文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、“つなぐ”テクノロジーを通じて「顧客価値創造型」企業を目指します。
当社では、2016年度を初年度、2020年度を最終年度とする2020中期経営計画を策定しており、基本方針として下記の3点を掲げております。
・収益率を重視し、健全な成長を図る。
・顧客価値創造型企業を目指し、新陳代謝を加速して進める。
・コーポレートガバナンスを確立し、併せて環境・社会側面での貢献に取り組み、企業価値の増大を図る。
(2) 経営戦略等
前述の2020中期経営計画における成長戦略として、下記の4点を推進してまいります。
①戦略顧客の深耕…戦略顧客に密着することで、更なる事業の成長を図るとともに、新たな事業機会を捉える。
②新規事業創出のスピードアップ…新規事業推進の体制強化を図る。自動車関連・産業用機器・医療機器を重点分野と位置づけ注力する。
③オープンイノベーション…ポートフォリオ、バリューチェーンのミッシングピースを補い、新たな顧客価値を生む。技術開発、事業開発、事業の成長のスピードアップを図る。
④経営改革・事業構造改革…コーポレートガバナンス・コードへの対応を図るとともに、多様化した事業に対する意思決定の質・スピードの向上、経営基盤の強化を図る。
(3) 目標とする経営指標
当社は継続的な収益性の向上を経営の優先課題の一つとして位置づけており、2020年度に売上高9,000億円、営業利益率7.0%以上、ROE10.0%以上、D/Eレシオ40:60(0.66倍)を達成することを中期的な経営目標として掲げております。
(4) 経営環境
経済環境としては、米中の通商問題の動向が世界経済に与える影響や、中国等の海外経済の動向と政策に関する不確実性等に留意が必要な経済環境となっております。
エネルギー・情報通信分野においては、国内はインフラの成熟化により、大きな需要の伸びが見込めない状況にあります。また、海外については、情報通信分野において、拡大を続けていた中国における光ファイバ需要の伸びが鈍化する一方、他地域は堅調を維持するなど需要環境に変化が見られます。
エレクトロニクス分野においては、当社FPC(フレキシブルプリント配線板)、コネクタが多く使用されているスマートフォンの世界的な需要について、堅調であった主要顧客の需要動向に変化が見られる状況です。
自動車分野においては、世界の自動車生産台数については減速感が見られますが、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)が主要なテーマとなるなど、自動車は100年に一度の革新期にあり、新エネルギー車の需要拡大、自動車の電子化・情報化が一層進展するものと見込まれます。
(5) 対処すべき課題
①当社製品の品質管理に関わる不適切事案への対応
当社が2018年8月31日付で公表いたしました当社グループの製品の一部における品質管理に関わる不適切な事案(以下、「品質不適切事案」といいます。)につき、外部法律事務所に委託して行った調査結果を踏まえた再発防止策は以下のとおりです。当社といたしましては、このような事態を二度と起こさないとの断固たる決意をもって、急務である品質不適切事案の再発防止策の徹底及び失った信頼の回復に取り組んでまいります。
当社は、他社における品質問題の公表を契機として、二度にわたる当社グループ全体における品質管理体制の確認のため社内での点検・確認作業を行った結果、品質管理に関わる不適切な取扱い(以下、「品質不適切行為」といいます。)の事例を確認しました。当社では、2018年8月、客観的かつ公平な調査を徹底的に行うため、外部法律事務所に既存事案の調査(以下、「本件調査」といいます。)を依頼、この調査の過程において、この事例の中の一部にJISマークを表記した製品についてJIS認証維持審査における品質管理体制の変更手続き上の不備や、汎用的に使用される製品について品質不適切行為が確認されたことから、当社は同年8月31日付で品質不適切事案を公表しました。
公表後に行った三回目の自主点検では、各拠点において外部法律事務所の策定にかかるガイドラインに従った、文書及び記録等の確認を行い、弁護士によるヒアリング、専門業者による電子データの収集・分析及び弁護士による精査、アンケート・ホットラインによる情報収集を行い、結果、本件調査を委託した外部法律事務所による調査報告を2019年4月19日に受けました。
当社では、本件調査を行った外部法律事務所の提言を受け、業務執行取締役を中心とするリスク管理委員会、経営執行会議での討議及び社外取締役を含む取締役会での議論により、以下の再発防止策を策定しました。
1) ガバナンス改革
品質コンプライアンスの確保をグループ全体で徹底するため、各カンパニーに帰属する品質保証部門の統括組織を全社統括組織であるコーポレート品質保証部門に移管し、これを社長直轄組織として独立性を確保することといたしました。
あわせて品質保証部門の監督・けん制機能の実効性を確保するため、各部門の人事管理、管理職の責任と権限の明確化、レポートラインの整備並びに増員、教育訓練の強化及び各種手続きの整備等を実施しています。
2) 品質コンプライアンス意識の向上
品質コンプライアンスを常に優先事項とすべきこととする風土の刷新と定着を図るため、当社の品質管理方針を定めた「フジクラクオリティ方針」の見直しや、当社グループの全ての従業員を対象とした意識調査アンケートの定期実施及び経営トップと現場従業員との対話を通じた意識改革及び役職員に対する研修の定期実施などによる品質コンプライアンス意識の浸透活動を行うこととしました。
あわせて、品質コンプライアンスに関する積極的な行為の人事評価への反映や違反に関する厳正な懲戒処分と社内公表を行うこととしました。
上記に加え、品質不適切事案の風化を防ぐための研修プログラムの整備や内部通報制度の活用周知を行ってまいります。
当社は、以上の再発防止策を着実に実行するとともに、グループ各社においても再発防止策が確実に実行されるよう引き続き指導・監督を実施し、当社グループにおけるガバナンスの向上と品質管理体制の強化と定着を図ってまいります。
注)当社の公表内容の詳細は当社ホームページ(http://www.fujikura.co.jp/)をご参照ください。
②コーポレートガバナンスの強化
当社は2017年6月、監査等委員会設置会社に機関設計を変更いたしました。これは、業務執行取締役への権限委譲を進めることでスピーディかつ効率的な事業運営を強化する一方で、取締役会における個別事案の審議を減らし、経営計画や規模の大きなM&Aなど全社の成長に係る重要案件に絞って充実した審議のできる体制を目指したものです。
監査等委員会設置会社への移行後2年が経過し内部統制システムの体制は概ね整いましたが、昨年8月に公表した品質不適切事案をはじめ、東欧での自動車電装事業の混乱や海外EPC事業における大きな損失が発生するなど、業務執行体制の運用上の課題が顕在化している状況にあります。
当社といたしましては、現在機関設計変更の目的達成に向けたコーポレートガバナンス強化の途上であるとの認識の下、取締役会の監督機能強化を推進するとともに、業務執行の過程においてより高度なリスクマネジメントを可能とする内部統制システムの運用強化を図ってまいります。
具体的には、前記「①当社製品の品質管理に関わる不適切事案への対応」を踏まえ、全社の監査及び監督機能を有する内部監査部門及び品質保証部門を取締役社長の直轄組織として位置付けてその独立性を確保するとともに、増員や教育訓練の強化などによる監督・けん制機能を強化することとしました。また、取締役会における監督機能の強化として、当社経営から独立した立場の社外取締役の増員を2019年6月開催の株主総会にて決議しました。
③各カンパニーの重点課題
『エネルギー・情報通信カンパニー』
エネルギー事業部門では、既存の電線・ケーブル関連において、事業の継続に必要な収益を確保できる体制とするためのコスト構造に踏み込んだ改革を引き続き進めてまいります。また、ブラジルやアジア等の新興国において進めてきた海外EPC事業について、2018年度中に大きな損失を計上することとなったことに鑑み、EPC事業の在り方を含め当社の体制を改めて検討してまいります。
情報通信事業部門では、2019年度は中国で光ファイバの需要停滞と価格低下が見込まれる一方、北米等では需要は引き続き堅調であると見込んでいます。当社といたしましては、北米等の堅調なマーケットでの事業強化に向け、軽量・細径で施工費用削減可能な当社の戦略商品「Spider Web Ribbon®」「Wrapping Tube CableTM」の拡販に努めてまいります。
『電子電装・コネクタカンパニー』
本年4月1日付でFPCやコネクタを中心としたエレクトロニクスカンパニーと自動車用ワイヤハーネスを中心とした自動車電装カンパニーを統合して「電子電装・コネクタカンパニー」としました。自動車事業は100年に一度の革新期にあり、ここでは電気自動車をはじめとした新エネルギー車の需要拡大と、自動車の電子化・情報化がいっそう伸展するものと見込まれます。当社のエレクトロニクスカンパニーの製品・技術は進化する自動車への適用可能性が高く、これまで自動車用ワイヤハーネス事業において培ってきた事業基盤と融合することで、お客様により高い価値の提供を可能とする新たなビジネスを創出することができると判断いたしました。この新しい事業体制により、いっそうの成長を目指してまいります。
エレクトロニクス関連の事業部門では、スピーディな対応を通じて戦略顧客との関係の深化を図りつつ効果的に設備投資を実行してまいります。また、顧客からの信頼の大前提である品質確保を事業運営の根幹に据えながら、競争力強化に向けて歩留りの向上と製造及び検査工程の自動化促進による省人化で更なる生産性向上を図ってまいります。
自動車電装部門では、日本国内及び中国向けの需要急減並びに欧州拠点におけるマネジメント不備による生産体制の混乱などにより悪化したワイヤハーネス事業の再建を図ります。具体的には、欧州において製造拠点の統廃合及び北アフリカへの移管による利益確保を図ります。アジアでは、固定費削減のための事業構造改革に取り組んでまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 需要動向
当社グループの経営成績は、製品が主としてインフラ用や最終消費財の部品などであるため、景気循環の影響を受けることはもとより、各マーケットの設備投資の動向や顧客の購買政策の変化等によって影響を受けます。
(2) 為替レートの変動
当社グループは、実需の範囲内で通貨ヘッジ取引を行い、外貨建売上取引等における為替変動による悪影響を最小限に抑える努力をしておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、為替レートの変動は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの事業には、アジアを中心とする海外における製品の生産、販売が含まれており、各地域における現地通貨建ての収益、費用、資産等の各項目は連結財務諸表作成のため、円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(3) 材料価格の変動
当社グループの製品の主要な材料である銅の価格は、国際的な需給動向等の影響により変動しますが、銅価格の急激な変化による仕入価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、銅価格の著しい変動によって当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。
(4) 製品の欠陥
当社グループは、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造しておりますが、全ての製品について欠陥が無く、将来に品質クレームが発生しないという保証はありません。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額すべてをカバーできるという保証はありません。重大なクレームや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや、当社グループの社会的評価に重大な影響を与え、売上が減少するなどの悪影響につながる可能性があります。
(5) 法的規制等
当社グループの事業活動においては、事業展開する各国の様々な法的規制の適用を受けております。このような規制には、事業・投資を行うために必要な政府の許認可、商取引、輸出入に関する規制、租税、金融取引、環境に関する法規制等があります。当社グループはこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、将来において法的規制の重要な変更や強化が行われた場合、当社グループがこれらの法規制に従うことが困難になり事業活動が制限されたり、規制遵守のためのコスト負担が増加すること等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 訴訟、規制当局による措置その他の法的手続等
当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局により課徴金等が賦課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 政治経済情勢
当社グループは、エネルギー・情報通信カンパニー、エレクトロニクスカンパニー、自動車電装カンパニー等、国内外にて事業展開しているため、当社グループの経営成績は各国の政治情勢、新興国の経済の変動などの影響を受けることがあります。
(8) 金利の変動
当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しておりますが、金利が上昇した場合には、支払利息が増加し、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産
当社グループは、特許権、その他の知的財産権の取得により自社技術の保護を図ると共に、第三者の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。しかし、製品の構造・製造技術の多様化や、海外での事業活動の拡大等により、当社グループの製品が意図せず他社の製品の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。また、第三者が当社グループの知的財産権を侵害しても、各国の法制度等の相違により、適切な保護が得られるとは限らず、当社グループの事業活動や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報の流出
当社グループは、事業遂行に関連して多くの個人情報や機密事項を有しております。これらの情報の秘密保持については、最大限の対策を講じておりますが、予期せぬ事態により情報が外部に流出する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループのイメージの低下や損害賠償の発生などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 災害等のリスクについて
当社グループは、国内外に多数の工場を有しており、当該地域において大規模な地震や台風などによる風水害などの自然災害が発生し、生産設備に被害を受けた場合、操業停止に伴う生産能力の低下、設備修復による費用増など、当社グループの生産体制、財政状態、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 品質管理に関する不適切事案への対応
当社グループの製品の一部において、品質管理に関わる不適切な事案(以下、「本事案」とさせていただきます。)が存在することが判明いたしました。
本事案において、当社グループの製品の一部において、お客様に提出した試験・検査書類に実測値と異なる数値の記載をした事例や、お客様との間で取り決めた品質検査を行わなかった事例、お客様の承認を得ていない製造方法の一部変更を行った事例等の不適切事案並びに、不適切事案の中に、JISマークを表記した製品について、JIS認証維持審査における品質管理体制の変更の手続上の不備が確認されたことや汎用的に使用される製品についての不適切な事例が存在することが判明しました。
この事態を受け、当社は本事案の事実確認及び原因の究明を外部の弁護士に依頼し、調査結果の報告を受けました。当該調査の結果については本年4月25日付で公表しているとおりであり、同調査において判明した不適切な行為については、関連するお客様への事実関係の通知を完了しており、一部のお客様については製品の性能、健全性・安全性の確認を進めていただいております。
今後の進捗次第では、本事案に係るお客様等への補償費用を始めとする損失が新たに発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
①経営成績
当社では、2016年度を初年度、2020年度を最終年度とする2020中期経営計画を策定しており、継続的な収益性の向上を経営の優先課題の一つとして位置づけております。なお、目標とする経営指標については、2020年度に売上高9,000億円、営業利益率7.0%以上、ROE10.0%以上、D/Eレシオ40:60(0.66倍)を掲げております。
当期におきましては、当社グループの売上高は7,107億円(前年度比4.0%減)、営業利益は276億円(同19.4%減)、経常利益は210億円(同38.4%減)となりました。
特別損失として、当社の在ブラジル連邦共和国の非連結子会社ProCable Energia e Telecomunicações S.A.及びFujikura Cabos Para Energia e Telecomunicações Ltda.の業績不振から、ブラジル電力向け事業の再編を行うことといたしました。これに伴う当連結会計年度におけるブラジル電力向け事業関連の損失として101億円計上しております。また、当社グループの製品の一部において品質管理に関わる不適切な事例につきまして、損失影響額が一部明らかとなったことに伴い、当連結会計年度において品質不適合品関連損失として17億円計上しております。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は14億円(同92.1%減)、営業利益率は3.9%(前年度は4.6%)、ROEは0.7%(前年度は8.7%)となりました。
エネルギー・情報通信カンパニーにおいては、エネルギー事業の海外EPC事業での大きな損失の発生、情報通信事業の中国における光ファイバの需給環境に変化、ハイパースケールデータセンタ関連事業での主要顧客の調達方針の変化及び競争環境の激化が見られます。
エレクトロニクスカンパニーにおいては、主要顧客の需要が二度にわたり急激に悪化し、利益額・率ともに前年同期比減収減益となりました。
自動車電装カンパニーにおいては、欧州での拠点戦略の見直しと事業再生、アジア地域における需要減があるなど、全体として、柱となる事業で大きな変化が起きており、収益率の低下・財務体質改善の遅れを招いているという認識です。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
エネルギー・情報通信カンパニーにつきましては、前連結会計年度の国内電線販売会社の再編による減収があったこと及び国内外マーケットの競争激化やバングラデシュ送電線工事のコスト増などによる減益により、売上高は前年度比4.1%減の3,548億円、営業利益は同20.5%減の177億円となりました。
エレクトロニクスカンパニーにつきましては、FPC(フレキシブルプリント配線板)・コネクタでスマートフォン向けを中心とした需要が当第4四半期連結会計期間に急減した影響により、売上高は前年度比5.6%減の1,850億円、営業利益は同20.3%減の83億円となりました。
自動車電装カンパニーにつきましては、東欧製造拠点における離職率増加に伴う費用は減少したものの、アジアにおける顧客の減産影響などを受け、売上高は前年度比1.9%減の1,541億円、営業損失は32億円(前年度は営業損失31億円)となりました。
不動産カンパニーにつきましては、当社旧深川工場跡地再開発事業である「深川ギャザリア」において、テナントの入れ替えの影響を受けたこと等により、売上高は前年度比0.7%減の108億円、営業利益は同8.7%減の50億円となりました。
2019年度は「信頼回復への再スタート」と位置づけ、先行投資を行っている光関連事業について、中国ファイバ需要の停滞に対抗し、堅調な他地域の需要取り込みのため、従前より取り組んでいる戦略商品である「Spider Web Ribbon®」及び「Wrapping Tube CableTM」の拡販展開を継続いたします。また、エレクトロニクスカンパニーの需要減に対しては、生産性のさらなる改善と高付加価値品の取り込みにより、収益性を高める取り組みを進めてまいります。自動車電装カンパニーについては、欧州拠点における北アフリカへの生産シフトを計画的に進めると共に、アジアでの構造改革を進めることで下期黒字化を計画しております。
2019年度の当社連結の業績予想につきましては、売上高は6,900億円(前年度比2.9%減)、営業利益は280億円(同1.2%増)、経常利益は270億円(同28.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は120億円(同725.7%増)、営業利益率4.1%(前年度3.9%)、ROE5.4%(前年度0.7%)と予想しております。
②財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較し、2億円増加の6,383億円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金の減少や、投資有価証券の売却により投資有価証券が減少する一方で、エレクトロニクスカンパニー及び情報通信事業部門における設備投資により固定資産が増加したことによるものです。
負債の部は、前連結会計年度末と比較し、13億円増加の3,974億円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が減少した一方で、設備投資により有利子負債が増加したことによるものです。
純資産の部は、前連結会計年度末と比較し、10億円減少の2,409億円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金の減少によるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加があったものの、税金等調整前当期純利益105億円、減価償却費315億円等を源泉とした収入の増加により、420億円の収入(前年度比141億円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に481億円の支出(同137億円の支出増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは社債の償還による支出はあったものの、短期借入れや長期借入れによる収入を中心に83億円の収入(同12億円の収入減少)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は362億円(同26億円の増加)となりました。
長期借入金を中心とした有利子負債を原資に実施したエレクトロニクス及び光関連事業の設備投資により、2018年度D/Eレシオは54:46(1.17倍)となりました。エレクトロニクスにおける主要顧客の需要減、光関連の中国市場の停滞といった環境の変化に伴い、設備投資については、慎重に対応し、減価償却の範囲内での設備投資を行う予定であります。これに伴い、財務体質改善に取り組み、2020年度目標である40:60(0.66倍)に近づけていく所存です。
(3) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は、数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の実績については、「(1)財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント経営成績に関連付けて示しています。
該当事項はありません。
当社グループは、①エネルギー・情報通信、②エレクトロニクス、③自動車電装各分野の新商品並びに新技術の開発を積極的に行っております。当社グループの研究開発活動は、先端技術総合研究所、自動車電装R&Dセンター、および材料応用技術・分析センターが全社研究開発を、また各事業部門の開発部が部門別開発活動を進めています。
環境対応型製品開発の一環として、高温超電導線材、色素増感太陽電池とそれを用いたセンサシステムなどの商品化に向けた開発を進めています。高温超電導線材では、人工ピンの導入による世界トップの性能を達成し、さらなる特性・信頼性の向上とともに事業化に向けた量産技術の開発に取り組んでいます。高磁場中でも高い特性を有するイットリウム系高温超電導線材は、分析用NMRや医療用MRIなどの強磁場コイル用途において、システムのコンパクト化、高解像度化などが期待されています。
色素増感太陽電池においては、低照度下での高効率発電特性を利用したエネルギーハーベスティング用薄型モジュールを自立型電源として利用し、IoT無線センシングをより広範囲なエリアに適用可能とするLPWA(Low Power Wide Area Network)技術による無線システムを搭載した「エネルギーハーベスト型LoRaWAN™屋内/屋外センサノード」を開発しました。このセンサノードは、温度、湿度、照度、気圧などのメンテナンスフリー・IoTセンシングを可能にします。
※LoRaWAN: LoRa Allianceが定めた無線ネットワーク規格の名称で、IoT向け無線規格として世界的に広く利用されています。
「5G」(第5世代移動通信システム)時代に向けて、次世代大容量高速無線通信に利用されるミリ波帯通信機器や受動デバイスの開発を進めています。移動体通信フロントホール・バックホールや、固定通信網ラストマイルなどの通信インフラ用途にミリ波モジュールを提供します。このモジュールは、フェーズドアレイを用いたビームフォーミング機能により、高利得で鋭いアンテナビームを広範囲に方向制御できるもので、ミリ波帯を用いて、大容量データを中距離で超高速伝送することを実現します。
新しいダイレクト印刷技術を用いて透明電極フィルムの開発を進めています。このフィルムは、樹脂フィルム状へ独自の新印刷法により線幅2μmの超極細銀配線を形成し、低抵抗・高透明・優れた可撓性を実現します。大型タッチパネル用途をはじめとして、透明アンテナや曇り止めヒータ、スマートウィンドウ用電極など様々な微細配線ソリューションへの展開を進めていきます。
ICや受動部品などをポリイミド多層配線板に埋め込んだ薄型部品内蔵基板、「WABE Package®」(Wafer And Board level device Embedded Package)の開発、量産化を進めています。2個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ2チップスタック型部品内蔵基板の量産出荷を開始し、世界初の技術である3個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ超多層構造の3チップスタック型についても開発が完了しました。複数部品を内蔵した超高精細・超多層の高密度部品内蔵基板を提供し、製品の軽薄短小化に貢献していきます。
人々の健康とQOLを維持向上すべく、医用機器に搭載可能な極小CMOS撮像素子のモジュール化を進めています。極小サイズで安価なCMOS撮像素子モジュールは、使い捨てが困難であった電子内視鏡の単回使用を実現するとともに、極細・可撓性の特徴を活かして従来困難だった領域への可視アクセスが可能になります。極小CMOS撮像素子により、医療イノベーションの創出を促進し医療の発展に貢献していきます。
ディープ・ラーニングを用いた人工知能(AI)の研究開発に取り組んでいます。独自の学習方法を開発し、製品製造工程での異常をAIにより可視化することにより、先進的なAIによる工程管理を進めています。画像に関するAI技術のさらなる高度化を進め、これまで実施してきたLDウエハ外観検査の安定運用と共に適用範囲を拡大しています。独自のAI技術の製品製造工程への展開を進めることにより、AI+IoTを導入したものづくりを推進しています。
当社は、今年度、国際的な情報サービス企業トムソン・ロイターにより世界5,000社のテクノロジー企業を対象にして選出される「Top100グローバル・テクノロジー・リーダー2018」を受賞しました。
セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は
①エネルギー・情報通信カンパニー
光ファイバ1本に複数のコアを持つマルチコアファイバは、将来の大容量伝送用光ファイバの有力候補で、フジクラでは実用化に向け開発を進めています。2018年度は、現在の汎用光ファイバと同じ外径を有し、コアが4個のマルチコアファイバの低コスト化に注力しました。国立研究開発法人情報通信研究機構殿の委託を受け、NTT・KDDI総合研究所・他のファイバメーカと共に「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」を開始しました。本開発の狙いは普及型MCFの早期実用化です。既存光ファイバと同一なクラッド外径を有する普及型MCFの製造法および周辺技術を確立させることで実用化を加速させます。今後、マルチコアファイバ技術の標準化、実用化をめざすとともに、将来の多様なデータ通信需要に対応可能な光伝送基盤の実現に貢献していきます。
通信用光ファイバの新製品として、被覆径200μmの細径光ファイバFutureGuide®-LWP plus 200を商品化いたしました。200μmファイバの断面積は通常ファイバの65%程度であり、細径・高密度ケーブルの実現に大きく寄与します。本ファイバは、国際電気通信連合の低曲げ損失ファイバ勧告(ITU-T G.657.A1)に準拠しながらも、通常ファイバと同程度のコア径を有し、幅広いケーブル構造および用途に適しております。
PANDA(Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)ファイバは通信機器等で使用される偏波面保持機能を備えた光ファイバです。フジクラは、現代の通信設備に必須である光通信機器の高密度化、小型化要求に応えるため、省スペース収納を可能とするPANDAファイバを開発しました。汎用のR=15mm、改良品のR=7.5mmをさらに改善したPANDAファイバBIR5シリーズは曲げ半径R=5mmに対応しております。光ファイバをより小さく曲げた際の光学特性の劣化を抑制したうえで、汎用の光ファイバと低損失接続が可能です。
クラウドサービスやIoT(Internet of Thing)技術の発展、5Gサービスの展開を背景に、光ファイバケーブルの需要が拡大しています。光通信の大容量化を支えるケーブル技術として、光ファイバを高密度で実装した細径・軽量な光ファイバケーブル「Spider Web Ribbon®&Wrapping Tube CableTM」を開発し製品化しています。2018年度はデータセンタ市場向けに、世界一の超多心ケーブルとなる6912心ケーブルを開発し製品化しました。また、欧州市場向けに空気圧送布設に適したAir Blown WTCを新たに開発しました。Spider Web Ribbon® & Wrapping Tube CableTMの技術をもとに光ケーブルの差別化、高機能化を図り、世界に向けた製品開発に取り組んでいきます。
通信データの大容量化要求を背景に、光コネクタの高性能化、および、高機能化に注力しています。伝送装置周辺で使用されるフロント、バックパネル光コネクタ、取り扱い性に優れた多心レンズ型光コネクタでは、これまで磨いてきた高精度技術、レンズ技術を適用すべく開発を進めています。
光インフラ網を構築する光ケーブル接続点に使用される防水型光コネクタ、現場付けコネクタ等の性能を向上するためにも高精度技術が一層重要になってきています。これらの光コネクタを搭載した光ケーブル成端ユニット等の開発も進め、相反することもある接続のしやすさと高性能・高機能を独自の技術で解決し、製品の魅力を高めていきます。
海外市場でのFTTHネットワーク構築の効率化に向け、新型のFTTH融着接続機を開発し、上市しました。従来機は光ファイバを固定V溝に載せて融着接続を行っていましたが、新型機では可動するV溝が調心した後に融着接続するので低損失が得られます。さらに、融着接続機と光ファイバカッタのそれぞれにBluetooth機能を搭載しました。融着接続機は光ファイバの切断状態を監視し、切断状態が悪化してくると、光ファイバカッタの刃が摩耗してきたと判断します。融着接続機から光ファイバカッタに対して内蔵モータで刃を回転交換させるようBluetoothで指示を出します。自動的に刃を良好な状態に維持するため、接続品質の向上が可能です。今後も光ファイバケーブルの接続作業性を向上するため、融着接続技術の改善を継続します。
金属のマーキング、溶接および切断で使用されるレーザ加工機の市場では、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高い光源を利用したファイバレーザへの乗り換えが加速しています。当社は、光通信用ファイバや部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力しています。2018年度は小型・軽量化を図ったパルスファイバレーザ、小型・軽量化および電力変換効率アップを図った高出力連続波ファイバレーザなどをリリースしました。高出力マルチモードファイバレーザでは、新たに出力12kW品を開発し、サンプル出荷を始めています。また、シングルモードファイバレーザでは出力8kWを実現しました。さらなる小型・軽量化および高出力化、電力変換効率アップを目指して研究開発を進めてまいります。
エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めております。
航続距離延長や環境政策により、ますます普及が進む電気自動車の充電インフラとして、急速充電器の設置数が増大しています。バッテリ容量の拡大および充電時間の短縮のため、従来の3~7倍の出力の充電器が実用化されており、液冷ケーブルコネクタの規格化が検討されています。大容量急速充電に対応する冷却効率に優れ、操作性・取扱い性に優れる充電コネクタ・ケーブルの開発に注力しております。
また、ケーブル設備の経年化が進む中、リアルタイムデータに基づいたスマートメンテナンスに不可欠なセンシング技術による常時監視システムおよび劣化診断システムの開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
②エレクトロニクスカンパニー
民生及び産業用の電子機器に使われるフレキシブルプリント回路基板(FPC)・メンブレン・コネクタ・電子ワイヤ・センサ・ハードディスク・サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器とのつながりやすさが強く要求されています。また、電気自動車普及の加速に伴い、需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。
FPCについては、高密度化や高速伝送化に対応するため、高精細FPCをコア技術とした高密度実装のトータルソリューションの提供を目的として開発を進めています。高精細FPCには従来のサブトラクティブ法だけでなく、セミアディティブ法の採用も進めています。また、高速伝送化への対応については、低誘電率・低誘電損失の材料を適用した製品開発を進めています。加えて、高信頼性確保のため、自動化を推進し、製造での更なる工程能力向上、検査能力向上に取り組んでいます。
メンブレンについては、細線印刷技術や機能性ペーストの開発を進めることでパソコン、家電、車載用など従来の需要に加え、医療・ウエアラブル・ヘルスケアといった新しい市場を開拓していきます。
コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「防水」「高速伝送」「作業性」をキーワードに製品開発を推進しています。モバイル機器用途としては、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充に取り組みました。産業機器用途では、屋内照明用低背型コネクタや、4K/8K放送用、5G基地局用等のコネクタの開発に取り組みました。
電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送の要求に答えるべく開発を進めています。モバイル機器やウエアラブル機器などの用途では、非常に限られたスペース内で、高速な信号を伝送する用途や、高屈曲耐久を有した接続のニーズがあり、これらに貢献するケーブルアセンブリの開発を進めています。
センサについては、高精度な増幅・温度補償済み圧力センサの製品ラインナップを拡充すべく、開発を進めています。新たに、絶対圧計測用圧力センサ、差圧計測用センサを開発し、製品ラインナップを拡充しています。
また、酸素センサについても、小型化製品の量産を始めます。
サーマル製品については、スマートフォン等のモバイル機器向けに、薄型の熱対策部品のニーズが高まっていることに応え、0.4mm厚さの超薄型ベーパーチャンバーを開発しました。さらなる熱性能の向上、薄型化に取り組み、開発を進めています。また、スーパーコンピュータ等の大容量冷却向けの水冷式クーリングユニットは、CPUの高性能化、ボードの高密度実装化に伴い、更なる冷却性能の効率化が求められており、これらのニーズに応えるべく開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
③自動車電装カンパニー
自動車電装では、従来の「環境」、「安全」、「快適」に加え、「Connectivity」、「Autonomous」、「Shared & Service」、「Electric」のいわゆるCASEの自動車業界トレンドに対応するため、ワイヤハーネスを中心としたEDS(Electric Distribution System)の分野と、エレクトロニクス事業で培った薄型配線材の技術を応用した機能モジュールの分野で、新商品・新技術の開発を推進しています。
新たに設置した自動車電装R&Dセンターでは、CASEでの大容量高速通信に対応するハーネスと、それを用いた車載ネットワークシステムとシミュレーション技術を開発しています。電気自動車に向けては、急速充電ニーズに対応するための大電流充電・高電圧ハーネス技術の開発を進めています。
機能モジュールの分野では、シートベルトリマインダに関する保安基準の改正により、後席シートにおけるセンサ適用の検討を進めており、後席における特有の検知・非検知スペックに対応できる、センサ構造の標準化を進めています。
2019年度は、ドイツに組織したFujikura Technology Europe GmbH(FTE社)と協力し、欧州顧客の最新トレンドも把握しつつ、次世代車向けの研究開発を進めてまいります。
なお、当セグメントに係る研究開発費は