第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としております。こうした基本理念を堅持しつつ持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させていくためには、適正なコーポレート・ガバナンスに基づき経営の透明性、公正性を確保するとともに、イノベーションをキーワードに、保有する経営資源を最大限活用して成長戦略を果断に立案・実行していくことが重要であり、以下の基本的な考え方に沿って、コーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組んでまいります。

(ⅰ)株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行う。

(ⅱ)株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。

(ⅲ)会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。

(ⅳ)取締役会の戦略等基本方針決定機能及び経営の監督機能を重視し、それらの機能の実効性が確保される体制の整備及び取締役会の運営に注力する。業務執行については、権限及び責任を明確化し、事業環境の変化に応じた機動的な業務執行体制を確立することを目的として、執行役員制並びに事業本部制を導入している。また、経営の健全性確保の観点から、監査役監査の強化を図ることとし、独立社外監査役と常勤の監査役が内部監査部門や会計監査人と連携して適法かつ適正な経営が行われるよう監視する体制としている。

(ⅴ)持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で、株主との建設的な対話を行う。

 

[住友事業精神]

住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、明治24年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。

営業の要旨  ※ここでは、住友合資会社社則(昭和3年制定)より抜粋しました。

第一条  我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし
第二条  我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、

苟も浮利に趨り、軽進すべからず

この他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。

 

住友電工グループ経営理念]  ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)

住友電工グループは、

・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。

・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。

・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。

・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。

・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。

 

(2) 会社の対処すべき課題

今後の世界経済は、全体では緩やかな回復が続くことが期待され、日本経済につきましても、雇用・所得環境の改善を背景に回復基調の継続が期待されます。しかしながら、米国の通商・金融政策や新興国経済の不確実性、地政学的リスクの高まり等による景気の下振れリスクは依然存在しており、引き続き不透明な状況が続くものと予想されます。

このような情勢のもと、当社グループは、住友事業精神と住友電工グループ経営理念を事業活動の根底に置き、S(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のさらなる進化に努め、企業体質の一段の強化やグローバリゼーション、研究開発の早期事業化など、成長に向けた取り組みを加速し、2018年度からスタートする中期経営計画「22VISION」の達成に向け、グループを挙げて邁進してまいります。また、各事業において次の施策を進めてまいります。

 

まず、自動車関連事業では、ワイヤーハーネスをコアとするメガサプライヤーを目指し、電動車両向けの高電圧ハーネスや電池関連製品、軽量で耐久性に優れた高強度アルミハーネス、自動車の電子制御に対応した電装部品や高速通信用コネクタなどの開発・拡販を加速してまいります。また、海外系顧客のシェア拡大に努めるとともに、電動車両や自動運転、コネクテッドカーの普及を見据え、グループ内の連携強化や他社との協業を通して製品開発力を強化し、さらなる事業拡大に取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバルに広がる営業・開発拠点を活かして拡販を図りつつ、次世代自動車に向けた新製品開発へも取り組んでまいります。

 

情報通信関連事業では、光ファイバ・ケーブル、100Gbps*の高速光デバイス、携帯基地局用GaN(窒化ガリウム)デバイスについて、グローバルでの需要捕捉に引き続き取り組むほか、海底ケーブル用の極低損失光ファイバや、データセンター向けの超多心光ケーブルの拡販も一段と進めてまいります。また、第5世代移動通信システムの整備や動画配信・クラウドサービスの拡大等による通信データ量増大に伴う光ファイバや次世代光・電子デバイスの需要増への対応にも注力してまいります。

 

* Gbps:gigabits per secondの略で、通信速度を表す単位。1Gbpsは1秒間に10億ビットのデータを送れることを表します。

 

エレクトロニクス関連事業では、携帯機器用FPC(フレキシブルプリント回路)について徹底した品質改善・コスト低減に加え、グローバルな拡販に引き続き注力してまいります。また、当社グループの総合力を活かし、さらなる高精細・極薄・高耐熱化による新製品の確実な立上げや車載市場等への事業拡大にも取り組んでまいります。さらに、電子ワイヤー、照射チューブについても、グローバルでの生産強化と拡販を加速してまいります。

 

環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルの製造体制を強化しコスト低減や品質改善をさらに進めていくとともに、国内外の大型電力ケーブルプロジェクトの受注獲得、老朽化設備の更新需要の確実な捕捉により、収益力の向上を図ってまいります。このほか、電動車両向けのモーター用平角巻線などの拡販を進め、さらに日新電機㈱や住友電設㈱を含めたグループ総合力を活かして、再生可能エネルギーやスマートグリッド関連事業の拡大にも注力してまいります。

 

産業素材関連事業では、超硬工具においては、生産能力増強により国内外における需要の捕捉をこれまで以上に進めるとともに、主力の自動車分野に加え、航空機やエネルギー分野での難削材加工用の新製品開発と拡販を強化してまいります。また、焼結部品において国内外での供給体制の一層の強化を図るほか、PC鋼材やばね用鋼線についても、グローバル生産体制の拡充と拡販に注力してまいります。

 

研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、新しい電力・エネルギーインフラの構築に向けてレドックスフロー電池、集光型太陽光発電装置、エネルギーマネジメントシステム関連製品の早期事業化に向けた開発と国内外での実証試験を加速するほか、超電導製品、マグネシウム合金製品、水処理装置、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイスや次世代通信ネットワーク用製品などの事業化に注力してまいります。さらに将来に向けては、自動運転や電動車両に対応する車載機器開発体制の強化や新たな機能を発現する新材料の探索など、社会ニーズを踏まえ当社グループの特徴を活かした新製品の開発に注力するとともに、製造現場でのAI*やIoT*活用による生産革新、サイバーセキュリティ対策にも積極的に取り組んでまいります。

 

* AI  :Artificial Intelligence(人工知能)の略。

* IoT:Internet of Thingsの略。パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器に限らず、あらゆる「モノ」

がインターネット等のネットワークに接続されること。

 

最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。なかでも競争法コンプライアンスは最重要の課題と位置付け、2010年6月に「競争法コンプライアンス規程」を制定して以来、グループ全体でその強化に取り組んでまいりました。今後も、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。

 

* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。

 信用確実:何よりも信用を重んじること。

 不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(政治経済情勢・需要変動等に係るリスク)

当社グループは、自動車関連、情報通信関連、エレクトロニクス関連、環境エネルギー関連及び産業素材関連他の各需要分野にわたって事業を展開しております。また、地域的には、日本の他、米州、アジア、欧州、北アフリカ等に進出しております。このため、当社グループの経営成績、財政状態ならびにキャッシュ・フローは、特定の取引先・製品・技術等に過度に依存する状況にはありませんが、各分野や各地域に特有の需要変動や、技術革新に起因する製品ライフサイクル短期化、また、各国の政治情勢などの影響を受けることがあります。なお、当社グループ製品の多くは、最終消費財の部品や社会インフラ用の素材・システムなどであるため、景気循環の影響を受けることはもとより、顧客の購買政策の変化や設備投資に対する政策的判断などの影響を受けることがあります。

(法律・規制の変更等によるリスク)

当社グループは、日本以外にも世界各地に製造子会社、販売子会社等を有しております。各市場において、下記のように完全には回避することの困難なリスクが存在しており、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク

・各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更等により税金コストが上昇するリスク

・外貨規制、ハイパーインフレーション、テロ、新型インフルエンザ等の感染症等により投資資金の回収が不可能となるリスク

 

(訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に係るリスク)

当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、自動車関連事業分野の競争法違反行為について、一部の自動車メーカーと損害賠償に関する交渉を行っております。

(災害等のリスク)

当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災により被害を受けた経験を踏まえ、地震等の防災対策を実施しております。当社グループの拠点の一部は、南海トラフ地震や首都直下地震の想定被災地域あるいは沿岸地域等に存在していることもあり、大規模な地震が発生した場合には津波や液状化等による重大な被害を受ける可能性があります。また、グローバルな事業展開を拡大していることから、各国・各地域において地震や風水害等の直接的な被害を受ける可能性があることに加え、顧客の被災や物流網の寸断、電力不足等により生産活動が計画通り進まない可能性があります。

(産業事故等のリスク)

当社グループは、各製造拠点において火災・爆発等の産業事故や環境汚染等の公害事故の発生防止にはできる限りの努力を実施しておりますが、完全な防止は困難であります。当該事故が当社グループの業務及び地域社会に大きな影響を及ぼした場合、これに伴い生ずる社会的信用の失墜、補償等を含む事故対応費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(金利の変動によるリスク)

当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しております。当社グループでは、設備投資のための長期安定的な資金を必要とするため、長期固定金利の長期借入や社債発行による調達が中心となっております。そのため、金利の短期的な変動による影響は比較的受けにくくなっておりますが、金利が中長期的に上昇した場合は、長期借入等による資金調達コストを上昇させ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(為替レートの変動によるリスク)

当社グループは、在外連結子会社及び在外持分法適用関連会社の個別財務諸表を主に現地通貨ベースで作成しており、連結財務諸表の作成時に円換算しております。従って、現地通貨ベースでの業績に大きな変動がない場合でも、円換算時の米国ドル、ユーロ等の為替レート変動が業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは世界各地で製造・販売活動を展開しております(当連結会計年度における海外売上高比率59.7%)。為替予約取引等の手段により主要通貨の短期的な為替変動による影響を最小限にとどめるようにしておりますが、中長期にわたる大幅な為替変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(原材料等の調達に係るリスク)

当社グループは、電線・ケーブルなど銅を主たる原材料とした製品を多数有しております。このうち主要な製品の販売価格については、ロンドン金属取引所の市況価格を反映した銅建値に基づいて決定するという商慣習が普及しており市況価格変動リスクを回避しております。しかし一部の製品についてはこのような価格決定方法を採用していないため、急激な市況価格の上昇は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

その他の非鉄金属、鉄鋼、石油化学製品類等の原材料や副資材の調達についても、当社グループでの共同購買など有利購買活動を強化しておりますが、急激な市況価格の上昇が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、原材料等の在庫について、市場価格の急落が、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。また希少金属については、産地や供給者が限定されていること等により必要量の調達が困難となる可能性があります。さらに、他の原材料や副資材についても、供給者の倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があります。

(保有有価証券の時価の下落によるリスク)

当社グループは、取引先との長期的・安定的な関係の構築・強化や、事業・技術提携の円滑化を主たる目的として、関係取引先等の株式を保有しております。売買目的の株式は保有していないため、株式市況の変動が経営に直接与えるリスクは比較的小さいと考えられますが、大幅な株式市況の悪化は自己資本比率を低下させる可能性があります。

(退職給付債務に係るリスク)

当社グループは、従業員の退職給付債務及び費用について、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(知的財産に係るリスク)

当社グループは、特許権、意匠権、その他の知的財産権の取得により自社技術の保護を図ると共に、他社の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。しかし、製品の構造・製造技術の多様化や、海外での事業活動の拡大、それに伴う流通経路の複雑化等により、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。また、各国の法制度や執行状況の相違により、他社が当社グループの知的財産権を侵害しても常に必要な保護が得られるとは限らず、当社グループの製品が十分な市場を確保できない可能性があります。

(情報の流出によるリスク)

当社グループは、事業遂行に関連して多くの個人情報や機密情報を有しております。

これらの情報の秘密保持については、最大限の対策を講じておりますが、予期せぬ事態により、情報が外部に流出する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループのイメージの低下や損害賠償の発生などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(製品およびサービスの欠陥によるリスク)

当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品およびサービスの品質保持に万全の注意を払っておりますが、予期せぬ事態により、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

当連結会計年度より「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第18号  平成29年3月29日)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号  平成29年3月29日)を適用しており、前年同期比較についてはこれらを遡及適用した前年同期の数値を用いております。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5  経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計方針」に記載しております。

(注)本報告書の「第2  事業の状況」から「第5  経理の状況」までの金額には、特に記載のない限り消費税及び地方消費税は含まれておりません。

(2) 経営成績

①  経営成績

当連結会計年度の世界経済は、米国では景気拡大基調が持続し、欧州や中国でも持ち直しの動きがみられるなど、総じて堅調に推移いたしました。日本経済につきましても、輸出や設備投資が増加し、緩やかな回復基調が継続したものの、米国の経済政策の影響や地政学的リスクなどから、先行きについては依然不透明な状況となっております。

当社グループを取り巻く事業環境につきましては、海外を中心にカーメーカーの自動車生産が増加したことから、ワイヤーハーネスや粉末合金、焼結部品の需要が堅調に推移したほか、光ファイバ・ケーブル等の情報通信関連需要も増加しました。このような環境のもと、当連結会計年度の連結決算は、売上高は3,082,247百万円(前連結会計年度2,814,483百万円、9.5%増)と前連結会計年度比で増収となりました。また、営業利益も需要の増加に加え、携帯機器用FPCでのコスト低減の推進などにより、173,139百万円(前連結会計年度150,503百万円、15.0%増)と前連結会計年度に比べ増益、営業利益率は5.6%(前連結会計年度5.3%、0.3ポイント上昇)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少等により1,600百万円減の43,119百万円、営業外費用は102百万円減の21,248百万円となり、経常利益は195,010百万円(前連結会計年度173,872百万円、12.2%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。特別利益では投資有価証券売却益13,506百万円を計上しました。特別損失では、固定資産除却損3,728百万円、減損損失3,439百万円、事業拠点の再編に伴う事業構造改善費用3,951百万円に加え、海外工事事故関連損失4,061百万円を計上し、合計では15,179百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は193,337百万円となりました。ここから法人税等53,349百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益19,660百万円を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は120,328百万円(前連結会計年度107,562百万円、11.9%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。

②  生産、受注及び販売の実績

当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「(5) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に関連付けて示しております。

(3) 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、主に設備投資による有形固定資産の増加や年金資産の時価上昇による退職給付に係る資産の増加により、前連結会計年度末に比べ110,011百万円増加し、3,017,303百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、主に借入金の減少により、前連結会計年度末に比べ25,460百万円減少し1,253,217百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、配当支払の一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や年金資産の時価上昇に伴う退職給付に係る調整累計額の増加により、前連結会計年度末に比べ135,471百万円増加し1,764,086百万円となりました。自己資本比率は51.0%と、前連結会計年度末対比2.3ポイント上昇しております。

(4) キャッシュ・フロー

①  キャッシュ・フロー

まず、営業活動によるキャッシュ・フローで239,573百万円の資金を獲得(前連結会計年度比30,340百万円の収入増加)しました。これは、税金等調整前当期純利益193,337百万円と減価償却費141,439百万円との合計、すなわち事業の生み出したキャッシュ・フローが334,776百万円あり、これに運転資本の増減などを差し引いた結果であります。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、174,265百万円の資金を使用(前連結会計年度比20,564百万円の支出減少)しました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出171,951百万円などがあったことによるものであります。

なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・

キャッシュ・フローは、65,308百万円のプラス(前連結会計年度は14,404百万円のプラス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、66,795百万円の資金の減少(前連結会計年度は4,763百万円の減少)となりました。これは、長期借入金の返済による支出や配当金の支払などによるものであります。

以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より106百万円(0.1%)増加し180,108百万円となりました。また、当連結会計年度末における有利子負債は、前連結会計年度末より18,422百万円減少し492,567百万円となり、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、18,528百万円減少し312,459百万円となりました。

②  資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な設備資金や運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入や社債発行等により調達する予定であります。

なお、当社は、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「AA(長期)、J-1+(短期)」、格付投資情報センター(R&I)より「AA-(長期)、a-1+(短期)」の格付を取得しております。また、金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。

(5) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

自動車関連事業は、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムでグローバルでの需要の捕捉を積極的に進め、売上高は1,631,952百万円と118,731百万円(7.8%)の増収となりました。営業利益は、グローバルでのコスト低減を推進したものの、価格低下の影響に加えて防振ゴムで新規品立上げコストの増大などがあり、96,805百万円と1,811百万円の減益となりました。売上高営業利益率は5.9%と0.6ポイント低下しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ61,327百万円増加の1,367,074百万円となりました。

情報通信関連事業は、光ファイバ・ケーブルなどで拡販を進め、売上高は220,326百万円と22,086百万円(11.1%)の増収となりました。営業利益は、光デバイスの需要減少などにより、18,603百万円と2,906百万円の減益となりました。売上高営業利益率は8.4%と2.4ポイント低下しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ40,460百万円増加の283,933百万円となりました。

エレクトロニクス関連事業は、電子ワイヤーや携帯機器用FPCで拡販を進めたものの、一部部門のセグメントの変更により、売上高は246,319百万円と4,794百万円(1.9%)の減収となりました。営業利益は、FPCで全社を挙げて取り組んでいるコスト低減が進捗したこともあり、5,410百万円と前連結会計年度(10,898百万円の損失)から16,308百万円の改善となりました。売上高営業利益率は2.2%と6.5ポイント上昇しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ34,475百万円減少の180,735百万円となりました。

環境エネルギー関連事業は、住友電設㈱での需要増加に加え、銅価格上昇の影響もあり、売上高は717,972百万円と96,554百万円(15.5%)の増収となり、営業利益も、24,120百万円と3,313百万円の増益となりました。売上高営業利益率は3.4%と0.1ポイント上昇しました。なお、工事・プラント受注高は305,729百万円と、前連結会計年度比12,685百万円(4.3%)増加しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ14,020百万円増加の635,301百万円となりました。

産業素材関連事業他は、超硬工具や焼結部品を中心として拡販を進め、売上高は343,126百万円と39,183百万円(12.9%)の増収となり、営業利益も28,171百万円と7,680百万円の増益となりました。売上高営業利益率は8.2%と1.5ポイント上昇しました。

セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ33,873百万円増加の619,781百万円となりました。

なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。

(6) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因や当該要因への対応については、「第2  事業の状況  1.(2) 会社の対処すべき課題」をご参照下さい。

(7) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「売上高」、「営業利益」、「投下資産営業利益率(ROIC)*」及び「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は3,082,247百万円(前連結会計年度比267,764百万円増)、「営業利益」は173,139百万円(前連結会計年度比22,636百万円増)、「投下資産営業利益率(ROIC)」は7.9%(前連結会計年度比0.7ポイント上昇)、「自己資本当期純利益率(ROE)」は8.1%(前連結会計年度比0.4ポイント上昇)となりました。

なお、2018年5月25日公表の当社中期経営計画「22VISION」において、2020年度の中間目標として、売上高3兆4,000億円、営業利益2,000億円、ROIC8.5%以上、ROE8%以上を、また、2022年度の最終目標として、売上高3兆6,000億円、営業利益2,300億円、ROIC9%以上、ROE8%以上をそれぞれ掲げております。これらの目標の達成に向け、収益基盤の強化及び資本効率の改善に取り組んでまいります。

 

* 投下資産営業利益率(ROIC)=営業利益/(総資産-無利子負債)

4【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

5【研究開発活動】

当社及び連結子会社は経営理念にあります「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」という理念の下、伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがありかつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の技術ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。

自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。

また、当連結会計年度における研究開発費の総額は117,735百万円であります。

(1) 自動車関連事業

ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱及び両社の共同出資による㈱

オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。

ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのハーネスアーキテクチャを構築し、システム設計を行うとともに、それに必要な要素技術の開発を進めております。また環境対応として

ハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスの量産、さらに高強度な電線の開発によるエンジンルーム等への適用範囲拡大を進めております。市場規模が拡大してきた電気自動車(EV)・ハイブリッド自動車(HEV)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。車載エレクトロニクス機器に関しては、電源系、情報系のネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、さらにゲートウェイなど、高速大容量通信に適用可能な次世代車載LAN(Local Area Network)製品の開発を進めております。

一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させております。

住友理工㈱では、コア技術である高分子材料技術と総合評価技術をベースにスピーディーな新技術の創出とタイムリーな商品開発を目指しております。自動車用品分野においては、「新規顧客開拓」を推進する体制を整え、「防振ゴム」「ホース」「ウレタン製品(制遮音品・内装品)」の既存3分野以外の自動車用新商品を開発・育成していくために、「自動車新商品開発センター」を設置しました。体圧を検知する「スマートラバー(SR)センサ」を自動車のシートに埋め込み、呼吸や心拍などのバイタル情報によってドライバーの異変を検知、危険を回避する乗員状態検知機能の実用化に向けた開発や、EVおよび燃料電池自動車(FCV)向けの環境対応製品の技術開発などに取り組んでおります。

当事業に係る研究開発費は71,766百万円であります。

 

(2) 情報通信関連事業

光通信関連製品、通信用デバイス・化合物半導体材料、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。

光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、量産安定化技術とさらなる特性向上に取り組んでおります。

また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアを形成するマルチコア型光ファイバの開発に取り組み、光ファイバ1本当たりの伝送容量の世界記録を更新し、2017年9月に光通信関係の国際学会(ECOC)での共同発表とプレスリリースを行いました。

一方で、データセンタにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を、従来のテレコム光通信で培った技術を応用して開発しております。特に、データセンタ内で使用される新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発を進めており、マーケティング部門と連携し、2018年3月の光通信関係の国際学会(OFC)の当社展示ブースにてこれら製品群を紹介し、高い技術力をPRしました。

そのほか、光ファイバ製造技術を活用した新材料の開発、光ファイバ実装・光学設計などの基盤技術を活用した新製品の開発を進めており、エレクトロニクス、ライフサイエンスなどの新たな分野への光技術の展開を図っております。

デバイス関連分野では、数十mの短距離伝送から数千kmの長距離伝送に対応するハイエンドの光通信用デバイス及び高効率・高出力特性を有する無線通信用電子デバイス技術を活かして、新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。

光通信用デバイス関連製品においては、イーサネットに代表される支線系用光トランシーバQSFP28を製品化するとともに、次世代の400Gbpsに対応した製品開発も進めております。数百kmから数千kmの幹線系対応として、コヒーレント伝送デバイスを開発しております。波長多重技術を用いることにより、数Tbps伝送を可能とします。構成要素である波長可変半導体レーザ、光多値位相変調デバイス、ホモダイン光受信デバイスは、化合物半導体を用いた光集積回路技術を用いて製品化しつつあります。それらを用いた光トランシーバの開発も進めております。ごく短距離の数十mの建屋内配線市場においても、100Gbps以上の大容量化が検討されており、キーデバイスとなる超低消費電力で光学実装性の優れた面発光型半導体レーザ(VCSEL)の高速化・多波長化を進めております。

無線通信デバイス関連製品では、世界に先駆けて高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しました。本製品は低消費電力化やLTEへの移行など市場の要請に合致し、国内外で既存のSi(シリコン)トランジスタからGaNへの移行を牽引しました。現在は、LTEに次ぐ第5世代移動通信システム用途を見据え、更なる効率改善を図るとともに、微細化技術開発を推し進めることにより、20GHzから80GHz帯までを視野に入れた高周波/広帯域化を実現する計画としております。

さらに、レーダ用途を目指し10GHz帯での高出力・高効率化を図るとともに、20GHz帯、80GHz帯(ミリ波帯)でのMMIC(Microwave Monolithic IC)の開発を進めております。これらのデバイスは、小型化、経済化を目指した、当社独自の3次元配線技術及びWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)の特徴を生かして、適用領域の拡大、新規分野への展開を進めてまいります。

これらデバイス技術の蓄積を活かし、ライフサイエンス、環境関連、インフラや工業プロセス管理など多様な分野への応用が期待できる高感度な近赤外イメージセンサ(~3μm)の実用化開発を行うとともに、さらなる用途拡大を目指し、中赤外領域(3μm~)の量子カスケードレーザ(QCL-LD)、超格子型イメージセンサの開発も進めております。

化合物半導体では、情報通信を支える高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。また、青紫色レーザダイ

オード、白色LEDやパワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、それら材料からデバイス技術の研究とその応用製品の開発も行っております。これまでの発光特性と高周波特性に着眼した材料開発に加え、さらに、全く新しい機能を有する光デバイスや電子デバイス用途の半導体材料の開発にも取り組んでおります。

ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。

有線通信システム関連では、10G-EPON等、より高速化した次世代システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯基地局向けの高周波増幅器モジュールの開発と第5世代移動通信システム向けの新製品の検討に取り組んでおります。交通インフラ関連では、信号制御アルゴリズム、自動走行支援を含む高度走行支援システムの開発を行っております。

当事業に係る研究開発費は18,328百万円であります。

 

(3) エレクトロニクス関連事業

マイクロ・ナノテクノロジーを駆使して、広範な新材料や部品の開発を行っております。

エレクトロニクス関連部材では、独自の液相還元プロセスで合成した金属ナノ粒子粉末を用いた回路形成用ナノインク及び高精度印刷技術による微細回路基板を開発しており、携帯電子機器用の次世代微細回路基板への応用開発を行っております。さらに、固有の絶縁材料技術や接着材料技術を活用した車載向けの高耐熱性電子回路基板、配線部材の開発にも取り組むとともに、金属材料とセラミックスを複合化した電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微細多孔質フッ素樹脂膜の開発にも注力しております。

当事業に係る研究開発費は3,301百万円であります。

 

(4) 環境エネルギー関連事業

超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。

超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。2015年4月、従来と比較し、約50~60%の引張り強度の向上を実現した400メガパスカル級の超高強度超電導線材の開発に成功し、販売を開始しました。これにより、核磁気共鳴(NMR)装置などの超高磁場マグネットへの適用範囲が広がりました。

超電導ケーブル交流送電システムでは国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」に参画し、2012年10月から2013年12月まで1年以上にわたり、日本初の系統連系試験を成功裏に完了いたしました。また、2014年6月から本プロジェクトの後継プロ

ジェクトとして「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」に参画し、実用化への研究開発に取り組んでおり、2017年3月末から系統接続を再開し、約1年間問題なく運転し、信頼性が実証できました。

産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、2014年7月に小型軽量冷凍機冷凍型マグネットシステム(±6T-Φ70mm)の販売を開始し、磁気特性評価装置への適用、さらに産業界での実用化、用途開拓に注力しているところであります。またビスマス系とは異なる次世代の超電導線材の研究も行っており、結晶配向した金属基板、中間層、超電導層からなる薄膜超電導線の特性向上にも注力しております。

次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、2011年6月から、当社大阪製作所において、複数の自然エネルギー発電装置と小型レドックスフロー電池(蓄電池)等を直流電力ケーブルで連結したマイクロスマートグリッドシステムの実証試験を実施しております。2012年7月から、当社横浜製作所において、メガワット級の出力・容量を有するレドックスフロー電池と出力100kWの集光型太陽光発電(CPV)から成る大規模蓄発電システムを開発し、実際の工場電力運用の中で、製品化のための実証運転を実施しております。2015年12月からは、北海道電力㈱南早来変電所において、大型蓄電システム(レドックスフロー電池、容量60MWh)の実証試験を実施しております(経済産業省の大型蓄電システム緊急実証事業に北海道電力㈱と共同で応募し、採択されたものであります)。2016年11月には、モロッコ王国において出力1MWのCPVプラント運用実証を開始しました。2017年3月には、米国カリフォルニア州において容量8MWhのレドックスフロー電池の実証運転を開始しました(これは当社がNEDOより実証委託を受け、実施するものであります)。また、電力需給逼迫時に電力使用量の調整を行うデマンドレスポンス自動化サーバ、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視システム、非常用の小型蓄電池やパワーコンディショナ等の開発にも注力しております。

蓄電池分野では、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの高性能化に貢献する集電材料として、当社独自の溶融塩めっき技術を用いた金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、量産化に向けた生産技術開発に注力するとともに、ニーズの調査、顧客での評価を進めております。また、EVやHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モータ等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モータの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。

住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、監視・エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、異常通報装置、超電導冷却システム、蓄電池システム、バーチャルパワープラント、クラウド活用など、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。

日新電機㈱では、電力機器分野をはじめ、新エネルギー・環境分野及びライフサイクルエンジニアリング分野にかかわる技術開発・製品開発並びにソリューション開発に注力しております。電力機器分野においては、縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、太陽光発電をはじめ、多様な分散型電源の増加を受けて、電力品質を維持・向上する技術研究や製品開発並びにシステム開発に取り組みました。ビーム・真空応用分野では、新たなコーティング薄膜や用途拡大に向けた研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置などの次世代製品の研究開発に注力しております。また新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電用パワーコンディショナの縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発に注力すると共に、エネルギー管理システム(EMS)関連やIoT関連の技術研究を進めております。

当事業に係る研究開発費は16,057百万円であります。

 

(5) 産業素材関連事業他

超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、セラミックスや鉄系焼結部品に関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。

切削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野を重点ターゲットとし、革新的な粉末冶金技術、コーティング技術、超高圧技術により超硬合金製品、CBN製品の研究開発を進めております。

ダイヤモンドでは、15万気圧、2000℃以上の新しい超高圧技術と独自の新プロセスにより合成した、数十nmサイズの超微細粒よりなる高硬度ナノ多結晶ダイヤモンドが従来のダイヤモンドを大きく凌駕する機械的特性を有することを実証し、次世代の高性能精密加工用工具として実用化開発に注力しております。

焼結部品の関連では、自動車の電動化ニーズに対応した小型・高出力モータの実現に貢献する磁気特性と造形性に優れた圧粉軟磁性材料の開発や、形状自由度を活かして新規のモータやセンサに貢献する圧粉磁石の開発に注力しております。

当事業に係る研究開発費は8,283百万円であります。

 

今後の成長を担う新規分野への挑戦として、ライフサイエンス分野では医療機器及び健康介護の分野向けの製品開発を進めております。また次世代の電線材料として期待される導電性カーボン単結晶線の長尺化にも独自製法で取り組んでおります。

そのほか、当社の持つ材料技術を活かして、省エネルギー化のために期待されているSiCパワーデバイスを基板から一貫して開発しております。2017年度はデバイスの高効率生産のために必要なSiC高品質エピ基板を、当社のエピタキシャル成長技術を活かして量産化いたしました。またデバイスについては、国立研究開発法人 産業技術総合研究所と協力してつくばに専用6インチ・ラインを立ち上げ、事業化に向けた活動を展開しております。

 

以上の5分野他の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。これに加え、佐賀県が運営する九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設し、放射光施設を利用した最先端の原子レベルの解析を行い、製品開発の加速や知的財産権の強化などに利用しております。また、高度な計算機シミュレーションを用いたCAE技術の開発にも注力しており、生産プロセスの改善、革新と多くの製品の信頼性に直結する強度解析など、各種新製品設計にCAE技術を活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。

生産技術分野では、IoTに向けた高度なサービス実現の基盤となる省電力無線センサ技術、AI・データ分析技術を用いた設備故障の予兆診断等の研究にも取り組んでおります。

 

当社は大阪製作所内の研究本館「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、さらなる事業の成長を目指します。また、グループ全体として、これらの研究開発成果を早期に確保すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護に関する研究にも注力してまいります。