいとの想いが込められています。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社グループの主力事業である建設用資機材の製造・販売事業は、公共投資や建設業界の動向に大きく左右されます。中長期的には、「防災・減災、国土強靭化」、高速道路リニューアル、インフラ老朽化対応等需要面での好環境が続くことが予想されます。反面、これらの好環境の期間は、その終焉後に必要とされる新たな収益の柱となる新事業の創出及び既存事業の収益力の強化のために残された限りある準備期間と考えられます。
そのため、2020年3月には、2030年頃までの環境変化についての洞察を基に、2030年での「ありたい姿」「提供価値」について、「2030ビジョン」を策定しました。「2030ビジョン」実現のため、経営資源の戦略的投入・既存事業基盤の再構築と新たな価値の創造を骨子とした中期経営計画2020-2022を策定し、経営課題の解決に取り組みました。
しかしながら、中期経営計画2020-2022の3ヶ年は、新型コロナウイルス感染症拡大やウクライナ情勢等計画策定時には全く想定していない環境変化が生じ、期間中はそれらの環境変化が計画の遂行に大きな影響を与えました。財務上の数値面での計画比未達以上に、質的な変化を十分果たせなかったことが、大きな課題として残りました。
2022年度後半に、ありたい姿の抽象度が高かった「2030ビジョン」を、具体的な事業開発に結び付くようリニューアルする作業を開始し、その新ビジョンをもとに「中期経営計画2023-2025」を策定し、戦略的資源投入をより強化する計画としました。
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[「中期経営計画2020-2022」の振り返り]
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(百万円) |
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2019年度 |
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2022年度 |
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2022年度 |
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実績 |
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当初目標 |
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実績 |
2019年度比 |
当初目標比 |
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連結売上高 |
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22,839 |
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26,000 |
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25,452 |
+2,613 |
△547 |
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連結経常利益 |
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1,063 |
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1,600 |
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1,376 |
+312 |
△223 |
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親会社株主に帰属する 当期純利益 |
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270 |
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1,023 |
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870 |
+599 |
△152 |
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営業利益率 |
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4.7% |
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6.3% |
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5.3% |
+0.6 |
△1.0 |
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ROE |
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3.2% |
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10.0% |
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8.6% |
+5.4 |
△1.4 |
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戦略的 資源投入 |
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「新たな価値創造」のための研究開発 (人件費・経費)・設備投資 |
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計画 |
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実績 |
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(3ヶ年合計概算額) |
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(3ヶ年合計概算額) |
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25億円 |
→ |
13億円 |
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新たな 価値創造 |
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ESCON |
二次製品開発では、埋設型枠、歩道床版、頭首工用の保護パネルの上市がほぼ予定通り進捗。しかしながら、今後の事業の柱になるには規模が小粒なため、今後は、ESCONスラブ(道路橋床版)等大規模修繕等を中心とした橋梁補修関連に開発資源を集中。 |
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海外 |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、長期に亘る渡航制限や現地活動の制限により、マーケティング活動の遅延。 エスイーグループの製品の海外展開とは別に、国内外の連携によるVJECを活用したBIM/CIM設計支援事業を立案。 |
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プラズマ 発電事業 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により研究開発、及び、資材の調達難により新実験棟の立ち上げが遅延。事業化の詳細決定を2023年度、発電所稼働は2026年度を目標としていたが、複数の発電方式の実証実験の優先順位も含め、工程を大幅に見直し。 |
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その他事業 |
土木分野の新製品の開発が主体で、新規事業の種まきまでに至らず。 |
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既存事業基盤 再構築 |
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工務部を中心とした設計折込体制・技術営業の強化や営業支援システムの導入等は進展。 生産面では、多品種少量生産への適応や技術情報の共有・伝承体制構築に遅れ。システム対応による抜本的な対応が急務。 |
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[2030ビジョン(改訂後)] |
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《2030年度にエスイーグループがありたい姿》 |
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エンジニアリングがつなぐ人とインフラ |
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Engineering With You. |
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私たちエスイーグループは、 |
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1967年の創業以来、耐久性が高く、現場での調整が容易なインフラ資材を開発し、その土地の課題に寄り添い、最適なインフラの構造・資材・施工の組み合わせの実現に貢献してきました。橋をつなぐ、道路をつなぐだけでなく、その場所を周りの地域社会に、人々の暮らしを明日につなぐことにも通じるものでした。 |
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時代は、「気候変動と自然災害」「インフラ老朽化」「少子高齢化や地域間格差」などの社会課題が深刻化し、耐久性の高さや維持管理性は、「サステナブルな社会」の仕組みとして意識されるようになりました。 |
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今まで培った技術とエンジニアリングの力に新しい技術を積極的にクロスさせ、ときには、国内外の技術をオーガナイズし、これからも新たな価値の創造に挑戦し、内外のそこに住む人々のサステナビリティに貢献します。 |
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サステナブルな社会へエスイーがつないでいきます。 |
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[具体的な事業の姿(株式会社エスイー)]
これまでメーカーとして築いてきた事業基盤の上に、デジタルを活用したエンジニアリングサービスを展開し、国内外の防災、インフラの整備・維持管理に向けた幅広い貢献を担う企業となる。
・製品の開発による新分野開拓
官公需の分野内では、土木建設関係・道路・防災から砂防・農水等防災分野の拡大、土木建設関係以外の施設増強まで拡大。
官公需の分野を超えて、民需(交通・インフラ・建築)の鉄道・電力・通信等まで拡大。
・新しいビジネスモデルによる新事業
現在のモノ・製品の製造販売から、労役・サービスの提供(設計事業・施工維持管理支援)、更にはソリューションの提供(維持管理クラウドサービス等の新ビジネスモデル構築)まで拡大。
・海外事業
従来のODA・日系民間案件の建材貿易・ベトナム生産拠点構築に加え、海外事業の出発点としてBIM/CIM設計支援を位置付ける。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
長期ビジョンの実現、その前提となる環境変化に優先的に対処するための中期的な課題は以下のように認識しております。
①国土強靭化等の公共事業予算の追い風のある建設用資機材の製造・販売事業での着実な業容拡大と利益体質の強化
②今後の成長を牽引する新事業、新製品・新サービスなどの新しい価値の創造と早期収益化
③海外関連の事業再構築による業容を拡大
④企業価値向上のための資産効率の向上と経営基盤の強化
⑤建設用資機材の製造・販売事業以外では、
・建築用資材の製造・販売業での利益体質の強化
・建設コンサルタント事業の新たな収益の柱の育成
・補修・補強工事業においては抜本的な拡大策の展開
(4)中期経営計画2023-2025
以上の課題に対処するため、2022年度の後半より「中期経営計画2023-2025」の作成に取り掛かり、2023年5月に公表しております。
①中期経営計画の位置付け
この「中期経営計画2023-2025」の期間は、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、「既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間」と位置づけております。
②基本方針
a)思い切った経営資源の戦略的投入の継続・強化
・・・前中期経営計画期間中に十分に実施できなかった戦略的な資源投入を強化します。先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期に比較し低水準となりますが、戦略的な資源投入により2026年3月期以降の飛躍的な成長を遂げることを狙っていきます。
b)未来に向けた種蒔き
・・・従来より実証試験に注力してきた発電事業への先行投資を継続・強化します。
ESCON事業は、本中期経営計画期間中に橋梁大規模修繕関連の収益化を図り、利用分野を拡大します。新たに実施するBIM/CIM設計支援事業は本中期経営計画期間中にビジネスモデルを定着させ、
拡大を図っていきます。既存事業領域から展開する新規事業等については開発体制の確立に注力し、抜本的に新規事業開発体制を改編していきます。
c)既存業務の土台固め
・・・既存事業の持続可能性を確実なものとし、上記の事業の展開に結び付けるために、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材の定着・確保に向けた教育・評価制度改革等を実施していきます。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標につきましては、先行投資により、本中期経営計画期間中の利益水準は2023年3月期と比べ低い水準となります。2023年5月に公表した時点においては、2026年3月期には報告セグメントに属さない研究開発費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでは増益になる目標を掲げておりました。
そして、前連結会計年度を終えた時点での事業環境を踏まえ、2024年5月に売上高・利益を見直し、下方に修正しております。その時点では、2026年3月期の利益については、報告セグメントに属さない研究開発部門の人件費・経費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルにおいても増益になる計画としておりました(下表をご参照)。
当連結会計年度を終えた時点で改めて計画を見直し、その結果、2026年3月期には、報告セグメントに属さない研究開発費(その多くは発電事業に係るもの)を除いたレベルでも減益の計画となりました。具体的には、建設用資機材の製造・販売事業における事業環境は好調なものの大型案件の端境期となることを主な要因として、売上高・利益を下方に修正しております。
資本効率の向上に係る目標の指標は、自己資本当期純利益率(ROE)としておりますが、上記の利益目標と同様に2023年3月期に比し、大幅な低下となります。
株主還元につきましては、前中期経営計画と同様の方針のもと、株主資本配当率(DOE)(*)としております。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
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基本財務目標 |
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2023年3月期 |
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2026年3月期 |
2026年3月期 (2024年度 見直し) |
当初計画比 |
2026年3月期 (2025年度 見直し) |
当初計画比 |
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A |
B |
B-A |
C |
C-A |
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売上高 |
(百万円) |
25,452 |
|
28,500 |
27,955 |
△545 |
26,500 |
△2,000 |
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経常利益 |
(百万円) |
1,376 |
|
1,205 |
1,010 |
△194 |
438 |
△767 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
870 |
|
743 |
546 |
△197 |
57 |
△685 |
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経常利益 |
(百万円) |
1,770 |
|
1,893 |
1,777 |
△115 |
1,537 |
△356 |
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収益性・配当 |
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営業利益率 |
(%) |
5.3 |
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4.2 |
3.6 |
△0.6 |
1.8 |
△2.4 |
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自己資本当期純利益率(ROE) |
(%) |
8.6 |
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7.0以上 |
5.0 |
△2.0 |
0.5 |
△6.5 |
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株主資本配当率(DOE) |
(%) |
3.8 |
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3.5以上目安 |
3.5以上目安 |
― |
3.5以上目安 |
― |
(1)サステナビリティに関する考え方及び取組
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、世界的な視野で建設・建築技術の高性能化を図りながら、市場ニーズに呼応した社会資本の充実、貢献に努めております。経営にあたり、社会・環境の持続可能性、そして企業としての持続可能性の向上は、常に意識して取り組まなければ重要課題であると認識しています。
当社の経営理念「変化と新しい価値の創造」は、「社会資本は今現在だけでなく、10年、50年、100年と使い続けていくものであり、常に次の世代、一歩先を見据えて社会資本を整備しなければなりません」という認識のもと、創業以来の「事業を通じて社会課題解決に貢献する」というサステナビリティ経営の精神をうたっております。
当社および当社グループは、2020年に2030年に目指す姿として「2030ビジョン:すべての人々にSustainableな発展を」を公表し、「Sustainableな社会の発展に貢献し、自らもSustainableな発展を遂げ、全てのステークホルダーの満足を追求し続けます」と掲げており、サステナビリティを中心とした経営戦略や経営計画を作成し活動してきております。
2023年には2030年ビジョンを目指すべき事業の具体化の観点から刷新し、新しい2030ビジョン「エンジニアリングがつなぐ人とインフラ Engineering With You.」を公表し、今までのインフラ老朽化や国土強靭化、防災といった公共分野だけではなく、もっと広く、人々の生活や自然環境、街づくりをサステナブルなものにしたい、貴方のために貢献したい、という想いを端的に込めたメッセージとしました。
新しいビジョン実現のために、2022年度に取締役会において、2023年4月より開始する新しい中期経営計画の議論を実施し、サステナビリティ関連のリスク及び機会を念頭においた施策、およびその実施状況の管理、手続きについて議論を重ね、「中期経営計画(2023-2025)」を策定しました。
「中期経営計画(2023-2025)」は、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、「既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間」と位置付けております。「既存事業の土台を盤石化」のための施策は、自社のサステナビリティに対するリスクを対処する施策です。既存事業の持続的成長を図るために、生産業務の効率化・技術伝承対策、人材定着・確保に向けた教育・評価改革を主な施策としております。
「未来に向けた種まき」のための施策は、社会のサステナビリティに貢献する機会を捉えた施策です。社会課題解決のために、発電事業・ESCON事業・BIM設計支援事業等の事業展開を図る施策を実施していきます。
なお、現在のサステナビリティへの対応状況は、以下の2点において課題があると認識しており、その課題を解決するために2024年度に「サステナビリティ対応プロジェクト」を立ち上げ、グループ全体のサステナビリティ対応態勢の再構築を図っていくこととしています。
・当社グループのサステナビリティ対応は、歴史的に社会課題の解決(事業機会としての対応)に重きを置く傾向があり、例えば自社の排出する温室効果ガスの測定・削減のような自社のサステナビリティ対応にはこれからの段階のものがあります。
・主要な開示基準が盛んに議論されている今、求められる要件に対応しつつ、さらに充実した開示を行っていく必要があります。サステナビリティへの対応は、ステークホルダーの皆さまに対応状況を理解していただくためには、開示基準で議論されている手法をより意識的に活用しつつ、網羅すべき分野の漏れがないよう、全社的な最重要課題の絞り込み、すなわちマテリアリティ特定とその対応計画立案というプロセスを行う必要があります。
(2)ガバナンス
①執行体制
「中期経営計画(2023-2025)」の施策については、技術開発要素が強い施策については、既存の事業部門の組織とは独立した組織にて、専門技術に基づく研究開発と事業展開をシームレスに実施していく体制とし、それ以外の施策は、当社内でクロスファンクショナルなメンバーによる分科会を組織し、分科会単位で実施しております。分科会の毎月の実施事項についてはそれぞれの業務を所管する本部長が毎月の経営会議に相当する会議に進捗を報告し、最終的には当社COOが全体を統括する形態で施策の確行を図っております。
②監督体制
当社の取締役会は、法令で定められた事項やその他経営に関する重要事項を決定するとともに、取締役の業務執行を監督する機関と位置付けております。「中期経営計画(2023-2025)」の施策をはじめサステナビリティに関する事項においても、規程に沿い重要事項を取締役会で決定しております。また、施策の進捗については、取締役会へ定期的に報告することで監督体制を強化しております。
新中期経営計画の実施過程、内外のサステナビリティの議論の動向、限りある経営資源を前提とした効率的な管理体制構築等の観点から必要と判断した場合には、サステナビリティに特化したガバナンス体制も検討していくこととしております。
なお当社では、「中期経営計画(2023-2025)」において対応すべき社会課題の中で、気候変動は最も重要な課題であると認識しており、前述のとおり気候変動に関する重要な事項は取締役会で検討しております。
(3)リスク管理
サステナビリティに関するリスクおよび機会の特定については、長期ビジョン(「2030ビジョン」)および中期経営計画の策定過程において実施しており、そのプロセスは下記のようになっております。また、リスク管理については、現在の枠組みを活用し、事業等のリスクの一環としての管理を実施するとともに、リスクに対する対応策としての中期経営計画の施策は、中期経営計画での施策の管理の枠組みに沿って管理をしております。
新中期経営計画の実施過程、内外のサステナビリティの議論の動向、限りある経営資源を前提とした効率的な管理体制構築等の観点から必要と判断した場合には、サステナビリティに特化したリスク管理体制も検討していくこととしております。
①リスクと機会を特定、評価するプロセス
当社は、創業以来の「事業を通じて社会課題解決に貢献する」というサステナビリティを意識した経営を行ってきました。
2020年3月に「2030ビジョン」を策定する以前より、下記の社会課題の解決を成長戦略における注力分野としてきました。
[成長戦略の4つの領域(社会的課題)(2019年)]
2020年3月には、2030年頃までの環境変化についての洞察を基に、2030年での「ありたい姿」「提供価値」について、「2030ビジョン」を策定しました。「2030ビジョン」の策定に当たっては、経営企画室においてまとめたSDGsの17の目標および22分野でのメガトレンドを基に、社内の中堅社員の選抜チームが重要と考える分野の抽出・整理を実施し、その分野の将来シナリオを策定した上で機会とリスクを特定・評価しました。更に、パーパス(存在意義)・バリュー(価値観)も踏まえ、「社会課題解決への貢献度」と「自社のありたい姿にとっての重要度」を軸に経営陣との議論を進め、エスイーグループの「ありたい姿」と「提供価値」を内容とする「2030ビジョン」を決定しました。そして、「2030ビジョン」のありたい姿を実現していくための戦略として、「中期経営計画2020-2022」を策定しました。
[2030ビジョンにおける機会とリスクの特定]
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シナリオ |
機会 |
リスク |
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インフラ老朽化 |
・維持管理、更新需要増大 ・地方自治体に支援が必要 |
補修・補強マーケットの拡大 地方自治体への技術支援 |
市場が両極端化し、競争激化 |
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国土強靭化 |
・維持管理、更新需要増大 ・早期回復重視 |
事前保全に一定の需要 早期復旧支援 |
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気候温暖化と エネルギー |
・多様なインフラ需要 ・環境負担増の懸念 |
新たな発電設備本体・送電設備資材の需要 |
温室効果ガス関連規制強化 カーボンプライシング |
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デジタル社会 |
・実用化の時期到来 ・データ蓄積・活用が重要 |
データを活かしたビジネス |
資材企業のマージナル化 (低収益化) データ・ICT対応遅延 (失注) 工場効率化の遅れ |
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グローバル社会 |
・途上国のインフラ需要 ・独自発展、グローバルな 都市間競争 |
途上国のインフラ需要 |
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2022年度後半に、新しい中期経営計画を策定するに際して、2020年に検討したメガトレンド、重要分野の抽出・整理、将来シナリオ、機会とリスクの特定・評価を、新たに選抜した中堅社員により構成されたチームにより点検とリニューアルを実施しました。また、その際に、取引先・協力研究機関(大学の研究室)等へのヒアリングを実施し、エスイーグループに対する期待・要請、優先的に取り組むべき課題についての調査を実施しました。その結果、機会とリスクの特定・評価は引き続き有効とし、機会を活かす事業の解像度を上げることで「2030ビジョン」をリニューアルしました。
②リスクと機会を管理するプロセス
特定されたリスクと機会については、中期経営計画において、その期間中に到達すべきあるべき姿を明確にし、そのあるべき姿のメルクマールとなるKPIを設定し、施策を実行しております。KPIについては毎年あるべき姿のメルクマールとして適切なものとなっているかの観点より見直しを実施しております。
(4)戦略・指標及び目標
中期経営計画では、既存事業により「インフラ老朽化」「国土強靭化」の社会課題解決に貢献するとともに、下記の事業を開発・展開することにより社会課題解決に貢献することを推進していきます。
[社会課題解決に貢献する事業の推進]
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施策 |
社会課題 |
中期経営計画での目標 |
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発電事業 |
気候温暖化とエネルギー |
2028年度頃の事業開始 |
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ESCON事業 (橋梁大規模修繕関連等) |
インフラ老朽化 |
材料販売売上4億円(2025年度) |
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BIM設計支援事業 |
インフラ老朽化 デジタル社会 グローバルインフラ |
VJEC(非連結子会社)当期純利益0.2億円(2025年度) |
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新規事業開発 |
(限定せず) |
社会課題解決に貢献する新事業案2件の確立(2025年度) |
上記の他に自社のサステナビリティを意識した施策として、「生産業務の効率化・技術伝承対策」「人材定着・確保に向けた教育・評価改革」等を推進しております。
なお、2025年3月にサステナビリティ基準委員会(SSBJ)は3つの基準(サステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」・サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」・サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」)を公表しました。適用対象と適用時期につき一定の方向性が見えてきており、具体的な開示すべき内容等も明確化されてきております。
当社グループとしましても、ステークホルダーの皆さまに対応状況を理解していただくためには、開示基準で示されている手法をより意識的に活用しつつ、網羅すべき分野の漏れがないよう、全社的な最重要課題の絞り込み、すなわちマテリアリティ特定とその対応計画立案というプロセスを行う必要があると考えております。そのため、2024年度に「サステナビリティ対応プロジェクト」を立ち上げ、グループ全体のサステナビリティ対応態勢の再構築の検討をスタートさせました。具体的には下記の2点について実施しております。
・マテリアリティ特定プロセスに沿った課題の抽出・検討
・GHG算定プロセスの整備・体制の構築
「マテリアリティ特定プロセスに沿った課題の抽出・検討」につきましては、2025年度が「中期経営計画(2023-2025)」の最終年度であり、次の中期経営計画の策定作業を実施するため、その策定作業の中で具体化させていきます。「GHG算定プロセスの整備・体制の構築」につきましては、対応状況を次項「(5)気候変動への対応」に記載しております。
(5)気候変動への対応
「2030ビジョン」および中期経営計画における対応すべき社会課題の中で、気候変動への対応は最も重要な課題であると認識しております。
①ガバナンス・リスク管理
ガバナンスおよびリスク管理につきましては、上述のサステナビリティ全体と同様の枠組みにて対応しております。
②戦略・指標及び目標
気候変動についても、上述の「(3)リスク管理①リスクと機会を特定、評価するプロセス」に記載しておりますプロセスにより、リスクと機会を特定、評価しております。「(3)リスク管理①リスクと機会を特定、評価するプロセス」において表[2030ビジョンにおける機会とリスクの抽出]にシナリオ・機会・リスクを簡潔に記載しておりますが、現在の一般的な開示方法にまとめ直したのが、下記の表になります。
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リスク/機会 項目 |
内容 |
対応 |
||
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移行 リスク |
政策・法規制 |
炭素税 |
炭素税などが課税された場合操業コストや原材料の高騰によるコスト負担、温室効果ガス削減のための設備投資負担などが発生 |
グループの環境負荷の現状確認・事業成長と環境負荷軽減の両立に向けた適切な削減対象の検討と実施 |
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物理 リスク |
急性 |
激甚災害等の発生 (頻度・程度) |
激甚災害などの発生リスクの高まり、発生時の規模の拡大などによる自社生産拠点や調達先の被災などにより操業停止や工事遅延などの可能性が高まる |
自社拠点、主要サプライヤーの被災リスクなどの確認と事前のBCP、必要に応じた調達体制の見直しなどの検討 |
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慢性 |
平均気温の上昇 |
夏期の高温などでの熱中症の発生リスクの高まりへの対応のなかで作業時間の短縮などによる労働生産性の低下、対策コストの増加などの可能性が高まる |
自社拠点での熱中症対策の適切な実施、作業環境の改善などへの対応 |
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機会 |
製品及び サービス |
脱炭素 エネルギー |
脱炭素社会への移行、GHG削減圧力の高まりなどのなか、脱炭素のエネルギーへのニーズが高まる |
CO2フリー、非化石燃料由来で循環型社会への貢献も可能な発電事業の事業化に向けた対応(中期経営計画で実施中) |
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回復・ レジリエンス |
減災・防災・ 国土強靭化 |
減災・防災・国土強靭化に向けたインフラ整備、補修・補強工事への需要が高まる |
エスイーグループの事業を通して国土強靭化、減災・防災に向けた取組に貢献、ニーズを踏まえた継続的な生産効率化・研究開発の取組(中期経営計画で実施中) |
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<気候関連リスク及び機会・影響 >
当社では気候関連のリスク・機会について、中期経営計画検討時のシナリオを中心に他社事例の分析や各種シナリオなどを踏まえて、移行リスク・機会、物理リスク・機会の特定と影響などを整理しております。
脱炭素社会への移行、省エネルギー化の一層の進展による社会全体でのCO2削減を進めていく上で、現在、進めているCO2フリーの発電システムなどの事業成長の実現が想定されます。一方で、炭素税賦課によるコスト負担の発生などの移行リスクも存在しております。物理リスクという観点では、影響は比較的小さいと考えておりますが、異常気象による洪水、温度上昇による生産性の低下、熱中症対策などのためのコスト増といったリスクなども存在しており、対応についての検討が必要と考えております。
<気候変動リスク・機会への対応>
当社グループでは、こうした移行リスク・物理リスクの最小化、機会の実現などを通した企業価値向上に向け、以下のような対応を実施していきます。
■移行リスクへの対応
今後、脱炭素移行への動きが高まることで想定される炭素税賦課などにより原材料の高騰や製造設備の燃料種転換、設備更新などが進まない場合、炭素税賦課の税率水準にもよりますが、負担増となる可能性があります。自らのGHG排出量削減に向けた取組などを進めていく必要があります。
■物理リスクへの対応
気候変動の影響による気象災害の頻度増・規模拡大などにより洪水の発生リスクは高まる可能性があり、自社拠点や主要サプライチェーンでの被災リスクなどについて検討、しっかりとBCPをたて、リスクの最小化を目指していきます。また、自社拠点での熱中症対応や生産性の低下についても、状況をしっかりと踏まえて適切な対策を進めていきます。
■機会への対応
当社グループでは、気候変動への対応は重要な収益機会と認識しており、以下の戦略・施策を推進していきます。
・ 発電事業:CO2フリーかつ放射線を出さない、原材料全て国内生産、消費地に近い中規模発電所(災害に強いエネルギー)を特長とする発電事業を展開していきます。中期経営計画期間中は実証実験を継続しつつ、事業モデル構築を本格化させ、次期中期経営期間中に国や自治体との折衝、パートナー企業との共同事業化に向けた検討を進め、2028年度頃の発電事業開始を目指しております。
・ 既存事業:既存事業は気候温暖化そのものを収益機会と考えておりませんが、気候温暖化が進むことにより、豪雨災害等が激甚化・頻発化し、その結果への対応としての国土強靭化が必要となります。既存事業のうち、国土強靭化に特に関係の深い建設用資機材の製造・販売事業を中期経営計画最終年度である2025年度の売上高を143億68百万円(中期経営計画の直前期である2022年度比+19%)まで伸長させることを目標としておりましたが、2025年5月公表の2025年度業績予想では売上高を129億9百万円(中期経営計画の直前期である2022年度比+7%)としており、下方修正しております。2025年度が大型案件の端境期となったことが主因です。
<気候関連リスクおよび機会を評価する指標と目標>
・ 機会についての目標及び進捗状況は上述の通りですが、自社グループの事業プロセスにおいて発生する温室効果ガスについては対応が遅れており、目標値の設定に至っておりません。2024年度に実施したサステナビリティ対応プロジェクトにおいて、Scope3までのGHG排出量の算定体制構築をマイルストーン目標とし、実際に算定の想定プロセスを構築し算定を試みましたが、グループ全体で統一的な算定を実施するにはデータ整備状況や手続き等で解決すべき課題が散見されたことにより、2024年中には整備できませんでした。引き続き体制整備を推進し、2025年度中に完了することをマイルストーン目標としています。
[気候変動対応の指標および目標]
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指標および目標 |
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発電事業 |
事業開始 |
2028年度 |
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建設用資機材の製造・販売事業 |
売上高(2025年度) |
129億9百万円 |
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CO2排出量の算定 |
体制構築 |
2025年度中 |
(6)人材育成
人材育成には、さまざまな価値観を持った社員が融合することが重要と考え、積極的に採用活動を行っております。建設業界における慢性的な人手不足や高齢化により、現状においては人的資本の確保・充実策実行が急務であると認識しております。
①人的資本に関する戦略
人的資本に関する戦略につきましては、各グループ会社とも共通の認識はあるもののセグメントの特性ならびに地域性に即した対応を行ってきております。そのなかで発行会社である当社におきましては、人材定着、確保に向けた教育、公平公正で明確な評価制度の採り入れ、若手人材の管理職等重要ポストへの早期登用、女性の管理職登用等を推進しております。
・人材定着・確保に向けた新卒採用戦略
2026年度新卒採用者の確保の戦略といたしましては、昨年度強化いたしました大学研究室との人材交流、研究室訪問による当社事業説明、当社製造工場視察見学会の実施、インターンシップ制度の説明を行いました。その中でもインターンシップ制度においては2026年度の採用に繋げることができております。今後も継続して新卒採用を対象とした案内を強化する方針であり、より多くの学生に対し当社の情報に触れる機会を増やしていくことで、新卒採用としての人材確保を推進しております。
・人材定着、確保に向けた教育訓練の戦略
人材の定着、確保に向けた教育訓練の戦略といたしましては、求める人材の人物像の策定を行うため、各職種ならびに各階層において業務遂行上必要とされる専門知識、基本スキルの特定を行い、現状目指すべき姿に近づけるための教育訓練の構築、導入を推進しております。また、幅広い職種における社員の能力向上を目的とし、資格取得支援制度の案内・活用も推進しております。
人材定着を推進するためのもう一つの施策として、ブラザー・シスター制度ならびに1on1ミーティング制度の導入による働きやすい職場環境作りを掲げており、両制度を活用するための制度運用教育研修を推進しております。
・人材定着、確保に向けた評価制度、給与制度改革の戦略
人材定着・確保に向けた評価制度・給与制度改革の戦略といたしましては、2024年6月に新評価制度へと運用を改定し、従来の評価制度から「管理職」については、管理職として能力評価の向上、目標管理の貢献度評価にウェイトを置くことで実力主義に即した適正な評価形成に移行するものとし、「非管理職」についても自立型人材が企業成長の源泉となるとの考えから、若手社員の早期登用を可能とする評価制度を推進いたしました。
評価制度の改革と並行し、従来の報酬制度から「管理職」については2025年4月より役職と責任に対する妥当な報酬体系を確立し、「評価制度の改革と並行し、「非管理職」にも「管理職」と同様、2025年4月から年俸制給与の運用を開始し、個人の目標と組織の役割を明確にし、それぞれの評価を給与に反映される仕組みを構築いたしました。
②人的資本に関する指標及び目標
「①人的資本に関する戦略」にて述べた事由と同様のため、発行会社である当社にて人的資本に関する指標及び目標を定めております。
[人材育成の指標および目標]
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指標および目標 |
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新卒採用者の確保 |
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新教育訓練体系の再評価 |
新教育訓練体系評価 |
2025年12月 |
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新人事考課制度導入に伴う新給与体制の再評価 |
新給与体系評価 |
2025年12月 |
当社グループの経営成績、財務状況および株価等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、外部環境・内部環境それぞれにおいて、経営方針・経営戦略を実施していく上で重要度の高いものは以下のものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。
外部環境に起因するリスク
①建設投資減少に関するリスク
当社グループの売上高の約6割が、土木を中心とした国内建設市場向けへの販売等によるものであります。中期経営計画の期間中においては、国土強靭化・インフラ耐震化を進めていくために公共投資予算が割り当てられるとみておりますが、長期的には公共投資は漸減傾向となることが予想されます。また、財政健全化等を目的として公共投資が急減する場合や景気後退による民間の設備投資が縮小する可能性があります。度重なる台風災害や地震による災害の影響の激甚化が見られる状況下、これらのリスクが急激に顕在化する可能性は低いとみておりますが、以下の懸念材料より政府の一時的な政策の優先順位の変更等がないとは言えません。これらは当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
・世界的な金利上昇による日本銀行の金融緩和策からの転換(国債の発行余地低下)
・金利上昇による国債利払い費の増加による財政圧迫
・ウクライナ情勢等の影響による日本の安全保障政策の変更(防衛費の増強)
リスクの影響を軽減する方策:新しい収益の柱となる事業の構築、製品種類の分散化、海外展開
②原材料高騰に関するリスク
当社グループの主力製品群は、製造原価の約7割は原材料費となっております。その中でも鉄や鉄を素材とするPC鋼線・線材等市況により大きく価格が変動するものを多く使用しております。
今後、原材料が急騰した場合には、原材料費の上昇により当社の業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、「原材料高騰に関するリスク」につきましては、鋼材等の一部の原材料の価格が高騰しており、仕入価格への影響が出ております。中期経営計画には作成時に合理的に見込まれる影響については対応策とともに織り込んでおります。このリスクの影響を受ける可能性のある当社セグメントは、建設用資機材の製造・販売事業、建築用資材の製造・販売事業、補修・補強工事業であります。
リスクの影響を軽減する方策:販売価格への適正な反映、調達ルートの多様化
③災害に関するリスク
当社グループの製造拠点は全国に点在しております。また、主力のケーブル製品においては製造拠点が山口工場のみとなっております。近年頻発しています集中豪雨や今後発生が想定されています南海トラフ地震等の災害発生が考えられ、いずれかの工場が被災した場合には、操業に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:拠点の分散化、BCPの更新
④海外事業展開に関するリスク
「中期経営計画2023-2025」では、海外での事業展開を積極的に実施していくことを計画しております。特にベトナムではこれまでもエンジニアリング事業を展開してきましたが、建材市場の開拓、グループ企業の連携による設計支援事業の展開にも注力していきます。また長期的にはベトナム以外のアジア市場向けの販売拡大にも注力していきます。海外展開においては、言語、地理的要因、法制度・税制度等各種規制、当局の監督、政情、商慣習の違い等の様々な潜在的リスクが存在します。これらのリスクに対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:情報収集機能の強化、海外管理体系の整備
⑤気候温暖化への対応に関するリスク
中期経営計画では、発電事業等気候温暖化への対応は新たな事業機会としてこれまでも注視してきております。2020年度に入り各国がCO2の排出目標を引き上げ又は早期化する動きが顕著になり、企業としてもより意識的にサステナビリティに向けた対応が必要となります。また、各国の具体的な規制・制限次第では、企業の持続可能性を維持するための負担に大きな影響を与えることになります。また、機関投資家は投資対象のメルクマールに気候温暖化対応を入れる動きや対応状況の開示を求める動きを活発化させております。機関投資家等の開示をめぐる国際的な動きを背景に日本でも開示制度の改訂が進んできております。気候温暖化における事業環境の変化に適切に対応が出来なければ、企業の持続可能性に大きな影響を与えることになります。
リスクの影響を軽減する方策:情報収集と定量的な対応策の検討・実施、適切な開示
⑥感染症の発生・拡大に関するリスク
当社グループは、感染防止策の徹底や在宅勤務を可能にする規程を導入し、感染機会の抑制策を講じております。しかしながら、想定を超える感染症の拡大等により事業活動の停止や生活様式に変化をもたらすような事態が発生した場合は、当社グループの業績及び事業活動の継続に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクの影響を軽減する方策:感染の抑制、在宅勤務の実施
内部環境に起因するリスク
①新規事業投資に関するリスク
長期的な公共投資予算の削減に対応すべく、これまでも新規事業の研究開発に積極的に投資してきました。
「中期経営計画2023-2025」においても、新しい価値の創造に積極的に投資していく計画になっております。当社グループの期待する成果が得られない場合、又は想定しなかった重大な問題が生じた場合等には当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:事業化のステージに応じた投資効率の点検
リスクの影響を軽減する方策:財務的なリスクバッファーとしての自己資本の充実
②人材の確保に関するリスク
当社グループの持続的成長は、土木建築等に係る専門性の高い知識・技術に基づく人材の確保・育成に大きく影響されます。こうした人材の確保・育成が想定通りに進まない場合は当社グループの業績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:人材採用力の強化、働き甲斐の向上(会社と従業員の成長同期感向上)
③仕入製品の減少に関するリスク
当社グループでは、販売する製品付属品の一部を外注業者にて製造しております。外注業者への発注量の管理や財務状況は常時管理しておりますが、これら外注先において信用不安や後継者不足による倒産・廃業が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
リスクを軽減する方策:発注数量の安定化、外注先数の増強
[米国トランプ政権の関税政策について]
当社グループでは米国への製品輸出は今後はいまのところ予定をしておりません。ただし、米国関税が経済全体に与える影響は現時点では合理的に見通すことは困難であるため、現状では計画に織り込んではおりませんが、今後計画等の修正を行う必要が発生した場合は速やかに公表いたします。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の高まり、企業収益の改善等から景気の緩やかな回復基調が見られました。世界経済は、インフレ圧力の緩和が進み、米国は堅調を維持しておりますが、中国では国内需要の低迷により減速が続いており、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化などに加え、米国トランプ政権の政策とその影響への懸念により、景気の先行きは不透明な状況が続いております。為替変動やエネルギー価格及び原材料価格は高止まり、世界経済の減速懸念等により、わが国経済の先行きについても、景気減速のリスクが懸念されております。
当社グループと関係の深い建築・土木市場においては、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等による底堅い公共事業がしばらくは継続するとともに、大型都市開発を中心とした民間建築需要も良好に推移しました。このように需要面では良好な事業環境が続く一方で、エネルギー価格及び原材料価格の高止まりによるコスト増や建設現場における労働者不足が大きな影響を及ぼしております。
このような経営環境のもと当社グループでは、2023年5月に公表した「中期経営計画2023-2025」において、2030年度を見据え、既存事業の土台固めのため生産を含めたサプライチェーンの効率化等を図るとともに、未来に向けた種まきのための実行体制を編成し、施策を確実に実施する体制としております。また、「中期経営計画2020-2022」の中で取り組んでおりました戦略的資源投入につきましては、エネルギー関連事業は次なる研究ステージに進み、海外関連では新たな事業の展開に着手するなど、新しい事業分野への足掛かりを固めるための先行投資を更に強化してまいりました。これらにより、エスイーグループとして持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでおります。また、昨今の原材料価格の上昇に対しては、営業部門と生産部門の連携により調達を最適化するとともに販売価格への転嫁を進めるなど計画利益の確保に努めております。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ9億62百万円減少し254億70百万円となりました。内訳は、流動資産が前連結会計年度末に比べ14億62百万円減少し160億94百万円、有形固定資産が前連結会計年度末に比べ4億69百万円増加し78億80百万円、無形固定資産が前連結会計年度末に比べ0百万円減少し1億52百万円、投資その他の資産が前連結会計年度末に比べ31百万円増加し13億43百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べ11億59百万円減少し142億48百万円となりました。内訳は、流動負債が前連結会計年度末に比べ8億4百万円減少し90億75百万円、固定負債が前連結会計年度末に比べ3億55百万円減少し51億72百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べ1億97百万円増加し112億21百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度は、建設用資機材の製造・販売事業は好調を維持しているものの年度後半には大型案件がなかったこと、建築用資材の製造・販売事業における鉄骨工事分野及び補修・補強工事業にて期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少したこと、建設コンサルタント事業においては、一部案件で工程変更が発生したことが大きく影響したことなどにより、売上高は258億87百万円(前期比2.2%減)と減収となりました。
利益面では、建築用資材の製造・販売事業の鉄骨工事分野における増工の一部が認められなかったことや減収分の減益効果及び中期経営計画の推進強化等による販管費の増加により、営業利益8億49百万円(前期比37.7%減)、経常利益は8億85百万円(前期比35.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億43百万円(前期比43.9%減)となりました。
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
前期比 |
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公表期初予想 |
実績と予想 |
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売上高 (百万円) |
26,474 |
25,887 |
△587 |
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26,435 |
△548 |
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営業利益 (百万円) |
1,364 |
849 |
△515 |
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683 |
+166 |
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営業利益率 (%) |
5.2% |
3.3% |
△1.9 |
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2.6% |
+0.7 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(建設用資機材の製造・販売事業)
この事業では、「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」への対応が進められているなか、橋梁更新工事や豪雨災害などの対策工事が進められております。
当連結会計年度におきましては、高速道路リニューアル関連等を背景に好環境が継続し好調を維持しておりますが、年度後半に大型案件がなかったため、前年同期ほど売上高が伸びませんでした。利益面では、価格転嫁は順調に推移しておりますが、中期経営計画の推進強化に継続して取り組んだことにより人件費・経費等の販管費が増加しました。
この結果、この事業の売上高は125億円(前期比3.0%減)、営業利益8億円(前期比30.7%減)となりました。
(建築用資材の製造・販売事業)
この事業では、建築金物分野におきまして、内装関連は鋼材価格の先行き不透明感や安価な海外製品による競争激化により需要の見極めが難しくなる一方、仮設建材関連は首都圏における都市開発等をはじめ中小物件が高稼働を維持しており工事が順調に推移しております。また、鉄骨工事分野におきましては、一部地場の物件の受注にて価格競争が激しくなっております。
当連結会計年度におきましては、建築金物分野において首都圏の再開発工事が好調に推移したことや原材料価格上昇等の販売価格への転嫁が順調に進捗しました。一方、鉄骨工事分野では期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少し、更に増工の一部が認められないという事象も発生しました。
この結果、この事業の売上高は103億71百万円(前期比0.8%減)、営業利益5億41百万円(前期比2.4%増)となりました。
(建設コンサルタント事業)
この事業では、アフリカ諸国をはじめ、アジア圏・大洋州地域等の各国において、道路・橋梁建設や設備機材整備等のプロジェクトに関わるコンサルタント事業を展開しております。特にフランス語圏のアフリカ諸国では強みをもっており、数多くの実績を残してきております。また、新規分野として国内外におけるBIM/CIM関連技術を活用した業務への参画を目指しております。
当連結会計年度におきましては、期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少したこと及び下半期に予定していた案件が次年度に行程変更となりました。また、独立行政法人国際協力機構(JICA)の精算ガイドライン変更により精算時の減額が発生しました。
この結果、この事業の売上高は6億36百万円(前期比14.8%減)、営業損失は1億円(前期は営業損失18百万円)となりました。
(補修・補強工事業)
この事業では、社会インフラ老朽化対策における橋梁、トンネルの補修・補強工事を推し進めております。国土強靱化対策等が進捗しており、受注環境は引き続き良好に推移しております。
当連結会計年度におきましては、期中受注案件の消化は順調に進捗しましたが、期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少し、更に大型工事の一部で追加工事の増額が認められませんでした。
この結果、この事業の売上高は23億79百万円(前期比0.3%減)、営業利益2億40百万円(前期比9.8%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、以下に記載したキャッシュ・フローにより48億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億35百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、17億5百万円の収入(前連結会計年度末は21億14百万円の収入)となりました。主な資金の増加は、売上債権の減少額が10億2百万円、税金等調整前当期純利益が8億86百万円、減価償却費及びのれん償却額が7億46百万円、主な資金の減少は、仕入債務の減少額が6億21百万円、法人税等の支払額が4億17百万円などであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、8億97百万円の支出(前連結会計年度末は11億45百万円の支出)となりました。主な資金の減少は、有形固定資産の取得による支出が7億54百万円などであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、10億39百万円の支出(前連結会計年度末は2億54百万円の支出)となりました。主な資金の増加は、長期借入れによる収入が11億円、主な資金の減少は、長期借入金の返済による支出15億46百万円、配当金の支払額3億91百万円、短期借入金の減少額1億10百万円などであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
13,556,500 |
△4.35 |
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建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
6,661,522 |
0.67 |
|
建設コンサルタント事業 (千円) |
- |
- |
|
補修・補強工事業 (千円) |
- |
- |
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合計 (千円) |
20,218,022 |
△2.75 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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建設用資機材の製造・販売事業 |
12,048,233 |
△1.85 |
1,738,137 |
△20.64 |
|
建築用資材の製造・販売事業 |
12,044,950 |
34.97 |
2,298,591 |
267.57 |
|
建設コンサルタント事業 |
662,346 |
125.00 |
910,493 |
2.98 |
|
補修・補強工事業 |
2,243,302 |
7.64 |
502,897 |
△21.32 |
|
合計 |
26,998,833 |
14.50 |
5,450,120 |
25.62 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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建設用資機材の製造・販売事業 (千円) |
12,500,160 |
△2.97 |
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建築用資材の製造・販売事業 (千円) |
10,371,703 |
△0.81 |
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建設コンサルタント事業 (千円) |
636,009 |
△14.84 |
|
補修・補強工事業 (千円) |
2,379,577 |
△0.35 |
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合計 (千円) |
25,887,450 |
△2.22 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等
1)財政状態
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ9億62百万円減少しましたが、その内訳は、流動資産が14億62百万円の減少、固定資産が5億円の増加となっております。
流動資産の大幅な減少は、売上高の減少等によって売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産・電子記録債権)が10億2百万円、棚卸資産で2億91百万円、および現金及び預金が2億32百万円減少したことによります。売上債権及び棚卸資産の減少は仕入債務(支払手形及び買掛金と電子記録債務)4億73百万円及び借入金5億56百万円等の減少と見合っております。(*)
固定資産の増加は、工場設備のリニューアル・増強、子会社社屋移設のための土地購入をはじめとする有形固定資産4億69百万円の増加によるものです。これらは現預金2億32百万円の減少及び純資産1億97百万円の増加にほぼ見合っており、調達構造として問題ないものです。
資産の残高ベースのリスク許容度(リスク資産に対して十分なエコノミック・キャピタルを有しているか)については、有形固定資産と投資有価証券の合計額81億78百万円に対し、自己資本(純資産-非支配株主持分)が111億97百万円あることにより、リスク資産に対するバッファー(エコノミック・キャピタル)は十分にある状態になっていると考えております。また、有利子負債は、前連結会計年度末60億74百万円から5億72百万円減少し、自己資本比率は41.6%から2.4ポイント増加し44.0%となり、D/Eレシオは0.55から0.06低下し0.49となりました。当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益により積み上がった内部留保は、財務内容の健全性の向上に寄与するものとなったと判断しております。
(*)運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、57億57百万円から49億43百万円と8億13百万円減少しました。
(単位:百万円)
|
資産 |
負債 |
||||||||||||
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2024年 |
2025年 |
増減 |
2024年 |
2025年 |
増減 |
||||||||
|
3月末 |
3月末 |
3月末 |
3月末 |
||||||||||
|
26,432 |
25,470 |
|
|
(主な内訳) |
|
15,408 |
14,248 |
|
|
(主な内訳) |
|
||
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△232 |
現金及び預金 |
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△556 |
借入金 |
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||||
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△804 |
受取手形、売掛金及び契約資産 |
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△394 |
電子記録債務 |
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||||
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△198 |
電子記録債権 |
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△78 |
支払手形及び 買掛金 |
|
||||
|
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△153 |
仕掛品 |
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△137 |
原材料及び貯蔵品 |
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△1,159 |
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純資産 |
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+234 |
建設仮勘定 |
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2024年 |
2025年 |
増減 |
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+175 |
土地 |
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3月末 |
3月末 |
|||||||
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+42 |
機械装置及び運搬具 -純額 |
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11,024 |
11,221 |
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(主な内訳) |
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+38 |
建物及び構築物-純額 |
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+543 |
親会社株主帰属 当期純利益 |
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△392 |
株主配当金支払い |
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△962 |
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+197 |
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リスクバッファーとしての自己資本が問題のない水準と考えられる一方で、資本の効率性の観点では、財務レバレッジを上げる余地についての分析も必要と考えております(後述「資本効率の持続的な向上」の項をご参照下さい)。当連結会計年度末での財務レバレッジは2.33であり、前連結会計年度末の2.43から0.09減少しております。今後実際に機動的な資金調達(大型の設備投資やM&A)を実施していくためには、平時には有利子負債による調達余地を残しておく必要があり、外部格付機関が発表している格付別財務指標を鑑みれば自己資本比率は望ましい水準の範囲内と考えております。従って、財務レバレッジを現時点で大きく引き上げることは優先度としては高くなく、当連結会計年度末の水準は妥当な水準と考えております。
2)経営成績
前連結会計年度との比較では下記のように分析しております。
連結売上高は5億87百万円減少しました。セグメント別の内訳は、建設用資機材の製造・販売事業のセグメントにおいて3億83百万円と大きく減少したことに加え、建設コンサルタント事業のセグメントで1億10百万円減少、建築用資材の製造販売事業のセグメントで85百万円減少しました。減少の主な要因は、建設用資機材の製造・販売事業は好調を維持しているものの年度後半には大型案件がなかったこと、建築用資材の製造・販売事業における鉄骨工事分野及び補修・補強工事業にて期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少したこと、建設コンサルタント事業においては、JICA案件を中心とした期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少し、また一部案件で工程変更が発生したことなどによるものです。
連結売上総利益は2億65百万円減少し、売上高総利益率は0.4%減少しました。減少の主な要因は、減収分の減益効果や建築用資材の製造・販売事業の鉄骨工事分野における増工の一部が認められなかったことによるものです。
販売費及び一般管理費は、中期経営計画関連施策の推進を中心とした人件費・経費の増加などにより2億49百万円の増加となりました。
以上の結果、営業利益は5億15百万円の減少、経常利益は4億88百万円の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は4億26百万円減少となりました。
当連結会計年度は、「中期経営計画2023-2025」の2年目に当たります。当連結会計年度の売上高は5億48百万円の計画未達で終わりました。セグメント別では、主要セグメントである建設用資機材の製造・販売事業が8億62百万円の未達となり、その主な要因は、当初予定していた能登震災復興案件が、9月に発生した能登半島豪雨の影響で工程見直しとなったことにより、製品納入が翌期以降に繰り越しとなったことなどによるものです。
連結売上総利益は19百万円の未達、売上高総利益率は計画を0.5%上回りました。建設コンサルタント事業において一部案件の次年度への繰越などによって売上高が減少したことが計画未達の主な要因です。
販売費及び一般管理費は、計画では戦略的な先行投資を大胆に実施していくことを織り込み、前連結会計年度比で4億35百万円増加する計画でしたが、物流の2024年問題を考慮した計画ほど販売運賃が積み上がらなかったこと、人材の採用が予定通り進まなかったこと等により前連結会計年度比2億49百万円の増加に止まり、期初予想比では1億85百万円少なくなりました。その中には戦略的な先行投資の位置付けである報告セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費の未達66百万円が含まれております。
以上の結果、連結営業利益は期初予想比1億66百万円の超過となりました。期初予想比大幅増益とは言え、戦略的な先行投資の研究開発及び人材の調達が遅れるなど、将来を見据えた先行投資の面では課題を残す結果となりました。
(単位:百万円)
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2025年3月期 |
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(実績) |
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2024年3月比 |
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期初予想(*)比 |
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売上高 |
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25,887 |
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△587 |
|
△548 |
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|
建設用資機材 |
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|
12,500 |
|
△383 |
|
△862 |
|
|
上記以外 |
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13,387 |
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△204 |
|
314 |
|
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|
売上総利益 |
|
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6,916 |
|
△265 |
|
△19 |
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売上高総利益率 |
|
|
26.7% |
|
△0.4% |
|
0.5% |
|
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|
先行投資(研究開発) |
|
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601 |
|
69 |
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△66 |
|
販売管理費 |
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|
6,067 |
|
249 |
|
△185 |
|
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|
営業利益 |
|
|
849 |
|
△515 |
|
166 |
|
|
売上高営業利益率 |
|
|
3.3% |
|
△1.9% |
|
0.7% |
|
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|
経常利益 |
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885 |
|
△488 |
|
200 |
|
|
売上高経常利益率 |
|
|
3.4% |
|
△1.8% |
|
0.8% |
|
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|
|
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|
|
|
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|
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
|
|
543 |
|
△426 |
|
242 |
|
|
売上高当期純利益率 |
|
|
2.1% |
|
△1.6% |
|
1.0% |
|
|
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|
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建設用資機材の 製造・販売事業 |
売上高 |
|
12,500 |
|
△383 |
|
△862 |
|
|
営業利益 |
|
800 |
|
△355 |
|
234 |
||
|
利益率 |
|
6.4% |
|
△2.6% |
|
2.2% |
||
|
|
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|
|
|
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|
|
建築用資材の 製造・販売事業 |
売上高 |
|
10,371 |
|
△85 |
|
398 |
|
|
営業利益 |
|
541 |
|
12 |
|
△30 |
||
|
利益率 |
|
5.2% |
|
0.2% |
|
△0.5% |
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
建設コンサルタント事業 |
売上高 |
|
636 |
|
△110 |
|
△263 |
|
|
営業利益 |
|
△100 |
|
△82 |
|
△155 |
||
|
利益率 |
|
- |
|
- |
|
- |
||
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
補修・補強工事業 |
売上高 |
|
2,379 |
|
△8 |
|
179 |
|
|
営業利益 |
|
240 |
|
△26 |
|
32 |
||
|
利益率 |
|
10.1% |
|
△1.1% |
|
0.6% |
||
(※)2024年5月公表
各セグメント別の課題解決状況を踏まえた分析は以下の通りです。
(建設用資機材の製造・販売事業)
国土強靭化、高速道路耐震化、インフラ老朽化対応のため需要の拡大が続くと予想し、その需要を確実に売上高に結びつける営業活動を実施しました。高速道路リニューアル関連等を背景に好環境が継続し好調を維持しておりますが、年度後半に大型案件がなかったため、前年同期ほど売上高が伸びず、当連結会計年度の売上高は前期比3億83百万円の減収、営業利益は前期比3億55百万円の減益となりました。また、当初予定していた能登震災復興案件が、9月に発生した能登半島豪雨の影響で工程見直しとなったことで、製品納入が翌期以降に繰り越しとなったことにより、期初予想比では売上高は8億62百万円の減収となりましたが、営業利益は物流の2024年問題を考慮した計画ほど販売運賃が上がらなかったこと、人材の採用が予定通り進まなかったこと等により期初予想比2億34百万円の増益となりました。
今後につきましては、ケーブル製品分野及び鉄鋼製品分野等において良好な事業環境が続くと思われ、今後も確実に成果に結びつけていくこと、実施した先行投資を確実に事業基盤の強化に結びつけていくことが必要となります。また、中期経営計画の課題である需要拡大及び製品の多品種化への製造面での対応、新商品・新製品の開発にも引き続き取り組んでいく計画です。
なお、翌連結会計年度においては、良好な事業環境が継続する一方で、大型案件の端境期にあるため、能登震災復興案件の取り込みや、ESCON(材料)、新規事業の販売を拡大することでカバーし、増収を目指します。また、費用面では人材採用をはじめとした戦略的資源投入を継続していくことを踏まえ減益を想定しております。
(建築用資材の製造・販売事業)
建築金物分野において首都圏の再開発工事が好調に推移したことや原材料価格上昇等の販売価格への転嫁が順調に進捗しました。一方、鉄骨工事分野では期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少し、更に増工の一部が認められず、売上高は前期比85百万円の減収、営業利益は前期比12百万円の増益となりました。期初予想比では、鉄骨事業分野で期中受注案件の消化が好調となり、売上高3億98百万円の増収となりましたが、案件採算の低下により営業利益は期初予想比30百万円の減益となりました。
翌連結会計年度は、価格転嫁や販路の拡張、選別受注による営業活動の効率化に取り組むことで増益を想定しております。
(建設コンサルタント事業)
当連結会計年度につきましては、期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少したこと及び下半期に予定していた案件が次年度に工程変更となりました。また、独立行政法人国際協力機構 (JICA) の精算ガイドライン変更により精算時の減額が発生しました。それにより、売上高は前期比では1億10百万円、期初予想比2億63百万円の減収となり、営業利益は前期比82百万円、期初予想比1億55百万円の減益となりました。
独立行政法人国際協力機構(JICA)以外からの案件受注の増加、海外コンサルタント会社との連携及びBIM/CIM適用事業支援業務への本格参入を引き続き推進していきます。
(補修・補強工事業)
この事業では、社会インフラ老朽化対策における橋梁、トンネルの補修・補強工事を推し進めております。国土強靱化対策等が進捗しており、受注環境は引き続き良好に推移しております。当連結会計年度は、期中受注案件の消化は順調に進捗しましたが、期初受注案件の減少に伴い案件消化が減少し、更に大型工事の一部で追加工事の増額が認められませんでした。この結果、売上高は前期比8百万円の減収、営業利益は前期比26百万円の減益となりました。期初予想比では、期中受注が順調に推移したことで売上高は1億79百万円の増収となり、営業利益は32百万円の増益となりました。
本事業は、規模の拡大は人材の数に制約されるため、採用活動と工事職員のスキルアップを強化することにより、案件消化体制の強化を図ります。また、地場企業への営業強化と元請受注の拡充を図ってまいります。
以上の4つの報告セグメントのセグメント利益の合計額は、連結財務諸表上の営業利益と一致しません。差異は調整額となりますが、調整額のうち特に大きな金額となっているのが、報告セグメントに帰属しない研究開発部門の人件費・経費です。公共投資の予算規模に大きな影響を受ける建設資機材の製造・販売事業に代わる収益事業を創造していくため、当社グループは、研究開発に特に注力しております。当連結会計年度の実績は6億1百万円、売上高の2.3%となっております。
|
|
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
2025年 3月期 |
増減 |
増減率 |
|
報告セグメントに帰属しない 研究開発部門の人件費・経費(百万円) |
346 |
353 |
394 |
531 |
601 |
69 |
13.1% |
|
売上高比率 (%) |
1.5 |
1.5 |
1.5 |
2.0 |
2.3 |
- |
- |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、基礎営業キャッシュ・フロー(営業キャッシュ・フローから運転資本の増減を除いたもの)と資産売却により合計13億22百万円のインフローに対し、投資(ほとんどが製造設備等に対する固定資産投資)9億3百万円と株主還元(配当金)3億91百万円に配分しました。余剰額27百万円、運転資本の減少により生じた3億92百万円及び有利子負債の減少による6億48百万円により、現金及び現金同等物等は2億29百万円減少しました。
中期経営計画の2年目において、企業価値向上のための設備投資等に重点的に投資した後においても、フリーキャッシュ・フロー(ここでは、運転資本と定期預金の増減を含まず、株主還元への配分後)はプラスになりました。翌連結会計年度においても、キャッシュのインフローを成長投資に重点的に配分していく方針であります。
(百万円)
|
|
|
|
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
|
|
|
基礎営業キャッシュ・フロー |
1,864 |
1,313 |
|
|
|
|
資産処分等 |
|
22 |
8 |
|
①インフロー |
|
|
1,887 |
1,322 |
|
|
|
|
投資 |
固定資産 |
△1,163 |
△886 |
|
|
|
|
有価証券他 |
△5 |
△17 |
|
|
|
|
|
△1,168 |
△903 |
|
|
|
株主還元 |
|
△390 |
△391 |
|
②アウトフロー |
|
△1,559 |
△1,294 |
||
|
|
|
|
|
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|
|
③ネット資金(①+②) |
|
328 |
27 |
||
|
|
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|
|
|
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④運転資本 |
|
|
250 |
392 |
|
|
|
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|
|
|
|
|
⑤有利子負債 |
|
|
136 |
△648 |
|
|
⑥現金及び現金同等物、定期預金等からの調達 |
714 |
△229 |
|||
b.財務戦略
資本コストや株価を意識した経営が求められるなか、前連結会計年度に財務戦略を見直し、財務フレームワークを刷新しました。
経営資本の適正配分により、将来キャッシュ・フローの創出力と資本効率を高め、持続的な成長と企業価値の向上に資する財務運営を目指します。
当社グループの企業価値の持続的な向上を図っていく財務運営の基本方針は、以下の通りです。
・資本コストを上回るキャッシュ・リターンの確保
・財務の健全性と成長投資を両立させる投下資本のコントロール(最適資本構成)
・キャッシュ・フロー・アロケーション
(資本コストを上回るキャッシュ・リターンの確保)
・企業価値を真に向上させるには、会計上の利益を積み上げるだけでなく、フリーキャッシュ・フローの創出力を高める必要があり、利益の質の向上を意識していきます。
・具体的には、キャッシュ・フローの源泉となる利益については、既存事業の資産収益性による評価を実施し、成長投資を除いたベースで資本コストを上回るリターンを得ているかを見ていきます。
・事業利益による営業キャッシュ・フローの創出だけではなく、運転資本の効率化等も意識し、キャッシュ・フローの最大化を目指します。
・現預金は、資本コストがかかっている投下資本の運用先でもあり、資産効率性に大きな影響を与えます。適正な現預金の水準についても一定の目線を設定しております。
(適正な現預金の水準)
・現預金の保有目的は、「定常的資金」と「突発的資金」とに分けて考えております。更に「突発的資金」は「突発的な大規模投資資金(突然の大型投資資金需要にも対応しうる資金)」と「突発的な危機対応資金(突然の不測の事態にも困らないだけの安全資金)」に分けられます。
・「定常的資金」は、日々の運転資金として保有すべき現預金と定めており、連結売上高の月商をもとに決めております。この部分については、グループ企業間でのキャッシュ・マネジメント・システムの運用を開始しており、資金の効率性は向上していると考えております。
・「突発的資金」は、「突発的な大規模投資資金」と「突発的な危機対応資金」を合わせて定額を設定しております。「危機対応」と「大規模な投資」は同時に発生することは稀有であること、別々に金額を設定すると多額の現預金が必要となることにより、オールタナティブな資金として設定しました。
・この目線を運用しながら、適正な現預金の水準の実現を図っていきたいと考えております。
(運転資本)
・営業キャッシュ・フローの水準は、毎年運転資本の増減に大きく左右される状況となっております。より適切な管理を目指し、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮も含め、方向性を見出していきたいと考えております。「中期経営計画2023-2025」では、サプライチェーンの最適化を目指していくことになっており、将来的には運転資本の圧縮にも効果を期待しております。
(財務の健全性と成長投資を両立させる投下資本のコントロール(最適資本構成))
・最適資本構成は、事業リスクに見合う有利子負債/自己資本の構成比であり、成長戦略をバランスシートでどう支えるか、成長投資を財務の観点からどう規律付けるか、デット・キャパシティをどのようにコントロールするかは、最適資本構成の水準によって決まってくると考えております。
・今回の財務フレームワークでは、想定格付、事業リスクを踏まえた必要自己資本の水準より、最適資本構成としてのD/Eレシオの目線を設定しました。
・当連結会計年度のD/Eレシオは0.49となっており、目線に沿った運用がなされていると評価しております。
(キャッシュ・フロー・アロケーション)
・当社グループは、「中期経営計画2023-2025」の期間を、「2030ビジョン」のありたい姿実現に向けて、既存事業の土台を盤石にしつつ、未来に向けた種まきをする期間と位置づけており、中期経営計画期間中に獲得したキャッシュ・フローは重点的に成長投資に配分していきます。
・また、新規事業を立ち上げるための投資は、大規模な投資に耐えうるよう「中期経営計画2023-2025」の期間中は、デット・キャパシティをある程度維持していくことを考えており、今回設定したD/Eレシオ、自己資本比率の目線に沿うかたちで財務の健全性を向上させていく予定です。
・ただし、M&A等により突発的に資金が必要になった場合や新規事業が予定より早く立ち上がる場合等には、その後のキャッシュ・フローを慎重に精査した上で、D/Eレシオの一時的な大幅悪化を許容する場合もあります。
・キャッシュのアロケーションとしての株主還元につきましては、安定配当を重視してまいります。
(株主還元)
・株主還元・配当政策は経営の最重要課題の一つと認識しております。直接的な利益還元(配当)と成長投資による中長期的な株価上昇によるトータルリターンの向上を基本としています。「中期経営計画2023-2025」においても、これまでの中期経営計画の方針を踏襲し、中長期の成長に向けた投資を優先し、長期に亘る成長を確実に配当還元する方針としております。配当につきましては、短期の業績に左右されず、株主資本の成長に合わせ配当金額が増加する株主資本配当率(*)を配当の水準を決定する際の指標としていきます。具体的には、株主資本配当率3.5%を目安としていきます。
(*)株主資本配当率=配当金総額÷期末株主資本(新株式払込金を除く)×100
|
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
870 |
969 |
543 |
|
株主資本 |
(百万円) |
10,320 |
10,897 |
11,049 |
|
1株当たり配当金 |
(円) |
13 |
13 |
13 |
|
配当金総額 |
(百万円) |
392 |
392 |
392 |
|
配当性向(連結) |
(%) |
45.1 |
40.5 |
72.2 |
|
株主資本配当率 |
(%) |
3.80 |
3.60 |
3.55 |
(当連結会計年度の資本効率の状況)
・中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率の向上が不可欠だと考えておりますが、当連結会計年度末のROEは4.9%と前連結会計年度の9.1%より大幅に減少しました。売上高当期純利益率(ROS)の減少が要因です。ROEの改善のためにはROSの向上が必要と考えており、財務運営としては、投資を急ぐあまり総資産回転率が悪化したり、有利子負債が平時に極端に増えることのないよう設定した目線に基づいて運営していく必要がある(財務レバレッジを大きく上げる段階にはない)と考えております。
|
|
|
|
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|
|
|
(%、倍) |
|
|
|
|
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
自己資本当期純利益率(ROE) |
|
純利益/自己資本 |
17.3 |
8.6 |
9.1 |
4.9 |
|
|
|
売上高当期純利益率(ROS) |
|
純利益/売上高 |
6.7 |
3.4 |
3.7 |
2.1 |
|
|
総資産回転率(分母平均) |
売上高/総資産 |
1.02 |
1.04 |
1.02 |
1.00 |
|
|
|
財務レバレッジ |
|
総資産/自己資本 |
2.53 |
2.42 |
2.43 |
2.33 |
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断は、過去の実績や入手可能な情報に基づいておりますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果はこれらと異なる場合があります。
特記すべき事項はありません。
当社グループは、「建設用資機材の製造・販売」事業において、長年培ってきたプレストレストコンクリート技術を活かして、あらゆる建設分野に当社製品の適用範囲を拡大し、顧客のニーズに応えるべく低価格で安全な製品を社会に提供していくことを基本方針としております。特に自然災害による被害の予防と復旧のための環境・防災技術(地すべり対策・落橋防止システム等)の開発と応用は、高い社会的評価を得ております。今後ますます多様化する社会インフラ事業分野に、当社グループのソフトエンジニアリングを伴った製品の高性能化を推進し、常に世界レベルの技術を意識した社会資本の整備と維持・補修に貢献してまいりたいと考えております。
また、当社グループは現在、超高強度合成繊維補強コンクリート「ESCON」の拡販と用途開発およびCO2・放射線の発生していないエネルギー発電の研究開発を積極的に行っております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1)建設用資機材の製造・販売事業
当セグメントにおきましては、既設基礎構造物の耐震補強技術に関する研究、新しい法面対策工に関する研究、グラウンドアンカーの維持管理に関する研究開発、橋梁関連製品等の研究開発を行っており、当連結会計年度の成果及び内容の主なものは次のとおりであります。
・新しい法面対策工に関する研究・・・法面補強部材の開発
・グラウンドアンカーの維持管理に関する研究・・・荷重監視システムの開発
・補強外ケーブル性能に関する研究・・・高耐久外ケーブルの開発
・変位制限構造用ブラケットの開発・・・変位制限装置関連部材の開発
当連結会計年度に係る研究開発費は
上記のほか、研究開発費は、特定の事業部門に区分できない基礎研究に要した研究開発費が408百万円あります。
なお、建築用資材の製造・販売事業、建設コンサルタント事業、補修・補強工事業においては、研究開発活動を行っておりません。