文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
脱炭素社会の形成に向けた企業の社会的責任の高まりやAI、IoTの加速度的普及等、社会環境が急速に変化する一方、国内外経済は新型コロナウイルス感染症の世界的拡大や変異株の出現、さらにはウクライナ問題を契機とした地政学的リスクの顕在化等により、先行き不透明な状況が続いております。また、資源、エネルギー価格の高騰による経済への悪影響が懸念される状況にあります。
当社グループ事業に関しては、金属チタン需要は大きく落ち込みを見せた2020年度以降回復傾向で推移し、触媒や化学品の需要も総じて堅調である一方、自助努力によるコスト削減だけでは補え切れない原料、資材、電力、輸送コスト等の高騰が顕著となっております。
こうした中、当社グループとしては、製品毎の顧客ニーズに的確に対応しつつ、コスト管理を徹底するとともに、コスト高騰を反映した適正な販売価格の実現に取り組んでまいります。
セグメントごとの具体的な経営環境につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析 (1) 経営成績等の概要並びにそれらに関する認識及び分析・検討内容」に記載しております。
こうした状況のもと、当社グループは、2030年のありたい姿の実現に向け、下図のとおり中長期経営方針を定めました。金属チタン事業に加え、チタンとその関連技術を中核とする複数のダウンストリーム事業を有する高収益素材メーカーを目指してまいります。

(4) 中期経営計画について
当社グループは、2020年11月において、前記の中長期経営方針を踏まえ、2020年度を初年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しました。
(ⅰ)中期経営計画における基本戦略
2020年度-2022年度の3ヶ年は、新たな成長に向けた変革を実現する時期と捉えており、具体的に以下の4点を基本戦略とし、持続的な成長と企業価値の向上を実現してまいります。
また、近年、企業が求められる「E」:Environment(環境)、「S」:Social(社会)、「G」:Governance(企業統治)に関する対応等の社会的要請に真摯に応えるため、当社グループは2022年度、新たに5番目の基本戦略として
5.ESG経営の推進
を加え、これを根付かせるための体制構築及び諸施策の展開を本格的に開始しております。なお、このESG経営の推進については、(6)ESG経営の推進をご覧ください。
(ⅱ)セグメント別の課題及び施策
各セグメント毎の課題及び施策は、以下のとおりであります。
・金属チタン事業…中核課題:コロナ禍からの早期回復と収益力の抜本的改善
・触媒事業…中核課題:さらなる事業拡大の追求、市場の伸びを上回る成長の実現
・化学品事業…中核課題:さらなる事業拡大の追求、市場の伸びを上回る成長の実現
・新規事業、技術開発
(ⅲ)主要計画数値
2020年11月公表の中期経営計画最終年度(2022年)の主要計画数値は、以下のとおりであります。
計画では、資本効率向上の観点から、自己資本利益率(ROE)を最も重要な経営指標と位置付けており、10%を上回るべく改善を図ることとしておりました。
なお、現在、金属チタン事業は航空機向けスポンジ輸出量の回復を主因に販売量は総じて好調に推移しており、中期計画で想定した数値を上回ることが想定されており、また触媒事業や化学品事業の販売も引き続き好調を維持するものと見込んでおります。これを受け、2022年5月10日時点で見直した中期計画最終年度である2022年度の主要計画数値は以下のとおりであります。
なお、本計画数値(2020年11月公表)達成の前提となる3ヶ年累計の設備投資・投融資は、以下のとおり計画しておりましたが、現在、ほぼ計画通り進捗しております。

(5) 優先的に対処すべき課題
前記の中期経営計画のもと、当社グループは、以下に記載する当面の課題に優先的に取り組み、事業基盤の確立を目指してまいります。
若松工場に建設した超微粉ニッケル第4工場は、2021年度上期中に顧客認定を取得し、下期から量産体制に移行しております。今後はその操業の安定化・最適化を図るとともに、既存工場と合わせた全社的な効率的生産体制の確立に取り組んでまいります。また、茅ヶ崎工場に建設中の触媒新工場について、2022年11月の商業生産開始に向けて着実に計画を進め、触媒の生産・販売量の拡大を図ってまいります。
サウジアラビアにおけるスポンジチタン製造合弁会社については、安全・安定操業の実現とコスト低減とともに、金属チタン需要が回復傾向にある中、生産量の引上げが重要課題となっております。同社のキャッシュ・フローの改善と早期収益化を図るべく、当社として、これらの課題に関わる同社の取組みを積極的に支援してまいります。
茅ヶ崎工場において、環境対策強化、労働環境改善、分析評価機能強化等を目的とする投資を順次進めております。これらを計画どおり着実に進めることで、事業基盤の強化を図ってまいります。
2020-2022年度中計に基づき新規事業開発体制の強化を進めており、社会動向を当社が有する技術シーズと結び付けることで、次世代の柱となる新規事業を探索・育成する取組みを加速してまいります。また、AI、IoT等の新技術の生産プロセスへの活用を進めることで、競争力強化を図ってまいります。
(6) ESG経営の推進
当社グループは、先に掲げた「経営理念」に基づいて、「E」「S」「G」の視点で、事業活動を通して自社とステークホルダーを取り巻く重要な諸課題の解決に取り組み、社会の持続的な発展に貢献し、長期的な企業価値の向上を目指すことを基本方針とし、これを当社の「ESG経営」と定義付けしています。2021年7月ESG推進部を設置し、推進体制の構築・整備に着手し、2022年4月に基本方針を制定する等、全社的な取組みを開始しました。
この方針に基づいて、当社グループの「経営理念」、「行動基本方針」、「中長期基本方針」及び国際的なガイドライン(GRI、SASBなど)を参考に、まず初めに重要性の高い社会課題を、以下のように取り組むべきマテリアリティとして特定しております。特に2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、チタン新製錬技術の開発に注力するほか、CO2削減に向けた各種施策を推進するなど、持続的な企業価値の向上に取り組んでまいります。
なお、これらマテリアリティの取組み状況やKPIの達成状況等については、2022年5月新たに設置されたESG推進委員会が、取り組み項目毎に「E」「S」「G」の各分科会を通じて連携する既存の各種委員会から情報の提供を受け、取り纏めて定期的に取締役会に報告する体制を計画しています。
この推進体制やマテリアリティの取組み状況及びKPIの達成状況等については、今後、統合報告書や当社ホームページにて情報開示してまいります。

このうち「Environment(環境)」に関しては、国際社会において急速に2050年カーボンニュートラルへの要請が高まり、今後競争ルールの変更を伴う社会システムの変化が予測される状況にあります。
かかる状況下、当社は、チタンの新製錬技術を中核とした施策により、2030年にCO2排出量を2018年度比で40%削減し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指す、カーボンニュートラルビジョンを2021年5月に策定し、公表いたしました。そこで示す2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップは次のとおりです。

また、現在実施中の主な取組み施策は次のとおりです。
1. チタン新製錬技術
チタン新製錬技術は、当社の2050年カーボンニュートラル達成に向けた中核技術であり、現在、パイロット規模の試験に着手した段階にあります。今後は、パイロット試験を継続し、工業化を目指した課題の抽出及び対応を行うとともに、鉱石等の原材料製造メーカー(上工程)や、板や棒など最終チタン製品を製造する展伸材メーカー(下工程)と連携し、一貫でのCO2排出量削減や、リサイクルによる廃棄物削減技術の開発にも取組み、カーボンフリーチタンの実現を目指します。
当社は、2021年度より茅ヶ崎工場及び若松工場の一部と日立工場の電力にCO2フリー電力を導入いたしました。
また、2022年4月からは、茅ヶ崎工場の高純度金属事業に導入します。今後は、他工場にもCO2フリー電力導入を推進し、CO2排出量削減を進めていきます。

茅ヶ崎工場は、2021年1月より触媒及び化学品事業でカーボンニュートラル LNG(以下「CNL」)を導入していますが、2022年1月からは、チタン事業でもCNLを導入することで茅ヶ崎工場の都市ガスは全てCNLとなり、年間約6,000tのCO2が削減されることになります。
また、2022年4月からは、若松工場の都市ガスも全てCNLを導入します。
今後も、その他様々な取り組みを通じ、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
(7) 気候変動に関わる対応
気候変動が加速していくなか、世界各地において自然環境・人々の暮らし・企業活動に様々な影響や被害が現れ始めています。こうしたなかCO2排出量の削減を含む気候変動問題への積極的かつ能動的な取組みは、企業に課せられた重要課題であり、当社グループにとってもリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識しています。このうち気候変動リスクに関しては、リスクの特定、その影響度、特定したリスクの対応策や目標の審議ならびに対応策の実施状況のモニタリング等をリスク管理委員会が担当し、気候変動に関する機会については、ESG推進委員会が同様に担当することとしております。なお、ESG推進委員会は、リスク管理委員会との間でリスクに関する情報を共有し、機会に対する対応等の情報とあわせ、気候変動に関わる対応全体を定期的に取締役会へ報告することとしています。
当社グループは気候変動関連の財務情報開示の重要性を認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言」を支持するとともに、TCFDに即し、推奨される「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示項目構成での情報開示を行うこととしています。
現在、コーポレートガバナンス報告書及び統合報告書等での情報開示に向けた準備を進めています。
(1)リスクに関わる当社の取組み
当社グループでは、事業の継続性と安定的発展を確保するため、事業を取り巻くリスクに関わる課題及び対応策を総括的に協議、推進、進捗管理する組織として、従前からリスク管理委員会を設置しています。この体制のもと、具体的には、当社グループの経営理念、経営目標、経営戦略の達成を阻害する様々なリスクに対して、最適なコストで適切な処理を行うため、個別リスク事象毎に対応策の策定、取組み等を担う主管部門と推進責任者を定め、リスク管理のための活動を推進しています。
なお、リスク管理体制については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 ア.業務の適正を確保するための体制及び当該体制の運用状況 (ア)業務の適正を確保するための体制の整備にかかる決議の内容 3.損失の危険の管理に関する規程その他の体制」、及び「同(イ)業務の適正を確保するための体制の運用状況の概要 3.損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご覧ください。
(2)事業等のリスク
当社グループの事業において、上記(1)に述べたリスク事象も含め、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主なリスクには以下のものが考えられますが、全てを網羅するものではありません。なお、これらリスクは当連結会計年度末現在において判断したものです。
現在、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大や変異株の出現は、社会生活に止まらず企業の経済活動に世界的な規模で連鎖的に影響を及ぼしています。加えてロシアによるウクライナ侵攻に伴う金属資源・エネルギーの調達懸念・高騰やそれに伴う各種原材料価格の上昇等の地政学的リスクの顕在化は、当社の業績に大きく影響を及ぼしています。これらグローバルに経済、企業活動に対して影響を与えている事象に関しては、当社事業に関連する以下のリスクの中で具体的に補足します。
金属チタン事業の主力製品の一つであるスポンジチタンは、航空機向け用途が需要の中心となっております。触媒事業では、製品である「THC」はプロピレン重合用にほぼ特化した触媒であります。また、化学品事業における超微粉ニッケル及び高純度酸化チタンも、積層セラミックコンデンサなどの電子部品向けの用途が需要の大部分を占めております。このように当社グループの事業は、セグメント別に見た場合、特定用途向けの需要が大きな割合を占め、当該用途先業界の好不調により販売量が大きく変動する傾向があります。
特に、航空機向けのスポンジチタンは、これまで、世界の経済情勢や航空旅客数の動向、航空会社による航空機の更新やメンテナンス需要の動向等により、大きな幅で好不調を繰り返してまいりました。2020年度には新型コロナウイルス感染拡大の影響による航空機産業の事業環境悪化を受け、大幅な需要減となりました。一方、直近ではウクライナ問題を契機に、主要な需要国である米国顧客が関わる地政学的なリスクから生じる調達不安が増大し、当社への引き合いが増加しています。このようにサプライチエーンでの景気変動や需要先が関わる地政学的リスク等により、需要が大きく変動する可能性があります。今後も、景気の悪化や地政学的リスクの顕在化等により、需要が減退する可能性があります。
また、一般工業向けのチタンインゴットについても、その多くが電力、化学プラントや海水淡水化プラント用として、主にアジア・中東地域向けに間接輸出されております。したがって、これらの地域の政治・経済情勢の変動により、需要が減退する可能性があります。
当社グループは、事業の多角化、製品の新たな用途開拓、競争力ある製品の提供により、その影響を最小限にすべく努めておりますが、用途先業界の状況変化によって、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、当社グループの製品の価格は、需要の動向により大きく変動する傾向があります。顧客と交渉を重ね適切な価格設定に注力しておりますが、需要の動向によっては製品価格が大幅に下落し、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
金属チタンの製造コストは、原料代及び電力代がその相当部分を占めております。原料鉱石については、鉱石を
同じく原料とする他業種での景気動向や、原料産地の地政学的リスクに影響を受けます。また原油、LNG、石炭等の資源エネルギー価格の変動は、製造プロセスでの電力使用量が多いチタン事業では、電力代の増加につながります。ウクライナ侵攻の影響による足元の原料及びエネルギー価格の上昇は、地政学的リスクの実現の顕著な例と言えます。当社はこれまでもこれらコスト上昇影響を緩和すべく、比較的安価な低品位鉱石の使用による原料の多様化や、省エネなどコスト削減に取組んでまいりましたが、これらコスト低減努力を上回る原料価格や電力単価の上昇が継続した場合、あるいはコストアップ分の製品価格の転嫁等が十分できない場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
また化学品事業の主要原料であるニッケルは国際市況により取引価格が決定されます。当社顧客との間では、この国際市況価格を、一定期間の後、製品価格に反映する取引と、交渉により製品価格が決まる取引があります。したがって原料ニッケル価格の変動は、製品価格へ反映タイミングの期ズレや、交渉での転嫁が難しい場合には当社グループの業績に大きな影響を与えることになります。当期末にかけてウクライナ侵攻の影響を受け、貴金属価格の高騰が見られました。このため当社では、国際市況価格が反映される取引に関しては、先物取引によるヘッジを利用してその影響を緩和する等対応策を実施することとしていますが、国際市況価格が短期的にかつ急激に変動する場合には、当社の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
③ 輸出比率が高いことによる為替リスク
金属チタン事業のスポンジチタンや、触媒事業のTHC、化学品事業における電子部品材料は、輸出が販売量の大きな割合を占めており、当社グループ全体の売上高に占める輸出の割合は、当連結会計年度実績で51.2%となっております。輸出の多くはUSドル建てとなっているため、為替による影響を受けます。当社グループは、短期的な変動に関し為替予約取引によるヘッジを行うなど、為替リスクを低減すべく努めておりますが、為替が大きく円高に振れた場合には、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、製品のほとんどを自社で生産しており、自然災害による工場施設に対する被害により、製品の生産・販売に支障が生じる可能性があります。特に、茅ヶ崎工場は、東海地震の地震防災対策強化地域内に所在しており、設備の耐震強化、防災諸設備の整備、防災体制の強化、防災訓練の実施などの対策に努めているほか、生産設備の複数拠点化(BCP)の検討を進める等リスク低減を図ることとしております。しかし自然災害の規模及び内容によって、当社グループの業績や財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大は、先に述べたように金属チタン事業において大幅な需要減を経験しましたが、ほかにも様々なサプライチェーンの停滞による資材等の調達懸念、従業員の感染による事業活動の制限などにより、生産活動が停滞し、業績にさらなる悪影響が及ぶ可能性があります。当社グループは、調達先の複数化や適正在庫の確保、並びに感染拡大を防止するための衛生管理の徹底や在宅勤務及び時差出勤を行うなど、各種の対応に努めております。
当社グループは、製造現場を持つ企業として、安全確保と環境保全は事業運営上、最も重視しなければならない事項と認識しております。そのため、設備・技術の改善や管理体制の強化により、安全操業の維持と環境保全に万全を期しておりますが、万が一、事故・災害等が発生した場合は、操業の停止・制約や対策コストの発生により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは素材メーカーであり、その社会的使命は、顧客が満足する製品・サービスを安定的に供給することであります。そのため、ISO9001に基づく品質管理システムを整えるとともに、その維持及び継続的な改善により品質管理に万全を期しておりますが、万が一、品質不良、品質事故等が発生した場合は、対策コストの発生や当社グループ製品への評価の低下により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、特許権等の知的財産権を重要な経営資源の一つと捉え、法令に従い適切な取得保全手続きを行うと共に、知的財産権を含む第三者の権利を侵害することの無いよう細心の注意を払っております。しかしながら、当社グループの技術が十分に保護されず、又は当社グループが第三者の技術を侵害した場合には、収益機会の喪失・減少や損害賠償の支払いなど、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、知的財産権管理の専門部署を設け、的確な対応に努めております。
業務上の過失や不正アクセス等、何らかの原因により顧客情報や個人情報が流出した場合には、損害賠償や信用の失墜等、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、情報管理に係る規則を定め厳格な運用を行うと共に、必要と思われるシステム対策を講じております。
当社は、ENEOSホールディングス㈱並びにJX金属㈱の子会社であります。
ENEOSホールディングス㈱は、エネルギー事業のENEOSエネルギー㈱、石油・天然ガス開発事業のJX石油開発㈱、金属事業のJX金属㈱、その他多くの子会社・関連会社を有し、「ENEOSグループ」を形成しております。当社は、その中で「金属事業」のセグメントに属する独立事業会社と位置付けられております。当社とENEOSグループとの間には、①当社からJX金属㈱への高純度チタンの販売、②JX金属㈱から当社への各種金属の溶解加工委託、③JX金属㈱から当社への非常勤役員の派遣、④ENEOSグループから当社への従業員の出向等の関係があります。
当社と親会社等との関係については、当社の自主性・独立性を確保したうえで、両社の企業価値向上を目指し連携・協力しあうことを基本と考えております。取引の条件等は、協議・交渉を行ったうえで決定しており、当社が受ける制約はありません。
しかしながら、親会社等は当社の議決権の過半数を有しており、当社の株主総会における取締役の選解任等を通じて当社の経営判断に大きな影響を及ぼし得る立場にあるため、その議決権の行使は当社の少数株主の利益に反する可能性があります。
なお、ENEOSグループによる当社株式保有比率は、将来に亘って一定とは限りません。当該比率に大きな変動が生じた場合には、当社株式の流動性、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、チタン事業の中長期的な競争力向上を目的として、サウジアラビアでのスポンジチタン生産合弁事業に参画しております。当社(35%出資)とサウジアラビアの石油化学メーカーであるタスニー社のグループ企業AMIC社(65%出資)が共同で設立したAdvanced Metal Industries Cluster and Toho Titanium Metal Co.,Ltd.(ATTM社)は、2019年度にサウジアラビアのヤンブーにおいて、スポンジチタンの生産を開始しましたが、新型コロナウイルス感染症の影響等により立ち上げが遅れ収益性が低下した結果、同社は固定資産に係る減損損失を計上し、2020年12月末時点において債務超過となりました。
当社の連結財務諸表においてATTM社は持分法で会計処理されており、2021年3月期連結会計年度において持分法適用上の同社への投資簿価をゼロまで減額し、持分法による投資損失を計上しました。同社の欠損を負担する責任が投資額の範囲に限られていることから、当連結会計年度以降の持分法による投資損失の計上リスクはありません。
また、当社はATTM社に対し、経費の立替等による未収入金を有しております。ATTM社と当社との約定に基づいた資金計画や過去の入金実績から、貸倒引当金計上対象以外の未収入金は回収可能と判断しておりますが、金属チタン事業製品の深刻な需要減退や中東における地政学リスクの顕在化など想定外の事態が生じた場合、貸倒損失を計上するなど当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。当社としては引き続き同社を取り巻く事業環境や同社の業績動向を注視してまいります。
なお、当連結会計年度におけるATTM社との取引等に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 関連当事者情報」に記載のとおりであります。
当社グループは、国内外において事業を展開しており、許認可・通商・環境・税制・独占禁止法等各国の様々な法令・規制の適用を受けております。将来における法令等の新設・変更等が行われた場合、事業活動の停止・制限や対策コストが生じる可能性がありますが、不断の情報収集を通じその予防・回避に努めております。
中でも、脱炭素社会実現への取組みは世界的に加速している状況にあり、炭素税等法規制が厳格化する可能性があります。これに対し、当社グループは、チタン新製錬技術の活用等によりカーボンニュートラルの実現を目指し、当該リスクの低減を図る考えであります。
また、当社グループは、行動基本方針に「コンプライアンスの最優先」を掲げると共に定期的な教育を行うなど法令等の遵守に努めておりますが、万が一これらの法令等への違反が認められた場合、各規制当局からの処分、訴訟の提起や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、中期経営計画において「成長分野への重点投資による収益基盤の強化」を基本戦略として掲げるなど、継続的に様々な投資を行っております。
投資にあたっては、かねてより需要予測や当社グループの競争力などから採算性を慎重に判断し実施しておりますが、将来の正確な予測は困難であり、販売量の増加やコストダウン等の投資による効果が当初計画を下回って推移した場合、償却費負担の増加や該当資産に係る減損損失の計上などにより、当社グループの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、景気に持ち直しの動きが見られたものの、新型コロナウイルス感染症第5波の収束後、新たな変異株による感染症第6波により新規感染者数が高止まりするなど、先行き不透明な状況が続きました。
世界経済は、物価上昇や新型コロナウイルス感染症の動向に加え、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原材料価格、エネルギー価格の高騰などにより、景気回復の停滞が懸念される状況にあります。
当社グループを取り巻く事業環境は、チタン需要の回復や電子部品材料の需要拡大により各製品の販売が総じて好調に推移した一方、原材料や副資材価格の高止まり、エネルギーコストの上昇、輸送コストの大幅上昇等が収益を圧迫する要因となりました。
こうした中、当連結会計年度における経営成績は、売上高は過去最高の55,515百万円(前期比53.5%増)、営業利益5,228百万円(同66.8%増)、経常利益5,177百万円(前期は417百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益3,695百万円(前期は3,156百万円の損失)となりました。

売上高は、チタン需要の回復や電子部品材料の需要拡大により、前連結会計年度比増収となり、過去最高の売上高となりました。
営業利益の対前連結会計年度比較を以下に示します。

経常利益は、前連結会計年度に営業外費用として計上した、サウジアラビアの合弁会社に係る持分法投資損失がなかったことにより、5,177百万円の利益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に特別損失として計上した、金属チタン事業におけるチタンインゴット製造設備に係る固定資産の減損損失の計上等がなかったことにより、3,695百万円の利益となりました。
なお、当社グループが数値目標として掲げている「自己資本利益率(ROE)」について、目標10%以上に対し、当連結会計年度の実績は8.1%となりました。
セグメントごとの売上高、営業利益については、以下のとおりです。

金属チタン事業
当連結会計年度における金属チタンの販売は、新型コロナウイルス感染症の影響により需要が落ち込んだ2020年度から海外向け一般産業用途の需要が回復したほか、国内向け一般産業用途、航空産業用途の需要も回復の兆しが見られ、堅調に推移した半導体用途の高純度チタンと合わせ、大幅に増加しました。航空産業用途の需要の回復継続、ロシアによるウクライナ侵攻によるサプライチェーンへの影響により、2022年度も需要は引き続き好調に推移する見通しであり、国内拠点におけるスポンジチタンの生産が2022年1月以降ほぼフル生産となっていることから、関係会社であるサウジアラビアのスポンジチタン製造合弁会社において2022年中に生産量の引き上げを図り、需要の増加に対処してまいります。
一方、収益面では、原料鉱石、副資材費、輸送コストの高騰によるコスト上昇が著しく、マージンを大きく圧迫する状況が続きました。
こうした状況のもと、当期の金属チタン事業は、売上高31,432百万円(前期比82.4%増)、営業利益1,233百万円(前期は325百万円の損失)となりました。
触媒事業
当連結会計年度における触媒事業の販売は、製品輸送面で引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、ポリオレフィン用触媒の需要は堅調であり、前年同期を上回る水準となりました。
こうした状況のもと、当期の触媒事業は、売上高8,269百万円(前期比9.9%増)、営業利益3,491百万円(前期比11.1%増)となりました。
化学品事業
当連結会計年度における化学品事業の販売は、主要製品である超微粉ニッケルの主な用途である積層セラミックコンデンサー(MLCC)が、前年度前半のコロナ禍影響による需要減退から回復したことに加え、5G通信や自動車関連の需要増等により、前年度を大幅に上回る水準となりました。
こうした状況に加え、超微粉ニッケルの原料である地金価格の高騰による製品価格の上昇の影響もあり、当期の化学品事業は、売上高15,814百万円(前期比38.6%増)、営業利益4,563百万円(前期比43.5%増)となりました。
主な要因として、特定用途向けの需要が大きな割合を占めていることによる需要変動の影響、原料代及び電力代の変動、為替の変動等が挙げられます。詳細は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
資産の部は、売掛債権及び棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末比6,946百万円増の98,095百万円となりました。
負債の部は、買掛債務及び借入金の増加等により、前連結会計年度末比4,238百万円増の50,928百万円となりました。
純資産の部は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、配当金の支払い等により前連結会計年度末比2,707百万円増の47,166百万円となりました。

これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末比0.7ポイント悪化し47.9%となりました。財務基盤強化の目安指標であるD/Eレシオについては、前連結会計年度末比0.03ポイント改善し、当連結会計年度末の実績は0.86倍となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は2,128百万円と期首に比べ406百万円の減少となりました。キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは9,790百万円の収入となりました。これは、税金等調整前当期純利益4,988百万円、減価償却費6,055百万円等による資金の増加があったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、10,433百万円の支出となりました。これは、若松工場における超微粉ニッケルの新工場及び茅ヶ崎工場における触媒新工場の建設等に係る有形固定資産の取得による支出10,427百万円等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、206百万円の収入となりました。これは、長期借入金の増加等によるものです。
なお、キャッシュ・フロー関連指標は、次のとおりであります。
当社グループは、収益性を高めるとともに資産の圧縮を進め、手元流動性の向上と強固な財務基盤の構築を実現していく考えであります。
当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料費、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用、並びに設備新設、維持改修等に係る投資であります。
これらの資金需要について、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本として、設備投資や長期運転資金は金融機関からの長期借入を基本として、それぞれ調達しております。
手許の運転資金につきましては、当社及び一部の国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)により、余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「⑤ キャッシュ・フローの状況」をご覧ください。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、その作成において必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4 会計方針に関する事項」、及び「同 連結財務諸表注記 重要な会計上の見積り」 をご覧ください。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は売価基準で算出しております。
受注生産は行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当社グループは、下記の契約を締結しております。
当社グループは、既存事業の強化に注力する一方、当社グループの技術を活かして、一層の事業領域拡大と新規事業の開拓に向けた研究開発に取り組んでおります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
(金属チタン事業)
金属チタン事業においては、スポンジチタン及びチタンインゴットの生産性及び品質の向上を目指した生産技術の改善・改良等に継続的に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は
(触媒事業)
触媒事業においては、触媒製品に係る品質向上、生産技術の改善・改良、新規製品開発等の研究開発に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は
(化学品事業)
化学品事業においては、超微粉ニッケル、高純度酸化チタン等の製品に係る品質向上、生産技術の改善・改良、新規製品開発等の研究開発に取り組んでおります。当事業に係る研究開発費は