第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 (1)会社の経営の基本方針

  当社グループは、経営理念である「信頼の輪をひろげます」のもと、信頼される製品でインフラを支え、社会の安心安全に貢献する会社であり続けることを使命としております。そして、長年積み上げてきた技術とサービスでお客様のニーズを掘り起こし、付加価値を創造する企業体として成長し続けることをビジョンとして掲げております。

  当社グループは、昭和電線グループの経営構想として「SWCC VISION 2030」を策定しており、変わりゆく時代においてもその使命を忘れることなく、「迅速」「情熱」「考動」でお客様と社会に一層貢献していくことを方針としております。

 

 (2)中長期的な会社の経営戦略

 昭和電線グループの中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」

 (ⅰ)「Change & Growth SWCC 2026」策定の背景

  当社グループは、2019年11月5日に公表した中期経営計画「Change SWCC 2022」ローリングプラン(2019)を推進し、2022年度の計画目標である、営業利益100億円、営業利益率5%以上、1株当たり配当金50円を2021年度に前倒しで達成しました。

  この結果を受け、当社グループは創立90周年を迎える2026年度(2027年3月期)を最終年度とする中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」を策定しました。

  中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」の基本方針、戦略および主要KPIは以下のとおりです。

 (ⅱ)「Change & Growth SWCC 2026」基本方針

  イ)基盤事業の収益力強化

  ロ)新規事業の創出

  ハ)海外事業の新展開

 (ⅲ)「Change & Growth SWCC 2026」戦略

  イ)Change 構造改革のさらなる積み上げ

  ・ROIC経営の浸透による収益力アップ

  ・DXによるバリューチェーン改革とビジネスモデル変換

  ・コーポレート・ガバナンス体制の強化

  ロ)Growth 成長フェーズへの移行

  ・社会課題解決型ビジネスの推進

  ・成長事業へのポートフォリオシフト

  ・拡大投資による成長フェーズへの移行

 (ⅳ)「Change & Growth SWCC 2026」主要KPI

  当社グループでは、営業利益・ROIC・配当金額を主要KPIと定め、中期経営計画を推進してまいります。

0102010_001.png

   (注) 1.2022年度計画は、2022年5月12日に公表した通期連結業績予想を記載しております。

      2.2022年5月12日にROIC目標を見直しております。

 (3)経営環境および優先的に対処すべき事業上の課題

  今後の見通しにつきましては、脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーをはじめとする国内電力インフラ需要や、xEV車をはじめとする環境対応製品需要の拡大等が見込まれますが、中国におけるロックダウンに起因する世界的なサプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰や円安の進行に加えてロシア・ウクライナ情勢による地政学上のリスクの高まり等、引き続き予断を許さない状況が見込まれます。

  その中で、当社グループは中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」の初年度を迎え、さらなる構造改革の実行と成長フェーズへの移行に向けた取り組みを進めてまいります。

  前中期経営計画の中で進めてきたROIC経営については、ROICによる管理をさらに各部門の業務レベルにまで浸透させるとともに、事業ポートフォリオの最適化のための見直しや事業性評価、投資判断への活用を徹底してまいります。さらに、2023年4月に控えた持株会社から事業会社への移行による新たな経営体制の構築に向けて、その準備を進めてまいります。
 

①セグメント別の状況および課題

  各セグメントの状況および課題については以下のとおりであります。

(エネルギー・インフラ事業)

  エネルギー・インフラ事業は、国内の電力インフラ、建設関連向けの電線・ケーブル、免制震部材が主体の事業となっております。

  電力インフラでは、国土強靭化対策による底堅い需要に加えて、再生可能エネルギーへのシフト、送配電網増強に伴うさらなる需要増加も見込まれることに対して、主力製品である接続部品「SICONEX®(サイコネックス)」の増産強化を進めてまいります。また、施工作業員不足の課題に対しては、接続工事技術の効率化・省力化にサステナブルな人材育成プログラムを付加した接続工事システムの展開を新たなブランド「SICOPLUS®(サイコプラス)」の下で進めてまいります。なお、人材育成プログラムにはAVR®をはじめとするDXの導入により、教育期間の短縮を図ってまいります。

  建設関連向けの電線・ケーブルでは、石化製品等の原材料価格の高騰に対して、引き続き販売価格への転嫁やDX導入を含む経営効率の改善を進めてまいります。また、グループ内の製造機能と販売機能を統合し一気通貫させることで、さらなる効率化を図ってまいります。

 

 

(通信・産業用デバイス事業)

  通信・産業用デバイス事業は、国内やアジア圏向けの通信ケーブル、家電や産業機器向けのワイヤハーネス、複写機向け精密デバイスが主体の事業となっております。

  通信ケーブルでは、通信トラフィックの増大に伴うインフラやオフィス向けの需要の取り込みに注力するとともに、2021年度に実施した国内製造拠点の再編による収益改善効果を実現してまいります。

  ワイヤハーネスは、2021年度に稼働開始した嘉興昭和機電有限公司の新工場を中心に中国・東南アジアをはじめとする旺盛な家電向け需要の取り込みに注力してまいります。

  精密デバイスは、サプライチェーンの変化に対応するため、海外向けの生産ラインをベトナム子会社のSWCC SHOWA(VIETNAM) CO., LTD.に移管しており、地産地消をさらに加速させてまいります。

 

(電装・コンポーネンツ事業)

  電装・コンポーネンツ事業は、電線導体用の線材や汎用モータ用の巻線等の一般汎用製品と、無酸素銅MiDIP®およびヒータ用銅合金線等の高品位線材や、環境対応車向け高機能巻線といった高機能製品が主体の事業となっております。

  高機能製品は、自動車減産の影響が前年度第2四半期後半より生じておりますが、増産回復やさらにその後のxEV車需要の拡大を見込み、無酸素銅MiDIP®、ヒータ用銅合金線および車載向け平角巻線の増産計画について進めてまいります。

 

(新規事業)

  新規事業では、モビリティ、インダストリ、ITを軸に新たな事業創出に向けて取り組みを推進しております。IT事業の強化としては、㈱アクシオにおいてクラウドでのID管理マネージドサービスを中心とするゼロトラスト事業の拡大を推進しております。また、当社グループでは、これまで培ってきた技能やデータと DX に関する技術やツールを掛け合わせ、新しいビジネスモデルを創出する「SWCC Smart Stream(スマートストリーム)事業」を推進してまいります。

 

②ESG経営の強化

  当社グループは、「信頼の輪をひろげます」の経営理念のもと、創業以来、社会インフラを支える企業として様々な社会課題解決型ビジネスに取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいりました。

  特に、ESGの取り組みについては、経営上の重要課題であるとの認識から力を入れてまいりましたが、当事業年度からは新たにサステナビリティ推進室を設置し、サステナブル経営に向けた取り組みをさらに加速させるための体制を構築しました。なお、当社のESGに関する主な取り組みについては以下のとおりです。

 

(E/環境対策)

  当社グループでは、環境中長期計画「Green Plan 2050」において脱炭素社会への貢献目標を明確にするほか、このマイルストーンとして、2030年度には2013年度対比でCO2排出量35%削減を目指すという目標を掲げております。また「第7次環境自主行動計画」では、CO2排出量削減に加え、産業廃棄物の埋め立て処分量の削減、水資源の有効活用などの目標を定めました。さらに、2022年5月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に対し賛同を表明しております。

  当事業年度においては、例年に続き、環境貢献製品の開発と製品化および廃プラスチックのリサイクルを促進したほか、調達においてもサプライヤーの環境対応を勘案してグリーン調達を推進しました。また、CO2排出量削減については、製造段階におけるさらなる削減を目的として全社横断的なプロジェクトチーム「Green Energy Project」を立ち上げるとともに、7月には三重事業所でカーボンニュートラルな都市ガスを導入、9月には愛知工場にPPAモデルによる太陽光発電の導入を決定するなど、環境配慮型拠点の拡大に努めました。

 

(S/社会との関わり)

  当社グループでは、持続的企業価値の向上には人的資本マネジメントが欠かせないとの観点から、次世代経営者を対象とするサクセッションプランおよび幅広い階層を対象とする人材育成プログラムを実施しております。また、年功序列を廃し能力と役割によって組織転換をすすめる新人事制度の導入や健康経営の推進など様々な施策に取り組んでおります。

  当事業年度においては、能力主義の人事制度を総合職全体に拡大したほか、シニア人材の活躍の場を拡げる人事制度を導入しました。また、ダイバーシティマネジメントの一環として、社長直轄の女性活躍推進プロジェクト「SWCCarat(カラット)」を立ち上げ、2026年度までの目標として女性管理職割合8%、女性課長職以上の割合10%という目標値を設定しました。このほか、デジタルイノベーション推進室の設置や既存事業にDXを掛け合わせ収益力を向上させるSWCC Smart Stream事業の推進などDXに関する取り組みについても力を入れております。

 

(G/ガバナンス改革)

  コーポレート・ガバナンスについては、2019年度より監査等委員会設置会社へ移行しました。2020年度からは取締役7名のうち3名を監査等委員である独立社外取締役とすることで経営に対する監督機能の強化を図っております。当事業年度においては、業績連動報酬割合の増加や譲渡制限付株式の支給対象者の増加といった役員報酬の見直しを進めたほか、品質コンプライアンス強化の取り組みとして、10月29日付公表の外部指摘により発覚した品質検査不整合に関する再発防止策として、「品質業務デジタル化プロジェクト(検査業務へのデジタルツール導入)」や「知識深耕プロジェクト(コンプライアンス教育制度の整備)」を立ち上げました。

  その他、2022年3月には、2023年4月付で実施する当社グループ経営体制の再編ならびに商号変更に伴う今後のガバナンス体制強化の取り組みについて公表しております。

 

(外部評価)

  当社グループのESGの取り組みについては、ESG投資指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されたほか、Eの取り組みとして、㈱日本政策投資銀行のDBJ環境格付において「環境への配慮に対する取り組みが特に先進的」として最高ランクの格付けを3年連続で取得しました。また、Sの取り組みについては、子育てサポート企業を対象とする「くるみん」の認定や「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定のほか、「SMBCなでしこ融資」において「女性活躍の先進企業」との評価を受けております。さらに、当社の開示姿勢に対する評価として、(一社)日本IR協議会より「IR優良企業奨励賞」をいただいております。

 

③気候変動への取り組み

  当社は、持続可能な社会づくりを目指して、2050年度環境負荷ゼロをキーワードに、長期ビジョンおよび2030年度目標を掲げておりますが、CO₂排出量については、1993年度から環境自主行動計画を策定し、これまでに50%以上を削減してまいりました。

  気候変動は、事業活動にとってリスクとなる一方、収益獲得の機会にもつながります。当社は、これら気候変動に関するリスク・機会の特定と対処が経営上の重要課題であるという認識のもと、TCFDの提言に沿って、気候変動関連リスク・機会に関する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の4項目について情報開示を進めることにしました。

 

(ガバナンス)

  気候変動問題に関しては、環境方針など重要事項は取締役会で審議・決定し、経営上のリスクや機会となる課題については代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において対応を検討する体制を整えています。審議内容はそれぞれ年2回以上取締役会に報告し、またリスクに関しては、リスクマネジメント委員会と連携し、情報を共有します。

 

0102010_002.png

 

(戦略:プロセス)

  グループの環境統括部門、対象事業のセグメント長および外部専門家からなるワーキンググループを設置し、以下の条件でシナリオ分析を行いました。

  0102010_003.jpg

 

(戦略:当社が想定する社会像)

  脱炭素社会に移行した場合の社会像(1.5℃シナリオ)としては、脱炭素の動きが急激に進み、再エネ導入やEVシフトがさらに加速することで当社の事業機会が増す一方、脱炭素化や石油需要の減少を起因とした原材料価格の高騰を想定しています。また、脱炭素化が進まない場合の社会像(4℃シナリオ)では、省エネや再エネなど、脱炭素化に向けた動きは相対的に鈍く、当社においては、特に各拠点における物理的リスクが高まると想定しています。

 

(戦略:リスク)

  主要3セグメントを対象に行った分析結果のうち、共通事項として特に財務影響度が大きいものについては、以下の通りです。

  0102010_004.jpg

  ※1(時間軸)短期 2025年度、中期 2030年度、長期 2050

  ※2(財務影響度)当社のリスク評価基準にならい、1~10の評価点で定性的に評価。1~3を小、4~6を中、7~10を大と想定。

 

(戦略:機会)

  主要3セグメントを対象に行った分析結果を、「脱炭素社会に移行する場合の影響度」と「当社事業ポートフォリオの大きさ」で分類し、上位2つの事業ポートフォリオにフォーカスしたものを以下のとおりまとめております。

  0102010_005.jpg

  ※1(固有の機会)[E]エネルギー・インフラ事業、[D]電装・コンポーネンツ事業、[C]通信・産業用デバイス事業

  ※2(時間軸)短期 2025年度、中期 2030年度、長期 2050年度

  ※3(財務影響度)事業ポートフォリオの売上規模をもとに想定。

 

   <上記分類の抽出要件>

  0102010_006.jpg

 

(リスク管理)

  当社は、気候変動関連リスクを含むグループ全体のリスクをリスクマネジメント室が統括しています。気候変動関連リスクについては、リスクマネジメント委員会で評価するとともに、サステナビリティ委員会と連携して深堀を行い、影響を評価します。また、気候変動に関連する影響はリスクと同時に機会も評価されるため、評価結果はサステナビリティ委員会に集約し、審議内容を定期的(年2回以上)に取締役会へ報告します。

(指標と目標)

  “2050年度環境負荷ゼロ達成”をキーワードに環境中長期計画「Green Plan 2050」を策定し、2050年の長期ビジョンを実現するために短・中期目標を掲げています。具体的には2013年度を基準年とするCO₂排出削減量(Scope1+Scope2)を、2025年度までに25%、2030年度までに35%としています。

  また、これらの目標を達成すべく、2025年度までに再生可能エネルギーの導入率30%以上を目指す取り組みを進めております。

 

④当社グループ製品の品質試験の不整合に関する調査結果および再発防止策

  2021年2月、外部から昭和電線ケーブルシステム㈱が製造および販売する製品の品質管理に関する指摘を受け、同年7月21日付で当社グループ製品の品質試験に関する不整合の判明と特別調査委員会の設置について、また同年10月29日付で当社グループ製品の品質試験の不整合に関する調査結果の報告について公表しました。

  今回の委員会による調査結果を受けて、お客様に対しては確認された不整合の内容をご報告するとともに、いずれの製品についても品質の健全性については問題がないことを、ご説明させていただきました。

  また、委員会による調査は終了しましたが、当社グループとしては、このような事態を二度と起こさないために、改ざん等を防止する試験結果の自動測定システムの早期導入ならびにコンプライアンス意識を確立する体系的な教育制度の整備および実施等の再発防止策の実施を現在進めております。

  なお、今回の調査対象製品以外の製品についても、当社グループは、品質に対する信頼性をより高めるために引き続き調査を行っております。

 

 (4)2022年度経営方針

  2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染症や原材料価格の高騰による事業への影響を免れない状況が見込まれますが、中期経営計画達成に向けた変革を着実に実行するとともに、市場や環境の変化に応じた柔軟でスピード感のある判断と施策を実施することで、このような経営環境下にあっても、より一層、経営体質を強化し資本効率を高めてまいります。その観点から、2022年度のグループ経営方針は次の5点としております。

 

 ・「Change & Growth SWCC 2026」を達成するための仕組み作り:

  ありたい姿への挑戦、施策のスピード感ある実施

 ・ROIC経営の考え方の浸透、バランスシートの改善:

  新たなKPIとその達成を目指した事業改革の推進

 ・品質遵守、安全優先は会社の基本:

  「信頼」を取り戻すための覚悟と仕組み作り

 ・働きやすい職場作りと健康経営の推進、エンゲージメントの向上

 ・2030年環境目標達成のための活動の具体化と社員との共有

2【事業等のリスク】

 当社グループにおいて、リスクとは、経営の目的の達成を阻害する潜在的な要因であると定義しております。

 また、リスクを適切に管理することは、経営上極めて重要な課題であるとの認識のもと、当社グループはリスクマネジメント委員会を中心とするリスクマネジメント体制を整備しております。具体的な本委員会の構成としては、グループCEOを委員長、当社取締役、執行役員および主要事業会社の社長を委員としております。グループCEO統括のもと、本委員会にて、リスクの評価およびリスクマネジメント計画、対応策、年間を通したマネジメントサイクルの結果を、適時に取締役会へ報告しております。また、リスク統括部署として経営管理統括部内にリスクマネジメント室を設置し、規則、ガイドラインの制定、教育研修およびモニタリングの実施等、事業の継続発展のために不可欠な全社的リスクマネジメント体制の強化を図っております。

0102010_007.png

 リスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要リスクについては、本委員会にてリスクを識別、分析、評価をして判断しております。具体的には、グループ各社から挙げられたリスクを数値化する等して定量的に分析を行い、その上で当社グループとして重要な影響を及ぼす可能性があるリスクを主要リスクとして特定しております。また、本社で認識したリスクについても追加の上、全社的に主要リスクへの対策を行っております。主要リスクとしては、以下のようなものがあります。

 

 2021年度主要リスク

リスク項目

認識しているリスク内容

主要な取り組み

残存するリスク

自然災害等

〇以下の自然災害等による製造拠点の操業停止や物流機能の麻痺等

・大規模な地震・台風・洪水等の自然災害

・火災等の事故

・事前に想定されるリスクに対して円滑な初期対応を講じるために、BCP(事業継続計画)を策定

・製造拠点ではインフラ設備の強靭化投資を計画的に実施

・火災保険等の付保

・電力不足・物流の停滞等により社会インフラ機能そのものの低下が長期化する等、計画的な生産活動に大幅な制限が生じた場合の業績等への重要な影響

原材料価格変動

〇主要原料の銅の価格変動

〇ポリエチレン等の石油化学製品の価格変動

・グループ調達本部による管理強化

・計画的な安定調達実施による在庫削減

・製品価格へのスライド転嫁

・先物取引等を活用した銅価格変動リスクヘッジ

・製品価格への転嫁が困難な場合や相場が大きく下落する局面で、損失が生じた場合の業績等への重要な影響

 

パンデミック

〇新型コロナウイルス感染症による影響

・新型コロナウイルス緊急対策本部による対応(従業員の安全確保、社内外の感染抑止等)

・オンラインツール等を活用したビジネス継続体制の構築

・感染症の継続による市場縮小、事業活動の制限による財政状態および経営成績への重要な影響

サプライチェーン寸断・喪失

〇サプライチェーンの寸断・喪失による原材料供給の停止、遅延

・調達先の多様化、複数購買の推進によるリスク低減

・調達先の個別管理徹底(廃業、事業撤退リスク管理)

・原材料調達の停止、遅延による事業活動や業績への影響

・調達難に起因する調達コストの増大

 

 

品質問題

〇品質問題の発生(欠陥、不良品)

〇各種規格、法令、お客様との取り決め等に違反する製品の製造・販売

・品質・環境管理統括室によるモニタリング、監査統括部による監査

・品質保証業務のデジタル化推進による品質管理徹底、不正防止

・全社的教育プログラムの展開

・賠償保険の付保

・品質問題に起因する損失補償や製造物責任訴訟等

・品質問題による信頼失墜、レピュテーションの毀損

 

コンプライアンス

〇各種法令・税制に関する規制に違反するリスク

〇取引先等との契約上・取引上の義務に違反するリスク

〇社会通念上受け入れられない役職員の言動による信頼失墜

・全社的コンプライアンス意識の醸成と法務室によるチェック体制強化

・コンプライアンスに関する研修・勉強会の実施

・内部通報制度の活用による不正等の検知

・各規制当局からの処分・制裁等

・取引先等の関係者から損害賠償や取引の停止を求められる可能性

・コンプライアンスに対する意識が希薄であると判断され、信頼やレピュテーションが毀損

環境・気候変動

〇環境・気候変動への対応遅延等によるビジネス影響

〇CO₂排出削減コストの増大

〇エネルギー関連調達コストの増大

・環境・気候変動への対応強化と積極的開示

・全社的環境プロジェクトの展開

・環境対応を考慮した設備投資基準の検討

・環境・気候変動への対応遅れによる信頼失墜、採用や業績への悪影響

・中長期的な製造コストの増大による収益性の低下

 

 その他、当社グループが認識している業績等に重要な影響を及ぼす可能性がある経営上のリスクは以下のとおりであります。

 

①情報セキュリティに係るリスク

 当社グループは、事業活動の過程で、取引先等の個人情報や当社グループおよび取引先の技術、製造、販売、研究開発等に関する機密情報を保有しております。これらの情報に対する不正アクセス、不適切な取扱いによる情報流出等を防ぐと共に、サイバー攻撃による事業活動の混乱を防止するため、セキュリティシステムに関する技術的な強化や情報管理に関する社内規程の整備、従業員への教育に努めるだけではなく、ネットワークのセキュリティ強化に対して継続した投資を行っております。しかし、情報流出等のリスクや事業活動への影響は完全には回避できないため、その場合には、金銭的補償や信頼回復に向けた対応に多額の費用を要する等、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

②金利に係るリスク

 当社グループでは、銅等の原材料調達のための運転資金や設備投資のための長期安定的資金を必要としており、当事業年度末現在の有利子負債は391億円であり、総資産に占める割合は26.6%であります。

 これに対して、棚卸資産の圧縮による運転資金の削減や保有資産の売却による資金調達、グループファイナンスによる資金運用の効率化を実施することで有利子負債の削減に取り組んでおります。また、金利が大幅に上昇した場合には金融費用の負担が増加するおそれがあることから、金利スワップ等のヘッジ取引により、リスクを低減する対応を実施しております。

③為替に係るリスク

 当社グループでは、海外売上高比率が9.2%であることもあり、国内での円貨建取引が中心でありますが、一部の海外での取引の決済は米ドルその他の外国通貨建で行われております。

 また、海外子会社等については、現地通貨で財務諸表を作成したものを連結財務諸表作成時に円換算するため、その間の為替レートの変動により影響を受けることがあります。加えて、外貨建債権債務を保有している子会社等では、期末における評価替、同負債に係る返済、利払い等において、為替レートの変動による差損益が生じることがあります。

 当社グループでは、為替レートの変動に対するリスクを債権・債務の均衡化、為替予約等のヘッジ取引により一定限度まで低減しておりますが、過度な変動があった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④設備投資に係るリスク

 当社グループでは、電線・ケーブル等をはじめとする社会インフラ整備に必要不可欠な製品を製造しており、その品質の安定と生産性の向上のために、将来の受注動向や減価償却費の推移等を勘案しながら、計画的に新規製造設備の導入や既存設備の改良・更新を進めております。

 しかしながら、経営環境や受注動向に著しい変動が生じた場合や、自然災害等における被害が生じた場合、既存設備の老朽化が想定を超えて進展した場合には、当初の設備投資計画の見直しを迫られるおそれがあります。

⑤海外事業展開に係るリスク

 当社グループの海外における事業展開やその拠点は、主に中国に集中しており、同国における法制度や行政上の取扱い等の変更によっては、当社グループの同国内での事業活動に支障をきたすおそれがあり、また、人民元のレートの大幅な調整や、中国経済の失速は、当社グループの業績に直接的な影響を及ぼしかねません。

 このようなリスクに対しては、当社グループは、パートナー企業との連携をさらに強化するとともに、ベトナムをはじめとする中国以外の海外事業展開を推進する等により、リスクの低減に努めております。

⑥人材の確保および育成に関わるリスク

 当社グループでは、長年培ってきた技術・技能を有する人材の高齢化や流動化が進む中、今後の事業運営を確実に推進していくために、優秀な人材や事業運営上必要となる資格者の確保と育成に努めるとともに、IoT (Internet of Things)やRPA(Robotic Process Automation)の活用による省人化や業務の効率化にも注力しております。

 しかしながら、これらの人材の確保等が十分に行えない場合には、組織編制上の制約や事業上の機会の逸失に繋がるおそれもあり、その場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

⑦知的財産権に係るリスク

 当社グループは、技術とノウハウに関する権利保護に注力しており、技術系社員全員に対して特許教育を継続的に行うだけでなく、製品開発や発売の際には特許調査等を徹底して実施しております。しかし、事業展開する上で第三者から知的財産権を侵害されるおそれがあり、また、当社グループの製品または技術に対して、第三者から権利侵害を主張されるおそれもあります。自らの知的財産権を保護するためには訴訟等を通じた対応も必要となり、その場合には、多額の費用と経営資源が費やされるおそれがあり、さらに第三者の権利侵害の申し立てが認められた場合には、重要な技術が利用できなくなる等の可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は1,473億56百万円で、前連結会計年度末より178億96百万円増加しております。その内訳としては、流動資産の増加134億23百万円、固定資産の増加44億72百万円であります。流動資産の増加は、主に受取手形及び売掛金ならびに棚卸資産が増加したことによるものであります。固定資産の増加は、主に有形固定資産ならびに退職給付に係る資産が増加したことによるものであります。

 当連結会計年度末における負債合計は884億24百万円で、前連結会計年度末より71億33百万円増加しております。その内訳としては、流動負債の増加73億99百万円、固定負債の減少2億66百万円であります。流動負債の増加は、主に支払手形及び買掛金ならびに短期借入金が増加したことによるものであります。

 当連結会計年度末における純資産の合計は589億32百万円で、前連結会計年度末より107億62百万円増加しております。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益93億53百万円を計上し、その他の包括利益累計額合計が29億33百万円増加したことによるものであります。

 当連結会計年度末の有利子負債は391億71百万円となり前連結会計年度末より14億81百万円増加しましたが、自己資本比率は前連結会計年度比で2.8ポイント増の39.5%となりました。その結果、DEレシオは当連結会計年度末で67%となり、前連結会計年度比で12ポイントの改善となりました。

②経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種の広がりにより経済正常化に向けて進展があったものの、未だ収束は見えず予断を許さない状況で推移しました。海外においても新型コロナウイルス感染症の長期化、サプライチェーンの混乱、原材料・物流価格の高騰と円安の同時進行に加えて、ロシア・ウクライナ情勢により地政学上のリスクが高まる等、先行きが不透明な状況が続きました。

 電線業界におきましては、通信向けや建設・電販向け電線の需要が前年度対比で減少し、自動車向け電線も第2四半期後半より自動車減産等による影響が出てまいりましたが、電気機械向け電線の需要が堅調であったこと等もあり、電線全体の需要は前年度対比で微増となりました。

 このような環境下、当社グループの当連結会計年度の売上高は1,991億94百万円(前年度比23.2%増)、営業利益は100億39百万円(前年度比32.3%増)、経常利益は98億82百万円(前年度比27.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は93億53百万円(前年度比88.3%増)となりました。

 なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、当連結会計年度の売上高は当該会計基準等を適用した後の数値となっております。当該会計基準等を適用したことに伴う当連結会計年度の売上高に与える影響につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

  セグメント別の業績は、次のとおりであります。

 

(エネルギー・インフラ事業)

  国内の建設関連向けは、大口件名向け出荷等もあり前年度対比では増収となりましたが、第2四半期より石化製品等の原材料価格の高騰が続き、生産工程の効率化や、段階的に価格転嫁を進めることで影響の低減に努めてまいりました。また、電力インフラ向けは、国内の電力強靭化・老朽化更新・再生可能エネルギー連系により引き続き旺盛な需要となりました。なお、第4四半期に中東電力工事案件に一定の目途がついたことから引当処理を実施しました。これらの結果、当事業における売上高は1,069億14百万円(前年度比23.6%増)、営業利益は64億66百万円(前年度比19.2%増)となりました。

 

(通信・産業用デバイス事業)

  産業用デバイス関連は、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱により一部の生産活動が停滞しましたが、収益力強化のための製造拠点の海外移管が完了しワイヤハーネスの中国新工場が稼働開始しました。また、通信ケーブルでは、建設関連向けで需要が減少し原材料価格高騰による影響を受けましたが、国内生産拠点の再編が完了し、一部は収益の改善に寄与しました。これらの結果、当事業における売上高は294億72百万円(前年度比9.3%増)、営業利益は18億28百万円(前年度比1.0%減)となりました。

(電装・コンポーネンツ事業)

  自動車および電子部品向け高機能製品は、前年度対比では需要増となりましたが、第2四半期後半から続いている自動車減産等の影響が年度後半にかけてより大きくなってまいりました。また、銅価上昇の影響等もあり、当事業における売上高は586億2百万円(前年度比36.1%増)、営業利益は23億72百万円(前年度比223.0%増)となりました。

 

(その他)

  全般的な収益構造の見直しを進めたこと等により、売上高は42億4百万円(前年度比18.4%減)、営業利益は3億15百万円(前年度比9.9%増)となりました。

(注) 上記、各セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高または振替高を含めておりません。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、32億79百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億7百万円減少しております。

 当連結会計年度においては、原材料価格の高騰により運転資金が増加したことにともない、借入金が増加しましたが、営業活動から生じたキャッシュ・フローや有形固定資産売却による収入は将来の事業規模の維持・成長のための投資(固定資産取得48億68百万円)や株主への配当(5億96百万円)等に配分されております。

④生産、受注および販売の状況

 当社および連結子会社の生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も含まれるため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため、生産、受注および販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。なお、主要な販売先については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (セグメント情報等) 関連情報 3 主要な顧客ごとの情報」に記載のとおりであります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度における経営成績については、第2四半期後半より石化製品等の原材料価格の高騰や自動車減産による収益への影響が徐々に大きくなってまいりましたが、当連結会計年度を通しては、エネルギー・インフラ事業の電力インフラ向けや電装・コンポーネンツ事業の自動車および電子部品向け高機能製品の需要が前年度対比で増加したこと等により、全体としても増収・増益となりました。通信・産業用デバイス事業は、産業用デバイスがサプライチェーンの混乱により一部生産活動が停滞したことや通信ケーブルの建設関連向けで需要が減少したこと等から営業利益は横ばいとなりましたが、海外製造移管および国内拠点再編が完了し、2022年度以降の利益回復に道筋をつけることができました。

③経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

④経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、前中期経営計画「Change SWCC 2022(ローリングプラン2019)」の計画目標を前倒しで達成したことから、今後は、新中期経営計画である「Change & Growth SWCC 2026」で掲げた主要KPI、営業利益150億円、ROIC10%以上、配当金額120円以上の達成に向けて、基盤事業の収益力強化、新規事業の創出、海外事業の新展開を基本戦略とする各種の施策を推進してまいります。

 2022年度においては、構造改革のさらなる積み上げとして、SFCC㈱の製販統合や2023年4月の持株会社から事業会社への移行を伴うグループ経営体制の再編を進めるとともに、SICOPLUS®やMiDIP®等の今後も成長が見込まれる主力製品に対する増産投資を実行してまいります。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境および対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑥資本の財源および資金の流動性について

 当社グループは、安定した財務基盤の強化に努めつつ、中長期的な将来の成長に向け、生産拠点の再編、強靭化および製造能力の増強等による基盤事業の収益力強化や、新規事業の創出にもキャッシュ・フローを戦略的に振り向けてまいります。

 また、個々の取り組みとしまして、営業活動によるキャッシュ・フローでは、収益のみならず資産効率の改善にも努めて、その最大化を目指しております。

 投資活動によるキャッシュ・フローでは、製造能力の増強や成長分野向けの設備投資等を中心に、償却額を上回る投資額を計画しております。財務活動によるキャッシュ・フローでは、引き続き財務健全性の維持・向上に努めつつ、配当政策に基づき株主への還元を行ってまいります。

 なお、複数の金融機関でコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

      当社は、2021年8月26日付で、エクシオグループ㈱との間で洋上風力発電における電力工事事業に関する業務提携契約を締結しました。この契約の締結は、洋上風力発電に関する電力工事事業に関して、両社グループが保有するリソースを提供し合い相互補完することで、市場における競争優位性を高めていくことを目的としております。

   また、当社は、2021年12月22日開催の取締役会において、古河電気工業㈱との間で、2020年4月1日付で営業を開始した建設・電販市場向け汎用電線の共同販社であるSFCC㈱の販売事業に、両社グループの製造事業を統合すること、および両社の出資比率を変更することに関して合意することについて決議し、同年12月24日付で同社およびその他の当事会社と2019年10月11日付で締結した合弁契約書の変更契約書および事業譲渡契約書等を締結しました。

   なお当社は2022年3月29日開催の取締役会において2023年4月1日付で当社連結子会社である昭和電線ケーブルシステムおよび昭和電線ユニマックを吸収合併し当社を純粋持株会社から事業会社とする経営体制の再編ならびに商号変更および定款一部変更について決議し同年6月24日付で両社と合併契約を締結しました

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、長期ビジョン「SWCC VISION 2030」および中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」を新たに策定し、Change「構造改革のさらなる積み上げ」、Growth「成長フェーズへの移行」を掲げ、ESG経営のもと持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決に貢献する研究開発を実行しております。

 基盤事業であるエネルギー・インフラ事業、通信・産業用デバイス事業、電装・コンポーネンツ事業では、高い公共性を有するインフラや自動車や医療分野に大きく関わる「信頼」に根差した新製品やサービスの開発や、DXによるソリューションビジネスへの展開を行っております。また新規事業ではIT分野への展開をはじめ、モビリティ・インダストリーといった電線事業以外の領域への新製品・商品開発やラインナップ増強を推進しております。

 当連結会計年度における、当社グループの研究開発費は総額1,414百万円であり、その成果は次のとおりであります。

 

 (エネルギー・インフラ事業)

当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱および冨士電線㈱を中心に進められております。

当社グループでは、小型・軽量・環境に配慮した戦略製品である接続部品「SICONEX®(サイコネックス)」を用いた電力高圧ケーブル接続工事に加え、さらなる効率化・省力化と人財育成システム等を兼ね備えた接続工事システムの展開を新たなブランド「SICOPLUS®(サイコプラス)」の下で始動しました。これにより、今後も拡大していく電力市場における接続工事へのソリューションビジネス展開をさらに加速してまいります。また、人財教育プログラムには仮想現実(VR)映像に実写映像を重ねるAVR®技術を導入し、これまで現場中心のOJT教育であったところを、工事現場などを再現した仮想空間内で実在の工具や安全器具を使い、より高い臨場感を持って反復的に訓練を行うことで、早期の技能習得を可能としていきます。

耐火電線分野では、近年自動火災報知設備等において、60V以下で耐火配線を行うケースが増えています。このことから、消防庁告示(耐火電線の基準)の60V以下の耐火ケーブルの性能基準が追加され、細径・軽量化した耐火電線を使用することができるようになりました。当社グループでは小勢力回路用耐火ケーブル(品名:EM-JSH®)を開発し、2022年1月に(一社)電線総合技術センターより、業界最速で消防庁告示適合品としての認証を受け、販売を開始しました。

汎用電線分野では、やわらかいタイプのCVケーブルである低反発CVケーブルを開発しました。低反発CVケーブルは、延線時の可とう性に優れ延線工事等の施工性を改善することが可能となります。2022年度4月より販売を開始しており、CVケーブルの売上増を目指します。

免震分野では、文化財保護技術として伝統木造建築物の制振構造化等を大学・設計事務所および建設会社とともに調査し、(一社)日本建築学会や海外の学会に発表しております。他に錫プラグ入り積層ゴムに関する学術研究の成果の一部を発表しております。またお客様との対話から、これまでに得られた知見を活かして、例えば積層ゴムを浮き床の拘束材に転用する等、当社製品の別用途展開を継続して提示できるようにしております。

当事業に係る研究開発費は457百万円であります。

 

 (通信・産業用デバイス事業)

当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、冨士電線㈱を中心に進められております。

光通信分野では、5Gや高度化サービスの普及展開に必要な無線基地局用光ケーブルを上市すると共にラインナップ拡充に向けた開発を継続して進めております。総務省の高度無線化事業にも使われている光ローラブルケーブルは、国内では今後民需用途でも適用が進むことが想定され、さらに細径・高密度化の利点を活かした海外市場への拡販が見込まれるため、ケーブルのラインナップ拡充を進めております。

 

メタルLANケーブル分野では、主に商用ビルやデータセンターで用いられていた伝送方式「イーサネット」の高速化・大容量化に対応した次世代超高速伝送規格(25/40ギガビット伝送)Category 8(Cat.8)ケーブルの開発に業界最速で成功しております。また、工場等の過酷な環境で使用できる産業用LANケーブルの、高遮へい・耐屈曲に対応したCat.6A超細径仕様のラインナップ増強をしました。さらに次世代車載ネットワークとして、車載カメラやADAS(先進運転支援システム)に用いられる細径・軽量なSPE(Single Pair Ethernet)ケーブルの製品化も継続しております。また、これからの高速化・多目的用途による製品ラインナップ増強に伴い、新たにFLANTEC®(フランテック)ブランドを立上げ、開発活動・拡販活動に注力しております。

精密デバイス関連では、プリンタ・複写機・商用印刷機に使用される定着ローラ、加圧ローラ、ベルト等の開発を継続し、省エネ・環境対応・超高画質化などに対応した製品の市場投入を継続しております。また、従来比5倍の生産効率を高めた高品質・高効率の生産革新ラインをさらに増強しました。

当事業に係る研究開発費は156百万円であります。

 

 (電装・コンポーネンツ事業)

当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、昭和電線ユニマック㈱を中心に進められております。

線材では、高機能無酸素銅「MiDIP® OFC(ミディップ オーエフシー)」の安定稼働・BCM(事業継続マネジメント)対応を引き続き展開し、万一の事故に備えた炉体保守システムをアップグレードさせています。また品質(特に酸素量)の安定化・連続監視は、「流動溶融銅中の酸素濃度を連続的に測定するシステム」の実証実験・検証を重ねており、お客様・パートナーメーカーと共に最終段階の仕上げに取り組んでいるところです。

銅銀合金は高強度・高導電性・高屈曲特性の特長を備えた銅合金であり、自動車の電動化対応としてバッテリーヒータ用途への展開をしております。さらに進歩が著しいカテーテル治療などの医療関連、そして極細線製造技術を応用した半導体市場への適用等、細径化・軽量化・長寿命化へのニーズに応えるため、開発を進めております。

巻線では、高耐熱性および高効率・高信頼性が要求される車載機器関連分野においてポリイミド樹脂被覆の高電圧仕様のエナメル平角線を増産しております。現在、更なる高効率・低損失な車載機器用巻線の開発を進めており、お客様と協業しながら量産化に向け注力しております。また5G機器やPC・サーバに使用される電子部品向けとして、耐熱性および耐加工に優れた絶縁材料を開発し、当社独自の加工技術により製造した巻線を開発・上市し、採用が進んでおります。お客様の使用条件に対応した改良を行い、ICT、IoTの進展に合わせて、適用拡大を進めてまいります。

電子機器分野の巻線応用製品として、弊社独自の耐熱性および耐加工に優れた材料と線材加工技術を生かし、高強度と高導電率を合わせ持った機能材の製品開発を進めております。

当事業に係る研究開発費は12百万円であります。

 

 

 (新規事業・その他)

当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、㈱アクシオを中心に進められております。

自動車用電線・応用製品分野では、銅合金線技術を活かし、引張強度と伸びを調質することにより調整した銅錫合金電線を上市に向け開発しております。また、先進運転支援システム等の自動車内データを高速処理するための、車載高速伝送用の細径1対および2対のEthernetケーブルを開発するとともに小型・防水化された加工品の製品開発を進めております。

ヘルスケア分野においては、遠隔医療・医療情報システムや、手術室における高精細医用映像システムに不可欠な高速・大容量ネットワークを支える配線部材、システム構築の提供について検討しております。また、低侵襲性医療における次世代ヘルスケア用途として、ロボット医療・介護、高度医療機器に必要とされる製品、感染症対策を考慮したディスポーザブル製品の技術開発を進めております。

 

基礎・基盤技術については、デジタル駆動型研究開発を進めております。MI(マテリアル・インフォマティクス)等を用いた研究開発のDXを進め、プラスチック・ゴム・銅合金等の新規材料の研究開発を進めています。ここで探索・開発された材料は、様々な事業分野の製品開発に活用しています。

超電導システム製品では、BASFジャパン㈱戸塚工場に建設した三相同軸超電導ケーブルシステム(全長約200mの実証試験線路)の実証試験を2020年11月から開始し、2021年9月をもって終了しました。30MW以上の電力を使う大規模プラントで従来のケーブルを本超電導ケーブルへ置き換えることにより、従来のケーブルで発生していた送電時の損失を95%以上削減できる目処が立ちました。問合せが何件かあり、実用化に向けた次のプロジェクトを獲得する為の活動を継続しております。

ICT分野では、企業におけるクラウドサービスの利用が年々増加しており、またDXの推進やテレワークの増加、内部不正による情報漏洩に対し、ゼロトラストネットワークへの移行が始まっております。このような環境を実現する為にはIDを中心とした認証基盤の構築が必要で、㈱アクシオでは長年培ってきたノウハウを活かし容易に認証基盤の構築を可能とするパッケージ(アクシオモデル)を発表しました。また、クラウド環境におけるID管理を実現するIDaaSを提供している「Keyspider㈱」に出資するとともに、RADIUS・オープンソースに強みを持つ「かもめエンジニアリング㈱」を子会社化し、ゼロトラストネットワークでの認証基盤事業を展開させていきます。

当事業に係る研究開発費は788百万円であります。