第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針及び経営環境

私たちを取り巻く世界や日々の暮らしは変化を続けています。しかし、より豊かで快適な住まいで暮らしたいという人びとの願いは、いつの時代も変わりません。

LIXILのPurpose(存在意義)は、持続的な成長に向けて、よりアジャイルで起業家精神にあふれた企業になるための取り組みを続け、意思決定を行う際に指針となるものです。従業員は、当社における価値創造の原動力であり、LIXIL Behaviors(3つの行動)を日々の業務の中で実践することで存在意義の実現につなげています。

 

0102010_001.png

0102010_002.png

 

上記のPurposeのもと、当社グループは、人びとの住まいの夢を実現するために、先進的な技術と製品を開発、提供しています。

水の可能性を広げるシャワーや水栓、料理の創作意欲を高めるキッチン。清潔さと快適さを兼ね備えたトイレ。家の中と外の世界をつなぐドアや窓。空間に彩りを添える内装や外装。長い一日の疲れを癒すお風呂。住まいをより豊かで快適にするのは、実は意外とシンプルなことです。

当社は、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカー5社が統合して誕生しました。以後、GROHE、American Standardといった世界的ブランドを傘下に収め、日本のものづくりの伝統を礎に、世界をリードする技術やイノベーションで、日々の暮らしの課題を解決する高品質な製品をグローバルで幅広く提供しています。

 

現在、当社グループは、世界150カ国以上で約48,600人の従業員を擁するグローバル企業となり、毎日10億人以上の人びとに当社グループの製品をご愛用いただいています。今後も生活者視点に立ち、考え抜いた、意味のある製品デザインにこだわり、世界中のあらゆる人びとのより豊かで快適な住まいと暮らしの実現に向けて、さらなる可能性を追求し、責任ある事業成長を推進していきます。

 

 

この数年間、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化し、世界的なインフレーションや物流危機、サプライチェーンの寸断などさまざまな課題に直面しながらも、逆境を乗り越えることで、さらに強い組織へと変革を推進してきました。経営の基本的方向性を示したLIXIL Playbookに基づき、持続的な成長の実現に向けて、着実に前進しています。

 

直近において、グローバル市場は国際政治や経済情勢が複雑さを増し、不透明な経営環境が続いています。そのような中、当社は成長軌道への回帰を果たすべく当期を「足固めの一年」として位置づけ、アセットライト化の推進を含めた構造改革の推進と海外事業の回復、環境変化に左右されにくい事業基盤の構築、を取り組むべき課題として掲げ対応を進めてきました。海外事業の構造改革を進めたことにより、資産の最適化、生産性の向上の両面で着実に成果が出ています。特に米国の浴槽事業について、米国浴室事業大手のAmerican Bath Group(ABG)社への事業の一部譲渡を含む戦略的パートナーシップを締結したことは、米国事業の回復にとって大きな意味を持つものであり、両社のネットワークを通じて販売拡大を目指すとともに、より収益性の高い事業領域に注力することが可能になります。

欧州市場では、主力である西ヨーロッパでの景気低迷にもかかわらず、販売数量が増加し、堅調な業績回復が見られました。特にシャワーと水栓金具の分野では、競合他社を上回り売上を拡大したことは大きな成果です。また、成長著しい中東・インドでも大幅な売上成長を達成しました。地域の特性やニーズに的確に対応できるよう事業運営体制の見直し強化を進め、今後も需要の継続的な拡大が期待できる状況です。

 

日本国内では、新築需要の減少が見込まれる中で、かねてより事業モデルの転換に取り組んできました。当期においてリフォーム需要の取り込みは順調に進み、高断熱窓をはじめ、リフォーム向けの水まわり製品などの開発とプロモーションを強化することで、リフォーム売上比率が拡大しました。

このように、構造改革の推進とイノベーションによる差別化に取り組んできたことで、売上収益、事業利益ともに前年同期比で増収増益と業績を改善させることができました。対処すべき課題はなお残っているものの、中長期的な財務目標の達成に向けた道筋を進むことができていると考えています。

 

次期について、足元では関税をはじめとする政策転換によって米国経済が大きく変化する可能性もあり、先行きが見通しづらい部分もありますが、状況変化には柔軟に対応していきます。国内・海外ともに市場環境は当期と大きくは変わらないと見ているものの、これまでの構造改革を弾みに、本格的な成長軌道への回帰に向けて、引き続き変革を推進していきます。当社はこれまで、より機動的な事業運営とコア事業への戦略的な投資を強化するためのアセットライト化を推進してきました。当期までで海外事業の構造改革は概ね完了したと考えていますが、資産に見合った収益を生んでいない事業については、引き続き最適化に取り組んでいきます。国内市場においても、今後の新設住宅着工戸数の継続的な減少などの市場環境の変化を見据えると、リフォーム需要の取り込み拡大は日本事業において最も重要なテーマです。成長分野であるリフォーム市場において事業間の相乗効果をより高め、幅広い商材を扱う当社ならではの強みを発揮できるよう「リビング事業部」を設置し、製品の総合的な提案を可能にする体制を構築するとともに製造面でもシナジー発揮に向けて努めていきます。また、AI等のデジタル技術の活用などにより生産性を高め、顧客とのより良い関係の構築や業務の効率化につなげていきます。

これに加え、差別化された製品の開発や事業環境の変化への対応により、成長機会を着実に捉えていくための準備を進める必要があります。これまでも社会や環境にインパクト(良い影響)を生み出す差別化製品のラインナップ拡充を図っており、すでに新たなコア事業の芽として期待できるものも出てきています。次期においても、将来に向けたイノベーションの創出に一段と力を入れ、高付加価値で差別化された、革新的な製品の投入、拡販を進めていきます。

なお、当社は持続可能な成長と価値創造を実現していくための長期目標として、事業利益率10%、ROIC10%を掲げています。その長期的な経営指標を達成するための方向性として、2028年3月期までに事業利益1,100億円以上、事業利益率6.5%の達成を目指していきます。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、すべての事業の軸となるPurpose(存在意義)達成の道筋として、2021年3月期に経営の基本的方向性を示すLIXIL Playbookを策定し、取り組むべき優先課題を設定しました。Purposeを追求し、当社グループの特長をさらなる強みへと進化させ、持続的な成長の実現につなげていくロードマップを明確化したものです。先行きが不透明で将来の予測がしにくい事業環境においても、目指すべき方向を明確に示すことで、従業員が一丸となって優先課題に注力することができています。(なお、策定日以降の事業環境の変化に対応させるため、2023年に優先課題の一部改訂を実施しています。)

 

0102010_003.png

 

 

[LIXIL Playbookにおける5つの優先課題]

① インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応

資材や物流費の高騰による影響を踏まえ、販売価格の最適化や、素材の変更によるコストダウンとコスト安定の両立を図るとともに、付加価値の高い差別化製品へのシフトにより収益性改善を進めます。また、グローバルサプライチェーンが寸断されるリスクに備え、調達先の冗長化や生産のプラットフォーム化といった従来からの施策に加え、地域内における調達、生産体制への移行を進めていきます。

 

② 日本事業の最適化と新たな事業成長の追求

日本事業の収益性と機動力を高めるための施策を継続し、従来は水回り製品が中心であったリフォーム商材を窓や壁といった断熱改修にまで広げることで、拡大するリフォーム需要の取込みを強化します。さらに、全ての製品群に関して環境配慮型の製品を導入し、差別化につなげていきます。

 

③ ウォーターテクノロジー事業における海外事業の成長促進

付加価値の高い製品の販売拡大、販売チャネルの多角化、戦略的なブランド・ポートフォリオの構築といった施策を通じて、コモディティビジネスからの脱却を図り、海外市場の成長を着実に取り込むための基盤を強化します。

 

④ 環境戦略の事業戦略への統合

当社グループの環境戦略は、「気候変動対策を通じた緩和と適応」「水の持続可能性を追求」「資源の循環利用を促進」という3つの重点領域を設定しています。環境戦略を事業戦略に統合し、各領域における中期目標の実現に向けて取組みを強化しており、持続的成長と地球環境や社会へのインパクトの拡大を目指します。

 

⑤ 新たなコア事業の創出

将来の成長に向けて、インパクトのある新しい技術、製品、ビジネスモデルの創造を通じて、新たな収益の柱になるようなコア事業の確立を目指しリソースを投入していきます。

 

LIXIL Playbookで掲げた優先課題に沿って、複雑化していた組織の簡素化、基幹事業への注力、サプライチェーンの強化といった取り組みは順調に進捗し、外部変化への対応力を着実に強化してきたという実感があります。しかしながら、海外事業を中心に、取り組むべき課題はまだ残されています。引き続き構造改革を推進し、外部環境に対する組織の弾力性を高めていきます。

 

事業環境は引き続き厳しい状況が続きますが、縮小が見込まれる国内市場の売上比率の高さ、資本効率の改善、利益率の低下といった課題は、企業努力で対処可能な課題であり、経営者として克服に努めていきます。最終的には、私たちの提供する商品すべてが、社会・環境にインパクトを創出し、それらの商品を迅速かつ効率的に、低コストで生み出していくことができる、強靭な事業基盤の構築を目指します。

中長期で目指すのは、「LIXILから商品を買うこと自体が、世の中にとって良い」と認知される、そういう世界を創ることであり、その中核を担うのが、社会・環境にインパクトを生み出す商品群です。2030年には、売上の半分以上をこれらの商品群が占める姿を目指します。LIXIL Playbookの優先課題に沿ってこうした取り組みを中長期的に進めていくことで、目標とする事業利益率10%、ROIC10%は達成できると確信を強めています。

長期的に、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まい」を実現する企業になるための絵は描けています。今はまず、将来の利益成長につなげる準備期間として、しっかりと足固めを行いながら、新たな暮らしの可能性を広げるイノベーションの創出に注力し、競争力の強化を図ります。事業活動を通じて社会・環境課題の解決に貢献することは、企業として果たすべき役割です。こうした活動は社会全体に利益をもたらすだけでなく、当社グループの事業の持続可能性を高める上でも、非常に重要です。今後も全社一丸となり、次世代へとつなぐ住まいと暮らしの向上に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当社グループでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というLIXILのPurpose(存在意義)の達成を目指し、事業に関連した社会・環境課題の解決に取り組んでいます。

 

2021年3月期に導入されたLIXIL Playbookは、持続可能な成長と価値創造を実現し、LIXILのPurposeに向けた道筋を示しています。何を目指し、どのように達成するのかを明確にすることで、全従業員が同じ方向に向かって力を結集させることができます。2023年3月期には、事業環境の急速な変化に対応するため、LIXIL Playbookを更新しました。当時の課題を反映して追加した「インフレーションとサプライチェーンにおける課題への対応」「環境戦略の事業戦略への統合」を含め、「変革」「成長」「革新」の5つの戦略的優先課題に注力して取り組みを進めています。

 

当社グループのサステナビリティに関する戦略であるインパクト戦略はLIXIL Playbookの推進を支える基盤であり、緊急性の高い世界的な社会課題に対し、自社の事業を通じてインパクト(良い影響)を生み出す姿勢を明確化しています。インパクト戦略を事業活動と融合して推進することで事業成長や企業価値向上に注力します。この戦略は3つの優先取り組み分野で構成されており、グローバル企業としての社会・環境に対するコミットメントにとどまらず、収益性の向上、ブランド・エクイティの強化、長期的な価値創造を目指すものです。

 

0102010_004.png

※ 上図「注力」における対応はほぼ完了しています。

 

 

 

0102010_005.jpg

 

 

重要課題について

当社グループの重要課題は、社会の情勢や課題とともに、LIXILのPurposeや価値創造プロセス、経営の基本的方向性、インパクト戦略、ステークホルダーのニーズや期待などを踏まえて、課題を抽出しています。そして重要課題の評価プロセスにより、インパクト、リスク、機会(IROs)の評価を行い、事業活動や社会への影響の両面から、重要課題を特定しています。また、インパクト戦略に関する施策や実績の評価を確実かつ定期的に行う上で、事業リスクの管理と重要課題の検証プロセスが統合され、相互補完的な関係となるよう考慮しています。

 

なお重要課題は、特に関連するインパクト、リスクおよび機会に焦点を当て、1年に1回は検証を実施し、3年に1回を目処に評価および特定を行っています。2025年3月期は、評価および特定を実施しました。

 

2025年3月期は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の開示要求の詳細を定めた欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づき、ダブルマテリアリティの考え方を取り入れた評価プロセスを実施しました。将来的なCSRDの域外適用を視野に入れ、まずはハイレベルでの検討から着手しています。

 

重要課題の特定・評価プロセスにおいてステークホルダーエンゲージメントを活用し、インパクト戦略委員会での検証および執行役会の承認を経て、開示を行っています。

 

ダブルマテリアリティ評価プロセス

0102010_006.jpg

 

 

 

重要課題

取組

環境マネジメント

環境ガバナンス体制の強化、環境監査や環境教育などの実施により、環境戦略の実行基盤を強化し、環境パフォーマンスを向上させる。環境に関する国際条約や事業活動地域における法規制、社会的規範を含めたより高い水準の自主基準を順守するために、取引先と連携して化学物質の適正管理と使用量削減を進め、環境汚染物質の排出を抑制する。

気候変動対策

2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指し、事業プロセスにおけるエネルギー使用量の削減、再生可能エネルギーへの移行や燃料転換に取り組む。また、環境に配慮した製品・サービスの提供やステークホルダーとの連携を通じて、社会全体でのCO2排出量削減および自然災害や気温上昇などによる被害を軽減し、気候変動への緩和と適応に貢献する。

グローバルな衛生課題の解決

すべての人びとのよりよい衛生設備へのアクセスを実現すべく、製品イノベーションやパートナーとの市場エコシステム構築を通じて、経済的機会の創出、人びとの健康やコミュニティにおける生活の質の向上に取り組む。

サイバーセキュリティ

LIXILが保有する情報資産の保護と効率的かつ安全な事業運営のため、サイバー攻撃の脅威に対するリスクマネジメントとセキュリティ対策を実施する。また、LIXILで働くすべての人が事業活動のあらゆる場面で予防措置を講じ、リスクに迅速に対応できるよう、従業員教育や啓発活動を行う。

資源の循環利用の促進

限りある資源の持続的な利用に向け、ライフサイクル全体での環境負荷低減に配慮した設計を推進し、原材料の使用量削減やリサイクル材・再生可能な素材の利用、資源をより長く効率的に使える製品・サービスの提供に取り組む。また、事業プロセスで発生する廃棄物の削減や使用後の製品の再資源化をステークホルダーと連携して推進するとともに、再資源化が困難な廃棄物の解決にも取り組み、社会全体での環境負荷低減に貢献する。

人権

「LIXIL行動指針」と「LIXIL人権方針」に基づき、すべてのステークホルダーの人権を尊重し、継続的なデューデリジェンスと懸念報告(内部通報)制度により、リスクの特定と是正・救済に努める。また、サプライヤーに対しては「調達先行動指針」に基づき、人権尊重をはじめ倫理的に行動することを要請し、取り組みの状況をモニタリングする。

人材と能力開発

従業員が価値創造の原動力であるという認識のもと、体系的な人材育成に取り組み、従業員一人ひとりの自発的なキャリア開発を支援する。また、世界的な労働者の高齢化や熟練労働者の不足による事業活動への負の影響を低減するため、バリューチェーンにおける人材育成プログラムや熟練労働者の育成を目的とした学校教育・職業訓練に投資する。

製品イノベーション

最高品質のモノづくり・サービスの追求を志し、イノベーションを促進する職場環境を築き、日々の暮らしの課題を解決し、環境・社会にインパクト(良い影響)をもたらす革新的な製品・サービスを提供する。持続可能なイノベーションと価値創造を担保する知的財産戦略を実行する。

生物多様性の保全

事業活動における自然資本や生物多様性への依存と影響を特定し、リスクと機会を把握することで、自然の損失と変化がもたらす影響に対処し持続可能な自然の利用に取り組む。適切な情報開示やバリューチェーンにおける自然損失の回避・最小化に向けた製品・サービスの提供に加えて、自然を再生・回復する取り組みを推進し、ステークホルダーと連携して生物多様性保全に貢献するビジネスモデルの構築を目指す。

多様性の尊重

ダイバーシティ&インクルージョン文化を促進する。ジェンダー不均衡をはじめとする格差を是正し、誰もが能力を最大限に発揮できる職場環境と公平な機会を提供する。また、バリューチェーンにおけるリスクを把握し、改善に向けた取り組みを支援する。

ビジネスコンダクト

事業活動のあらゆる場面において「LIXIL行動指針」と「LIXIL Behaviors(3つの行動)」を実践する。不正・違反行為の未然防止や早期対処のため、通報者保護策を講じた懸念報告(内部通報)制度を運営する。サプライチェーン上の課題に対応するため、「調達先行動指針」の周知と継続的な対話を通じてサプライヤーとの連携強化を推進する。

水の持続可能性の追求

水まわり製品のリーディングカンパニーとして、節水性能が高い製品・サービスや、安全性を高めたおいしい水の提供を通じて、水の持続可能性を追求する。また、事業プロセスにおける水リスクを特定し、水不足拠点を中心に水使用量の削減、排水管理、水循環システムの導入などの水管理プログラムを実施し、使用効率向上によって責任ある水の使用に取り組む。

労働者のウェルビーイング

従業員の心身の安全と健康のため、健康経営を推進し、労働安全衛生マネジメント指標を改善する。また、多様で柔軟な働き方を実現するため、事業ニーズと社会ニーズに合致する従業員支援制度を導入し、適正な賃金支払いと長時間労働への対応に取り組む。さらに、取引先のリスクを把握し、改善への取り組みを支援する。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ関連の課題に戦略的に取り組むため、Impact戦略担当執行役を委員長とする「インパクト戦略委員会」を設置しています。

当社グループ全体で迅速かつ適切な対応を行うため、インパクト戦略委員会のメンバーには、コーポレート部門及び事業部門を統括する執行役並びに部門長が任命されています。また、必要な場合は外部の有識者など、社内外のステークホルダーに会議への出席を求め、インパクト戦略を推進する上で重要な意見を取り入れています。委員会は原則として四半期に1回開催し、必要に応じて委員長が臨時に委員会を招集します。

インパクト戦略委員会での討議・審議結果は、遅滞なく執行役会に報告されています。インパクト戦略、または重要課題の更新など、執行役会の審議を必要とするものは、インパクト戦略委員会での議論を踏まえて執行役会に上申され、決議されています。また、取締役会は、中長期的な企業価値向上の観点から、執行役会が策定するインパクト戦略について、その妥当性・実現可能性等を検討した上で、その内容を承認しています。インパクト戦略の推進状況について、取締役会は半期に1回報告を受け、目標に対する進捗状況並びに課題を把握し、対応策の検討等の議論を通じて、戦略の実施を監督しています。

こうした体制整備により、LIXILを取り巻くグローバルな社会課題の変化に迅速かつ適切に対応することを可能にしています。

また、委員会での決定事項は、推進責任者である各担当執行役及び部門長が担当部門に周知することで、具体的な取り組みへと展開されています。

インパクト戦略委員会では、グローバル衛生審議会、環境戦略審議会、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)審議会より、インパクト戦略における3つの優先取り組み分野の活動の進捗が各回で報告されるほか、その他の社会・環境課題や情報開示についても討議を行っています。

 

当連結会計年度の主な議題:

・インパクト戦略 3つの優先取り組み分野の進捗

・特定原材料のモニタリング

・ESGデータガバナンス構築

・重要課題の更新に向けたダブルマテリアリティ評価

 

0102010_007.png

(2025年4月現在)

 

 

(2) 戦略

当社グループのインパクト戦略では、当社グループが専門性を活かして大きなインパクトを生み出すことができる「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」を3つの優先取り組み分野に定めています。現在、そして未来を見据え、インパクト戦略を事業戦略に組み込み、水まわり製品と住宅設備における知識や規模を活かしながら、従業員やパートナー、さらには地域住民など様々なステークホルダーの皆さまと協働して取り組みを進めています。

 

なお、インパクト戦略の各取り組みにおいては、設定した指標と目標に基づいて、その進捗や成果を毎年確認しながら、目標達成に向けて尽力しています。

 

■グローバルな衛生課題の解決

革新的で低価格なトイレや衛生ソリューションを提供することにより、2025年までに1億人の人びとの衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献することを目指しています。

当社グループは、目標達成に向け、途上国向けの衛生製品を開発・提供するSATO事業を基軸に取り組みを推進しています。地域の特性やニーズに合わせた開発を行い、現在では製品・備品のポートフォリオを拡充し、低価格で耐久性に優れた衛生ソリューションで、これまでにおよそ8,200万人の衛生環境改善に貢献しています(当連結会計年度末時点)。生活の質の向上とともに、市場ニーズが安価なSATOブランド製品から上位製品へ移行することを想定しています。

 

さらに、製品ソリューションの提供に留まらない取り組みを実施することで、持続可能な衛生市場の創設に貢献しています。SATO事業では、現地における職人や実業家の育成のほか、Make(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを回す現地の生産・販売体制の構築など、総合的なアプローチを推進しています。また、特に深刻な衛生課題を抱える農村や都市部の住民に対しては、独創的な啓発活動を通じて、世界の衛生課題に関する理解を促進しています。インパクトの最大化に向け、国際連合児童基金(ユニセフ)、FINISH Mondialなど、水と衛生分野の専門性を備えた、影響力を持つ様々な国際機関や現地組織、地方自治体、専門機関、NGO、ビジネスパートナーとの連携を強化し、現地における人材育成やサプライチェーン構築、事業創出・雇用創出などを含めた衛生市場の確立に向けたインパクトが、自立的・持続的に広がることを目指して、今後も取り組みを推進していきます。

 

水と衛生分野の課題解決に向けては、世界各地で進む行政による投資及び取り組みと、民間企業が持つ専門的な知見や革新的な技術を効果的に組み合わせることで、より大規模なインパクトを実現できます。当社グループ初の公共部門とのエンゲージメントに特化したプラットフォームであるLIXIL Public Partners(LPP)は、政府などの公共部門をはじめとする主要ステークホルダーとの連携を促進し、シナジーの最大化を図ることを目的に設立されました。SATO事業などの既存の取り組みをベースに、LPPは政府、NGO、学術機関と協働し、衛生分野における革新的な製品やソリューションを提供しています。

 

 

■水の保全と環境保護

「LIXIL環境ビジョン2050」では、「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、環境に関する重要課題のうち「気候変動対策」「水の持続可能性の追求」「資源の循環利用の促進」の3つを、ビジョン実現に向けた重点領域に定めています。重点領域を推進するための共通の基盤として、製品イノベーションによるライフサイクルを通じた環境負荷の低減、及び全社の環境マネジメントの強化、各領域に深く関連する生物多様性の保全にも取り組んでいます。2050年までに、環境分野のリーディングカンパニーを目指し、事業プロセスと製品・サービスを通じてCO2の排出量を実質ゼロにし、水の恩恵と限りある資源を次世代につなぎます。

 

・「気候変動対策」

当社グループでは、事業プロセスにおける環境負荷低減に努めると同時に、環境に配慮した製品やサービスの提供を通じて2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指します。さらに、当社グループの事業プロセス及び製品やサービスにおける直接的な排出にとどまらず、社会全体におけるCO2排出量の削減に貢献することが重要と捉えています。また、気候変動の影響による雨量の増加、大型台風などの自然災害、気温上昇などによる被害の軽減に貢献する製品・サービスを提供し、気候変動への適応策を推進しています。

 

・「水の持続可能性の追求」

当社グループでは、トイレやキッチン、バスルーム、水栓などを提供する水回り製品のリーディングカンパニーとして、次世代を含む誰もが水の恩恵を最大限に活用できるよう、世界各地で水の持続可能性を追求しています。その実現に向け、水を保全するのと同時に、最大利用と価値創造を目指した取り組みを進めています。事業プロセスにおける水使用効率の向上や水不足拠点における水使用量の削減、節水関連の製品・サービスによる水使用削減への貢献などを通じて、責任ある水の使用を推進します。また、上下水道の整備が十分でない地域においては、水へのアクセス向上と安全で衛生的な水の提供に向けて政府などの公共部門と取り組んでいます。さらに水道水へのアクセスがある地域においては、浄水技術により、安全性を高めたおいしい水を提供します。

 

・「資源の循環利用の促進」

当社グループでは、金属、木材、樹脂、セラミックなど、様々な原材料を使用しています。原材料の調達から製造、使用、廃棄までの製品ライフサイクル全体において、原材料の持続可能な利用や資源循環の取り組みを全社で推進しています。リサイクル素材の活用や再利用に配慮した設計といった循環型のものづくりを推進するほか、「LIXILプラスチック行動宣言」のもと、プラスチックの使用量削減や循環利用、代替素材の開発などに取り組んでいます。

 

■多様性の尊重

当社グループは、お客さまの多様なニーズに合った革新的な製品やサービスの提供に取り組んでいます。顧客志向を徹底し、様々なニーズに対応したイノベーションや持続可能な成長を実現していく上で、多様な従業員の潜在能力を引き出すことができる公平でインクルーシブな環境の構築が重要であると考え、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」を推進しています。

 

2018年3月期に「D&I宣言」を発表し、2020年3月にD&Iをグローバルに推進する部署を設置し、全社共通の施策の展開に取り組んできました。また、2021年3月期には、CEOを議長とし執行役と部門長で構成されるD&I委員会を設立して、D&I戦略や推進施策を更新しました。D&I推進のフェーズが全社的な戦略及び施策の策定から各部門を主体とする活動に移ったことに伴い、2025年3月期からはD&I委員会を部門長のみで構成されるD&I審議会へ改編し、各部門の現状を踏まえた上で活発な議論を行い、取り組みを推進しています。

 

戦略では、2030年3月期までに当社グループ全体にインクルージョンの文化を定着させ、ジェンダー不均衡を是正することを目標に掲げています。男女間賃金格差や女性管理職比率の低さなど当社グループが抱える課題を認識した上で、目標達成に向けたアクションプランを策定し、人事制度や人材育成、職場環境づくりにおいてD&Iの観点を組み込んだ施策を段階的に進めています。

 

従業員は価値創造における最大の原動力です。私たちは、これらの取り組みを通じて従業員がその力を発揮することによって生まれるイノベーションや社内外との様々なコラボレーションを通じて、多様化する顧客ニーズに応え、年齢、性別、障がいの有無を問わずすべての人びとの健康で快適な暮らしを支えることを目指しています。

その重要な取り組みの一つとして、誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)を組み込んだ水まわり製品・住宅建材やサービスの開発及び提供を行うなど、事業を通じて「インクルーシブな社会の実現」に貢献しています。

 

また、エンドユーザーのニーズに応えるだけでなく、UDウェブサイトやパブリックトイレの情報に特化した「LIXILパブリックトイレラボ」などを通じた情報発信、障がいのある方への理解を促進する啓発活動や大学との共同研究などにも取り組むことで、社会により良い変化をもたらしています。

 

 

(3) リスク管理

当社グループは、事業活動を通じて世の中に与えるインパクトを最大化するため、重要課題の評価プロセスにより、事業活動や社会への影響の両面からインパクト、リスク、機会(IROs)の評価を行っています。インパクト戦略に関する施策や実績の評価を確実かつ定期的に行う上で、事業リスクの管理と重要課題の検証プロセスが統合され、相互補完的な関係となるよう考慮しています。なお重要課題は、特に関連するインパクト、リスクおよび機会に焦点を当て、1年に1回は検証を実施し、3年に1回を目処に特定および評価を行っています。重要課題に関するIROsの管理と、当社グループにおける事業等のリスクの統合は今後進めていく予定です。

当社グループにおける事業等のリスクについての詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(4) 指標及び目標

指標

目標

当連結会計年度

実績

グローバルな

衛生課題の解決

衛生環境の改善に関する取り組みを通じた生活の質の向上

2025年までに1億人

約8,200万人(注)1

水の保全と

環境保護

Scope 1 & 2によるCO2排出量

2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比)

△46.9%

(2025年3月期排出量:

602千t‐CO2(注)2)

Scope 3によるCO2排出量

2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比)

△21.6%(2024年3月期)

(2024年3月期排出量:

7,196千t‐CO2)

新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)

2026年3月期までに100%

97%

節湯水栓、節水型トイレの販売構成比(日本)(注)3

2031年3月期までに100%

節湯水栓       94.5%

節水型トイレ   99.4%

水使用効率向上

2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比)

+23.6%(2024年3月期)

節水製品による水使用削減貢献量

2025年3月期までに年間20億㎥

13億㎥(2024年3月期)

廃棄物などのリサイクル率

2026年3月期までに90%

92.8%(2024年3月期)

リサイクルアルミの使用比率(注)4

2031年3月期までに100%

80%

多様性の尊重

女性取締役・執行役比率(注)5

2030年3月期までに50%

37.5%(注)6

全世界の女性管理職比率(注)7

2030年3月期までに30%

17.4%(注)2

日本の新卒女性比率(注)8

50%

47.8%

(注)1.当社グループウェブサイト>インパクト>グローバルな衛生課題の解決 「LIXILのグローバルな衛生課題の解決におけるインパクト算定・報告ガイドライン (2024年6月25日)」および当社グループウェブサイト>インパクト>インパクト戦略>目標と実績ページを参照ください。

2.2025年3月期の実績値は、第三者保証を取得済です。上記データを含むESG関連のデータの保証声明書については、当社グループウェブサイト>インパクト>ESGデータ・方針>ESGデータのページに掲載しています。

3.節湯水栓については、湯はり専用や全身浴などの節湯水栓の用途に該当しない商品を除いており、節水型トイレについては、一部の集合住宅向けを除いています。

4.6063材を対象としています。

5.女性取締役・執行役比率は、3月31日時点の人数に基づき算出します。

6.有価証券報告書提出日(2025年6月18日)時点では31.3%です。

7.対象は国内及び海外の直雇用従業員です。ただし、売却された子会社及び従業員数100人以下の国内子会社は除いています。

8.対象は当社の大学卒・大学院卒の新卒入社者です。当連結会計年度の実績は、2025年4月1日付入社の比率を記載しています。

 

 

気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題に関する情報開示(TCFD・TNFD提言への対応について)

2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、2022年3月期報告からTCFD提言に基づいた情報開示を行っています。2023年12月には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に賛同しTNFDフォーラムへ参画、2024年1月にはTNFD Early Adopter(早期採用者)に登録しました。これを受け、2024年3月期報告からはこれまでの気候変動を含む環境課題に関する情報開示に包含されている自然関連課題の情報を関連づけ、TCFD・TNFD提言に基づく気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題に関する情報開示として統合しました。

 

<ガバナンス>

当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略審議会を設置しています。執行役から任命を受けたメンバーで構成された環境戦略審議会を原則年6回開催し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動、自然資本及び生物多様性から生じるリスクや機会を含む環境課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の環境目標管理とモニタリングなど、環境戦略の構築と実行を実施しています。環境戦略審議会で協議・決議された内容は、インパクト戦略委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されています。執行役会は、環境課題を含めた重要課題に関する目標や実行計画について協議・承認し、取締役会は、それらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

 

人権と自然資本及び生物多様性を含めた環境課題との関連性を認識したうえで、人権尊重を事業活動の基本とした「LIXIL人権方針」を定めています。また、従業員やお客さま、調達先などのビジネスパートナー、株主や投資家、事業拠点の地域社会に暮らす人びとなどの事業活動に関連する人権課題について、ステークホルダーとの対話に努めています。

 

<戦略>

気候変動を含めた環境課題に関するリスク・機会分析(TCFD)

当社グループでは、気候変動が短期・中期・長期の視点で自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定するためにシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理的リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界観を想定しています。この2つのシナリオにおいて気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、当社グループの環境戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来リスクの低減につなげ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めています。

2024年3月期には、2030年をマイルストーンとして設定し、事業プロセス、自社バリューチェーン、インパクトの拡大の3つのフェーズにおいてCO2排出量を削減する「低炭素社会への移行計画」を策定しました。事業プロセスにおいては、省エネ対策、燃料転換、追加性の高い再生可能エネルギーへの移行・調達などの施策に加えて、製造現場で水素への燃料転換に向けた実証実験を実施するなど、Scope 1, Scope 2排出量の削減に取り組んでいます。自社バリューチェーンにおいては排出量の多くの割合を占める「製品使用」と「調達」に注力しており、製品の省エネ化はもちろんのこと、サプライヤーエンゲージメントを通じた調達や物流における排出量の削減、これらの活動から得られた一次データの活用、循環型のエコシステムやビジネスモデルの構築に努めています。さらに、節湯水栓・節水型トイレや新築戸建向け高性能窓などの販売構成比率を100%とする目標を掲げ、暮らしのエネルギー効率を高める製品を通じて、気候変動緩和に向けたインパクトの拡大と低炭素社会への移行を推進しています。

 

自然資本・生物多様性に関するリスク・機会分析(TNFD)

自然資本及び生物多様性と自社バリューチェーンとの依存、影響の関係、リスクと機会を特定するためにTNFDが提唱するLEAPアプローチに基づく評価を実施しています。対象原材料は、ウォーターテクノロジー事業、ハウジングテクノロジー事業それぞれの主要製品の原材料である「アルミ」「銅」「セラミック」「木材」としScience Based Targets Network が開発した自然への影響が大きい原材料リストであるHigh Impact Commodity Listに該当する原材料の90%以上を評価の対象としています。バリューチェーン上流と直接操業における自然への依存と影響及び優先地域を特定し、自然に関連するリスクと機会の評価を行いました。特定された重要なリスクと機会は、気候変動課題の取り組みと関連づけられたことから、自然関連課題に対する取り組みがすでに戦略に反映されていることが示され、更に上流におけるリスクと機会を追加しました。

 

重要なリスクに対する対応戦略

 

気候

自然

リスク内容と

事業への影響

財務影響の程度

(注)1

対応策

指標と目標

1.5℃シナリオ

4℃

シナリオ

移行リスク

 

炭素税導入による操業コストの増大

約100億円

(注)2

追加課税なし

・Scope1,2のGHG削減に向けた取り組み(エネルギー使用の効率化・削減、電化・燃料転換、再生可能エネルギーへの移行など)

・長期目標の達成に向けた製造技術検証

2031年3月期までに

・Scope 1,2

50.4%削減

・Scope 3

(注)4

30%削減

(2019年3月期比)

2051年3月期までに

Scope1~3

実質ゼロ

市場の変化による原材料・部材調達コストの増加

定量化に必要なパラメータ不足のため

財務影響は非算出

・サプライヤーエンゲージメント

・技術設計による資源使用量の削減

・リサイクル材使用による天然資源の使用削減

2026年3月期までに廃棄物などのリサイクル率 90%

 

環境負荷低減に向けた設備導入によるコストの増加

環境戦略が事業戦略へ統合されたことによる適切な事業判断

・循環利用が困難な廃棄物の再資源化

自社工場における環境関連法規制への未対応による企業価値毀損

環境マネジメント

・LIXIL行動指針・LIXIL環境方針の遵守

・ISO14001に基づく内部監査

調達先における環境関連法規制の未対応による調達活動の停止

・サプライチェーンマネジメント

物理リスク

台風や洪水に伴う自社工場の被災による売上機会の喪失

約15億円

(注)3

リスクマネジメント

・大規模自然災害に対する計画的な設備投資・更新

・調達先の適正化、適切な在庫確保、バックアップ生産体制の構築による製品供給への対策

・固定資産を補償する適切な付保

渇水などによる自社工場の操業停止による売上機会の喪失

定量化に必要なパラメータ不足のため財務影響は非算出

・水使用効率向上に向けた取り組み

・Science Based Targets Networkのコーポレートエンゲージメントプログラムへの参加

2031年3月期までに水使用効率

20%向上(2019年3月期比)

 

原材料の採掘などに伴う生態系破壊による調達活動の停止

・サプライチェーンマネジメント

 

(注)1.TCFDのシナリオ分析に基づくものです。

2.Scope 1 & 2のCO2排出量に対して炭素税(国際エネルギー機関(IEA)が公表する1.5℃目標実現のために導入が必要と想定される炭素税価格を使用)が課せられた場合の想定額を算出

3.世界資源研究所(WRI)が提供するAqueduct Floods及び日本の各自治体のハザードマップを用いて、全生産拠点の浸水リスクを評価(事業継続計画(BCP)によるリスク低減を加味せず、生産拠点の立地条件のみに基づく)し、国土交通省の治水経済調査マニュアルが提示する浸水高さごとの想定停止日数と、該当拠点の1日当たりの生産高を乗じて損失額の平均値を算出

4.製品使用において間接的に消費される給湯エネルギーなどに由来した排出量は除く

 

 

重要な機会に対する対応戦略

気候

自然

機会内容と事業への影響

LIXILの取り組み

指標と目標

 

新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた省エネ商品・サービスの需要増加

・気候変動の緩和に向けた製品・サービスの取り組み

・他企業との協働による住宅・建築分野における包括的環境負荷低減

・2026年3月期までに新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)100%

・2031年3月期までに節湯水栓・節水トイレの販売構成比 (日本)100%

 

低炭素材料を利用した製品、資源の環境性に配慮した製品などの需要増加

・リサイクル材使用による天然資源の使用削減

・循環利用が困難な原材料の再資源化

・資源効率性の高い製品の拡充

・使い捨てプラスチックパッケージの削減

 

2031年3月期までにリサイクルアルミの使用比率 100%

 

災害対策・災害復興商材などの需要増加

製品を通じた気候変動への適応

・シャッター、スタイルシェード(適応)

・レジリエンストイレ(断水)

・減災プロジェクト

 

節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加

・節水製品による水使用削減

・LIXIL Public Partners(LPP)の取り組み

 

2025年3月期までに節水製品による水使用削減貢献量 年間20億㎥

 

サプライチェーンにおける環境データのトレーサビリティ構築によるレジリエンスの向上

 

・サプライチェーンマネジメント

・サプライヤーエンゲージメント

 

天然資源の消費を回避する多様化された事業活動による競争力の向上

・やきもの技術を活かした建築物の復原・再生や新素材の開発による廃棄物の低減

 

 

資源効率化に向けた技術革新の投資および新技術の導入による企業価値向上

・循環利用が困難な原材料の再資源化

・新規技術開発による環境負荷低減

・長期目標の達成に向けた製造技術検証

 

 

 

<リスクと機会、影響の管理>

当社グループは、気候変動、自然資本及び生物多様性に関わる依存、影響、リスク及び機会については環境戦略審議会の責任のもとでTCFD・TNFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要度を特定し、事業への影響の度合いを評価しています。また、それぞれの移行リスク・物理リスクを事業及びオペレーショナルリスクと紐づけることで、組織全体の総合的リスク管理との整合を図っています。

リスク管理においては、それぞれのリスクの重要性を判断した上で、あらゆる階層の組織で対応策を立案、実行し、進捗状況をモニタリングする体制を敷くことで、リスクを低減するための活動を展開しています。特に、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境リスク及び機会への対応については、環境戦略に反映させ、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、進捗の管理・監督と振り返りを行うプロセスを構築し、リスク低減に努めています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

<指標及び目標>

当社グループは、環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までに事業プロセスと製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しています。

2024年3月期には、この長期目標(long-term target)である「2050年までにCO2排出量を実質ゼロ」に対して、日本の建材業界で初めてSBTネットゼロ認定を取得しました。SBTネットゼロの基準に則り、「2050年までにScope 1 & 2、Scope 3の温室効果ガス排出量を90%削減し、10%以内の残余排出量を炭素除去によりゼロ」にしていきます。

 

気候関連を含む環境リスク及び機会を評価する指標

目標

リスクへの対応

Scope 1& 2によるCO2排出量

2031年3月期までに50.4%削減(2019年3月期比)

Scope 3によるCO2排出量

2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比)

Scope 1 & 2、Scope 3によるCO2排出量

2050年までに実質ゼロ

水使用効率向上

2031年3月期までに20%向上(2019年3月期比)

廃棄物などのリサイクル率

2026年3月期までに90%

機会への対応

新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)

2026年3月期までに100%

節湯水栓・節水型トイレの販売構成比(日本)

2031年3月期までに100%

節水製品による水使用削減貢献量

2025年3月期までに年間20億㎥

リサイクルアルミの使用比率

2031年3月期までに100%

 

 

TNFD開示指標(依存・影響)-直接操業

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

 

気候変動

GHG排出量

CO2排出量(注)

C2.1

汚染/汚染除去

排水量

排水量(注)

C2.2

汚染/汚染除去

廃棄物発生と処理

廃棄物の処理方法別発生量(注)

C2.3

汚染/汚染除去

プラスチック汚染

プラスチック廃棄物の発生量(国内)(ウェブサイト)

C2.4

汚染/汚染除去

GHG以外の大気汚染物質

NOx、SOx、ばいじんの排出量(注)

C3.0

資源の利用と補充

水不足地域からの取水と消費

水不足地域における取水量

(ウェブサイト)

A3.0

資源の利用と補充

水使用量と取水量の合計

消費量および取水量(注)

A3.2

資源の利用と補充

水の削減、再利用、リサイクル

水使用効率向上率および

リサイクル水量(注)

 

TNFD開示指標(依存・影響)-上流バリューチェーン

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

C3.1

資源の利用と補充

陸・海・淡水から調達した

リスクの高い天然製品の量

金属原料、木質原料、窯業原料の調達重量(注)

 

TNFD開示指標(対応)-上流バリューチェーン

測定指標

番号

インパクトドライバー

指標

開示状況

A23.1

自然への変化(依存と影響):

ミティゲーションヒエラルキー

ⅰ)廃棄物または、

ⅱ)製品/原材料の流出に占める再利用・リサイクル率(%)

廃棄物などのリサイクル率(注)

A23.4

自然への変化(依存と影響):

ミティゲーションヒエラルキー

循環的な材料の使用率(%)

リサイクルアルミ使用比率(注)

(注)開示場所は当社ウェブサイトの「LIXIL ESGデータブック最新版」です。

 

人的資本・多様性に関する情報開示

<ガバナンス>

当社グループは、執行役や部門長で構成されるD&I審議会を設置しています。D&I審議会では、D&I戦略に基づく様々な施策検討を行い、討議・審議された内容は「インパクト戦略委員会」を通じて四半期ごとに執行役会に報告され、必要なものについては決議がなされます。取締役会はそれらに対する進捗状況について半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

 

<戦略>

当社グループは、その存在意義の追求に向け、より機動的で起業家精神にあふれ、実力主義に基づいた働き方への転換を推進してきました。併せて私たちの働き方や、企業と従業員の関係は、急速に進化しており、事業の成功のためには、企業にとって最も重要な人的資本である人材への投資とD&Iの実現が必要不可欠です。当社グループの人事部門であるGPO(Global People Organization)は、「従業員の誰もが自信を持ちどこででも活躍できるよう、LIXILを革新的でインクルーシブな組織へ変革する」というミッションのもと、2022年3月期よりグローバル人事戦略を推進しており、組織のフラット化や能力主義に基づく人事制度の導入など、基盤の確立を進めました。2025年3月期は、ステークホルダーからのフィードバックと、変化するビジネスニーズに基づき、グローバル人事戦略を示す「GPO Strategy House」を、よりシンプルかつ重点エリアを明確にするために見直しました。人的資本強化の主要な3本柱として「インクルージョンをLIXILのDNAに組み込む」「人材育成への投資」「従業員エクスペリエンスの向上」を掲げ、戦略実現のための重要要素として「HRコーポレート・ガバナンスの強化」と「ビジネス変革のためのHR変革」を位置付けています。この新たな戦略の構造により、当社の持続的な成功のために必要不可欠な人的資本の強化を、より効果的に行うことが可能になります。

 

3つの戦略の柱

① インクルージョンをLIXILのDNAに組み込む

当社グループでは、真にインクルーシブな組織を醸成し、イノベーションが自然に生まれる環境を育むことを目指します。過去3年間、管理職へのダイバーシティ&インクルージョン(D&I)ワークショップの展開やデータに基づいた進捗管理ツール導入などを通して、この考え方を浸透させてきました。その一方で、意識改革は進んでいるものの、管理職のジェンダーバランスの実現など、さらなる取り組みが必要な領域もあります。次なるフェーズでは、これらの課題に対し、ターゲットを絞った施策やリーダーへの責任範囲の拡大を通じて注力していきます。

 

② 人材育成への投資

事業成長に向けた組織力の構築と、従業員の成長に重点を置いています。過去3年間、基礎となるラーニングインフラを整備し、「GROW」(管理職育成プログラム)や「People & Organizational Development(POD)」(人材組織レビュー)といった全社的な施策を展開しました。今後は、基盤となる全社的なプログラムと合わせ、特定の事業ニーズや優先課題に対応するための施策を強化していきます。

 

③ 従業員エクスペリエンスの向上

従業員一人ひとりが持てる力を最大限に発揮できる、働きやすい職場環境の創造と従業員体験の向上を目指します。過去3年間、デジタルツール活用による働き方の効率化や、柔軟な働き方の推進、従業員意識調査「LIXIL Voice」の結果により可視化される課題への戦略的な改善の取り組みなど、働きがいのある職場づくりを推進してきました。今後も、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場を構築していきます。

 

戦略を実現するための2つの重要要素

「HRコーポレート・ガバナンスの強化」と「ビジネス変革のためのHR変革」は、過去3年間戦略の柱として位置づけられ、グローバルHRの基盤(報酬体系の整備、リージョンのHR戦略ビジネスパートナーの任命、COEの設立など)構築を大きく推進しました。今後は、戦略を実現させるための重要要素として機能します。

 

新しいGlobal People Organization(GPO)戦略

0102010_008.png

 

 

 

 

<リスク管理>

当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要となります。特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、必要な人材を継続的に獲得するために人材獲得や積極的な人材育成に取り組んでいます。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

<指標及び目標>

指標

目標

実績(当連結会計年度)

女性取締役・執行役比率(注)1

2030年3月期まで50

37.5%(注)2

全世界の女性管理職比率(注)3

2030年3月期まで30

17.4%(注)4

日本の新卒女性比率(注)5

50

47.8

(注)1.女性取締役・執行役比率は、3月31日時点の人数に基づき算出します。

2.有価証券報告書提出日(2025年6月18日)時点では31.3%です。

3.対象は国内及び海外の直雇用従業員です。ただし、売却された子会社及び従業員数100人以下の国内子会社は除いています。

4.当連結会計年度の実績は、第三者保証を取得済です。上記データを含むESG関連のデータの保証声明書については、当社グループウェブサイト>インパクト>ESGデータ・方針>ESGデータのページに掲載しています。

5.対象は当社の大学卒・大学院卒の新卒入社者です。当連結会計年度の実績は、2025年4月1日付入社の比率を記載しています。

 

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

当社グループでは、事業の継続と安定的発展を目的に、グループ全体でEnterprise Risk Management(ERM)の構築を推進しています。CFOを委員長とするリスクマネジメント委員会を設置し、ERMの推進状況やリスクへの対応状況および大規模インシデントの発生状況を把握し、リスクに係る意思決定を行っています。重要事項については執行役会に報告するとともに、取締役会は定期的にCFOから報告を受け、リスクマネジメントの取り組み状況を監督しています。また、監査委員会はリスクマネジメント部門より報告を受け、リスクマネジメントの実効性を監督しています。

 

0102010_009.png

 

 

(2)リスク評価と重要リスクの特定

当社グループでは、事業戦略および戦略目標に影響を与える、またはそれらによって生じるリスクを「戦略リスク」、戦略的計画の実施に影響を及ぼすリスクを「オペレーショナルリスク」と定義し、これらを評価対象として年に1回全社的なリスク評価を実施しています。評価結果はリスクマネジメント委員会へ報告され、当社グループとしての重要リスクを選定し、対応すべきリスクの優先順位を決定しています。また、定期的に重要リスクのモニタリングを実施し、リスク対応策の見直しや進捗の確認を行っています。

評価項目においては、ESGリスクを組み込んでおり、事業リスクと当社グループの重要課題の相互補完的な関係を考慮しています。重要課題の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。

 

(3)2025年3月期の事業等のリスク

グループの重要リスクのうち、事業の状況及び経理の状況等に関するリスクの一覧、リスクマップ、および詳細情報は下記のとおりです。なお、発生可能性や影響度、重要性の前年からの変化を考慮して選定していますが、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクにつきましては、リスクの大きさに関わらず記載をしています。また、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(リスクマップ及び凡例)

0102010_010.png

 

2025年3月期の以下に関するリスク

発生可能性

影響度(注)

重要性の

前年からの変化

(1)

経済状況、為替相場・金利の変動

同水準

(2)

地政学

同水準

(3)

新製品の開発

同水準

(4)

原材料等の調達

同水準

(5)

環境(気候変動、水、資源)

同水準

(6)

事業再編

同水準

(7)

競合他社との競争・製品価格

同水準

(8)

人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進

同水準

(9)

販売チャネル

同水準

(10)

ブランド

同水準

(11)

災害・事故・感染症等

同水準

(12)

情報・サイバーセキュリティ

中→高

増加

(13)

知的財産

同水準

(14)

繰延税金資産の回収可能性

同水準

(15)

規制強化

同水準

   (注)前連結会計年度の評価から変更のあったリスクについて、前連結会計年度の影響度を併記しています。

 

(1) 経済状況、為替相場・金利の変動に関するリスク

当社グループは、グローバルに販売活動を行っており、その売上収益は世界における需要、景気、物価の変動、産業・業界の動向に影響を受けます。例えばアルミ、銅、樹脂、半導体など原材料価格や物流コスト、エネルギーコストの上昇は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に日本国内においては、新設住宅着工戸数や建設会社の建設工事受注高の大幅な変動が同様に当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

さらに、為替相場の変動は、当社グループの外貨建取引により発生する資産及び負債の円貨換算額や外貨建で取引されている製品の価格や売上収益等にも重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループの資金調達は、主として金融機関からの借入や社債の発行等の有利子負債によっており、市場金利が著しく上昇した場合には当社グループの資金調達に係る金利負担が増加し、借入や社債発行による資金調達の難航や支払利息・社債利息が増加する等、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

当社グループ全体における販売活動においては、適切なタイミングにおける価格改定を実施し、価格の適正化を図っています。日本での販売活動においては、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数減少の予想を踏まえ、新築市場におけるシェアの拡大の取り組みのみならず、中高級品市場への拡販、リフォーム戦略の強化を進めています。また、生産活動においては、代替調達先の確保による製品・原材料を含めた適切な在庫水準の維持により、安定的な供給体制の構築に努めています。

さらに、日本の財務部門において、運転資金及び投融資による資金需要を把握し、投資審査委員会等で案件を審査する体制を構築しています。また、日本の財務部門の他に、中国、シンガポール、ドイツ、米国に1か所ずつ計4拠点の「リージョナル・トレジャリー・センター」を設置し、各拠点において為替相場の動向を月次でモニタリングするとともに、必要に応じヘッジ手続きを実行することにより、為替相場の変動影響を低減しています。当該「リージョナル・トレジャリー・センター」に各地域における資金管理業務等を集約することにより、資金調達の効率化及び安定化を進めています。

 

(2) 地政学に関するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、地政学の影響を広範囲に受ける可能性があります。国際情勢や多国間の国際関係は、原材料、資源・エネルギー価格や輸送費の高騰及び調達リスク、物流における供給停滞・遅延といった直接的な影響に加え、世界的な物価高や政策金利への影響を増長させるといった間接的な影響もあり、多岐にわたる他のリスクと複雑に関係し、それらの影響及び不確実性を増長する可能性があります。また、各国の経済安全保障政策が強化され、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止、戦争・紛争が発生した地域における長期事業停止や事業撤退等、予期しない政策や法規制等の変更、また社会的な期待の変化が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

当社グループは国内外に生産拠点を持ち、製品をグローバルの顧客に供給していることから、事業継続に影響する地政学的リスクについて様々な面から対応を強化しています。

調達においては、事業に甚大な影響を及ぼすサプライチェーンの分断対策として、カントリーリスク対応を推進し、特定国・地域に過度に偏ることがないように取り組んでいます。また、要求性能を明確化し、在庫備蓄品目を拡大することで有事の際の備えを強化しています。さらに緊急対応先への移管や行動計画を作成し、定期的なコミュニケーションが取れる関係を構築することでグループ全体としての調達機能の活用・強化を実行しています。

物流においては、供給網の寸断に加えエネルギーコストも考慮し、グローバルのサプライチェーンを整備しています。欧州においては配送センターを再編し、北米においてはメキシコの生産力を高め地域内での供給体制を強化するとともに、足元の米国の関税政策の動向を注視しています。国内においては調達物流専門部署を設置し、複数拠点の生産体制や工場間の応援生産体制の整備、購買ポータルサイトによる適切な在庫水準の維持を進めています。

また、政治・経済情勢や法規制に関する動向を注視し、事業に影響が出る可能性のあるリスクについてはグループ内に共有し、周知に努めています。そのうえで、従来からのリスク対応策や事業継続計画(BCP)を定期的に見直していくこととしています。

 

 

(3) 新製品の開発に関するリスク

当社グループは、常に技術と顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品の開発に努めています。しかしながら、市場や業界のニーズの急速な変化に対応できない、あるいは新製品の価値が顧客へ効果的に訴求できない場合、将来の事業成長の鈍化や売上収益の低下につながる可能性があります。また、製品に欠陥が生じリコールが発生するリスクもあります。大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、多額の支払が生じ、当社グループ製品への信頼性や評判に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

市場の変化に迅速に対応し、将来を見据えたイノベーションの創出に注力しています。例えば、家庭の蛇口から冷たいミネラルウォーターを楽しめる「Greentap」や、壁にマグネット式の板を自由に設置できるキャットウォーク「猫壁」は、新たな価値を提供する革新的な製品です。また、2024年に発表されたパノラマウィンドウ「SEAMLESS」は、世界的に権威のあるデザイン賞「Red Dot Design Award」において最高位の「Best of the Best 2024」を受賞するなど、高付加価値で差別化された製品を多数開発しています。

経営の基本的方向性を示す「LIXIL Playbook」では、優先課題として「事業戦略と環境戦略の統合」を掲げ、環境配慮型製品の開発を加速しています。例えば、シャワールームとバスルームを自在に切り替えられる布製浴槽「bathtope」は、従来の浴槽と比較して26%節水が可能となり、環境問題への対応を図りつつ新しいライフスタイルを提案しています。また、CO₂排出量削減に大きく寄与する循環型低炭素アルミ形材PremiALシリーズは、環境意識が高い企業からの引き合い・採用を着実に増加させています。

資源の循環利用についても、「LIXILプラスチック行動宣言」の実現に向け、リサイクル比率を従来品の3倍に高めた高性能樹脂窓「EW」や、廃プラスチックと廃木材を利用した新素材「revia」など、 製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、市場ニーズと持続可能な社会への貢献のどちらにも応える製品ラインアップを拡充しています。

各製品の上市後は業績管理により、市場トレンドと開発戦略の適合性を確認しています。開発プロセスにおいてはステージゲートシステムを導入し、品質不具合の早期発見と迅速な対応を行い、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながる可能性を低減しています。また、従業員を対象とした品質意識調査や品質テーマを掲げた啓発活動、品質意識を高める情報メディアの発行など、顧客目線での品質を最優先する風土の醸成に努めています。

 

(4) 原材料等の調達に関するリスク

当社グループの生産活動においては、金属・木材・樹脂・セラミック等資材、部品を調達しています。しかしながら、国際情勢や経済状況などにより為替レートやコモディティ価格が変動し、原材料価格の高騰や調達遅延が発生する可能性があります。これらは売上原価の増加を招き、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与えるほか、欠品により当社グループの製品の信頼性や評判へも影響を及ぼす可能性があります。また、生産・販売活動と密接に関わる物流に関しても、運搬物の増加等による調達遅延や石油価格の変動、人件費の高騰などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

原材料価格高騰部分の販売価格への転嫁、価格変動のヘッジを目的としたデリバティブの活用を行っています。また、複数購買の実施、有事における対応力が強いサプライヤーの選定、カントリーリスク対応を推進するほか、取引先に対しては信用情報調査や調達アンケート、および定期的なコミュニケーションを実施しています。BCPの観点では、定期的な品質テスト、安全在庫量の確保等により安定的な供給体制の構築に努めています。

また、コモディティ価格の高騰の影響緩和のため、原材料の代替素材への転換やリサイクル素材の使用、および製品の長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を推進しています。その一環として、当社グループが掲げる「LIXIL環境ビジョン2050」の注力分野の1つとして資源の循環利用を促進しています。さらに、物流に関しても、物流化によるコスト削減と安定輸送の確保に継続的に取り組むことで物流費の安定化を図っています。

 

(5) 環境(気候変動、水、資源)に関するリスク

当社グループは、製品開発から調達、生産、販売、製品使用、使用後の廃棄に至るあらゆるプロセスにおいて地球環境保全に向け様々な活動を行っています。特に近年では、気候変動や自然消失が自社のバリューチェーンに与える影響として、政策や規制、市場の変化がもたらす移行リスク、異常気象や生態系の変化などの物理リスクが顕在化する可能性が高まっています。さらに、今後世界的な水資源への課題、原材料・部材の価格高騰、石油由来のプラスチックや木材に関する規制強化、サーキュラー・エコノミーへの移行による消費者嗜好の変化等の市場変化に柔軟に対応していかなければ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略審議会を設置し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境重要課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の目標管理とモニタリングなど、環境戦略を構築し、実行しています。

LIXIL環境ビジョン2050では「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までのCO2排出ネットゼロ及び水の恩恵と限りある資源を次世代につなぐことを目指した活動を推進しています。長期目標である2050年までのCO2削減目標は、2024年3月期にSBT(Science Based Targets)よりネットゼロ認定を取得しました。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言を踏まえ、気候変動、自然資本及び生物多様性を含む環境課題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、執行役会・取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進めています。移行リスクに対しては、生産活動におけるエネルギー使用効率化や積極的な再生可能エネルギー活用に加えて、今後はサプライチェーン全体での環境負荷削減の取り組みを強化していきます。さらに、インターナルカーボンプライシングのより実効的な運用に向けた検証や、2050年に向けた長期的な脱炭素技術の開発や導入を促進していくための製造技術や製品材料の研究を進めています。また、物理リスクに対しては、BCP計画によるリスク最小化、生産バックアップ体制整備、固定資産への保険、渇水対策のための取水管理などを進めています。

移行リスク及び機会への対応においては、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行う管理プロセスを構築し、適宜改善を進めています。また、ISO14001若しくは環境マネジメントシステムによる環境関連法令の洗い出しや遵守の点検ルールを定め、運用状況について定期的に内部監査を実施し、内部監査で指摘があった事項については、フォローアップを行い、改善の実施を確認することで、環境マネジメントシステムの効果的な運用につなげています。

パリ協定及びSDGsの目標13に掲げられているとおり、CO2削減のため、製造・販売活動の見直しや気候変動による影響を低減するための取り組みを実施することが以前にも増して企業に求められています。また、世界的な人口増加や経済成長に伴い、SDGsの目標12や目標6に掲げられているとおり、持続可能な資源利用や節水・浄水技術に対する需要が高まっています。近年では、SDGsの目標14や15に掲げられているとおり、気候変動の影響と合わせて生物多様性の損失がグローバルリスクとして認識が高まり、自然資本に関するリスクの把握や対応に対する評価を求める動きが始まっており、当社グループにおいてもTNFD提言への対応として情報開示をしています。

 

(6) 事業再編に関するリスク

当社グループは、経営の効率化及び競争力強化のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の再編、製造拠点や販売・物流網の再編及び人員配置等の適正化による事業の再構築を行うことがあります。これらの施策に関連して、事業再編後の組織において全社的な戦略上の優先順位が劣後し、経営資源が適切に配分されないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

さらに、投融資等の意思決定の際に、事業戦略、領域、展開国等に内在するリスクが的確に識別されず、投資実行後に当初想定していた利益やシナジー効果を実現できないこと等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

経営陣と従業員とのコミュニケーション強化を図ることにより、当社グループの経営戦略の浸透を図っています。

事業・地域ポートフォリオマネジメントを強化することを通じて経営資源配分の優先順位を明確にすることにより、事業再編後の組織において、シナジー効果の最大化や戦略実効性の向上が早期に実現するよう努めています。事業再編後のスムーズな組織の構築に向けて、M&Aにおける買収先企業のPMIを強化しています。その一環として、ガイドラインの策定を通じて、PMI推進体制及び進捗報告プロセスを明確化することにより、有効かつ適切なPMIプロセスの整備・運用による子会社のガバナンス強化を推進しています。さらに、当社又はその子会社による会社の新設、事業再編等を含む投融資に関する事項(投融資案件)については、その内容や金額的重要性に応じて適時適切な判断ができるよう、投資審査委員会による審査や決議をする体制を整えています。

 

(7) 競合他社との競争・製品価格に関するリスク

当社グループは、事業を展開する多くの市場において激しい競争に直面しており、特に売上収益は競合他社の価格設定に影響を受けます。高品質で魅力的な製品の市場投入に取り組む一方で、価格面においては必ずしも競争優位に展開できる確証はありません。製品・サービスが厳しい価格競争に晒され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

競合他社との激しい競争による市場価格の下落に対し、多様なニーズに寄り添った付加価値製品の市場投入による差別化を進め、販売価格の底上げに取り組んでいます。

生産活動においては、資材の共通化や、プラットフォーム化による生産スペースの削減など、投資資本効率の向上に努めており、新製品の早いサイクルでの市場投入や、時代に合った新しい価値の継続的な提供を行っています。

販売活動においては、富裕層をターゲットとした製品や、当社独自の技術によって実現した環境配慮型製品など、他社差別化製品の展開により、価格競争に晒されにくい事業ポートフォリオの改善を推進しています。また、仕様や基準およびデザインを統一することで、リビングなど空間全体のコーディネートを追求した提案を行うなど、当社ならではの幅広い製品を活かした体制づくりを行っており、市場に対して新しい価値を提供する製品を適時に投入することで、価格ではなく「価値」で顧客に選ばれる取り組みを実施しています。

 

 

(8) 人材の獲得と育成及びダイバーシティ推進に関するリスク

当社グループが継続的に事業を発展させるためには、専門技術に精通した人材や、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが必要です。しかしながら、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等もあり、国内外で必要な人材を継続的に採用・維持するための競争は厳しく、人材獲得や育成が計画通りに進まない場合には、長期的観点から業務運営の効率性が損なわれ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

当社グループにおいて、継続的な事業の発展のためにグループ全体で女性のさらなる活躍、障がいのある従業員のための取り組みや人種における平等、性的マイノリティに関する取り組み等を推進しており、地域ごとに人事制度の改定や拡充を行うほか、グローバル規模の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)として、ジェンダー平等、多文化、障がい、働く親や介護者、LGBTQ+にフォーカスした5つのグループを立ち上げる等、インクルーシブな組織風土を醸成するために様々な活動を行っています。

日本において、新卒採用や経験者の通年採用を積極的に展開するほか、人事・教育体系を充実させ、従業員の定着と育成に努めています。また、グローバルで活躍できる人材を育成するために、各プログラム(海外派遣研修、選抜型の育成プログラム、eラーニング等)を実施しています。多様なバックグラウンドを持つ従業員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、インクルーシブな環境を構築するための取り組みを推進しており、マネージャー向け研修をはじめとする多様な人材を受け入れる企業文化の醸成や、従業員が働きやすい職場環境を整備しています。さらに、「報酬・福利厚生委員会」を設置し、グローバルでの処遇の公平性・透明性に向けた取り組みを強化しています。

近年、高齢化の進行による高齢世帯の増加及び障がい者人口の増加に対応した製品の必要性が高まっています。また、SDGsの目標5にて掲げられているとおり、企業に対して高齢者や障がい者の雇用だけでなく、ジェンダー格差の是正に対する取り組みも求められています。

 

(9) 販売チャネルに関するリスク

当社グループはグローバルに事業を展開しており、各事業において販売チャネルの戦略を推進しています。しかしながら、流通経路の変更や新規の販路拡大に対して、想定していた顧客数が確保できない等の理由により、売上成長が鈍化する可能性があります。

例えば、当社の連結子会社であるASD Holding Corp.は様々な需要に応じて幅広い製品を展開していますが、各製品の拡販が計画通りに進捗しない場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

各事業の市場傾向やターゲット顧客の特性を把握し、事業戦略と一貫した販売チャネル戦略を推進しています。市場環境の変化における需要の変動や法規制、技術革新、競合他社の活動等を適切に把握し、適時に戦略の方針やアプローチを改善することで、各事業における当社製品の効果的な市場浸透を図っています。

ASD Holding Corp.では、販売チャネルの拡大を進めるために、従来、外部の販売代理店が行っていた営業活動を内製化し、施工会社等のステークホルダーに対して、当社ブランドの専門性を持った担当者が直接アプローチすることで自社製品の販売促進に努めています。特に、建設会社への拡販やショールームの活用強化に注力しており、複数ブランドの差別化商品の投入や価格戦略を進めています。また、自社のECを活用したウェブサイトの展開や施行者向けトレーニングを充実させるなど、エンドユーザーへの直販チャネルの拡大を促進しており、売上高も増加傾向にあります。その他、リテール市場の縮小によるリスク軽減を見据え、子会社の買収・売却・解散等を適切に判断することにより、ポートフォリオの管理を行っています。

 

(10) ブランドに関するリスク

当社グループはグローバルに事業を展開しており、多数のブランドを保有しています。しかしながら、ブランド戦略と事業戦略との整合性や、市場トレンドとの適合性、それらの把握および管理不足によりブランド・エクイティが変動する、あるいは製品事故などインシデント発生によるレピュテーション毀損等によりブランド価値が低下することで、業績に影響を与える可能性があります。

特に当社の連結子会社であるLIXIL Europe S.à r.l.が保有するGROHEブランドは富裕層をターゲットとしたプレミアムブランドとして認知されており、激しい競争環境において従来の欧州中心のビジネスのみならず、中東市場における販売の拡大を推進しています。当ブランド価値の毀損により、売上成長が鈍化、若しくは利益率が低下した場合、当社グループが計上しているのれんについて減損損失が発生する可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

各ブランドの強みや認知度を活かし、事業戦略と一貫したブランド戦略を策定し展開しています。各市場や競合環境を適切に把握するとともに、策定した戦略に基づき顧客・従業員・取引先等を含めたコミュニケーションを強化することで、共通したブランド認識の構築と浸透を図っています。また、グローバルで自社及び競合他社ブランドの販売価格を継続的にモニタリング・分析し、当社グループ全体において統一的な施策を立案・実行できる仕組みを整備し、競争の激しい市場においてもブランド価値を反映した価格帯を維持できるよう対応しています。

さらに、ウォーターテクノロジー事業におけるGROHEブランドの位置付けについて、事業内の他ブランドとの差別化を図るため、ブランドデザインの使用に関するルールを設け、ブランド価値の維持・管理に努めています。このような総合的なブランド戦略により、GROHEブランドの認知度を高め、市場でのトップポジションを維持することを目指しています。

 

 

(11) 災害・事故・感染症等に関するリスク

当社グループは、日本国内及び海外諸国の複数の拠点において生産・販売活動を行っていることから、各地で発生する地震や台風等の自然災害、未曽有の大事故や感染症によって、当社グループの調達、生産、物流、販売活動や情報管理関連施設等の拠点に甚大な被害を受ける可能性があります。特に、災害・事故等の発生により、当社グループの国内及び海外工場の生産活動が停止することは、市場への製品供給に深刻な影響を及ぼし、売上収益に悪影響を与える可能性があります。

また、感染症の発生や拡大は当社グループ従業員の健康状態悪化による労働力の低下の可能性や、取引先の生産・販売活動の一部停止等、当社グループの事業活動に支障が出る可能性もあります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

大規模自然災害や事業活動に伴う事故に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、災害・事故発生時の対応を適時に行うことができるよう事前の対策を講じています。また、被害情報収集アプリや備蓄品管理アプリの導入、緊急時回線の確保を通じて、初動における効率化と適格性の確保に務めています。実際に大規模災害が発生した場合には危機管理対策本部を立ち上げ、被害の最小化と早期復旧が確保できる体制を整備しています。

海外子会社の従業員や出張者、駐在員が自然災害や政変によるテロ・暴動に巻き込まれた場合についても、外部専門家と提携した現地従業員へのサポート体制を整えています。また、渡航時の危機管理フローを作成し、渡航前研修の実施や特にリスクが高いとされる国や地域に関する注意喚起を通じて、従業員の安全確保に努めています。

感染症対策に関しては、在宅勤務の環境整備と運用を従来から推進しており、また政府指針等を踏まえた対応ハンドブックを策定し、適時更新し運用しています。感染発生時の対応準備や報告フローの見直しなどを行い、従業員が安心して働ける環境を構築するとともに、事業活動を従来通り継続する環境の整備に努めています。

当社グループは、従業員及び従業員家族、取引先を含むステークホルダーの方々の生命及び安全の確保を最優先とした災害・危機対応に取り組んでいます。なお、緊急事態発生時の行動や対策については従業員への周知徹底と継続的見直しを実施しています。

 

 

(12) 情報・サイバーセキュリティに関するリスク

当社グループが行う生産・販売活動及び各種事業活動は、コンピュータシステム及びコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用しています。このため、通信ネットワークに生じる障害や、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェア、若しくは、ソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動に支障が出る可能性があります。また、情報システムが適切に導入・更新されていないことによりシステム上の不具合、業務の非効率、生産性低下を招き、事業活動に支障が出る可能性があります。

さらに、当社グループでは、業務を遂行する中で顧客情報をはじめとする様々な個人情報を取り扱う機会があり、厳格な情報管理が求められています。このため、不測の事態により個人情報の遺漏が発生した場合には、社会的信頼の失墜を招くとともに多額の費用負担が生じる可能性があります。その結果、売上収益の減少あるいは販管費等の増加により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

中→高

重要性の

前年からの変化

増加

対応策

情報セキュリティ委員会を設置し、情報セキュリティに関する社内規程の整備、不正アクセス等を未然に防止するための対策、従業員に対する教育等を実施し、さらにこれらの取り組みを定期的に評価・見直すことにより、情報セキュリティマネジメントの継続的な改善を実施しています。特に、効率的で安定した事業活動の遂行を担保するため、老朽化した基幹システムの刷新を進めています。また、サイバー攻撃全体への対応としてCSIRT (シーサート: Computer Security Incident Response Team)を設置し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、情報セキュリティリスクが顕在化した場合には、緊急時の報告基準とフローに沿ってエスカレーションを行い、事業部門とコーポレート部門が連携し、速やかに初動対応と事業復旧対応が取れる危機管理体制を構築しています。

IoT (Internet of Things)やOT (Operational Technology)も含めたサイバーセキュリティ強化の構築も推進しています。また、個人情報保護に関する法令を遵守すべく、必要な社内規程の整備やEU一般データ保護規則 (GDPR)で要求されるデータ保護責任者を含む個人情報責任者の設置、適切な研修の実施、プロセス整備等を行っています。

さらに、ランサムウェア対策として、定期的なバックアップ、従業員へのフィッシング詐欺対策研修、エンドポイントのセキュリティ強化などを実施し、サイバー攻撃に対する防御体制を強化しています。また、外部専門家と連携した初動の確保と財務的備えについても実施しています。

 

 

(13) 知的財産に関するリスク

当社グループは、魅力ある差別化された製品やサービスの開発に努めています。このような製品やサービスに対し、第三者が保有する知的財産権との関係で紛争や交渉が生じる可能性があります。この場合、当該第三者の知的財産権を侵害しない製品やサービスの開発、損害賠償金の支払い、当該第三者の知的財産権のライセンスの取得とロイヤルティの支払い、差止命令による当社グループの製品やサービスの一部について製造販売や提供の中止、を要求される可能性があります。

一方では、当社グループの製品やサービスの差別化要素となる技術やデザイン等が第三者に模倣されることにより、当社グループの製品又はサービスの市場競争力の低下を引き起こす可能性があります。また、当社の商標権等の知的財産権を侵害する模倣品の流通により、当該模倣品を使用した顧客に事故や健康被害等が発生した場合、当社グループへの評判、ブランド価値、当社グループの製品の信頼性に悪影響を及ぼす可能性があります。

これらは、当社グループの経営成績及び財政状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

知的財産部門と事業部門が連携し、第三者の知的財産権の調査分析を行う等の知的財産権についてのリスクアセスメントを製品開発のプロセスに組みこむことで、開発段階から訴訟その他の重大な事業リスクの発生を未然に防止する対応をしています。すなわち、第三者の知的財産権についての事前調査や必要なライセンスの取得などの対応を図っています。

また、長期にわたって事業の競争優位性と高収益性を実現するために、競争力の源泉である当社の差別化要素の第三者による模倣を防ぐ対応を行っています。そのため技術開発、製品企画の段階から保護すべき知的財産を特定し、特許権、意匠権、商標権及びその他の知的財産権を取得し、又は当該知的財産を秘匿する等の対応を図るとともに、日本及び各国における知的財産ポートフォリオマネジメントを推進しています。なお、模倣品に対しては、お客様に対する注意喚起や税関への差止申立て、インターネット販売における監視と排除、当局による摘発への協力等を行い、その流通の防止に努めています。

さらに、知的財産情報をはじめとする各種のデータ分析に基づく知財インテリジェンスを実行し、上記のリスクアセスメントを効率的に行うとともに、戦略的に知的財産ポートフォリオを構築することに活用しています。

 

 

(14) 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク

当社グループは、税効果会計を適用し、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対してそれらを回収できる課税所得が生じると見込まれる範囲において繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得は、マネジメントが確認した将来の業績見積りを基礎としています。当該見積りにおいて、日本国内における人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少が予想される中、販売価格の適正化及び政府による住宅省エネ化支援策の拡充も踏まえたリフォーム戦略の強化等による売上収益の増加や原価低減による売上総利益率の改善等の収益性向上を見込んでおり、これらの施策の達成には不確実性が伴います。また、税務上の繰越欠損金の繰越年数や使用上限割合が変更される等、当社グループにとって不利な税制改正が行われる可能性が否定できません。これらの結果、繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断された場合、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

見積りの達成にあたっては、当社グループ全体の業績管理を担う企画管理部門によるモニタリングを強化しており、見積りの達成を阻む要因があれば、早期に対応できる体制を構築しています。

さらに、当社CFO直轄組織がガバナンス強化の取り組みの一環として業績管理プロセスを強化することにより、業績悪化の兆候を早期に捉え、税制改正にかかる情報については、当社税務部門において早期に捉えるようにしています。これらの部門が、業績悪化の兆候や税制改正にかかる情報を把握した際には、当社経理財務部門及び税務部門と協議を行い、繰延税金資産の回収可能性に関して、タックスプランニングの見直しの必要性も含めて適時に対策が打てるような体制を構築しています。

当期においては、当社及び一部の子会社の繰延税金資産の一部については使用できるだけの十分な課税所得が稼得されない可能性が生じたため、当該繰延税金資産の帳簿価額の一部を減額しました。今後、収益性の回復により回収可能性が高いと見込まれた際には、再度帳簿価額の増額を行います。

 

(15) 規制強化に関するリスク

当社グループは、日本国内において事業活動を行う上で、会社法や独占禁止法、個人情報保護法、税法、会計基準等、経営に係る一般的な法令諸規制の適用を受けています。また、海外での事業活動についても、それぞれの国や地域における競争法、個人情報保護法、国際取引規制、その他の法令諸規制の適用を受けています。近年、当社グループの重要な物的資源(金属・木材・樹脂・セラミック等)又はその原材料を含む自然資源の利用や、非財務情報開示を含むサステナビリティに関わる規制等、新たな法令諸規制の導入について活発に議論されています。また、個人情報保護に関する規制については、グローバルに規制強化の一途を辿っており、その執行も活発化しています。

これらの法令諸規制は、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇、国際情勢や多国間の国際関係の変化、その他の社会情勢の変化などに応じて、将来において急速に新設・変更・廃止され、厳正な法執行が行われる可能性があります。その結果、製品その他サービスの提供の制限や、売上原価の増加、設計・開発段階におけるコスト増、新たな制裁・法規制の対象となった国や企業との取引の停止等、当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法令諸規制に対応できる人材の確保を含む体制整備や、システム導入に遅れが生じた場合、従来と比較して法令違反のリスクが高まる可能性があります。

発生可能性

影響度

重要性の

前年からの変化

同水準

対応策

当社グループは、複雑化し急速に変化し続けるグローバルな規制環境の中で行う事業活動に機動的に対応するため、2022年1月に法務・コンプライアンス部門のグローバルでの組織再編を実施しています。また、2024年12月には、ロシア・ウクライナ紛争のために輸出入に関する規制が活発になっているヨーロッパ地域において新たなTrade Compliance Officerを迎え入れる等、規制遵守体制をさらに強化しています。これらの新体制のもと、法務部門を中心とした各地域の法令遵守と法的リスクを抑制するための体制が整備されています。

さらに、法令諸規制に関する情報発信や定期的な教育等により、従業員の理解度を高めるとともに、事業部門とコーポレート部門が規制対応に関して適切に連携できるよう取り組んでいます。規制の新設・変更・廃止が実施された場合には、規程やガイドライン等の作成・更新に加えて、取引先に対するコンプライアンスデューデリジェンスにその内容を反映する等の実務的な方策によって、規制違反の回避に努めています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は、次のとおりです。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、企業収益が堅調に推移し、雇用・所得環境にも改善の兆しが見られる中、設備投資や個人消費の持ち直しの動きなどもあり、景気は緩やかな回復傾向となりました。しかしながら、エネルギー価格の高止まりに加え、継続的な物価上昇や住宅ローン金利上昇による消費動向への影響など、依然として先行き不透明な状況が続いています。また、住宅投資に関しても、大規模な政府の住宅省エネ支援策により断熱製品を中心としたリフォーム市場の需要が創出されたものの、新築市場における建築資材価格の高止まりなどに起因した住宅価格高騰による住宅取得マインドの低下などから、新設住宅着工戸数は持家・分譲住宅を中心に低調に推移しました。

世界経済に関しては、欧州での政策金利の段階的な引き下げや中東・インドなどの成長市場における堅調な需要が見られた一方で、米国における高金利水準の継続や不動産市場の停滞の継続を受けた中国経済の先行き懸念などにより、全体的には景気は不透明な状況で推移しました。今後も金利の高止まりや人件費高騰などの継続が想定されることに加え、米国の通商政策の動向や為替変動、長期化するロシア・ウクライナ紛争や中東情勢などの地政学リスクなどによる海外景気への影響については引き続き状況を注視していく必要があります。

 

このような環境のもと、当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」)における当連結会計年度の業績は、国内事業においては、新設住宅着工戸数の低迷により新築向けの売上が伸び悩んだものの、水回り製品を中心としたリフォーム売上は堅調に推移しました。海外事業においても、米国における需要低迷の継続や中国における不動産市況の低迷があった一方で、欧州における売上改善や中東・インドの成長拡大に加え、為替換算の影響などもあり、売上収益が増加しました。これらの結果、当社グループにおける売上収益は1兆5,046億97百万円(前年同期比1.4%増)と増収となりました。

利益面については、資材・エネルギー及び部品価格の高止まりによるコスト増加があったものの、主に国内において販売価格の適正化に努めたことや欧州を中心とした売上の改善、構造改革によるコスト削減効果などもあり、事業利益は313億37百万円(前年同期比35.3%増)と増益となりました。また、構造改革の実施に伴う一時的なその他の費用の発生が前連結会計年度に比べて減少したことなどから、営業利益は296億87百万円(前年同期比81.6%増)、継続事業からの税引前利益は201億50百万円(前年同期比3.0倍)とそれぞれ大幅な増益となりました。

また、非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、一部の連結子会社の収益性の低迷などに起因する税負担率の上昇があったこと等から、20億1百万円(前年同期は139億8百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

(注)事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

セグメント別の概況は次のとおりです。なお、セグメント別の売上収益はセグメント間取引消去前であり、事業利益は全社費用控除前です。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

増減額

増減率

ウォーター

テクノロジー

事業

売上収益

896,924

927,844

30,920

3.4%

事業利益

22,717

40,941

18,224

80.2%

利益率

2.5%

4.4%

 

 

ハウジング

テクノロジー

事業

売上収益

596,448

586,819

△ 9,629

△ 1.6%

事業利益

35,887

29,172

△ 6,715

△ 18.7%

利益率

6.0%

5.0%

 

 

消去又は全社

売上収益

△ 10,148

△ 9,966

182

 

事業利益

△ 35,442

△ 38,776

△ 3,334

 

合     計

売上収益

1,483,224

1,504,697

21,473

1.4%

事業利益

23,162

31,337

8,175

35.3%

利益率

1.6%

2.1%

 

 

 

[ウォーターテクノロジー事業]

主に水回り製品を手がけるウォーターテクノロジー事業においては、国内事業はこれまで取り組んできた価格改定の効果の発現に加え、リフォーム関連製品の売上が引き続き堅調に推移したことなどもあり、新築需要の減退による影響が続いている中でも対前年同期比で増収となりました。海外事業も、米国・中国においては需要低迷が継続した一方で、欧州・中東において売上が堅調に推移したことや為替換算影響があったことなどにより、対前年同期比で増収となりました。その結果、同事業の売上収益は9,278億44百万円(前年同期比3.4%増)と増収となりました。

また、事業利益は、国内事業では資材価格の高騰や為替の影響をリフォーム売上の増加や価格改定による効果でカバーし、海外事業においても売上増加による影響のほか構造改革効果の発現により販管費が削減されたことなどから、409億41百万円(前年同期比80.2%増)と大幅な増益となりました。

 

[ハウジングテクノロジー事業]

主に国内で住宅建材製品を展開するハウジングテクノロジー事業においては、低炭素社会の実現に向けた国策による大規模な補助金制度の導入を背景に、窓を中心とした断熱製品のリフォーム向け売上が大きく伸長したものの、ウォーターテクノロジー事業と同様に新築需要の減退による影響を大きく受けたことに加え、前年に売却した事業に係る売上剥落などにより、同事業の売上収益は5,868億19百万円(前年同期比1.6%減)と僅かながら減収となりました。

事業利益についても、新築向けの売上低迷による影響を大きく受けたことに加え、引き続き資材・エネルギー価格の高止まりによるコスト増加の影響もあり、291億72百万円(前年同期比18.7%減)と減益となりました。

 

(注)1.事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

2.「国内事業」「海外事業」については、当社グループの連結業績管理にて定義しているマネジメントベースの区分を使用しており、所在国による区分とは一部異なります。具体的には、ウォーターテクノロジー事業及びハウジングテクノロジー事業において、国内で管轄している一部の海外子会社を「国内事業」に含めています。

 

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて557億91百万円減少の1兆8,308億4百万円となりました。流動資産は、為替換算に伴う減少影響に加え、前連結会計年度末が期末休日であったことに伴う営業債権及びその他の債権の減少、事業再編に伴う棚卸資産やその他の金融資産の減少などもあり、前連結会計年度末に比べて295億37百万円減少の7,012億41百万円となりました。一方、非流動資産は、主にのれん及びその他の無形資産に係る為替換算に伴う減少や、有形固定資産及び無形資産の減少があったことなどから、前連結会計年度末に比べて262億54百万円減少の1兆1,295億63百万円となりました。

また、資本は6,200億70百万円、親会社所有者帰属持分比率は33.7%(前連結会計年度末比0.4ポイント低下)です。

 

 

(億円)

0102010_011.png

 

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。なお、金額は非継続事業を含むキャッシュ・フローの合計額です。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,000億2百万円の資金増加となりました。前年同期に比べて520億12百万円の増加となり、この主な要因は、継続事業からの税引前利益水準の上昇に加え、営業債権及びその他の債権、棚卸資産、営業債務及びその他の債務などの運転資本の変動に伴う影響があったことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、事業譲渡による収入や吸収分割による支出など事業再編に伴う一時的な収支があったものの、主に設備投資に伴う有形固定資産及び無形資産の取得による支出があったことなどから281億27百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて17億49百万円の支出減少です。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期、長期とも有利子負債の調達と返済を機動的に行ったことに加え、配当金やリース負債の支払があったことなどから724億70百万円の資金減少となりました。前年同期に比べて687億97百万円の支出増加です。

これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、換算差額による影響などを含めると、前連結会計年度末に比べて9億58百万円減少の1,235億27百万円です。

 

0102010_012.png

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

500,246

102.5

ハウジングテクノロジー事業

265,562

101.9

合計

765,808

102.3

 

商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

98,789

94.4

ハウジングテクノロジー事業

130,836

93.9

合計

229,625

94.1

 

受注実績

 ハウジングテクノロジー事業の工事物件については、受注生産を行っています。当連結会計年度における受注実績は、次のとおりです。

 セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

ハウジングテクノロジー事業

86,985

108.2

122,637

108.2

 

販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 セグメントの名称

金額(百万円)

 前年同期比(%)

ウォーターテクノロジー事業

927,844

103.4

ハウジングテクノロジー事業

586,819

98.4

報告セグメント計

1,514,663

101.4

セグメント間取引

△9,966

98.2

合計

1,504,697

101.4

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。また、分析に記載した実績値は1億円未満を四捨五入して記載しています。

 

① 重要な会計上の見積り及び判断、重要性がある会計方針

重要な見積りを伴う会計方針とは、不確実性があり、かつ翌連結会計年度以降に変更する可能性がある事項、又は当連結会計年度において合理的に用いることができる他の見積りがあり、それを用いることによっては財政状態及び経営成績に重要な相違を及ぼすであろう事項の影響に関して見積りを行う必要がある場合に、最も困難で主観的かつ複雑な判断が要求されるものです。また、当社グループを取り巻く市場の動向や為替変動等の経済情勢により、これらの見積りの不確実性は増大します。

 

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって利用する重要な会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用する重要性がある会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況に対して、事業全体及びセグメントごとに重要な影響を与えた要因について経営者の視点から見た認識及び分析・評価は、次のとおりです。

 

[当連結会計年度の業績に対する評価]

当連結会計年度は、国内事業では新築着工数低迷の影響を受けたものの、新商品やリフォーム重要の高まりに応じた商材の販売強化による売上が下支えし、海外事業では米国及び中国において需要の低迷があった一方で欧州における売上改善と中東・インドの成長がドライバーとなりました。その結果、引き続き厳しい事業環境ながら売上収益は215億円増の1兆5,047億円と増収を達成することができました。売上総利益率は33.1%と1.2pt改善しました。

国内では、新設住宅着工戸数は当初の予測よりも減少したものの、新築向け売上減少をリフォーム向け売上にてカバーした結果、ウォーターテクノロジー事業は好調に推移しました。一方で、窓リフォームの政府補助金消化率が想定より低調に推移した結果、ハウジングテクノロジー事業は窓リフォーム向け売上が想定を下回ったことにより、計画比低調に推移しました。海外では、欧州は景気低迷が続き需要が弱い中でも販売数量が増加し売上改善、成長市場である中東・インドにおける売上拡大、ならびに構造改革効果により、前期比で増収増益となりました。米国は構造改革による事業ポートフォリオの最適化を進めましたが、需要低迷の継続、第三者の不正アクセスによるシステム停止の影響があり減収減益となりました。今後は収益性の改善を目指し、高付加価値商材の拡販に向けたリソースの配置ならびに販売先のシフトを加速していきます。

コストの削減については、当連結会計年度は本社費などの販管費削減努力の継続に加え、海外事業における構造改革を推進してきました。欧州及び米国における人員配置の最適化、サプライチェーンの再構築、事業ポートフォリオの最適化等に取り組みました。海外事業の構造改革は概ね当期で完了であり、次期以降に大きな利益成長を実現するための、足固めの一年となりました。次期は、米国における関税政策の動向を注視しながら、サプライチェーンの一部再構築など見極めが必要ですが、大きな費用は発生しない見通しです。事業環境が厳しい時期だからこそ、変化への対応力を高め、強固な事業基盤を築いていきます。

 

当社グループを取り巻く事業環境の厳しさは続いており、迅速かつ適切な対応が迫られています。上記にて説明した対応策を着実に取り組むことにより、財務の安定性を確保しつつ、当社の持続的な成長とPurpose(存在意義)の実現に努めてまいります。

 

[資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応]

当社は、中期目標の指標として事業利益率7.5%、ネット有利子負債EBITDA倍率3.5倍以下、親会社所有者帰属持分比率35%以上の実現を掲げています。また、長期の財務指標として事業利益率10%、投下資本利益率(ROIC)10%を達成することを目指しています。

0102010_013.png

 

(注)1.ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷{(親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+

親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2}

2.ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +

固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)

 

また、当連結会計年度末時点でのPBRは0.8倍にとどまっており、ROEの向上に繋がる利益率の改善を推進していきます。そのために事業利益率の改善策として、価格の適正化、アセットライト化に加え、海外事業の収益性改善に取り組みます。加えて当期利益の拡大に向けて、構造改革遂行後の効果発現により収益性を高めていきます。

 

 

[キャピタルアロケーション・株主還元に対する考え方]

当社は、期間収益並びにキャッシュ・フロー、内部留保、財務体質等の経営全般にわたる諸要素を総合的に判断の上、利益配分を決定することを方針としています。具体的には、その時点でのキャッシュ・フローの状況を勘案し、財務体質の強化に加え、競争力の強化を目的とした設備投資(新商品開発、合理化、IT投資等含む)等の成長投資を優先することを前提に内部留保の使途を決定します。株主還元については、長期にわたり安定した配当を実施することを基本とし、中期的なEBITDAの水準に基づき年間配当金額を決定するとともに、自己株式の取得は機動的に行う方針です。この方針のもと、次期の配当は1株当たり90円を予想しています。

 

0102010_014.png

 

(注)調整後EBITDA:事業利益 + 減価償却費(IFRSにおけるリース会計適用による現金の流出を伴う減価償却費の計上額の補正)

 

[財務の安定性確保]

現時点では、将来成長の基盤であるイノベーションを優先事項ととらえ、大型のM&Aや設備投資は検討していません。また、当面、大型の借入れや増資計画はありませんが、資本的支出については長期的かつ持続的な成長につながるITや人材、デザイン・ブランドなどの無形資産も含む成長投資により営業キャッシュ・フローの増加を図るとともに、保有資産の最適化を通じて成長投資に必要な資金の創出を図ります。

当社では、ネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下に、また親会社所有者帰属持分比率を35%以上に改善することを中期目標の指標として、アセットライト化の推進に基づく資本効率の向上と固定費の削減に取り組んでいきます。

 

[次期の見通しと通期業績予想値]

次期の見通しについては、国内においては経済環境は持ち直しの動きが続くことが期待されますが、金利の上昇による新築需要のさらなる縮小や、為替変動、物価上昇の動向によっては依然として先行きが不透明な状況が続くと見込まれます。海外においても、欧州・米国を中心に予想される金利の低下、欧州における着実な売上拡大や中東・インドなどの成長市場における需要取込みが期待されるものの、米国の相互関税措置の動向や国際紛争の長期化などの地政学的リスクに起因する世界的な情勢不安に加え、不動産市場の低迷やインフレーションなど、引き続き不透明な状況が続くと見込まれます。

このような厳しい事業環境のもと、当社グループにおいては経営の基本的方向性を示したLIXIL Playbookの優先課題に基づき、これまでも積極的な対策を講じてきました。特に喫緊の課題である海外事業の収益性の回復に向けては継続して構造改革に取り組むとともに、利益率の高い商品へのシフト並びに流通経路のシフト、不採算事業の整理などによる事業ポートフォリオのさらなる見直し、サプライチェーンの再構築などを推進していきます。一方で、業績の向上と持続的成長に向けて、差別化商品の拡大と、社会や環境へのインパクト(良い影響)創出を同時に実現することを目指しています。これまでも機動的で起業家精神にあふれた組織へと変革する取組みを続けてきましたが、今後も引き続き、デジタル化の加速とインクルーシブな企業文化の醸成を通じてイノベーションを推進し、新たな成長機会の確立につなげていきます。

これまで取り組んできた事業基盤の強化による成果は見え始めており、長期的な成長への道筋は変わっていません。ステークホルダーの皆様に提供する価値をさらに高め、ひいては、『世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現』という当社グループの存在意義を実現するために前進してまいります。

 

 

このような中、次期の通期業績予想値につきましては、上記のような事業環境・経営戦略を考慮し反映させた結果、売上収益は1兆5,400億円(前年同期比2.3%増)、事業利益は350億円(前年同期比11.7%増)、営業利益は300億円(前年同期比1.1%増)、継続事業からの税引前利益は210億円(前年同期比4.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は80億円(前年同期比4.0倍)と、増収増益を見込んでいます。

 

なお、上記の次期見通しは現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものであり、リスクや不確実性を含んでいます。実際の業績は、様々な要因によりこれらの見通しとは異なる結果となることがあります。

0102010_015.png

 

(注)1.EPS(基本的1株当たり当期利益)の2026年3月期予想値の算定上の基礎となる期中平均株式数については、2025年3月31日現在の発行済株式数(自己株式数を除く)を使用しています。

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。また、各指標は、以下により算出しています。

ROE :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((親会社の所有者に帰属する持分(前期末)+

親会社の所有者に帰属する持分(当期末))÷ 2)

ROA :親会社の所有者に帰属する当期損益 ÷((総資産額(前期末)+ 総資産額(当期末))÷2)

ROIC:営業利益 ×(1-実効税率)÷ (営業債権及びその他の債権 + 棚卸資産 +

固定資産(のれん等無形含む)- 営業債務及びその他の債務)

ネット有利子負債:有利子負債 - 現金及び現金同等物

3.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。

 

資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。

当社グループは、健全な財政状態を維持しつつ、事業活動に必要な資金を安定的かつ機動的に確保すべく、営業活動によるキャッシュ・フローの創出や幅広い調達手段の実現に努めています。手元流動性に関しては、非常時の決済資金相当額を常に維持することを基本とし、財務柔軟性を確保するため、銀行などの金融機関からの借入や社債の発行に加え、コマーシャル・ペーパー発行枠及びコミットメントラインの確保、受取手形の流動化といった取り組みを通じて、調達手段の多様化を図っています。

なお、新型コロナウイルス感染症拡大のような想定外の事象により経営環境が急激に悪化した際のリスクに備えて、上記の基本方針とは別に短期資金の調達枠を設定しています。また、当社グループ内においても設備投資案件の優先順位付け、在庫管理の徹底、販管費の縮減方策などを通じてさらなる手元流動性の確保に努めています。

 

当連結会計年度においては、税引前利益水準の上昇に加え運転資本の増減などにより営業キャッシュ・フローが大きく改善したことから、当連結会計年度末におけるネット有利子負債は前連結会計年度末に比べて184億円減少し5,343億円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,235億円となりました。

次期においても、引き続きフリー・キャッシュ・フローの改善を通じて有利子負債の圧縮と財務体質の健全化を図ります。

 

0102010_016.png

 

 

なお、財務状況に関する主要指標の推移は、次のとおりです。

 

 

2021年

3月期

2022年

3月期

2023年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

売上収益事業利益率(%)

4.2

4.5

1.7

1.6

2.1

親会社所有者帰属持分比率(%)

31.7

34.3

33.7

34.1

33.7

ネット有利子負債/EBITDA(倍)

3.5

2.9

4.8

5.3

4.7

(注)1.各指標は、連結ベースの財務数値により算出しています。なお、各指標は、以下により算出しています。

ネット有利子負債:有利子負債-現金及び現金同等物

EBITDA     :事業利益+減価償却費及び償却費

2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債及び転換社債型新株予約権付社債を対象としています。また、EBITDAの算出に用いた減価償却費及び償却費には、非継続事業に分類したPermasteelisa S.p.A.及び同社子会社並びに株式会社LIXILビバに係る金額を含めていません。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

なお、令和6年4月1日施行の「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年12月22日 令和5年内閣府令第81号)第3条第4項の経過措置により、この府令に規定された記載すべき事項のうち、府令の施行前に締結された契約に係るものについては、記載を省略しています。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というLIXILのPurpose(存在意義)の達成を目指し、ステークホルダーの皆様と社会に対する持続的な価値創造の実現に取り組んでいます。また、インパクト戦略の推進を通じて、国連が策定した2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献し続けるよう、専門知識や規模を活かしながら社会課題の解決に向けて取り組んでいます。

商品開発においては確かな品質、高い技術に基づいて、快適な住生活・都市環境を実現しお客様に喜ばれる商品を市場に送り出すことを大きな役割と考えており、研究開発部門では、開口部商品、住設機器、内装建材や外装建材から住宅のパネル工法に至るまで、健康、環境負荷低減、高齢者配慮、省資源・省エネルギー等の様々な視点から研究を重ねています。これらの基礎研究、技術開発、商品開発は当社グループの各社における技術研究所、研究開発部門及び商品開発部門が品質保証部門等と連携のもとに取り組んでいます。

 

当連結会計年度の研究開発費のセグメント別の実績及び総額は、次のとおりです。

(単位:百万円)

セグメントの名称

金額

ウォーターテクノロジー事業

17,915

ハウジングテクノロジー事業

7,408

合計

25,323

 

[ウォーターテクノロジー事業]

トイレでは、フラグシップ商品としてトイレが自ら掃除するタンクレストイレ「サティスX」、および、便座を交換するだけでインテリアコーディネートの幅が広がる「シャワートイレVA」を発売しました。

浴室では、“今後の100年を創る”をコンセプトに、お湯をためて入浴し、使用後はコンパクトにたたんで収納できるリムーバブルな布製浴槽(fabric bath)を備えた 「bathtope」を発売しました。

水栓では、うがいに便利な吐水口回転式水栓を給湯エネルギーを無駄に使わないエコハンドル化して発売しました。

タイルでは、同一価格のモジュール化された3形状(600角、600×300角、300角)で、自在なパターン張りが可能な床・壁タイルの新シリーズ「ViCORE」を発売しました。

キッチンでは、プレミアム・こだわり消費の高まりを背景に、トレンドを取り入れたリビング空間演出と最新の周辺機器を搭載したシステムキッチン「RICHELLE」をフルモデルチェンジしました。

洗面化粧台では、間口対応力のある奥行300mmのコンパクトな水場で、生活動線に合わせたレイアウトで暮らしをより快適にする「エスタ ベッセル手洗タイプ」を発売しました。

 

[ハウジングテクノロジー事業]

サッシでは、取替窓「リプラス」にマンション住戸丸ごと改修提案が可能となるの防火戸等の品揃えを拡充しました。ドアでは、国内最高クラスの断熱性能を誇る高断熱玄関ドア「グランデル2」のラインアップを大幅強化し発売しました。

エクステリアでは、社会課題へも対応する形で、セキュリティ強化として玄関ドア共通電気錠「FamiLock」採用門扉、およびカーポートの省施工化に繋がるスマートクイック基礎工法を開発しました。

内装建材では、ノイズレスなデザインを追及した室内用窓「デコマド」を発売、また人気の「ラシッサDヴィンティア」に新たな建具デザイン、新柄床材を追加発売しました。

ビルサッシでは、高断熱化の推進を目指し、高性能サッシ「PRESEA-H」「PRESEA-H・RF」の機能拡充・性能強化を行いました。開口部のハイエンドブランドNODEAでは、当社独自の新技術FORCE CARBONを用いたパノラマウィンドウ「SEAMLESS」が国際的なデザイン賞であるRed Dot Design Awardの最高位の賞「Best of the Best 2024」に日本の窓として初めて選定されました。