文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としております。こうした基本理念を堅持しつつ持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させていくためには、適正なコーポレート・ガバナンスに基づき経営の透明性、公正性を確保するとともに、イノベーションをキーワードに、保有する経営資源を最大限活用して成長戦略を果断に立案・実行していくことが重要であり、以下の基本的な考え方に沿って、コーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組んでまいります。
(ⅰ)株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行う。
(ⅱ)株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。
(ⅲ)会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。
(ⅳ)取締役会の戦略等基本方針決定機能及び経営の監督機能を重視し、それらの機能の実効性が確保される体制の整備及び取締役会の運営に注力する。業務執行については、権限及び責任を明確化し、事業環境の変化に応じた機動的な業務執行体制を確立することを目的として、執行役員制並びに事業本部制を導入している。また、経営の健全性確保の観点から、監査役監査の強化を図ることとし、独立社外監査役と常勤の監査役が内部監査部門や会計監査人と連携して適法かつ適正な経営が行われるよう監視する体制としている。
(ⅴ)持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で、株主との建設的な対話を行う。
[住友事業精神]
住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、1891年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。
営業の要旨 ※ここでは、住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋しました。
第一条 我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし
第二条 我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、
苟も浮利に趨り、軽進すべからず
この他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。
[住友電工グループ経営理念] ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)
住友電工グループは、
・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。
・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。
・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。
・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。
・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。
(2) 会社の対処すべき課題
今後の経済情勢は、世界経済は米国の通商政策の影響や中国経済の先行き、欧州やアジアでの政治的・地政学的リスクなど予断を許さない状況であり、それらの動向によっては企業を取り巻く環境が一段と厳しくなることが懸念されます。日本経済につきましても、海外経済の鈍化に伴い輸出や生産の低迷が長期化する懸念があり、引き続き先行き不透明な展開が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、住友事業精神と住友電工グループ経営理念を事業活動の根底に置き、S(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のさらなる進化と深化に努めてまいります。また、「グロリアス エクセレント カンパニー」を目指して、“総力を結集し、つなぐ、つたえる技術で、よりよい社会の実現に貢献する”というコンセプトのもと2018年度よりスタートした中期経営計画「22VISION」の実現に向け、各事業においては次の施策を進めてまいります。
まず、自動車関連事業では、ワイヤーハーネスをコアとするメガサプライヤーを目指し、高電圧ハーネスや電池周辺部品などの電動車両向け各種製品、軽量で耐久性に優れた高強度アルミハーネス、自動車の電子制御に対応した電装部品や高速通信用コネクタなどの開発・拡販を加速してまいります。また、海外系顧客の一層のシェア拡大に努めるとともに、電動車両や自動運転、コネクテッドカーの普及を見据えてさらなる事業拡大に取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバルでの拡販を図りつつ早期の収益力回復に取り組むとともに、次世代自動車に向けた新製品開発へも取り組んでまいります。
情報通信関連事業では、通信データ量増大や第5世代移動通信システムの整備に伴う光ファイバや次世代光・電子デバイスの需要増への対応に注力するとともに、競争力強化のための一層のコスト低減に取り組んでまいります。また、海底ケーブル用極低損失光ファイバ、超多心光ケーブルや光配線製品などのデータセンター関連製品の拡販、アクセス系ネットワーク機器や新4K放送対応映像配信機器の新製品拡販にも注力し、収益力のさらなる向上を図ってまいります。
エレクトロニクス関連事業では、携帯機器用FPC(フレキシブルプリント回路)について、徹底した生産性改善によるコスト低減に加えグローバルな拡販に引き続き注力してまいります。また、高精細、薄型化、高耐熱等の顧客ニーズに応える新製品の確実な立ち上げや車載市場などへの事業拡大にも取り組んでまいります。さらに、電子ワイヤー、照射チューブについては、高機能配線・高機能部材の多様なニーズを捕捉し引き続きグローバルな拡販を進めてまいります。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルの製造体制強化により一段の生産能力確保やコスト低減を進め、海外の新規大型電力ケーブルプロジェクトや国内の設備更新需要を確実に捕捉して事業拡大に取り組んでまいります。また、このほかにも電動車両向けモーター用平角巻線の拡販を進め、さらに日新電機㈱や住友電設㈱を含めたグループの総合力を活かして、再生可能エネルギーやスマートグリッド関連事業の拡大にも注力してまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、主力の自動車分野に加え、産業機械・建設機械向けやエレクトロニクス分野へのグローバルな拡販を進め、さらには航空機や医療分野での難削材加工用の新製品開発と拡販を強化してまいります。また、焼結部品において各製造拠点での供給能力とコスト競争力の一層の強化に取り組むほか、PC鋼材やばね用鋼線についても、引き続き生産体制の強化と拡販に注力してまいります。
研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、マグネシウム合金製品、水処理製品、超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイスや次世代通信ネットワーク用製品などの事業化に注力するほか、新しい電力・エネルギーインフラの構築に向けてレ
ドックスフロー電池、集光型太陽光発電装置、エネルギーマネジメントシステム関連製品の早期事業化に向けた開発と国内外での実証試験を加速してまいります。また、将来に向けては、自動運転や電動車両に対応する車載機器開発体制の強化や新たな機能を発現する新材料の探索など、社会ニーズを踏まえ当社グループの特徴を活かした新製品の開発に注力するとともに、製造現場でのAI*やIoT*活用による生産革新にも積極的に取り組んでまいります。
* AI :Artificial Intelligence(人工知能)の略。
* IoT:Internet of Thingsの略。パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器に限らず、あらゆる「モノ」
がインターネット等のネットワークに接続されること。
最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。なかでも競争法コンプライアンスは最重要の課題と位置付け、今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸は、2015年に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、当社グループは、「安全安心な社会、環境に優しい社会、快適で成長力のある社会」の実現に向け、総力を結集し、さまざまな価値の提供を目指してまいります。
* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。
信用確実:何よりも信用を重んじること。
不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(政治経済情勢・需要変動等に係るリスク)
当社グループは、自動車関連、情報通信関連、エレクトロニクス関連、環境エネルギー関連及び産業素材関連他の各需要分野にわたって事業を展開しております。また、地域的には、日本の他、米州、アジア、欧州、北アフリカ等に進出しております。このため、当社グループの経営成績、財政状態ならびにキャッシュ・フローは、特定の取引先・製品・技術等に過度に依存する状況にはありませんが、各分野や各地域に特有の需要変動や、技術革新に起因する製品ライフサイクル短期化、また、各国の政治情勢などの影響を受けることがあります。なお、当社グループ製品の多くは、最終消費財の部品や社会インフラ用の素材・システムなどであるため、景気循環の影響を受けることはもとより、顧客の購買政策の変化や設備投資に対する政策的判断などの影響を受けることがあります。
(法律・規制の変更等によるリスク)
当社グループは、日本以外にも世界各地に製造子会社、販売子会社等を有しております。各市場において、下記のように完全には回避することの困難なリスクが存在しており、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
・輸入規制や関税率の引き上げ等により、売上が減少、もしくは原価率が悪化するリスク
・各国の国内及び国際間取引に係る租税制度の変更等により税金コストが上昇するリスク
・外貨規制、ハイパーインフレーション、テロ、新型インフルエンザ等の感染症等により投資資金の回収が不可能となるリスク
(訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に係るリスク)
当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、自動車関連事業分野の競争法違反行為について、一部の自動車メーカーと損害賠償に関する交渉を行っております。
(災害等のリスク)
当社グループは、阪神・淡路大震災や東日本大震災により被害を受けた経験を踏まえ、地震等の防災対策を実施しております。当社グループの拠点の一部は、南海トラフ地震や首都直下地震の想定被災地域あるいは沿岸地域等に存在していることもあり、大規模な地震が発生した場合には津波や液状化等による重大な被害を受ける可能性があります。また、気候変動の影響も含め、近年多発する大型台風などの風水害が今後も発生するおそれがあり、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動全般に影響を及ぼす可能性があります。さらに、グローバルな事業展開を拡大していることから、各国・各地域において地震や風水害等の直接的な被害を受ける可能性があることに加え、顧客の被災や物流網の寸断、電力不足等により生産活動が計画通り進まない可能性があります。
(産業事故等のリスク)
当社グループは、各製造拠点において火災・爆発等の産業事故や環境汚染等の公害事故の発生防止にはできる限りの努力を実施しておりますが、完全な防止は困難であります。当該事故が当社グループの業務及び地域社会に大きな影響を及ぼした場合、これに伴い生ずる社会的信用の失墜、補償等を含む事故対応費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(金利の変動によるリスク)
当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しております。当社グループでは、設備投資のための長期安定的な資金を必要とするため、長期固定金利の長期借入や社債発行による調達が中心となっております。そのため、金利の短期的な変動による影響は比較的受けにくくなっておりますが、金利が中長期的に上昇した場合は、長期借入等による資金調達コストを上昇させ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(為替レートの変動によるリスク)
当社グループは、在外連結子会社及び在外持分法適用関連会社の個別財務諸表を主に現地通貨ベースで作成しており、連結財務諸表の作成時に円換算しております。従って、現地通貨ベースでの業績に大きな変動がない場合でも、円換算時の米国ドル、ユーロ等の為替レート変動が業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは世界各地で製造・販売活動を展開しております(当連結会計年度における海外売上高比率58.5%)。為替予約取引等の手段により主要通貨の短期的な為替変動による影響を最小限にとどめるようにしておりますが、中長期にわたる大幅な為替変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(原材料等の調達に係るリスク)
当社グループは、電線・ケーブルなど銅を主たる原材料とした製品を多数有しております。このうち主要な製品の販売価格については、ロンドン金属取引所の市況価格を反映した銅建値に基づいて決定するという商慣習が普及しており市況価格変動リスクを回避しております。しかし一部の製品についてはこのような価格決定方法を採用していないため、急激な市況価格の上昇は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
その他の非鉄金属、鉄鋼、石油化学製品類等の原材料や副資材の調達についても、当社グループでの共同購買など有利購買活動を強化しておりますが、急激な市況価格の上昇が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、原材料等の在庫について、市場価格の急落が、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。また希少金属については、産地や供給者が限定されていること等により必要量の調達が困難となる可能性があります。さらに、他の原材料や副資材についても、供給者の倒産、自然災害、戦争、テロ、ストライキ、交通機能の障害等により、必要量の調達が困難となる可能性があります。
(保有有価証券の時価の下落によるリスク)
当社グループは、取引先との長期的・安定的な関係の構築・強化や、事業・技術提携の円滑化を主たる目的として、関係取引先等の株式を保有しております。売買目的の株式は保有していないため、株式市況の変動が経営に直接与えるリスクは比較的小さいと考えられますが、大幅な株式市況の悪化は自己資本比率を低下させる可能性があります。
(退職給付債務に係るリスク)
当社グループは、従業員の退職給付債務及び費用について、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づき算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、具体的には、株式や債券等の価格下落に伴う年金資産の時価減少や、長期金利の低下に伴う割引率の引き下げなどにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(知的財産に係るリスク)
当社グループは、特許権、意匠権、その他の知的財産権の取得により自社技術の保護を図ると共に、他社の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。しかし、製品の構造・製造技術の多様化や、海外での事業活動の拡大、それに伴う流通経路の複雑化等により、当社グループの製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。また、各国の法制度や執行状況の相違により、他社が当社グループの知的財産権を侵害しても常に必要な保護が得られるとは限らず、当社グループの製品が十分な市場を確保できない可能性があります。
(情報の流出によるリスク)
当社グループは、事業遂行に関連して多くの個人情報や機密情報を有しております。
これらの情報の秘密保持については、最大限の対策を講じておりますが、予期せぬ事態により、情報が外部に流出する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループのイメージの低下、損害賠償や規制当局による金銭的な賦課の発生などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(製品およびサービスの欠陥によるリスク)
当社グループは、所定の品質基準に基づき、製品およびサービスの品質保持に万全の注意を払っておりますが、予期せぬ事態により、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
また、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度の数値は当該会計基準等を遡って適用した後の数値となっております。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計方針」に記載しております。
(注)本報告書の「第2 事業の状況」から「第5 経理の状況」までの金額には、特に記載のない限り消費税及び地方消費税は含まれておりません。
(2) 経営成績
① 経営成績
当連結会計年度の日本経済は、良好な雇用環境や設備投資を中心とした内需の下支えにより前半は底堅く推移したものの、後半は中国や欧州経済の減速から輸出や生産が弱含む展開となりました。世界経済につきましても、中国での米中貿易摩擦や自国経済の先行き不透明感から消費や投資を控える動きが他国経済へも影響を与え、徐々に減速傾向が強まる展開となりました。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、上期は概ね堅調に推移したものの、2018年後半から中国や欧州における自動車生産の減少が顕著となり、スマートフォンの世界的販売不振や超硬工具の一部市場での需要減退もあり次第に厳しさが増す状況となりました。このような環境のもと、当連結会計年度の連結決算は、売上高は3,177,985百万円(前連結会計年度3,082,247百万円、3.1%増)と前連結会計年度比で増収を確保いたしましたが、利益面では、グローバルでのコスト低減を推進したものの、将来に向けた研究開発費の増加に加えて、自動車事業における価格低下や米中間追加関税などのコスト上昇要因により、営業利益は166,260百万円(前連結会計年度173,139百万円、4.0%減)と前連結会計年度に比べ減益、営業利益率は5.2%(前連結会計年度5.6%、0.4ポイント低下)となりました。営業外収益は、受取配当金の増加などにより2,156百万円増の45,275百万円、営業外費用は、支払利息の増加などにより1,638百万円増の22,886百万円となり、経常利益は188,649百万円(前連結会計年度195,010百万円、3.3%減)と前連結会計年度に比べ減益となりました。特別利益では退職給付信託返還益8,905百万円を計上しました。特別損失では、固定資産除却損3,094百万円、減損損失10,715百万円に加え、事業構造改善費用2,357百万円を計上し、合計では16,166百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は181,388百万円となりました。ここから法人税等51,181百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益12,144百万円を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は118,063百万円(前連結会計年度120,328百万円、1.9%減)と前連結会計年度に比べ減益となりました。
② 生産、受注及び販売の実績
当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「(5) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に関連付けて示しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、退職給付信託の一部返還などにより退職給付に係る資産が減少した一方、たな卸資産の増加や設備投資による有形固定資産の増加により、前連結会計年度末に比べ53,360百万円増加し、3,053,263百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、主に借入金の増加により、前連結会計年度末に比べ41,133百万円増加し1,276,950百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、配当金の支払や退職給付に係る調整累計額の減少などがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、前連結会計年度末に比べ12,227百万円増加し1,776,313百万円となりました。自己資本比率は50.8%と、前連結会計年度末対比0.5ポイント低下しております。
(4) キャッシュ・フロー
① キャッシュ・フロー
まず、営業活動によるキャッシュ・フローで177,656百万円の資金を獲得(前連結会計年度比61,917百万円の収入減少)しました。これは、税金等調整前当期純利益181,388百万円と減価償却費148,916百万円との合計、すなわち事業の生み出したキャッシュ・フローが330,304百万円あり、これに運転資本の増減などを差し引いた結果であります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、184,601百万円の資金を使用(前連結会計年度比10,336百万円の支出増加)しました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出178,046百万円などがあったことによるものであります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・
キャッシュ・フローは、6,945百万円のマイナス(前連結会計年度は65,308百万円のプラス)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、4,324百万円の資金の減少(前連結会計年度は66,795百万円の資金の減少)となりました。これは、借入金の増加額から、配当金の支払を差し引いたことなどによるものであります。
以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より11,235百万円(6.2%)減少し168,873百万円となりました。また、当連結会計年度末における有利子負債は、前連結会計年度末より48,178百万円増加し540,745百万円となり、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、59,413百万円増加し371,872百万円となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な設備資金や運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入や社債発行等により調達する予定であります。
なお、当社は、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「AA(長期)、J-1+(短期)」、格付投資情報センター(R&I)より「AA-(長期)、a-1+(短期)」の格付を取得しております。また、金融機関とコミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。
(5) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
自動車関連事業は、ワイヤーハーネスや自動車電装部品、防振ゴムで積極的に拡販を進め、売上高は1,709,426百万円と77,474百万円(4.7%)の増収となりました。営業利益は価格低下や将来に向けた研究開発費の増加に加えて、米中間追加関税や防振ゴムにおける収益悪化もあり、84,669百万円と12,136百万円の減益となりました。売上高営業利益率は5.0%と0.9ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ33,361百万円増加の1,387,003百万円となりました。
情報通信関連事業は、光ファイバ・ケーブルなどで拡販を進めたものの、一部事業を他セグメントへ移管した影響などにより、売上高は208,420百万円と11,906百万円(5.4%)の減収となりました。営業利益は生産性改善によるコスト低減を推進したものの競争環境激化による価格低下などにより16,398百万円と2,205百万円の減益となりました。売上高営業利益率は7.9%と0.5ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ39,797百万円減少の243,908百万円となりました。
エレクトロニクス関連事業は、電子ワイヤーや照射チューブで拡販を進めたものの、携帯機器用FPCの減少などにより、売上高は228,933百万円と17,386百万円(7.1%)の減収となりました。営業利益は徹底したコスト低減の取組みなどによる採算改善により、7,016百万円と1,606百万円の増益となりました。売上高営業利益率は3.1%と0.9ポイント上昇しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ477百万円減少の180,258百万円となりました。
環境エネルギー関連事業は、電力用電線ケーブルの拡販を進めたことに加え、住友電設㈱における電気工事案件の増加などもあり、売上高は759,786百万円と41,814百万円(5.8%)の増収となり、営業利益は30,062百万円と5,942百万円の増益となりました。売上高営業利益率は4.0%と0.6ポイント上昇しました。なお、工事・プラント受注高は287,059百万円と、前連結会計年度比18,670百万円(6.1%)減少しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ45,589百万円増加の678,351百万円となりました。
産業素材関連事業他は、超硬工具を中心に拡販を進め、売上高は357,824百万円と14,698百万円(4.3%)の増収となり、営業利益は28,193百万円と22百万円の増益となりました。売上高営業利益率は7.9%と0.3ポイント低下しました。
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ29,384百万円増加の647,964百万円となりました。
なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。
(6) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因や当該要因への対応については、「第2 事業の状況 1.(2) 会社の対処すべき課題」をご参照下さい。
(7) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「売上高」、「営業利益」、「投下資産営業利益率(ROIC)*」及び「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は3,177,985百万円(前連結会計年度比95,738百万円増)、「営業利益」は166,260百万円(前連結会計年度比6,879百万円減)、「投下資産営業利益率(ROIC)」は7.3%(前連結会計年度比0.6ポイント低下)、「自己資本当期純利益率(ROE)」は7.6%(前連結会計年度比0.5ポイント低下)となりました。
なお、2018年5月25日公表の当社中期経営計画「22VISION」において、2020年度の中間目標として、売上高3兆4,000億円、営業利益2,000億円、ROIC8.5%以上、ROE8%以上を、また、2022年度の最終目標として、売上高3兆6,000億円、営業利益2,300億円、ROIC9%以上、ROE8%以上をそれぞれ掲げております。これらの目標の達成に向け、収益基盤の強化及び資本効率の改善に取り組んでまいります。
* 投下資産営業利益率(ROIC)=営業利益/(総資産-無利子負債)
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当社及び連結子会社は経営理念にあります「技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます」という理念の下、伸長分野に焦点を合わせ、オリジナリティがありかつ収益力のある新事業・新製品の開発に努めております。また、将来の技術ニーズを踏まえ、当社グループの次代の成長を担う研究テーマの発掘・育成にも積極的に取り組んでおります。
自動車関連事業、情報通信関連事業、エレクトロニクス関連事業、環境エネルギー関連事業、産業素材関連事業他の各事業分野における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりであります。
また、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1) 自動車関連事業
ワイヤーハーネス及び車載エレクトロニクス機器については、当社、住友電装㈱及び両社の共同出資による㈱
オートネットワーク技術研究所を中心に、当社固有の材料技術・解析技術を活かして安全・快適・環境のニーズに対応した新製品の開発を行っております。
ワイヤーハーネスについては、次世代車載システムにパワー供給や情報伝送するためのハーネスアーキテクチャを構築し、システム設計を行うとともに、それに必要な要素技術の開発を進めております。また環境対応として
ハーネスの軽量化に取り組んでおり、銅に比べ軽量なアルミを使ったワイヤーハーネスの量産、さらに高強度な電線の開発によるエンジンルーム等への適用範囲拡大を進めております。市場規模が拡大してきた電気自動車
(EV)・ハイブリッド自動車(HEV)用高圧ハーネスやコネクタ、バッテリー内配線モジュールの開発等にも取り組んでおります。車載エレクトロニクス機器に関しては、電源系、情報系のネットワーク化に対応すべく、電源制御機器や半導体デバイス、ボディ制御ECU、ゲートウェイなど、高速大容量通信に適用可能な次世代車載
LAN(Local Area Network)製品の開発を進めております。さらに当社事業であるエネルギーや通信の社会基盤と車が繋がる変革に対応した新製品・新技術の開発にも取り組んでおります。
また、交通インフラ関連では、信号制御アルゴリズム、自動走行支援を含む高度走行支援システムの開発を行っております。
一方、新製品の開発効率化や高いレベルの品質確保に向け、要素技術開発や信頼性確保に不可欠な試験・分析・評価・解析技術の開発を推進しております。環境試験装置や分析装置等の評価設備の充実を図るとともに、CAE(Computer-Aided Engineering)技術を用いたシミュレーション技術も充実させております。
住友理工㈱では、自動車用品分野においては、「新規顧客開拓」を推進する体制を整え、「防振ゴム」「ホース」「ウレタン製品(制遮音品・内装品)」の既存3分野以外の自動車用新商品を開発・育成していくために、
2016年8月に設置した「自動車新商品開発センター」において、体圧を検知する「スマートラバー(SR)センサ」を自動車のシートに埋め込み、呼吸や心拍などのバイタル情報によってドライバーの異変を検知、危険を回避する乗員状態検知機能の実用化に向けた開発や、電気自動車(EV)及び燃料電池自動車(FCV)向けの環境対応製品の技術開発などに引き続き取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は
(2) 情報通信関連事業
光通信関連製品、通信用デバイス・化合物半導体材料、ネットワーク・システム製品などの分野において、総合的に研究開発を行っております。
光通信関連製品では、光ファイバ通信のさらなる高速化・長距離化に向けて、海底ケーブル用途の低損失低非線形光ファイバの研究開発を進め、生産性と品質のさらなる向上に取り組んでおります。
また、伝送容量の飛躍的な拡大に向けて、1本の光ファイバに複数本のコアを形成するマルチコア型光ファイバの研究開発を進めており、その実用化に不可欠な光増幅や接続技術の開発に取り組んでおります。
一方で、データセンタにおける情報機器内や情報機器間の高速大容量伝送に適した光配線製品を、従来のテレコム光通信で培った技術を応用して開発しております。特に、データセンタ内で使用される新型光コネクタや情報機器内の高密度光配線を実現する光部品などの製品開発と市場開拓を進めております。
そのほか、光ファイバ製造技術を活用した新材料の開発、光ファイバ実装・光学設計などの基盤技術を活用した新製品の開発を進めており、自動車、エレクトロニクス、ライフサイエンスなどの新たな分野への光技術の展開を図っております。
デバイス関連分野では、数十mの短距離伝送から数千kmの長距離伝送に対応するハイエンドの光通信用デバイス及び高効率・高出力特性を有する無線通信用電子デバイス技術を活かして、新製品をいち早く市場に投入することにより、事業拡大に努めております。
光通信用デバイス関連製品においては、イーサネットに代表される支線系用光トランシーバQSFP28を製品化するとともに、次世代の400Gbpsに対応した製品開発も進めております。数百kmから数千kmの幹線系対応として、コヒーレント伝送デバイスを開発しております。波長多重技術を用いることにより、数Tbps伝送を可能といたします。構成要素である波長可変半導体レーザ、光多値位相変調デバイス、ホモダイン光受信デバイスは、化合物半導体を用いた光集積回路技術を用いて製品化しており、更なる高機能化を目指した開発を進めております。それらを用いた光トランシーバの開発も進めております。ごく短距離の数十mの建屋内配線市場においても、100Gbps以上の大容量化が検討されており、キーデバイスとなる超低消費電力で光学実装性の優れた面発光型半導体レーザ(VCSEL)の高速化・多波長化を進めております。
無線通信デバイス関連製品では、世界に先駆けて高効率・高出力のGaN(窒化ガリウム)トランジスタを開発し、携帯基地局用途に製品化しました。本製品は低消費電力化やLTEへの移行など市場の要請に合致し、国内外で既存のSi(シリコン)トランジスタからGaNへの移行を牽引しました。現在は、LTEに次ぐ第5世代移動通信システム用途を見据え、更なる効率改善を図るとともに、微細化技術開発を推し進めることにより、20GHzから80GHz帯までを視野に入れた高周波/広帯域化を実現する計画としております。
さらに、レーダ用途を目指し10GHz帯での高出力・高効率化を図るとともに、20GHz帯、80GHz帯(ミリ波帯)でのMMIC(Microwave Monolithic IC)の開発を進めております。これらのデバイスは、小型化、経済化を目指した、当社独自の3次元配線技術及びWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)の特徴を生かして、適用領域の拡大、新規分野への展開を進めてまいります。
これらデバイス技術の蓄積を活かし、ライフサイエンス、環境関連、インフラや工業プロセス管理など多様な分野への応用が期待できる高感度な近赤外イメージセンサ(~3μm)の実用化開発を行うとともに、さらなる用途拡大を目指し、中赤外領域(3μm~)の量子カスケードレーザ(QCL-LD)、超格子型イメージセンサの開発も進めております。
化合物半導体では、情報通信を支える高速通信用の光デバイスや無線通信用電子デバイスなどに用いられるインジウムリン及びガリウムヒ素系エピタキシャルウエハの新製品開発を進めております。また、青紫色レーザダイ
オード、白色LEDやパワーデバイス等に応用されるGaN基板の高品質化に加え、それら材料からデバイス技術の研究とその応用製品の開発も行っております。これまでの発光特性と高周波特性に着眼した材料開発に加え、さらに、全く新しい機能を有する光デバイスや電子デバイス用途の半導体材料の開発にも取り組んでおります。
ネットワーク・システム関連分野では、情報通信技術の革新により、安全・安心・快適かつ持続可能な社会の実現を目指した情報通信機器の研究開発を推進しております。
有線通信システム関連では、10G-EPON等、より高速化した次世代システムの研究開発に、無線通信システム関連では、携帯基地局向けの高周波増幅器モジュールの開発と第5世代移動通信システム向けの新製品の検討に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は
(3) エレクトロニクス関連事業
当社固有のマイクロ・ナノテクノロジーをベースに、FPC、電子ワイヤー製品、照射架橋製品、ふっ素樹脂製品など広範な新材料や部品の開発を行っております。FPCでは、携帯機器等向けの次世代微細回路製品や車載向けの高耐熱性電子回路製品、配線部材の開発に取り組んでおります。また、金属材料とセラミックスを複合化した電子デバイス用の低線膨張率の高放熱素材、独自の多孔化技術を適用した半導体用途向けの微細多孔質ふっ素樹脂膜の開発にも注力しております。
当事業に係る研究開発費は
(4) 環境エネルギー関連事業
超電導や次世代送電網の分野でのネットワーク技術を活用したエネルギーソリューション事業など、新しい分野への進出を図るとともに、蓄電池などエネルギー分野での積極的な開発を推進しております。
超電導分野では、ビスマス系高温超電導線材の特性と量産性を大幅に向上させ、世界各国のケーブルプロジェクトやモータ、マグネット用などに線材を納入するなど、商業ベースでの販売本格化を図りつつあります。2015年4月、従来と比較し、約50~60%の引張り強度の向上を実現した400メガパスカル級の超高強度超電導線材の開発に成功し、販売を開始しました。これにより、核磁気共鳴(NMR)装置などの超高磁場マグネットへの適用範囲が広がりました。
産業応用では超電導マグネットシステムの開発を進めており、2014年7月に小型軽量冷凍機冷凍型マグネットシステム(±6T-Φ70mm)の販売を開始し、磁気特性評価装置への適用、さらに産業界での実用化、用途開拓に注力しているところであります。またビスマス系とは異なる次世代の超電導線材の研究も行っており、結晶配向した金属基板、中間層、超電導層からなる薄膜超電導線の特性向上にも注力しております。
次世代送電網の分野では、自然エネルギーの導入、省エネルギー、電力網の分散管理といった社会ニーズに対応すべく、2011年6月から、当社大阪製作所において、複数の自然エネルギー発電装置と小型レドックスフロー電池(蓄電池)等を直流電力ケーブルで連結したマイクロスマートグリッドシステムの実証試験を実施しております。2012年7月から、当社横浜製作所において、メガワット級の出力・容量を有するレドックスフロー電池と出力100kWの集光型太陽光発電(CPV)から成る大規模蓄発電システムを開発し、実際の工場電力運用の中で、製品化のための実証運転を実施しております。2015年12月からは、北海道電力㈱南早来変電所において、大型蓄電システム(レドックスフロー電池、容量60MWh)の実証試験を実施しております(経済産業省の大型蓄電システム緊急実証事業に北海道電力㈱と共同で応募し、採択されたものであります)。2016年11月には、モロッコ王国において出力1MWのCPVプラント運用実証を開始しました。2017年3月には、米国カリフォルニア州において容量8MWhのレドックスフロー電池の実証運転を開始しました(これは当社がNEDOより実証委託を受け、実施するものであります)。また、電力需給逼迫時に電力使用量の調整を行うデマンドレスポンス自動化サーバ、宅内の電力使用量を最適化するシステム(HEMS)、電力線通信(PLC)によるメガソーラー監視システム、非常用の小型蓄電池やパワーコンディショナ等の開発にも注力しております。
蓄電池分野では、リチウムイオン電池やキャパシタなどの蓄電デバイスの高性能化に貢献する集電材料として、当社独自の溶融塩めっき技術を用いた金属多孔体「アルミセルメット」を開発しており、量産化に向けた生産技術開発に注力するとともに、ニーズの調査、顧客での評価を進めております。また、EVやHEV等の環境対応車の分野では、固有の高分子材料の合成技術を駆使し、駆動モータ等に適用する高性能平角巻線の開発にも取り組んでおり、モータの高性能化に貢献する薄肉皮膜で高度な電気絶縁性を発揮する次世代平角巻線の開発に注力しております。
住友電設㈱では、社会や顧客の多様化するニーズに応えるべく、太陽光発電システム用保守監視システム、監視・エネルギー管理等のビル・マネジメントシステム、工場向け統合セキュリティシステム、異常通報装置、超電導冷却システム、バーチャルパワープラント、クラウド活用など、最新技術、情報化技術を活用し、新技術、新工法、各種システムの開発に取り組んでおります。
日新電機㈱では、電力機器分野をはじめ、新エネルギー・環境分野及びライフサイクルエンジニアリング分野にかかわる技術開発・製品開発並びにソリューション開発に注力しております。電力機器分野においては、縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発と共に、太陽光発電をはじめ、多様な分散型電源が導入拡大される社会を支えるための技術研究や製品開発、並びにシステム開発に取り組んでおります。ビーム・真空応用分野では、新たなコーティング薄膜や用途拡大に向けた研究開発、半導体製造用イオン注入装置や電子線照射装置などの次世代製品の研究開発に注力しております。また新エネルギー・環境分野においては、太陽光発電用パワーコンディショナの縮小化及び環境負荷の低減を狙いとした製品開発に注力すると共に、エネルギー管理システム(EMS)関連やIoT関連の技術研究を進めております。
当事業に係る研究開発費は
(5) 産業素材関連事業他
超硬合金、ダイヤモンド、立方晶窒化硼素、コーティング薄膜、特殊鋼線、鉄系焼結部品やセラミックスに関する当社固有の材料技術とプロセス技術を駆使し、切削用工具や超精密加工用工具、各種自動車機構部品・機能部品、家電部品等の開発を進めております。
切削用工具開発においては、今後、市場が伸長していく航空機分野を重点ターゲットとし、計算科学を活用した硬質合金の開発、コーティング技術開発を進めております。また切削加工のIoT化に向け、切削工具に各種センサを内蔵させたスマートツールの開発にも取り組んでおります。
ダイヤモンドでは、超精密加工や高品位加工用工具素材として使用することを目的として、独自の原料技術や超高圧技術で機械特性を向上させた単結晶ダイヤモンド素材や新材料の開発及び高硬度素材の精密加工技術の開発に注力しております。
焼結部品の関連では、粉末冶金技術の特長である均質性や組成自由度を活かした高強度焼結ギアの開発や、自動車の電動化ニーズに対応し磁気特性と造形性に優れた圧粉軟磁性材料を使った小型・高出力モータの開発に注力しております。
当事業に係る研究開発費は
今後の成長を担う新規分野への挑戦として、水素エネルギー社会を実現する技術開発、ライフサイエンス分野では医療機器及び健康介護の分野向けの製品販売を開始しております。また次世代の電線や高強度材料として期待されるカーボンナノチューブの長尺化にも独自製法で取り組んでおります。新しい軽量材料として当社が世界で初めて開発に成功した、アルミ9%と亜鉛1%を添加したマグネシウム合金板材は、すでに大手のパソコンメーカーの筐体での採用が進んでいるほか、輸送機分野での需要拡大に向けた取り組みを進めております。
そのほか、当社の持つ材料技術を活かして、省エネルギー化のために期待されているSiCパワーデバイスを、結晶(基板)から、エピ、デバイスまで一貫して開発しております。2018年度は、前年度に販売開始しましたSiC高品質エピ基板の品質を更に改善し、無欠陥領域率を95%にまで高め、量産活動を推進しております。またデバイスについては、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と協力してつくばに立ち上げた専用6インチ・ラインで製造したサンプルの販売を開始するとともに、産総研との共同研究で、世界最小のオン抵抗をもつトランジスタの開発にも成功し、今後の製品拡大に向けた活動を行っております。
以上の5分野他の研究開発及びグループ全体の生産、品質などを支える解析技術の分野では、ナノスケールの構造解析や、ポリマーの分子構造解析など、世界トップレベルの分析を行っております。これに加え、九州シンクロトロン光研究センターに当社グループ専用のビームラインを建設し、放射光施設を利用した世界トップ水準の原子スケール解析を実現し、製品開発の加速や知的財産権の強化などに利用しております。また、高速計算機を用いた高度な計算機シミュレーション技術の開発にも注力しており、生産プロセスの改善、革新と多くの製品の信頼性に直結する強度解析、電磁波解析など、各種新製品設計に活用することで他社との差別化につながる解析技術の開発を推進しております。その他、中国・蘇州市に中国解析センターを設置し、当社グループのグローバル展開を支えております。
生産技術分野では、IoTに向けた高度なサービス実現の基盤となる省電力無線センサ技術、AI・データ分析技術を用いた設備故障の予兆診断等の研究にも取り組んでおります。
当社は大阪製作所内の研究本館「WinD Lab」を研究・開発活動の中核とし、海外についても米国カリ
フォルニア州のICS(Innovation Core SEI)等を拠点として、さらなる事業の成長を目指します。また、グ
ループ全体として、これらの研究開発成果を早期に確保すべく努めるとともに、企業の社会的責任を自覚し、省エネ、省資源、環境保護に関する研究にも注力してまいります。