第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、独創的なアイデアのもとに開発した製品を、経済的に生産して、適正なる価格で販売することにより、株主をはじめとする社会の方々に貢献するとともに、社業の発展をはかることを基本目的としております。経営活動においては、信用を第一とし、堅実経営に徹する一方で進取的な経営姿勢をとり、常に新しい分野へのチャレンジを行っております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、新たに資本収益性指標であるROE5年平均8%以上の維持を目標としております。また、中長期の企業価値向上のため、中期経営計画「MORY-PLAN26」を策定し、売上高、営業利益、ROE、投資計画の定量的な数値目標を定めております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループでは、「ステンレスで創るきらきらの未来」をテーマに「長期ビジョン10年後のありたい姿」及び、2024年度から2026年度までを対象とした中期経営計画「MORY-PLAN26」を令和6年6月に公表しております。その内容は以下の通りです。

 

① 長期ビジョン10年後のありたい姿

 


 

② ありたい姿に向けた全社課題

 


 

 

③ 中期経営計画「MORY-PLAN26」の位置づけ

 


 

④ 中期経営計画「MORY-PLAN26」の基本方針

 


 

⑤ 中期経営計画「MORY-PLAN26」の定量目標と進捗状況

 

令和7年3月期計画

令和7年3月期実績

令和8年3月期当初目標

令和8年3月期修正目標

令和9年3月期目標

売上高(億円)

450

461

496

458

515

営業利益(億円)

47

53

56

46

59

5年平均ROE(%)

8.3

8.5

8.6

8.5

8.1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(4) 経営環境及び対処すべき課題

翌連結会計年度においては、ウクライナ情勢や中東地域の不安定化に加え、米国をはじめとする主要国による保護主義的な通商政策の動向など、企業経営に影響を及ぼす外部環境は一段と複雑さを増しております。国内においても、エネルギー価格や物流・人件費の上昇、物価高に伴う家計負担の拡大といった要因により、消費者マインドや企業活動の先行きには引き続き慎重な見方が求められる状況です。

このような経営環境の下、当社グループは、変化を単なるリスクとせず、むしろ成長の契機と捉える柔軟かつ前向きな姿勢で、持続的な企業価値の向上を目指して経営に取り組んでおります。中期経営計画の5つの基本方針に基づき、特に以下の点を主要課題と認識し、それぞれに対する具体的な対応策を推進しております。

 

① ステンレス管の収益力強化

当社の主力事業であるステンレス管事業については、高付加価値製品の開発・拡販、製造原価の低減等に取り組み、収益性の更なる向上を図っております。特に当社が得意とする配管の小径管に関しては、最新設備の導入により品質およびコスト競争力を高めてまいります。

② 生産設備のリニューアルと設備競争力の確保

老朽化が進行する生産設備については、計画的な更新とともに省力化・高精度化を実現する最新鋭設備の導入を推進しております。また、計画中の新工場の建設を進め、分散する工場を集約化して生産効率の向上を図ります。

③ インドネシア市場における競争環境の変化への対応

当社の海外生産拠点であるインドネシアでは、自動車ローン規制やユーザーの内製化等により市場競争が激化しております。こうした中、営業支援体制の強化、製造効率の向上による原価低減などを通じて、現地での競争優位の確保に取り組んでおります。また、自動車用製品以外の新しい分野への取扱い製品の拡大に向け、現地調査を開始しております。

④ 新規事業領域への進出

既存事業に加え、中長期的な収益基盤の多様化を視野に、環境規制や高度情報化社会など、新しい課題の解決に貢献する技術の向上に取り組み、新たな事業領域に向けた製品開発を推進しております。これらを将来の柱となる事業へと育成していく所存です。

⑤ 高度人材の育成と組織体制の強化

事業を支える人的基盤の強化は、当社の持続的成長における根幹と位置づけております。抜本的な人事制度の改革を検討しており、採用ルートの多様化、次世代を担う人材の計画的育成、従業員エンゲージメントの向上により、柔軟かつ自律的な組織体制の確立に取り組んでいきます。また、全社をあげてシステム刷新の準備を進めており、DX経営を加速させてまいります。

 

翌連結会計年度の業績見通しにつきましては、世界的な景気の先行き不透明感が続く中、当社製品の主要市場においても実需の本格回復にはなお時間を要するものと見込まれます。販売数量は前年並みにとどまり、販売価格についても、前年下期から続く低下傾向が継続する見通しです。

材料価格は概ね安定推移と見ておりますが、販売価格とのスプレッド縮小や、エネルギー・物流・人件費の上昇影響を踏まえ、翌連結会計年度の業績は前年比で減収減益を見込んでおります。

こうした環境変化を一時的要因と捉えることなく、当社では収益構造そのものを見直し、変化に耐えうる体制を構築してまいります。将来の質の高い収益を確保すべく、経営基盤を強化し、中期経営計画の成長軌道に向け着実に前進してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ

① ガバナンス

当社グループは、社会・環境をはじめとするサステナビリティを巡る課題について、その重要性に鑑み、全社を挙げて誠実・公正な対応を行っています。代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、ESG経営をより強力に推し進めていくための重要課題、課題解決のための方針、行動内容、目標等について議論しています。また、取締役会への定期的な報告を通じ、その意見や助言を取組みに反映することで、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図ります。

 

(サステナビリティ基本方針)

当社は、社是、経営基本目的、経営基本方針からなる「経営理念」のもと、お客さまはもちろん株主、社員、業界、地域社会など、すべてのステークホルダーと価値観を共有しながら、事業活動を通じて、持続的な成長の実現をめざします。

また、これらの活動を正しく実践するためのガイドラインとして「行動規範」を定めており、この行動規範に明示されている環境問題に対する姿勢、循環型社会への対応、社会に対する責任などを意識した行動をとることで、当社のさらなる発展と持続可能な社会の実現に貢献します。

当社グループでは、サステナビリティ基本方針にもとづき、ESG経営をより強力に推し進めていくために、重要と考えられる課題を特定し、社会問題の解決に向けた取り組みを推進しています。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

② 戦略

当社グループは、社会的責任を踏まえつつ持続的な企業価値の向上を実現することを目指しております。専門の委員会を設置して、製造に関わるエネルギー使用の削減や、環境や近隣に関する配慮について、生産管理を中心に全社一体となって努力を続けております。

当社グループの特徴の一つとして、グループ内で使用している造管機等の専用設備の大半を自社で設計製作しております。それらの修理や調整、また老朽化への対応を長期的な計画のもと自社内で実施することで、設備の長期使用を可能とする当社の強みを発揮しつつ、環境負荷の低減や持続的な企業価値の向上に貢献しております。

環境問題を中心とするサステナビリティに関連したリスクにつきまして、当社グループとしての対応策や機会について、次のように整理しております。

リスク

対応策や機会

・異常気象による災害リスク

・インフラ損傷、工場浸水等に対応した設備投資

・災害保険への加入

・有害化学物質の漏洩による環境汚染や規制遵守によるコスト増加

 

・環境への影響が少ない代替品への変更

・漏洩防止技術の確立

・炭素税等、温室効果ガス排出を抑制する政策導入規制強化によりエネルギーコストが増加するリスクや製品用途が減少するリスク

・工場や事業所における省エネルギーや再生可能エネルギーへの切り替え

・新しい分野での販売開拓

・顧客からの要求や法規制への適切な対応が取れない場合、顧客取引の停止や行政罰などにより事業機会の損失が生じるリスク

・法規制や社会全体の要求に対する情報収集

・設備投資による法令順守

 

 

なお、当社グループが主に扱っているステンレスは、耐久性に優れ、環境負荷が少なく、またリサイクル性に大変優れた、持続可能(サステナブル)な素材であります。当社グループとしましては、サステナブル素材であるステンレス製品を世の中に広めること自体が、持続可能な発展と中長期的な企業価値の向上に繋がると捉え、当社の重要な戦略および機会と考えております。

 

③ リスク管理

サステナビリティ委員会において、リスクの対応方針や課題について優先度を選別・評価し、迅速な意思決定を図っております。またサステナビリティ委員会で決定した決議事項・報告事項のうち、必要なものについては取締役会に報告することとしております。

 

④ 指標及び目標

当社グループのCO2排出量削減に関する取り組みとしまして、Scope1にあたる直接排出を減少させることから始まり、現在、Scope2のカーボンニュートラルへの取り組みが主な活動となっております。日々の効率化、生産性向上、歩留りの向上などは、継続的なカーボンニュートラルの活動の一環として捉え、各部門において目標達成を目指し活動しております。一方、当社におけるCO2排出量の多くは電力使用によるものであるため、再生可能エネルギー由来の電力購入や、太陽光パネルの設置などを視野に入れて、電力確保に努めていきます。

 

(2) 人的資本について

(基本的な考え方)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、社員の幸福を経営基本目的におき、当社に勤務することが幸せだと思うような充実感のある職場作りを推進しております。分野に応じた教育・研修制度を整備し、社員の健康や安全への配慮にも注力しております。適正な労働時間管理のもと、長時間労働の削減に努め、社員一人ひとりの仕事と生活の調和の取れた働き方(ワークライフバランス)を推進しています。

変化の大きな事業環境等を踏まえ、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、女性が活躍できる職場環境を整えるための行動計画の策定や、高齢者や障がい者の雇用促進に注力しています。

 

(指標及び目標)

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

a. 女性の活用がなかった職種(営業職、技術職)での女性配属者を増加させる。

 

目標

実績(当事業年度)

営業職

令和8年3月まで8.0

2.0%

技術職

令和8年3月まで5.0

2.9%

 

 

b. 男女の平均勤続年数の差異を縮小させる。

 

目標

実績(当事業年度)

男女の平均勤続年数の差異

令和8年3月まで7

7.5

 

 

(多様性の確保を含む人材育成及び社内環境整備方針)

① 女性が活躍する環境作り

家庭生活と仕事をバランスよく両立させるために、育児休業や育児時短勤務などの諸制度を一部については法定の基準を上回る基準で整備しております。また、介護休業制度や出退勤時間を選択できるフレックスタイム制度、在宅勤務制度を設けるなど、誰もが働きやすい職場環境の中で活躍を目指すための制度を整備しています。また、女性の担当業務の拡充やそのために必要な教育機会についても充実を目指してまいります。

 

② 高齢者の雇用促進

長年に渡り培った知識、技術、知恵を継承するために、定年退職した社員の再雇用制度を導入しています。再雇用制度の利用者は増加傾向にあり、技能継承や人手不足に貢献しています。また、60歳から65歳への定年延長の実施(令和7年4月実施)、製造現場における転倒事故軽減に向けた対策の実施など、更なる高齢者の雇用促進に努めています。

 

③ 障がい者の雇用促進

当社の障がい者雇用率が法定雇用率をわずかに下回る中、今後も障がい者法定雇用率は更に引き上げが予定されています。そこで現在新規雇用を目指し、障がい者の方に担当していただく業務の拡大に取り組んでいます。また、入社後のフォローにも力を入れており、良好な定着率を維持しています。

 

④ メンタルヘルス活動

メンタルヘルスの不調を感じた場合の相談窓口(健康管理室、メンタル専門産業医)を充実させ、万全の体制を整えています。また、ストレスチェックを毎年実施し、組織分析の結果を部門長にフィードバックするとともにストレス低減対策を検討する研修会を実施しています。

 

⑤ 健康管理室の設置

当社の主力工場である河内長野工場に、平成29年度より看護師が常駐する健康管理室を設置し、社員の健康管理や、労働災害の初期対応などを行っています。また「健康管理室だより」を定期的に全社員に回覧し、社員への健康管理を呼びかけています。

 

 

 

 

 

 

⑥ 安全衛生

当社では、設備機械および作業方法などによる災害防止、職場環境および作業条件からくる健康障害防止、その他社員の健康の確保に必要な措置を講じるため、安全衛生管理体制を確立しています。また、令和6年10月に安全部を新設し、製造現場で働く社員の安全対策により一層注力しております。

 

⑦ 職場環境の改善

夏場の暑さ対策として、工場の中でも暑さ指数が高く、熱中症リスクの高い作業場から順次、ゾーン空調設備を導入しております。従来からの空調服の活用、水分補給用飲料の配付に加え、作業場の温度を下げるという根本的な対策を進め、職場環境の改善を目指します。

 

⑧ 教育研修制度の充実

新入社員ほか班長職や新任管理職等に対し、会社全体にかかるスキルや意識向上を目的とした階層別研修を実施しております。その他にも資格取得や専門知識習得のための自己啓発支援など、多様な教育の機会を設けております。

 

⑨ 福利厚生制度の整備

社員の幸福に資するべく、従業員持株会制度、財産形成貯蓄制度、住宅融資制度など各種福利厚生制度を整備しています。また、令和7年4月より企業型確定拠出年金制度を新たに導入するなど、福利厚生制度の更なる充実に努めています。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載いたしました事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)材料の調達リスク

当社グループの主力製品であるステンレスパイプ・条鋼の材料は、国内外の複数の供給元から購入しております。当社グループ基準の品質・納期を満足し、当社グループにとって最も有利な価格を提示できる供給元は海外メーカーとなっており、必然的にそのメーカーの占有率が高くなっております。しかしながら1社の占有率が高くなるとそのメーカーに不慮の事故等が発生した場合、当社グループへの満足な供給が滞る可能性があります。

当社グループでは、可能な限り多くの供給元との取引を継続し、不測の事態となった場合の供給不足を回避する努力をしております。

 

(2)ユーザーがステンレスから別の素材へ変更するリスク

当社グループの主力製品の素材は主にステンレスです。現時点ではステンレスの性能、価格面で代替できる素材はありませんが、技術革新で全く新しい素材が開発され、性能・価格面でステンレスを上回る素材が開発されないとも限りません。また、例えば技術革新によりユーザーがステンレスパイプを必要としない新しい製品を開発しないとも限りません。

当社グループでは、可能な限りの情報収集に努め、新たな素材が開発された場合や既存製品が不要となった場合、それに対応すべく体制を整える所存であります。

 

(3)材料価格の変動リスク

当社グループの主力商品の素材であるステンレスには、レアメタルと言われるニッケルが含まれています。ニッケル価格の変動や為替の影響にともない素材価格も変化しますが、需要と供給ばかりではなく、投機的な要素によっても価格が大きく変動します。このような要因は弊社ではコントロールすることはできません。

また、弊社製品の原材料のステンレスも輸入材に頼ることが多いため、為替変動リスクの影響を受けます。

当社グループでは、材料価格の上昇に際しては取引先への充分な説明をもって製品価格への転嫁をお願いしております。

 

(4)海外製品の流入リスク

当社グループの主力製品であるパイプや条鋼においても、海外からの廉価な製品が輸入されています。当社グループでは国内メーカーとしての品質とアフターサービスの面で輸入製品に対抗しています。

 

(5)自然災害で主力工場が稼働できないリスク

当社グループの主力工場は河内長野工場ですが、地震などの自然災害等で稼働できなくなった場合、グループ会社の関東モリ工業などで代替生産を行います。しかしながら工場の規模、設備等完全に河内長野工場を補完できるものではなく、生産量、製品品種等大幅な減少になるものと思われます。河内長野工場と同規模の工場を新たに建設することは現実的でなく、現時点では大きなリスクとなっています。

当社グループでは、自然災害に強い工場を目指し、耐震補強工事等を行っております。また、万が一に備え、地震を含む損害保険等も活用し、被災時の事業継続が円滑に進むよう備えております。

 

(6)人材不足リスク

弊社工場の現業部門は、一定程度の経験と熟練が必要であり、災害や新型コロナウイルスのような感染症等で人材が不足した場合、すぐに新規雇用で賄えるものではないため、一定のリスクがあります。また、少子化の影響により将来にわたって採用が困難になっていく可能性も否定できません。

当社グループでは、再雇用者の更なる有効な活用など働き方の多様化を図っていき、これらの課題に対処する所存であります。

 

なお、上記は当社グループの事業の特性と考えられる部分について限定的に記述したものであり、当社グループの事業等のリスクを上記内容に限定するものではなく、また、これら以外のいかなる事態の発生及びリスクの可能性を否定するものではありません。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、エネルギー価格や食品価格の値上がりを中心とした物価高に見舞われ、個人消費は低迷しておりましたが、政府による定額減税の実施や企業による雇用や所得環境の改善が進み、個人消費は下げ止まりつつあります。外需におきましても、依然としてインバウンド需要が増加基調にあり、景気は緩やかに持ち直してきております。

海外におきましては、紛争中のウクライナ情勢や中東情勢は長期化する中、米国のトランプ大統領が世界各国に対して追加関税の実施に向けて動き出し、各国は報復関税での対抗措置や協議による追加関税の回避を模索するなどその対応に苦慮しており、世界的な景気後退のリスクが強まっております。

当社グループが所属しておりますステンレス業界では、国内需要が低迷する中、運送費や人件費といった諸費用が上昇しており、販売価格への転嫁を進めてまいりました。しかしながら、足元ではニッケル市況の下落及び安価な輸入材の影響を受け、製品価格は値下がり傾向となっております。また製品の先安観による買い控え等の動きもあり、本格的な荷動きの回復までには至っておりません。

このような状況下におきまして、当社グループの当連結会計年度における売上高は461億41百万円(前年同期比3.7%減)となりました。前年に比べ販売単価の下落により、売上高は減少しております。また収益面におきましては、運送費を筆頭とする経費の増加により、営業利益は53億96百万円(前年同期比8.5%減)となりました。受取配当金の減少や為替差損の発生により、経常利益は57億22百万円(前年同期比10.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、41億28百万円(前年同期比8.7%減)となりました。

 

各セグメントの状況は次のとおりです。

(日本)

日本事業の売上高は440億42百万円(前年同期比3.3%減)、セグメント営業利益は53億39百万円(前年同期比6.8%減)となりました。製品部門別の売上高は以下のとおりです。

ステンレス管部門は、自動車用と配管用は前年同期と比べて製品価格が下落したため、売上高は255億57百万円(前年同期比1.5%減)となりました。

ステンレス条鋼部門は、前年同期と比べて、販売数量が減少したことにより、売上高は111億22百万円(前年同期比3.0%減)となりました。

ステンレス加工品部門は、給湯器用フレキ管の販売が回復しましたが、売上高はほぼ横ばいの10億4百万円(前年同期比1.9%減)となりました。

鋼管部門は、前年同期と比べ建設仮設材用の需要が低迷し、販売数量が大幅に減少したため、売上高は56億77百万円(前年同期比12.0%減)となりました。

機械部門は、前年同期に比べ取引先の設備投資意欲が回復傾向にあり、売上高は6億80百万円(前年同期比5.8%増)となりました。

 

(インドネシア)

インドネシア事業は、二輪完成車の販売市況は好調に推移しましたが、二輪用は客先の一部が内製化を開始したため、販売数量が減少しました。四輪完成車の販売市況はローン審査の厳格化等により低迷し、四輪用の販売数量も減少し、売上高は20億99百万円(前年同期比11.5%減)となりました。生産高の減少等により、セグメント営業利益は56百万円(前年同期比66.1%減)となりました。

 

 

② 財政状態の状況

当社グループの当連結会計年度末の総資産は698億42百万円となり、前連結会計年度末に比べて4億62百万円減少いたしました。総資産の増減の主なものは、現金及び預金の減少23億86百万円、受取手形及び売掛金の減少6億47百万円、投資有価証券の増加21億78百万円などであります。負債の部は142億69百万円となり、前連結会計年度末に比べて14億29百万円減少いたしました。負債の増減の主なものは、電子記録債務の減少5億78百万円、未払法人税等の減少2億16百万円、繰延税金負債の減少1億50百万円などであります。

当連結会計年度末の純資産は555億72百万円となり、前連結会計年度末に比べて9億67百万円増加いたしました。これは、利益剰余金が23億42百万円増加いたしましたが、自己株式が7億99百万円増加したことなどによるものであります。これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べて1.9ポイント上昇し、79.5%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動により40億58百万円の収入となり、投資活動により38億43百万円の支出となり、財務活動により26億17百万円の支出となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の残高は、期首に比べて24億28百万円減少し159億33百万円(前年同期比13.2%減)となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が57億85百万円となり、売上債権の減少9億25百万円、仕入債務の減少4億91百万円、法人税等の支払額18億38百万円などにより、営業活動全体では40億58百万円の収入(前年同期は66億38百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資による支出10億65百万円、投資有価証券の取得による支出28億6百万円などにより、投資活動全体で38億43百万円の支出(前年同期は10億9百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額17億81百万円などにより、財務活動全体では26億17百万円の支出(前年同期は16億43百万円の支出)となりました。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

 

 

ステンレス管

24,749

0.2

ステンレス条鋼

7,087

16.1

ステンレス加工品

1,017

△2.3

鋼管

5,663

△10.7

機械

654

△7.8

インドネシア

1,945

△21.8

合計

41,118

△0.6

 

(注) 上記金額は販売価額で示しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

 

 

ステンレス管

727

△1.7

ステンレス条鋼

3,876

△2.0

ステンレス加工品

鋼管

27

5.7

機械

インドネシア

合計

4,632

△1.9

 

 

 

c 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

 

 

 

 

ステンレス管

25,975

1.5

3,630

13.0

ステンレス条鋼

11,135

△2.6

84

17.6

ステンレス加工品

943

△13.7

115

△34.5

鋼管

5,657

△11.7

710

△2.7

機械

600

△4.7

139

△36.4

インドネシア

2,088

△12.2

134

△7.5

合計

46,400

△2.4

4,815

5.7

 

(注) 受注残高には、継続的な取引先からの受注内示は含めておりません。

 

d 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

 

 

ステンレス管

25,557

△1.5

ステンレス条鋼

11,122

△3.0

ステンレス加工品

1,004

△1.9

鋼管

5,677

△12.0

機械

680

5.8

インドネシア

2,099

△11.5

合計

46,141

△3.7

 

(注) 1.上記金額はセグメント間の取引については相殺消去しております。

2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度における経営成績は、売上高は461億41百万円(前年同期比3.7%減)、営業利益は53億96百万円(前年同期比8.5%減)、経常利益は57億22百万円(前年同期比10.5%減)となりました。

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「日本」セグメントにおける主な事業である「ステンレス関連」事業において、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおり、販売数量の減少等により売上高は減収となりました。製品価格と材料価格の値差は確保できましたが、販売数量の低迷や固定費の上昇等により、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、減益となりました。

なお、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの主力製品のパイプや条鋼の販売価格と主要な原材料であるコイル材等の仕入価格には当社グループではコントロールできない市場価格があります。

「インドネシア」セグメントは、現地の二輪、四輪メーカーへの販売数量の減少及び生産高の減少により、減収減益となりました。

当連結会計年度における資本の財源及び資金の流動性については、ステンレス管造管設備の改修などの設備投資資金を当期純利益及び減価償却費による内部留保でまかなったことにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は24億29百万円減少し159億33百万円(前年同期比13.2%減)となりました。金融機関からの資金調達につきましては、安定的な資金を調達できるように総額30億円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

5 【重要な契約等】

当社は令和6年12月13日開催の取締役会において、固定資産を取得することを決議し、土地売買契約書を締結いたしました。

1.取得資産の内容

(1)名称      :赤峰工場(仮称)

(2)物件所在地   :河内長野市小山田町(赤峰産業用地)

(3)取得土地面積  :14,575.76 ㎡

 

2.取得価額

1,071,318,360 円

 

3.取得資金

自己資金により充当

 

4.建設計画

土地引き渡し予定   :令和8年7月予定

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、新製品の開発、生産性の向上のための新しい生産方式の開発、製品の高付加価値化とコストダウンなどをテーマとして採り上げ、積極的に研究開発活動を推進しております。また、顧客からの高度化する要望に応えるために、基礎技術のレベルアップはもちろんのこと応用研究にも注力し、高品質な製品の安定供給を目指しています。さらに働き方改革を念頭に、人材の不足や世代交代によるパフォーマンス低下に備え、今まで以上の生産性向上に向けた取り組みを進めています。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は79百万円であります。

 

当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動の状況は、次のとおりであります。

(日本)

ステンレス管部門では、作業容易化を図るため、材料取り巾自動計算システム導入の検討を開始し、パイプ用焼鈍炉を炉内雰囲気にあわせたガス流量最適化ができる焼鈍炉へ更新を進め、品質安定化を図りました。また、環境負荷軽減に向け、長尺パイプ洗浄装置に引き続き、代替洗浄液を使用した超音波洗浄装置の検討を継続中です。

ステンレス条鋼部門では、作業軽減を図るため、圧延状況の見える化システム導入の検討を開始しました。

ステンレス加工部門では、蓄電池用パイプ生産効率UPを図るにあたり、ロボット、画像処理機器を活用できないか実機テストによる検証を開始しました。

鋼管部門では、作業容易化・品質安定化を図るため、溶接部監視装置を導入し諸条件の検討を開始しました。

その他の部門では、検査作業の負荷軽減として、造管機へ設置したAIによる溶接部異常検出装置の精度UP作業を継続、新たにAIを活用した外観検査装置の検討を開始しました。また、3Dスキャナ型三次元測定機を導入、加工品やロール・金型の形状を把握し、最適な設計が可能な環境を整えました。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は79百万円であります。

 

(インドネシア)

ステンレス管部門では、製品の競争力強化を主眼とした生産技術の革新などの研究開発を行っております。当連結会計年度では、造管機のNC切断機の制御更新を実行し、生産性の向上と安定化を図りました。

なお、当連結会計年度における研究開発費の支出は僅少であります。