当社を取り巻く経営環境は、経済のグローバル化による競争の激化、新興国の台頭、為替相場の変動等大きく変化しており、特に、下記の課題についての対処が不可欠となります。
(1)成長事業への取り組み
当社はデジタルトランスフォーメーション(DX)を成長領域と位置付け、新たな事業ポートフォリオの再定義による製品開発強化と新規事業への取り組みを進めてまいります。ICTを中心としたDX分野で当社の強みを生かせる放送局やAV市場のお客様に向け、リソースを重点的に投入してまいります。
(2)グローバルな生産・物流体制の改善
当社は国内における物流2024年問題、海外の地政学的リスク等に伴うリードタイムの長さや輸送中のアクシデントの可能性等への適切な対応によりグローバルでの需要変動に柔軟に対応できるよう、販売、物流、生産・調達などの各機能を密接に連携させ、製品ごとに最適な生産地で生産して効率的かつ機動的な物流・在庫マネジメントを実現するサプライチェーンの再構築をプロジェクト体制で進め、コスト競争力の確保及び適正在庫の実現に取り組んでまいります。
(3)品質の向上
当社は生産拠点の効率性を追求し、製品品質の向上とリードタイムの短縮、コスト削減を目指します。更に改善活動を強化し、生産技術の向上に努めてまいります。
(4)環境への対応
当社はSDGsを意識し、地球環境に配慮した生産活動、グリーン調達、RoHS指令、REACH規制等による環境管理物質対策、省資源・省エネ活動、廃棄物の削減、リサイクル等の環境負荷の低減に向けた取り組みを推進し、環境マネジメントシステムの継続的改善に今後も積極的に取り組んでまいります。
(5)社会的責任とコンプライアンス意識の向上
当社は永年培ってきた「CANARE」ブランドに責任と誇りを持ち、法令・社会倫理を遵守していく企業としての社会的責任を負っていると考えております。そのためにコンプライアンス意識を高め健全な企業活動を継続させてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は経営基本理念「いつの時代でも存在価値ある企業づくり」を掲げ、時代とともに変化する価値観に対応して、顧客から善い会社として支持され、信頼される会社を目標としております。
この実践を通じ、持続的に事業を成長させるとともに、その基盤となるESG(環境・社会・企業統治)に関しても
さまざまな取組を推し進めてまいります。
(1)ガバナンス
当社グループは、取締役会を経営の方針や重要課題並びに法令で定めた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則月1回開催しております。また、事業運営にスピーディーな意思決定と柔軟な組織対応を可能にするため、取締役と執行役員が出席する執行会を毎月開催しております。
加えて、業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正かつ有効性を監査するため監査役が取締役会に出席することで議事内容や手続きにつき逐次確認いたしております。
また、内部監査人を置き、内部監査を実施し、監査結果を定期的に代表取締役社長、常勤監査役及び取締役会に報告しております。
(2)戦略
①サスティナビリティ(環境)に関する戦略
当社グループは、気候変動や環境汚染等が当社に及ぼす影響が大きいため、環境が重要と考えており、自然環境を守ることが人類の使命と認識し、企業活動を通じて、この保全と向上に努めてまいります。
当社グループは、環境方針を下記の通り定め、実行いたします。
a) 企業活動において、廃棄物の削減・再利用・省資源化・省エネルギー活動の推進により環境負荷の低減に努めます。
b) 環境関連の法規制、協定及びその他当社が同意するその要求事項を順守し、汚染の予防に努めます。
c) 環境方針を達成するために、環境目的及び目標を設定し、その達成に努めるとともに、積極的な改善を図ります。
d) 全従業員に環境方針の理解と周知を徹底し、環境保全への意識向上をはかるとともに、一人ひとりが良き企業人として社会貢献に努めます。
②人的資本に関する戦略
a)人材育成方針
当社グループは、企業活動の中心に人的資源があり重要であるため、多様性の推進を、人的資本に関する重要戦略の一つと位置付けております。中途採用や外国人社員採用を積極的に実施し、多様な価値観の醸成に努めております。また、グループ行動規範に、パワーハラスメントをはじめ相手に不快感を与える言動など、個人の尊厳を傷つける行為は一切行わないと定めており、多様な個性を尊重し、個々人の能力を活かせる自由闊達な職場の形成、公正な人事処遇などを通じ、構成員相互の信頼関係を育み、働きがいのある職場づくりに取り組んでおり、多様な人材を育て活かしていく社内風土を目指しております。
b)社内環境整備方針
当社グループは、仕事と育児・介護の両立、男性の家事・育児への参画を促進するため、多様で柔軟な働き方を推進し、男女が共に職業生活と家庭・地域生活などを両立できる就業環境を整備していきます。
育児・介護休業法に基づく育児休業など、雇用保険法に基づく育児休業給付、労働基準法に基づく産前産後休業など利用可能な両立支援制度の利用促進を図ってまいります。
(3)リスク管理
当社グループは事業活動を通じて発生する様々な環境負荷の削減に努めております。環境負荷物質が想定以上に排出されてしまった場合、賠償責任など生ずる可能性があります。また、環境法規制等に抵触するなどが想定され、事業活動に影響するリスクがあります。
事業所での資源ごみのリサイクルや、騒音や電気消費量の低減などの環境負荷の低減に取り組んでおり、毎月の品質・環境データ報告及び年2回の品質・環境管理委員会で活動報告・評価・分析を行っております。
生産の効率化、廃棄物の再資源化、CO2排出量削減など環境負荷の軽減や脱炭素社会の実現に向けて協業会社一体になって取り組むことにより、気候変動対策の一助になると考えております。
(4)指標及び目標
①サスティナビリティ(環境)に関する指標及び目標
当社グループは、自社の企業規模を勘案して身近なことからできることを始めようと考え、気候変動への取り組みとしましては、自社の排出するCO2の削減が必要であると考えております。
当社の事業活動におけるCO2の排出量(Scope1+Scope2)の監視継続をしてまいります。
②人的資本に関する指標及び目標
人的資本につきましては、上記2戦略において記載した社内環境整備方針について、以下の指標を用いております。
当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
|
指標 |
目標 |
当連結会計年度実績 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する記載は、有価証券報告書提出日(2025年3月21日)現在において判断したものであります。
(1)需要動向に関するリスク
当社グループの製品は、ケーブル、ハーネス、コネクタ、機器(パッシブ・電子)からなり、主に電設業界、放送機器業界向けに販売されており、これらの業界向け製品は、2024年12月期では当社国内売上において68%を占めております。したがって、これらの業界の設備投資動向によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(2)海外事業リスク
当社グループは生産拠点を中国、販売拠点を米国、韓国、中国、台湾、ドイツ、シンガポール、インド、中東に置き、その他地域は当社から直接輸出する形で海外事業を営み、その海外売上比率は51%となっておりますので、事業活動を行うにはそれらの国における認可、税制、金融、輸出入等に関する各種法的規制や経済政策等の影響を受けます。将来において、これらの規制や政策等の変更が行われ、これらを遵守することが困難になったり、遵守するためのコスト負担の増加等の理由により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
特に中国は、当社グループ製品の販売に加え生産拠点(2024年12月期当社仕入実績の7%)となっていることもあり、為替変動、税制、法的規制等の変更は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(3)銅、黄銅等の原材料価格上昇が業績に悪影響を及ぼすリスク
当社グループ製品の主要材料である銅、黄銅等の価格上昇は、ケーブル製品(2024年12月期連結売上比率38%)、コネクタ製品(2024年12月期連結売上比率13%)の仕入価格の上昇をもたらします。当社グループは可能な限り、価格転嫁を避けるべくコスト削減等の最大限の努力をいたしますが、それでも銅、黄銅等の価格上昇を吸収しきれない場合は、製品価格への転嫁による対応をはかります。しかしながら、製品価格への転嫁が遅れる場合又は当社の思惑どおりに価格転嫁が進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)為替レート変動リスク
当社グループの海外売上高比率は2024年12月期において51%となっております。外貨建債権債務の残高調整や為替予約の適宜活用によるリスクヘッジを行うことで、為替変動による影響を最小限に抑えるよう努力しておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避できるものではありません。そのため、為替レート変動により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(5)外注委託リスク
当社グループは、生産の多くを外注先に委託(2024年12月期外注比率65%)しております。外注先において生産に支障が生じた場合に、外注先からの供給に一時的な支障が生じる可能性があり、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)品質に関するリスク
当社グループは、品質に関して、管理体制を徹底しておりますが、予期しない品質トラブルにより多額の回収費用及び補償費用が発生する可能性があります。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険で最終的に負担する賠償額すべてをカバーできる保証はありません。多額の回収費用又は補償費用を要する品質トラブルや製造物責任賠償の対象となる事故が起きた場合等において、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(7)研究開発リスク
当社グループは、将来の競争力を決めるであろう研究開発のテーマを慎重に選択し、充分な経営資源(2024年12月期対連結売上高比4%)を配分し研究開発活動を推進しております。しかしながら、研究開発内容が高度化すればするほど、市場のニーズに合致した製品をタイムリーかつ継続的に製品化できるとは限りません。結果としまして、製品化の遅れ等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)知的所有権
当社グループの製品開発、販売におきましては、特許権、商標権、実用新案権、意匠権等の知的所有権が関係している場合があり、第三者の所有する知的所有権を侵害するリスクを必ずしも否定できません。その場合、訴訟をおこされる可能性があり、当社グループ製品の生産、販売に制限を受けたり、損害賠償金等の支払いが発生する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)コンピュータシステムトラブル
当社グループの各業務は、コンピュータシステムと通信ネットワークに依存しており、これらが災害等で稼働不能となった場合、事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。取引データについては、バックアップを行うことにより、稼働再開の短縮化をはかっております。
(1)経営成績等の状況の概要
① 業績
当連結会計年度の当社グループを取り巻く経営環境は、昨年から続く資源価格の高騰、為替変動などの影響によりインフレーションが継続し、不安定な状況が続きました。
こうした経営環境に対応するため、当社グループは、光製品や電子機器の新製品普及活動、AVコンソール製品などの販促活動を積極的に行うとともに、次世代成長製品と位置付けるITネットワーク関連製品など新規製品の開発活動に取り組んで参りましたものの、国内売上は放送市場における設備投資抑制もあり前年同期を下回り、海外売上も中国市場の売上低迷が大きく減収、全体でも前年同期を下回りました。また、積極的な販売促進活動や持続的な成長に向けた人的資本投資もあり、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに減益となりました。
以上により、連結売上高は12,383百万円(前連結会計年度比3.8%減)となり、利益面でも減収に伴い営業利益1,389百万円(前連結会計年度比16.7%減)、経常利益1,447百万円(前連結会計年度比16.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,039百万円(前連結会計年度比12.5%減)となりました。
なお、当社グループの報告セグメントは所在地別の業績を基にしたものであり、その主な概要は次のとおりです。
(日 本)
日本の放送市場および電設市場は、NHK放送センター社屋建替工事、新情報棟インフラ工事、整備部材納入、関西・大阪万博イベント、新築アリーナ、スタジアム大型映像送出設備、公営競技場設備の改修工事物件等に向けた販売が堅調であったものの、放送市場における設備投資抑制が継続し、売上高は6,220百万円(前連結会計年度比2.1%減)となりました。セグメント利益は資源価格高騰影響はありましたが売上総利益確保に努め、
また、販売費及び一般管理費も減少し、739百万円(前連結会計年度比26.7%増)と減収増益となりました。
(米 国)
米国市場は、放送市場において4K制作設備の更新物件が若干の減少となり、売上高は1,569百万円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。セグメント利益も167百万円(前連結会計年度比31.4%減)で減収減益となりました。
(韓 国)
韓国市場は、インフレ影響による経済低迷の中、放送市場において4K放送設備更新物件の規模縮小や遅延が継続しました。電設市場も物件数の減少が続き、流通市場も景気低迷の影響を受け、現地売上は減少しましたが、為替換算影響により売上高は1,054百万円(前連結会計年度比1.4%増)となりました。セグメント利益は、154百万円(前連結会計年度比1.4%減)で増収減益となりました。
(中 国)
中国市場は、経済低迷の中、放送市場において4K放送設備更新物件が極端に減少し、売上高は1,308百万円(前連結会計年度比16.4%減)となりました。セグメント利益も104百万円(前連結会計年度比60.9%減)で減収減益となりました。
(シンガポール)
東南アジア市場は、経済低迷の中、放送市場および電設市場の物件数が減少し、流通市場向け販売も低調となり現地売上は減少しましたが、為替換算影響により売上高は609百万円(前連結会計年度比6.1%増)となりました。セグメント利益は83百万円(前連結会計年度比16.2%減)で増収減益となりました。
② キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物の増減は、法人税等の支払い521百万円、配当金の支払い456百万
円、有形固定資産の取得127百万円などの減少要因はあったものの、税金等調整前当期純利益1,525百万円、減価償却費234百万円、売上債権の減少207百万円、投資有価証券の売却・償還による収入251百万円、定期預金の払戻超184百万円、棚卸資産の減少122百万円などの増加要因により、前連結会計年度末に比して1,346百万円増の9,893百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
法人税等の支払い521百万円がありましたが、税金等調整前当期純利益1,525百万円の計上に加え、減価償却費
234百万円、売上債権の減少207百万円、棚卸資産の減少122百万円などにより、1,455百万円の収入超となりまし
た。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形資産の取得127百万円があったものの、投資有価証券の売却・償還等による収入251百万円に加え、定期預金の払戻超184百万円もあり、317百万円の収入超となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払い456百万円、リース債務の返済87百万円により543百万円の支出超となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度比(%) |
|
日本(千円) |
2,236,584 |
92.1 |
|
中国(千円) |
518,136 |
66.2 |
|
合計(千円) |
2,754,720 |
85.8 |
(注)1.上記の金額は生産子会社の製品販売価格によっております。
2.当社グループは、日本及び中国で生産を行っております。
b. 受注実績
当社及び連結子会社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前連結会計年度比(%) |
|
日本(千円) |
6,220,855 |
97.9 |
|
米国(千円) |
1,569,865 |
98.6 |
|
韓国(千円) |
1,054,527 |
101.5 |
|
中国(千円) |
1,308,099 |
83.6 |
|
台湾(千円) |
146,147 |
21.4 |
|
シンガポール(千円) |
609,213 |
106.1 |
|
インド(千円) |
316,238 |
167.0 |
|
欧州(千円) |
824,480 |
131.8 |
|
中東(千円) |
333,680 |
132.4 |
|
合計(千円) |
12,383,109 |
96.2 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月21日)現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、当連結会計年度末における資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を及ぼす見積り及び仮定を行っております。
ただし、過去の実績や状況に応じ合理的と判断される要因に基づき見積り、仮定を行っておりますが、実際の結果はこれらの見積り、仮定と異なる場合があります。
当社グループは、特に次の重要な会計方針の適用により見積りや仮定が連結財務諸表に影響を与えると考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について貸倒引当金を計上しておりますが、支払不能となった顧客が増加する等により追加引当が必要になる可能性があります。
b.賞与引当金
当社グループは、従業員へ支払う賞与につきまして、過去の実績と会社の方針を参考にして見積り金額で計上しておりますが、支給額の増加により追加引当が必要になる可能性があります。
c.棚卸資産
当社グループは、販売不能と見込まれる棚卸資産につきましては、評価減を実施しておりますが、予期せぬ不良、仕様変更によりいっそうの評価減が必要になる可能性があります。
d.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損会計を適用しておりますが、将来キャッシュ・フローの見積額に修正が生じた場合において、当該固定資産に対して減損損失を認識する可能性があります。
e.投資有価証券の減損
当社グループは、投資の一環として株式及び債券等を所有しております。これら金融商品の投資価値下落に対しましては、時価が取得原価に対して50%以上下落した場合には、当該時価まで減損処理を行い、30%~50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。 f.製品保証引当金
当社グループは、顧客に納品した一部製品に対して、将来の製品交換及び補修費用に備えるため、今後必要と見込まれる金額を計上しておりますが、予期せぬ不良の発生等により追加引当が必要になる可能性があります。
② 当社グループの財政状態及び経営成績の分析
a.財政状態
(資産)
資産合計は、前連結会計年度比717百万円増の19,626百万円となりました。受取手形及び売掛金の減少、棚卸資産の減少はありましたが、現金及び預金の増加や円安にともなう海外子会社資産の為替換算増を主因としております。
(負債)
負債合計は、前連結会計年度比226百万円減の1,660百万円となりました。これは仕入債務の減少と前期末の新横浜本社移転費用の未払金減少等により流動負債が減少したことを主因としております。
(純資産)
純資産合計は、前連結会計年度比944百万円増の17,965百万円となりました。これは利益剰余金の親会社株主に帰属する当期純利益計上による増加や為替換算調整勘定の増加を主因としております。
b.経営成績
(売上)
当連結会計年度における当社グループの売上は、国内市場においては、放送市場ではNHK放送センター建替工事案件向けの納入が年間を通じて進みましたが、全体的に市場が低迷し前連結会計年度の売上にはおよびませんでした。一方、電設市場は、2025年4月に開幕を迎えるEXPO2025大阪・関西万博への製品納入が特需となり、また、スポーツアリーナや公営競技場への納入も継続したため、前連結会計年度を上回る売上となりました。これらの結果、国内売上高は前連結会計年度比0.7%減の6,036百万円となりました。海外市場においては、これまでけん引してきた中国が経済低迷から大幅な売上減となりましたが、新規顧客の開拓や顧客サービスの強化など各子会社が継続してきた活動が、4K映像の普及による設備投資需要と合致し、欧州、インド、中東の販売好調は継続しました。しかし、前連結会計年度大きく売上に寄与した台湾の台北大ドームを補うほどの大型案件は無く、海外売上高は前連結会計年度比6.6%減の6,346百万円となりました。
以上により、売上高は12,383百万円(前連結会計年度比3.8%減)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
売上原価は、前連結会計年度から引続き銅をはじめ多くの原材料が値上げとなりましたが、円安による為替効果の影響を受け、売上原価率は前連結会計年度とほぼ同じとなり7,460百万円でした。
販売費及び一般管理費は、増員などにともなう人件費を中心に増加、対売上高比も上昇して3,815百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
減収に加えて販売費及び一般管理費の増加もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は、対売上高比が前連結会計年度比で0.8ポイント下降して1,039百万円となりました。
c.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績は、次の要因により重要な影響を受けます。
a.主要な需要先である電設業界、放送業界の設備投資動向
b.比較的価格変動の大きい銅等を材料として使用しているためそれらの価格動向
c.海外売上比率が高くなっているため、為替相場動向
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金及び設備投資等資金は、原則として自己資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借り入れを実施することを基本方針としております。この方針に従い、当連結会計年度における運転資金や設備投資資金は自己資金により充当しました。直近において大きな設備投資を計画しておらず、必要となる運転資金などは主に自己資金により充当する予定ですが、必要に応じて金融機関からの借入れを実施するなど、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要な資金を調達してまいります。
⑤ 経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、時代と共に変化する価値観に対応して、顧客から善い会社として支持・信頼される会社を目指し、「いつの時代でも存在価値ある企業づくり」を経営基本理念として掲げ、その理念を基に、「企業は公器」と認識していつの時代でも善い会社であるために、貢献資源づくり、普及活動及び、フィードバックを実践してまいります。
以上の方針のなか企業価値向上をはかってまいりますが、企業業績の指標として連結業績で1株当たり当期純利益200円超えを目指しております。当連結会計年度におきましては、1株当たり当期純利益は152円64銭となりました。
該当事項はありません。
当連結会計年度における研究開発活動の状況は下記のとおりであります。
当社グループは、下記5つの方針に基づいて製品開発を行っております。
1.社会にとって存在価値があるもの
2.他社にない特色のあるもの
3.現在は需要がそれほど無くても将来には必要性が増すもの
4.流行品ではなく継続的に役立つもの
5.世界に普及できるもの
具体的には、当社グループの研究開発活動は、主にケーブル、コネクタ、パッシブ機器、電子機器の研究開発活動からなり、その活動概要は次のとおりです。
1.ケーブル
ケーブルは放送局や文教、競技場、エンターテイメント現場で使用する映像用ケーブル、音声用ケーブル、データ用ケーブル等からなり、いずれも世界の顧客ニーズを調査し、将来に渡って需要が見込める高性能ケーブルを開発しております。
2.コネクタ
当社グループは、BNCコネクタ、ビデオジャックではユーザーから高い評価をいただいておりますが、更に顧客ニーズに応えるため、製品の小型化、高密度実装対応、低コスト化をはかった製品を開発しております。
3.パッシブ機器
映像や音声用のパッチ盤や、AV機器を実装するコンソール、コンセント盤、機器間を接続するハーネス製品などの製品開発に取り組んでおります。
4.電子機器
当社グループは、これまでに光コンバータ、電子回路を内蔵した当社独自のアクティブBNCコネクタなどの製品開発を行ってまいりましたが、4K・8K放送に向け更に高速化した12G-SDI信号に対応する製品群や放送局で需要の多い応用製品であるポータブル伝送装置を開発しております。
また、新規事業化をめざし、コネクティッドプロダクツ開発室においてIP(インターネットプロトコル)信号に対応する伝送装置や機器の研究、製品開発に取り組んでおります。
以上の結果、当連結会計年度の研究開発費は