第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、鉄鋼商品販売及び工事請負の取扱いを主業務とし、「クニづくり・マチづくり・モノづくりに貢献する」を存在価値として、常に新しい価値の創造に努め業績の向上を図ってまいります。

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、今後の人口減少に伴う市場全体の縮小などの社会情勢変化や鉄鋼・建材流通業界再編の加速、さらには脱炭素社会に向けての経営環境の変化に敏速に対応し、さらなる持続的な成長を実現するためには、積極的な投資を行う経営戦略が必要と考えております。なお、目標とする経営指標は「長期ビジョン2035」及び「第1次中期経営計画」を策定しており具体的指標は下記のとおりであります。

 

2028年3月

2035年3月

売上高(億円)

3,100

5,000

EBITDA(億円)

125

240

営業利益(億円)

75

200

ROE(%)

6.0

10.0

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、鉄鋼商品販売事業と工事請負事業のシナジー発揮を基本戦略とした「存在感のある企業」づくりをさらに進めることにより、業績の向上を図るとともに社会貢献と株主還元に積極的に取組んでいくため、次の項目を中長期的な戦略として掲げております。

①物流拠点の拡充

 鉄鋼商品販売事業においてユーザーニーズの変化に適時適切に対応し、鉄鋼商品販売数量の増加を目指し、拠点の新増設を推進するとともに、在庫商品アイテムの拡大と加工設備の拡充による加工品種拡大・高付加価値加工への取組みを推進し、収益率の向上と鉄鋼市況に左右されにくい収益の安定化を図ってまいります。さらに拠点の新設により販売エリアの拡大と物流の短距離化による短納期化と配送環境改善も図ってまいります。

 毎期の投資を継続することを基本方針とし、資本コストを意識しながら機動的に資源配分を行ってまいります。

 これにより、鉄鋼流通業界の再編が加速するなかで、同業他社との差別化を図り真のリーディングカンパニーを目指してまいります。

②工事請負事業の拡大

 従来、建設工事業者向けの工事請負事業が伸長しており、今後も建材メーカーや工事施工協力会社とのネットワーク構築を推進し、工事請負事業の拡大と工種の拡張を図ってまいります。そのためには、協力会社との連携強化と工事施工管理体制の強化が急務であり、施工管理者育成のための社内研修制度の強化と資格取得支援を積極的に行ってまいります。また、子会社及び施工協力会社に対して技術者育成支援の強化も行ってまいります。

③M&A戦略

 鉄鋼・建材流通業界において業界再編の波が押し寄せており、当社はそれを機会と捉え、積極的なM&A戦略を実行してまいります。

 未進出エリアに対するエリア拡大、加工領域の深耕による顧客利便性の向上によるシェアの拡大、請負事業の拡大に資する会社や事業の獲得をテーマに、能動的かつ柔軟に資本コストを上回る案件に対して、投資を行ってまいります。

④ソフト投資

 従来のハード投資は継続しつつ、2035年に向けて人的資本及びIT・DXへのソフト投資を進めております。人的資本及びIT・DXについては2[サステナビリティに関する考え方及び取組](3)人的資本について、(4)IT・DX推進についてに記載のとおりであります。

 

(4)会社の対処すべき課題

 当社グループの主力販売商品である鉄鋼商品は、鉄鉱石・石炭・鉄スクラップ等の鉄鋼原材料価格の変動並びに需要動向により鉄鋼商品市況が変動する影響で、市況の上昇による販売与信リスク、在庫金利負担の増加リスク、もしくは市況の下落による在庫の販売損並びに評価損リスクの発生が企業業績に大きな影響を及ぼす可能性があり、当社が属している鉄鋼・建材流通業界において販売力・財務力などの差異により企業間格差は拡大傾向にあります。

 このような環境の中、当社グループは企業間競争に勝ち残るため、中長期的な会社の経営戦略で述べたように各種課題にチャレンジし続けてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社グループのサステナビリティに関する基本方針を踏まえた経営方針を実現し、企業価値の向上を目指した経営を推進するため、管理統括本部長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は事務局である経営企画室と連携し、社会・環境問題に関する対応方針や諸施策の立案、気候変動関連のリスクマネジメントと情報開示などについて検討し、取締役会へ報告いたします。

 サステナビリティに関するリスクを含むリスク管理は、管理統括本部長が統括し、重要な方針については取締役会への報告を行います。

 

(2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った情報開示

①ガバナンス

 サステナビリティ委員会は、サステナビリティ全般の対応及びTCFD提言で要請されているリスクと機会の特定、シナリオ分析、温室効果ガス排出量の策定等を実施し、取締役会への報告を行います。

 取締役会は、気候関連の取り組み状況の報告を受け、適宜サステナビリティ委員会に対して指示を行います。

 

②戦略

 事業への影響度、発生可能性、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、リスクの評価結果を下記のとおりとしております。定期的に見直しを行い、対策を講じてまいります。

 

 

〈移行リスク〉

タイプ

気候変動項目

影響評価

事業リスク
/機会

戦略

政策及び法規制

温室効果ガス(GHG)排出規制や削減義務強化などへの対応によるコスト増加

リスク

政策強化に伴って、GHG削減に資する投資を行う必要があります。GHG排出量の可視化と分析を通して、長期的に政策強化の影響を少なくする取り組みを行っていきます。

炭素税の導入によるコスト増加

リスク

炭素税の引き上げがあった場合、燃料コストや電力コストが増加する可能性があります。再生可能エネルギー(太陽光)設備の導入や物流効率の改善を通して、コストの削減に努めていきます。

ビルの省エネ基準の強化

機会

新築工事の需要増に伴う鉄鋼・建材需要の拡大が見込まれます。建築需要に対応できるよう社内体制を整える必要があります。

技術

新素材の開発

リスク

鉄鋼に代わる低炭素素材の開発による、鉄鋼需要の減少のリスクがあります。但し、鉄鋼メーカーも低炭素製品の開発を行っており、今後積極的に当社の商材に組み入れます。

車両の脱炭素(EV)化による設備投資コストの増加

リスク

営業車は随時HV・EV車へ切り替えておりますが、技術の進化により、重量物の輸送に耐えうる輸送車が開発された場合は、切り替えのコストが発生します。

サプライチェーン

気候関連への対応が遅れることによるサプライチェーンからの信頼の低下

リスク

気候関連への取り組みが遅れ、サプライチェーンからの信頼が低下することで収益の減少リスクがあります。再生可能エネルギー(太陽光)の導入等、脱炭素へ向けた取り組みを推進するとともに適切な情報開示を強化することで信頼の獲得に努めます。

GHG排出量の少ない電炉製品の普及

機会

高炉製品に比べGHG排出量が1/5である電炉製品が普及することが考えられます。電炉製品を加工する設備を導入しており、需要増に伴う販路拡大の機会があります。

循環型鉄鋼商品に対する評価

機会

気候変動に対する社会的意識の高まりによる脱炭素・循環型鉄鋼商品の需要拡大。

評判

環境対応の取り組みの遅延

リスク

サプライチェーンのみならず、採用面での悪影響が懸念されます。

 

 

〈物理リスク〉

タイプ

気候変動項目

影響評価

事業リスク
/機会

戦略

急性

台風の増加

リスク

風水害により従業員や建物・車両等が被災した場合、物流業務の停滞や修繕費用の増大等のリスクにより業績に影響を及ぼす可能性があります。BCPの整備を行い、対応をしてまいります。

慢性

平均気温の上昇

リスク

平均気温の上昇により、労働環境が悪化した場合、従業員の健康リスク増大やそれに伴う作業制限等で業績に影響を及ぼす可能性があります。また、労働環境の整備費用増加による影響が生じることが考えられます。倉庫内作業を行う従業員に対して、適切な水分補給や塩分補給等の熱中症対策を徹底し、リスク管理を行っていきます。

海面上昇

リスク

海面上昇によって、港湾機能が低下し、輸入鋼材等の荷下ろしが困難になり、仕入効率が低下する恐れがあります。

高潮の大きさの増加

リスク

当社の倉庫は海岸沿いに立地しており、高潮の大きさの増加により、事業継続が困難になる可能性があります。

酸性化の進行

機会

酸性化の進行により、鉄鋼素材の腐食が進み、防錆等の高付加価値商材の需要が増大する可能性があります。

 

③リスク管理

 気候変動が事業活動に及ぼす影響を適切に把握・管理するため、気候変動シナリオを用いて、サプライチェーン全体のリスク・機会を分析しています。サステナビリティ委員会の事務局である経営企画室において分析を行い、サステナビリティ委員会が取締役会へ報告し事業戦略に反映します。

 今後、環境に関連するリスク・機会の把握に努め、脱炭素を推進し気候変動リスクの低減に努めてまいります。

 

 

④指標及び目標

当社は、2023年度より温室効果ガスの排出量の算定を行っており、2024年度の数値指標は下記のとおりです。なお、目標については現在策定中であり、策定後に開示いたします。

 

■2024年度の実績値(単位:t-CO2)

 

 

項目

数値

備考

直接排出(スコープ1)

6,668

 

電力使用等による間接排出(スコープ2)

4,146

 

その他の間接排出(スコープ3)

1,490,703

 

1.購入

1,131,075

主に鉄鋼製品の購入に係る排出

2.資本財

対象外

3.その他燃料

対象外

4.輸送(上流)

335,914

 

5.事業廃棄物

対象外

6.従業員の出張

1,050

 

7.従業員の通勤

22,664

 

8.リース資産(上流)

対象外

9.輸送(下流)

対象外

10.商品の加工 (注)1

対象外

11.商品の使用

対象外

12.商品の廃棄

対象外

13.リース資産(下流)

対象外

14.フランチャイズ

対象外

15.投資

対象外

16.その他

対象外

 (注)1.スコープ3 カテゴリ10については、算定不可のため対象外

    2.現時点では単体のみ数値管理しておりますが、今後に向けては連結での数値管理も検討しております。

 

(3)人的資本について

 「事業は人なり」という考えのもと、人材が最大の財産であることを強く認識し、人材育成方法の拡充を図り、サステナブルな事業の継続と発展を目指しております。また、多様性を認め、多様な人材・働き方を構築し、産休・育休・時短勤務・有給休暇取得の奨励等のワークライフバランスの充実を意識した安心安全に働ける環境の整備も推進しております。

 

①取り組み状況

 新入社員研修や階層別研修等の社員一人一人の資質向上の為のeラーニング研修及び各種資格取得の奨励制度を導入しております。また、社員側からの希望部署への転換応募制度「ジョブチャレンジ制度」を実施し、自主的なキャリア形成・能力開発に取り組んでいただく制度も制定しております。物価上昇の対策として賃金ベースアップも行い人材確保にも努めております。

 今後の労働人口減少、働き方や顧客ニーズの多様化リスクへの対応力を高めるため、人材の多様化も推進しており、年齢や性別、国籍、障がいの有無に関係なく社員が能力を最大限に発揮できる企業を目指しております。これからは様々な経験、専門スキル、価値観を持つ人材の採用も強化することで多様化をさらに推進し、ビジネスでの新たな価値創造を目指してまいります。

 また、「チーム力の強化」「スペシャリストの育成」「経営人材の育成」を目指して、人事制度の見直しを順次進めており人的資本の取り組みを強化してまいります。

 

②ISO 30414に基づく人的資本の情報開示

 ISO30414に基づく人的資本の現状の数値指標は下記のとおりです。なお、目標については現在策定中であり、策定後に開示いたします。

 

指標

数値

多様性

年齢

60歳以上労働者数48

性別

2024年度女性採用比率39.2

障碍

障碍を持った労働者数16

国籍

外国人労働者数157

(ベトナム、ミャンマー等4ヶ国)

職場の健康・安全・ウェルビーイング

労災件数

49

労災による死亡者数

0

生産性

従業員一人あたりの売上高

236百万円

採用・異動・離職

離職率

8.2

労働力

総従業員数(契約社員含む)

1,069

(注)現時点では単体のみ数値管理しておりますが、今後に向けては連結での数値管理も検討しております。

 

(4)IT・DX推進について

 当社は「長期ビジョン2035」を策定し、成長の柱の一つにDXを据えております。サステナブルな事業継続及び成長を続けるためにはIT・DX推進が必要と認識しており全社取り組みとして実施してまいります。また、鉄鋼流通業界をリードするDX推進企業を目指しております。

① 取り組み内容

 既存取組である、システムのクラウド化、書類の電子化やRPAによる業務自動化に留まらず、2028年3月期にかけて下記取り組みを実施してまいります。

a.CRMの刷新による営業基盤の強化

b.BIツール活用による経営管理の合理化

c.小野建eプレイス(鉄鋼商品EC販売構想)のβ版ローンチ

d.加工、在庫及び配送分野における生成AI活用の模索

② 小野建eプレイス構想

 長期ビジョン2035において小野建eプレイス構想をリリースしており、その実現により鉄鋼流通業界の変革をリードしていきます。

 

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(5)当社の事業活動と取組

 当社は「鉄」というリサイクル性の高い素材の取り扱いを通じ、環境負荷低減と省資源化に努めており、鉄鋼商品をリース会社に販売することで、繰り返し使用され、新たな鋼材生産に伴うCO2の排出が削減されております。

 物流センター内の加工作業等で発生した鉄スクラップは、スクラップ業者を通して電炉メーカーに納入され、新たな鉄鋼商品生産へと循環しております。CO2発生量の少ない電炉メーカーに鉄スクラップを鉄源として提供し、CO2の削減に貢献しております。

 また、鉄鋼商品等重量物の輸送においては、CO2削減に向けて、船舶、鉄道、トラックなど様々な輸送手段を最適な組み合わせで、効率的な物流ネットワークを活用しお客様に配送しております。

 全国各地に物流センター付の営業拠点を構えることで、地域の雇用を創出することに加え、加工設備の拡充により、鋼材加工業者の作業効率を向上させ、地場企業の人手不足解消にも寄与しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当社グループを取り巻く環境について

①当社グループは、アジアを中心として鋼材の輸出入業務を行っております。国内はもちろん、世界的またはその国・その地域の景気後退、競争激化により、あるいは特定の国・地域における予測不可能な政策変更、規制強化、政情不安等により損失が発生した場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、外貨建取引を行うにおいては為替変動リスクを軽減するため、原則として為替予約等の措置を講じておりますが、当該リスクを完全に回避できる保証はありません。今後の為替変動によっては、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これら輸出入業務におけるリスク対策として、常に輸出入国のカントリーリスクの有無を調査し、かつ、契約の都度、相手国及び契約先の状況並びに為替状況を把握した上で契約を締結することとしております。

②当社グループは、鉄鋼商品の在庫販売を行っております。鉄鋼市況の変動への適宜な対応が出来なかった場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。市況の変動リスク対策として、仕入先並びに新聞等のメディアからの情報収集を常に行い、かつ、社内会議等による情報の共有化を進め、市況変動をいち早く察知できる体制を構築しております。

③当社グループは、主として金融機関からの借入金により事業資金を調達しております。今後の金利変動によっては、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。金利変動リスク対策として、常に資金の効率化を図るとともに、状況の変化に対応した最善の調達手段を検討し、実施しております。

④当社グループは、取引先に対し営業債権を保有しております。約8,000社にのぼる全販売先に対して与信枠を設定するとともに、定期的に見直しを図り、貸倒れリスクの低減に努めておりますが、全額回収を保証するものではありません。特定の取引先において、倒産等により債務不履行が生じた場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。貸倒れリスク低減対策として、信用調査機関の調査並びに倒産保険の付与などを適宜行っております。

⑤当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率や長期期待運用収益率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。従いまして、割引率の低下や運用利回りの悪化は経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、運用方針としてはリスク低減型での運用に徹しており、運用先である第一生命保険株式会社及び日本生命保険相互会社から定期的に運用報告を受けております。

⑥当社グループは、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス及びリスク管理を経営上の重要な課題と位置づけており、内部統制システム整備の基本方針を定め、同システムの継続的な充実・強化を図っております。業務運営においては役員・社員の不正及び不法行為の防止に万全を期しておりますが、万一かかる不正行為が発生した場合、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。ただし、その対策として、内部監査室並びに監査等委員である取締役との連携による監査を定期的に行い、かつ、全社員向けにコンプライアンスマニュアル等を活用し定期的に啓発活動を行うことにより、周知徹底を図っております。

⑦当社グループは、地震・台風等の自然災害や感染症によるパンデミック等が発生した場合、事業所や社員の活動が広範囲に及んでいるため、その損害を完全に回避できるものではありませんので経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、自然災害や感染症等の発生に備え、損害の最小化と迅速な復旧が進むよう危機管理マニュアル等の整備と防災対策を実施しております。

 

(2)法的規制について

 当社グループは、通商、独占禁止、特許、租税、為替管理、建設業等の法規制の適用を受けており、これらの規制により、当社グループの活動が制限される可能性があるだけでなく、規制への対応がコストの増加につながる可能性があります。これらの規制により、経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、建設機材類の販売において、建設業者より建設工事の一部工事を請負う受注があり、そのために、「建設業法」に基づき国土交通大臣により特定建設業許可を受けております。

許可番号  国土交通大臣許可(特-4)第8648号

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績

 当連結会計年度における我が国経済は、ウクライナ侵攻問題や不安定な中国経済など海外情勢の変動に伴うインフレの進行と為替の円安傾向継続など、景況感の悪化が心配される状況で推移いたしました。さらに、政府による労働賃金引上げ促進策をはじめとする経済対策やインバウンド需要の回復などで短期的には経済活動を活発化する兆しはあるものの、今後も米国の関税措置の動向などによる不安定要素も多く、先行き不透明な状況となっております。

 当社グループが属している鉄鋼・建材流通業界におきましては、建設業向け需要として、都市部における商業ビルや物流・工場施設などの大型工事さらには災害復旧工事向けの需要はあるものの全体的には国内需要は地域間格差が大きく、かつその他の販売先の業種業態においても需要の濃淡があり、概ね極端な落ち込みは無いものの低調な需要で推移いたしました。また、鉄鋼商品市況におきましては、国際市況や国内需給動向により、徐々に弱含みの状況となりました。

 当社グループにおきましては、鉄鋼商品販売事業は、需要が低調に推移するなか、鉄鋼商品市況も弱含みで推移し、販売競争の激化から販売数量確保に苦慮する状況のなかで、佐賀・山口営業所の新築移転をはじめ静岡市に静岡センターの開設など中長期を見据え拠点整備を積極的に進めるとともに既存の各拠点においても付加価値向上のための加工設備の拡充を積極的に進め、さらに各拠点間の在庫並びに加工設備の有効活用のための連携強化を図り物流コストの低減と在庫の効率化を推進し、販売数量の増加と収益向上に取り組みました。

 建材商品販売事業・工事請負事業は、主力販売先である建設関連業界向け販売が、建設コストの大幅な上昇と人手不足により、特に地方都市の中小型案件を中心に集合住宅・商業施設等の建設延期や計画の中止が相次ぐなど苦戦を強いられました。しかしながら、既受注分の再開発事業の商業施設や物流倉庫などの大型案件については順調に進捗するとともに、災害復旧などの土木建材商品の拡販にも注力いたしました。

 この状況の結果、当連結会計年度の売上高は、2,719億42百万円(前期比3.5%減)となりました。

 損益面におきましては、工事請負事業において利益が増加したものの、鉄鋼商品販売事業において在庫商品販売を中心に利益率が低下したこと、さらには運賃・人件費及び減価償却費の増加を主要因とする販管費の増加により、営業利益68億10百万円(前期比17.2%減)、経常利益69億2百万円(前期比17.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益48億85百万円(前期比15.2%減)となりました。

 

 セグメント別の業績は、次のとおりであります。

 

ⅰ)九州・中国エリア

 前期に対し、売上高は、鉄鋼商品販売事業において販売数量が若干減少したこと並びに販売単価が弱含みで推移したことにより減少しましたが、工事請負事業の増加並びに連結子会社である小野建沖縄(株)及び小野建スチール(株)の寄与により増収となりました。損益は、工事請負事業において増益となりましたが、鉄鋼商品販売事業において販売数量の減少と利益率が低下したこと並びに販管費の増加から減益となりました。その結果、外部顧客への売上高は1,528億36百万円(前期比1.2%増)、セグメント利益は41億26百万円(前期比2.9%減)となりました。

ⅱ)関西・中京エリア

 前期に対し、売上高は、鉄鋼商品販売事業において販売単価が弱含みで推移したこと、かつ、販売数量も減少したことから減収となりました。損益は、鉄鋼商品販売事業販売数量の減少と在庫出荷分を中心として利益率が低下し、さらに販管費が増加したことから減益となりました。その結果、外部顧客への売上高は662億38百万円(前期比9.4%減)、セグメント利益は10億36百万円(前期比34.2%減)となりました。

ⅲ)関東・東北エリア

 売上高は、鉄鋼商品販売事業において販売数量は前期並みとなったものの、販売単価が前期比弱含みで推移し減収となりました。損益は、静岡センターの開設に伴う費用を含め販管費の増加が大きく減益となりました。その結果、外部顧客への売上高は528億66百万円(前期比8.4%減)、セグメント利益は16億94百万円(前期比29.5%減)となりました。

 

 

b.財政状態

(資産)

 前連結会計年度末比49億72百万円減少し、2,035億30百万円となりました。主な要因は、契約資産が18億52百万円、流動資産その他が30億79百万円、建物及び構築物が123億23百万円増加したものの、受取手形が79億79百万円、電子記録債権が73億65百万円、売掛金が33億59百万円、建設仮勘定が34億83百万円減少したことによるものです。

 

(負債)

 前連結会計年度末比76億95百万円減少し、1,052億56百万円となりました。主な要因は、短期借入金が43億80百万円、長期借入金が51億27百万円増加したものの、支払手形及び買掛金が54億86百万円、電子記録債務が84億68百万円、未払法人税等が10億56百万円、流動負債その他が17億55百万円減少したことによるものです。

 

(純資産)

 前連結会計年度末比27億23百万円増加し、982億73百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が23億58百万円増加し、自己株式が3億6百万円減少したことによるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ22億53百万円減少し、当連結会計年度末は41億86百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は57億56百万円(前連結会計年度は159億42百万円の獲得)となりました。これは主に、仕入債務の減少139億54百万円、未収消費税等の増加17億51百万円、未払消費税等の減少10億92百万円、その他の流動負債の減少5億34百万円、法人税等の支払額29億18百万円があったものの、税金等調整前当期純利益69億4百万円及び減価償却費の計上37億21百万円、売上債権の減少169億14百万円によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は156億42百万円(前連結会計年度は207億78百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出151億75百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、獲得した資金は76億32百万円(前連結会計年度は86億62百万円の獲得)となりました。これは主に、配当金の支払17億6百万円があったものの、短期借入金の純増額43億80百万円、長期借入による収入64億円によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、主に鉄鋼・建材商品の販売及び一部工事請負を国内各地域において行っているため、生産及び受注の状況に替えて仕入実績を記載しております。

a.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比増減率(%)

九州・中国(百万円)

153,767

0.6

関西・中京(百万円)

68,327

△11.2

関東・東北(百万円)

52,937

△9.1

 報告セグメント計(百万円)

275,033

△4.5

連結財務諸表との調整額(百万円)

△3,090

合計(百万円)

271,942

△3.5

(注)総販売実績に対し10%以上の販売を行っている相手先はありません。

 

b.仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比増減率(%)

九州・中国(百万円)

139,938

0.7

関西・中京(百万円)

59,721

△12.6

関東・東北(百万円)

47,035

△2.5

 報告セグメント計(百万円)

246,695

△3.5

連結財務諸表との調整額(百万円)

△2,853

合計(百万円)

243,841

△2.4

(注)仕入実績は、商品仕入、材料仕入及び工事に係る材料仕入や外注費等であります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高2,719億42百万円(前期比3.5%減)、営業利益68億10百万円(前期比17.2%減)、経常利益69億2百万円(前期比17.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益48億85百万円(前期比15.2%減)となりました。

(1)売上高

 工事請負事業は前期比並みに推移したものの、鉄鋼商品販売事業において販売数量の減少及び販売単価が弱含みで推移したことにより、売上高は99億91百万円減少いたしました。

(2)営業利益

 工事請負事業は利益が増加したものの、鉄鋼商品販売事業において在庫販売における利益率の低下及び販管費の増加により、14億9百万円減少いたしました。

(3)経常利益

 営業利益の減少により、経常利益も14億40万円減少いたしました。

(4)親会社株主に帰属する当期純利益

 特別利益として、固定資産売却益2百万円を計上したものの、営業利益及び経常利益の減少により、親会社株主に帰属する当期純利益は8億75百万円減少いたしました。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績に記載のとおりであります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、商品の仕入代金並びに販売費及び一般管理費などがあります。また、設備資金需要としては、物流施設の建設並びに加工設備としての機械装置設置費用などがあります。

 

財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、金融機関からの借入と社債等の発行により資金調達を行っております。金融機関には充分な借入枠を有しており、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な資金の調達は今後も可能であると考えております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、資産効率の向上及び株主資本を含めた投下資本の有効利用が全てのステークホルダーの利益に合致するものと考え、投下資本利益率(ROIC)4.5%以上を基本とし、重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における投下資本利益率(ROIC)は3.3%(前期比0.8ポイント低下)です。また、当連結会計年度における自己資本利益率(ROE)は5.1%(前期比1.2ポイント低下)であり、さらに当該指標の改善に邁進していく所存でございます。

 

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 (シンジケートローン契約)

  当社は、2023年11月14日付で、株式会社福岡銀行をアレンジャーとする、総額200億円のシンジケートローン契約を締結いたしました。本契約は、今後の事業拡大に向けた倉庫建設等への設備投資資金の調達を目的としたものであります。

 

  契約日      2023年11月14日

  借入金額     20,000百万円

  返済期限     2033年11月30日

  担保補償     無担保・無保証

  財務制限条項   ① 2023年以降、各年度の決算期(2024年3月の決算期を含む。)の末日における借入人の貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日における貸借対照表における純資産の部の75%の金額以上に維持すること。

           ② 各年度の決算期の末日における借入人の損益計算書に示される経常損益が、2024年3月期以降の決算期につき2期以上連続して損失とならないこと。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。