独立監査人の監査報告書

 

 

 

2025年6月17日

株式会社LIXIL

 

取締役会 御中

 

 

 

有限責任監査法人 トーマツ

 

 

東京事務所

 

 

 

指定有限責任社員

業務執行社員

 

公認会計士

鈴木 泰司

 

 

指定有限責任社員

業務執行社員

 

公認会計士

山本  大

 

 

指定有限責任社員

業務執行社員

 

公認会計士

大橋 武尚

 

<財務諸表監査>

監査意見

 当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社LIXILの2024年4月1日から2025年3月31日までの第83期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。

 当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、株式会社LIXILの2025年3月31日現在の財政状態及び同日をもって終了する事業年度の経営成績を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

監査意見の根拠

 当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

監査上の主要な検討事項

 監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

 当事業年度の財務諸表の監査において、当監査法人は、以下の事項を監査上の主要な検討事項とした。

 

監査上の主要な検討事項

前事業年度

当事業年度

LIXIL Europe S.à r.l.及びASD Holding Corp.の関係会社株式の評価

繰延税金資産の回収可能性の評価

 

 当事業年度の経営環境としては、海外では欧州及び中東では売上の成長はみられるものの、高い金利水準の継続を背景として米国の市場環境は引き続き低調な状況にある。また、国内では補助金制度を背景としたリフォーム需要は継続して増加する一方、新設住宅着工戸数の落ち込みによる新築向け需要は低迷している。前事業年度に記載した監査上の主要な検討事項に関して、当事業年度においても引き続き見積りの不確実性や経営者による主観的な判断を伴うこと、またそれぞれの残高に金額的重要性、質的重要性が継続して認められることから、前事業年度と同様に当該2項目を当事業年度の監査上の主要な検討事項とした。

 

LIXIL Europe S.à r.l.及びASD Holding Corp.の関係会社株式の評価

監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由

注記事項(重要な会計上の見積り) 1.関係会社株式の評価に記載されているとおり、当事業年度末の貸借対照表における関係会社株式357,297百万円は子会社であるLIXIL Europe S.à r.l. (以下、LIXIL Europe)の株式の簿価 158,994百万円、ASD Holding Corp.(以下、ASD)の株式の簿価 54,688百万円を含んでおり、2社の合計金額は総資産の18%を占めている。

市場価格のない関係会社株式は取得原価をもって貸借対照表価額とするが、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく下落した場合には、相当の減額処理を行う必要がある。減額処理の要否を検討するに当たり、会社は取得原価と超過収益力を反映した実質価額を比較している。連結財務諸表における監査上の主要な検討事項に記載のとおり、当該実質価額に含まれる超過収益力の評価については、連結財政状態計算書に計上されているLIXIL Europe及びASDに係るのれん及び耐用年数を確定できない無形資産の評価と同様の経営者の判断を含んでいる。

以上から、LIXIL Europe及びASDの株式の評価はのれん及び耐用年数を確定できない無形資産の評価により影響を受けるため、当監査法人はLIXIL Europe及びASDの関係会社株式の評価を監査上の主要な検討事項に該当するものと判断した。

 

監査上の対応

当監査法人は、LIXIL Europe及びASDの関係会社株式の実質価額に含まれる超過収益力の評価に当たり、連結財務諸表に対する監査報告書の監査上の主要な検討事項に記載のとおりLIXIL Europe及びASDののれん及び耐用年数を確定できない無形資産の評価を検証した。

加えて、関係会社株式の評価を検討するに当たり、主として以下の監査手続を実施した。

・関係会社株式の減額処理の要否の判定に関する内部統制の整備・運用状況の有効性を評価した。

・経営者により行われたLIXIL Europe及びASDの財政状態に基づく株式の実質価額の評価及び簿価に対する実質価額の著しい下落の有無の評価を検討した。

 

 

 

 

繰延税金資産の回収可能性の評価

監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由

注記事項(重要な会計上の見積り) 2.繰延税金資産の回収可能性に記載されているとおり、会社は当事業年度末の貸借対照表において、繰延税金資産を58,835百万円計上しており、当該金額は、総資産の5%を占めている。そのうち税務上の繰越欠損金に対する繰延税金資産は46,104百万円である。当該税務上の繰越欠損金の主な発生要因は、株式会社LIXILが発行済株式の100%を保有していたPermasteelisa S.p.Aの株式を2020年9月に譲渡したことによる税務上の欠損金が非経常的かつ多額に発生したことによるものであり、該当年度の欠損金の繰越期限は2031年3月期である。

会社は、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金について、それらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を認識している。

 

同注記に記載されているとおり、会社は利用が長期間にわたる見込みである税務上の繰越欠損金を有しており、経営者が承認した事業計画及びタックス・プランニングを基礎として見積った将来の課税所得の発生時期及び金額の仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性を評価している。経営者によって見積られた将来の課税所得の発生状況により税務上の繰越欠損金の一部が期限内に控除できないことが見込まれる場合には、期限切れとなる税務上の繰越欠損金の金額に応じて繰延税金資産を取り崩す会計処理が必要となる。

 

(重要な仮定:5か年分の将来課税所得の見積り)

経営者による見積りの重要な仮定である5か年分の将来課税所得は、以下の市場環境の将来予測及び各施策の達成状況に影響を受けるため、見積りに不確実性が伴い、経営者の主観的な判断を含んでいる。

(1)

市場環境の将来予測

・日本国内における人口減少に伴う住宅着工戸数の減少予測

(2)

ウォーターテクノロジー事業における営業利益の増加施策

・新製品の投入や営業活動の効率化等のリフォーム事業の収益性向上

・サプライチェーンの合理化等による継続的な原価低減

(3)

ハウジングテクノロジー事業における営業利益の増加施策

・脱炭素化に貢献する差別化製品の拡販を中心とした市場シェアの獲得

・先進的窓リノベ事業や断熱改修等に関する政府による今後の支援策についての見込みに基づくリフォーム事業の収益性向上

・生産性の向上や材料歩留まりの向上等による継続的な原価低減

(4)

リビング事業における営業利益の増加施策

・新製品の投入や営業活動の効率化等のリフォーム事業の収益性向上

・サプライチェーンの合理化等による継続的な原価低減

 

 以上より、当監査法人は経営者が用いた将来課税所得の仮定は見積りの不確実性が高く、経営者の主観的な判断により影響を受けるとともに、総資産の5%を占め金額的重要性があるため、繰延税金資産の回収可能性の評価を監査上の主要な検討事項に該当するものと判断した。

 

 

 

 

監査上の対応

当監査法人は、繰延税金資産の回収可能性の評価を検証するに当たり、主として以下の監査手続を実施した。

(内部統制の評価)

● 将来の課税所得の見積りの基礎となった事業計画の策定に係る内部統制を含め、繰延税金資産の回収可能性の見積りに関連する内部統制の整備・運用状況の有効性を評価した。

(将来の課税所得の見積りの評価)

● 税務の専門家を税務処理の妥当性の検討に利用して一時差異及び繰越欠損金の残高について検証するとともに、タックス・プランニングの実行可能性を含め、一時差異及び繰越欠損金の解消する期間に関する経営者の見積りの妥当性を評価した。

● 経営者による将来の課税所得の見積りについて経営者が承認した事業計画との整合性を検討するとともに、過年度に策定された事業計画とその実績、主要な収益性向上施策ごとの利益への影響の見積りとその実績を比較し、その乖離要因の分析を実施することにより、将来計画の見積りの精度を評価した。

● 事業計画に含まれる重要な仮定について、以下の監査手続を実施した。

(上記(1) 市場環境に係る重要な仮定に対応する手続)

・ 競合他社の状況を含む外部環境の理解、住宅着工戸数やリフォーム市場の需要予測等の利用可能な外部データとの比較、過去からの趨勢分析等を実施し、市場環境に係る仮定の妥当性について検討

(上記(2) ウォーターテクノロジー事業施策に対応する手続)

・ 新商品の投入や営業活動の効率化等のリフォーム事業の収益性向上に関する施策の内容を理解し、実現可能性について経営者と協議した上で、関連資料を閲覧し、利益増加見込みの妥当性を検討

・ 将来の原価低減見込みについて過去からの趨勢分析や直近の達成実績と経営者の事業計画の重要な仮定の整合性について検討

(上記(3) ハウジングテクノロジー事業施策に対応する手続)

・ 脱炭素化に貢献する差別化製品の拡販についての内容を理解し、市場シェアの獲得に関する実現可能性について経営者と協議した上で、関連資料を閲覧し、利益増加見込みの妥当性を検討

・ 先進的窓リノベ事業や今後の断熱改修等に関する政府の継続的な支援策に関して、経営者による将来見込みの内容及びその合理性について経営者と議論し、政府の公開情報等との整合性について検討

・ 加えて、当該支援策の見込みを踏まえた会社の対応を含むリフォーム事業の収益性向上に関する施策の内容を理解し、実現可能性について経営者と議論した上で、関連資料を閲覧し、利益増加見込みの妥当性を検討

・ 将来の原価低減見込みについて過去からの趨勢分析や直近の達成実績と経営者の事業計画の重要な仮定の整合性について検討

(上記(4) リビング事業施策に対応する手続)

・ 新商品の投入や営業活動の効率化等のリフォーム事業の収益性向上に関する施策の内容を理解し、実現可能性について経営者と協議した上で、関連資料を閲覧し、利益増加見込みの妥当性を検討

・ 将来の原価低減見込みについて過去からの趨勢分析や直近の達成実績と経営者の事業計画の重要な仮定の整合性について検討

 

 

その他の記載内容

 その他の記載内容は、有価証券報告書に含まれる情報のうち、連結財務諸表及び財務諸表並びにこれらの監査報告書以外の情報である。経営者の責任は、その他の記載内容を作成し開示することにある。また、監査委員会の責任は、その他の記載内容の報告プロセスの整備及び運用における執行役及び取締役の職務の執行を監視することにある。

 当監査法人の財務諸表に対する監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、当監査法人はその他の記載内容に対して意見を表明するものではない。

 財務諸表監査における当監査法人の責任は、その他の記載内容を通読し、通読の過程において、その他の記載内容と財務諸表又は当監査法人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうか検討すること、また、そのような重要な相違以外にその他の記載内容に重要な誤りの兆候があるかどうか注意を払うことにある。

 当監査法人は、実施した作業に基づき、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合には、その事実を報告することが求められている。

 その他の記載内容に関して、当監査法人が報告すべき事項はない。

 

財務諸表に対する経営者及び監査委員会の責任

 経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

 財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

 監査委員会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における執行役及び取締役の職務の執行を監視することにある。

 

財務諸表監査における監査人の責任

 監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

 監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・ 不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・ 財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・ 経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・ 経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・ 財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

 監査人は、監査委員会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

 監査人は、監査委員会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去するための対応策を講じている場合又は阻害要因を許容可能な水準にまで軽減するためのセーフガードを適用している場合はその内容について報告を行う。

 監査人は、監査委員会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

 

<報酬関連情報>

 報酬関連情報は、連結財務諸表の監査報告書に記載されている。

 

利害関係

 会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

以 上

 

 (注)1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しています。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。

 

E01317-000 2025-06-18 E01317-000 2025-06-18 jpcrp_cor:Row1Member E01317-000 2025-06-18 jpcrp_cor:Row2Member