本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針及び経営環境
私たちを取り巻く世界や日々の暮らしは変化を続けています。しかし、より豊かで快適な住まいで暮らしたいという人びとの願いは、いつの時代も変わりません。
「LIXIL’s Purpose」(存在意義)は、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」にあります。この存在意義こそが、当社グループが製品やサービスの提供を通じて人びとの住まいと暮らしを支え、持続的な成長を通じて社会に貢献するための指針となっています。
また、当社グループで働く従業員は強い目的意識を持ち、日々の業務の中で「LIXIL Behaviors」(3つの行動)を実践することで、存在意義の実現に取り組んでおり、当社グループの価値創造の原動力となっています。
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上記の「LIXIL’s Purpose」のもと、当社グループは、人びとの住まいの夢を実現するために、先進的な技術と製品を開発、提供しています。
水の可能性を広げるシャワーや水栓、料理の創作意欲を高めるキッチン。清潔さと快適さを兼ね備えたトイレ。家の中と外の世界をつなぐドアや窓。空間に彩りを添える内装や外装。長い一日の疲れを癒すお風呂。住まいをより豊かで快適にするのは、実は意外とシンプルなことです。
当社は、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生しました。以後、GROHE、American Standardといった世界的ブランドを傘下に収め、日本のものづくりの伝統を礎に、世界をリードする技術やイノベーションで、日々の暮らしの課題を解決する高品質な製品をグローバルで幅広く提供しています。
現在、当社グループは、世界150カ国以上で約51,500人の従業員を擁するグローバル企業となり、毎日10億人以上の人びとに当社グループの製品をご愛用いただいています。今後も生活者視点に立ち、考え抜いた、意味のある製品デザインにこだわり、世界中のあらゆる人びとのより豊かで快適な住まいと暮らしの実現に向けて、さらなる可能性を追求し、責任ある事業成長を推進していきます。
当連結会計年度は、世界的に厳しい経済環境にさらされ、当社も極めて強い逆風を受けた1年でした。世界的なインフレは想定以上に深刻な状況にあり、サプライチェーンに関しても至るところで寸断が生じ、円安や資材高に加え、主要国における金利上昇や将来への不安から消費意欲の減退がみられました。こうした大きな外部環境の変化に対して、当社グループは価格の適正化やサプライチェーンの課題への対応など機動的に対策を講じてきたことで増収を確保することができたものの、利益面では大きく後退する結果となりました。事業環境における逆風に加え、コストの上昇と価格改定の浸透とのタイムラグが発生したことなどが、減益の要因となりました。
当連結会計年度の業績は期初の目標に対して未達となり、ステークホルダーの皆さまのご期待にお応えできなかったことを、重く受け止めています。外部変化への対応は順調に進捗してきましたが、欧米の景気後退と日本における新設住宅着工戸数の予想を大きく上回る減少もあり、本格的な業績の回復は次期の後半になると見込んでいます。しかしながら、こうした逆境に直面したことで、私たちは貴重な教訓を得て、環境対応製品の強化による差別化やサプライチェーンの強靭化、継続的な合理化の推進により長期的な体質強化につなげていきます。
供給面の課題については、サプライチェーンの冗長化をはじめ、より強靭な製品供給体制の構築を進めています。また、今後も、他社に先んじた機動的な価格改定の推進に加え、販売数量減少による固定費負担を低減させる施策を講じるなど、さらなる構造改革の必要性を認識しています。
さらに、環境意識の高まりや住宅リフォームの需要が増加する中で、当社は、市場や顧客行動の変化にいち早く対応してきました。引き続き、環境に配慮した製品や革新的で差別化された新たな製品を継続的に投入していきます。こうした取り組みは、当社が推進するデジタル・トランスフォーメーション(DX)や新たなビジネスモデルの追求とともに、将来に向けた成長と利益率の向上につながります。
次期については、引き続き世界経済の不確実性が高い1年になると想定していますが、東南アジア等の市場は人口増による高成長が見込め、また、中東も依然として大きな潜在力を秘めた力強い成長市場だと捉えています。こうした市場への取り組みを強化し、リソースを振り向けることで、これらの地域で暮らす人びとの暮らしをより豊かにするサポートをしていきたいと考えています。
現時点では不透明な事業環境に直面していますが、当社にとってなにより重要なことは、直面している課題を好機と捉え、外部環境の変化に対する耐性を高めていくことです。中長期的には、イノベーションを強化し、差別化された製品を拡充することで、より確固たる収益基盤を確立することが不可欠です。そして、短期的な利益の追求だけでなく、持続可能な成長を目指すとともに、ステークホルダーの皆さまと連携しながら、社会と環境に対するインパクトの創出を両立させていくことが必要だと考えています。これこそが、長期的な価値創造を実現する方法であり、私たちに信頼を寄せて下さっているすべてのステークホルダーの皆さまの期待に応えることにつながると確信しています。「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というLIXIL’s Purposeのもと、この荒波を乗り越え、従業員の誰もが誇りを持って働くことができる「グレート・カンパニー」になるよう、今後も取り組みを続けていきます。
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2020年に経営の基本的方向性を示した「LIXIL Playbook」を策定し、4つの優先課題に対する取組みを進めてきましたが、事業環境の変化に対応し、さらなる成長へとつなげるため、2023年に「LIXIL Playbook」を進化させました。具体的には、2020年の策定時に設定した4つの優先課題のうち、1つ目の「組織の簡素化と基幹事業への集中」に関しては、これまでの取組みを通じて順調に達成することができた一方で、改めて将来に向けた戦略の更新を行いました。
その結果、下記の5つの優先課題を設定しました。変化への対応力を高め、基幹事業のさらなる強靭化を図るとともに、環境課題に対する事業を通じた取組みを強化し、新たなコア事業の育成に注力していきます。
[進化した「LIXIL Playbook」における5つの優先課題]
① インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応
資材や物流費の高騰による影響を踏まえ、販売価格の最適化や、素材の変更によるコストダウンとコスト安定の両立を図るとともに、付加価値の高い差別化製品へのシフトにより収益性改善を進めます。また、グローバルサプライチェーンが寸断されるリスクに備え、調達先の冗長化や生産のプラットフォーム化といった従来からの施策に加え、地域内における調達、生産体制への移行を進めていきます。
② 日本事業の最適化と新たな事業成長の追求
日本事業の収益性と機動力を高めるための施策を継続し、従来は水回り製品が中心であったリフォーム商材を窓や壁といった断熱改修にまで広げることで、拡大するリフォーム需要の取込みを強化します。さらに、全ての製品群に関して環境配慮型の製品や事業を導入し、差別化につなげていきます。
③ ウォーターテクノロジー事業における海外事業の成長促進
付加価値の高い製品の販売拡大、販売チャネルの多角化、戦略的なブランド・ポートフォリオの構築といった施策を通じて、コモディティビジネスからの脱却を図り、海外市場の成長を着実に取り込むための基盤を強化します。
④ 環境戦略の事業戦略への統合
当社グループの環境戦略は、「気候変動対策を通じた緩和と適応」「水の持続可能性を追求」「資源の循環利用を促進」という3つの重点領域を設定しています。環境戦略を事業戦略に統合し、各領域における中期目標の実現に向けて取組みを強化しており、持続的成長と地球環境や社会へのインパクト(良い影響)の拡大を目指します。
⑤ 新たなコア事業の創出
将来の成長に向けて、インパクトのある新しい技術、製品、ビジネスモデルの創造を通じて、新たな収益の柱になるようなコア事業の確立を目指しリソースを投入していきます。
LIXIL Playbookの優先課題は更新しましたが、引き続き事業利益率10%、投下資本利益率(ROIC)10%の長期的な財務目標を目指してまいります。そのマイルストーンとして、中期的には事業利益率7.5%の安定的な達成を目指しており、単年度における急激な外部環境変化の影響を除けば、その達成に向けて前進できていると考えています。今後も5つの優先課題への取り組みを着実に進めていくことで、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまのご期待にお応えすることができると確信しています。
本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というLIXIL’s Purpose(存在意義)の達成を目指し、事業に関連した環境・社会の重要課題に取り組んでいます。未来を見据えた活動を通じて、私たちは暮らしと社会にインパクト(良い影響)を生み出しています。
私たちが追求するのは、多様なニーズやライフスタイルに寄り添う豊かで快適な住まいの実現です。その実現には、世界中の誰もが安全で衛生的なトイレや手洗いを利用できるようにすること、自社の事業プロセス及びバリューチェーン全体で環境負荷を低減するとともに、革新的な製品やサービスを通じて、次世代が受け継ぐ地球環境の改善に貢献すること、そしてインクルーシブな組織の構築とこれによって生まれるイノベーションを通じて、すべての人びとの健康で快適な暮らしを支えることが必要不可欠です。
当社グループでは、2016年3月期に世界で特に緊急性が高く、当社グループの専門性を通じて貢献できる社会課題を特定し、その解決に向けて「コーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略」を策定しました。以来、培った技術や知見を活かして、CR戦略に基づく重点的な施策を推進してきましたが、この分野における当社グループの活動が、すでに責任(レスポンシビリティ)や義務を超えて大きく発展していることから、2023年4月より、サステナビリティ関連の取り組みにおける戦略を「インパクト戦略」へと更新しました。戦略における3つの優先取り組み分野に変更はありません。「インパクト戦略」という表現が示すのは、サステナビリティにおける取り組みが生み出す影響を見える化する姿勢です。明確な目標を設定し、その達成に向けた進捗を追跡しています。インパクト戦略が重要視する説明責任と透明性により、ステークホルダーとの信頼関係がますます強化されるものと考えます。
当社グループは、事業の域を超えて、より広い社会とつながることで、インパクトを拡大していきます。人びとが明るく、健康的な暮らしを送ることができる社会の構築をサポートし、地球環境を守り、次世代へとつなぎます。そして、多様なニーズに応えることで機会を生み出せるインクルーシブな組織づくりに努めます。
LIXIL’s Purposeを原動力とするこうした取り組みを通じて、より広い社会にインパクトを生み出すことにより、当社グループは長期的に持続可能な成長を実現していきます。
重要課題について
当社グループ及びステークホルダーの皆さま、並びに社会にとって重要性が高く、持続可能な成長や企業価値の向上に向けて取り組むべき課題を「重要課題」として特定し、これらの重要課題に対応する目標の進捗状況を確認しながら、事業活動を通じて解決に取り組んでいます。
重要課題は、社会の現状や課題とともに、LIXIL’s Purposeや価値創造プロセス、経営の基本的方向性、インパクト戦略、ステークホルダーのニーズや期待などを踏まえ、リスク及び機会の両面から課題の抽出や評価を行い、特定されています。また、当社グループ及び社会を取り巻く環境の変化に合わせ、重要課題の見直しを行っています。
重要課題の選定プロセス
前連結会計年度においては、所定のプロセスに基づき、2021年3月期に特定した重要課題の見直しを行い、あらたに生物多様性を重要課題に追加しました。各重要課題については、ESG評価機関における重みづけを踏まえたリスクの度合いや、当社グループ及びステークホルダー、社会への影響度に鑑み、当社グループが強みを活かして主体的に取り組むことにより、課題解決に大きく貢献し、ステークホルダー及び社会に大きな影響を与えうる領域、またステークホルダーのニーズに基づき、取り組みを強化すべき領域を「優先」に位置付けています。「優先」に位置付けられた重要課題は、インパクト戦略の3つの優先取り組み分野に特に深く関連しており、これらの重要課題を基軸に、サステナビリティ活動をさらに加速しながら取り組みを進めてまいります。
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重要課題 |
取組 |
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優先 |
グローバルな衛生課題の解決 |
人びと、特に女性や女児が、安全衛生施設を利用できるようにすると同時に、子どもにとって危険な病気感染を防ぐ。SATOブランドをLIXILの取り組みの中核とし、各市場のインフラ、所得水準、環境的制約などの特性やニーズに合わせた研究開発と事業に取り組む。 |
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気候変動対策を通じた緩和と適応 |
気候変動への対応が求められる中、事業プロセスと製品・サービスによるCO2の排出ゼロに向けた取り組みを推進し、気候変動への適応に資するソリューションを提供する。 |
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水の持続可能性の追求 |
安全な飲料水にアクセスできない人びとや水資源の枯渇リスクに対して、水まわり製品のリーディングカンパニーとして人びとが水の恩恵を最大限享受できるようにし、世界規模で水の持続可能な利用が達成されるよう支援する。 |
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資源の循環利用の促進 |
限りある資源の持続的利用を見据えて、原材料の調達から製造、使用後までを考慮した循環型のものづくりを推進し、廃棄物の排出を最小限に抑える。 |
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製品ライフサイクルを通じた環境への影響 |
LIXILの製品は人びとの生活に根差し長期にわたって使用されるため、環境に配慮した製品設計を推進することで、製品のライフサイクルを通じた環境負荷や、製品に含まれる化学物質が及ぼす影響を低減するとともに、お客さまや社会の環境改善に貢献する。 |
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環境マネジメント |
ガバナンス体制及び環境マネジメントを継続的に改善し、コンプライアンスの徹底や環境パフォーマンスの向上につなげる。 |
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多様性の尊重 |
Diversity & Inclusion文化を定着させる。成長とイノベーションの原動力として多様な従業員が持つ英知や視点を活用し、世界中で様々な人の生活の質の向上に貢献する製品やサービスを開発する。 |
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生物多様性の保全 |
LIXILの事業活動は生物多様性に依存し影響を与えていることから、損失をできる限り少なくし、ネイチャーポジティブに資する事業活動やソリューション提供を推進する。 |
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人材と能力開発 |
従業員が価値創造の原動力であるという認識のもと、体系的な人材育成に取り組むとともに、従業員一人ひとりの自発的キャリアの開発支援に取り組む。 |
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製品の安全性 |
お客さまや社会からの信頼の源泉は「品質」であるという考えのもと、製品のライフサイクル全体を通じて品質向上と安全性を実現する。 |
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顧客満足 |
お客さまに住生活のすべての場面で素晴らしい体験をしていただけるように、プロユーザーと一般のお客さまの両方の目線に立ち、顧客満足を追求する。 |
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従業員の安全と健康 |
すべての従業員の安全を優先し、企業価値向上を目指す健康経営を推進する。 |
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企業倫理とインテグリティ |
すべての従業員及び役員が、高い企業倫理に基づき誇りを持って日々の事業活動に従事するよう、コンプライアンス文化の定着・維持を目指す。 |
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人権 |
人権の尊重を事業継続の基本要件と捉え、国際的な人権の原則を尊重し、すべてのステークホルダーの人権に配慮した事業活動を推進する。 |
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サプライチェーンマネジメント |
調達段階におけるリスクを特定し、サプライヤーとの協働を通じて、責任ある調達と製品の安定供給を推進する。 |
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コーポレート・ガバナンス |
コーポレート・ガバナンスの継続的な充実を図る。経営の執行と監督を明確に分離し、執行役による迅速・果断な意思決定を可能にするとともに、経営の透明性を確保する。 |
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リスクマネジメント |
事業活動に影響を及ぼすリスクを識別し、特に重点管理するものを重要リスクと定義し、リスクオーナーが対応状況を共有・報告することで全社のリスクを管理する。 |
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ステークホルダーエンゲージメント |
LIXILの事業活動は多くのステークホルダーに支えられているという考えのもと、各ステークホルダーとの積極的かつ能動的なエンゲージメントを通じて、生活の質の向上や社会課題の解決に貢献する。 |
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情報セキュリティ |
効率的で安定した事業活動の遂行を担保するために、基幹システムの刷新や個人情報の管理の強化、サイバーセキュリティ確保のための体制を構築する。 |
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税の透明性 |
税の透明性を担保し、適切な納税を実施する。 |
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責任あるマーケティングと広告 |
製品やサービスに関する適切な情報を提供する。 |
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(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ関連の課題に戦略的に取り組むため、四半期に一度「インパクト戦略委員会(2023年3月までコーポレート・レスポンシビリティ委員会)」を開催しています。
当社グループ全体で迅速かつ適切な対応を行うため、インパクト戦略委員会のメンバーには、コーポレート部門及び事業部門を統括する執行役並びに部門長が任命されています。
インパクト戦略委員会での討議・審議結果は、Impact戦略担当執行役より執行役会に報告され、必要なものについては決議がなされます。また、インパクト戦略委員会での決定事項は、推進責任者である各担当執行役及び部門長が担当部門に伝達することで、具体的な取り組みへと展開されます。活動に深く関わる各委員会との間でも、情報の共有・報告が行われています。
取締役会は、単なる経営執行の監督にとどまらず、経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うことで、意思決定の合理性を担保しつつ、迅速かつ果断な意思決定を行うことを促進する体制を構築しています。取締役会は、執行部門と連携してインパクト戦略を策定するとともに、当社グループの経営戦略(人的資本や知的財産への投資等重要性の高い事項への経営資源の配分・事業ポートフォリオ等)とサステナビリティに係る戦略・方針の整合性を継続的に確認する役割を担っています。サステナビリティに係る取り組みは、Impact戦略担当執行役から取締役会に、執行役の職務執行状況報告の一環として報告されるほか、インパクト戦略委員会や環境戦略委員会から定期報告されます。また、重大及び重要な意思決定事項は、執行役会及び取締役会に上申され、報告・承認されます。
(2)戦略
当社グループのインパクト戦略では、当社グループが専門性を活かして大きなインパクトを生み出すことができる「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」を3つの優先取り組み分野に定めています。現在、そして未来を見据え、インパクト戦略を事業戦略に組み込み、水回りと住宅設備における知識や規模を活かしながら、従業員やパートナー、さらには地域住民など様々なステークホルダーの皆さまと協働して取り組みを進めています。
各取り組みにおいては、重要課題に沿って策定されたアクションプランとKPIに基づいて、その進捗や成果を毎年確認しながら、目標達成に向けて尽力しています。
■グローバルな衛生課題の解決
革新的で低価格なトイレや衛生ソリューションを提供することにより、2025年までに1億人の人びとの衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献することを目指しています。
当社グループは、目標達成に向け、開発途上国向けの衛生製品を開発・提供するSATO事業を基軸に取り組みを推進しています。2013年に一つの製品から始まったSATO事業は10周年を迎え、地域の特性やニーズに合わせた開発を行い、現在では製品・備品のポートフォリオを拡充し、低価格で耐久性に優れた衛生ソリューションであらゆる地域の人びとの生活の質の向上と明るい未来を支えています。生活の質の向上とともに、市場ニーズが安価なSATOブランド製品から上位製品へ移行することを想定しています。
SATOの革新的な衛生ソリューションは、45ヵ国以上の開発途上国へ約750万台を出荷し,これまでにおよそ4,500万人の衛生環境改善に貢献しています(2023年4月現在)。さらに、製品ソリューションの提供に留まらない取り組みを実施することで、持続可能な衛生市場の創設に貢献しています。SATO事業では、現地における職人や実業家の育成のほか、Make(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを回す現地の生産・販売体制の構築など、総合的なアプローチを推進しています。また、特に深刻な衛生課題を抱える農村や都市部の住民に対しては、独創的な啓発活動を通じて、世界の衛生課題に関する理解を促進しています。ユニセフとのグローバルパートナーシップの拡大、米国国際開発庁(USAID)との正式なパートナーシップの締結、FINISH Mondialとの金融サービスを融合した連携のほか、国際協力機構(JICA)やNGO、現地のメーカーや販売店との連携を通じて、1億人の衛生環境と生活の質の向上という野心的な目標を掲げることで、SATOの革新的な製品・サービスの提供に留まらないインパクト拡大を推進しています。現地における人材育成やサプライチェーン構築、事業創出・雇用創出などを含めた衛生市場の確立に向けたインパクトが、自立的・持続的に広がることを目指して、今後も取り組みを推進していきます。
水と衛生分野の課題解決に向けては、世界各地で進む行政による投資及び取り組みと、民間企業が持つ専門的な知見や革新的な技術を効果的に組み合わせることで、より大規模なインパクトを実現できます。当社グループは、政府や公共部門などの主要ステークホルダーとの連携を促進し、シナジーの最大化を図ることを目指して、2023年2月に「LIXIL Public Partners」(LPP)を設立しました。LPPは今後1、2年間をかけて、米国での実証プロジェクトを通じて、水と衛生の分野における官民連携モデルや戦略、革新的な技術・サービスなどを検証する予定です。この検証を踏まえて、グローバルに官民連携モデルの展開を加速させていくことを目指します。
■水の保全と環境保護
「LIXIL環境ビジョン2050」では、「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、環境に関する重要課題のうち「気候変動対策を通じた緩和と適応」「水の持続可能性を追求」「資源の循環利用を促進」をビジョン実現に向けた重点領域に定めています。重点領域を推進するための共通の基盤として、製品ライフサイクルを通じた環境負荷の低減、全社の環境マネジメント強化、及び各領域に深く関連する生物多様性の保全にも取り組んでいます。2050年までに、環境分野のリーディングカンパニーを目指し、事業プロセスと製品・サービスを通じてCO2の排出を実質ゼロにし、水の恩恵と限りある資源を次世代につなぎます。
・「気候変動対策を通じた緩和と適応」
当社グループでは、環境負荷低減に努めると同時に、環境に配慮した製品やサービスの提供を通じて2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指します。さらに、当社グループの事業プロセス及び製品やサービスが直接的に排出するCO2排出量だけにとどまらず、社会全体におけるCO2排出量の削減に貢献することが重要と捉えています。また、気候変動の影響による雨量の増加、大型台風などの自然災害、気温上昇などによる被害の軽減に貢献する製品・サービスを提供し、気候変動への適応策を推進しています。
・「水の持続可能性を追求」
当社グループでは、人びとが水の恩恵を最大限に活用できるよう、グローバルな水の持続可能性を追求しています。その実現に向け、事業プロセスにおける水使用効率の向上や水不足拠点における水使用量の削減、節水関連の製品・サービスによる水使用削減への貢献などを通じて、責任ある水の使用を推進します。また、安全で衛生的な水と、水へのアクセス向上に向けて政府や公共部門などと取り組み、水道水へのアクセスがある地域においては、浄水技術の活用により、安全性を高めたおいしい水を提供します。これらの取り組みを通じて、水の環境価値を創造します。
・「資源の循環利用を促進」
当社グループで使用する金属、木材、樹脂、セラミックなど様々な原材料の調達から製造、使用、廃棄までの製品ライフサイクル全体において、持続可能な利用や資源循環の取り組みを全社で推進しています。リサイクル素材の活用や再利用に配慮した設計といった循環型のものづくりを推進するほか、「LIXILプラスチック行動宣言」のもと、プラスチックの使用量削減や循環利用、代替素材の開発などを推進しています。原材料を確保し、社会と事業の継続性に貢献するべく、貴重な資源を最大活用に取り組んでいます。
当社グループは、2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しました。TCFD提言を踏まえ、気候変動問題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、2022年6月から情報開示フレームワーク(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った情報開示を行なっています。また、執行役会及び取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進め、2022年6月に「気候変動対策を通じた緩和と適応」、2023年3月には、各領域において、当社グループの事業プロセスとバリューチェーン、さらには既存事業の枠を超えて地球環境及び社会に対するインパクトを拡大することを目指し、「水の持続可能性を追求」「資源の循環利用を促進」の領域における中期目標を策定し、環境ビジョン2050の実現に向けた包括的なアプローチを定めるなど、戦略の見直しを行いました。
■多様性の尊重
当社グループは、多様な従業員の英知や視点を活かしたイノベーションや社内外との様々なコラボレーションを通じて、多様化する顧客ニーズに応え、年齢、性別、障がいの有無を問わずすべての人びとの健康で快適な暮らしを支えることを目指しています。
顧客志向を徹底し、多様なニーズに対応したイノベーションや持続可能な成長を実現していく上で、多様な従業員の潜在能力を引き出すことができるインクルーシブな環境の構築が重要であると考え、「Diversity & Inclusion」(D&I)を推進しています。
D&I戦略においては、2030年までに当社グループ全体にインクルージョンの文化を定着させ、ジェンダー不均衡を是正する目標を掲げています。目標達成に向けたアクションプランを策定し、人材育成や職場環境づくりにおいてD&Iの観点を組み込んだ施策を段階的に進めています。
また、D&I推進の重要な柱の一つとして、障がいのある方が活躍しやすい職場づくりにも注力しています。
多様な人びとがお互いを尊重しながら活き活きと暮らすことができる「ユニバーサル社会」の実現に向けて、多様な従業員の英知や視点を活かした誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)の推進を行うとともに、多様性への理解を促進する啓発活動などに取り組んでいます。UDのコンセプトに「ひとりにいい、みんなにいい、ずっといい。」を掲げ、多様なライフスタイルに寄り添った住宅設備・水回り製品を提供するほか、誰もが安心して快適に利用できるパブリックトイレの実現に向けた研究・提案なども行っています。
エンドユーザーのニーズに応えるだけでなく、UDウェブサイトやパブリックトイレの情報を集約した「LIXILパブリックトイレラボ」などを通じた情報発信、障がいのある方への理解を促進する啓発活動や大学との共同研究などにも取り組むことで、社会により良い変化をもたらしています。
(3)リスク管理
当社グループは、事業活動を通じて世の中に与えるインパクトを最大化するため、インパクト戦略室、リスクマネジメント部門、経理財務部門が緊密に連携し、当社グループ共通の基準に基づき定期的に「重要課題」の目標達成を阻害する可能性のあるリスクを、特定・評価し、対応すべきリスクの優先順位を決定しています。また、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、当該リスクに応じた対策を立案・実行するとともに、対策の進捗状況をモニタリングして継続的に改善することで、ステークホルダーに対する持続的な価値の創造を実現しています。詳細は、
(4)指標及び目標
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指標 |
目標 |
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グローバルな 衛生課題の解決 |
衛生環境の改善に関する取り組みを通じた生活の質の向上 |
2025年までに1億人 |
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水の保全と 環境保護 |
Scope1,2によるCO2排出量 |
2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比) |
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Scope3によるCO2排出量(注) |
2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比) |
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Scope1~3によるCO2排出量 |
2051年3月期までに実質ゼロ |
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戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本) |
2026年3月期までに100% |
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節湯水栓・節水型トイレの販売構成比(日本) |
2031年3月期までに100% |
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水使用効率向上 |
2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比) |
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節水製品による水使用削減貢献量 |
2025年3月期までに年間20億㎥ |
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廃棄物などのリサイクル率 |
2026年3月期までに90% |
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リサイクルアルミの使用比率 |
2031年3月期までに100% |
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多様性の尊重 |
女性取締役・執行役比率 |
2030年3月期までに50% |
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女性管理職比率(グローバル) |
2030年3月期までに30% |
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新卒女性比率(株式会社LIXIL) |
50% |
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(注)製品使用において間接的に消費される給湯エネルギーなどに由来した排出量は除いています。
気候変動を含む環境課題に関する情報開示(TCFD提言への対応について)
<ガバナンス>
当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略委員会を設置しています。環境戦略委員会は、四半期に1回以上開催し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動から生じるリスクや機会を含む環境課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の環境目標管理とモニタリングなど、環境戦略の構築と実行を実施しています。環境戦略委員会で協議・決議された内容は、インパクト戦略委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されています。執行役会は、環境課題を含めた重要課題に関する目標や実行計画について協議・承認し、取締役会は、それらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。
<戦略>
当社グループでは、気候変動が短期・中期・長期の視点で自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定するためにシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理的リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界観を想定しています。この2つのシナリオにおいて気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、当社グループの環境戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来リスクの低減につなげ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めています。当連結会計年度は、気候変動との関連性の高い水や資源に関わる戦略との統合的な管理に着手しました。
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気候変動を含む環境課題のリスクと機会 |
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リスク |
移行 |
①カーボンプライシング導入による操業コストの増加 |
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②市場の変化による原材料・部材調達コストの増加 |
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物理 |
③台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失 |
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④渇水等による自社工場の操業停止による売上機会の喪失 |
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機会 |
⑤日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の 省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加 |
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⑥低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加 |
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⑦災害対策・災害復興商材などの需要増加 |
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⑧節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加 |
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■主要な気候関連のリスクと機会への対応状況
① カーボンプライシング導入による操業コストの増加
事業所(特に製造拠点)のCO2排出量を削減するために、生産効率性の向上、不良率の良化、燃焼効率の改善、トップランナー機器への更新等を進めています。また、太陽光発電システムの設置や経済合理性のある再生可能エネルギーの調達を進めており、事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す企業イニシアティブ「RE100」に加盟しています。海外事業において、すべての水栓金具工場・物流センター(全10拠点)のほか、当連結会計年度には、メキシコの生産工場3拠点を100%再生可能エネルギーに切り替えています。国内では洗面化粧台の生産工場である大谷工場の屋根にPPAモデルによる太陽光発電設備の稼働を開始し、水栓金具の生産工場である尾道工場でも2023年8月から稼働する予定です。今後も再生可能エネルギーの調達方法において、PPAモデルをはじめとした“追加性”が高い手法の導入を積極的に検討していきます。また、国内の営業拠点やショールームを含むオフィスでは、8割以上がすでに再生可能エネルギーへの切り替えが完了しています。さらに、脱炭素社会の実現に向けて、2030年以降の実用化を目指した事業活動におけるイノベーションの取り組みのひとつとして、水素燃料への転換を見据えた製造技術検証を継続的に行ってきました。アルミ溶解工程、衛生陶器やタイルの焼成工程で使用する高温炉の検証として水素燃焼実験を行い、従来の天然ガスと同様に問題なく水素が使用可能であることを確認しました。また、アルミ形材の製造工程においては、高温の溶解工程以外でも水素への燃料転換を展開することを見据えて、品質影響が懸念されるアルミエージング処理工程において、当社グループの生産工場の量産設備で実証実験を行い成功しました。また、中長期での戦略的な省エネルギー投資を後押しするためのより実効性のあるインターナルカーボンプライシング制度の検証を進めています。
② 市場の変化による原材料・部材調達コストの増加
原材料・部材の調達によるCO2排出量を削減するために、より低炭素な原材料・部材への切り替え、製品の薄肉化、部品点数削減などを進めています。当連結会計年度から、バリューチェーン全体の現状を把握し、効果的なCO2排出削減活動に取り組めるよう、調達CO2総排出量の上位80%のサプライヤーの皆さまとのエンゲージメント活動を開始しました。調達CO2削減に影響の大きいサプライヤーの皆さまに対して、CO2排出量集計や削減目標設定の状況を把握するためのアンケート調査を実施しました。今後も、調査結果をもとにコミュニケーションを進め、原材料の安定供給や責任ある調達に加えて、調達CO2削減に向けた連携を強化していきます。
③ 台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失
大規模自然災害を想定した際のリスクとして、当社の本社、事業所、工場含む全域における被害想定をもとに、各工場における事業継続計画(BCP)活動を実施し、災害リスクの最小化を進めています。また、製品供給における対策として調達先の適正化、適切な在庫確保、バックアップ生産体制の構築などを進めています。他にも、当社及び国内の連結子会社が所有・使用・管理する固定資産が火災や風水災等の不測かつ突発的な事故に遭った際に補償される保険プログラムに加入しています。
④ 渇水等による自社工場の操業停止による売上機会の喪失
世界で水不足が深刻化する中、地域の実情を把握し適切な施策を実行するため、当社グループでは、2017年3月期から製造プロセスで水を使用する生産拠点77拠点における水リスク調査を実施しています。リスク評価のプロセスでは、まず国際的な評価ツール(WWF Water Risk Filter)により地理的なリスク評価を行い、その中で高リスクと認定された拠点を対象とした調査を実施しています。当連結会計年度には、2031年3月期までに自社の事業プロセスにおける水の使用効率を、2019年3月期を基準年として20%改善する目標を掲げ、今後、自然関連情報開示タスクフォース(TNFD)が示す生物多様性の保全の観点から、水不足拠点における水使用量の削減に取り組んでいきます。
⑤ 日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加
世界の最終エネルギー消費のうち、約3割が建築に起因し、日本での一般的な住宅における消費エネルギーのうち約6割を冷暖房と給湯が占めています。また、日本の住宅の高性能化は欧州などに比べて遅れており、日本の既存住宅の約9割は現行の省エネ基準を満たしておらず、断熱効果の高い「窓」の果たす役割は非常に大きく、地球温暖化対策に向けたドライバーになり得ます。
当社グループは、高い断熱性能や節湯・節水性能、創エネ機能などCO2排出量の削減に貢献する製品・サービスを提供する企業として、住宅・建築物のCO2排出削減に果たす責任は大きいものと認識しています。特に、国内の新築市場は縮小傾向のため、既築住宅の高性能化リフォーム推進が重要な課題となります。住宅1棟をまるごと断熱改修する高性能住宅工法、開口部を簡単に断熱改修できるリフォーム窓・ドア、節湯・節水に貢献する節湯水栓・シャワーや節水型トイレなどの水回り製品を通じてリフォーム活性化に貢献していきます。また、新築戸建て住宅向けの製品についても、前連結会計年度にすべての窓シリーズ製品の刷新を行い、2026年3月期までに日本の新築戸建住宅向けの高性能窓比率100%を目指しています。
⑥ 低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加
調達・製造時にCO2を多く排出する原材料・部品の価格高騰、石油由来のプラスチックに関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に対応していくために、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材や再生可能な素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を進めています。当社グループが展開するGROHEブランドでは、資源の有効活用を促進する「Cradle to Cradle」認証製品を拡充しており、さらに環境製品宣言(EPD)に対応した製品は、18商品群、777品目に達しています。また、国内市場では、ハウジングテクノロジー事業で使用されるアルミ形材について、2031年3月期までにリサイクルアルミニウムを100%使用するという新たな中期目標を設定し、2022年12月には、「エコリーフ環境ラベル」を取得した低炭素型アルミ形材「プレミアル(PremiAL)」シリーズを発売しました。第1弾商品の「プレミアルR70」は原材料の70%にアルミリサイクル材を使用しており、新地金を使用した製品と比べてCO2排出量を55%削減することができます。さらに、原材料すべてにアルミリサイクル材を使用する技術開発に既に成功しており、2023年秋にアルミリサイクル率100%の低炭素型アルミ形材「プレミアル R100」の発売をビル向け建材から予定しています。また、これまで焼却や埋め立てによって処理されていた廃プラスチックと廃木材を融合した新しい循環型素材「レビア」を開発し、「レビア」を使用した第1弾製品として、歩道・広場・公園・建築外構など幅広い用途に使用可能な舗装材「レビアペイブ」を、2023年1月に販売しました。調達から生産、販売、施工、回収に至るエコシステムを構築することで、廃プラスチックの循環利用を促す持続可能なビジネスモデルを確立し、廃棄物とCO2排出量の削減、土壌や水、社会全体に有害な廃プラスチックによる汚染の低減に取り組んでいきます。その他にも樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品よりも約3倍に拡大した樹脂窓、再生樹脂及び再生木粉を利用した人工木デッキ、スパウト(吐水口部分)だけを後から浄水機能付きスパウトに取り替えられるアップグレード可能なキッチン用水栓など、消費者の選択肢を広げサステナブルな暮らしを提案する製品・サービスの開発と提供を進めていきます。
⑦ 災害対策・災害復興商材などの需要増加
台風や豪雨といった自然災害被害の増加や猛暑による熱中症の増加に伴い、今の窓に簡単に取り付け可能で台風時の強い風による飛来物から窓を守るシャッター・雨戸、強い日差しを窓の外側でカットする「スタイルシェード」、断水時には洗浄水量を5リットルから1リットルに切り替えられるパブリック向け衛生陶器「レジリエンストイレ」等の気候変動への適応に資する製品の開発と提供を進めていきます。
また、熱中症やヒートショックを引き起こす一因である室内温度と冷暖房の効率の重要性についてステークホルダーとともに考える多様な活動「Think Heat」や、災害から家族を守る家をつくるための活動「減災プロジェクト」を推進しています。
⑧ 節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加
水の効率的な利用を促進する製品やソリューションの提供を通じて、エンドユーザーの責任ある水利用をサポートし、日常生活における節水につなげています。節水型トイレや水栓、スマートコントローラーなどの製品の提供を通じて、2025年3月期までに、世界で年間20億㎥の水使用量の削減に貢献することを目指しています。また、より良い住まいには、シャワーや手洗い、飲料水など、清潔で安全な水が不可欠です。当社グループは、製品の提供だけにとどまらず、消費者や地域社会と連携することで行動変容を促し、より安全な水の提供と水の汚染リスクの低減にも取り組んでいます。さらにパートナーとの協働を通じて、地域や文化によって異なる課題に対応するソリューションを開発し、より効率的で責任ある水利用を促進するため、水不足への対応、使用効率の改善、安全性の向上、再利用の促進といった様々な水の課題に関する議論を活性化し、政策提言を行っていきます。
<リスク管理>
当社グループは、気候関連のリスク及び機会については環境戦略委員会の責任のもとでTCFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要なリスク及び機会を特定し、影響の度合いを評価しています。気候関連の移行リスク及び機会を事業等のリスクにおける戦略リスク、物理リスクをオペレーショナルリスクと紐づけることで、組織全体の総合的リスク管理との整合を図っています。
リスク管理においては、それぞれのリスクの重要性を判断した上で、あらゆる階層の組織で対応策を立案、実行し、進捗状況をモニターすることで、継続的に改善する活動を展開しています。特に、気候関連を含む環境リスク及び機会への対応については、環境戦略に反映させ、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行うプロセス構築を進めています。詳細は、
<指標及び目標>
当社グループは、環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までに事業プロセスと製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。当連結会計年度には、CO2削減目標について2030年までの中期目標をScience Based Targets initiative(SBTi)が示す2℃水準から1.5℃水準へ上方修正し、SBTiによる目標認定を更新しました。また、水と資源に関わる2030年に向けた中期目標を追加しました。
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気候関連を含む環境リスク及び機会を評価する指標 |
目標 |
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リスクへの対応 |
Scope1,2によるCO2排出量 |
2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比) |
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Scope3によるCO2排出量(注) |
2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比) |
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Scope1~3によるCO2排出量 |
2051年3月期までに実質ゼロ |
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水使用効率向上 |
2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比) |
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廃棄物などのリサイクル率 |
2026年3月期までに90% |
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機会への対応 |
戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本) |
2026年3月期までに100% |
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節湯水栓・節水型トイレの販売構成比(日本) |
2031年3月期までに100% |
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節水製品による水使用削減貢献量 |
2025年3月期までに年間20億㎥ |
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リサイクルアルミの使用比率 |
2031年3月期までに100% |
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(注)製品使用において間接的に消費される給湯エネルギーなどに由来した排出量は除いています。
人的資本・多様性に関する情報開示
<ガバナンス>
当社グループは、2020年3月期にDiversity & Inclusion(D&I)をグローバルに推進する部門を設置し、当社グループ共通のD&I推進施策の展開に取り組んできました。また、前連結会計年度には、CEOを議長とし執行役と部門長で構成されるD&I委員会を設立し、D&I戦略や推進施策を更新しました。D&I委員会において審議・決定されたD&I戦略に基づく様々な施策は「インパクト戦略委員会(旧コーポレート・レスポンシビリティ委員会)」において定期的に進捗を確認するなど、当社グループ全体でD&Iの取り組みを加速させています。
<戦略>
当社グループは、その存在意義の追求に向け、より機動的で起業家精神にあふれ、実力主義に基づいた働き方への転換を推進してきました。併せて私たちの働き方や、企業と従業員の関係は、急速に進化しており、事業の成功のためには、企業にとって最も重要な人的資本である人材への投資とD&Iの実現が必要不可欠です。当社グループの人事部門であるGPO(Global People Organization)は、「従業員の誰もが自信を持ちどこででも活躍できるよう、LIXILを革新的でインクルーシブな組織へ変革」するというミッションを掲げ、2022年3月期~2025年3月期のグローバル人事戦略における、以下の5つのKPO(Key Performance Outcome)を策定しました。
① インクルージョンをLIXILのDNAに組み込む
当社グループでは、インクルージョンが目指す目標であり、ダイバーシティはその結果として生まれるものである、と考えています。当社グループで働くすべての人が、当社グループの将来の競争優位性を確保する上でのD&Iの重要性、及び、D&Iを重視する文化とイノベーションを生む文化は密接な関係にあるということを理解するよう、包括的で戦略的な取り組みを経営陣主導で推進しています。
② 人材育成への投資
より効果的に変革を推進し、当社グループの将来にとって不可欠なイノベーションを生む文化の担い手となる人材への投資を進めます。また、バイアスを排除した採用に始まり、人材育成の加速に至るまで、基盤となるインフラの構築に取り組み、従業員の能力開発、人事評価やリーダーシップ研修等の各種制度とプロセスを全社的に管理することで、グローバルな人材活用を進めています。
③ LIXIL全体で従業員エクスペリエンスを向上させる
従業員を事業活動の中心に据え、従業員の声に耳を傾けて、一人一人のライフステージに寄り添いながら、従業員エクスペリエンスを向上させます。定期的なサーベイを通じて従業員のエンゲージメントを測り、部下を持つ管理職が従業員データ、分析ツール、レポートにタイムリーにアクセスできるようにすることで、各々のチームメンバーのキャリアジャーニーの支援や能力開発の促進に活かしていきます。
④ インフラストラクチャーを強化して効率化と統治を図る
Human Resources(HR)ガバナンスを強化することで、人事データやガバナンスのモデルと体制を強化します。様々なシステムやプロセスをグローバルで管理することで、一貫性と透明性のあるレポーティングと意思決定を可能にします。
⑤ ビジネス変革のためのHR変革
ビジネス変革のためのHR変革を実現すべく、事業ニーズの進化に沿ってHR部門の役割を再定義し、従業員エクスペリエンスの分野で世界をリードできるよう、不可欠な人事機能を特定し、優先的に取り組みます。
<リスク管理>
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要となります。特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、必要な人材を継続的に獲得するために人材獲得や積極的な人材育成に取り組んでいます。詳細は、
<指標と目標>
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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女性取締役・執行役比率 |
2030年3月期までに50% |
31.3% |
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女性管理職比率(グローバル)(注)1 |
2030年3月期までに30% |
17.5% |
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新卒女性比率(株式会社LIXIL)(注)2 |
50% |
34.1% |
(注)1.対象は国内及び海外の直雇用従業員です。ただし、売却された子会社及び従業員数100人以下の国内子会社は除いています。また、当連結会計年度の実績は、当連結会計年度において取得した子会社も除いています。なお、当連結会計年度の実績は、当社ウェブサイトに掲載するデータブックにおいて、2023年8月に第三者保証を受ける予定です。
2.当連結会計年度の実績は、2023年4月1日付入社の比率を記載しています。
当社グループでは、事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、それらについてグループ共通の基準(事業計画への影響度と発生可能性等)で評価を行い、グループ内での事業規模の違いや外部環境の変化等に基づき、経営者の目線からリスク間の相対的な関係を考慮した上で対処すべきリスクの優先順位を決定しています。
なお、リスクの洗い出しに際して、リスクを戦略リスクとオペレーショナルリスクに分類し、それぞれ以下のように定義しています。
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戦略リスク |
事業戦略の策定及び遂行により獲得を企図する成果が予定通り獲得できない程度及びその発生可能性であり、健全な範囲で事業成果を獲得するために敢えて選択して取るリスク |
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オペレーショナルリスク |
戦略遂行を支えるオペレーション上の事象による損失額及び事象発生可能性であり、事業遂行上一定以下に抑制すべきリスク |
これらに基づき、リスクにおける重要性を判断した上で、当社グループの各事業、管理部門、マネジメントの各レベルが当該リスクに応じた対策を立案、実行し、対策の進捗状況をモニターし、継続的に改善する活動を展開しています。
また、監査委員会は取締役会、執行役会及び各委員会への参加、重要書類の閲覧、会計監査人とのコミュニケーション等を通じて、対処すべき優先順位の高いリスクについて適切な対策が実行されているかモニターしています。なお、上記に加えて、必要に応じて各事業及び子会社に対する往査も実施しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについて、影響度、発生可能性、重要性の前年からの変化をリスクマップに一覧化し、詳細な情報を記載しています。当社グループでは、各リスクについてグループ共通の基準で評価した結果を一元的に管理するために、戦略リスクとオペレーショナルリスクを同一のリスクマップに表示しています。なお、以下に示す発生可能性及び影響度の評価は対応策を考慮した後の評価(残余リスク)となります。
また、記載しているリスクや対応策が互いに強く連関している場合は参照リスクとして該当番号を記載していますが、すべての連関を網羅するものではありません。
各リスクに紐づいている重要課題については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。各リスクが重要課題の目標達成を阻害する又は未達成により発生する等の関連性がある場合、該当する重要課題を記載しています。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(リスクマップ及び凡例)
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事業等のリスク |
2023年3月期の以下に関するリスク |
発生 可能性 (注)1 |
影響度 |
重要性の 前年からの変化 |
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戦略リスク |
事業横断的な リスク |
(1) |
経済状況、為替相場・金利の変動 |
高 |
高 |
同水準 |
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(2) |
地政学 |
高 |
中 |
新規 |
|||
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(3) |
新製品の開発(注)2 |
中 |
中 |
同水準 |
|||
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(4) |
原材料等の調達 |
中 |
中 |
同水準 |
|||
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(5) |
環境(気候変動、水、資源) |
中 |
中 |
同水準 |
|||
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(6) |
事業再編 |
低 |
中 |
同水準 |
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(7) |
他社との連携・企業買収等 |
低 |
低 |
同水準 |
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(8) |
人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進 |
中 |
中 |
同水準 |
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事業特有のリスク |
ウォーターテクノロジー事業 |
(9) |
販売チャネル |
中 |
中 |
同水準 |
|
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(10) |
ブランド |
低 |
高 |
同水準 |
|||
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ハウジングテクノロジー事業 |
(11) |
競合他社との競争・製品価格 |
中 |
中 |
同水準 |
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オペレーショナル リスク |
(12) |
災害・事故・感染症等(注)3 |
中 |
高 |
同水準 |
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(13) |
情報・サイバーセキュリティ |
高 |
中 |
同水準 |
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(14) |
知的財産(注)4 |
低→中 |
中 |
増加 |
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(15) |
繰延税金資産の回収可能性 |
低 |
中 |
同水準 |
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(16) |
規制強化 |
低 |
低 |
新規 |
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(注)1.前連結会計年度の評価から変更のあったリスクについて、前連結会計年度の発生可能性を併記しています。
2.前連結会計年度の「製造物責任や補償請求に関するリスク」は、新製品の開発に関連するものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
3.前連結会計年度の「設備等の操業度に関するリスク」は、災害等によるものが多いため当連結会計年度より本リスクに包含しています。
4.前連結会計年度の「訴訟その他法的手続に関するリスク」は、知的財産権に関する重要性の高まりを踏まえ、リスク名称を変更し、当連結会計年度より本リスクに包含しています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(1) 経済状況、為替相場・金利の変動に関するリスク
当社グループは、グローバルに販売活動を行っており、その売上収益は世界における需要、景気、物価の変動、産業・業界の動向に影響を受けます。例えばアルミ、銅、樹脂、半導体など原材料価格や物流コスト、エネルギーコストの上昇は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に日本国内においては、新設住宅着工戸数や建設会社の建設工事受注高の大幅な変動が同様に当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、為替相場の変動は、当社グループの外貨建取引により発生する資産及び負債の円貨換算額や外貨建で取引されている製品の価格や売上収益等にも重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債によっており、市場金利が著しく上昇した場合には当社グループの資金調達に係る金利負担が増加し、借入や社債発行による資金調達の難航や支払利息・社債利息が増加する等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(2)(3)(4)(12)(16))
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発生可能性 |
高 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
当社グループ全体における販売活動においては、適切なタイミングにおける価格改定を実施し、価格の適正化を図っています。日本での販売活動においては、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数減少の予想を踏まえ、新築市場におけるシェアの拡大の取り組みのみならず、中高級品市場への拡販、リフォーム戦略の強化を進めています。また、生産活動においては、代替調達先の確保による製品・原材料を含めた適切な在庫水準の維持により、安定的な供給体制の構築に努めています。 さらに、日本の財務部門において、運転資金及び投融資による資金需要を把握し、投資審査委員会等で案件を審査する体制を構築しています。また、日本の財務部門の他に、中国、シンガポール、ドイツ、米国に1か所ずつ計4拠点の「リージョナル・トレジャリー・センター」を設置し、各拠点において為替相場の動向を月次でモニタリングするとともに、必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、為替相場の変動影響を低減しています。当該「リージョナル・トレジャリー・センター」に各地域における資金管理業務等を集約することにより、資金調達の効率化及び安定化を進めています。 |
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重要課題 との関連性 |
すべて |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(2) 地政学に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、地政学の影響を広範囲に受ける可能性があります。国際情勢や多国間の国際関係は、原材料、資源・エネルギー価格や輸送費の高騰及び調達リスク、物流における供給停滞・遅延といった直接的な影響に加え、世界的な物価高や政策金利への影響を増長させるといった間接的な影響もあり、多岐にわたる他のリスクと複雑に関係し、それらの影響及び不確実性を増長する可能性があります。また、各国の経済安全保障政策が強化され、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止、戦争・紛争が発生した地域における長期事業停止や事業撤退等、予期しない政策や法規制等の変更、また社会的な期待の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
複数のリスクに連関する地政学に関するリスクは従前から認識はしていたものの、近年の国際情勢の緊張の高まりを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(4)(12)(13)(16))
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発生可能性 |
高 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
新規 |
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対応策 |
事業継続に関わる対応を様々な面から強化しています。供給網の寸断に対応するため、2次サプライヤーも考慮したカントリーリスク対応を推進し、サプライヤーが特定国・地域に過度に偏ることがないようバランスを考慮しています。物流では供給網の寸断に加えエネルギーコストも考慮してグローバルのサプライチェーンを地域内に順次変更しています。また欧州における配送センターの再編、北米においてはメキシコの生産力を高め地域内での供給体制を強化し、国内においても複数拠点の生産体制や工場間の応援生産体制の整備、適切な在庫水準の維持を進めています。 また、外部の第三者機関等を通じて政治情勢、政策変更等をモニタリングすることや、社内のエスカレーションやコミュニケーション強化を行っています。例えば、国内外の事業部やコーポレート部門のリーダー達が政治・地政学・社会的動向リスクを共有・議論できるよう、社内SNSを運用することにより、政情不安等の地政学リスク顕在化の兆候を早期に把握することに努めています。また、地域において迅速な対応が求められる場合も、地域で速やかに立ち上げるタスクフォースと本社が連携をすることで検討・対策実行ができる体制を構築しています。 |
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重要課題 との関連性 |
すべて |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(3) 新製品の開発に関するリスク
当社グループは、常に技術と顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品の開発に努めています。しかしながら、市場や業界のニーズ変化に対応できない、十分な開発投資を維持できず上市に至らない、あるいは新製品の価値が顧客へ効果的に訴求できない場合、将来の成長鈍化と売上収益の低下につながる可能性があります。また、製品に欠陥が生じリコールが発生するリスクもあります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、多額の支払が生じ、当社グループ製品への信頼性や評判に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(4)(16))
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
革新的なスタートアップ企業との提携やグローバル情報ネットワークの活用を通じて、消費者ニーズの変化に迅速に対応する体制を構築しています。自宅にいながら来館時と同様のサービスが受けられる「LIXILオンラインショールーム」や欧州における「GROHE X」など、当社グループ独自のデジタル技術を組み合わせ、エンドユーザーとビジネスパートナーをつなぎ、新たな価値を提供するエコシステムを確立しています。開発にはデザインの総合力を重視し、デザインとテクノロジーを融合させることで新たな価値を生み出す製品開発を加速させています。また、顧客志向を強化するインクルージョン文化の醸成として、「LIXILユニバーサルデザインコンセプト」を積極的に取り入れ、泡シャワー「KINUAMI U」や電動オープナーシステム「DOAC」など、誰もが使いやすい製品の開発、提供に努めています。加えて、脱炭素・資源循環型社会の実現など、企業や個人に対して資源の責任ある利用が求められていることを踏まえ、業界トップクラスのリサイクル率70%を実現したアルミ形材「プレミアル R70」の展開や2031年3月期までにアルミリサイクル率100%を目指すなど、 製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、責任ある資源の使用を推進し、消費者のニーズに訴求しています。 その他、株式会社ヘラルボニーが契約するアーティストが描いた、アール・ブリュット(障害(※)のあるアーティストによって描かれた作品)デザインをタイル製品「エコカラット」に起用し販売するなど、多様性が尊重される社会の実現に向けた新しい製品開発の取り組みも行っています。各製品上市後は業績管理により、市場トレンドと開発戦略の適合性の確認を継続しています。開発プロセスにおいては、各段階で品質に関するゲートを設け、指摘された問題を解決しなければ次のゲートに進むことができないステージゲートシステムを導入し、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性を低減しています。また、従業員を対象とした品質意識調査の実施や毎年の品質テーマを掲げた啓発活動、品質意識を継続的に高めることを目的とした情報メディアの発行など、コストや納期よりも顧客目線での品質を最優先する風土の醸成に努めています。 「障害」という言葉については多様な価値観があり、それぞれの考え方を否定する意図はないことを前提に、本製品においては社会側に障壁があるというヘラルボニーの考え方に賛同し、「障害」という表記で統一しています。 |
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重要課題 との関連性 |
グローバルな衛生課題の解決、気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、 資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、多様性の尊重、 製品の安全性、顧客満足、企業倫理とインテグリティ、リスクマネジメント、 ステークホルダーエンゲージメント、情報セキュリティ |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(4) 原材料等の調達に関するリスク
当社グループの生産活動においては、資材、部品等の供給品を調達しています。そのため、業界の需要増加や事業展開国におけるインフレ等による原材料価格の高騰、為替レートの変動、コモディティの価格変動や重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)の調達可能性の変動の結果、売上原価が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、資材、部品等の供給品は、欠陥や欠品により当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、生産・販売活動と密接に関わる物流業務に関して、運搬物の増加等による調達遅延や石油価格の変動、人件費の高騰などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。(参照リスク(1)(2)(3)(5)(12)(16))
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
原材料価格高騰部分の販売価格への転嫁、価格変動のヘッジを目的としたデリバティブの活用、複数購買の実施、有事における対応力の強いサプライヤーの選定、取引先の信用情報調査や責任ある調達アンケートの実施、取引先との定期的なコミュニケーションの実施、2次サプライヤーも考慮したカントリーリスク対応の推進、定期的な品質テスト、安全在庫量の確保等により、BCPの観点を踏まえた安定的な供給体制の構築に努めています。 銅から安価な亜鉛や樹脂製部品に代替していくなど、可能な限り代替素材への転換を行い、コモディティ価格の高騰の影響の緩和に努めています。さらに、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を推進しています。また、当社グループが掲げる「LIXIL環境ビジョン2050」の注力分野の1つとして資源の循環利用を促進しています。原材料の安全性、原料の再利用、再生可能エネルギー利用とCO2排出管理、責任ある水管理、社会的な公正さの5つの条件を満たした複数の製品が国際的な環境認証「Cradle to Cradle」の認証取得を推進するなど、循環型社会への移行を目指しています。さらに、物流効率の改善に取り組むことで物流費の安定化を図っています。 |
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重要課題 との関連性 |
資源の循環利用の促進、製品ライフサイクルを通じた環境への影響、生物多様性の保全、 製品の安全性、人権、サプライチェーンマネジメント、リスクマネジメント |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(5) 環境(気候変動、水、資源)に関するリスク
当社グループは、製品開発から調達、生産、販売活動に至る事業活動において地球環境保全に向け様々な活動を行っています。特に近年においては、気候変動が自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクが顕在化する可能性が高くなっています。さらに、今後世界的な水問題への対応、原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックや木材に関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に柔軟に対応していかなければ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(4)(16))
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略委員会を設置し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動を含む環境重要課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の目標管理とモニタリングなど、環境戦略を構築し、実行しています。 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言を踏まえ、気候変動問題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、執行役会・取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進めています。移行リスクに対しては、生産活動におけるエネルギー使用効率化や積極的な再生可能エネルギー活用に加えて、今後はサプライチェーン全体での環境負荷削減の取り組みを強化していきます。さらに、インターナルカーボンプライシングのより実効的な運用に向けた検証や、2050年に向けた長期的な脱炭素技術の開発や導入を促進していくための製造技術や製品材料の研究を進めています。また、物理リスクに対しては、BCP計画によるリスク最小化、生産バックアップ体制整備、固定資産への保険、渇水対策のための取水管理などを進めています。 気候関連を含めた移行リスク及び機会への対応においては、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行う管理プロセスの構築を進めています。また、ISO14001若しくは環境マネジメントシステムによる環境関連法令の洗い出しや遵守の点検ルールを定め、運用状況について定期的に内部監査を実施し、内部監査で指摘があった事項については、フォローアップを行い、改善の実施を確認することで、環境マネジメントシステムの効果的な運用につなげています。 LIXIL環境ビジョン2050では「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までのCO2排出ネットゼロ及び水の恩恵と限りある資源を次世代につなぐことを目指した活動を推進しています。その中間目標である2030年までのCO2削減目標(Science Based Targets)については、従来の2℃水準から1.5℃水準へ上方修正し、認定を更新する計画です。さらに、住宅・建築物で使用されるエネルギーや水の削減に貢献するための機会管理の指標として、環境配慮型製品の販売構成比の向上を進めています。 |
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重要課題 との関連性 |
気候変動対策を通じた緩和と適応、水の持続可能性の追求、資源の循環利用の促進、 製品ライフサイクルを通じた環境への影響、環境マネジメント、生物多様性の保全、 サプライチェーンマネジメント、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
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パリ協定及びSDGsの目標13に掲げられているとおり、CO2削減のため、製造・販売活動の見直しや気候変動による影響を低減するための取り組みを実施することが以前にも増して企業に求められています。また、世界的な人口増加や経済成長に伴い、SDGsの目標12や目標6に掲げられているとおり、持続可能な資源利用や節水・浄水技術に対する需要が高まっています。近年では、SDGsの目標14や15に掲げられているとおり、気候変動の影響と合わせて生物多様性の損失がグローバルリスクとして認識が高まり、自然資本に関するリスクの把握や対応に対する評価を求める動きが始まっています。
[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(6) 事業再編に関するリスク
当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の再編、製造拠点や販売・物流網の再編及び人員配置等の適正化による事業の再構築を行うことがあります。これらの施策に関連して、事業再編後の組織において全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
さらに、投融資等の意思決定の際に、事業戦略、領域、展開国等に内在するリスクが的確に識別されず、投資実行後に当初想定していた利益やシナジー効果を実現できないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
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発生可能性 |
低 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
経営陣と従業員とのコミュニケーション強化を図ることにより、当社グループの経営戦略の浸透を図っています。 事業・地域ポートフォリオマネジメントを強化することを通じて経営資源配分の優先順位を明確にすることにより、事業再編後の組織において、シナジー効果の最大化や戦略実効性の向上が早期に実現するよう努めています。事業再編後のスムーズな組織の構築に向けて、M&Aにおける買収先企業のPMIを強化しています。その一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用による子会社のガバナンス強化を推進しています。さらに、当社又はその子会社による会社の新設、事業再編等を含む投融資に関する事項(投融資案件)については、その内容や金額的重要性に応じて適時適切な判断ができるよう、投資審査委員会やM&A委員会による審査や決議をする体制を整えています。 |
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重要課題 との関連性 |
企業倫理とインテグリティ、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(7) 他社との連携・企業買収等に関するリスク
当社グループは、企業買収及び資本参加を含む投資による事業の拡大を企画することがありますが、買収・投資実行後にグループ全体に内在するリスク及び機会を適時・的確に識別することができないことに加え、優秀な人材の離職や人材の融合が進まないことにより、当初想定した利益やシナジー効果を実現できない、あるいは買収後に偶発債務の発生や未認識の債務等が判明する可能性があります。さらに、事業拡大後、当社グループと対象事業の戦略が整合しておらず、全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
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発生可能性 |
低 |
影響度 |
低 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
統合時における対応策として、統合に関するグローバル共通のポリシーを策定し、統合後のレビューやモニタリングプロセスを効率的に整備・運用する体制を強化しています。また、環境や人権などのサステナビリティ項目についても、ポリシーに盛り込んでいます。統合後においては、シナジー創出に向けて効率的でフラットかつシンプルな組織構造の構築を目的とし、意思決定の迅速化を含めた組織変革を推進するとともに、対象事業の従業員が当社グループの一員としてすぐに活躍できるよう、インクルーシブな文化の醸成や環境整備に取り組んでいます。 投融資案件については、その内容や金額的重要性に応じて、投資審査委員会やM&A委員会による審査や決議をする体制を整えています。また、買収先企業のPMI強化の一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用によりガバナンスを強化しています。 なお、対応策については2015年に発覚した当社の海外子会社であったJoyou AGにおいて不適切な会計処理が行われていた事実(Joyou問題)への再発防止策を踏まえたものです。 |
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重要課題 との関連性 |
環境マネジメント、多様性の尊重、人材と能力開発、企業倫理とインテグリティ、 人権、コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント |
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[戦略リスク 事業横断的なリスク]
(8) 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進に関するリスク
当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要です。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、国内外で必要な人材を継続的に採用・維持するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まない場合には、長期的観点から業務運営の効率性が損なわれ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
当社グループにおいて、継続的な事業の発展のためにグループ全体で女性のさらなる活躍、障がいのある従業員のための取り組みや人種における平等、性的マイノリティに関する取り組み等を推進しており、地域ごとに人事制度の改定や拡充を行うほか、グローバル規模の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)として、ジェンダー平等、多文化、障がい、働く親や介護者、LGBTQ+にフォーカスした5つのグループを立ち上げる等、インクルーシブな組織風土を醸成するために様々な活動を行っています。 日本において、新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開するほか、人事・教育体系を充実させ、従業員の定着と育成に努めています。また、グローバルで活躍できる人材を育成するために、各プログラム(海外派遣研修、選抜型の育成プログラム、eラーニング等)を実施しています。多様なバックグラウンドを持つ従業員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、インクルーシブな環境を構築するための取り組みを推進しており、多様な人材を受け入れる企業文化の醸成、在宅勤務等の職場環境の整備、エキスパート制度等の新たな人事制度の構築に取り組んでいます。 さらに、「シェアード・サービス・センター」をアジアのみならず、欧米諸国及び日本においても設立し、各地域におけるガバナンスを強化するとともに、間接業務の集約化や効率化を図ることにより、日本国内あるいはグローバルにおける将来の労働環境に左右されない柔軟な組織を構築することを目指しています。加えて、「報酬・福利厚生委員会」を設置し、グローバルでの処遇の公平性・透明性に向けた取り組みを強化しています。 |
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重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、人材と能力開発、従業員の安全と健康、企業倫理とインテグリティ、人権 |
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近年、高齢化の進行による高齢世帯の増加及び障がい者人口の増加に対応した製品の必要性が高まっています。また、SDGsの目標5にて掲げられているとおり、企業に対して高齢者や障がい者の雇用だけでなく、ジェンダー格差の是正に対する取り組みも求められています。
[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(9) 販売チャネルに関するリスク
当社の連結子会社であるASD Holding Corp.は様々な需要に応じて幅広い製品を展開していますが、近年特に北米を中心として流通構造の変革が起きています。具体的には、エンドユーザーへの直接的な販売の拡大が起きており、ASD Holding Corp.においても、Eコマース(EC)を活用したウェブサイトでの自社製品の販売等を含め、ビジネスの転換を図り、売上の伸長やコスト構造の改革に努めています。しかしながら、このような販路の転換に対して、想定していた顧客数が確保できない等の理由により、その売上成長が鈍化、若しくはコスト構造の改革が計画通りに進まない場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
販売チャネルの拡大を進めるために、従来、外部の販売代理店が行っていた営業活動を内製化し、非住宅設備案件に影響力を持つ施工会社等のステークホルダーに専門性を持った担当者が直接アプローチすることで自社製品の販売促進に努めています。 また、自社のECを活用したウェブサイトで、エンドユーザーからの直接需要を効率的に取り込んでいます。さらに、取引先のECサイトへ新たな機能を追加し、エンドユーザーの購買行動の促進に努めています。 安定した販売活動を支え、運営上の安全性を担保するため、目的に応じ適切な管理システムを導入することで情報漏洩やサイト運営に支障が出ることを事前に防ぐ体制を整えています。また、コスト構造の改革については、当社グループ全体としての効率を重視した製造・物流拠点の選択など、ASD Holding Corp.のみに留まらない改革を進めています。 |
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重要課題 との関連性 |
顧客満足、サプライチェーンマネジメント、情報セキュリティ、 責任あるマーケティングと広告 |
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[戦略リスク 事業特有のリスク ウォーターテクノロジー事業]
(10) ブランドに関するリスク
当社グループの保有する数あるブランドのうち、GROHEブランドは富裕層をターゲットとしたプレミアムブランドとして認知されていますが、競争の激しい環境においてブランド価値を維持し、従来の欧州中心のビジネスのみならず、アジアやアフリカ等の新興国の市場でもGo to Market戦略を企てています。それに伴い、地域特有のニーズに応える製品の開発が求められることがあります。しかしながら、個々の市場に合わせた戦略を実施した結果、シグネチャーエレメンツに対する認識を維持できなくなる可能性があるため、注意深くモニタリングする必要があります。その認識を経済環境に合わせて適切にコントロールできなかったことにより、これまで当社の連結子会社であるLIXIL Europe S.à r.l.が維持してきたGROHEブランドの価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
また、GROHEブランドを維持する際に、テクノロジー内において一貫性のある戦略に基づいた管理がされないことにより、GROHEのブランドやデザインの差別化がなされず、ブランド価値が毀損し、その売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。
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発生可能性 |
低 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
継続的なブランド投資によりブランド価値の維持や、製品開発を実施しています。また、グローバルでGROHEブランド及び競合他社ブランドの販売価格を継続的にモニタリング・分析し、収集した情報を基にブランド戦略に沿った価格を設定・共有した上で、当社グループ全体において統一的な施策を立案・実行できる仕組みを整備しています。その結果、競争の激しい市場においてもブランド価値を反映した価格帯を維持できるよう対応しています。さらに、ウォーターテクノロジー事業におけるGROHEブランドの位置付けについて、事業内の他ブランドとの差別化を図るため、ブランドデザインの使用に関するルールを設け、ブランド価値の維持・管理に努めています。このような総合的なブランド戦略により、GROHEブランドの認知度を高め、市場でのトップポジションを維持することを目指しています。 |
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重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
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[戦略リスク 事業特有のリスク ハウジングテクノロジー事業]
(11) 競合他社との競争・製品価格に関するリスク
当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争に直面しています。特に日本国内の建材市場は寡占市場となっており、売上収益は競合他社の価格設定に影響を受けます。当社グループは高品質で魅力的な製品を市場へ投入する能力を保持していますが、価格面において競争優位に展開できる確証はありません。これにより、製品・サービスが厳しい価格競争に晒され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
競合他社との激しい競争による市場価格の下落に対し、多様なニーズに寄り添った付加価値製品の市場投入による差別化を進め、販売価格の底上げに取り組んでいます。生産活動においても共通部分の生産を汎用設備で行うことで生産スペースを削減(プラットフォーム化)するなど、投資資本効率の向上に努めています。プラットフォーム化により、新製品の早いサイクルでの市場投入を可能とし、時代に合った新しい価値を常に提供し続けることも可能となります。 また、高価格帯の魅力ある製品を開発・販売したことで、当該製品の割合を増やし、製品セールスミックスを改善しています。 その他の取り組みとして、クラウドファンディングを活用し、市場に対して新しい価値を提供する製品を試験的に販売することで、価格ではなく「価値」で顧客に選ばれる取り組みを実施しています。 |
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重要課題 との関連性 |
多様性の尊重、顧客満足、責任あるマーケティングと広告 |
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[オペレーショナルリスク]
(12) 災害・事故・感染症等に関するリスク
当社グループは、日本国内及び海外諸国の複数の拠点において生産・販売活動を行っていることから、各地で発生する地震や台風等の自然災害、未曽有の大事故や感染症によって、当社グループの調達、生産、物流、販売活動や情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害を受ける可能性があります。特に、災害・事故等の発生により、当社グループの国内及び海外工場の生産活動が停止することは、市場への製品供給に深刻な影響を及ぼし、売上収益に悪影響を与える可能性があります。
また、感染症の発生や拡大は当社グループ従業員の健康状態悪化による労働力の低下の可能性や、取引先の生産・販売活動の一部停止等、当社グループの事業活動に支障が出る可能性もあります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(1)(2)(4)(16))
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
高 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
大規模自然災害や事業活動に伴う事故に備え、早期に復旧できるよう事業継続計画(BCP)の策定及び定期的な見直しを実施しています。また、工場の分散、耐震工事の実施、サプライヤーの分散や連携強化等のリスク軽減をはかり、適切な保険を付保することにより、事業への影響を軽減しています。 当社グループでは、従業員及び家族の命の安全確保を最優先に考えています。海外での緊急事態発生に備え、複合リスクへの発展可能性を考慮し、予め有事における対応部門やレポートライン、対応の具体的手順等について協議しています。これを踏まえ有事が発生した際には、現地の最新の安全対策情報等も活用し、従業員とその家族への支援、営業活動や経済制裁など幅広い論点に対応し、情報共有することで経営層が積極的に関与し必要なグローバル対応を行っています。 感染症対策に関して、当社グループでは、在宅勤務の環境整備と運用を従来から推進しており、現状の政府指針や会社の状況などを踏まえ、勤務ガイドライン及びオフィス環境ガイドラインを改定しています。また、感染予防法の周知、感染発生時の対応準備、感染発生時の報告フロー整備などを行い、従業員が安心して働ける環境を構築するとともに、事業活動を従来通り継続することに努めています。 在宅勤務の推進とデジタル技術の活用を踏まえ、有事の際の安否確認、情報共有やコミュニケーションをよりタイムリーに行えるよう努めています。なお、災害発生を含め、有時の行動や対策についても従業員への周知徹底を実施しています。 |
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重要課題 との関連性 |
気候変動対策を通じた緩和と適応、従業員の安全と健康、サプライチェーンマネジメント、 リスクマネジメント |
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[オペレーショナルリスク]
(13) 情報・サイバーセキュリティに関するリスク
当社グループが行う生産・販売活動及び各種事業活動は、コンピュータシステム及びコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用しています。このため、通信ネットワークに生じる障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェア、若しくは、ソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動に支障が出る可能性があります。また、情報システムが適切に導入・更新されていないことによりシステム上の不具合、業務の非効率、生産性低下を招き、事業活動に支障が出る可能性があります。
さらに、当社グループでは、業務を遂行する中で顧客情報をはじめとする様々な個人情報を取り扱う機会があり、厳格な情報管理が求められています。このため、不測の事態により個人情報の遺漏が発生した場合には、社会的信頼の失墜を招くとともに多額の費用負担が生じる可能性があります。その結果、売上収益の減少あるいは販管費等の増加により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。(参照リスク(2))
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発生可能性 |
高 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティに関する社内規程の整備、不正アクセス等を未然に防止するための対策、従業員に対する教育等を実施し、さらにこれらの取り組みを定期的に評価・見直すことにより、情報セキュリティマネジメントの継続的な改善を実施しています。特に、効率的で安定した事業活動の遂行を担保するため、老朽化した基幹システムの刷新を進めています。また、サイバー攻撃全体への対応としてCSIRT (シーサート: Computer Security Incident Response Team)を設置し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、有事の際に適切な対応を実現する体制を構築しました。また、情報セキュリティリスクが顕在化した場合には、緊急時の報告基準とフローに沿ってエスカレーションを行い、事業部門とコーポレート部門が連携し、速やかに初動対応と事業復旧対応が取れる危機管理体制の整備を推進しています。 IoT (Internet of Things)やOT (Operational Technology)も含めたサイバーセキュリティ強化の構築も推進しています。また、個人情報保護に関する法令を遵守すべく、必要な社内規程の整備やEU一般データ保護規則 (GDPR)で要求されるデータ保護責任者を含む個人情報責任者の設置、適切な研修の実施、プロセス整備等を行っています。 さらに、在宅勤務につきましては、従前より導入を進めていましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、より推進されたことに伴い、情報漏洩防止に関するルールの周知・徹底、理解度向上のための従業員教育の強化に努めています。 |
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重要課題 との関連性 |
リスクマネジメント、情報セキュリティ |
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[オペレーショナルリスク]
(14) 知的財産に関するリスク
当社グループは、魅力ある差別化された製品やサービスの開発に努めています。このような製品やサービスに対し、第三者が保有する知的財産権との関係で紛争や交渉が生じる可能性があります。この場合、当該第三者の知的財産権を侵害しない製品やサービスの開発、損害賠償金の支払い、当該第三者の知的財産権のライセンスの取得とロイヤルティの支払い、差止命令による当社グループの製品やサービスの一部について製造販売や提供の中止、を要求される可能性があります。
一方では、当社グループの製品やサービスの差別化要素となる技術やデザイン等が第三者に模倣されることにより、当社グループの製品又はサービスの市場競争力の低下を引き起こす可能性があります。また、当社の商標権等の知的財産権を侵害する模倣品の流通により、当該模倣品を使用した顧客に事故や健康被害等が発生した場合、当社グループへの評判、ブランド価値、当社グループの製品の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらは、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、近年の浄水カートリッジに対する模倣品の増加を踏まえ、発生可能性を「低」から「中」へ変更しています。
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発生可能性 |
中 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
増加 |
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対応策 |
知的財産部門と事業部門が連携し、第三者の知的財産権の調査分析を行う等の知的財産権についてのリスクアセスメントを製品開発のプロセスに組みこむことで、開発段階から訴訟その他の重大な事業リスクの発生を未然に防止する対応をしています。すなわち、第三者の知的財産権についての事前調査や必要なライセンスの取得などの対応を図っています。 また、長期にわたって事業の競争優位性と高収益性を実現するために、競争力の源泉である当社の差別化要素の第三者による模倣を防ぐ対応を行っています。そのため技術開発、製品企画の段階から保護すべき知的財産を特定し、特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を取得し、又は当該知的財産を秘匿する等の対応を図るとともに、日本及び各国における知的財産ポートフォリオマネジメントを推進しています。なお、模倣品に対しては、お客様に対する注意喚起や税関への差止申立て、インターネット販売における監視と排除、当局による摘発への協力等を行い、その流通の防止に努めています。 さらに、知的財産情報をはじめとする各種のデータ分析に基づく知財インテリジェンスを実行し、上記のリスクアセスメントを効率的に行うとともに、戦略的に知的財産ポートフォリオを構築することに活用しています。 |
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重要課題 との関連性 |
リスクマネジメント |
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[オペレーショナルリスク]
(15) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク
当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対してそれらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得は、マネジメントが確認した3か年分の見積りを基礎としています。当該見積りにおいて、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少が予想される中、販売価格の適正化及び政府による住宅省エネ化支援策の拡充も踏まえたリフォーム戦略の強化等による売上収益の増加や原価低減による売上総利益率の改善等の収益性向上を見込んでおり、これらの施策の達成には不確実性が伴います。また、税務上の繰越欠損金の繰越年数や使用上限割合が変更される等、当社グループにとって不利な税制改正が行われる可能性が否定できません。これらの結果、繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
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発生可能性 |
低 |
影響度 |
中 |
重要性の 前年からの変化 |
同水準 |
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対応策 |
見積りの達成にあたっては、当社グループ全体の業績管理を担う企画管理部門によるモニタリングを強化しており、見積りの達成を阻む要因があれば、早期に対応できる体制を構築しています。 さらに、当社CFO直轄組織がガバナンス強化の取り組みの一環として国内外子会社の業績管理プロセスを強化することにより、業績悪化の兆候を早期に捉えるようにしており、税制改正にかかる情報については、当社税務部門において早期に捉えるようにしています。これらの部門が、業績悪化の兆候や税制改正にかかる情報を把握した際には、当社経理財務部門及び税務部門と協議を行い、繰延税金資産の回収可能性に関して見直しの必要性を含めて適時に対策が打てるような体制を構築しています。 |
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重要課題 との関連性 |
税の透明性 |
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[オペレーショナルリスク]
(16) 規制強化に関するリスク
当社グループは、日本国内において事業活動を行う上で、会社法や独占禁止法、個人情報保護法、税法、会計基準等、経営に係る一般的な法令諸規制の適用を受けています。また、海外での事業活動についても、それぞれの国や地域における競争法、個人情報保護法、国際取引規制、その他の法令諸規制の適用を受けています。近年、当社グループの重要な物的資源(アルミ、銅、ステンレス等)又はその原材料を含む自然資源の利用や、非財務情報開示を含むサステナビリティに関わる規制等、新たな法令諸規制の導入について活発に議論されています。また、個人情報保護に関する規制については、グローバルに規制強化の一途を辿っており、その執行も活発化しています。
これらの法令諸規制は、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇、国際情勢や多国間の国際関係の変化、その他の社会情勢の変化などに応じて、将来において急速に新設・変更・廃止され、厳正な法執行が行われる可能性があります。その結果、製品その他サービスの提供の制限や、売上原価の増加、設計・開発段階におけるコスト増、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止等、当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法令諸規制に対応できる人材の確保を含む体制整備や、システム導入に遅れが生じた場合、従来と比較して法令違反のリスクが高まる可能性があります。
規制に関するリスクは事業活動において常に存在するものの、規制が強化され、また新たな規制化の動きが早まっているとともに、その執行も活発化していることを受け、個別の記載としています。(参照リスク(1)(2)(3)(4)(5)(12))
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発生可能性 |
低 |
影響度 |
低 |
重要性の 前年からの変化 |
新規 |
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対応策 |
当社グループは、複雑化し急速に変化し続けるグローバルな規制環境の中で行う事業活動に機動的に対応するため、2022年1月に法務・コンプライアンス部門のグローバルでの組織再編を実施しています。また、2022年4月には個人情報保護をグローバルで統括する専任の組織を立ち上げました。これらの新体制のもと、法務部門を中心とした各地域の法令遵守と法的リスクを抑制するための体制が整備されています。 さらに、法令諸規制に関する情報発信や定期的な教育等により、従業員の理解度を高めるとともに、事業部門とコーポレート部門が規制対応に関して適切に連携できるよう取り組んでいます。規制の新設・変更・廃止が実施された場合には、規程やガイドライン等の作成・更新に加えて、取引先に対するコンプライアンスデューデリジェンスにその内容を反映する等の実務的な方策によって、規制違反の回避に努めています。 |
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重要課題 との関連性 |
すべて |
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は、次のとおりです。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、資材・エネルギー価格の高騰に加え、日米金利差の拡大等に起因する円安の進行及び世界的な金融引締めが国内景気を押し下げるリスクとなっており、ひいてはインフレーションの進行による消費マインドの低下が懸念されています。また、住宅投資に関しては、貸家及び分譲は底堅い動きをみせているものの、持家は住宅ローン金利上昇の懸念や建築資材価格の高止まりの影響等から減退傾向が続いていることもあり、新設住宅着工戸数は軟調に推移し、先行きは不透明な状況となっています。一方で、政府主導で「先進的窓リノベ事業」に対する補助金制度が創設される等、過去に例のない大規模な住宅省エネ化支援策による需要喚起が期待されています。
世界経済に関しては、引き続きロシア・ウクライナ紛争の長期化に伴う資材・エネルギー価格の高騰の影響が続いています。加えて、欧米各国のインフレーションの抑制に向けた急速な金融引締めの動きや、中国のゼロコロナ政策の反動による経済成長の鈍化及び不動産市況の低迷等、地政学的リスクによる景気回復の下振れの懸念が拭えず、状況を注視していく必要があります。
しかしながら、国内・海外とも、新型コロナウイルス感染症の影響が薄れる中、ウィズコロナ/アフターコロナに適応した社会づくりを目指し、大幅な行動制限の緩和とともに経済活動の正常化に向けた動きが加速しており、今後は景気の持ち直しが期待されています。
このような環境のもと、当社グループにおける当連結会計年度の業績は、海外事業においてサプライチェーンの寸断や米国及び中国地域での需要減退の影響等を受けたものの、円安に伴う為替換算の影響に加え、国内事業における価格改定の浸透による増収効果やリフォーム向け製品の売上伸長等もあり、売上収益は1兆4,959億87百万円(前年同期比4.7%増)と増収となりました。一方で、利益面においては、国内・海外とも引き続き構造改革や価格の適正化、収益性改善の施策等の実行に努めたものの、資材・エネルギー及び部品価格のさらなる上昇、欧州地域における物流体制の制約に伴うコスト増加に加え、米国地域における大幅な金利上昇を背景とした需要の軟化、中国地域の市況低迷等による悪化影響をカバーしきれず、事業利益は257億45百万円(前年同期比60.3%減)、営業利益は249億3百万円(前年同期比64.2%減)、継続事業からの税引前利益は197億59百万円(前年同期比70.6%減)とそれぞれ大幅な減益となりました。
(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。
また、当社グループは、当連結会計年度より事業の管理体系を見直したことに伴いセグメント区分を変更し、従来のセグメント区分における「ハウジングテクノロジー事業」、「ビルディングテクノロジー事業」及び「住宅・サービス事業等」を、変更後の区分において「ハウジングテクノロジー事業」としています。このため、前年同期との比較は、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に基づき組み替えて行っています。(以下、「④ 生産、受注及び販売の実績」においても同様です。)
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
増減額 |
増減率 |
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ウォーター 事業 |
売上収益 |
862,157 |
915,285 |
53,128 |
6.2% |
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事業利益 |
76,615 |
47,259 |
△ 29,356 |
△ 38.3% |
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利益率 |
8.9% |
5.2% |
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ハウジング 事業 |
売上収益 |
584,209 |
598,211 |
14,002 |
2.4% |
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事業利益 |
31,661 |
19,360 |
△ 12,301 |
△ 38.9% |
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利益率 |
5.4% |
3.2% |
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消去又は全社 |
売上収益 |
△ 17,788 |
△ 17,509 |
279 |
△ 1.6% |
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事業利益 |
△ 43,401 |
△ 40,874 |
2,527 |
△ 5.8% |
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利益率 |
- |
- |
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合 計 |
売上収益 |
1,428,578 |
1,495,987 |
67,409 |
4.7% |
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事業利益 |
64,875 |
25,745 |
△ 39,130 |
△ 60.3% |
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利益率 |
4.5% |
1.7% |
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[ウォーターテクノロジー事業]
主に水回り製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業は新設住宅着工戸数が弱含みに推移しているものの、価格改定効果の発現に加え、リフォーム関連商品の売上が堅調であったこと等から、前年同期を若干上回る売上収益を確保しました。また、海外事業は米国地域における金利上昇を背景とした需要の軟化や中国地域におけるゼロコロナ政策後の経済活動の回復の遅れの影響等外部環境によるマイナス要因があったものの、円安の進行による為替換算影響に加え、これまでコロナ禍で低迷していたアジア太平洋地域における経済活動の回復等もあり、前年同期比で増収となりました。その結果、同事業の売上収益は9,152億85百万円(前年同期比6.2%増)と増収となりました。
一方で、事業利益は国内・海外とも価格改定効果による粗利の増加、国内におけるリフォーム商品や中高級価格帯商品の売上構成比率の上昇等があったものの、前連結会計年度から続いている資材・エネルギー及び部品価格の高騰に加えて、海外においては欧州地域におけるサプライチェーンの混乱や米国地域における顧客の在庫調整の影響を受けたこと等もあり、472億59百万円(前年同期比38.3%減)と減益となりました。
[ハウジングテクノロジー事業]
主に国内にて住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、これまで取り組んできた価格改定効果の発現に加え、住宅性能・快適性の向上を目的としたリフォーム需要が堅調に推移したこと等により、売上収益は5,982億11百万円(前年同期比2.4%増)と増収となりました。
一方で、事業利益は価格改定による適正な粗利の確保とともに、高性能窓製品の販売伸長や、アセットライト化が軌道に乗ってきたことによる収益性の改善が着実に進んでいるものの、新築住宅の需要低迷による販売数量の減少の影響に加え、想定以上の資材価格の高騰及び海外からの部品調達価格のさらなる上昇による大幅なコスト増加等もあり、193億60百万円(前年同期比38.9%減)と減益となりました。
(注)1.事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。
2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業及びハウジングテクノロジー事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて706億52百万円増加の1兆8,535億34百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度に計上した売却目的で保有する資産が旧本社ビル(WINGビル)の売却完了に伴い減少したものの、主にサプライチェーンの寸断への対応に伴う在庫水準の引き上げ等の影響による棚卸資産の増加があったこと等から、前連結会計年度末に比べて299億26百万円増加の7,445億33百万円となりました。一方、非流動資産は、上場株式の売却によるその他の金融資産の減少等があったものの、主にのれん及びその他の無形資産において円安の進行に伴う為替換算影響に加え子会社の取得による増加があったこと等から、前連結会計年度末に比べて407億26百万円増加の1兆1,090億1百万円となりました。
また、資本は6,277億20百万円、親会社所有者帰属持分比率は33.7%(前連結会計年度末比0.6ポイント減少)です。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。
営業活動によるキャッシュ・フローは、150億5百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて1,032億91百万円の大幅な減少となり、この主な要因は、継続事業からの税引前利益の減少に加えて、営業債務及びその他の債務、営業債権及びその他の債権、棚卸資産等の運転資本の変動に伴う減少があったこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の処分による収入や上場株式の売却による収入があったものの、有形固定資産及び無形資産の取得に加え、子会社の取得による支出があったこと等から293億19百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて45億14百万円の資金減少です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金やリース負債の支払のほか、資本効率の向上と株主還元の強化を目的として自己株式の取得を実施した一方で、社債の新規発行を含む有利子負債の調達と返済を機動的に行ったこと等から198億39百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて1,279億33百万円の大幅な資金増加です。
これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響等を含めると、前連結会計年度末に比べて62億73百万円増加の1,066億77百万円です。
④ 生産、受注及び販売の実績
生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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ウォーターテクノロジー事業 |
487,324 |
107.3 |
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ハウジングテクノロジー事業 |
281,062 |
101.9 |
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合計 |
768,386 |
105.2 |
商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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ウォーターテクノロジー事業 |
109,542 |
122.4 |
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ハウジングテクノロジー事業 |
145,682 |
116.4 |
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合計 |
255,224 |
118.9 |
受注実績
ハウジングテクノロジー事業の工事物件については、受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比 (%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比 (%) |
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ハウジングテクノロジー事業 |
69,097 |
83.8 |
107,586 |
95.2 |
販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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ウォーターテクノロジー事業 |
915,285 |
106.2 |
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ハウジングテクノロジー事業 |
598,211 |
102.4 |
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報告セグメント計 |
1,513,496 |
104.6 |
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セグメント間取引 |
△17,509 |
98.4 |
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合計 |
1,495,987 |
104.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。また、分析に記載した実績値は1億円未満を四捨五入して記載しています。
① 重要な会計上の見積り及び判断、重要な会計方針
重要な見積りを伴う会計方針とは、不確実性があり、かつ翌連結会計年度以降に変更する可能性がある事項、又は当連結会計年度において合理的に用いることができる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。また、当社グループを取り巻く市場の動向や為替変動等の経済情勢により、これらの見積りの不確実性は増大します。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって利用する重要な会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5)重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況に対して、事業全体及びセグメントごとに重要な影響を与えた要因について経営者の視点から見た認識及び分析・評価は、次のとおりです。
[当連結会計年度の業績に対する評価]
当連結会計年度は、急激な円安や資材・部品価格の高騰、欧州におけるサプライチェーンの制約が第3四半期会計期間まで継続するなど、従来以上に厳しい事業環境に対峙した1年でした。
売上収益は、円安の進行や価格改定などにより前年同期比674億円増の1兆4,960億円となった一方で、事業利益はコストの上昇と価格改定の間のタイムラグにより通期ではコスト高の全てを期中に賄うことができず、前年同期比391億円減の257億円と増収減益となりました。
こうした業績は、とりわけ日本国内における急激な円安の進行を背景とした原材料・資材価格の上昇を期中において製品価格へと転嫁しきれなかったこと、及び、世界各地での物価上昇を背景とした需要の軟化に起因した販売面・生産面での影響が主な要因です。
これら収益性回復に向けた課題については、変動費の上昇と固定費の上昇という二つの側面において各別の対応が必要となるものと考えています。
まず、原材料・資材高などの変動費の上昇に対しては、販売価格面での対応が不可欠と考えています。そこで当社では、従来、これを可能な限り機動的に実施することに努めており、第4四半期会計期間には、ようやくコスト上昇に対する価格への転嫁が追いつく兆しが見え始めました。今後もさらなる変動費の上昇が想定される場合には、コストの上昇に即した機動的な販売価格面での対応を通じて収益性の回復と向上を図ってまいります。
一方で、かかる対応により、物価の上昇に起因した需要の軟化が世界各地で顕在化していることも事実です。販売数量の減少は、コストの上昇への対応速度を鈍化させ、生産面においても製品一つあたりの固定費負担を増加させます。こうした固定費負担の増加については、変動費とは異なり、企業におけるさらなる固定費削減努力、そして高付加価値品の拡販努力が求められます。
それゆえ、とりわけ次期においては、財務面での最優先課題として、従来からのROIC経営・管理による資本効率の改善活動を通じた固定費のさらなる削減(アセットライト化)と、高付加価値製品の開発・生産・販売の実現に向けたフリー・キャッシュ・フローの増強策としての在庫水準の適正化に取り組んでまいります。
[ROIC経営による資本効率改善]
財務体質の強化や収益性の向上を通じた資本効率の改善について、当社では2019年よりグローバルでROIC経営を導入しており、ROICの業績評価指標への組み入れを通じたインセンティブの向上と、ROICツリー展開による部門単位での目標設定、月次での改善度合いの管理・報告を実施しています。
・粗利率改善:販売価格と原価低減の両面において事業環境の変化を勝ち抜く取り組みを推進し、利益率の改善を図っています。販売価格については、環境配慮型製品の拡充などによる高付加価値化や差別化製品へのシフトを図るとともに、柔軟な価格設定とこれを可能とする体制の整備に努めています。一方、製造原価については、製造コストの低減につながるアセットライト化を推進しています。
・販管費削減:デジタル化の推進による生産性の向上、ショールームや営業所の集約・最適化、人員配置の最適化に加え、従業員への在宅勤務の浸透・ライフスタイルに合わせた自律的な働き方のさらなる推進を目的に、本社を縮小移転しました。今後もデジタルツールのさらなる活用推進による生産性の向上、間接業務に係るシェアード・サービスの活用などにより、固定費の削減と資本効率の向上に努めていきます。
・税務マネジメント:公正で適切な納税と税務マネジメントを推進していきます。
・CCC改善:サプライチェーンの寸断に対応するため、製品供給の安定化を目的とした在庫の戦略的な積み増しなどにより、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は、前連結会計年度末比17.7日増の99.2日となり、在庫回転日数の伸長を主因として長期化しました。次期においては、昨今のサプライチェーン問題の解消を踏まえ、在庫水準を前連結会計年度末時点の水準まで引き下げることによる在庫回転日数の改善に注力します。
・ROI・ROIC管理:投資効率の向上を図るため、投資評価ガイドラインを導入しています。投資判断に採用しているハードルレートは、投資先国のカントリーリスクやインフレーション率の差をベース(例:日本でのハードルレートは10%)に、投資目的区分・案件ごとに算出し判断しています。
・固定資産の維持最適化:アセットライト化を推進し、資本効率の向上を図る方針のもと、当連結会計年度は、前橋工場・横浜工場の閉鎖に加え、本社を縮小移転しました。次期においても、引き続き昨今のサプライチェーンの課題の解消を目的としたサプライチェーンの再編によりアセットライト化を図ってまいります。
・手元資金と有利子負債の圧縮:当連結会計年度は、パートナーシップ構築宣言に基づくサプライヤーへの支払期日短縮、及び、今後の金利上昇を見据えた運転資本の早期確保を目的とした社債の発行等により、純有利子負債は増加しました。次期においては、下半期以降のフリー・キャッシュ・フローの改善を通じて有利子負債の圧縮と財務体質の健全化を図ります。
[財務の安定性確保]
現在は、イノベーションによる将来成長の基盤を築くフェーズにあることから、大型のM&Aや設備投資は検討していません。そのため、当面、大型の借入れや増資計画はありませんが、長期的かつ持続的な成長につながるITや人材、デザイン・ブランドなどの無形資産を主とした成長投資により営業キャッシュ・フローの増加を図るとともに、保有資産の最適化を通じて成長投資に必要な資金の創出を図ります。
次期は、円安の影響、さらなる生産性向上を目指したIT投資の増加により資本的支出の金額が増加しますが、こうした影響を除いたベースでは、概ね650億円程度を目安として、資本効率が高く、将来成長に資する投資目的・案件により多くの資本を投下する方針を継続します。
中長期的かつ持続的な成長のためには、安定的な財務基盤を固める必要があります。
当社では、収益性の向上と財務体質の強化を共に図る上で、ネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下に、また親会社所有者帰属持分比率を35%以上に改善することを中期目標の指標として、アセットライト化の推進に基づく資本効率の向上と有利子負債の削減に取り組んでいきます。
[キャピタルアロケーション・株主還元に対する考え方]
株主還元については、連結配当性向30%以上を配当方針とするとともに、財務状況や利益水準を総合的に勘案した上で、安定的に利益の還元を行うことを基本方針としています。この方針に基づき、当連結会計年度においては1株当たり年間90円を還元するとともに、約100億円の自己株式を取得し、すでに保有していた分と併せて消却を実施しました。なお、次期についても、収益性の改善の継続を前提として1株当たり年間90円を予想しています。
(注)1.ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷{(親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2}
2.ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
[次期の見通しと通期業績予想値]
次期の見通しについては、国内・海外とも新型コロナウイルス感染症の影響が薄れる中で経済環境は持ち直しの動きが続くことが期待されますが、一方でロシア・ウクライナ紛争等の地政学的リスクに起因する世界的な情勢不安に加え、さらなる物価及び金利の上昇や、資材・エネルギー価格の高止まり等の業績圧迫要因が継続することも懸念され、依然として先行きが不透明な状況が続くと見込まれます。
このような事業環境のもと、当社グループにおいては引き続き販売価格の適正化、素材の変更によるコストダウン等を進めているほか、域内での調達及び生産体制への移行、製造工程の現地化等を推進しています。また、国内事業ではリフォーム需要のさらなる獲得強化やビジネスモデルの最適化に取り組んでおり、今後も成長が見込まれる水回り製品の海外市場の需要を取り込むため、高付加価値製品の販売を拡大させます。
一方で、昨今の気候変動に関する消費者や社会の関心の高まりに対しては、これまでも環境配慮型製品の拡充等で対応していましたが、さらに持続的な成長及び企業価値創造を達成する手段として、当社グループの事業戦略に環境戦略を統合させるとともに、より魅力的で付加価値の高い製品を開発・販売していきたいと考えています。
これまで取り組んできた事業基盤の強化による成果は現れ始めており、長期的な成長への道筋は変わっていません。ステークホルダーの皆さまに提供する価値をさらに高め、ひいては、当社グループの存在意義である「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」に向けて前進していく所存です。
このような中、次期の通期業績予想値につきましては、上記のような事業環境・経営戦略を反映させた結果、売上収益は1兆5,300億円(前年同期比2.3%増)、事業利益は400億円(前年同期比55.4%増)、営業利益は280億円(前年同期比12.4%増)、継続事業からの税引前利益は210億円(前年同期比6.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は110億円(前年同期比31.2%減)を見込んでいます。
なお、上記の次期見通しは現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。実際の業績は、様々な要因によりこれらの見通しとは異なる結果となることがあります。
(注)1.EPS(基本的1株当たり当期利益)の2024年3月期予想値の算定上の基礎となる期中平均株式数については、2023年3月31日現在の発行済株式数(自己株式数を除く)を使用しています。
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。また、各指標は、以下により算出しています。
ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+
親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2)
ROA :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((総資産額(前期末)+ 総資産額(当期末))÷2)
ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +
固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)
ネット有利子負債:有利子負債 - 現金及び現金同等物
3.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。
資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。
当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴い経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。
当連結会計年度においては、パートナーシップ構築宣言に基づくサプライヤーへの支払期日短縮、及び、今後の金利上昇を見据えた運転資本の早期確保を目的とした社債の発行等により、当連結会計年度末におけるネット有利子負債は前連結会計年度末に比べて874億円増加し5,117億円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,067億円となりました。
なお、財務状況に関する主要指標の推移は、次のとおりです。
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2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
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売上収益事業利益率(%) |
3.5 |
4.2 |
4.5 |
1.7 |
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親会社所有者帰属持分比率(%) |
24.0 |
31.7 |
34.3 |
33.7 |
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ネット有利子負債/EBITDA(倍) |
5.5 |
3.5 |
2.9 |
4.8 |
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。なお、各指標は、以下により算出しています。
ネット有利子負債:有利子負債-現金及び現金同等物
EBITDA :事業利益+減価償却費及び償却費
2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債及び転換社債型新株予約権付社債を対象としています。また、EBITDAの算出に用いた減価償却費及び償却費には、非継続事業に分類したPermasteelisa S.p.A.及び同社子会社並びに株式会社LIXILビバに係る金額を含めていません。
本社移転及び旧本社ビル(WINGビル)の売却について
当社は、前連結会計年度において、当社の本社をWINGビル(東京都江東区)から住友不動産大崎ガーデンタワー(東京都品川区)に移転すること及びWINGビルの建物及び土地を売却することを決定しました。また、当社は、当連結会計年度において、WINGビルの建物及び土地の売却契約を締結し売却しました。
売却の概要については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 12.売却目的で保有する資産」に記載のとおりです。
当社グループでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」という企業としての存在意義「LIXIL’s Purpose」を明確化し、ステークホルダーの皆様と社会に対する持続的な価値創造の実現に取り組んでいます。また、インパクト戦略の推進を通じて、国連が策定した2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献し続けるよう、専門知識や規模を活かしながら社会課題の解決に向けて取り組んでいます。
商品開発においては確かな品質、高い技術に基づいて、快適な住生活・都市環境を実現しお客様に喜ばれる商品を市場に送り出すことを大きな役割と考えており、研究開発部門では、開口部商品、住設機器、内装建材や外装建材から住宅のパネル工法に至るまで、健康、環境負荷低減、高齢者配慮、省資源・省エネルギー等の様々な視点から研究を重ねています。これらの基礎研究、技術開発、商品開発は当社グループの各社における技術研究所、研究開発部門及び商品開発部門が品質保証部門等と連携のもとに取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発費のセグメント別の実績及び総額は、次のとおりです。
(単位:百万円)
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セグメントの名称 |
金額 |
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ウォーターテクノロジー事業 |
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ハウジングテクノロジー事業 |
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合計 |
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[ウォーターテクノロジー事業]
トイレでは、「アメージュ便器」をフルモデルチェンジしました。業界最大の排水芯対応範囲の便器を開発し、市場のさまざまな便器からの交換に必要な部材をセットにすることでリフォームのしやすさを実現しました。
浴室では、入浴スタイル(バスタブ浴・シャワー浴)に応じたアイテム及び機能を搭載した、お客さまのライフスタイルに寄り添うバスルーム「リデア」を発売しました。また、お湯にやさしく包まれ“ハグされる”感覚になり、5分浴びるだけで身体が温まる新感覚シャワー「ボディハグシャワー」をオンライン販売で発売しました。
水栓では、業界トップの長寿命浄水カートリッジを市場に展開するとともに、それを活用したオールインワン浄水水栓を発売しました。
タイルでは、エコカラットの新しいシリーズとして、3つの形状を組み合わせたパターンが特長の石柄デザインで独創性・重厚感・上質を追求した「サンティエ」を最上位価格帯として新たに発売しました。
キッチンでは、濃色スリムデザインワークトップやキッチンテーブルなどが選択できる新キッチン「ノクト」と、お気に入りを仕舞い込まずに収納できる魅せる収納「カノール」を発売しました。
洗面化粧台では、最高級ドレッサー「ルミシス ボウル一体タイプ」に、高まる衛生意識に応える「キレイアップ水栓」の搭載をはじめとする刷新を行いました。
[ハウジングテクノロジー事業]
業界トップのアルミリサイクル率により、新地金使用製品に対してCO2排出量を約55%削減した、低炭素型アルミ形材「プレミアル R70」を発売しました。また、世界的な廃プラスチック課題に対応し、廃プラスチックと廃木材を融合した循環型素材「レビア」を開発、第1弾製品として舗装材「レビアペイブ」を発売しました。
サッシでは、取替窓「リプラス専用枠」に施工・現調性を向上した居室・浴室仕様を追加し、取替窓「リフレム」樹脂窓用にカバーモールを追加しました。ドアでは、スマートフォンをポケットに入れたまま施解錠可能なスマートロックシステム「FamiLock」を仕様追加しました。
エクステリアでは、オールアルミの「カーポートSC」シリーズに3台用と後方支持の2タイプを追加し、庭空間の過ごし方を提案する「プラスG」を3年連続で発売しました。
内装建材では、2022年のイヤーモデルとして、格子でゆるやかにつながる空間と淡い色調の素材が穏やかさを感じさせる新レーベル「ラシッサDキナリモダン」を発売しました。また、安全・安心機能/施工性を向上させた階段商品を発売し、デザインから機能商材まで幅広い提案を行いました。
太陽光発電システムでは、3タイプのモジュールを組合わせ高い発電量を可能にした「Rモジュール」と、ZEHを容易に実現する「建て得新モデル」を発売しました。
ビルサッシでは、業界最高クラスの断熱性能を有するカバー改修サッシ「PRESEA-H・RF」、店装建材「スリムファサード」などの新商品を発売しました。
ハイエンドブランド「NODEA」では、新技術「FORCE CARBON」を用い、フレームレスに限りなく近い極細のフレームと電動でのパラレル&スライド開閉により、閉じた時にまるで一枚のガラスのような面一納まりの大きな窓を世界で初めて実現しました。