文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[古河電工グループの理念体系]
当社グループは、経営の判断の軸となり、従業員一人ひとりが理解・共感し、当社グループで誇りを持って働くことにつながるパーパス(存在意義)を2024年3月に制定し、これまでのグループ理念体系を見直しました。
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。また、持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観を、「Core Values」としております。
「古河電工グループ ビジョン2030」は、将来社会像やパーパスを踏まえ、時間軸を2030年と定めて描いた当社グループの将来の在りたい姿を定めたものです。ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義したものが25中期経営計画です。
「古河電工グループCSR行動規範」は、パーパス及びCore Valuesに基づき企業活動を展開するにあたり、企業の社会的責任の観点から、当社グループの役員・従業員のとるべき基本的行動の規範を定めたものです。

■古河電工グループ パーパス*
「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、経営の判断軸となり、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。
創業以来磨き続けてきた技術力と提案力を強みとし、さまざまな社会課題に向き合い挑戦することで、よりよい未来へとつながる「つづく」をつくることが当社グループの存在意義である、との思いを込めています。また、創業者である古河市兵衛の「日本を明るくしたい」という思いを継承しつつ、グローバルに事業を展開していることを鑑みた表現にしています。

*「古河電工グループ パーパス」は、2024年3月に制定され、2024年4月19日から施行されています。
■Core Values(コア・バリュー)
当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観として<正々堂々><革新><本質追究><主体・迅速><共創>の5つを定め、「Core Values」としております。

■古河電工グループ ビジョン2030
当社グループは、古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」に基づき、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs*)」が示す社会課題の解決を念頭に置いて2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けて目指す時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)を策定しております。
ビジョン2030のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域において、当社グループは社会課題の解決を目指してまいります。さらに、新領域においても、これまでにない新たな事業の創出を通じた社会課題の解決を目指してまいります。

さらに、当社グループでは、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、収益機会とリスクの両面で次のとおりマテリアリティを特定しております。これらのマテリアリティに取り組むことにより、ビジョン2030を達成するとともに、SDGsの達成にも寄与してまいります。また、当社グループの中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

*SDGs…国連で採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴール・169のターゲットで構成される国際目標
(2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社は、ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義し、その達成に向け2025年度を最終年度とする4か年の中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)を2022年度に策定し、各施策に取り組んでまいりました。

<経営環境>
25中計の前提となる当社を取り巻く経営環境は、今後も急速に、時には非連続的に変化していくものと考えております。例えば、ESG/SDGsが企業の存続に欠かせない経営課題となる、人生100年時代等を踏まえた新たなライフスタイルが広がる、人口減少・高齢化の進展により国内市場が縮小する、DX(Digital Transformation)が急速に進展する、等があげられます。
このような環境においては、Beyond5G*の実現やカーボンニュートラルの実現、安全・安心・快適に人とモノが移動の自由を享受するための次世代インフラの実現、健康寿命延伸の実現、サーキュラー・エコノミーの実現等の社会課題解決の期待がより高まるものと想定されます。
*Beyond5G…5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。

<各事業領域における市場環境の見通し>
世界経済は、インフレ率が低下する中で、底堅く推移しました。もっとも、インフレ率の展望や地政学的リスクには不透明な状況が続きました。また、年度末にかけて貿易環境の不確実性が急速に高まる等、経済の先行きは一段と不透明なものとなっています。こうした中でも、当社グループが注力分野と位置づけているデータセンタやAI関連市場については増勢が顕著な状況が続き、中長期にも継続的な市場成長が見込まれます。
情報通信分野は、クラウドをベースとしたサービスが様々な分野で成長しており、中でも生成AIの分野は急成長を果たしています。それらを支えるデータセンタ関連の光ネットワークの建設は今後も続くと考えられます。足元では世界的な光ファイバ等の需給バランスが復調傾向であり、データセンタ関連分野がけん引する形で中長期での継続的な市場成長が見込まれます。
エネルギー分野は、国内では国のエネルギー政策に伴う洋上風力を中心とする再生可能エネルギーや電力会社のリプレース需要が見込まれ、海外では欧米、新興国での旺盛な需要が継続する見通しであります。
自動車分野は、経済が拡大基調をたどる中、自動車需要は堅調に推移すると見られ、今後も当該分野は継続的に成長する見通しであります。
機能製品分野は、生成AI関連市場は好調、スマートフォン・パソコン・HDDの需要は緩やかに復調すると見込んでおり、中長期的には継続的に市場拡大・成長する見通しであります。
<25中計達成に向けた取組み(対処すべき課題)>
25中計のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出を掲げ、収益の拡大に向けた取組みとして、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しております。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでおります。
①資本効率重視による既存事業の収益最大化
25中計目標達成のため、各事業の収益の拡大に向け、引き続き収益性・成長性等の観点から投資配分の最適化を進め、事業ポートフォリオの見直しを含む、資本コストをより意識した経営管理と意思決定を一層加速してまいります。
事業ポートフォリオの見直しについては、2022年に「事業ポートフォリオ検討委員会」を設置し、25中計における各事業の位置づけ等、事業ポートフォリオの変革に関する重要事項を審議し、経営会議に提案・報告を行っています。そして、主にこの事業ポートフォリオ委員会の場で、データセンタを中心とした注力分野を選定し、設備投資等の経営資源を集中的に配分しております。具体的には、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編を実施しました。また、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を実施しました。一方で、資本効率改善や成長事業に必要なリソース確保のため、関連会社株式の一部売却や持分譲渡を行っております。
25中計達成に向けて、情報通信ソリューション事業は光ファイバ・ケーブル事業において、一体となったグローバル経営により効率的かつ迅速な意思決定を行い、データセンタ関連分野に注力し、収益拡大を図ってまいります。エネルギーインフラ事業では、メタル電線の事業運営効率化による相乗効果を発揮することで、多様化・高度化するニーズに迅速に対応してまいります。加えて、マーケティング活動の推進による拡販やケーブル製造能力・工事施工能力の増強、及び利益確保重視の受注に取り組んでまいります。自動車部品事業では、電動自動車市場向けの高電圧に対応したワイヤハーネス等の関連製品の開発や、製造の自動化に取り組んでまいります。また、電装エレクトロニクス材料事業では、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に努めてまいります。機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、放熱・冷却製品における次世代製品の開発や、半導体製造用テープ及び高周波基板用電解銅箔の供給体制の整備に取り組んでまいります。
各事業の収益拡大に向け、製品群単位で当社の強みを生かすという観点で事業ポートフォリオの見直しを継続的に行うことにより、付加価値を訴求し、利益を創出する製品群・ビジネスモデルへの変革をさらに進めてまいります。
なお、資本効率重視の経営を推進するために、各事業を評価する管理指標として、投下資本利益率(ROIC)や投下資本利益額(FVA)(※1)を導入しています。事業ポートフォリオ最適化に向け、将来の成長性、当社の競争力及び炭素効率性(GHG(※2)排出量売上高原単位)を加味した上で、M&Aを含む成長を模索、撤退有無の判断等、必要なアクションを迅速に進めています。また、事業別FVAのコストの算出には、財務要素に加えて「気候変動」(※3)や「人権・労働慣行」等のESGの要素も組み込まれています。事業別FVAは毎年振り返りや見直しを行い経営会議にて報告され、事業ポートフォリオの最適化や経営資源配分等に活用しています。
※1 FVA(Furukawa Value Added):EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。
※2 GHG(greenhouse gas):温室効果ガス
※3 具体的には、事業別の「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位」を考慮
②開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備
当社グループは、素材力を核として長年培ってきた「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を活用するとともに、外部パートナーとの共創を進めるほか、デジタル技術やデータの利活用を推進し、課題解決を起点とした製品・サービスの開発・提供を通じて、新たな社会課題解決型事業創出に向けた基盤整備を進めております。
環境負荷の低減及び労働衛生の改善に向けて、メタルやポリマー等の素材をフォトニクス技術で加工するレーザー施工システム(産業用レーザ、インフラレーザ)の開発を加速してまいります。また、フォトニクス技術・メタル技術を生かした低侵襲医療向けのライフサイエンス関連製品については、開発の促進と製造能力確保のため特殊ファイバ製品の製造会社を子会社化し、顧客への提案活動を進めるとともに、更なる高度化を目指してまいります。加えて脱炭素社会・循環型社会の実現を目指し、引き続き化石資源によらないグリーンLPガス(※1)の開発・製造を進めてまいります。さらに安全でサステナブルなエネルギーの供給に貢献する核融合(※2)発電関連製品である超電導線材の開発を進めるとともに、超電導マグネット設計会社へ出資し市場開拓を加速してまいります。また、B5G社会に対応するため、データトラフィックの増加への対応やデータセンタの高速大容量化・省エネ化の推進が求められる中、当社のコア技術であるフォトニクス技術及び高周波技術を生かし、光電融合を実現するフォトニクス製品を開発することによって、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現に貢献してまいります。また、さらに、スタートアップ企業との共創基盤を活用し、人工衛星搭載用途や環境観測機器用途の各種製品の開発をすすめてまいります。
※1 グリーンLPガス…バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミ等を発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素)を原料に生成したLPガスのこと。
※2 核融合…強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO2)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。
③ESG経営の基盤強化
25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しており、それらの達成を図ることで、ESG経営の基盤を強化しております。持続可能な企業へ変革する上で必須となっている「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」に対しては、低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画を策定し、それに基づいたカーボンニュートラル実現への取組みを加速しております。また、人的資本の強化を図るため、パーパス浸透活動のほか、人材に対するグループ・グローバル共通の考え方である「古河電工グループPeople Vision」に基づき、「人材・組織実行力」の強化に取り組んでおります。具体的には、従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、これをモニタリングツールとして、人材マネジメントに関わる取組みを強化しております。「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」は、当社グループ全体のリスクマネジメントのみならず、サプライチェーンを含む人権マネジメントに関わる取組みを強化しています。具体的には、従業員と取引先を優先して対応すべきステークホルダーとし、人権デューディリジェンスを実施しています。取引先については、古河電工グループCSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査(SAQ)について、当社から国内外グループ会社の主要な取引先へ段階的に拡大しサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。
<ビジョン2030達成に向けた具体的な取組み>
前述のように、25中計では、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出に取り組んでおります。ビジョン2030の達成や更なる成長に向けては、新領域における目指す時間軸とありたい姿をより明確にし、さまざまな社会課題解決に取り組んでまいります。

(3) 目標とする経営指標
25中計において、資本効率を意識した事業の強化と創出を行うため、ROICやROE等を経営指標として重視し、最終年度である2026年3月期の到達目標水準は、ROIC(税引後)6%以上、ROE11%以上、連結売上高1.1兆円以上、連結営業利益580億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上としております。また、25中計では、これらの財務目標に加え、各マテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(温室効果ガス排出量削減率、従業員エンゲージメントスコア、管理職に対する人権リスクに関する教育実施率等)及びそれらの目標を設定しております。
ビジョン2030の実現に向けて、本中期経営計画を着実に推進してまいります。
2025年度の財務目標値
2025年度のサステナビリティ目標値
(*1) 2022年度に設定したテーマに関して全件実施を意味する100%を目標としたが、2024年度において既に達成済み。
(*2) 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社に拡大し、単体目標からグループ目標に変更。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
当社グループは、2024年3月、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが誇りを持って働き挑戦し続けるために当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)を制定し、これまでの理念体系を見直しました。制定に向けては、若手従業員を中心に「パーパス制定プロジェクトチーム」を立ち上げ、海外グループ会社(米国、欧州、南米、中国、東南アジア)も含めた合計30回、100人以上の従業員との対話を行い、また取締役会でも複数回の議論を重ねました。そして現在、従業員一人ひとりにパーパスの内容や意義を理解してもらい、共感を醸成するための浸透活動に取り組んでいます。この活動を通じて、従業員エンゲージメントや組織実行力を高めるとともに、パーパスを軸に定めた2030年におけるありたい姿「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)の達成に向けた取組みを実行し、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。
パーパスの本文については、「
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する議論を集約し、実行の質・スピードをさらに高めることを目的として、「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、副委員長を戦略本部長、委員を経営層で構成され、サステナビリティに関する基本方針、収益機会・リスクのマテリアリティに関する基本的事項、サステナビリティに関する基本的な情報開示等の当社グループのサステナビリティに関する課題についての審議及び当該事項に関する進捗状況の確認をし、取締役会に提案・報告を行っています。幹事はサステナビリティ推進室が担当し、原則、年に2回開催します。リスクのマテリアリティに関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、リスクマネジメント委員会と連携して対処しています。
また、取締役会には、気候変動や人的資本、知的財産を含めたサステナビリティに関する業務の執行状況を四半期ごとに報告・共有しています。なお、サステナビリティ委員会や経営会議の議題は、取締役会の実効性評価の実施結果や株主・機関投資家からのフィードバック等も踏まえて、設定しています。

<当社グループのサステナビリティに関する主な議論>
※ 上記はサステナビリティ活動全体に関する主な議題を掲載しています。
「(2)気候変動」「(3)人的資本(人材の多様性を含む。)」「(4)知的財産」に関する主な議題は各ページを参照ください。
<ESG連動報酬>
当社では、社外取締役及び監査役以外の役員等への報酬については、ESGへの取組み結果をより直接的に反映すること等を目的に役員報酬制度を一部改定し、2023年7月から運用を開始しています。改定後の報酬項目は、基本報酬、短期業績連動報酬(個別)、短期業績連動報酬(全社)、ESG連動報酬及び中長期業績連動報酬で構成され、ESG連動報酬は、当社グループが対処すべき経営上の重要課題(マテリアリティ)におけるサステナビリティ目標の達成状況を評価項目としています。報酬総額に占めるESG連動報酬の割合は、報酬項目毎に定めた標準報酬水準の合計額を100%とした場合、役位毎に2~3%で設定されています。
2024年度は、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」に関する2023年度目標(2017年度比21.2%削減)の達成有無を評価項目としました。なお、ESG連動報酬として採用する評価指標については、指名・報酬委員会で定期的に確認・見直しを実施しており、2025年度からは「従業員エンゲージメントスコア」を評価項目に追加します。
詳細については、「
② 戦略
<古河電工グループのESG経営とマテリアリティ>
※ 当社グループのESG経営において、「マテリアリティ」は、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題と定義しており、財務・会計上における重要課題(業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある項目)とは、異なる意味で使用しています。
<マテリアリティの特定>
収益機会の観点から、当社グループが事業活動を通じて様々な社会課題を解決していくためには、プロダクト・アウト重視の姿勢から脱し、マーケット・イン、更にアウトサイド・インのアプローチへの転換が必要不可欠と考え、「社会課題解決型事業の創出」をマテリアリティとして特定しました。その具体例として、ビジョン2030で描く社会の基盤となる「次世代インフラを支える事業の創出」、カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーの実現に貢献する「環境配慮事業の創出」をサブ・マテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業を目指すという思いと知的資産の活用等を通じた絶え間ないイノベーションの創出を表した「Open, Agile, Innovative」と、外部との共創に注力する「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」を社会課題解決型事業の創出に向けた経営上の重要課題として、マテリアリティに特定しています。
一方、リスクの観点からは、企業が持続的な成長をしていく上で「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」は必須であるため、環境(E)のマテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業になるための「人材・組織実行力の強化」を社会(S)のマテリアリティ、コーポレートガバナンス、グループガバナンス、サプライチェーンマネジメント及び人権・労働慣行をサブ・マテリアリティとする「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」をガバナンスのマテリアリティとしています。

<マテリアリティの特定プロセス>
マテリアリティの特定及び見直しは、Step1~Step3 のプロセスで行います。まず、Step1では「外部要因」と「内部要因」を参考に社会課題を洗い出し、重複項目を整理した上で項目リストを作成します(現在、29項目に整理されています)。Step2では「株主・投資家にとっての重要度」と「ビジョン2030達成にとっての重要度」の2軸に対して重要度評価(高・中・低)をし、優先順位付けを行います。Step3で、優先度の高い項目をマテリアリティ項目として特定します。特定したマテリアリティ項目は、ビジョン2030達成に向けた重要課題として収益機会及びリスク側面で類型化・再整理し、収益機会のマテリアリティ及びE・S・G各々のリスクのマテリアリティとして表現します。


<2030年に向けた価値創造プロセス>
当社グループは「古河電工グループ パーパス」、「Core Values」及び「古河電工グループCSR行動規範」に基づき、企業活動を展開しています。2030年のありたい姿を描いた「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)から遡るバックキャスティングで中間地点として定義した2025年の姿に向かって、フォワード・ルッキングの考え方で策定した「中期経営計画2022-2025」(以下、25中計)を実行しています。25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定・管理するサステナビリティ指標と目標を設定しています。
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率を意識した事業の強化と創出、資本コスト低減に向けた経営基盤の強化を行っています。
詳細は「

※1 4つのコア技術:メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波
※2 知的資産の活用強化を含む。
※3 B5G:Beyond5G
③ リスク管理
<サステナビリティ関連機会及びリスクの管理>
当社グループは、25中計において、各々のマテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(KPI)と2025年度サステナビリティ目標を設定しております。
収益機会・リスクのマテリアリティの対応状況やサステナビリティ指標の進捗状況は、サステナビリティ委員会と取締役会に半期ごとに報告・共有されています。また、サステナビリティ推進室長は、マテリアリティやサステナビリティ指標の進捗状況、サステナビリティ指標や目標の妥当性等について各担当部門と定期的(原則、年に2回)に対話をし、目標に達しない見込みの指標を担当している部門に対しては、対応策や改善策の作成と実行を促しています。
収益機会のマテリアリティ:
「社会解決型事業の創出」を収益機会のマテリアリティとして取り組んでいます。「社会課題解決型事業の創出」の全般については「
また、「Open, Agile, Innovative」及び「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「新事業研究開発費増加率」と「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を設定し、新事業創出に向けた基盤整備を推進しています。「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」の詳細については、「(4)知的財産」を参照してください。
リスク(ガバナンス)のマテリアリティ:
「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、事業等のリスク項目を含む「全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率」を設定し、統制活動による改善を推進しています。さらに、特に強化すべきリスク管理としてガバナンスのサブ・マテリアリティに掲げている「サプライチェーンマネジメント」と「人権マネジメント」は、それぞれに対応したサステナビリティ指標を「主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ(※)実施率」及び「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」と設定し、進捗状況や対応策をフォローしています。
「サプライチェーンマネジメント」に関しては、2021年度から当社の主要取引先を対象にCSR調達ガイドラインに基づくSAQを開始し、2022年度以降、国内外グループ会社の取引先へ対象範囲を拡大させています。当社が高リスクと設定した調査項目に該当する取引先に対しては、ヒアリング等の対話を通じて状況を再確認し、必要に応じて是正していただくように働きかけを行っています。
「人権マネジメント」に関しては、2021年度に当社グループの人権課題として優先すべき対象ステークホルダーを「従業員」と「取引先」とし、人権デューディリジェンスを実施しています。2024年度は、より正確に人権リスクを把握するため、深刻度と発生可能性の評価区分細分化により、各々の対象について人権リスクの再評価を行いました。その結果、従業員に対しては、これまでの職場でのハラスメントに加えて、強制労働・児童労働、労働安全衛生を改めて優先すべき人権課題として再認識しました。取引先に対しては、強制労働・児童労働、労働安全衛生を再認識しました。
従業員のハラスメントについては、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。また、改善策の一つとして、2022年度から当社及び国内外グループ会社を対象とした「差別・ハラスメント防止教育」を実施しており、サステナビリティ指標として「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」を設定しています。強制労働・児童労働については、グループ全体で法令違反のないことを確認するとともに、引き続き発生防止に努めています。労働安全衛生については、ゼロ災の達成をはじめ各職場で様々な目標を掲げ防止・低減に取り組んでいます。なお、これらの人権課題の特定に当たっては、専門弁護士や従業員を代表する労働組合と対話を行っており、特に労働組合とは、負の影響の防止・低減に向けて継続的にコミュニケーションを図っています。
取引先については、特に責任ある鉱物調達の観点から、対象鉱物として取扱量が多い「銅」も含めた調査を行い、このたび課題と再認識した強制労働・児童労働や労働安全衛生も含めた負の影響を低減する取組みを進めています。また、CSR調達ガイドラインに基づくSAQの実施によりサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。現時点では、本調査の結果で人権に負の影響を与える重大な問題は発見されていません。
従業員の人権マネジメントの詳細については、「(3)人的資本(人材の多様性を含む。)」を参照ください。
※ SAQ(Self-Assessment Questionnaire) : 自己評価調査。
リスク(環境)のマテリアリティ:
「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」の詳細については、「(2)気候変動」を参照してください。
リスク(社会)のマテリアリティ:
「人材・組織実行力の強化」の詳細については、「(3)人的資本(多様性を含む。)」を参照してください。
<全社リスクマネジメントへの統合>
当社グループ全体のリスク管理は、委員長を社長、副委員長をリスクマネジメント本部長、委員を経営層で構成した「リスクマネジメント委員会」を設置し、当社グループのリスク管理、内部統制、コンプライアンスについての課題を審議し、監督・推進する体制をとっています。リスクのマテリアリティを含むリスク項目を担当する各部門は年間取組み計画と活動実績をリスクマネジメント委員会へ半期ごとに報告しています。リスクマネジメント委員会はその取組み内容について、リスク統制が適切に行われているか評価し、必要に応じて指導を行っています。
詳細については、「
④ 指標と目標
<サステナビリティ指標と目標>
当社グループでは、ビジョン2030を達成するための経営上の重要課題であるマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現するための施策を実行するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しております。2024年度のサステナビリティ指標は、従業員エンゲージメントスコア及び管理職層に占める女性比率を除き、2024年度目標を達成あるいは達成の見込みです。
事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率は、2022年目標策定時に設定したテーマに関し2025年度に100%(全件実施)達成を目標としていましたが、2024年度に全件実施となりこの目標を達成したため、2025年度は具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
従業員エンゲージメントスコアについては2023年度からグループ全体で把握ができるようになったため、単体のみで設定していた2024年度以降の目標を単体からグループへ拡大しました。2025年度の目標はグループで80と設定し、2024年度は77を目標としましたが、結果は72と未達成でした。未達成の要因は、回答者構成比の変動により回答に占める日本(単体及び関係会社)の割合が高まったこと、海外関係会社のビジネス環境変化等によるものと推察されます。パーパス共感醸成の取組みや管理職のマネジメントの見直し推進、各部門内での対話促進等により改善を図っていきます。
管理職層に占める女性比率については、2024年度の目標6%に対し実績は5.4%でした。事業戦略に基づき技術系人材中心の採用活動を行った影響により、全体的な女性採用数の伸びが鈍化し、前年と同水準に留まりました。今後は採用から育成・登用までパイプラインを充実させるとともに、女性管理職層とその候補層に対して個別フォローを実施し、管理職層に占める女性比率の向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2024年度に前倒して目標達成。2025年度は具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
※3 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりますが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
※4 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社へ拡大し、単体目標からグループ目標に変更しました。
※5 新規採用者は新卒採用者及びキャリア採用者を示し、その対象は管理職層、総合職、一般職です。
※6 各年度30%程度維持することを意味します。
※7 各年度100%を継続することを意味します。
(2)気候変動
① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「気候変動に関するビジネス活動の展開」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、サステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会及びその特別委員会である古河電工グループ環境委員会(以下、環境委員会)や中央防災・BCM推進委員会が連携して対処しています。
気候変動や自然災害等の気候関連リスクは、環境リスクの最重要課題として位置づけ、気候関連リスクへの事前対策については主に環境委員会、リスク発生後の事業継続対策については主に中央防災・BCM推進委員会で定期的に議論されています。
環境委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業経営を担当する統括部門長や事業部門長、本部長等の経営層によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、気候変動に関連する課題等を審議し、経営会議や取締役会に提案・報告します。
中央防災・BCM推進委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業部門長や事業所長等の委員によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、事業継続マネジメント(BCM)の構築、自然災害等を含む事業継続リスクの特定をし、その特定プロセスを推進・管理しています。
また、気候変動に関する業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。

<当社グループの気候変動に関する主な議論>
② 戦略
<気候関連リスク及び機会の分析対象事業>
当社グループは、TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス」を示すために、2019年度から気候関連リスク(移行リスク、物理リスク)及び機会を特定し、中期経営計画をベースラインとして、2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ分析を実施しています。2019年度は環境省が実施する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参加し、インフラ事業(情報通信ソリューション事業の光ファイバ・ケーブルとエネルギーインフラ事業の電力ケーブル)からシナリオ分析を開始しました。以降、2020年度は自動車部品事業、2021年度はAT・機能樹脂事業と銅条・高機能材事業、2022年度はファイバ・ケーブル事業と電力事業、2023年度は、銅箔事業と電池事業、ファイテル製品事業のシナリオ分析を完了し、現在は産業電線・機器事業のシナリオ分析を行う等、引き続き事業分野別に段階的に対象事業の拡大を進めています。
<気候関連リスク及び機会の項目の特定プロセス>
気候関連リスクと機会の特定は、Step1~Step3のプロセスで行います。まず、Step1では「外部情報」と「内部情報」を参考に、当社グループのみならずサプライチェーンの上流及び下流も含めて気候関連リスクと機会の項目リストを作成します。Step2では洗い出した項目に対して、「当社グループに与える影響度」を点数化し優先順位を付けます。Step3で、優先度の高い項目を気候関連リスク・機会の項目として特定します。特定した気候関連リスク・機会の項目は1.5℃シナリオや4℃シナリオにおける影響パラメーターを用いて、2030年度における事業への影響度評価を行います。
<シナリオ群の選択>
TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ」を検討するに当たり、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、2021年度までは「2℃以下シナリオ」と「4℃シナリオ」の検討を進めてきました。2022年度からは、2050年カーボンニュートラルへの取組みを加速するため、環境目標2030を改定し、SBT1.5℃認定にも申請したことに伴い、選択するシナリオを「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」に見直しました。
<気候関連リスク及び機会の期間の定義>
<シナリオ分析の概要>
<当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取組みと気候移行計画の策定>
気候関連の機会及びリスクを特定し、収益機会の獲得とリスクの低減の両面からカーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。2021年10月にTCFDより公表された「指標、目標、移行計画に関するガイダンス」を踏まえ、2023年度から低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画の策定を開始しました。
リスクの対応策については、2024年11月に環境ビジョン2050を改定し、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを目指すことを目標に掲げています。また、2050年に向けたマイルストンである環境目標2030において温室効果ガス排出量(スコープ1、2及びスコープ3)削減の目標を設定し、そのうち温室効果ガス排出量(スコープ1、2)は、25中計のリスクのマテリアリティ「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」のサステナビリティ指標として2025年度目標を設定しています。

環境ビジョン2050と環境目標2030の達成に向けた気候移行計画策定の一環として、当社グループの事業活動における温室効果ガス排出量削減にむけたロードマップを策定し、取組みを推進しています。スコープ1、2の目標達成のためには、工場の省エネや燃料転換を進めるとともに、再生可能エネルギーの積極的な利活用が不可欠であり、サステナビリティ指標として「全電力使用量に占める再生可能エネルギー比率」を設定し、再生可能エネルギーの利用比率向上に向けた取組み(水力発電の活用、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来電力の導入)を進めています。
また、バリューチェーン全体での排出量削減に向け、バリューチェーン排出量(スコープ3)の算定及び把握に努めています。バリューチェーン排出量(スコープ3)算定に当たっては、環境省及び経済産業省が発行する「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン (ver.2.6)」に則り、排出原単位は「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)」及び「AIST-IDEAv3.3(日本語版)」を参照しています。当社グループのバリューチェーン排出量(スコープ3)のうち割合の高いカテゴリーは、カテゴリー1「購入した製品・サービス」及びカテゴリー11「販売した製品の使用」です。このうち、カテゴリー1については素材(銅・アルミ・樹脂)のリサイクル材活用を推進するとともに、サプライヤーに対し温室効果ガス排出量の算定及び削減の働きかけを行い、CSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査票(SAQ)と併せて実施するアンケートにより購入製品に係る排出量データの把握に努めています。
サプライチェーンマネジメントの詳細については、「(1)サステナビリティ共通」を参照してください。
収益機会の対応策については、25中計期間において既存事業の収益安定化と新事業創出に向けた基盤整備を進め、2030年にはそれぞれの分野における社会課題を解決するとともに、カーボンニュートラル実現に貢献していきます。例えば、情報通信の高度化や生成AIの普及拡大によりエネルギーマネジメントの高度化や温室効果ガス排出量の削減が促進されていくことが期待されていますが、同時にデータセンタの増加による電力消費量の増加が懸念されています。当社グループにおいてはデータセンタ市場の拡大を収益機会と捉え、光ファイバ・ケーブル及び光デバイス等の供給を通して高度情報通信の実現に寄与するとともに、データセンタの電力消費の要因となるCPUやGPU等の高発熱化に対し、熱伝導性の高い半導体製造用テープであるAT製品や高性能ヒートシンク及びヒートパイプ等のサーマル製品の供給を通してデータセンタの低消費電力化に貢献します。また、情報通信領域における更なる大容量・低遅延・低消費電力化の要請に備え、光電融合技術の研究開発に取り組んでいます。
モビリティ領域の電動車市場に対しては、軽量化に寄与するアルミワイヤハーネスに加え、高圧関連製品(高圧ワイヤハーネスや高圧ジャンクションボックス等)の供給を拡大し、低炭素なモビリティの普及拡大に貢献します。また、情報通信領域やモビリティ領域における電力消費量の増加により、エネルギー領域においては再生可能エネルギーの普及拡大による電力分野の低炭素化と基幹系送電網増強の必要性が高まっています。第7次エネルギー基本計画等の国内のエネルギー政策の動向を注視し、洋上風力を中心とする再生可能エネルギーの拡大や次世代電力ネットワークの構築を電力ケーブルの供給により支えてまいります。併せて、核融合発電の実現に向けた高温超電導線材の開発や、グリーンLPガスの量産技術の確立等、研究開発及び新事業創出を推進しています。
③ リスク管理
<気候関連リスク及び機会の管理>
リスク及び収益機会のマテリアリティである「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」及び「環境配慮事業の創出」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」、「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」及び「環境調和製品売上高比率」を設定し、半期ごとにサステナビリティ委員会にて、これらの指標の進捗状況と対応策をフォローしています。
2020年度から事業部門ごとに環境目標2030に沿ったGHG排出量の目標を、2022年度からは事業部門ごとのGHG排出量売上高原単位の目標も定め、四半期ごとに経営会議で「GHG排出量」と「GHG排出量売上高原単位」の進捗状況をフォローしています。
インターナルカーボンプライシング(Shadow price)は、2019年度から事業部門ごとのGHG排出量を炭素価格(2024年度は2万円/トンCO2eを適用)によって試算し、四半期ごとの環境委員会での評価・掲示効果により、脱炭素化に向けた気候変動リスク回避への準備を促しています。また、2023年度より、各事業部門がGHG排出量目標に対して未達成となった場合、再生可能エネルギー調達コスト増加分を各事業部門で負担するルールを定め、目標に達しない見込みの事業部門に対して再生可能エネルギーの導入計画の策定を促進しています。
<全社経営戦略(25中計)・全社リスクマネジメントへの統合>
当社は、事業ポートフォリオ最適化のプロセスや事業別FVAの資本コストの算出において、財務要素に加えてESG要素である「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位(炭素効率性)」を活用しています。
詳細については、「
当社グループ全体のリスク管理において、「気候変動(カーボンニュートラル)」は経営視点でのリスク項目として掲げております。
詳細については、「
④ 指標と目標
<古河電工グループ環境ビジョン2050>(2024年11月改定)
環境ビジョン2050では、環境に配慮した製品・サービスの提供及び循環型生産活動を通じ、バリューチェーン全体で持続可能な社会の実現に貢献することを掲げています。脱炭素社会への貢献としては、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを目指しています。
<環境目標2030>(2022年11月改定)
環境ビジョン2050の実現に向け、マイルストンとなる環境目標2030を設定しています。脱炭素社会への貢献として、以下の2030年目標を掲げています。
(1)事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2) :2021年度比42%以上削減
(2)バリューチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3):2021年度比25%以上削減
スコープ1:自社工場・オフィスからの直接排出
スコープ2:自社が購入した電力、熱等の使用による間接排出
スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
<実績と目標> ★はサステナビリティ指標
2024年度は、2022年度から積極的に進めている再生可能エネルギーの導入をさらに進めました。AT製品を製造する三重第1工場では2023年4月より使用電力の100%を再生可能エネルギー由来電力に切り替えましたが、それに加えて2024年5月に開設した三重第2工場では建屋の屋根に太陽光発電設備をオンサイトPPA方式で設置しました。使用電力の一部を太陽光発電電力でまかなうことによりAT製品製造時の温室効果ガスの排出低減に寄与する見込みです。その他の当社事業所及び国内外の生産拠点においても太陽光発電設備の設置や購入電力の再生可能エネルギーへの転換を進め、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」及び「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」の2024年度目標は達成の見込みです。
※1 当社グループが排出する温室効果ガスは、主にエネルギー起源による二酸化炭素(CO2)と六フッ化硫黄(SF6)です。
※2 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりましたが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)
<人と組織に関する基本的な考え方(古河電工グループPeople Vision)>
当社グループは、2024年3月、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが誇りを持って働き挑戦し続けるために当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を制定し、これまでの理念体系を見直しました。このパーパスの実現に向けた人と組織のありたい姿として「古河電工グループPeople Vision」を位置づけ、多様な人材一人ひとりの成長が当社グループの成功の原動力であり、チームで成果を生み出すことを通じて個人と組織がともに成長する事を目指しています。
パーパスの本文については、「

① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「人材・組織実行力の強化」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクのみならず、経営戦略に直結する最も重要な経営上の重要課題であることから、戦略本部長をトップとした人事戦略の遂行体制を確立し、経営会議での執行と討議、決議を行っています。
また、経営課題に直結する個別のテーマについては、社長あるいは戦略本部長を委員長とした委員会を設置し、戦略の策定と活動計画の決定、施策の実行を推進しています。高度な専門性を持つ人材を認定する「プロフェッショナル任用委員会」、働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンを促進する「HK(※)・D&I委員会」、労働安全衛生に関する「古河電工グループ安全衛生委員会」を設置しています。こうした業務の執行状況については、取締役会に定期的に報告・共有されています。
※ HK:働き方改革
<当社グループの主な人事課題に対するガバナンス体制>

<当社グループの人的資本に関する主な議論>
② 戦略
<25中計における人材マネジメント戦略>
経営戦略・事業戦略の実行にあたり、対話を通じた成長ベクトルのすり合わせを行うことで、個人と組織がともに成長し実行力を向上させ、社会課題を解決しビジョン2030を達成します。(図1)
(図1)古河電工グループの人材マネジメント戦略

経営戦略・事業戦略を実行する上で必要な人材を集めて 組織を形成し、その人材の成長を組織が支援して活躍してもらうことで、やりがいを感じながら活躍し続けられる組織風土を醸成していくストーリーを描き、それらをWill・Can・Needsの3つの要素で捉えて具体的な活動に取り組んでいます(表1)。
日常の事業活動の中で3つの要素に関わる課題を抽出し、戦略に応じた形で改善に取り組むことで、事業戦略の実現と持続的な業績向上へ貢献し、ビジョン2030を達成します。
(表1)Will・Can・Needsの3要素について
<具体的な活動>
1)Needsを共有
a)サクセッションプランと育成計画の立案
経営人材及び各組織の部長候補の育成を目的として、サクセッションプランと育成計画を策定し、実行しています。経営人材については、外部アセスメントを活用した人材プールの形成や外部研修への派遣を進めるとともに、育成計画に基づくタフアサインメントを含む計画的な異動を進めています。また、社外取締役が過半を占める指名・報酬委員会において、経営人材育成の仕組みの適正性及び運用状態をモニタリングするとともに、執行役員の登用やCEOサクセッションプランに関して複数年かけて計画的に取り組んでいます。部長層のサクセッションプランについては2023年度に全組織にて策定したプランと育成計画に基づき継続して実行に取り組んでいます。また、課長層については、各組織と人事部門との議論を通じ、部長候補へのパイプラインを意識したサクセッションプランを策定しました。2025年度はそのプランに基づいて育成計画を策定し、実行していきます。
b)採用力の向上
経営戦略、事業戦略の実行に向けた多様な人材を確保する体制構築に取り組んでいます。2024年度は採用活動の業務効率化に取組み、特にキャリア採用において、各組織からの採用要請に効率的に応える採用オペレーションの確立や採用リードタイムを短縮(前年比△47%)しました。その他の取組みについては以下のとおりです。
・キャリア採用・・・リファラル採用の導入、入社後の定着フォロー体制の強化
・新卒採用・・・・・コース別採用(※)の導入、採用媒体の刷新(会社案内や新卒採用WEBサイト)
※ 初任配属時の職種を「事業推進」「組織管理」「ポテンシャル」にグルーピングしコース化
c)目標管理制度の運用見直しとフォロー
2021年の人事制度改定では、「チャレンジの促進」「シンプル&オープン」「人材育成」をコンセプトとし、目標管理制度の運用見直しを行いました。個々人の目標達成を上位方針の達成、業績向上につなげることを目指し、部や課の方針と個々人の目標管理の連動を強化しています。具体的には、組織目標設定時のメンバーの参画、資格毎の役割期待を踏まえた「重要度」や「資格相当度」の設定、部門内での目標ランクの基準を合わせる調整会議の実施等を行っています。2024年度に実施した期首目標面談に関するアンケート調査では、90%以上の従業員が組織方針について「十分理解できた」あるいは「概ね理解できた」と肯定的に捉えています。
d)「人権・労働慣行」及び労務分野のリスクの対応
「人権・労働慣行」のリスクに対しては、人権尊重に対する企業の責任を果たすため、古河電工グループ人権方針に基づいた人権を尊重した事業活動の推進、人権デューディリジェンスを実施しています。また、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。さらに、従業員を代表する労働組合とも意識を共有し、負の影響の防止・低減に向けた対話も行っています。
労務分野におけるリスク低減に向けては、グローバルでは当社グループが進出している各国の法令に基づいた労務コンプライアンスの遵守状況確認のためのチェックリストを作成し、グループ全体での労務リスクを定期的に確認しています。さらに、国内ではグループ会社の人事担当責任者が集い、当社グループにおける人事・労務に関する取組みの方針や課題を共有する場を年2回開催し、連携強化に努めています。
2)Canを増やす
a)リスキリング
当社グループでは、事業戦略を実現するために組織と個人の双方の成長に必要な能力・スキルと現状とのギャップを可視化し、能力・スキル獲得に向けた仕組みづくりについて、経営層や各組織と議論しました。その結果、当社グループのリスキリングの定義を「新規・既存問わず、業務遂行において必要な知識・スキルを自律的に学ぶこと」としました。
具体的には、個人のスキル習得・成長のプロセス(図2)を支援するために、「一部の個人が、決まったタイミングと回数と場所で、全員で一律のスキルを学ぶ環境」から、「個人が、いつでも、どこでも、何度でも、多種多様なスキルを学ぶことができる環境」へ変更し、その機会提供を可能にする新たなEラーニングシステムを2024年度に導入しました。これにより、個人が自由に多種多様なスキルを学べる環境が提供され、さらに一部の研修を置き換えることで個人のタイミングでいつでも受講や予習復習をすることが可能になりました。また、従来の研修カリキュラムの事前・事後学習にEラーニングを活用し、学びを最大化する連携にも取り組んでいます。さらに、職場や組織の垣根を超えた学び合いの機会を創出する等の場を提供しています。今後もさらに個人の自律的な学びや成長の支援に取り組んでいく予定です。
(図2)個人のスキル習得・成長のプロセス

b)グローバル人材育成体系
「グローバルビジネスリーダー(GBL)研修」を2006年度から開始し、2013年度からは、グローバル人材の育成の観点を強化した「グローバル・マインドセット・プログラム(GMP)」に衣替えして継続実施しています。また、海外の現地従業員を対象に「グローバル・デベロップメント・プログラム(GDP)」を2010年度から実施しており、グループの結びつきの強化を狙って、一部のカリキュラムをGMPと合同で実施しています。さらに、2014年度からは一定期間にわたり若手従業員を海外に派遣する「グローバル・チャレンジ・プログラム(GCP)」を開始し、多様な人材の確保と成長の場を提供しています。
c)キャリア自律支援
ⅰ)キャリアサポート室
2021年度にキャリアサポート室を立ち上げ、年代・階層別のキャリアデザイン研修やキャリア形成に役立つセミナーの開催、個別のキャリア面談実施等、既存の人事制度と連携しながら従業員の自律的キャリア形成を支援する取組みを行っています。
ⅱ)個人がキャリアを選択する仕組み
2021年度より社内副業制度(Fキャリアチャレンジ)を運用開始しており、業務の20%を上限に、自ら手をあげて、興味あるプロジェクトに参加することで、自身の成長・やりがい・キャリア形成に結び付けてもらう仕組みとしています。制度はじまって以来72プロジェクト、170名が参加(2024年度は24プロジェクト、58名が参加、増加傾向)しており、受け入れ部門によい刺激を与え、本人のモチベーションが向上し、送り出し部門にも良い影響を与えています。2024年度は、より従業員の自律的なキャリア実現を加速させるため、従業員が自ら手をあげ異動が可能な社内公募制度を本導入しました。社内求人数82件に対し応募者数34名、マッチング数13名となり、2023年度の試行導入時(社内求人数57件、応募者数34名、マッチング数10名)を上回る結果となりました。いずれの制度においても、認知度の向上に伴い、キャリア自律支援が個人と組織に良い影響を与えており、今後も継続して取り組んでいきます。
3) Willを高める
a)理念浸透
当社グループでは、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが当社グループで誇りを持って働くことにつながる当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を2024年3月に制定し、これまでの理念体系を見直しました。
パーパスの浸透には、認知・理解・共感・行動の4つのステップがあると捉え、2024年度はまず認知拡大を、そして理解・共感の醸成を目的とした施策を開始しました。認知拡大については、トップメッセージ発信、グループ報特集号発行、動画発信、ポスター掲示、クレドカード配布のほか、パーパスをテーマにしたTVCM放映等を行いました。また、理解・共感の醸成に関しては、当社グループ全体のパーパスと、それぞれの組織や従業員自身とのつながりを考えてもらう機会をつくりました。具体的には、組織については、当社グループの経営層を対象にワークショップを開催し、「古河電工グループパーパス」が各自の組織にとってはどのような意味を持っているのかをグループ討論し、各組織のパーパスを作成しました。その上で、そこに込めた思いも含めて、自部門に自分の言葉で伝えてもらう取組みを行いました。また、個人については、トライアルとして、本部系組織の管理職を対象に、自分にとって重要な価値観(個人のパーパス)を探すゲーム等を通じて、楽しみながらパーパスについて考える「マイパーパスワークショップ」を実施しました。
当社グループの理念体系では、将来に向けて持続的に成長していく上で特に大事にし、より強化していきたい価値観を「Core Values」として定めており、その浸透に向けたワークショップを定期的に開催するとともに、日常的な会議の場での振り返り等を行い、浸透に向けた取組みを継続して実施しています。
従業員一人ひとりがやりがいや成長実感を得て自身の存在意義を感じ、組織のエンゲージメント向上や目標達成につなげるため、パーパスを「自分事化」し、「Core Values」に基づいて日々行動する状態を目指して、粘り強く取り組んでいきます。
b)エンゲージメント
従業員一人ひとりがパーパスに共感し、当社グループで成長・活躍し続けたいと思えるようなエンゲージメントの高い組織風土を醸成することで、事業戦略の遂行に必要な多くの人材が成長・活躍し、持続的な企業価値向上に貢献できると考えています。そのために、人材・組織の状態を可視化し、その結果を踏まえた改善施策を事業活動に反映する目的で、2022年度より人材・組織実行力調査「フルカワEサーベイ」を開始しました。この調査における「従業員エンゲージメント」のスコアを25中計におけるサステナビリティ指標として目標を設定し、各種施策を着実に実行しています。
エンゲージメント向上に向けては、単体各部門や一部の関係会社と人事部門で調査結果を踏まえて対話を行い、組織の悩み事や人材マネジメントにおける課題を特定しました。その改善活動においては人事部門が伴走支援を行いました。また、対話を通じて得られた各組織の取組みを「好事例」として社内ポータルサイトに掲載し広く情報共有しました。
また、サーベイ結果を分析したところ、エンゲージメントスコア向上に相関が高い「理念・方針の浸透度」「業務運営の効率性の向上」については改善傾向が見られました。また、単体各部門との対話から「上司部下のコミュニケーションが改善した」「組織運営体制の強化が必要」「管理職層の一層のマネジメントスキル向上が必要」等の定性情報が得られたことから、特に単体においては、次の改善活動に重点を置いて取り組んでいます。
・理念・方針の一層の浸透
部門長や上司がパーパス、事業戦略・目標についてしっかり伝え、従業員一人ひとりが自分事化し、やりがいと成長実感を持ちながら仕事に向き合えるように、各組織でコミュニケーションの強化・改善を行う。
・業務運営の効率性の向上
成果の創出や目標達成に向けて「業務プロセスや組織運営」を改善し、より生産性の高い組織に変化することを目指して、管理職層のマネジメントスキルの向上に取り組む。
c)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進
女性活躍推進については、特に意思決定層の多様性確保が重要と考え、管理職層の女性比率を25中計におけるサステナビリティ指標に設定しています。女性従業員の少なさを課題と捉え、採用から育成・登用までパイプラインを充実させる取組みを進めています。育成・登用については、各部門と人事部門が人材プールやポストの可能性について相互認識を深め、女性管理職候補者層の個別育成計画を策定・実行しています。当社の男女賃金差異については、資格・職群毎に見ると制度面では賃金差が生まれにくい仕組みを整えていますが、管理職層に比べて一般職層の女性比率が高いことが賃金差の主要因と捉えており、特に子育て世代の男女の働き方の違いによる影響が考えられます。そのため、パイプラインを充実させる取組みを継続するとともに、両立支援の観点で職場環境の整備、従業員への情報発信と啓蒙活動に取り組んでいきます。
障がい者雇用推進については、社会的責務を果たすことに加えて、D&Iの観点から共生社会の実現に向けて貢献するべく積極的な取組みを進めています。グループ各社及び特例子会社古河ニューリーフ㈱での雇用拡大と、バリアフリー化やリモートワーク導入等の職場環境や働き方の更なる改善を進め、より働きやすい環境を整備していきます。
d)リーダーシップ・チームマインド
「チームで成果を上げる」組織を目指し、2020年に「良いチームをつくる」リーダーとなるための大事な1つの心構えと6つの行動原則「古河電工流上司心得七則(フルカワセブン)」を定めました。役員及び課長以上の管理職が周囲に「行動宣言」し日々実践するとともに、360度フィードバックによる振り返りを実施し、更なる行動変容に繋げています。取組みを開始して5年が経過し、リーダーの意識・行動に良い変化が見られ、チームにおけるメンバーの関係性が改善してきました。今後は、チーム活動と成果との結びつきによりフォーカスし、チーム力の更なる強化に向けた取組みを加速していきます。
e)安全衛生と健康経営の推進
ⅰ)従業員の安全・衛生
主に労働災害、交通事故、疾病等による、従業員の死亡、就業不可、障がいの残存、長期休業、体調不良といったリスクを認識し、事業継続の大前提として「安全と健康を全てに優先する」との考えから様々な施策を展開しています。安全については災害ゼロに向けた3つのアプローチ(①安全人間化教育による安全知識の付与と実践、②本質安全化活動による設備の安全化推進、③安全管理レベルの向上による安全組織の構築)により安全推進活動を進めています。
ⅱ)健康経営の推進
健康経営を、従業員一人ひとりが身体的・精神的・社会的に良好な状態(well-being)を目指すことと定義し、従業員の活力やパフォーマンスが上がることが組織や企業の成長にもつながるとの考えのもと、全社一丸となって健康経営の諸施策を推進しています。当社グループでは、経営的な視点から、戦略的に従業員の健康管理・健康づくりに取り組む「健康経営」を推進していくため、2017年に「古河電工グループ健康経営宣言」を制定し、従業員が健康意識を高め、自らの健康づくりに積極的に取り組んでいくための支援を行っています。具体的には、健康経営戦略MAPを策定し、「ヘルスリテラシー」「メンタルヘルス」「生活習慣」「運動機能」「喫煙」を重要な5本柱を軸とした各施策を検討し、取組みを推進しています。
これらの活動が評価され、2017年から9年連続で「健康経営優良法人」に認定されています。
③ リスク管理
<人材・組織関連リスク及び機会の管理>
リスクのマテリアリティである「人材・組織実行力の強化」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクのみならず、収益拡大等の経営戦略にも直結する最も重要な経営課題です。そのため、2022年度より人材・組織実行力調査「フルカワEサーベイ」を実施して人材・組織の状態を可視化し、結果を踏まえた改善施策を事業活動に反映するというPDSサイクル(※)を回すことで、リスクの低減及び収益機会の獲得を推進しています。
また、エンゲージメントが低下した場合、従業員のモチベーション低下に伴う生産性や業績、サービスの質の低下、離職率の上昇や優秀な人材の確保困難といったリスクが増大します。一方で、エンゲージメントが向上すればその逆の影響が考えられます。そのため、「フルカワEサーベイ」における「従業員エンゲージメント」のスコアをサステナビリティ指標に設定し、「管理職層に占める女性比率」及び「新規採用者に占めるキャリア採用比率」も含めて、経営会議やサステナビリティ委員会で進捗状況をフォローし、対応策を討議しています。それらを定期的に取締役会に報告・共有しています。
このような定期的なリスクアセスメントを適切に実行し、その結果を踏まえてリスク認識を都度改めながら各施策の取組みに反映しています。現状のリスク認識については「人材・組織」「人権・労働慣行」は経営視点の重要リスクとして認識しています。さらに、「従業員の安全・衛生」はオペレーショナル視点の重要リスクと認識しています。そして、それらへの施策は前述「② 戦略 <具体的な活動>」の中に織り込み取り組んでいます。
現状のリスク認識の詳細については、「
※ PDSサイクル:Plan Do Seeサイクル
④ 指標と目標
<実績と目標>
1)従業員のエンゲージメントスコア
「フルカワEサーベイ」における「従業員エンゲージメント」のスコアを25中計におけるサステナビリティ指標とし、2025年度の到達目標はグループ全体で80と設定しています。2024年度の目標はグループ全体で77でしたが、回答者構成比の変動により回答に占める日本(単体及び関係会社)の割合が高まったこと、海外関係会社のビジネス環境の変化等により、結果は72(前年比94.7%)でした。一方で、日本(単体及び関係会社)は63(前年比100%)でしたが、サーベイ結果を分析したところ、エンゲージメントスコア向上に相関が高い「理念・方針の浸透度」「業務運営の効率性の向上」については改善傾向が見られました。また、単体各部門との対話から「上司部下のコミュニケーションが改善した」「組織運営体制の強化が必要」「管理職層の一層のマネジメントスキル向上が必要」等の定性情報を得られたことから、今後も継続してエンゲージメントスコア向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。なお、当初は単体のみで目標設定していましたが、グループ全体に調査対象を拡大し2024年度以降の目標をグループへ拡大しました。
エンゲージメントスコア向上に向けた具体的な活動については、「② 戦略 <具体的な活動>」を参照してください。
2)管理職層に占める女性比率
管理職層に占める女性比率について、2024年度の目標は6%に対して実績は5.4%でした。事業戦略に基づき技術系人材中心の採用活動を行った影響により、全体的な女性採用数の伸びが鈍化し、前年と同水準に留まりました。今後は採用から育成・登用までパイプラインを充実させるとともに、女性管理職層とその候補層に対して個別フォローを実施し、管理職層に占める女性比率の向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。
3)新規採用者に占めるキャリア採用比率(管理職層、総合職、一般職)
経営戦略、事業戦略の実行のための多様な人材の確保と成長事業の強化のため、「新規採用者に占めるキャリア採用比率」をサステナビリティ指標に設定し、各組織の採用要請とすり合わせを行いながら継続的に注力して取り組んでいます。2024年度実績は54.4%と目標30%を超える水準となっています。
<参考指標>
4)一人当たり教育研修費
5)離職率
6)その他実績
※1 国内グループは単体を含む。一部、関係会社で他社からの出向者の数字を含まない。
※2 「男性の取得率=当年度内に育休を開始した人数÷パートナーが出産した人数」、「女性の取得率=当年度内に育休を開始した人数÷出産者の人数」として提示。また、産前産後休暇取得者は育休取得者には含まない。
※3 「当年度育休取得者の平均取得日数」として提示。
(4)知的財産
当社グループでは、強みの源泉となる特許やノウハウ等の知的財産、さらに人的資産、組織力、顧客ネットワーク等を含む知的資産を重要な経営資源と位置付けています。その活用を図ることを目的に、以下の3つの基本方針を定め、事業・研究開発・知的財産を三位一体として、グループ・グローバルな知財活動を推進しています。
<古河電工グループの知財戦略>
3つの基本方針
(1) IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化:
知財情報を戦略策定プロセスに取り込んで解析・活用するIPランドスケープにより、経営・事業戦略策定力を強化します。
(2) オープン&クローズ戦略による知的資産活用:
オープン&クローズ戦略による知的資産活用を起点に、知的資産を創出・蓄積し、事業・コア技術を保護する活動サイクルを、IPランドスケープによる環境分析で変化を捉えながら回すことで、事業競争力を強化します。
(3) 知財リスク低減による事業遂行の安定化:
権利侵害リスク、技術流出リスク、契約リスク、技術模倣リスクの4つを、影響度及び頻度の高い知財リスクとして認識し、継続的なリスク低減に努め、事業遂行を安定化します。
① ガバナンス
当社グループは、研究開発本部長(CTO)を委員長とする「全社知財推進委員会」を設置し(原則、年に1回開催)、全社知的財産活動方針を決定しています。また、事業部門及び研究部門に置かれた知財総括責任者を中心に知財活動を推進しています。
社長を含む業務執行役員に対しては、研究開発本部長が主催する「知財戦略会議」(原則、年に2回以上開催)にて、全社の知財戦略に関わる提案・報告を実施しています。さらに、知的財産部長が主催する「知財統括者会議」(原則、年に1回開催)にて、全社の知財活動の推進を図っています。事業部門長に対しては、知的財産部長が主催する「知財戦略対話」(原則、年に2回開催)にて、各事業部門の知財戦略に関わる情報共有・共創を実施しています。
こうした業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。

<当社グループの知的財産に関する主な議論>
② 戦略
当社グループは、知財戦略で定めた3つの基本方針を踏まえ、「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向けて、チャンスマキシマム(事業機会拡大)とリスクミニマム(事業安定化)の2つの観点から、知財活動を推進しています。
<チャンスマキシマム(事業機会拡大):IPランドスケープ(※)>
当社グループは、「IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化」を知財戦略の第1に掲げています。自他社の知財情報等を用いて競争環境・市場環境を分析し、新しい事業分野・ビジネスモデルを探索しています。
既存市場・既存製品の領域(A領域)は、資本効率重視による既存事業の収益最大化を目指し、IPランドスケープで戦略の確からしさを判断します。一方、新規市場や新規製品に関わる領域(B・C・D領域)は、開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備を目指し、IPランドスケープで戦略の策定力を強化します。具体的には、技術の先読み、共創相手や新市場の探索等の調査を行います。

具体的なIPランドスケープの活用事例は下記のとおりです。「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向けて、持続的成長を実現する基盤を築くために、IPランドスケープで「強み」を可視化して既存市場での競争力を高めるとともに、新たな市場に展開する力も強化しています。
・既存事業の補強(A・B領域): 半導体製造用テープ
半導体製造用テープでは、より進化させた新規製品を既存市場に投入しています。発展著しい半導体市場に対して、IPランドスケープにより当社グループの強みの可視化や技術の先読みを行い、開発戦略の補強を行うことで事業強化に貢献しています。
・新事業の創出(C領域): インフラレーザ
インフラレーザは、当社グループの光通信技術で培った半導体レーザ技術を応用した新規製品で、新規市場に投入しています。新規市場への参入に当たっては、IPランドスケープにより自他社の知財状況を分析し、想定する事業領域における知的財産権の確保を進め、お客様へのアピール力を向上させ事業競争力を高める戦略策定を行いました。
※ IPランドスケープ:経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること(引用:特許庁「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」)
<リスクミニマム(事業安定化):知的財産ポートフォリオ>
当社グループ固有の差別化技術を知的財産権・技術ノウハウで保護し、事業リスクを最小化します。
社会課題解決型事業の強化による成長を実現するため、情報・エネルギー・モビリティ分野では、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築とその活用を徹底しています。これにより、25中計目標達成に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化を支えます。
当社の保有する知的財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)の約半数が、光ファイバ・ケーブル(ライテラジャパン株式会社)、電力ケーブルシステム(電力事業部門)、ワイヤハーネス(自動車部品事業部門)、半導体製造用テープ(AT・機能樹脂事業部門)に関係するポートフォリオになります。これらの事業でオープン&クローズ戦略による知的資産活用と、知財リスク低減により事業リスクを最小化します。
③ リスク管理
<知財リスクマネジメントシステム>
当社グループのCSR行動規範には、「知的財産権の保護」と「秘密情報の管理」が含まれます。
CSR行動規範に則り、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築(前述)とその活用を徹底し、技術情報流出防止等グローバルな知財リスク低減活動を推進しています。これを実現するため、①知財リスク評価、②知財リスクコミュニケーション、③知財リスク管理の3つのステップによる知財リスクマネジメントシステムを導入しています。
このうち知財リスク評価は、各事業部門の重点知財活動製品について、事業を妨害されないための知財網があるか、他社の権利を侵害していないか、技術ノウハウ漏洩対策ができているか、を確認します。この評価は、原則、年に1回見直します。また、リスク管理活動計画のひとつとしてリスクマネジメント委員会に報告しています。

なお知財リスクは下記の4つに分類し、継続的にリスク対応を喚起することで、事業リスクを最小化します。
④ 指標と目標
<チャンスマキシマム(事業機会拡大):IPランドスケープ>
知財情報を戦略策定プロセスに取り込み、経営・事業戦略策定力を強化することを目的として実施しているIPランドスケープを推進するため、収益機会のマテリアリティのサステナビリティ指標として、「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を2022年度に設定しました。設定時の目標は2025年度に100%(全件実施)としていましたが、2024年度にこの目標を前倒しで達成しました。
具体的には「25中計目標達成に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化」(光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム等)及び「2030年までに実現する新事業創出に向けた基盤整備」(グリーンLPガス等)に関するテーマ等、事業戦略の確認や事業化構想の立案、顧客アクセスの足掛かり等優先度が高いと判断されたテーマについて実施しました。なお、2025年度には、これらの結果を具体的な事業活動へ展開していきます。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2024年度に前倒し達成。具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
<リスクミニマム(事業安定化):知的財産ポートフォリオ>
※3 光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム、ワイヤハーネス、半導体製造用テープを含むファイバ・ケーブル事業部門、電力事業部門、自動車部品事業部門、AT・機能樹脂事業部門の合計
<参考指標>
当社グループの業績、財務状況等は、当社グループが製品販売・サービス提供をしている様々な市場における経済状況の影響を受けます。当社グループは、これらのリスクを認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めており、詳細は以下「(1)リスクマネジメントの取組み」及び「(2)当社グループの重要なリスク」に記載しております。
(1)リスクマネジメントの取組み
①リスク管理の体制と概要
当社グループは、「リスク管理・内部統制基本規程」を定め、委員長を社長、副委員長をリスクマネジメント本部長、委員を経営層で構成した「リスクマネジメント委員会」を設置し、当社グループのリスク管理、内部統制、コンプライアンスについての課題を審議し、各担当部門の活動を監督・推進する体制をとっています。幹事はリスク管理部長が担当し、原則、年に2回開催しています。
当社グループのリスクマネジメント委員会では、経営視点及びオペレーショナル視点のリスク評価等によりリスクを俯瞰し、全社的に対応すべき重要リスクを定めています。リスクのマテリアリティに関連する「気候変動」、「人材・組織」及び「人権・労働慣行」は、経営視点の重要リスクとして認識し、対応しています。また品質管理、安全衛生(健康を含む)、環境、防災・事業継続マネジメント(BCM)等の重要度が高いと認識されるリスクについては、リスクマネジメント委員会のもとに特別委員会を設置して重点的に管理する体制を敷いて、事業活動に関するリスク管理体制の強化を図っています。これらの体制に加え、取締役会、経営会議、稟議等により重要な意思決定を行う際には、当該事案から予測されるリスク等を資料等に明示し、これらを認識した上で判断することとしています。
②リスク管理活動の仕組み
当社グループはグループ全体の事業リスクの評価を通じて優先対応すべきリスクを見極めるために、年に1回、事業部門・事業所・関係会社といった組織単位で網羅的なリスクの洗い出し及び発生可能性と影響度の評価(リスクアセスメント)を実施し、その結果をリスクマネジメント委員会へ報告しています。また、リスク統制の継続的な拡大と深化を目的に、各担当部門による「事業等のリスク」を含む各リスク項目の統制活動を実施し、活動内容を評価します。それらの評価結果を総合したリスク統制活動全体の評価をリスクマネジメント委員会に毎年定期的に報告しています。

(2)当社グループの重要なリスク
当社グループの業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある重要なリスクには以下のようなものがあります。発生可能性と影響度の双方が中以上のものをリスク項目とし、主にどの視点でリスク認識したかにより、リスク項目は大きく「経営視点のリスク」と「オペレーショナル視点のリスク」に分類しております。各リスクに対する取組みを進めるにあたり、特に経営視点のリスクについてはそれぞれ単独のリスクではなく、相互に連関したリスクであると認識しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(注)当社は、自動車用部品カルテルに関し、ブラジル競争法当局の調査を受けております。また、米国での一連の自動車用部品カルテルによる損害の賠償を求める集団訴訟等において、当社や当社連結子会社がその被告となっております。このほか、自動車メーカー等の顧客に対して、当社又は当社関係会社が民事賠償金を支払う可能性があります。なお、これまで複数の原告・顧客等との間で和解が成立し、上記継続案件の当社決算への潜在的な金額的インパクトは大きくないものと認識しております。今後も、これまでと同様、顧問弁護士とも連携しながら、早期解決、損失の最小化に向けて対応してまいります。また、上記継続案件はいずれも自動車用部品カルテルを含む過去の競争法違反行為に関するものであり、現時点においてはこれらの行為は行われておりません。
当連結会計年度の期首より、会計方針の変更を行っており、前連結会計年度との比較分析に当たっては、遡及適用後の数値を用いております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
(業績等の概要)
(1)業績
当期の世界経済については、米国では、インフレの鈍化及び所得環境の改善、雇用者数の緩やかな増加があったものの、追加関税措置によるインフレ懸念を受け個人消費に減速感が生じる等、景気の先行きに不透明感が高まりました。欧州では、金融緩和やインフレの落ち着き、所得環境の改善があったものの、個人消費、設備投資の伸び悩みや輸出の減速により、景気の回復は限定的なものとなりました。中国では、政府による景気刺激策の効果が見られましたが、不動産市場停滞の長期化等の影響から個人消費は低迷し、景気は伸び悩みました。さらに、ロシア・ウクライナ情勢や中東での軍事衝突等不安定な経済環境が継続しました。
わが国の経済においては、高水準の企業収益を背景に、主としてIT関連の需要に基づく設備投資が底堅く推移したものの、賃金・所得の伸びが物価上昇を安定的に上回る状況には至らず個人消費は力強さに欠け、景気の回復ペースは緩やかなものとなりました。
このような環境の下、当社グループでは、2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けての時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)からバックキャストして2025年に目指す姿の達成を見据えて策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)に基づき、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進してまいりました。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでまいりました。
「資本効率重視による既存事業の収益最大化」については、事業ポートフォリオ最適化の取組みを進めることで、利益創出を図ってまいりました。主な取組みとして、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編のほか、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を決定いたしました。また、データセンタ・AI関連市場においては、機能製品関連事業等において製品供給体制を強化し売上拡大を図ってまいりました。特に放熱・冷却製品について、競合他社との差別化を図り、より高機能な製品を顧客に対して提供することによって収益基盤の拡大に取り組んでまいりました。
「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」については、日本国内において道路や鉄道等の社会インフラの老朽化と労働人口の減少が進行するなか、社会インフラ維持管理向けデジタルソリューションの提供により省人化・省力化に貢献してまいりました。また、環境負荷や労働衛生の観点から課題の多い薬品等を使用することなく錆・塗膜を除去できるレーザ施工システムの開発を進めてまいりました。加えて、ライフサイエンスを中心とするフォトニクス技術の非通信領域に関する事業の強化を図るため、医療・産業機器向け光ファイバ及び光関連部品を製造する会社を子会社化いたしました。
「ESG経営の基盤強化」については、脱炭素社会実現に向けた更なる貢献のためバリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量ネットゼロを目指すべく「古河電工グループ環境ビジョン2050」を改定いたしました。また、当社グループの存在意義を表す古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」(以下、「パーパス」という。2024年3月制定)について、従業員の理解促進及び共感の醸成を目的とした活動を実施してまいりました。これにより、従業員が当社グループで働くことへの誇りをもつことにつなげて従業員エンゲージメントの向上に取り組んでまいりました。加えて、従業員及びサプライチェーンにおける人権リスクの再評価により新たに特定したリスクについてそれらを低減させる施策に取り組むとともに、責任ある鉱物調達に関する対応ルールを策定いたしました。
当期の業績につきましては、電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収や機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充や生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。
これらの結果、連結売上高は1兆2,018億円(前期比13.7%増)、連結営業利益は471億円(前期比359億円増)、連結経常利益は486億円(前期比383億円増)となりました。株式交換差益48億円、投資有価証券売却益104億円等を特別利益に、減損損失26億円、製品補償引当金繰入額61億円等を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は334億円(前期比269億円増)となりました。なお、海外売上高は6,378億円(前期比17.0%増)で、海外売上高比率は53.1%(前期比1.5ポイント増)となりました。
単独の業績につきましては、売上高は3,535億円(前期比19.1%増)、営業利益は15億円(前期比106億円改善)、経常利益は130億円(前期比127億円増)、当期純利益は324億円(前期比305億円増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
〔インフラ〕
情報通信ソリューション事業では、データセンタ・AI関連市場の伸長を背景に、ローラブルリボンケーブル等の高付加価値製品をはじめとする製品ラインナップの拡充及び供給体制の強化により、売上の増加を図ってまいりました。また、北米テレコム市場においては、光ファイバ等について顧客の投資抑制や在庫調整による需要低迷から緩やかに回復しつつあり、継続的なマーケティング活動の強化や製造体制の整備を実施するとともに、生産性の改善に取り組んだことで、増収増益となりました。
エネルギーインフラ事業では、電力事業において、国内の超高圧地中線や再生可能エネルギー向け海底線及び地中線の堅調な需要を背景に、ケーブルの製造能力及び工事施工能力の増強に取り組んでまいりました。産業電線・機器事業においては、軽量かつ柔軟性に優れ建設工事の省力化・効率化に貢献するアルミCVケーブル等の機能線及び送配電部品の堅調な需要のもと、マーケティング活動の推進による拡販に努めてまいりました。さらに、利益確保を重視した受注活動と販売価格の適正化に取り組んだことで増収増益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は3,094億円(前期比11.2%増)、連結営業利益は45億円(前期比158億円改善)となりました。また、単独売上高は979億円(前期比26.4%増)となりました。
情報通信ソリューション事業では、急速に外部環境が変化するなか光ファイバ・ケーブル事業の運営体制を刷新し、グローバルに統一された戦略のもとで効率的かつ迅速な意思決定による事業運営を行うことで、収益拡大を図ってまいります。また、拡大傾向が継続すると見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、光ケーブル等の供給体制を強化するとともに、通信の高速大容量化に不可欠な光コネクタ関連技術に強みを持つ会社を子会社化し、開発力とコスト競争力におけるシナジーを発揮することで、市場での優位性を確立してまいります。加えて、テレコム市場の本格的な需要回復に備え、製造体制の整備や生産性改善等の取組みを継続してまいります。さらに、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化により、B5G*時代の光ネットワークに向けた集積デバイス等の開発を推進してまいります。
*B5G…Beyond5G。5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。
エネルギーインフラ事業では、電力事業においては引き続き国内の超高圧地中線の引替え需要や再生可能エネルギー関連需要を捉え売上の拡大を図るとともに、産業電線・機器事業においては、アルミCVケーブル等の機能線やデータセンタ向けプラグインコネクタ等の戦略製品の拡販に取り組んでまいります。また、当社グループ内のメタル電線事業の統合を実施することで、商圏・商流の集約による販路拡大、リソースの効率的な配分による競争力強化等のシナジー効果の最大化を目指してまいります。
〔電装エレクトロニクス〕
自動車部品事業では、車両の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネスの搭載車種拡大等により売上が堅調に推移いたしました。また、電動自動車市場に向けた高電圧に対応したワイヤハーネス等の製品開発及び拡販に取り組んでまいりました。さらに、円安の影響により海外子会社において生産した製品の輸入価格が上昇したものの、顧客の安定的な生産計画に基づく受注により生産性が改善したことに加え、販売価格の適正化に取り組んだことで、増収増益となりました。
電装エレクトロニクス材料事業では、エレクトロニクス関連市場の低迷が続いたものの、パワー半導体用及び放熱部品用耐熱無酸素銅条等の高付加価値製品の品揃えの充実及び拡販や、販売価格の適正化を含む製品ミックスの改善に取り組んでまいりました。さらに、銅地金価格の高騰や円安の影響により、増収増益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は7,364億円(前期比12.7%増)、連結営業利益は323億円(前期比72.7%増)となりました。また、単独売上高は1,597億円(前期比12.8%増)となりました。
自動車部品事業では、引き続き電動自動車市場に向けた製品開発や生産の自動化等による生産性改善に取り組むことで収益の拡大を図ってまいります。
電装エレクトロニクス材料事業では、今後も販売価格の適正化を含む製品ミックスの改善による収益の確保に努めるとともに、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に取り組んでまいります。
〔機能製品〕
機能製品事業では、データセンタ・AI関連市場の成長に伴う需要を取り込むべく各施策を実施してまいりました。特に、放熱・冷却製品については需要が旺盛な空冷方式ヒートシンクの供給体制を整備してまいりました。また、ハードディスクドライブ用アルミブランク材については、顧客の在庫調整の解消を受け回復した需要を捉えたことにより収益を拡大し、増収増益となりました。
これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,470億円(前期比27.4%増)、連結営業利益は140億円(前期比84億円増)となりました。また、単独売上高は919億円(前期比25.1%増)となりました。
機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、次世代製品の開発、製造体制の整備、顧客対応力の強化等に取り組んでまいります。半導体製造用テープについては、三重事業所内に開設した新工場が2025年度より量産開始予定であり、高性能かつ高品質な製品の安定供給を図ってまいります。また、データセンタ向け放熱・冷却製品については、従来の空冷方式に加え、新たに水冷モジュールの量産開始に向け工場新設等の製造体制の整備を図ってまいります。
〔サービス・開発等〕
水力発電、新製品の研究開発、不動産の賃貸、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。なお、当社日光事業所においては、必要な電力のほとんどを再生可能エネルギー(水力発電)で賄っており、本水力発電は25中計におけるサステナビリティ目標「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率30%」達成の一端を担っております。
当セグメントの連結売上高は338億円(前期比7.1%増)、連結営業損失は36億円(前期比17億円悪化)となりました。また、単独売上高は40億円(前期比7.0%減)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、661億円(前連結会計年度比+130億円)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益+541億円、減価償却費+413億円、持分法による投資損益(△は益)△106億円、有価証券及び投資有価証券売却損益(△は益)△78億円等により+598億円(前連結会計年度比+279億円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出△95億円、投資有価証券の売却及び償還による収入+433億円、有形固定資産の取得による支出△367億円等により△72億円(前連結会計年度比+176億円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの純増減額(△は減少)△340億円、長期借入れによる収入+607億円、長期借入金の返済による支出△595億円等により△442億円(前連結会計年度比△348億円)となりました。
当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は、数量で示すことはしておりません。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
当連結会計年度末の資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ20億円増加して9,870億円となりました。現金及び預金が111億円、受取手形、売掛金及び契約資産が149億円、棚卸資産が114億円増加し、有形固定資産が16億円、投資有価証券が329億円減少しました。
流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ451億円増加して1,620億円となりました。
有形・無形固定資産は、資本的支出で386億円の増加、減価償却で413億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。
負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ131億円減少して6,137億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーを含む有利子負債が3,062億円と前連結会計年度末比で269億円減少しました。
純資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ151億円増加して3,733億円となりました。その他の包括利益累計額が66億円増加しました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.3ポイント上昇し34.6%となりました。
キャッシュ・フローの概況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比13.7%増の1兆2,018億円、連結営業利益は、前連結会計年度比359億円増の471億円となりました。電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収や機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充や生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。
営業外損益では、前連結会計年度に比べ持分法による投資利益が43億円増加、為替差損が21億円悪化しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比383億円増の486億円となりました。
特別損益は、55億円の利益(純額)となりました。株式交換差益48億円、投資有価証券売却益104億円等を特別利益に、減損損失26億円、製品補償引当金繰入額61億円等を特別損失として計上いたしました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比269億円増の334億円となりました。
なお、セグメント別の概況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(1)業績」に記載しております。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
また、日本、中国及びタイにおいては、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。
手元流動性については、手元現預金とコミットメントラインにより、短期的な支払リスクをカバー出来うる水準を確保しております。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(1)当社は、2024年7月11日開催の取締役会において、2025年4月1日を効力発生日として、当社の完全子会社(2025年2月21日付で商号をライテラジャパン株式会社に変更。以下、「新会社」という)を設立し、会社分割(吸収分割)の方法により、当社の光ファイバ・ケーブル事業(以下、「当社分割事業」という)を新会社に承継させること(以下、「本吸収分割」という)を決議いたしました。なお、当社は、本吸収分割に関連して、当社の完全子会社であり光ファイバ・ケーブル関連事業を行っている株式会社正電成和の発行済株式の全部を新会社に承継させることも決議いたしました。
また、当社は、別途当社の完全子会社(2025年2月21日付で商号をLightera Holding合同会社に変更。以下、「持株会社」という)を設立し、新会社、当社の完全子会社であるOFS Fitel, LLC(2025年4月1日付で商号をLightera, LLCに変更。以下、「OFS」という)及びFurukawa Electric LatAm S.A.(2025年4月1日付で商号をLightera LatAm S.A.に変更。以下、「FEL」という)の株式(持分)を2025年4月1日付で現物出資したことにより、これら3社は、持株会社の完全子会社となりました。
1)吸収分割の目的
これまで、当社グループの光ファイバ・ケーブル事業は、当社ファイバ・ケーブル事業部門(日本)、OFS(米国)及びFEL(ブラジル)の3事業ユニットで構成し、それぞれの地域で各ユニットが異なる事業特性及び強みを生かしつつ事業を展開してきました。
情報通信市場は、引き続き成長分野であるものの、外部環境の急速な変化に伴い社会やお客様の課題も多様化しており、事業環境変化への対応力の更なる強化が必要となっております。
今般、これら3事業ユニットを実質的に統合し、各ユニットが持つ強みをグローバルに最大限に生かし、統一した方針で効率的に事業運営を行い、同市場で収益拡大を図るべく、本吸収分割を決定いたしました。
持株会社は日本に設立し、柔軟なガバナンス設計が可能な合同会社形態を採用いたしました。また、より顧客志向を高めるべく、本部機能と地域統括のマトリクス組織を採用することによりユニット間のシナジーを高め、一体感あるグローバル経営を実現いたします。
2)吸収分割の方法
当社を分割会社とし、新会社を承継会社とする吸収分割(当社においては簡易吸収分割)であります。
3)吸収分割に係る割当ての内容
本吸収分割に際して、金銭その他の財産の交付は行いません。
4)吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
本吸収分割に際して、金銭その他の財産の交付は行いません。
5)承継により増減する資本金
本吸収分割による当社の資本金の増減はありません。
6)分割会社の新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
該当事項はありません。
7)承継会社が承継する資産・負債の状況
新会社は、本吸収分割の効力発生日において、別途吸収分割契約に定める当社分割事業に係る資産・負債等の権利義務を承継いたします。
8)承継会社についての事項
①資本金
1百万円
②事業の内容
光ファイバ、光ファイバ・ケーブル及びそれら関連付属品の製造並びに販売
9)吸収分割の日程
(2)当社は、2024年7月11日開催の取締役会において、2025年10月1日を効力発生日として、当社のメタル電線事業を、当社を分割会社、当社の完全子会社である古河電工産業電線株式会社(2025年4月1日付で商号を古河電工メタルケーブル株式会社に変更。以下、「FEMC」という)を承継会社とする吸収分割の方法により、承継させること(以下、「本吸収分割」という)を決議いたしました。
なお、当社は、本吸収分割を含む、当社、FEMC、当社の完全子会社である株式会社KANZACC及び理研電線株式会社、並びに子会社である岡野電線株式会社を当事者とする、メタル電線事業に係るグループ内組織再編を行うことも決議いたしました。
1)吸収分割の目的
国内メタル電線市場が年々縮小していく中、これまで選択と集中を進めポートフォリオの転換を図ると同時に、差別化商品や優位技術による将来が期待できる製品を生みだしてまいりましたが、人材不足や設備老朽化による更新投資負担など当社グループで共通する課題も顕在化してきております。
このような状況において、これらの課題を解決しながら多様化、高度化するニーズに迅速に対応するため、メタル電線事業に係る部門を統合しシナジー効果を最大化することが当社グループ全体の企業価値向上に資するとの判断に至り、本吸収分割を決定いたしました。
2)吸収分割の方法
当社を分割会社とし、FEMCを承継会社とする吸収分割(当社においては簡易吸収分割)であります。
3)吸収分割に係る割当ての内容
本吸収分割に際して、FEMCは譲渡制限株式である普通株式2株を発行し、その全てを当社に交付いたしました。
4)吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
承継会社となるFEMCは当社の完全子会社であり、本吸収分割に際し、FEMCが発行する全株式を当社に割当交付するため、当社とFEMCで協議し割当株式数を決定いたしました。
5)承継により増減する資本金
本吸収分割による当社の資本金の増減はありません。
6)分割会社の新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
該当事項はありません。
7)承継会社が承継する資産・負債の状況
承継会社は、本吸収分割の効力発生日において、別途吸収分割契約に定める、当社ファイバ・ケーブル事業部門(現産業電線・機器事業部門)におけるメタル電線の開発、製造及び販売に関する事業に係る資産・負債等の権利義務を承継いたします。
(注)2025年4月1日付で、メタル電線の開発、製造及び販売に関する事業をファイバ・ケーブル事業部門から産業電線・機器事業部門へ移管いたしました。
8)承継会社についての事項
①資本金
450百万円
②事業の内容
各種電線並びに電気機械器具の製造販売
9)吸収分割の日程
(3)当社は、2024年7月23日の取締役会決議において、株式会社アドバンテッジパートナーズが投資関連サービスを提供するファンド(以下、「APファンド」という)、東京センチュリー株式会社(以下、「TC」という)の完全子会社であるTCインベストメント・パートナーズ株式会社(以下、「TCIP」という)が議決権株式の全てを保有するサステナブル・バッテリー・ホールディングス株式会社(以下、「SBH」という)の完全子会社である株式会社AP78(以下、「公開買付者」という)との間で、①公開買付者による当社の連結子会社である古河電池株式会社(以下、「古河電池」という)の普通株式(以下、「古河電池株式」という)に対する公開買付け(以下、「本公開買付け」という)に当社が応募しないこと、②本公開買付けの成立後に古河電池の株主を当社及び公開買付者のみとするための株式併合(以下、「本株式併合」という)を実施すること、③本株式併合の効力発生を条件として、古河電池が実施する自己株式取得によって当社が所有する古河電池株式の全て(18,781,200株。株式所有割合57.30%)を譲渡すること等に関する契約(以下、「本不応募契約」という)、並びに、APファンド、TC及びTCIPとの間で、当社によるSBHの普通株式(株式所有割合約20%)の取得、その後のSBH及び古河電池の運営等について定めた株主間契約を締結することを決定し、同日付で本不応募契約を締結いたしました。
なお、本不応募契約等により予定される一連の取引により、古河電池は当社の連結子会社から外れる予定であります。
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループは、古河電工グループ ビジョン2030を達成するために、情報/エネルギー/モビリティ融合領域での社会課題解決に向け、積極的に研究開発へ取り組んでおります。当事業年度における当社グループの研究体制は、国内の当社研究所等(サステナブルテクノロジー研究所、エレクトロニクス研究所、フォトニクス研究所、マテリアル研究所、デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター)及び海外の OFS Laboratories, LLC (米国)、 Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)、 Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric (米国)を中心に構成されております。
当連結会計年度における研究開発費は、前連結会計年度比3.7%増の
① Beyond5G社会に貢献する取組みとして、次世代データセンタを支える光電融合技術であるCo-Packaged Optics(CPO)の実現に向けて、光ネットワーク技術に関する業界団体のOptical InternetWorking Forumより発行されたELSFP(External Laser Small Form Factor Pluggable)IA(Implementation Agreement)に基づくCPO用16チャンネルのブラインドメイト型外部光源を世界で初めて開発し、光通信に関する国際会議のEuropean Conference on Optical Communicationにおいて本製品を発表いたしました。本製品はすでにサンプル出荷を開始しており、2025年度以降に量産を開始する予定です。
また、光電融合デバイスの実現に向けて、研究開発を加速しております。CPOなどの光電融合デバイスにおける光接続についての課題に対応するため、当社が参画している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」における研究開発等により、CPOに適した小型多心光コネクタを開発しました。さらに、総務省から委託を受けている「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」プロジェクトにおいて、低遅延・大容量情報伝送などが期待される空孔コアファイバの実用化に向け、次世代のPassive Optical Network(PON)の研究開発を進めており、ハイパワー入力による256分岐PONの実証実験に成功いたしました。この実用化に向けて、慶應義塾大学に敷設した空孔コアファイバケーブルを用いた実証フィールドでの特性評価も継続して行っております。
② 大規模な空間多重光ネットワークの実現に向けて、空間クロスコネクト装置とマルチコアファイバ光増幅器を用いた1,000 km級の光ネットワークにおける実証実験に世界で初めて成功いたしました。
また、海底用2コアファイバの融着技術における成果を、光工学に関する世界最大規模の国際会議Photonics West 2025で発表いたしました。さらに、同コアファイバの性能評価において世界最高レベルの低損失と低クロストーク特性を達成し、その結果を記載した論文を海洋光通信に関する国際学術会議SUBOPTIC2025に投稿予定です。
以上、当該事業に係る研究開発費は
(2)電装エレクトロニクス
① カーボンニュートラルに向けた電動車市場の拡大に対する取組みとして、引き続き高圧ハーネス・高圧部品の開発に注力し、高圧製品のラインナップ拡充を進めております。
このほか、引き続き電動車用コネクタについては次世代製品の開発や表面処理を含む端子材料の開発も進めるとともに、自動車用ワイヤハーネスについては車両軽量化へのニーズに応えるため、当社独自のα端子を活用しアルミ電線のさらなる適用部位拡大を進めております。
また、当社が開発したBSS®(鉛バッテリ状態検知センサ)が、過充電抑制による燃費向上及び過放電によるバッテリ上がり防止等に貢献しており、今後予想される車載電子機器の増加や頻繁なソフトウエアアップデートに向けて、精度とロバスト性の向上を図ることで拡販及び受注活動を進めております。
加えて当社は、軽量かつ金属異物を加熱し難い特徴を有する電界共振結合方式を用いて、世界トップクラスとなる9.1kWの電力伝送に成功しております。高齢者や身体障がい者が自由に移動できる社会の実現に向けて、電動ロボット・電動車椅子向けに充電作業負荷を軽減することを目的に、本方式による安全・安心・快適なワイヤレス充電システムの開発を進めております。
さらに素材開発としては、高強度・高導電・高機能な銅合金及び貴金属めっきの開発を引き続き行っております。本開発により、電子機器における接続部品(コネクタ、端子等)の多極化・高密度化、発熱の制御、電流を検出・制御する抵抗器(チップ抵抗器、シャント抵抗器等)の高性能化、電装品(ワイヤハーネス等)の高電圧化・大電流化への対応を進めております。
また、加工用高出力レーザの対象材料については、これまで、光反射率が極めて高く難加工素材とされてきた純銅の加工において、高水準の品質・深度・加工速度を実現いたしました。
② 自動運転に向けた取組みとしては、汚れや雪の付着、降雨の影響も受けにくく、安定して物体検知可能な車載用の24GHz帯周辺監視レーダの量産を継続しており、引き続き建機・農機等向けにも展開しております。また、就農人口の減少による人手不足により、農機の自動走行及び農作業の自動化・効率化が課題となっていることから、その解決に向け、より高分解能な77GHz帯レーダの開発を進めており、北海道大学と連携して実証実験を行っております。
③ シミュレーション技術及び分析技術に関する取組みとしては、大学や公的機関の先端分析装置を有効活用して研究開発の効率化を推進しており、ワイヤハーネスなどの自動車用部品においては変形・応力シミュレーション、電子機器開発においては振動・熱流体・電磁界シミュレーションを実施いたしました。また、Furukawa Electric Institute of Technology Ltd. (ハンガリー)では、先進的なシミュレーション技術開発に取り組んでおり、触媒構造解析のための分子動力学シミュレーションを実施いたしました。
以上、当該事業に係る研究開発費は
(3)機能製品
① 当社グループは、「古河電工グループ環境ビジョン2050」に基づき、脱炭素社会、水・資源循環型社会及び自然共生社会への貢献を目指しております。このため、CO2の排出量削減に向けたバリューチェーン全体における再生材の利用を促進すべく、再生ポリエチレンを100%使用した地中埋設用ケーブル保護管の「角型エフレックス®」・「エフレックス®S」や、植物由来の樹脂を使用した無架橋低発泡ポリプロピレンシート「エフセル®」を開発いたしました。
また、カーボンニュートラルに向けた取組みとして、セルロース繊維強化樹脂「CELRe®」の開発を進めております。本製品は、セルロース繊維の高分散化技術により、強度と耐衝撃性を両立させつつ、低コストでの製造が可能となっており、さらに樹脂材料からバイオマス材のセルロース繊維に置き換えることで、石油資源の節約とCO2排出量削減に貢献してまいります。
さらに、製品の高発熱化、薄型化、軽量化へ対応するヒートパイプ式ヒートシンクのほか、データセンタの高発熱密度に対応した製品、エレクトロニクス機器の高発熱化、軽量化に対応した製品の開発にも注力しております。
② 情報分野においては、通信基地局用のルーター、スイッチや無線通信用のアンテナ、生成系AI用やデータセンタ用のサーバー等に使用されるプリント基板の高周波化が進展しており、高周波プリント基板を構成する銅箔の需要も高まっていることから、当社は、さらなる高周波化にも対応できる次世代高周波プリント基板用銅箔「F0X-WS」の量産化を進めており、より高周波のグレードが高い平滑銅箔「F0-WS」の開発を進めております。
以上、当該事業に係る研究開発費は
① 超電導分野では、低温超電導線材及び高温超電導線材の開発・製造リソースを持つ強みを生かし、顧客への新製品提案・開発を引き続き進めております。
超電導製品部では、低温超電導線材の開発・量産化を進めており、顧客のコイル製造プロセスを効率化する自己融着機能を有する新製品を販売しております。
SuperPower Inc.(米国)においては、イットリウム高温超電導線材の研究開発及び製造をしております。高温超電導線材は、当社製低温超電導線材と併せて用いることにより、新素材や先端医薬の開発に欠かせない高磁場マグネットなどに利用されております。さらに、先進核融合原型炉の分野では、高温超電導線材の供給を通じて海外有力顧客との関係強化を進めており、そのうちトカマクエナジー社(英国)とは約1,000万ポンドの出資契約を締結し、商用核融合エネルギーの推進に向けてパートナーシップを強化しております。
また、フュージョンエネルギー産業の創出を目的として設立された「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会」において、同法人の常任理事を当社の代表取締役が務めるなど、当社は積極的に参画しており、活動を通じてフュージョンインダストリーの育成に貢献しております。さらに、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業ALCA-Nextの新規未来本格型研究開発において、京都大学との共同研究により、キロアンペア級の交流電流を低損失で流せる高温超電導集合導体ケーブルの開発を進めております。
② Silicon Valley Innovation Laboratories, Furukawa Electric(米国)では、社会課題解決型の新技術や新事業の創出を目的に、スタートアップを中心としたイノベーションエコシステムのステークホルダーとのオープンイノベーションを積極的に推進しております。現地アクセラレータと提携し、当社グループのコア技術とシリコンバレーに集まる技術やビジネスモデルを結合させ新たな顧客体験や価値創出を目指す共創に加え、米国内の大学と提携し当社の技術課題のみならず社会課題を解決する新技術の探索に取り組んでおります。さらに、現地ネットワークを活用したVOC(Voice Of Customer)の収集、北米のエコシステム調査分析などのマーケティング、ユースケース探索や当社技術のインキュベーションの北米拠点として活動しております。
③ 技術開発及び事業開発の両方の機能を担うソーシャルデザイン統括部では、社会インフラ維持管理・ライフサイエンス・航空宇宙等の各領域において、当社の技術を活かし、外部のステークホルダーとの共創を重視して新事業開発を進めております。社会インフラ維持管理の領域では、「みちてん®」「てつてん®」に代表される当社インフラDX市場向け製品・サービスの展開を加速させ、着実に社会実装を進めております。ライフサイエンス領域では、2022年12月に設立したMFオプテックス株式会社(当事業年度において株式を追加取得し当社の連結子会社化)との連携強化により新事業開発を加速し、引き続き光技術を活用した医療機器向け部品等の開発及び市場展開を行っております。航空宇宙領域では、新興企業との協業による高精度なリアルタイム風況観測機器開発の社会実装を進めたほか、国立大学法人との社会連携講座を活用し、事業創出を加速させております。
④ 当社の高出力ファイバレーザの技術をさらに発展させるために、営業統括本部内にレーザ応用事業部を新設いたしました。インフラ構造物のメンテナンスに使用するインフラレーザに関する分野では、鉄道車両の塗膜除去などのメンテナンスに最適な小型レーザ施工システムを製品化いたしました。また、船舶塗装の下地処理における錆・塗膜除去を行うためのレーザ施工システムの開発を行っており、実船での実証実験を進めております。産業用レーザに関する分野では、光ファイバからの輝度で世界最高レベルとなる出力5kWの青色レーザ発振器を日亜化学工業株式会社と共同で開発し、多様な加工ニーズに対応するための開発拠点となる「古河電工・日亜化学 先進レーザ加工ソリューションラボ」(愛知県刈谷市)を開設いたしました。また、欧州ではハンガリー(当社グループ会社のFurukawa Electric Institute of Technology Ltd. (ハンガリー)社内)にレーザアプリケーションラボを設け、グローバルな開発体制を構築いたしました。
⑤ 2050年のカーボンニュートラル実現と持続可能なエネルギーの安定供給のために、化石燃料によらないグリーンLPガスの社会実装に向けて取り組んでおります。世界で年間数百万トン規模のグリーンLPガスを製造することを目標に、2023年11月には、商業化のノウハウと国際的なLPガスの供給網を保有するアストモスエネルギー株式会社及びSHVエナジー(オランダ)との間でグリーンLPガス共同検討に関する基本合意書を締結いたしました。
国内では、グリーンLPガス製造技術の実証実験に向けて、北海道鹿追町に建設予定の実証実験用プラントの起工式を2024年8月に執り行うなど、実証実験用プラントの建設を進めております。また、北海道大学との共創を通じて、様々な地域資源を最大限利活用した脱炭素社会・循環型社会の実現に向けて技術開発を進めるとともに、専門人材の育成に取り組んでおります。
⑥ 近年の激甚化する自然災害への対策として、風水害発生時の自主避難を支援する自治体向けサービス「みんなんサポート®」を開発し、これまでに鹿児島県薩摩川内市・島根県美郷町など全9地区で実証実験を実施しております。これらの実績が高く評価された結果、次世代に向けたレジリエンス社会構築のため先進的な取組みを行っている企業等を評価・表彰する「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2023」では優良賞を受賞いたしました。また、2024年7月からは島根県美郷町の複数地区にて災害対策で相互連携を目指す実証実験を行っております。
以上、当該事業に係る研究開発費は