文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、創立120周年に当たる2005年度を「第3の創業」の年と位置づけ、経営理念である「ミッション・ビジョン・基本的価値」を指針とし、“つなぐ”テクノロジーを通じて「顧客価値創造型」事業へ積極的に展開し、収益性重視のスピード感ある積極経営で豊かな社会づくりに貢献してゆく所存であります。
(2) 経営環境
経済環境としては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、世界中の社会経済活動が大きく制限される状況が継続する中、米中の通商問題の動向が世界経済に与える影響等不確実性に留意が必要な経済環境となっております。
エネルギー・情報通信分野においては、国内はインフラの成熟化により、大きな需要の伸びが見込めない状況にあります。また、海外については情報通信分野において、FTTx、データセンタ投資が欧米を中心に継続し今後も需要拡大が見込める状況が継続する見通しですが、光ファイバの最大需要地である中国において光ファイバ価格が下落、他地域への伝播が続き、光ファイバ価格下落については注意が必要な状況です。
エレクトロニクス分野においては、当社FPC(フレキシブルプリント配線板)、コネクタが多く使用されているスマートフォンの世界的な需要について、堅調であった主要顧客の需要動向に変化が見られる状況であるとともに、昨年の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う巣ごもり消費等、消費動向に変化がみられる状況です。
自動車分野においては、世界の自動車生産台数については新型コロナウイルス感染症の拡大・半導体不足に伴う受注・生産に対する不安定感が見られますが、CASE(Connectivity:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング&サービス、Electric:電動化)が主要なテーマとなるなど、自動車は100年に一度の革新期にあり、新エネルギー車の需要拡大、自動車の電子化・情報化が一層進展するものと見込まれます。
(3) 対処すべき課題
①早期事業回復に向けた戦略への転換
2019年度の採算悪化を受け、2016年度をスタートとする5か年計画「2020中期経営計画(20中期)」を最終年度の2020年度に断念し、基本戦略を「早期事業回復への集中」に転換いたしました。「早期事業回復への集中」を基本戦略に据えたうえで、重点施策を「既存事業の聖域なき『選択と集中』」及び「グループガバナンスの強化」の2点に絞り、事業構造改革を断行、早期の事業回復を果たすべく不退転の決意をもって臨むことは「第172期有価証券報告書」でも申し上げております。2020年度に引き続き2021年度におきましても、再生フェーズにある当社として、昨年定めました基本戦略、重点施策を強力に推進していくことで再生を果たすことを当社経営方針の「基軸」に据え活動を進めてまいります。
②2021年度の経営計画と事業部門ごとの重点課題
各事業部門の重点課題
(ⅰ)エネルギー分野では、これまで主として新興国の電力インフラ構築による社会貢献に携わってきた海外生産拠点はその役割を終え、2020年度をもって全拠点から実質的に撤退しました。あわせて、海外EPC事業(*)からの撤退、および国内事業の選択と集中を実施してまいりました。2021年度は、2020年9月に公表いたしました100日プランに従い、国内事業の選択と集中を更に進めてまいります。
(*)「EPC事業」とは、電線・ケーブルの供給並びに敷設工事の設計及び施工を一体として提供する事業を言います。(Engineering:設計、Procurement:調達、Construction:建設)
(ⅱ)情報通信分野では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うテレワーク需要の高まり、5G(第5世代移動通信システム)、IoT等の次世代インフラ整備の需要と相まって、特に欧米を中心としたFTTx、データセンタ等の通信インフラ網構築への積極的な投資が引き続き見込まれます。当社の戦略商品SWR®/WTC®は、細径・軽量・高密度、加えて敷設工事における簡便性という特長から通信インフラ増強に最適なソリューションであるとの高評価を得ています。こうした機会を逃すことなく更なる製造能力の増強等、リソースの集中を図り、周辺部品等を加えた光インフラ網構築に向けたトータルソリューションの提供を行ってまいります。
(ⅲ)エレクトロニクス・自動車関連分野の取組として、PC事業部門では、スマートフォン向け需要の減少及び採算重視の受注戦略により、2021年度は売上が大きく落ち込むことが想定されております。拠点の統廃合まで踏み込んだ構造改革を断行し、一層のコスト低減を図るとともに、品種構成の変化に応じた生産体制構築を進めてまいります。また、従来から取り組んでおります、品質の向上・技術力の強化についても一層磨きをかけ、競争優位性の維持できる領域へと事業をシフトしてまいります。
コネクタ事業部門では、これまで進めてきた構造改革を通じた生産体制の最適化により、安定した事業運営がなされるようになりました。今後、新しい市場分野への参入を通じた持続的成長を求めてまいります。
電子部品事業部門では、拡大するデータセンタ需要に対し、HDDの大容量化への対応、熱ソリューションの提供など、新規市場の開拓や新規顧客を取り込む等新陳代謝を促進し、高収益性を維持してまいります。
自動車事業部門では、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により大きな損失を計上し、2021年以降も新型コロナウイルス感染症拡大の影響及び銅価格や新興国通貨安等、自動車業界は先行きが不透明な状況にあります。ただし、生産面では、自動車用ワイヤハーネス事業の「稼ぐ力」が戻ってきており、アジア地区では拠点の再編成をすすめ、欧州地区では、さらなる生産性の向上と品質の安定化によるコスト削減をすすめます。
エレクトロニクス関連事業全体に関する今後の取組として、エレクトロニクス製品の自動車市場への導入の取り組みがございます。自動車業界はCASEなどの100年に一度の変革期を迎えております。既に複数のお客様と高速通信対応、電力制御システム等を共同で開発をしており、コネクタ事業部門では次世代車両間通信用コネクタを2021年度から量産開始するほか、PC事業部門においても従来から手掛けるインフォテイメント(*1)やライティング(*2)分野に加え、パワートレイン(*3)分野の製品開発を加速させてまいります。
(*1)「インフォテイメント」とは、インフォメーション(情報)とエンターテイメント(娯楽)を組み合わせた造語であり、特に自動車分野におけるナビゲーションシステムやオーディオビジュアル機器向け製品を指しております。
(*2)「ライティング」とは、ヘッドライト、方向指示器、室内照明等の自動車用照明を指しております。
(*3)「パワートレイン」とは、動力伝達装置全般のことを指しており、自動車の挙動としての「走る」「曲がる」「止まる」といった動きを介する装置に使用される電子部品を指しております。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 需要動向
当社グループの経営成績は、製品が主としてインフラ用や最終消費財の部品などであるため、景気循環の影響を受けることはもとより、各マーケットの設備投資の動向や競合環境、サプライヤの動向、顧客の購買政策の変化や信用状況等によって影響を受けます。
(2) 為替レートの変動
当社グループは、実需の範囲内で通貨ヘッジ取引を行い、外貨建売上取引等における為替変動による悪影響を最小限に抑える努力をしておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、為替レートの変動は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの事業には、アジアを中心とする海外における製品の生産、販売が含まれており、各地域における現地通貨建ての収益、費用、資産等の各項目は連結財務諸表作成のため、円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(3) 材料価格の変動
当社グループの製品の主要な材料である銅の価格は、国際的な需給動向等の影響により変動しますが、銅価格の急激な変化による仕入価格の変動が即座に製品価格に反映されるとは限らないため、銅価格の著しい変動によって当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。
(4) 製品の欠陥
当社グループは、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造しておりますが、全ての製品について欠陥が無く、将来に品質クレームが発生しないという保証はありません。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額すべてをカバーできるという保証はありません。重大なクレームや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや、当社グループの社会的評価に重大な影響を与え、売上が減少するなどの悪影響につながる可能性があります。
(5) 法的規制等
当社グループの事業活動においては、事業展開する各国の様々な法的規制の適用を受けております。このような規制には、事業・投資を行うために必要な政府の許認可、商取引、輸出入に関する規制、租税、金融取引、環境に関する法規制等があります。当社グループはこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、将来において法的規制の重要な変更や強化が行われた場合、当社グループがこれらの法規制に従うことが困難になり事業活動が制限されたり、規制遵守のためのコスト負担が増加すること等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 訴訟、規制当局による措置その他の法的手続等
当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局により課徴金等が賦課され、又は事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 政治経済情勢
当社グループは、エネルギー・情報通信カンパニー、電子電装・コネクタカンパニー(エレクトロニクス事業部門、自動車事業部門)等、国内外にて事業展開しているため、当社グループの経営成績は各国の政治経済や環境情勢、新興国の経済の変動等の影響を受けることがあります。
(8) 金利の変動
当社グループは、資金需要、金融市場環境及び調達手段のバランスを考慮し資金調達を実施しておりますが、金利が上昇した場合には、支払利息が増加し、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 知的財産
当社グループは、特許権、その他の知的財産権の取得により自社技術の保護を図ると共に、第三者の知的財産権に対しても細心の注意を払っております。しかし、製品の構造・製造技術の多様化や、海外での事業活動の拡大等により、当社グループの製品が意図せず他社の製品の知的財産権を侵害した場合、販売中止、設計変更等の処置をとらざるを得ない可能性があります。また、第三者が当社グループの知的財産権を侵害しても、各国の法制度等の相違により、適切な保護が得られるとは限らず、当社グループの事業活動や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報の流出
当社グループは、事業遂行に関連して多くの個人情報や機密事項を有しております。これらの情報の秘密保持については、最大限の対策を講じておりますが、予期せぬ事態により情報が外部に流出する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、当社グループのイメージの低下や損害賠償の発生などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 災害等のリスクについて
当社グループは、国内外に多数の工場を有しており、当該地域において大規模な地震や台風などによる風水害などの自然災害が発生し、生産設備に被害を受けた場合、操業停止に伴う生産能力の低下、設備修復による費用増など、当社グループの生産体制、財政状態、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 製品の品質
当社グループは、高品質の製品の提供を目指し品質管理体制の強化に取り組んでおりますが、過去に製造販売した製品に関連する現時点で想定していない補償費用等が生じた場合や、重大な品質問題が新たに発生し、信用低下による販売活動への影響並びに品質管理体制の改善・強化等に要する費用及び補償費用等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 新興感染症あるいは再興感染症の流行拡大について
新興感染症あるいは再興感染症の流行拡大により、政治、経済環境に甚大な制限が課されることとなった場合、当社グループのサプライチェーンの不機能等様々な事業活動の制約により、当社グループの様々な事業活動が制約を受け、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、今般発生している新型コロナウイルス感染症の流行長期化においては、在宅勤務やWeb・電話会議等を推奨し、当社グループ社員の安全確保に最大限に配慮しながら、生産の継続に尽力しております。
(14) 重要事象等について
前連結会計年度において親会社株主に帰属する当期純損失を計上した影響により、
当社グループは金融機関との間で締結した一部のシンジケートローン及びコミットメントライン契約に定められている財務制限条項(期末日における連結貸借対照表上の純資産の部の合計金額を基準日時点における連結
貸借対照表上の純資産の部の合計金額の一定割合以上に維持すること)に抵触しておりましたが、期中において貸付金融機関から期限の利益の喪失を請求する権利を放棄することに関する同意を得るとともに、当連結会計年度において一部のシンジケートローン契約及びコミットメントライン契約の財務制限条項の修正を伴う変更契約を締結したこと等により、財務制限条項に抵触している状況を解消いたしました。
また、資金面についても、ハイブリッドローンによる資金調達等、事業活動に必要な資金の安定的な確保及び流動性の維持に努めており、資金計画に基づき想定される需要に十分対応可能な資金を確保しております。
これにより、当連結会計年度末において継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は存在しておりません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
①経営成績
当社グループの経営成績は、新型コロナウイルス感染症の影響により、自動車メーカーが生産を停止したこと及び国内電線市場の需要減少等により減収となったものの、事業構造改善効果や費用削減の諸施策、銅価上昇による評価差益に加え、エネルギー・情報通信カンパニーでは各国のデータセンタ、FTTxに対応した需要が高いこと、エレクトロニクス事業部門でのスマートフォン向け需要増加及びデジタル機器向けの巣ごもり需要などにより、営業利益及び経常利益は増益となりました。
一方、親会社株主に帰属する当期純損益は、FPC事業において固定資産の減損損失等を計上したことにより、当期純損失となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は6,437億円(前年度比4.3%減)、営業利益は244億円(同629.8%増)、経常利益は184億円(前年度は経常利益13億円)、親会社株主に帰属する当期純損失は54億円(前年度は親会社株主に帰属する当期純損失385億円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、従来「自動車事業部門」に含めていた一部事業について、管理体制の見直しを行い、「エレクトロニクス事業部門」に含めております。前連結会計年度につきましては組み替え後の数値で比較しております。
[エネルギー・情報通信カンパニー]
国内電線市場の需要減少、光ファイバの競争激化などにより、売上高は前年度比6.7%減の3,059億円となったもののデータセンタ、FTTxに対応した需要が高いことや構造改革による固定費削減、銅価上昇による評価差益の計上等により、営業利益は同297.3%増の181億円となりました。
[電子電装・コネクタカンパニー]
(エレクトロニクス事業部門)
主要顧客に対するスマートフォン向け需要増加及び新型コロナウイルス感染症の影響によるデジタル機器向けの巣ごもり需要などを取り込んだこと等により、売上高は前年度比12.1%増の1,999億円、営業利益は49億円(前年度は営業損失20億円)となりました。
(自動車事業部門)
新型コロナウイルス感染症によるロックダウンが世界各国であり、顧客の生産停止にまで及んだこと、また年
度後半には世界的な半導体不足から顧客の生産量が落ち込んだことにより、売上高は前年度比18.3%減の1,219億
円、営業損失は37億円(前年度は営業損失41億円)となりました。
[不動産カンパニー]
新型コロナウイルス感染症の影響により、一部の商業施設を休業したこと等により、売上高は前年度比3.6%減の109億円、営業利益は同3.5%減の52億円となりました。
2021年度については、1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で述べました各種施策の実行に傾注、
業績回復にむけ不退転の決意をもって臨んでまいります。
①事業再生計画「100日プラン」の遂行(早期事業回復への集中を基本戦略とした、既存事業の聖域なき『選択と集中』・コーポレートガバナンス強化)
②品質不適切事案を二度と起こさないための品質管理に関する取り組み
③社会課題解決のための気候変動への取り組み
④DXへの取り組み
2022年3月期の当社連結の業績予想につきましては、スマートフォン向け需要の減少及び採算重視の受注戦略により売上高は6,000億円(前年度比6.8%減)、エレクトロニクス事業の減収及び銅価の影響等により、営業利益は200億円(同18.1%減)、経常利益は165億円(同10.2%減)、一方、親会社株主に帰属する当期純利益は特別損失の減少が見込まれることから65億円(2021年3月期は親会社株主に帰属する当期純損失54億円)と予想しております。
②財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較し、70億円減少の5,691億円となりました。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響で現預金を積み増した一方で、受取手形及び売掛金の減少や投資の選択と集中により固定資産が減少したこと等によるものです。
負債の部は、前連結会計年度末と比較し、193億円減少の3,846億円となりました。これは主に、運転及び設備資金の減少により有利子負債が減少したことによるものです。
純資産の部は、前連結会計年度末と比較し、124億円増加の1,845億円となりました。これは主に、為替換算調整勘定の増加によるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費336億円および運転資金の減少を源泉とした収入の増加により、626億円の収入(前年度比162億円の収入増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に71億円の支出(同323億円の支出減少)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは長期借入金の返済による支出を中心に265億円の支出(前年度は17億円の収入)となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は742億円(前年度比302億円の増加)となりました。
また、「第172期有価証券報告書」においても記載しました通り、主要顧客のスマートフォン需要の減少や中国における光ファイバ価格の大幅下落など、顧客動向や市場の大きな変化に対応しきれず、「光ファイバ」「FPC」「自動車用ワイヤハーネス」の当社事業の3本柱は、いずれも大きく落ち込むこととなりました。
当社は2020年度、2021年度を事業再生フェーズと位置づけ、早期の事業回復を果たすべく、各種取り組みを進めております。
なお、事業再生フェーズにおける設備投資は厳選して実施、設備投資総額について大幅減額方針を取っております。
主要な事業に関する2021年度における設備投資に関しての方向性としては次の通りとなります。
情報通信事業については、当社の核心的事業分野として、高付加価値戦略商品 SWR®/WTC® 等、光ケーブル関連への設備投資に集中いたします。
エレクトロニクス事業については、大幅抑制とし、キャパシティアップは行わず更新投資が中心となります。
自動車事業におけるワイヤハーネス製造については、大幅抑制方針を継続いたします。
当社は引き続き設備投資の厳選・財務改善に取り組み、成長事業へ回帰、企業価値回復を目指します。
(3) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は、数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の実績については、「(1)財政状態及び経営成績の状況」における各セグメント経営成績に関連付けて示しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 5 会計方針に関する事項」、「(重要な会計上の見積り)」並びに「(追加情報)」に記載の通りです。
該当事項はありません。
当社グループでは、環境問題やエネルギー問題などの社会課題解決を通じて事業を発展することを目指し、エネルギー・情報通信、及び電子電装・コネクタ各分野を中心に、新技術並びに新商品の開発を積極的に推進しています。当社グループの研究開発活動は、コーポレートR&D部門、新規事業推進センターおよび各カンパニーにおいて実施しております。
【コーポレートR&D部門・新規事業推進センター】
「5G」時代に向けて、移動体通信基地局や、そのフロントホール・バックホール、固定通信網ラストマイルなどの次世代大容量高速無線通信に利用されるミリ波帯通信デバイスの開発を進めています。当社は、米国IBM社よりライセンスを受けたミリ波RF(高周波)-IC技術と、当社のアンテナ設計・基板製造技術を組み合わせて製品を実現します。28GHz帯5G向けアンテナ一体型RFモジュールは、アンテナ、IC、フィルタを統合しており、2021年秋にサンプル出荷を予定しています。
60GHz帯においては、関西電力送配電株式会社、京セラ株式会社、神姫バス株式会社ら6社と共同で路車間通信の実証実験を行いました。当社開発の60GHzミリ波無線通信モジュールをはじめとする各種の通信機器を電柱及び路線バスに設置し、路車間の高速無線接続による車載カメラ映像のリアルタイムアップロードや、安全運転支援に必要となる車両位置の高精度測位等により、性能を実証しております。当社60GHz無線通信モジュールは、2 Gbps超の通信スピードと500m超の長距離伝送を同時に実現する世界トップクラスの性能を有しており、2020年よりサンプル提供を開始しています。
ICや受動部品などをポリイミド多層配線板に埋め込んだ薄型部品内蔵基板「WABE Package®」(Wafer And Board level device Embedded Package)の開発、量産化を進めています。2個のICチップを厚さ方向に重ねて埋め込んだ2チップスタック型部品内蔵基板の量産出荷に続き、2020年度は世界初の技術である3個のICチップを埋め込んだ3段Chip-stack WABE®についても開発を完了し、顧客への拡販を進めています。当社は複数部品を内蔵した超高精細・超多層の高密度部品内蔵基板により、製品の小型・軽量化に貢献していきます。
医療用機器用極小CMOSイメージセンサを用いた撮像モジュールの開発を進めています。極小サイズで安価なCMOS撮像素子モジュールは、電子内視鏡のディスポーザブル化を実現して感染防止に寄与するとともに、極細・可撓性の特徴を活かして可視アクセス領域を拡大し、病巣の検出能力を向上します。2020年度より、当社の光技術及び電子技術を活用した極細径撮像素子モジュールを大手医療機器メーカーに、納入開始しました。また、世界の医療機器開発の中心の一つである米国ミネアポリスに拠点を構えるFAIでは、治療法の確立していない疾患に対する医療ニーズ(アンメットニーズ)に応える活動を展開しています。
色素増感太陽電池を電源としたLoRaWAN※方式のエネルギーハーベスト型センサシステムに、独自に構築(IoTクラウドを組み合わせた、センサシステムからクラウドアプリケーションまでの総合ソリューションサービスを開始しました。2020年度は、西日本電信電話株式会社と共同で熱中症対策や季節性インフルエンザの見える化システムの販売を開始しました。
※LoRaWAN:LoRa Allianceが定めた省電力・長距離通信を特徴とする広域無線ネットワーク規格の名称で、IoT向け無線規格として世界的に広く利用されています。
人工ピンの導入により世界トップの臨界電流特性を有する高温超電導線材の量産技術開発を完了し、販売、提供を開始しました。また、米国BRUKER Corporationと共同で、1.2GHz(磁場強度28.2テスラ)の高分解能Nuclear Magnetic Resonance(NMR;核磁気共鳴)用超高磁場超電導磁石の実用化に成功しました。28.2テスラの磁場強度は、2020年5月時点で高分解能NMRにおける世界記録であります。NMRの分解能の向上は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関する研究や、アルツハイマー病、パーキンソン病、がん研究などを促進し、社会に大きな貢献をもたらすと期待されます。
当社超電導研究部フェローの飯島康裕博士(工学)は、2020年11月に、電気・情報工学分野における世界最大級の学術研究団体であり、また技術標準化機関であるIEEE(アイ・トリプル・イー)より、Dr. James Wong Awardを授与されました。この賞は、レアアース系高温超電導の線材実用化の大きな課題であった、超電導結晶の配向制御に欠かせないイオンビームアシスト蒸着法の発明と、同法および人工ピン技術を効果的に取り入れた高特性長尺線材実用化における顕著な貢献が認められたものです。本技術は、現在当社をはじめ、多くの超電導線材開発製造機関に採用されています。
セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は
【エネルギー・情報通信カンパニー】
5GやIoTなど多様な情報通信サービスの普及にともない、光ファイバケーブルの需要が世界的に拡大しています。フジクラでは、既存設備を有効利用し経済的に光ファイバ網を構築する技術として、世界トップレベルの細径・高密度な光ファイバケーブル「Spider Web Ribbon®/Wrapping Tube Cable®」(以降,SWR®/WTC®)を製品化しています。2020年度は、細径光ファイバを用いた超多心光ケーブルや、欧州建設資材規制(CPR)に適合した高い難燃性を有する屋内配線用光ケーブルを開発し、世界的に拡大するデータセンター需要に応えました。さらに、国内の通信環境に適合し、従来の1.5倍の高密度化を実現した国内最大心数の3000心光ファイバケーブルを実用化しました。今後もSWR®/WTC®の技術をもとに革新的な光ファイバケーブルを開発し、世界各国の通信ネットワークの発展に貢献していきます。
これらの光ケーブルの接続点に使用される光コネクタの高性能化、および、高機能化開発を進めています。2020年度は、高速大容量通信に適した低損失多心光コネクタを開発しました。また、この低損失多心コネクタをSWR®/WTC®の両端末に取り付けた牽引端付きMPO成端ケーブルを製品化しました。コネクタの高密度収容と施工工数の削減が認められ、大手ハイパースケールデータセンター事業者に採用されました。また、屋外の光ケーブル布設に適した防水多心コネクタ、多心接続収容箱、さらには光コネクタ接続時の作効率化が図れる防水コネクタ用クリーナーを開発、製品化し、国内外のケーブルキャリアに採用されました。一方、伝送装置周辺や装置基盤で使用される光コネクタの小型化、高性能化、および、高機能化開発にも注力しています。フロント、バックパネル光コネクタ、取り扱い性に優れた多心レンズ型光コネクタには、これまで磨いてきた高精度技術、レンズ技術を適用すべく開発を進めています。2020年度は、通信データの大容量化に対応した伝送装置やデータセンターへの適用が見込める超低損失小型多心光コネクタを開発しました。
通信用の光ファイバでは、高密度ケーブル向けに被覆の細径化が大きな流れになっています。通常のファイバよりも断面積を35%低減させた200µm被覆径ファイバはFutureGuide® LWP plus-200, SR15E-200として好評をいただいております。さらなるケーブルの高密度化に向けて被覆径160µmファイバの開発を進めており、その成果については2021年6月に米国にて開催されるOFC2021※にて発表を予定しています。
※OFC : Optical Fiber Communication Conference。光通信に関する最大規模の主要国際学会の一つ。
光通信機器等で使用されるPANDA※(偏波面保持機能)ファイバにおいては、次世代の高速通信で使用される小型光通信機器での収納に適した曲げ半径5mmに対応したクラッド径80µm-PANDAファイバをリリースしました。今後も通信機器メーカーの要望に応じたPANDAファイバを開発していきます。
※PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing
光ファイバ1本に複数のコアを持つマルチコアファイバ(Multi-Core Fiber;MCF)は、今後の高密度・大容量伝送用光ファイバの候補のひとつであり、当社では実用化に向けた開発を進めています。2020年度は、現在の汎用光ファイバと同じ外径を有し、コアが4個のMCFの製造技術開発・低コスト化に注力しました。国立研究開発法人情報通信研究機構殿の委託を受け、NTT、KDDI総合研究所、他のファイバメーカと共に「マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」を進めております。本開発の狙いはMCFの早期実用化です。一方、MCFの実用化のためにはコアがひとつの汎用光ファイバとの接続技術も重要となっており、その入出力デバイス、接続技術などの周辺技術の確立により実用化を加速させます。今後、マルチコアファイバの実用化をめざすとともに、将来の多大なデータ通信需要に対応可能な光伝送基盤の実現に貢献していきます。
光ファイバケーブルの敷設施工で使用される光ファイバ融着接続機を開発しています。コア調心融着接続機では、更なる低損失接続実現のため、新たな放電制御機能を搭載し、上市しました。この機能は、①融着接続前の切断端面状態に応じて最適な放電制御を行う、②光ファイバ種類の自動判別結果に基づき最適な放電条件を選定する、③放電時の光ファイバ熱発光強度を分析しリアルタイムで放電制御を行う、ことができます。従来から備えている無線通信による光ファイバカッタ切断刃の状態を管理する機能と一緒に使用することで、より安定した低損失接続が可能となり、融着接続のやり直し作業低減に貢献します。今後も引き続き融着接続技術を改善し、施工効率に貢献する製品を開発していきます。
金属のマーキング、溶接および切断で使用されるレーザ加工機の市場では、ビーム品質が良く、かつ小型で電力変換効率が高い光源を利用したファイバレーザへの乗り換えが進んでいます。当社は、光通信用ファイバや部品で培ったコア技術をベースにファイバレーザの研究開発に注力してきました。2020年度は、高出力マルチモード・ファイバレーザで出力12kWを実現し、製品ラインナップを拡充しました。また、半導体を中心とした電子デバイス向けには、各用途に最適な特殊ファイバを用いたパルスレーザの開発・製品化を進めており、巣ごもり需要を中心とした電子分野の旺盛な需要に応えていきます。
エネルギー問題がますます重要性を増す中で、省エネルギーの推進、環境負荷の低減、資源の有効活用につながるケーブル・機器の開発を積極的に進めています。環境保護政策により普及が進む電気自動車の充電インフラとして、航続距離延長のため急速充電器の設置が加速しています。バッテリ容量の拡大および充電時間の短縮のため、従来の3~7倍の出力の充電器が実用化されており、液冷ケーブル用コネクタの規格化が進んできました。当社では、国内初となる400kWクラスの充電器に適用可能な大容量充電のための、ケーブルおよびコネクタ接続端子冷却技術を開発しています。更に次世代の充電器に対応するため、900kWクラスに適用できる冷却技術の研究開発を進め、冷却効率に優れ、操作性・取扱い性に優れる充電コネクタ・ケーブルの開発に注力します。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
【電子電装・コネクタカンパニー】
(エレクトロニクス事業部門)
民生及び産業用の電子機器に使われるフレキシブル・プリント配線板(FPC)、メンブレン※、コネクタ、電子ワイヤ、センサ、ハードディスク、サーマル製品の開発を行っています。スマートフォンに代表されるモバイル機器は、情報通信速度の高速化や高機能化が進み、周辺機器とのつながりやすさが強く要求されています。また、自動車の電動化、情報化、知能化が加速する中で、需要が増えている自動車用電子部品は、各種環境下での高い信頼性が要求されています。
※メンブレン:銀などの金属インクを,樹脂基板に印刷することにより形成した電子回路基板。
FPCについては、スマートフォンを中心とした電子機器の高密度化や高速伝送に対応するため、高精細回路、電気特性を向上させた多層基板の開発を進めています。特に、高精細FPCはセミアディティブ基板※をRoll to Rollで製造する技術を確立しており、用途拡大の段階に入りました。車載用途としては、車両の電動化及び先端運転支援システム(ADAS)に対応する製品群の技術開発を進めています。また、医療、ウェアラブル用途の特殊構造の製品開発にも取り組んでおります。
※セミアディティブ基板:選択的銅めっき技術を用いて作製される、高精細配線を有するFPC
メンブレンについては、印刷回路の細線化や新規機能性ペーストの商品化を進め、従来のパソコン、車載市場に加え、医療、ヘルスケアといった新しい市場を開拓しています。さらに、ストレッチャブルメンブレンを応用した商品の開発を進め、新たな用途への展開を進めています。
コネクタについては、「小型・低背」「堅牢」「防水」「高速伝送」「作業性」をキーワードに、高機能化(高操作性、高強度、大電流、複合化など)した製品開発を推進しています。モバイル機器用途としては、Board to Boardコネクタの小型・堅牢化、バッテリ用コネクタ等の製品バラエティ拡充を進めています。産業機器用途では、屋内照明用低背型コネクタや、4K/8K放送用、5G基地局用等のコネクタの開発を進めています。また、自動車用途についても、自動車の情報化・知能化に対応すべく、高速通信用コネクタなどの開発に注力しています。
電子ワイヤについては、エレクトロニクス市場での更なる高速、高容量データ伝送の要求に答えるべく開発を進めています。モバイル機器やウェアラブル機器などの用途では、非常に限られたスペース内で、高速な信号を伝送する用途や、高屈曲耐久を有した接続のニーズがあり、これらを実現する機器内配線用極細同軸ケーブルアセンブリの開発を進めています。
センサについては、製品ラインナップを強化するため、高分解能デジタル出力圧力センサ、高精度差圧計測用センサ、小型圧力センサを開発しています。
サーマル製品については、スーパーコンピュータやハイエンドサーバの高性能化に伴い、CPUの発熱密度の増加に対応した更なる冷却性能の向上が求められており、これらのニーズに応えるべく、水冷式クーリングユニットの高性能化を進めています。また、IGBT等パワー半導体向けに、大容量に対応した高性能ベーパーチャンバや、ヒートパイプ製品の開発を進めています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は
(自動車事業部門)
CASE(Connected、Autonomous, Shared & Services、Electric)と呼ばれる自動車業界トレンドに対応すべく、ワイヤハーネスを中心としたElectric Distribution System (EDS)※ 関連の新商品・新技術開発を推進しています。
※EDS:自動車用ワイヤハーネス及び配電部品を使用した、電力・情報の分配システムConnectedとAutonomousの分野では、その進化を支えるために必須となる大容量高速通信が可能なハーネスや、車載ネットワーク配線のシミュレーション技術のほか、将来を見据えた10Gbps超の高速通信ネットワーク制御技術の開発を推進しています。
Electricの分野では、軽量化による低燃費化、低消費電力化などのカーメーカーのニーズに対応すべく、高電圧ハーネスやコネクタのほか、電源供給の最適化を目指した車両全体の電気回路シミュレーション技術の開発や、大電流電源制御技術の開発を推進しています。
また、EDSのみならず、CASEで広がりが期待される新しい領域の技術に向けた開発も推進しています。
なお、当セグメントに係る研究開発費は