第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) UACJグループ理念

当社グループは、統合後一貫して、成長するグローバル市場に積極的に関与し、継続した事業発展と社会貢献を目指してまいりました。統合後6年を経過し、また、多くの事業投資と再編も実施する中で、統合当初とはグループの在りようも大きく変化しております。今後の中長期にわたる企業価値の向上に向け、全社員が目指すべき方向を共有し、気持ちを一つに企業活動にまい進する拠り所として「企業理念」を再定義しました。策定にあたっては、広く国内外の若手・中堅社員の想い、意見を募り、経営幹部や社外役員との討議、外部の専門家の監修も踏まえています。技術力をベースに持続可能で豊かな社会へ貢献する姿勢、アルミニウムという素材だからこそ作り出せる社会や世界、多様性を考慮した価値観等を体現しています。

「企業理念」 素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。

「目指す姿」 アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界へ。

「価値観」  相互の理解と尊重  誠実さと未来志向

好奇心と挑戦心

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また、企業理念に向かって希望あふれる航海に出る時の羅針盤となるような、UACJグループの全社員が共通で持つべき行動指針「UACJウェイ」を新たに定めました。

今後はこの企業理念及びUACJウェイを世界中の従業員と共有することにより、国境や世代を超えて永続的に社会・生活を支える企業グループになることを目指してまいります。

 

(2) 中長期経営戦略等

当社グループの主力製品であるアルミニウム圧延品は、軽量でリサイクル性が高いという素材としての特性を活かし、他素材からの切替や新興国を中心とした世界経済の成長を背景として、今後も世界的に需要の増加が期待されています。このようなマクロ環境認識のもと、当社は中期経営計画<2018年度~2020年度>(以下、本中計)を策定し、2018年5月に公表しております。

その概要は下記の通りです。

 

中期経営計画<2018年度~2020年度>

1.当社グループのありたい姿

「アルミニウムの可能性を最大限に発揮し、社会と環境に貢献すること」

2.重点方針

・成長市場(アジア・北米)、成長分野(自動車)に注力継続

・先行投資の着実な回収

・資本効率の向上(ROIC重視)

・行動理念の共有と浸透(UACJウェイ)

 

当社グループでは、アジア、北米を成長市場、自動車を成長分野と位置付け、拡大する需要へ対応するため、前中期経営計画<2015年度~2017年度>(以下、前中計)期間中より生産能力増強の先行投資を進めてきました。本中計においても、これら市場及び分野への注力を継続し、これら設備の稼働による販売の増加を目指します。

 

経済成長にともないアルミニウム需要が増大している東南アジアでは、UACJ (Thailand) Co., Ltd.ラヨン製造所で、第3期の設備投資を実施し、生産能力を年間約32万トンに拡大し、拡販を進めます。北米市場では、環境意識の高まりを背景に、アルミニウム缶材の需要が拡大し続けている一方で、各アルミ圧延メーカーが自動車材生産に品種をシフトした影響で、缶材の需給が逼迫し続けており、そうした需給ギャップに対応すべく、Tri-Arrows Aluminum Inc.ローガン工場で、設備能力の増強と拡販を進めます。これら投資により、日本・米国・タイの3極からグローバルに缶材を供給可能である当社グループの競争優位性をフルに活かし、グローバル顧客への中長期的安定供給を実現することで、競合メーカーとの差別化をはかります。

自動車分野においては、CO2排出量削減を目的に、車体の軽量化ニーズの高まり及び電気自動車へのシフトが起きており、アルミニウムのパネル材及び構造部材への採用が拡大している他、電気自動車向け電池筐体への採用拡大も期待されています。当社グループは、自動車分野向けの需要拡大を確実に捉えるため、国内では、福井製造所で自動車用パネル材仕上げラインを新設、北米では、UACJ Automotive Whitehall Industries, Inc.における生産能力増強投資を実施、素材から一環した製品開発によりお客様にソリューションを提供することで、生産及び販売の拡大をはかります。

これら前中計から継続してきた上記の成長投資については、2019年度迄に概ね完了し、先行投資の着実な回収を行っていきます。

経営指標としては、ROIC(投下資本利益率)を重視して、中長期の資本効率向上をはかってまいります。各事業の資本効率を把握しながら、中長期的な成長性等を勘案し、事業の選択と集中を進めていく事で、ROICの向上に注力します。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

本中計策定時には成長分野を基軸として底固い需要環境と認識していた国内事業においては、2018年後半以降、米中貿易摩擦に伴うIT・半導体市況の悪化等の市場環境の急変によって、主力製品であるIT向けや厚板の需要が大幅に減少しました。さらにアルミ地金価格の下落に伴う棚卸評価関係の悪化等の影響により、2018年度の損益は大変厳しい結果となりました。

2019年度に入ってからも、引き続き厳しい事業環境の継続が見込まれ、需要の急減を契機とする収益力の低下等、経営上の課題が顕在化したことから、これまでの経営を抜本的に見直して経営改革・事業構造改革に着手することを決定し、その骨子を2019年9月に『構造改革の実行』として発表しました。構造改革では、本中計の基本方針を維持しながらも、「生産設備」「ビジネスモデル」「不採算ノンコア」「組織」「マネジメント」「企業風土文化」の6つの要素の改革を有機的に結合させることで、収益構造改革(稼ぐ力)、財務体質改善、マネジメント体制強化(経営のスピードと質の向上)をはかることとしました。

このうち、収益構造改革では、国内では、生産拠点集約、最適生産体制・品種構成改善(自動車材・電池材増加)、間接費削減(間接人員削減等)に向けた施策を進めております。海外では、本中計で掲げた施策を進めており、その着実な実行により、投資の回収をはかっていきます。また、上記諸施策を通して、収益改善を目指します。

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財務体質改善では、設備投資の厳選、利益の創出、棚卸資産削減等の施策を進めており、これら施策により、有利子負債を削減するとともに、D/Eレシオ(負債資本倍率)の改善を目指します。

マネジメント体制強化では、役員体制のスリム化、組織権限の見直し、IT投資をはじめとする業務プロセス改善等により、経営のスピードアップ、コーポレート機能強化及び間接部門のスリム化をはかるとともに、理念・行動指針の見直しを進めてまいりました。これら方針に基づき、2020年2月には理念・行動指針を再定義するとともに、4月には、執行役員の削減、コーポレート部門の本部制への移行を、6月には第7期定時株主総会決議により、社内取締役の人数を削減し、取締役会のスリム化を実施しました。

引き続き、構造改革の完了予定である2022年度に向けて、今後も着実に施策を進めてまいります。

 

 

(新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響ついて)

足元の更なる課題としては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、全体的な需要の減少や一部の拠点における各国政府及び自治体の要請に基づいた操業停止等が発生しました。今後の当社グループの事業活動への影響は、需要の回復が不透明であることや感染第2波のリスク等により、大変見通し難い状況にあり

当社グループでは、従業員とその家族の他、関係する皆様の安全の確保を最優先としつつ、社会になくてはならない製品をお客様にお届けするという使命を果たすべく、緊急対策本部を設置し、各国政府の指示・要請に応え、休業、在宅勤務等の感染防止措置を講じ、操業が可能な製造拠点での操業維持に注力してまいりました。

今後も、必要な感染防止策の実施に努めるとともに、業績・財務両面での影響を最小限に抑えるべく、各事業部門での状況を的確に把握し、対応策を実施し、支出の抑制や必要資金の調達等を迅速に実施してまいります

 

また、当社グループは、CSRへの取り組みにより、ステークホルダーの皆様から信頼される企業グループであり続けたいと考えております。

新企業理念、行動規範の実践を通した企業倫理の確立やコンプライアンス及びリスク管理の徹底等によりコーポレート・ガバナンスを実践するとともに、SDGsやESGの視点から、“環境・社会・企業統治”の3つの要素を重視し、事業を通じた地球環境の保全や資源再生利用の推進労働環境や人権問題への配慮、地域社会への貢献等にも取り組む等、グローバルカンパニーとしての社会的責任を果たしてまいります。今後とも、良き企業市民として、持続可能な社会の構築に取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

[リスク管理体制]

当社グループは、経営に重大な影響を及ぼすさまざまなリスクに対して、適切な対応策を講じるための体制として、社長を委員長、全執行役員及び主要関係会社社長を委員としたCSR委員会を開催し、リスク管理を推進しております。環境、安全・衛生、品質、情報セキュリティ及び輸出管理等、全社共通のリスクについては、グループ共通規程及びグループ各社毎の規程に基づき適切に対応しております。また、各事業部門固有のリスクは各事業部門が管理しております

当連結会計年度より、グループのリスクマネジメントを専門に扱うリスクマネジメントグループを法務部に設置し、グループとしてリスクを統一の基準で評価し、PDCAサイクルを回し、リスク管理を強化する活動を開始しました。2020年4月に、このグループリスクマネジメント活動と経営戦略との連携を高めるため、リスクマネジメントグループを経営戦略部に統合し、事業戦略を不確かにする要素への対応力を強化してまいります。

 

当連結会計年度において、グループ全体でのリスクアセスメントとして、トップダウンとボトムアップの双方のアプローチにより、事業計画の達成を不確かにする要素として138のリスク項目を設定し、それぞれについて、事業と機能の双方の観点から調査し、影響度・発生頻度・対応状況による統一の指標で評価し、当社グループとしての「重要リスク」の洗い出しを実施しました。重要かつ優先して取り組むべきリスクを「重要優先リスク」として選定し、それらについて、執行役員の中からリスクオーナーを任命し、グループ全体での対策を推進しております。このような活動を通して、当社グループでは、グループの事業活動に関する重要リスクを的確に把握し、その対策を推進し、グループレベルでPDCAサイクルを回してリスク低減に取り組む努力を続けております。

 

[個別のリスク]

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社が考えるリスクには、以下のようなものがあります。

(注)当社グループの経営成績等への影響が大きいリスクを以下で取り上げていますが、すべてのリスクを網羅している訳ではありません。以下の各リスク以外にも、現時点では予測できないリスクの発生により、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。また、当社グループでは、上述の[リスク管理体制]や以下の各リスクに関する記載の中で記載した対策等を講じておりますが、それらの対策が当社の意図する通りに実現できない可能性もあります。なお、文中における将来に関する事項は、別段の記載がある場合を除き、当連結会計年度末現在において判断したものです

 

(1) 外部環境の変化に伴うリスク

①新型コロナウィルス(COVID-19)の流行

新型コロナウィルスの全世界的な流行に伴い、従業員の感染により操業の継続が困難になること、当社グループ各拠点を管轄する行政機関等から感染防止策として操業停止等を求められること、全体的な需要の減少により経営成績等への影響が発生すること等の可能性があります。当社グループでは、従業員とその家族の他、関係する皆様の安全の確保を最優先としつつ、社会になくてはならない製品をお客様にお届けするという使命を果たすべく、各国政府等の指示・要請に応え、休業、在宅勤務等を含む対策を講じ、感染防止に努め、操業が可能な製造拠点での操業維持に注力しております。

今後も、新型コロナウィルスの流行状況に鑑み、必要な感染防止策の実施に努めるとともに、経営成績等への影響を最小限に留めるべく、一部製造拠点の臨時休業、設備投資等の支出抑制策、コミットメントラインの設定等による資金調達を含め、各種対応策を迅速に実施しております。しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大終息は不透明な状況であり、今後の感染動向によっては、当社グループの経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

②世界の政治環境・経済動向の変化

当社グループは日本、米国、タイ、中国等で事業を行っており、サプライチェーンもグローバルに広がっていることから、当社グループの事業は、世界の経済全般の景気後退、政治環境(米中貿易摩擦)、環境規制の影響を受ける可能性があります。当社グループでは、構造改革を推進し、外部環境の変化への対応力を上げるよう努めております。

 

③気候変動その他の地球環境の変化

地域あるいは地球規模の冷夏・暖冬等の気象状況により、主力製品である缶材等の製品需要の変化が生じる可能性があります。また、当社グループの供給するアルミニウム製品は、軽量でリサイクル性が高いという特性があり、地球環境の変化に伴い、需要家の環境意識の高まりによって、製品全般に需要の変化が生じる可能性があります。このような変化が、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、このような環境変化を機会として捉えることができるよう、アルミニウムの環境特性を生かした製品及びサービスの提供に努めてまいります。なお、当社では、2020年4月に経営戦略本部にサステナビリティ推進部を新設し、SDGs及びESGの視点で当社グループ内の様々な活動を後押しし、製品及びサービスの提供を含めた地球環境・社会への貢献活動の積極的な推進を強化しております。

④原料価格等の変動

当社グループの主要原料であるアルミ地金は、相場商品であり、世界情勢や市場の動向で予想外の価格変動を起こす可能性があります。製品販売価格は、基本的には「地金価格+加工賃相当」となっており、地金価格は顧客とあらかじめ取り決めたルールに従い、市況を反映して変動することから、相場が変動した場合でも転嫁できる仕組みになっておりますが、短期間での急激な変動等が発生した場合、棚卸資産の評価によって発生する会計上の利益又は損失等が多額に発生し、当社グループの経営成績等に一時的に影響を及ぼす可能性があります。また、合金成分となる各種の金属原料、原油等、各種副資材関係の価格上昇につきましては、当社にとっては使用する燃料費及び加工コストの増大、あるいは広く電力料金の増加、という状況に至ることとなり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

⑤為替変動

当社グループは、連結財務諸表作成にあたって、在外連結子会社の現地通貨建の財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業活動は、米ドルやタイバーツ等様々な通貨で行われております。当社グループでは、為替予約等により外国為替相場の変動による経営成績等への影響が軽微になるよう努めておりますが、変動リスクを完全に排除することは困難であるため、外国為替相場の変動等が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

⑥金利の変動

長期の有利子負債については、金利変動リスクへの対応を目的として、金利スワップを実施すること等により、固定金利による調達割合が過半を占めておりますが、変動リスクを完全に排除することは困難であり、金利の変動は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業戦略に伴うリスク

戦略投資案件の回収

当社グループでは、アジア、北米を成長市場、自動車を成長分野と位置付け、拡大する需要へ対応するため、生産能力増強の先行投資を進めてきました。

経済成長に伴いアルミニウム需要が増大している東南アジアでは、UACJ(Thailand)Co.,Ltd.ラヨン製造所で第3期の設備投資を、環境意識の高まりを背景にアルミニウム缶材の需要が拡大し続けている北米市場では、Tri-Arrows Aluminum Inc.ローガン工場で設備能力の増強を実施いたしました。

自動車分野においては、需要拡大を確実に捉えるため、国内では、福井製造所で自動車用パネル材仕上げラインを新設、北米ではUACJ Automotive Whitehall Industries, Inc.で生産能力増強を実施いたしました。

上記の成長投資については、2019年度迄に概ね完了し、先行投資の着実な回収を行ってまいりますが、市況や事業環境の悪化等によって当初予定していた事業計画を達成できない場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業運営に関するリスク

①資金調達

当社グループは、事業活動に必要な資金を銀行借入やコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しております。事業に必要な資金の調達については、常に資金使途に合わせた資金を取引先金融機関やコマーシャル・ペーパーの発行で調達を実施し、コミットメントライン枠を設定することで資金調達リスクの軽減を図っております。しかし、事業環境・金融環境の変化により、資金調達が想定していた条件で実施できない場合や、事業計画の見直し、資金調達コストの上昇等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、資金調達のリスクを軽減させるため、キャッシュ・フローの改善にも取り組んでおります。UACJ発足以来、国内・海外の成長市場・分野への設備投資を実施したことにより、有利子負債残高が大幅に増加いたしましたが、当連結会計年度において、成長市場・分野への投資回収が始まったことや事業再編(事業売却)や資産売却等を実施したこと等により、前連結会計年度末より大幅削減を実施しております。

 

②グループガバナンス

当社は、多数の拠点及び部門に加え、国内外に60社を超えるグループ会社を有しています。当社グループの経営成績等の実現には、グループとしての方針や戦略の下、総合力が発揮されるかどうかが大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、当社の各部門やグループ各社に十分にグループの方針や戦略が徹底、浸透するよう、UACJグループ理念、UACJウェイ、及びグループ行動規範の浸透、規程等の整備、従業員教育に努めており、このような活動を更に強化するため、2020年4月に、経営戦略本部の中に風土改革推進部を新設いたしました。また、構造改革を推進する中で、グループ本社機能の強化、経営管理システムの強化等、ガバナンスやマネジメントの改革にも取り組んでおります。

③戦略的な人材育成・配置

当社グループの中長期的な成長には、適切な戦略の策定、目標の確実な実行が必要となり、これらを推進する優秀な人材に、当社グループの中で適材適所で活躍し続けてもらうことの成否が大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社では「計画的・組織的に人材を発掘し育成する後継者計画」、「多様性を活かすダイバーシティー&インクルージョン」、「求める人材像に沿った人材開発・育成」の取り組みを実施するとともに「働き方改革を通じた従業員のエンゲージメントと働き甲斐の向上」に取り組んでおります。

④原材料の調達

当社グループが購入する原材料には、供給元が限定的なものが含まれております。 これらの原材料は、生産者自体の要因で価格が変動したり、供給量が制約されたりする可能性があります。当社グループでは、有事に備えた在庫量の確保や調達先の多様化を進める等、お客様への製品供給の継続維持に努めております。

⑤製品の品質

2017年、他社において顧客との仕様書に基づく試験を実施せず、現場で代替試験が行われていたことが発覚しました。当時大きな社会問題となり、該当会社のみならずアルミニウム業界全体で対応し信頼回復に努めております。今後当社グループにおいて、同様の品質不正事例を発生させてしまった場合、顧客の信頼を著しく失墜させてしまい、事業の競争力や財務状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、アルミニウム協会が発行した「品質保証に関するガイドライン」を参考として「品質保証に関するガイドラインUACJ版」を発行し、「コンプライアンス」は品質の基盤であることを再定義しました。また、当該ガイドラインに基づき、グループ内で品質相互監査を実施することで、コンプライアンス順守を推進し、積極的に品質の維持改善に取り組むとともに、各年度毎に設定する品質管理方針に基づき、不具合の未然防止と再発防止、ヒューマンエラーの防止及び適切な教育訓練等の改善とフォローアップに取り組んでおります

⑥技術変化・需要変動への対応能力

近年、デジタル化等、急速に技術の深化・変化が生じております。また、このような技術変化だけでなく、地球環境や社会情勢等の変化もめまぐるしく、当社グループのお客様のニーズも、多様化しています。このようなお客様の多様なニーズに合わせ、適時に、ニーズに合致した製品やサービスの提供を行い続けることが、当社グループの事業の競争力、成長性や経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社では、R&Dセンター内に設置した「U-AI Lab.(ユーアイラボ)」を活用してお客様やサプライヤー様等と共同で新製品の開発を進めると共に、国内外の大学や先端研究機関との共同研究や国家プロジェクトへの参画を通じて最先端技術を取込む等、常に競争力の強化を図っております。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の積極的な推進を行うとともに、当社グループが持続可能な地球環境と社会の実現に向けて貢献できるよう、リサイクルを始めとした環境対応技術にも積極的に取り組んでおります。

⑦自然災害・事故等

昨今、国内はもとより海外においても、地震、水害その他の自然災害、テロ等の人災、大規模な災害等の発生により、人的にも物的にも大きな被害が発生する事例が頻発しております。また、当社グループ設備には、鋳造炉、焼入炉等のように、高温、高圧での操業を行うものが含まれております。これらの設備を含め、設備の稼働においては、設備自体及びその操作の双方における安全が不可欠であり、当社グループでは、安全の確保に万全を期しております。万一、当社グループあるいは当社グループのお取引先様において、このような事故や災害等が発生した場合、その被災の程度によっては当社グループの生産活動に支障をきたし、当社グループの経営成績等に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、安全に関する種々の規則の整備、教育の実施の他、当連結会計年度においては、重大事故のうち、火災や爆発のリスクをグループ重要優先リスクの一つと認識し、国内外各製造拠点にてリスクアセスメントを実施し、対策状況の分析を行っています。

また、当社では、重要製品の製造が滞ることのないよう、国内板事業製造所から順次BCPの整備を進めております。

 

⑧環境保全と法令遵守

当社グループの事業は、国内外を問わず、広範な法令の適用を受けております。それらの法令により、当社グループの過失の有無にかかわらず損害補償を課せられる可能性があります。また、新たな法規制の制定や法規制の強化により、それらへの対応のための費用が発生する可能性があります。

当社グループでは、当連結会計年度において、UACJグループ理念及び行動指針「UACJウェイ」を新たに制定いたしましたが、この中で、「アルミニウムを究めて環境負荷を減らし、軽やかな世界」を築くことが当社グループの目指す姿であること、また、この実現にあたり「安全とコンプライアンス」が当社グループ全ての役員及び従業員が大切にすべき最重要の価値観であることを再定義いたしました。このような新しいグループ理念と「UACJウェイ」の下、従来より実施してきた、当社グループ全ての役員及び従業員が遵守すべき「グループ行動規範」の教育・浸透、及び製造業を営む者として重要な、労働安全、労働衛生、環境保全等に関する法規制をはじめとした、事業継続に重要な影響を与える法令に関する各種の遵守活動等を継続して実施することにより、予期せぬ損失を最小限に抑え、社会からより一層信頼される企業グループとして事業を継続できるよう努めてまいります。

⑨情報管理

当社グループでは、お客様から提供された情報、従業員とその家族等の個人情報、及び当社グループの事業の中で生じた情報等、様々な情報を取り扱っております。このような情報が、悪意をもった第三者による攻撃で社外へ漏えいすることにより、賠償責任、信用の失墜、取引機会の損失等の損害が発生する可能性があります。また、当社グループの研究開発や製造活動の中で生じた知的財産が社外へ流出することにより、当社の競争力を失う可能性もあります。

当社では、昨今の情報セキュリティ情勢に鑑み、情報管理リスクをグループの重要優先リスクの1つと認識し、グループ全体のセキュリティに関する考え方を統一するため、当連結会計年度において、グループ共通規程として、「情報管理規程」と「電子情報セキュリティ規程」を制定しました。また、経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構の定める「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」をベースとしたアセスメントを定期的に実施し、セキュリティレベルの更なる向上を図っております。

 

(4) 会計上の評価・見積りに関するリスク

固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しておりますが、市況や事業環境の悪化等によって、当社グループが保有する固定資産の市場価格が著しく低下する場合や固定資産の収益性が低下する場合には、当該資産について減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

②繰延税金資産の回収可能性

当社グループでは繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。しかしながら、市況や事業環境の悪化等によって将来の課税所得の見積り等に大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しが発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当期の世界経済は、米中貿易摩擦による中国経済の減速や地政学的な情勢をめぐる不透明感等により、世界的な経済成長の減速感が高まりました。直近では、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大により、各国における経済活動が停滞し深刻な景気後退に陥りつつあります。

わが国経済については、緩やかな景気回復基調にありましたが、消費税率引き上げに伴う個人消費の落ち込みや新型コロナウイルスの影響により、景気後退局面に転じる懸念が強まっております。

このような情勢の中で、当社グループは2018年5月に公表した中期経営計画<2018年度~2020年度>(以下、本中計)で掲げた重点方針及び2019年9月に発表した「構造改革の実行」で掲げた主要施策の達成に向け、総力をあげて取り組んでまいりました。

 

(財政状態の分析)

伸銅品事業の売却等により、当連結会計年度末の資産については752,785百万円(前連結会計年度末比6.7%減)、負債については550,069百万円(同8.5%減)となりました。

純資産については、株式の売却や株価下落によるその他有価証券評価差額金の減少等により、202,716百万円(同1.7%減)となりました。

 

(経営成績の分析)

連結売上高については、本中計で掲げた重点方針の1つである成長市場(アジア・北米)、成長分野(自動車)への注力の結果、UACJ (Thailand) Co., Ltd.やTri-Arrows Aluminum Inc.で販売数量は増加したものの、国内販売数量の減少やアルミ地金価格の下落等により615,150百万円(前期比7.0%減)となりました。損益については、棚卸資産の評価によって発生する会計上の損失がアルミ地金価格の下落に伴い多額に発生したこと等により、連結営業利益10,126百万円(同31.9%減)、連結経常利益3,788百万円(同38.9%減)となりました。また、「構造改革の実行」の一環として実施した伸銅品事業売却に伴う構造改革損失の計上や、当社連結子会社であるUACJ Australia Pty.Ltd.が保有しているBoyne Smelters Ltd.の株式及び同社に対する貸付金について評価損を計上したものの、繰延税金資産を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は2,038百万円(同82.6%増)となりました。

セグメント別の状況については、以下のとおりであります。

 

アルミ圧延品事業

アルミニウム圧延品業界について、板類の国内需要は、自動車関連で底堅く推移しましたが、飲料缶が前期比微減となり、また、液晶・半導体製造装置等が低調であったことから、板類全体としては前期比で減少となりました。押出類に関しては、乗用車、自動車用熱交換器、産業機械、半導体製造装置等の分野で減少、押出類全体でも減少しました。

当社グループの国内向け販売数量は、板類は前期比で減少となりました。自動車関連は堅調でしたが、米中貿易摩擦や景況感の悪化により、液晶・半導体製造装置用厚板等は減少傾向になりました。押出類では、乗用車、自動車用熱交換器、産業機械、半導体製造装置等の分野で減少しました。海外向け販売数量は、UACJ (Thailand) Co., Ltd.やTri-Arrows Aluminum Inc.で販売数量が増加、当社グループのアルミ圧延品総量では前年同期を上回りました。

以上の結果、販売数量は増加したものの、アルミ地金価格の下落等により、当期のアルミ圧延品事業の売上高は、503,807百万円(前期比5.1%減)となりました。営業利益については、棚卸評価関係が悪化したこと等により、12,545百万円(同26.3%減)となりました。

 

伸銅品事業

「構造改革の実行」の一環として、2019年9月に伸銅品事業を譲渡し、当連結会計年度における損益の取り込みが6ヶ月間となったことから、当期の伸銅品事業の売上高22,914百万円(前期比51.7%減営業利益は373百万円(同78.5%減となりました。

 

加工品・関連事業

電池材・空調関連品は堅調に推移したものの、日本及び米国の加工品事業の売上が減少したこと等により、当期の加工品・関連事業の売上高は188,772百万円(前期比4.2%減)となりました。一方、営業利益はコスト削減等により、3,142百万円(同1.1%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より2,591百万円増加し、27,781百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、税金等調整前当期純利益が減少したものの、売上債権の減少額やたな卸資産の減少額等の影響により、前期比47,464百万円(同445.6%)増加し58,115百万円となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、本中計にて計画しておりましたUACJ (Thailand) Co.,Ltd.における第3期投資やTri-Arrows Aluminum Inc.における生産能力向上のための設備投資を中心とした有形固定資産の取得による支出を行ったものの、伸銅品事業の売却や投資有価証券の売却による収入等により、期比4,927百万円(同14.1%)減少し30,021百万円となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、借入金の返済を進めたこと等により、25,852百万円(前期は28,971百万円の調達)となりました。

 

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の仕入等の製造費用や販売費及び一般管理費等であります。投資を目的とした資金需要は、主として設備投資によるものであります。これらの所要資金は自己資金及び借入金等により手当てしております。

UACJ発足以来、国内・海外の成長市場・分野への設備投資(先行投資)を実施したことにより、フリー・キャッシュフローはマイナスで推移して来ました。当連結会計年度においては、成長市場・分野への設備投資は継続したものの、事業再編(事業売却)、資産売却等を実施した結果、フリー・キャッシュフローを黒字化し、有利子負債残高(※)については前連結会計年度末375,080百万円から当連結会計年度末344,011百万円となり、31,070百万円の削減を実現、財務状況を改善させました。

資金調達については、設備投資等の長期資金と運転資金(短期資金)を区分し、資金使途に見合った資金調達方法を実施する事やコミットメントライン枠の設定等により資金調達リスクへの対応と管理をしております。

 

(※)有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産実績及び受注実績は、グループ内の会社間で前工程生産と後工程生産を行っている場合があり、各社の取引額の単純合計がそのまま連結生産実績とはならないこと、また受注生産形態をとらない製品もあることから、事業ごとに生産規模及び受注規模を金額又は数量で示すことはしておりません。なお、販売実績については、「(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載しております。

なお、当連結会計年度において、いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社グループの経営成績等に対して重要な影響を与える可能性のある会計上の見積り及び当該見積りの仮定は以下のとおりです。

 

①固定資産の減損

営業損益が継続してマイナス等の減損の兆候が見られた資産もしくは資産グループについて、割引前の将来キャッシュ・フローの見積り額が帳簿価額を下回っている等の要因により減損損失を認識すべきと判断された場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとなります。回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額を採用しており、正味売却価額は主に鑑定評価額により算定し、使用価値は将来キャッシュ・フローの現在価値に基づいて算定しております。

将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは、将来の事業計画や処分価値算定における前提条件に基づいて行っているため、将来の当該資産もしくは資産グループを取り巻く状況変化に伴い、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 

②繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性の評価については、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(企業会計基準適用指針第26号)」に従い将来の課税所得を見積り、回収可能と判断される範囲において繰延税金資産を計上しています。

しかしながら、今後将来の課税所得の見積りに大きな変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しが発生することがあります。また、繰延税金資産は、決算日現在の法人税率等を利用して算出しているため、将来税率変更があった場合に、繰延税金資産の金額が増減することがあります。

繰延税金資産の内訳等については、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご参照ください。

 

また、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴う会計上の見積りについては「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大に伴う会計上の見積りについて」をご参照ください。

 

その他につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要事項)」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 豪州におけるアルミ製錬事業参加契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約年月日

契約期限

当社

RIO TINTO ALUMINIUM LIMITED

他5社

オーストラリア

豪州におけるアルミ

製錬事業参加契約

1979年8月27日

但し、1994年3月30日に

更新

2028年12月31日

 

(2) 米国におけるアルミニウム製品の製造に関する合弁事業契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約年月日

契約期限

Tri-Arrows

Aluminum Inc.

Novelis Corporation

アメリカ

米国におけるアルミニウム製品の製造に関する合弁事業契約

1985年1月18日

定めなし

 

(3) 欧州における自動車用熱交換器材の販売に関する合弁事業契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約年月日

契約期限

当社

Elval Hellenic Aluminium Industry S.A.

ギリシャ

欧州における自動車用熱交換器材の販売に関する合弁事業契約

2015年4月27日

定めなし

 

(4) 中国における自動車用熱交換器材等の製造に関する合弁事業契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約年月日

契約期限

当社

UACJ製箔

広東東陽光科技控股股份有限公司

中国

中国における自動車用熱交換器材等の製造に関する合弁事業契約

2009年10月8日

但し、2016年2月16日、2019年2月20日に改訂

2052年6月17日

但し、合弁当事者の合意により延長可

 

当連結会計年度における、経営上の重要な契約等の決定又は締結等は次のとおりであります。

(1) 中国における自動車用アルミ押出加工部品の製造、販売等に関する合弁事業契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約年月日

契約期限

当社

中信渤海アルミ控股有限公司

及び中信ダイカスタル股份有限公司

中国

中国における自動車用アルミ押出加工部品の製造、販売等に関する合弁事業契約

2019年4月15日

合弁会社の設立日から50年後

但し、合弁当事者の合意により延長可

 

(2) 当社連結子会社(株式会社UACJ銅管)の株式譲渡契約

当社は、当社連結子会社の株式会社UACJ銅管の株式をアスパラントグループ株式会社が運営するAG2号投資事業

有限責任組合及びAG2号b投資事業有限責任組合並びに大和PIパートナーズ株式会社が発行済株式の全てを所有する豊

川ホールディングス株式会社に譲渡することについて合意し、2019年6月19日付で株式譲渡の契約を締結し、2019年

9月30日付で譲渡を完了しております。

 

5【研究開発活動】

R&Dセンターでは、お客様のニ-ズの多様化や環境・エネルギー・輸送等の分野での社会・技術変化に対応するため、材料設計・生産プロセスに関する基盤技術の深化から製品及び利用技術の開発まで、一貫した研究開発を推進しています。2019年度には、グループ各社、各事業部と緊密に協働し、お客様のご要望に迅速に応える新製品の開発や更なる高品質化を推進すると共に、国内外の先端研究機関と連携し、最新の技術や知見の獲得を通じて、研究開発力の継続的な向上を図ってまいりました。具体的には、2018年度に産業技術総合研究所 中部センター内に設立した「UACJ-産総研アルミニウム先端技術連携研究ラボ」の活動を本格化させ、プロセス技術の改良から新規用途探索、データサイエンスの活用に至るまで幅広い分野での共同研究を推進した他、国内各有力大学との協業の推進(北海道大学とは、新たに同大学 産学・地域協働推進機構に『次世代アルミニウムイノベーション推進部門講座』の設置を決定)、タイ王国で活動を開始したR&D Center (Thailand)を通じての同国の国家研究機関との交流等、グローバルな活動を展開しています。また、タイ王国内の工学系学生を採用・育成する制度を確立・運用し、その初めての修了生が、R&D Center (Thailand)で活躍を始めました。一方で、データサイエンス・人工知能(AI)により新材料や代替材料を効率的に探索する『マテリアルズ・インフォマティクス(MI)』の共同開発では日立製作所とパートナーシップを組む等、学術界、産業界それぞれにおいて最適なパートナーとの連携を深めています。2019年2月に活用を開始したオープンイノベーションのためのスペースである「U-AI Lab.(ユーアイラボ)」には、年間を通して多数の顧客企業等にご来場頂き、それを起点とした課題共創活動が、複数走り出しています。また、当社グループがSAPジャパン株式会社、ドクターズ株式会社と共同で進めている「開封検知付アルミ箔を使用した服薬管理システム」の開発は、当社ビジネスを「モノからコトへ」拡大させるきっかけになると期待されています。

SDGsに代表される企業の社会的責任の実行に寄与すべく、安全・コンプライアンスの最優先はもちろんのこと、環境負荷を低減する各種研究開発テーマへの取組みに加え、朝日新聞社主催の「地球教室」、日本経済新聞社主催の「日経エデュケーションチャレンジ」等の教育企画にも講師を派遣致しました。

当連結会計年度の費用総額は、4,305百万円であります。各セグメントの研究状況は次のとおりです。

 

アルミ圧延品事業

当社の主力であるアルミ板製品に関わる研究開発では、アルミ缶等の容器をはじめ、自動車ボディシート、自動車構造部品、自動車用熱交換器、エアコン、IT関連機器、メモリーディスク、船舶用厚板、電解コンデンサ、リチウムイオン電池用集電体等に使われるアルミ材の開発に注力し、多様化・高度化するお客様のニーズにお応えしております。2019年度には、アルミメーカーでは初導入となった量産機同等のボトル缶成形機を駆使したボトル缶用材料の開発等を実施致しました。一方で、社内製造部門との連携では、シミュレーション技術の更なる展開、データ活用技術、機器分析技術、評価技術の高度化、自動化等を通じ、タイ王国ラヨン製造所のフル生産化、福井製造所に新設された自動車ボディ用板材製造ラインの立ち上げ等、生産性の向上や製造コスト・環境負荷の低減にも貢献致しました。経済産業省委託事業である「革新的新構造材料等研究開発プロジェクト」では、参画する4テーマで後半5年間を実施中であり、高強度材の自動車部品への応用やアルミニウムリサイクルプロセスの開発を加速しています。

アルミ板事業と並ぶ当社グループの中核事業であるアルミ形材・管・棒製品に関わる研究開発では、自動車用熱交換器材料や空調用材料の開発とともに、航空機や自動車構造部材、二輪車用高性能材の開発を進めております。また、鋳鍛製品に関わる研究開発では、世界でも数社しか生産できないコンプレッサホイール等、付加価値の高いアルミニウム製部材の開発に積極的に取り組んでおります。

 アルミ圧延品事業に係る当連結会計年度の研究開発費は、4,255百万円であります。

 

伸銅品事業

 伸銅品事業では、蟻の巣状腐食対策として開発した「DANT」のさらなる拡販を目指し、東南アジア地域にみられる硫化水素共存下の耐蟻の巣状腐食性を検証しました。また、DANTのグローバル化を想定し、各国での知的財産権の獲得に積極的に取り組み、米国での権利化を達成しました。あわせて、エアコン用高強度銅管であるCuNiP合金の冶金的特徴の探求を推し進めました。

 伸銅品事業に係る当連結会計年度の研究開発費は、34百万円であります。

 

加工品・関連事業

加工品・関連事業では、2019年度に新設された「自動車部品事業本部」に協力し、材料設計、強度シミュレーション、生産プロセス設計等の面で、多くの新規製品開発に貢献致しました。現在は、北米の自動車部品製造拠点であるUACJ Automotive Whitehall Industries, Inc.に研究者を常駐させる等、同事業への支援体制を更に強化しています。

 加工品・関連事業に係る当連結会計年度の研究開発費は、16百万円(売却した伸銅事業分を含む)であります。

2020年度につきましては、全社一丸となって進めている構造改革の完遂を最優先とし、お客様との丁寧な交流や事業部との緊密な連携を通してUACJグループの成長につながる技術・製品を研究開発するとともに、新規に制定致しました会社理念が目指す「持続可能で豊かな社会」の実現に向けて、基盤技術の深化と探索に取り組んで参ります。